80話 ギルマスvs悠斗
お疲れ様です。
今回はギルマスと悠斗の戦いですね。
トラブルに好かれる悠斗の運命は。。。
最近夜も涼しくなりましたね。
体調には気をつけて頑張って行きましょう♪
それでは、80話をお楽しみ下さい。
「てめぇーみたいなクソガキには、きっちり教育してやるよ」
「あんたは・・・一方的にやられるだけだ」
グレイン達もイリア達も、もはや誰も止められなくなった。
港町・アシュリナ 冒険者ギルド ギルドマスター ウェズン 元S級冒険者 大剣
190cm・110kg 独身・頑固で直情型。
距離を取りお互いに武器を構える。
ギルマスは「じりじり」と間合いを詰めて行く。
悠斗は構えただけで微動だにしていない。
(クソガキめっ!・・・隙がねぇ・・・)
「おい・・・来ないのか?」
悠斗の一言に「ビクッ」と体が反応すると、
ギルマスは身体強化を使い距離を詰め攻撃してきた。
「おらぁっ!」
真上から悠斗の頭頂部目掛け振り下ろされた大剣は
悠斗に当たる事もなく衝突音と共に、床を叩きつけていた。
「・・・これを躱すかよ?」
「・・・当たる訳ないだろ?」
「クソガキっ!」
ギルマスは大剣を肩に担ぐと一足飛びに悠斗の間合いに入り、
連続攻撃を繰り出す。
「はぁはぁはぁ・・・あ、当たらねぇ・・。馬鹿な・・・」
悠斗は薄く笑うとポケットに両手を突っ込んだまま立っていた。
「てめぇ、回避だけか?」
ギルマスがそう言った時、悠斗に違和感を感じた。
(・・・な、なんだ?何かがおかしい・・・何だ?)
そしてイリア達は・・・
「な、なんだ?ユウトのヤツ・・・ロッドはどうしたんだ?」
「あ、ああ・・・いつの間に消えて?」
グレインとライトは数回目を擦るのだが、ロッドが見当たらなかった。
それを横目で見ていたイリア達は・・・
「ふふ♪グレイン、上よ・・・う・え♪」
グレインはイリアに言われるがまま上を見ると、
丁度悠斗のロッドがギルマス目掛け落ちてきたところだった。
「イ、イリア・・・お前達、アレが見えていたのか?」
するとセルカがグレインを軽く蹴りながら答えた。
「当たり前だにゃっ!このハゲっ!私達は悠斗に鍛えられたのにゃ
だから私達には見えて、ハゲ達には見えなかったのにゃっ!」
荒波の旅団ばかりか、周囲に居た冒険者達も、
その実力差に驚いていた。
そして悠斗とギルマスは・・・
ギルマスは顔をしかめると、悠斗から感じる違和感を探した。
「はっ・・・ロッド・・・は?」
思わず口からこぼれた言葉を言い終えた瞬間、
ギルマスの目の前にシルバーのロッドが突き刺さる。
「・・・いつの間に?」
ギルマスが慌てて後退しかけた時、既に悠斗の姿はなく、
ギルマスの背後に立っていた。
「うぉっっ!」っと、慌てて逃れるギルマスを他所に、
悠斗は床に突き刺さったロッドを引き抜いた。
そして鋭くなった悠斗の瞳はギルマスを睨む。
(馬鹿なっ!あ、あんなクソガキにS級の俺が恐怖だと?)
ギルマスは体が「ガタガタ」と震えている事に気がついた。
「なぁ・・・もう終わりでいいのか?」
「まっ、まだだっ!」
ギルマスは魔力を制御しはじめると・・・
「捕縛!」
ギルマスの指先が光り始め、悠斗の周辺の床から
4本の鎖が四方向から飛び出し悠斗を拘束しようとするが、
四方向の鎖が射出するとほぼ同時に解呪され
魔方陣ごと砕け散った。
「な、何が起こったんだ?」
ギルマスは目の前で起こっている事が理解できなかった。
そして悠斗から得体の知れない恐怖を感じると、大剣を握り締め悠斗に駆け出した。
「クソガキ死ねぇぇぇっ!」
その狂気に満ちたギルマスの目を見た悠斗は笑う。
「さぁ、行こうか・・・」
気道を使用せず己のゲートを開く。
悠斗の戦いを見守っていたイリアは・・・
「えっ?!気道なしでゲート開けるの?」
「ホントだにゃ・・・私も初めて見たのにゃっ!!」
「主・・・まじギレしてはるやん・・・どないしよ?」
グレイン達はイリア達の言葉の意味が理解出来ていなかった。
「ギルマス・・・これからは、ひたすら俺のターンだからな?
