82話 白斗への違和感と姉
お疲れ様です。
82話ですね。
今回の話は、白斗の話となってます。
って言うか・・・日常を書くのって難しいですね><
今更ながらそう思ってます^^;
これから先の展開もお楽しみに^^
ブックマークや感想など、宜しくお願いします。
マイペースな展開ですが、気に入ってもらえたら宜しくお願いします。
それでは、82話をお楽しみ下さい。
悠斗達はサウザー達と別れ冒険者ギルドを後にする。
「ねぇ、ユウト・・・これからどうするの?」
「そうだな~・・・さっきグレイン達に教えてもらった宿屋に行くのもいいし、
岩場の聖域に一度戻るのもいいけどね?」
悠斗の提案に、イリアもセルカもOKを出した。
因みに白斗はまだ爆睡中だった。
(こいつって聖獣だから、野生とかそういうのは無いのかな?)
そんな疑問を持ちながら、悠斗達はひと目のつかない場所に移動した。
「バレるとにゃにかと面倒なのにゃ」
そう言ってひと目のつかない場所に移動すると・・・
「転送っ!岩場の聖域」
言葉と同時に魔方陣が地面から浮かび上がると瞬時に悠斗達の姿が消える。
そして・・・
「・・・帰ってきたな」
悠斗はそうつぶやいた。
イリアもセルカも楽しそうな表情を浮かべながら、食堂へと走り出す。
「ユウト~早く行きましょ♪」
「にゃぁぁぁ~♪」
「おいおい、慌てなくても此処は逃げないぞ?」
悠斗もまた二人の表情を見て笑顔になるのだった。
そして三人は食堂へと入ると、お湯を沸かし始める。
「何だか此処って我が家みたいになっちゃったわね?」
イリアは感慨深そうに部屋の中を見つめる。
「そうだにゃ♪私にとっても此処はそんな感じだにゃ♪」
セルカもまた同じ事を考えていたようで、悠斗にとっても嬉しかった。
「まぁ~俺はノーブルに来てから、この聖域には世話になりっぱなしだからな。
俺にとっては我が家・・・みたいなものかな?」
この殺風景な岩場の聖域を、我が家と言ってもらった事が嬉しかったのだ。
ノーブルに来てからまだ二週間と経ってもいないのに・・・。
そう思いつつアイテムバッグの中を覗いて白斗に声をかけた。
「おーい、白斗~?起きて来いよ~?」
悠斗は声をかけるのだが白斗はただ前足を上げただけで
そのまま寝てしまった。
悠斗は違和感を感じながらも、食堂へ行く前に
自分の部屋へと寄り、アイテムバッグを置いた。
「食堂へ行ってるからな?」
そう言うと、白斗はバッグから出て、
悠斗のベッド横にあるクッションに寝転がった。
違和感を感じながらも様子を見ることにした悠斗は
二人が待つ食堂へ脚を運び食事を取った。
そしてイリアとセルカは温泉へ行くと、悠斗も白斗を誘いに行った。
「おーい、白斗?温泉行かないか?」
「主、悪いんやけど、ちょっと寝かせておいてほしいねん。
ホンマにごめんな~」
「・・・わかった」
悠斗は白斗の態度に首を傾げながらも温泉へと行く。
髪も体も洗った後、湯船に浸かりながら白斗の事を考えていた。
(・・・何かおかしいんだよな~・・・なんだろ?
此処最近元気がないって言うか・・・無口って言うか?)
悠斗は湯船のへりに頭を置くと天井を眺めた。
「ふう~・・・ベルフリードとの戦いまではまだ問題なかった気もするけど・・・
あの後はやたらと寝ていたしな・・・会議の時も・・・」
悠斗は思い付く限りの事を考えてはいたが、違和感の正体まではわからなかった。
そして湯船から上がると、時間は2時間近く過ぎていた。
「・・・まじか」
長風呂したせいか頭がボ~っとする中、着替えて外に出ると・・・
(・・・何だ?)
妙な気配が聖域に流れ込んできた。
悠斗は慌てて小屋の正面へと走ると、真っ白い獣が一匹佇んでいた。
(・・・神力か?)
