聖夜に一杯
12月24日…世間では聖夜だなんだと賑わう日。わたしは袋いっぱいの缶ビールを買い込み人気のない公園に来ていた。
イルミネーションが煌びやかに輝く街中から少し外れた場所。昔はよく子供たちの遊び場として活気づいていた公園は今や見る影もなく一人の少女を残してその姿を消していた。
「おねーさん!」
季節に似合わない黒いワンピースを着た少女はわたしを見つけると無邪気に寄ってくる。
13歳ぐらいの華奢な少女はその白銀の髪を夜空の下に靡かせる。
彼女の名前をわたしは思い出せない。アルコールが回ってきているからなのか、それとも記憶が混濁しているのか。そんなことを気にするのもバカバカしい。
「おねーさん!今日はどんなお話を聞かせてくれるの?」
夜空のように深い色の瞳を星のように輝かせてわたしを覗く少女は歳相応でとても可愛らしい。
わたしは袋から缶ビールを一本取るとカシュッと気持ちのいい音を鳴らして開ける。
そしてその缶ビールを目の前の少女に手渡せば少女は分かりやすくテンションを上げた。
その小さな手で缶ビールを掴むと子供が大好きなジュースを飲むようにビールをその小さな口の中に入れていく。
ごくっ…ごくっ…と喉を鳴らしながら缶ビールを飲む少女の姿は傍からみれば、いや誰から見ても異様な光景だろう。
しかしわたしと彼女にとってはこれが当たり前であり、わたしと彼女がコミュニケーションをとる上で必要不可欠な通過儀礼だった。
少女の姿に異変が出始めたのは缶ビールを一本飲み干した頃だった。
華奢だった彼女の身体はだんだんと成長を始め、その姿に合わせて黒のワンピースはフリルのついたゴスロリチックな衣装へと変化していく。
顔立ちは童顔でクリクリとした目は少女の姿の時の面影を感じ取れる。
胸部は豊満でしかし大きすぎない理想の形をしており、ドレスの隙間から見せる脚は肉付きのいい、しかししっかりとしまった美脚になっていた。
少女の、いや彼女の変化が終わると彼女は握っていた缶ビールをわたしの隣に置き、その横に彼女は座った。
「それで今日はなんの話しをしてくれるの?」
美しく、しかしどこか無邪気に微笑む彼女にわたしは缶ビールを一本開ける。
「いっぱい話あるけどどれがいい?」
聖夜に一杯、わたしは語り始める。この美しく、しかし無邪気に笑う霊に。