自分の吐いた言葉を噛み締めろ・・・」
悠斗から感じる殺気は今まで感じた事もない恐怖だった。
それに耐えかね膝を折る瞬間・・・
「おらぁぁぁっ!!」
「ぐふぉっ!!」
ギルマスの視界に悠斗が現れたと思ったら、腹に悠斗の右拳が突き刺さり
「バキンっ!」
くの字に曲がった所を左肘で顎をかち上げた。
ギルマスは後方に反り返り、倒れようとした時、背中に強烈な蹴りが放たれ
再びくの字に曲がる。
「はぁぁぁぁっ!」
何度も何度も腹・顔・腕・脚・背中と、強烈な攻撃が止まらない。
成す術なく攻撃を受け続けるギルマス。
(なんだ・・・何が・・・起こって・・・いる・・・んだ)
そして最後は腹にキツイ蹴りを食らうと、闘技場の中央付近から、
壁まで蹴り飛ばされる。
「ガッハアッ!!」
ギルマスは意識が朦朧とする中、視界に入ったのは、
悠斗がロッドを拾い、投げてくるところだった。
「はぁぁぁぁぁっ!終わりだっ!」
(・・・これで・・・やっと終わ・・・るのか?)
固唾を呑んで見守るイリア達は・・・
「ユウトのやつ・・・本気で殺す気かっ!」
グレイン達は悠斗の容赦ない攻撃に恐怖していたのだが、
イリア達は平然と見つめていた。
「お、お前達・・・よ、よく平気な顔して見ていられるな?」
グレインの問に少し苛立ちを感じながらも、イリアはグレインの問に答えた。
「平気な訳無いでしょ?でも、あそこまでさせるギルマスが悪いのよ」
「そうだにゃ・・・自業自得なのにゃ。
ギルマスの言動は、職務を逸脱していたのにゃ。
それはあの場所に居たみんなが見ていたのにゃ」
(そうでっせ?悪いんはギルマスの方なんやで?これだけは明らかやからな?)
グレインは悠斗の事を信じるイリア達を信じるのだった。
(そないに心配せんでええよ?主はギルマスを殺さへんから・・・)
グレインは白斗の言葉が素直に信じられなかったのだが、
イリア達はグレインを見ると、黙って頷いていた。
「わかったよ」
そう言うと、グレイン達も悠斗を信じるのだった。
そして悠斗とギルマスは・・・
投げ放たれたロッドは、ギルマスの頭数センチ横に突き刺さった。
(は、はず・・・れ・・・た?い、や・・・はずし・・・たのか?)
そして悠斗はギルマスの所まで縮地を使い迫ると・・・
「おい、そこのギャラリー・・・離れてろ?死ぬぞ?」
吹き飛ばされたギルマスの後ろで見ていた連中に威圧を放ちながら忠告する。
「は、はいっ!」
慌てて避難するギャラリーを見て悠斗は拳を硬く握る。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!はぁっ!」
悠斗から繰り出された拳は、ロッドが突き刺さっている反対側の壁を
観客席ごと・・・破壊した。
凄まじい轟音とともに土煙に覆われる。
悠斗はロッドを引き抜き数歩後ろに下がり、
土煙が収まるのを待っていた。
そして暫くすると土煙が収まった。
「・・・生きてるか?」
「あ、ああ・・・生きてる・・・らし・・・いな」
ギルマスが生きている事を確認すると、悠斗は「ヒール」を使用し
ギルマスを全快させた。
ギルマスは自分の手足を確認する・・・
(こ、これがただのヒールだと?!)
ふと悠斗を見上げた時、そこにはまだ目が鋭くギルマスを睨んでいた。
(・・・こいつは何者なんだっ!)