悠斗はその獣の方へ歩いて行くと、その獣もまた悠斗へ向かって歩き出す。
悠斗と獣はある程度の距離を取ると歩みを止めた。
その真っ白な獣はとても美しく澄んだ目をしていた。
(でかいな・・・4mほどあるか・・・)
悠斗はその美しさに見惚れながらも言葉をかけていく。
「・・・君は誰かな?」
(・・・・・)
「もしかして・・・言葉が通じないのかな?」
悠斗は首を傾げ困っていると・・・
(あんたが悠斗?)
「!?あ、ああ・・・俺が悠斗だけど?」
直接頭に響き渡る声に驚くが敵意はないようだった。
「あの?俺に何か用でも?」
(ふっ・・・。少し変わった人族とは聞いてはいたけれど・・・
かなり珍しいタイプのようね?)
「いやいや、俺はごく普通の男ですけど?」
(ふっ・・・。嫌いじゃないわ♪)
「な、何がでしょう?」
真っ白い獣は少し笑ったかのように見えた。
「あの?それでご用件は?」
(そうね・・・うちの弟は居るかしら?)
「お、弟・・・ですか?」
悠斗はこの真っ白い狼のような獣の弟に心当たりはなかった。
「すみません、弟さんに心当たりはないのですが?」
この美しい獣に似た獣には出会った事がない悠斗は素直に答える。
(あーっはっはっはっ・・・あんたは既に出会っているわよ?)
「出会ってるって言われても・・・獣って意味ではうちの白斗しか・・・
いや待て・・・あいつはそもそも獣感ゼロだからな~」
(いやいや、ま、まさか・・・白斗の身内?えっ?でも、体格が違い過ぎね?
この獣って狼じゃなく・・・犬?)
悠斗は失礼かと思いつつも聞いてみる事にした。
「す、すみませんが・・・貴方は・・・犬ですか?」
犬と言う言葉に少し目を細めるが・・・
(そうね・・・犬なのは間違いじゃないわ。私は神獣だから正確には犬じゃないのよ?)
「なるほど・・・失礼致しました」
素直に頭を下げて謝ると神獣は、弟について話す。
(貴方が契約者ね?それでうちの弟は今、どうしていますか?)
悠斗は最近の白斗の様子を話し、悠斗自身も違和感がある事を伝えた。
(そう、弟の名は白斗と言うのね?私の名は・・・桜よ)
「申し遅れました。俺の名は神野 悠斗です。悠斗とお呼び下さい」
(私の事も桜で構わないわ)
「わかりました」
礼儀正しく接する悠斗に好感を持った桜は、・・・
(貴方はいい契約者のようですね?気に入りました・・・)
そう言うと、悠斗の体が一瞬白く光った。
「なにを?」
(悠斗に加護を与えたわ。暇な時にでも確認してみなさい)
「わかりました」
悠斗は白斗が居る小屋まで案内すると、寝ている白斗を連れて戻ってきた。
「桜さん・・・白斗を連れて来ましたけど?」
クッションの上で丸くなっている白斗を見た桜は・・・
「・・・起きなさい」
「・・・・・・・・・・・」
「起きなさい」
「・・・もうちょい寝かせてーな?」
「起きろ・・・」
「せやから・・・もうちょい寝かせてーや」
「・・・いい加減に起きなさい」
「あと5分っ!」
悠斗は桜の様子が変わり始め悪寒が全身に走る。
そしてクッションを地面に起き・・・退避した。
「・・・あんた、ええかげんにしいや?」
低く冷たい声を発するも白斗は気にも止めなかった
「あのな~?ワシはもう少し寝たいって言うてるやんけっ!
このあほんだらーっ!空気読めやぁぁぁっ!」
ぶちギレながら起きた白斗は目の前の存在に顔をしかめた。
「へっ?あ、あれ?・・・ワシってまだ夢見とるんかいな?
かなわんな~・・・夢にまだあの馬鹿姉貴が出てきよるわ・・・
もうちょっと気のきいた、美人のおねーちゃんでも出せっ!ちゅーねんっ!
姉貴って・・・ないわ~ちゅーか・・・ウケるわほんまに♪」
(白斗・・・ちょっと元気出たっぽいな・・・良かった。
でも・・・終わったな、お前・・・南無~♪)
まさか現実だと思わなかった白斗は、その姉の目の前でディスり出した。
すると、姉である桜の呻きが聞こえた瞬間、ゆっくりと白斗は見上げた。
(う、嘘んっ!な、なんで・・・なん・・・?)
