76話 策略と剣聖
お疲れ様です。
76話です。
もう76話なんですね・・・
月日が経つのが早く感じます。
そして本編ではいよいよ決闘という名の喧嘩が始まります。
それでは、76話をお楽しみ下さい。
悠斗はグラフィスと別れてから仲間を集めた。
「みんなごめん・・・」
悠斗はみんなの前で頭を下げる。
すると近衛騎士達や騎士団達が悠斗を励ましてきた。
「ユウト様、気にする事ありませんよ?我々もあの態度には頭に来てましたからっ!」
「ああ、そうさっ!飯だってそうだぜっ!うちのメイド連中に難癖付けてよぉっ!」
騎士団や近衛騎士達が盛り上がっていた時にサウザーが現れた。
「ユ、ユウト様・・・とても不快に思われたでしょう?
し、しかし、国と事を構えてしまうと・・・」
サウザーの顔は青ざめ少し震えていた。
「気持ちはわかるんだけどさ。グラフィスには忠告したのは見てたよね?」
「は、はい・・・それでも・・・」
「基本的に戦うのは俺なんだけどさ・・・」
サウザーは悠斗の言葉の意味が理解出来なかった。
「えっと・・・決闘するのは俺だけだよ?」
そして今度は騎士団と近衛兵達が「はっ?」と、シンクロしていた。
「みんな聞いてくれ・・・俺の力の一旦は見たよね?
あの壁をとりあえず防御の弱い塀に張り巡らせる。ただ、足止めは必要なんだ」
「足止めと言いますと?」
「サウザー忘れたのか?俺は喧嘩・・・と、言ったんだ」
「は、はい・・・確かにそう言いましたが?」
悠斗はあくまで戦争ではなく喧嘩・・・だと言ってのけた。
「つまり壁で防御している間に・・・俺が全滅させる」
「いや、しかしそれでは中の者達がっ!」
「ふっふっふっ・・・そこでイリアとセルカと白斗に防御結界を張ってもらう。
そして手の足りない所は、騎士団や近衛騎士達にフォローを頼みたいんだ」
サウザーは落ち着きを取り戻すと、自分の配下達に指示を出していく。
「リディとステアは防御結界に回ってくれ。
そして・・・ああ~そうか・・・近衛隊の隊長は任務でいないのだったな?
副長のラドールには万が一の為に、櫓に昇って状況を知らせてくれっ!」
サウザーの指揮の元、近衛騎士と騎士団達は準備を始めた。
イリア達もまた・・・同じように動くのだった。
そして決闘という名の茶番まで残り一時間。
悠斗は裏門から隠蔽を使用し外に出ると・・・
「セルン・・・居るか?」
「ふふ♪」っと、笑い声と共にセルンが姿を表す。
「無茶な作戦を思いついたわね?驚いちゃったわ♪」
「あははは、元々茶番だからね?」
「あら?本気でやり合うのでしょ?」
セルンの言葉に悠斗は溜息を吐く。
「ここまで貴族が腐っているとは思わなかったんだよね」
「ユウト・・・」
「だから・・・これはただの喧嘩だ。1対50以上のね?」
「違うわよ?1対70よ」
「あははは・・・そ、そんなにい、居たんだ・・・腹が痛くなってきた」
「ちょっ、ちょっとっ!ユウト大丈夫なの?」
悠斗が言い淀んだのでセルンは慌ててしまう。
「あははは、冗談だよ♪」
「いい手があるってことでいいのかしら?」
「えっ?そんな手なんてないけど?もしあるのなら・・・教えてくれっ!」
「貴方・・・本気で言ってるわよね?」
「はい」
呆れてモノが言えなくなったセルンを見て、
悠斗が笑い出すと、セルンも釣られて笑い出した。
「で・・・?我らが使徒様はどうするのかしら?」
「それは簡単だよっ!ぶっっっとばすっ!!」
「ぷぅっ・・・ぷふぁっ・・・あっはっはっはっ!