そう思いつつギルマスは立ち上がる。
「やっと立ったな・・・さて・・・続きをするか」
そう言うと、再び構えた。
ギルマスは「ビクッ!」と、体が拒絶反応を示す。
「・・・た、戦う必要があるのか?」
「はぁ?!あんた・・・今更何言ってんだよ」
悠斗の言葉に苛立ちを感じたイリア達が、闘技場の中に入る。
「ユウトっ!待ってっ!」
「待つのにゃっ!」
悠斗は構えを解くと振り返った。
「・・・待つ理由は?」
「も、もう十分だと思うわ」
「そうだにゃ♪こんなおっさんの居るギルドでなくても、
他にも色々とあるのにゃ♪」
「主・・・他の街で登録したらええやんか~ こんな主見とーないわ」
悠斗は仲間の言葉を聞くと、ギルマスに振り返った。
「戦う理由って言ったよな?」
「ああ、こんな戦いは無意味だろ?」
「あんたがそれを言うのかっ!俺の仲間の登録を拒否するだと?
・・・それがギルマスの言葉とは思えないんだけど?」
「そうだな・・・それは俺が悪かった・・・謝罪する」
「今更かよ・・・それに無意味な戦いを仕掛けたのは・・・あんただ」
ギルマスは頭に血が昇っていたのは確かなのだが、
何とかこの場は収めたいと思っていた。
「もういいんじゃないか?お前は俺に勝ったんだぜ?」
「・・・あんた、俺になんて言ったか覚えているか?」
「・・・ああ、勿論覚えてる」
「なら・・・俺を殺して見ろよ?確か・・・そう言ったよな?」
ギルマスは再び体中を悪寒が駆け巡る。
「わ、悪かった・・・本当にすまなかったっ!」
「俺を殺せるまでやろう・・・大丈夫だ、怪我は俺が治してやる」
(やるしかねーな・・・)
ギルマスが諦めかけた時、グレイン達が声を掛けてきた。
「なぁーユウトよ。もういいんじゃねーか?」
「はぁ?」
「お前・・・今、自分のツラを見てみろよ?ひど過ぎるぜ?」
(こいつ・・・なんて顔していやがるんだ・・・)
悠斗は一度大きく息を吸うと深く吐き出した。
「悪かったな・・・みんな、ごめん」
イリア達やグレイン達に頭を下げると闘技場を後にしようと歩き出した。
そして上へ昇る階段に差し掛かろうとした時・・・
「ユウト君・・・待ち給え」
悠斗は階段の上を見ると、そこにはサウザーが立っていた。
「サ、サウザー・・・さん?!」
「さっきぶりだね?」
おどけて見せたサウザーの後ろからロジーも顔を覗かせていた。
「ユウト様・・・大丈夫ですか?ほんとに心配したのですよ?」
「有難う。心配ないよ?」
ロジーの温かい言葉が嬉しかった。
「ユウト君・・・」
悠斗の名を呼ぶと、サウザーは階段を降りて、闘技場の中へ入っていく。
悠斗はロジーに背中を押されながらサウザーの後に付いて行く。
ギルマスは慌ててサウザーの元へ駆け寄り片膝を着き頭を垂れる。
「サ、サウザー様がお越しとは・・・
このような事になって誠に申し訳御座いません」
「ギルマス・・・君は一体何をやっているんだね?」
「はっ!・・・申し開きのしようがありません」
「ギルマスの立場でありながら馬鹿な事を・・・」
サウザーが額を抑えて嘆いていた時、後ろの方からサウザーを呼ぶ声が聞こえた。
「あなた?」
「アンナか・・・まさかお前まで此処に来るとは・・・」
呆れた顔をしたサウザーは苦笑していた。
「アンナさん・・・一体どうして?」
ロジーの母であるアンナは、元S級の冒険者であり、
勝手知ったる我が家みたいなモノだった。
ギルマスはアンナを見ると小刻みに震えていた。
そしてアンナがサウザーの元へ辿り着くと・・・
「ねぇ、ウェズン・・・一体貴方は何をやっているのかしら?」
アンナの冷たい殺気が、ギルマスの顔色を変えていく。
「い、いえ・・・ア、アンナ・・・さ、様。お久しぶりです」
「本当に久しぶりね・・・好きで此処に来た訳じゃないのだけど・・・
特に・・・あんたの顔は見たくなかったわ」
アンナからドス黒いオーラがギルマスへ流れているのを感じた。
する悠斗が横から声を掛けた。
「アンナさん・・・ご心配おかけしました」
そう言って、悠斗は改めてアシュリナ家に頭を下げた。
「気にしなくていいのですよ?