「な、なんでねぇーちゃんがおんねんっ!!」
白斗は尻尾を丸めゆっくりと後退しはじめた。
その様子を見た桜の目は鋭く光っていた。
「なぁ~・・・あんた?いや、白斗ちゅー名前もらったんやったな~?」
悠斗は桜がまさかの関西弁である事に驚いた。
(えぇぇーっ!さっきまで訛りなかったよね?まじかーっ!)
「白斗・・・あんたええかげんにしいーや?心配して来てみたらあんた・・・
ねーちゃんにどえらい事言うやないの?
あんた・・・一回本気でしばきまわしたろか?」
容赦ない桜の威圧と言い回しに、白斗の心が次第に折れていく。
「・・・ね、ねーちゃん堪忍やて?ほ、ほんまに悪気はないねんて・・・な?
だから許してーなぁー!」
「あんたな?これがウチやったからええねんで?
こんなん、おとんやおかんが聞いとったら・・・あんたの命はないで?」
桜の説教は続き、それをコーヒーを飲みながら見ている悠斗。
(姉弟水入らずってね♪関西弁同士の会話って貴重だな・・・うんうん)
桜は白斗が持ち直した事を会話の中から確認していた。
「ふう・・・。あんたもう大丈夫そうやな?」
「まぁ~ワシもまさかここまでとは思わんかったしな?」
桜は白斗の様子を見て呆れていた。
「あんた~、悠斗に迷惑かけたらあかんよ?
めっちゃええ、ご主人様やんかっ!悪さしたら・・・ウチがバチコーンいわしたるで?」
「わかってるってっ!ねーちゃんもしつこいな~」
「あんたっ!しつこいってなんやの?ええかげんにしいやー?」
関西弁同士の会話は、常日頃からのボケとツッコミの日々鍛錬。
生半可な気持ちで聞いていると、すぐに突っ込まれるのである。
(勉強になるな~)
と、悠斗は真剣に二人の会話を聞いて学習していた。
「ところであんた?悠斗にはあんたの状態話したんか?」
「まだ話てへん・・・自分でもよ~わからんかったさかいな?」
「ほんまに困った子やな?」
「ほっといてーな」
悠斗はコーヒーを飲み終えると、二人の前に出てきた。
「さてっと・・・色々と話してもらおうかな?」
悠斗が「ニヤリ」と笑うと、白斗は顔を引きつらせながら笑った。
「・・・どっちが話す?」
悠斗は桜と白斗を見ると、姉弟でアイコンタクトを取っていた。
「ほならワシから・・・」
そう言うと、白斗は悠斗が出したテーブルの上に飛び乗った。
「えっと~・・・ワシってほら・・・聖獣やん?
長い時間人間界に居ったらあかん・・・ちゅーのは知っとったんやけどな?
ちょっと軽く思ってたみたいや~♪
ほんまに驚きやで~っちゅーてね?」
白斗のふざけた言い方に悠斗は「カチン」ときた。
「お前・・・こんな時くらい真面目に話せないのか?」
そう言うと、悠斗は指を「パキポキ」鳴らし始めた。
「ははは・・・じょ、ジョーダンでんがな?」
「いや、だからその冗談を言うなって話をしているんだけど?」
悠斗の冷たい眼差しが白斗に突き刺さる。
「ああ~それで俺も一つ勉強したんだけどさ・・・」
「な、何でんの?」
「関西弁の人に対抗しようと思ったらさ・・・
関西弁で対抗するのが一番なんだって思ったんだけど?」
「いやいや、主・・・関西弁言うのーはな?そんな簡単なモンやないんやで?」
白斗は何故か「にんまり」しながら説明してくるので、
悠斗は少しイラっとした。
「白斗・・・お前な?・・・コホンっ!
あんたな・・・ええかげにしいや?ふざけとったらいてまうで?」
悠斗の関西弁に白斗は勿論桜まで驚いていた。
「あ、主・・・ど、どないしたんでっか?なんか悪いもんで食べたんやないか?」
「食べてへんわっ!ちゅーか、あんたとしゃべっとったら、自然と覚えるわっ!