な、何よそれっ!ただぶっ飛ばすってっ!」
悠斗はおどけて見せると再び呆れた顔になった。
「勝算は当然あるわよね?」
「当然だろ?」
「そうよね?心配して損しちゃったわ♪
それで?私は何をすればいいの?」
「外に居る騎士達を行動不能にしてほしいんだけど?」
「は、はぁぁぁぁ?あんた、一体何人居ると思ってるのよっ!」
悠斗の胸ぐらを掴み揺すり始めた。
「痛いっ!いたたたた・・・ま、ままま待て落ち着けっ!混乱させるだけでいい」
「こ、混乱させるって・・・一体・・・ええっ?ま、まさか・・・」
セルンは何かを思いついて口にしようとすると・・・
悠斗は「ニヤリ」と、笑った。
「わ、私が言うのもなんだけど・・・いいの?」
「ああ、勿論いいよ?でもさ・・・加減はできるんだろ?」
「え、ええ・・・勿論できるけど・・・」
「だと思った♪いや~助かったよ♪」
「あ、あんたねぇ・・・この借りは高く付くわよ?」
セルンのしたり顔を見た悠斗は、セルンの腕を引っ張り抱き寄せると・・・
「これでもいいかな?」
そう言って、セルンの耳元で囁き、軽く頬にキスをした。
「◯÷✕△□+っ!!」
セルンの顔は見る見る真っ赤に染まっていく。
そしてぶちギレた状態でありながらも・・・
「わ、わかったわよっ!や、やるわよっ!や、やればっ!いいんでしょっ!」
そう言い残して姿を消して行った。
「・・・やりすぎた・・・かな?」
そうつぶやくと、悠斗は屋敷に戻った。
戻ってきた悠斗を探していた連中が居た。
「ゼノの旦那ぁぁっ!ユウト様が居ましたよっ!」
そう言って悠斗に駆け寄ってきたのは、ルドルフだった。
「ユ、ユウト様ーっ!さ、探しましたぜ」
息を切らせながら探していた事を告げると、後方からゼノが駆け寄ってきた。
「な、なんだ?何かあったのか?」
ゼノもまた息を切らして両手を膝に着けていた。
「はぁ、はぁ、ユウト様にお願いがあって探しておりましたっ!」
「お願い?」
「はい、私もユウト様の配下にお加え下さいっ!」
ゼノの突然の申し出に少し躊躇していると・・・
「ユウト様っ!あっしも参加させてくださいっ!必ずお役に立ってご覧に入れますっ!」
悠斗は少し二人の様子を見ながら考える。
「それは俺が使徒だからか?」
悠斗は自分の人望ではなく、神の使徒だから・・・そう思っていた。
だが、この二人も違っていた。
「いえ、私は貴方の人柄に惹かれましたっ!私の命を預けるのは
世界広しと言えど、貴方しかおりませんっ!どうか配下にっ!」
「あっしも同じでさぁ~・・・お願い致しますっ!」
そう言って二人は悠斗の前で跪くと、剣を抜き悠斗の前に差し出した。
(・・・あはは、正直嬉しすぎて・・・なんて言っていいかわかんないや)
その様子を少し離れた場所から見ていたイリア達とサウザー達・・・
「私も自由に動けるモノなら・・・」
サウザーは悔しそうに・・・そして、羨ましそうにしていた。
そしてアンナと子供達もまた同様だったようだ。
「二人共・・・わかったよ、俺に力を貸してくれ」
悠斗の言葉に涙を流す二人は力が湧き出るのを感じた。
そして悠斗に立つように言われ立ち上がると・・・
「二人にはやってもらいたい事があるんだ」
そう言って、三人でコソコソ話をするのだった。
そして話が終わると、頷き駆け出して行った。
悠斗はサウザーの元へ移動すると、テーブルを出してイスに座った。
それを目の前でみていたサウザーが苦笑しながら話しかけてきた。
「ユウト様・・・そのご様子だともう?」
「ああ・・・なんとかなるんじゃないかな?」
「ああ~・・・それと屋敷の敷地の地図ってありますか?」
「はい、ご用意しております」
「さっすがっ♪」
悠斗はアシュリナ邸の敷地地図を受け取ると、
コーヒーカップにお湯を注ぎながら微笑んでいた。
そしてサウザー達もまた、コーヒーを悠斗に頼んでいたのだった。
そしてその頃ベルフリード公爵陣は・・・
「いかがでしたか・・・使徒とやらは?」
そう切り出してきたのは、グラフィス・ベルフリードの長男、
聖騎士でもある、剣聖ナイアド・ベルフリードだった。
「はっはっはっ・・・大した事のないただの子供だった」
ナイアドは父の話に頷くと・・・
「殺してしまっても問題ありませんか?」
「フッ・・・あんな小僧の未来なんて、死しかあるまい?」
グラフィスの顔におぞましい程の笑みが浮かんでいた。
「それで父上・・・始末した後は?」
「当然アシュリナを滅ぼし我らが手中に収めるまでだ。
アシュリナの者達は皆殺しにせよ」
冷淡な口調で皆殺しと宣言したグラフィスは一抹の不安があったのだが、
顔には出さず気を張っていた。
(・・・儂が何を不安がっておるのだ?あの小僧が・・・もしや、
儂の見立て違いであったならば・・・いいや、断じてそれはないっ!)