私もロジーと同じで居ても立ってもいられませんでしたから♪」
「ありがとうございます」
サウザーは悠斗の顔に落ち着きが見えると安心した。
「良かったよ、ユウト君・・・元に戻ったようだね?」
「はい」
「ところでユウト君、私が渡した紹介状は見せたのかね?」
悠斗は「そう言えば・・・」と、慌てて紹介状を取り出す。
「み、見せていなかったのだね?」
「・・・そんな暇なかったので」
サウザーは苦笑しつつ、紹介状をギルマスに渡した。
「中身を見給え・・・君が一体何をしでかしたのか、それでハッキリするはずだ」
ギルマスは紹介状の中身を確認していくと、全身から汗が吹き出し、
青ざめた表情から白へと変わっていった。
その様子を見ていたアンナがサウザーに声をかける。
「あなた、此処じゃなんですから、会議室を使いましょう」
「ああ、そうだな、そうしようか」
サウザーはギルド職員に会議室を使用できるよう取り計らい
関係者を全員二階へ連れて行った。
ギルドの二階へ上がる階段の前で、悠斗を呼ぶ声がする。
「ユウト様ー!ユウト様ー!」
「あれ?!ゼノ・・・何で此処に居るのさ?」
悠斗にそう言われ少し項垂れてしまう。
「そ、そりゃ~ないですよ~?俺はユウト様の配下でもあるんですよ?」
「えっ?!そ、そうなの?!」
「えっ?!ち、違うのですか?」
「えっと・・・ど、どうなんだろ?」
そんなやり取りをしているとグレインに頭を叩かれてしまう。
「おいっ!ユウトっ!さっさと上に上がれよっ!」
ゼノと話をしていて、階段を昇れなかったグレインがキレていた。
「グレイン・・・痛いよ」
「当たり前だっ!さっさっと昇れよっ!」
グレインの容赦ない言葉にゼノが苛立つ。
「おい、そこのハゲっ! ユウト様に何言ってやがる!」
「何だお前は?!」
階段の前で睨み合いが続いて行く、その後ろで待っていた連中もキレ始めた。
「おいっ!グレインっ!早く昇れよっ!」
「うっせーなっ!ユウトが昇らねーと行けねーだろうがっ!」
グレインは悠斗を指差してこいつのせいだと言うのだが・・・
「ユウトは何処に居るんだよ?」
「どこってここにっ!」
クレインは悠斗の方へ向き直ると、既に悠斗の姿はなかった。
「あ、あいつめっ!」
ギルドに居た全員が、グレインの赤っ恥に笑っていた。
顔を赤くしたまま階段を昇るグレインに少し同情するゼノだった。
「はぁ~・・・俺も冒険者になって、ユウト様と冒険してーな」
そう思ったゼノはサウザーに相談しようと本気で考え始めたのだった。
ラウル ・・・ ミスティ、あのギルマスを消しに行こうと思うんだけど?
ミスティ ・・・ ええ、そうですわね?それが一番良いですわ♪
ラウル ・・・ 人の話を聞かない者達は・・・断罪されるべきだっ!
ミスティ ・・・ そうですわっ!あっ・・・でもそうなってしまうと・・・
ラウル ・・・ ん? 何だい?
ミスティ ・・・ ラウル様も断罪せねばなりませんわ~♪
ラウル ・・・ どうして僕がっ!!
ミスティ ・・・ 日頃から私の言う事を聞きませんものね~?
ラウル ・・・ ま、待て・・・は、話せばわかるっ!
ミスティ ・・・ ふふふ♪ラウル様に贖罪を・・・ふっふっふっ
ラウル ・・・ ぎゃぁぁぁっ!こ、怖いーーっ!
ってなことで、緋色火花でした。