ほなら・・・洗いざらいしゃべってもらおうか?」
「うわっ!主っ!まぶしいんやけど?」
いつの間にか悠斗はデスクライトを取りだすと、白斗に照りつけていた。
「話せっちゅーても・・・たんにワシが聖獣やから人間界での行動に制限があるって、
ただそれだけの話なんやけど?」
「なんで言わんかったんや? それを先に言うとったら、
あんたはこうして捕まってへんねんぞ?おとんやおかんが悲しむでっ!」
「あ、主・・・あ、あんな?
なんとか純情派とか旅情編とかほんまもんの刑事みたいなんやけど?」
「そこは・・・気にしなくていいから」
「さ、さよか・・・」
白斗の話は簡単に言うと、亜神であるオウムアムア達と同じだと言う事だった。
「そんな事ならオウムアムアの時に話せばいいじゃんよ?」
「いや~ワシかて、ここまでひどくなるとは思ってへんかったさかい・・・」
悠斗は溜息を漏らしながら桜に聞いた。
「桜さん・・・何かいい方法ってないですか?」
「ふむ、神達なら擬体というのがあるけど・・・
神獣や聖獣という存在は神達とは違い擬体を使用することは出来ないのよ?」
「擬体・・・ですか?」
「うむ、擬体というのは・・・。
神達がこの人間界で活動する時に使用する体の事なんだけど、
その擬体がなければ聖域指定されていない場所だと活動が制限されて、
その限界を超えてしまうと、いくら神達と言えど死んでしまうのよね」
悠斗は白斗を見ると項垂れているのがわかった。
「つまり桜さんや白斗は聖域指定されていない場所では存在できない・・・
そう言う事なのでしょうか?」
桜は悠斗の問いに黙って頷き、白斗もまた頷くしかなかった。
悠斗は白斗を見つめていた時、ある事を思い出した。
「な、なぁー白斗?お前ギルドでの会議の時・・・
どうしてアイテムバッグの中に入ったんだ?」
白斗は俯いていた顔を上げ答えた。
「なんでって・・・そりゃ~あのバッグ中って異空間ですやん?
人間界に居るよりは、異空間の方がまだ楽っちゅー話ですわ」
悠斗は眉間にしわを寄せると桜に聞いた。
「桜さん・・・アイテムバッグの中って聖域指定って出来たりしますか?」
「悠斗・・・それはつまりバッグの中を聖域指定して、
普段から中に入っていれば、衰弱は軽減される・・・そう言う意味でいいのかしら?」
「はい。そうなれば、この岩場の聖域に戻って来なくても大丈夫だと思うのですが?」
「なるほどね・・・」
桜は目を閉じ暫く考えると・・・。
「確かにそれはいい考えだと思うけど、私からすれば此処は異世界・・・
私にこの世界で聖域指定する権限はないのよ?」
「権限か・・・。そういうのって勝手に出来ないのか」
「うむ、神達には神達のルールがあるわ。
だから神だからと言って、好き勝手にはできないの」
(ラウルに相談するとしてもな~・・・色々と世話になってるし・・・
それに白斗は月読が連れてきた聖獣だから、流石にちょっと頼みにくいな・・・)
悠斗達が困り果てていると、突然神界のゲートが開いた。
まばゆい光に照らされて、シルエットが浮かび上がる。
「話は聞かせて頂きました。その件は私が引き受けましょう・・・ユウト様」
ゲートの中から出てきた神に悠斗は驚いた。
「・・・どうして此処に?」
白斗はその姿を確認すると、悠斗の前に防御結界を張った。
「主っ!気ー抜いたらあかんでっ!?」
白斗の声が岩場の聖域に響き渡った。
ラウル ・・・ いやいや~白斗君のお姉ちゃん登場っ!
ミスティ ・・・ ふふふ♪とても美しい毛なみですわね♪
ラウル ・・・ そうだね~でも僕が驚いたのは・・・狼じゃなく、犬って事だよ?
ミスティ ・・・ 普通なら狼の神である、フェンリル降臨なのでしょうけどね♪
ラウル ・・・ ただの犬って・・・それで美しいのだから素敵だよね?
ミスティ ・・・ 私も神獣が欲しくなりましたわ♪桜さんを頂けないかしら?
ラウル ・・・ でも彼女は・・・関西弁だよ?
ミスティ ・・・ 悠斗さんも覚えたのですから、私も・・・♪
ラウル ・・・ 君は本当にブレないよね?
ミスティ ・・・ ふふふ♪何でやねんっ!
ってなことで、緋色火花でした。




