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第7話 チェックメイト。

 メアリーの邸宅から離れ、荷運びの仕事を探しに運搬ギルドへと向かう。僕は冒険者ギルドと運搬ギルドを掛け持ちしていた。


 正直ジャンヌに変身していない僕の戦闘力は、ほとんど子供と変わらないくらいだ。冒険者仲間に揶揄されていた通りで、非力で貧弱なのである。


 よってリスクの高い冒険者ギルドの仕事は、必要がある時のみ誰かと組んで行っている。よく組むのは幼馴染のシャーロット。彼女はSランクで、かなり頼りになる。


 僕が契約している悪魔のキリクは、とあるクエストで出会った。というよりも、会って契約する為に、そのクエストを受けたのだ。


 今ではすっかり頼りになる相棒である。まぁ、かなり悪戯好きではあるけれど。


 もう少しで運搬ギルドに辿り着こうという時に、キリクが僕に警告してきた。


「ジャンヌ様。囲まれています」


「ああ、気付いている」


 僕は小声で囁くように答えた。


 まだ日は暮れていないが、人通りが少なくなり始めた王都の大通り。明らかに不自然な人だかりが、僕の周囲にだけ出来ていた。


「敵は十人ってところですね。あそこの建物に連れ込もうとしているようです」


「ああ、そのようだね。ボクも戦いを人に見られたくはない。思惑に乗ってあげるとしよう」


 キリクにそう返答した直後、背後にいる人物が僕の口を塞ぐ。


「動くな。言う通りにしろ」


 首に冷たい金属が触れる。間違いなく短剣だろう。僕はコクリと頷いて、反抗の意思がない事を示した。


 彼らに誘導されるがままに、僕は近くにあった建物に入った。そこは誰かの家のようだったが、留守のようだ。もしかしたらコイツらの一人の持ち家かも知れない。


 玄関からリビングへ移動し、僕を押さえつけていた人物に突き飛ばされてソファーに突っ伏す。


「ううっ」


 ミニスカートがめくれ、太ももと下着が露わになる。僕は倒れたまま、敵を見回した。皆男のようだった。そして全員が、ゴクリと唾を飲み込んだ。


「噂に違わぬ美しさだな」


「ああ。殺すのが勿体無いくらいだ」


「殺す前に、味わうくらいはいいだろう。どうせ誰にもわかりゃしない」


 男達は全員一致で、僕を凌辱する事に決定したようだ。まぁ、当然そうなるのも予測済みだ。


「こいつら......よくも私の所有物であるジャンヌ様を......!」


「怒ってくれるのは嬉しいけど、所有物になった覚えはないよ」


 僕はキリクを右手で制した。


「君がやったら殺してしまう。ここはボクに任せて。少しストレス発散したいんだ」


 ジャンヌになった僕は強い。控えめにいっても、最強のモンスターと言われるドラゴンと同等ぐらいだ。


「さっきから何をブツブツ言ってやがる!」


 男の一人が、神経質そうに怒鳴る。


「別に。さぁ、どうするの? 私を犯すならさっさとしてよ」


 僕はクイクイと指を動かし、彼らを挑発した。


「おっ、この女乗り気だぜ」


「聖女のくせに淫乱な奴だ」


 好き放題言う男達。キリクの表情が変わる。まずい。


「こないなら、こっちから行くよ!」


 僕は全員を空中に蹴り飛ばし、意識を喪失させた。かかった時間は五秒程だ。


「ふぅ。少しだけスッキリしたかな」


「殺しましょう、ジャンヌ様。この男達の顔を見ているだけで、吐き気を催します」


「まぁ、そう言うなって。キリク、この人達を縛ってくれるかい? 聞きたいことがあるんだ。彼らの言質を取れば、王国にチェックメイト出来るかも知れない」


「ふむ。なるほど......ならば仕方ありませんね」


 キリクは何処からともなく荒縄を取り出し、全員を亀甲縛りにする。


「拷問なら得意ですよ。すぐに吐かせます」


 キリクはそう言ってニヤリと笑った。


「それなら君に任せるよ。ボクはどうも、良心の呵責ってやつに苛まれてしまう。それよりも先に、夕食にしないか? せっかく家が手に入った事だしね。彼らは寝かせておこう」


「良いですね。では上等な葡萄酒と、美味しい料理をご用意します」


「ありがとう。頼んだよ、キリク」


「お任せください。夕食の後は......私があなたを頂きますよ」


「ああ、構わないよ。寝室もベッドも、きっとあるだろうからね。路地裏で犯されるより、ずっとマシさ」


「ふふっ。可愛い人だ。本当は、欲しくてたまらないのでしょう?」


「うるさい!」


 僕は顔が熱くなるのを感じていた。本当に......意地悪な奴だ。


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