グラフィスは自分に言い聞かせるよう自問自答して行った。
その時、テントの周りがざわめき出した。
ナイアドは外に出て状況を確かめる。
「何事かっ!誰か説明せよっ!」
その言葉に人垣が分かれると組み伏せられた者が二人居た。
それは・・・
「お前達は誰だ?・・・い、いや・・・待てっ!
お前は確か・・・没落した貴族の・・・ゼノ・アルバだったか? 」
「はっ!お、恐れながら、私も参加させて頂きたく参上致しましたっ!」
土下座をして懇願するゼノに、ナイアドは鼻で笑っていた。
「貴様もさぞや今まで苦渋を舐めてきたのであろうな?」
「はっ!その通りで御座いますっ!」
「その復讐心・・・私が高く買おうではないか・・・で、その者は?」
ナイアドは視線をルドルフに移す。
「はっ!私はゼノ様にお使えしている者で御座います。
主人同様私も参戦したく参上致しましたっ!」
ナイアドは「ニヤリ」と笑うと、二人を門番の対処をさせるため
二人を使う事にした。
そしてゼノとルドルフは、門番の近くへ移動した時・・・
「これでいいんですよね?」
ルドルフは「ニヤ」気顔でゼノに小声で話しかけた。
「ああ・・・これで問題なしだ。ユウト様のお役に立てるな」
二人は悠斗の為に心から燃えているのだった。
そして残り時間が少なくなると、ゼノ達よりも正門傍にいた騎士が
動き始めた時だった。
「おいっ!そこのお前っ! 」と、ゼノはその男を止めた。
「な、何だお前はっ!」
「予定が変わったそうだ・・・今、他の者が裏門より出て行った。
俺とコイツはそれをグラフィス様に伝えるよう言われたのだ」
グラフィスからの伝令とあれば信用しない訳にも行かず、
その伝令二人は頷くと、その場に留まった。
(よしっ!任務達成ですぜっ!)
(あとは頼みます・・・ユウト様)
そして再び悠斗達は・・・
「サウザーさん、あとどれくらいですか?」
サウザーは時計を見ると・・・
「残り10分ちょいと言ったところですかね?」
悠斗は薄く笑うと椅子から立ち上がり・・・
「やりますか」と、つぶやいた。
するとサウザーの指揮の元、近衛兵と騎士団は一斉に動き始め、
イリア達も所定の位置についた。
悠斗は隠蔽で姿を消すと、壁の外側へ瞬間移動した。
「コオォォォォォっ!」
悠斗の呼吸音が変わり・・・
「気道・魔導気・・・合一っ!」
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「阿修羅モードっ!・・・からのぉぉっ!零 -ZERO-」
悠斗は阿修羅モードになり、赤銅色に染まった。、
すぐさま土魔法で屋敷裏側周辺に10m近くの壁を張り巡らせた。
壁を張り巡らせた理由は、後方からの増援だった。
ならば・・・と、壁を張り巡らせそれに備えた。
「よしっと・・・後は正門側の数カ所だけだな」
悠斗は瞬間移動を使い正門側の数カ所を赤銅色の壁で塞いだ。
すると敷地内に居る敵は慌ただしく騒ぎ始め統率はもはや意味をなさなかった。
「よしっ!ちゃんと赤銅色だな」
赤銅色化した壁を鑑定を使い確認すると阿修羅モードを解き、
瞬間移動でナイアドの目の前に現れた。
「なっ!・・・」っと、ナイアドは驚き尻もちを着く。
そしてグラフィスもまた・・・唖然としていた。
「よっ!お待たせっと・・・」
突然現れた壁と、悠斗に敵陣営は固まってしまった。
するとサウザーの声が魔法により拡声され聞こえる。
ナイアドは苦虫を潰した顔になりながらも魔剣を抜き構えた。
悠斗は「ニヤリ」と笑うと、シルバーのロッドを腰から引き抜き伸ばすと構えた。
「これより決闘を開始する・・・始めっ!」
サウザーの拡声された声により決闘が始まる。
ナイアドは魔剣ブラッシュを大きく構え前に出た。
「フッフッフッ・・・ハッハッハッ!
貴様のようなゴミがこの魔剣に勝てるとでも思っているのかっ!」
ナイアドは何度も斬りかかるが悠斗にはかすりもしない。
(あれ?こいつって剣聖だよな?)
「貴様・・・逃げ足だけは得意なようだな?」
「またテンプレかよ・・・つまらないな」
悠斗は斬りかかってくる魔剣をロッドで弾くと、ナイアドを蹴り飛ばした。
「ぐはっ」
蹴り飛ばされたナイアドは怒りに震え・・・
「この魔剣がそんな棒如きに受け止められるとはっ!
貴様っ!この魔剣は剣神・アマルテア様より下賜された剣なのだぞっ!」
そう叫びながらナイアドは悠斗に斬りかかるが難なくかわされてしまう。
「お前・・・剣聖なんだろ?ちゃんと戦えよ?」
悠斗の言葉にキレたナイアドは魔剣に魔力を流し込むと・・・
「ファッハッハッハッ!!これで貴様も終わりだっ!
死ねっ!偽物野郎っ!ブラッシュ・スラッシュっ!」
魔剣から放たれた魔力の斬撃が悠斗を襲う。
「身体強化Lv.5」悠斗は身体能力を上げると、
ナイアドの魔力の刃をシルバーロッドで迎え討った。
「バリンっ!」と、鈍い音がすると跡形もなく消え去った。
「ば、ばかな・・・な、何故だ・・・」
狼狽えるナイアドを見ていたグラフィスが声を挙げる。
「愚か者っ!何を狼狽えておるっ!そのようなザコに負けるはず無いだろ!
お前は剣聖なんだぞっ!」
グラフィスの声によりナイアドは冷静さを取り戻した。
「・・・わ、私とした事が・・・貴様よくも・・・」
そうつぶやくと全身に魔力を纏い出した。
「・・・それが本気って事でいいんだな?」
悠斗はロッドを肩に担ぐと威圧を放ちながら聞いた。
「ぐぁっ・・・ばっ馬鹿なっ!うおぉぉぉぉっ!」
更に魔力を増やし纏うと突っ込んできた。
「死ねぇぇぇぇぇっ!」
剣の切っ先を真っ直ぐ向け突っ込んできた。
(こいつは・・・馬鹿なのか?)
悠斗はロッドを構えると魔力をロッドに流し強化する。
魔剣の切っ先が悠斗に迫ると・・・
悠斗は身を低くし、ロッドを弓を引くように後方で絞ると、全身のバネを利用し、
ロッドを突き出すと同時に回転を加える。
そして魔剣の切っ先とロッドの先端が衝突すると、
激しい金属音と共に、魔剣が砕け螺旋を伴ったロッドの先端はナイアドの腹部を貫く。
「白鷲・棒術・螺旋撃」
「ぐはっ・・・こ、こん・・・な・・・こと・・・ってわ、私のま、魔剣が・・・」
「お前・・・それで本当に剣聖なのか?魔剣の力に頼りすぎだったみたいだね?」
ナイアドは口から血を吐き出し倒れる瞬間に悠斗はロッドを引き抜いた。
嫌な感触と共に、ナイアドの腹部からも血が吹き出す。
悠斗は血の付着したロッドの先端を、そのまま驚愕しているグラフィスに向けた。
「次は・・・お前だ」
動けなくなった敵陣営に悠斗の静かな声が広がっていく。
ラウル ・・・ いよいよ決闘だね~♪
ミスティ ・・・ 相手の方は身の程を知ってもらいましょう♪
ラウル ・・・ あははは。君も言うね~w
ミスティ ・・・ わざわざ悠斗さんが相手をするのですよ?
ラウル ・・・ あの貴族はきっと地獄を見るね?
ミスティ ・・・ ふふふ♪
ってなことで、緋色火花でした。




