74話 修練と副産物
お疲れ様です。
今回は74話ですね。
イリアの特訓など色々とありますw
相変わらず展開が遅いですが、これからも宜しくお願いします^^
それでは、74話をお楽しみ下さい。
そして次の日・・・
「トントン」と、悠斗の部屋を誰かが叩く。
「失礼致します」
そう言っていつもの如くリディが悠斗を起こしに来る。
「おはよう、リディさん」
「おはようございます。ユウト様」
いつも通りに挨拶を交わすと悠斗はバルコニーに出て背伸びをする。
すると兵舎の方でルドルフが大きく手を振って挨拶をしてくるので、
悠斗も手をあげてそれに応えた。
部屋の中に入るとまたリディさんが獲物を狙う目で悠斗を見てくるので
それを躱しながら服を着替えるという離れ業を習得した。
「ピピッ」「移動着地補正」と、言うスキル。
(そんなスキルいらないからっ!)
しかしこのスキル・・・実は侮れない・・・
どんな体制であろうと、着地すれば必ずベストな状態で次の行動に移れるという
実はとんでもスキルだった。
そして此処数日の恒例行事を終えた悠斗とリディは
階段を降り、食堂へ向かいみんなと挨拶を交わした後、食事を取った。
「ユウト様・・・今日のご予定は?」
「あ、あの~サウザーさん?そろそろ「様」付けは勘弁してください」
「どうしてでしょうか?」
「いやいや、ここは貴方の屋敷で貴方が当主ですよ?」
「ええ・・・分かっていますが、それが何か?」
悠斗は一度目を閉じ気分を落ち着けた。
「此処の当主たる者がですね?俺に対してそんな態度だと、
部下は勿論、雇っている方々も戸惑いますよ?って話をしているのですが?」
サウザーは悠斗の話を聞くと「ポカーン」と、していた。
そして軽く笑うと・・・
「ははは、何を言っているのですか?
此処はアシュリナ家の屋敷なのは当然ですが、
それとは別に・・・イルミネイトの本部でもあるではないですかっ!
はっはっはっ!嫌だなぁ~ ユウト様ってばもうっ」
サウザーの発言に悠斗は持っていたカップは口元で止め、
周りを見渡すと・・・
メイドや執事、近衛騎士達も黙って頷いていたのだった。
(え?な、何コレ?い、いつの間にこんな事に?)
そう考えていると、ロジーからの視線を感じ顔を向けると・・・
「ニヤリ」・・・と、微笑まれた。
食事を終え紅茶を飲みワイワイ騒がしく過ごすと、
悠斗は外に出て噴水のある中庭にいた。
ベンチに座りのんびりしていると、背後に気配があったので・・・
「リディさん、今日はやる事なかったですよね?」
悠斗はいつもの如く背後に立っているのはリディだと思い込んでいた。
そして振り返ると・・・ロジーの母、アンナがそこに居た。
「うわっ!ア、アンナさん?!」
「はい♪どうされましたか?」
「い、いえ・・・背後に立つのはいつもリディさんだったもので・・・」
思わぬ相手に悠斗は緊張していた。
「ふふ♪ユウト様には本当に何から何まで・・・」
「あははは・・・ふぅ~・・・これも平凡な生活をする為ですよ~
だから気にしないでもらえると助かります♪」
悠斗はアンナに微笑んで見せた。
「それにしても・・・何でしたっけ?イルミネイトでしたっけ?
勝手にそんな組織作って・・・何かすみませんね?
こんな騒がしい事になってしまって?」
悠斗は「ブツブツ」言いながらアンナにお詫びをした。
「ふふ♪ユウト様?私もそのイルミネイトの一員なんですよ?」
その瞬間悠斗は頭の中が真っ白になってしまった。
(えっ?な、何?アンナさんまで?)
悠斗は苦笑いすると話を無理矢理変えた。
「そう言えばアンナさん?」
「はい、何でしょうか?」
「ロジーから聞いたのですが、アンナさんはSクラスの冒険者だったと?」
「・・・そ、そうですね。ええ、そんな時期も御座いましたわね?ほほほ♪
(ほほほ・・・?)
アンナが聞かれたくなかった事なのか、笑顔がかなり引きつっていた。
「あははは・・・え、えっと・・・アンナさん?だ、大丈夫ですか?」
悠斗は立ち上がりアンナの方へ振り返る・・・
一瞬殺気が広がるとアンナの拳が悠斗の顔面目掛け襲ってきた。
悠斗はとっさにアンナの拳を掴み「ニヤリ」と、笑って見せると、
「ふふ♪」っとだけ笑って屋敷の中へ戻って行った。
そして悠斗はアンナが屋敷の中に入るのを確認すると・・・
(痛ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!ま、まじかっ!!
手が一瞬失くなったかと思ったぁぁぁっ! まじ痛ってぇぇぇっ!!)
悠斗は左手を「ブンブン」振りながら悶絶していた。
そして手を噴水の水につけていると、イリアが悠斗を呼ぶ声がした。
「ユウトォォォっ!あっ・・・居た居た~♪」
噴水の傍まで駆けて来たイリアは悠斗の腕を掴むと・・・
「ねぇ、ユウト?私の訓練に付き合ってくれない?」
「訓練って?」
「あの青い炎の訓練よ♪」
イリアは上目遣いで悠斗を誘ってきた。
(・・・胸が当たっているんですけど・・・まじ幸せです)
簡単にイリアの誘惑に負け、訓練に付き合う事になってしまった。
イリアと二人で屋敷の敷地内を歩いて行くと、
近衛騎士が使う修練場に着いた。
「此処って勝手に使っていいのか?」
「ええ、サウザーさんに許可は取ってるわよ?」
見回すととても整備された修練場で刀剣など管理する倉庫などもあった。
「で・・・どんな練習をするんだ?」
「青い炎はある程度使えるようになったんだけどね?
出力が弱いって言うか・・・物足りない?って感じなのよね?」
「ふむ・・・じゃ~まず何か初歩的な火球を青い炎バージョンでやってみてよ?」
「わかったわ♪」
悠斗は近衛騎士に迷惑がかからないように、
土魔法で人形のターゲットを作り、それを狙うよう指示した。
イリアは深く自分の中に潜っていく。
もう一度、自分の中に眠っている青い炎を確かめるようにゆっくりと・・・。
そしてイリアは青い炎の眠る場所に辿り着きその炎に触れる。
その瞬間体中から青い魔力が吹き出した。
(・・・すげー魔力量だな?まだ出るのか?)
悠斗はイリアから放出される青い魔力に見惚れていた。
イリアはターゲットを確認すると・・・
「青き炎よっ!」
そう言葉を発すると、イリアの掌に青い炎が出現した。
「はぁぁぁぁっ!」
右手をターゲットに狙いを定めると「いけっ!!」
イリアの気合と共に青い炎はターゲットに命中する。
修練場に爆発音が響くも、威力は大した事なかった。
それを見たイリアは、「ね?」っと悲し気な顔を悠斗に見せていた。
その威力を見た悠斗の顔は真剣な眼差しに変わっていた。
「ユウト?」
「イリア・・・もう一度だ」
そう短く言うと、イリアは黙って頷き青い火球を連発していった。
(・・・魔力制御はミスティ達の特訓を受けて、格段にレベルアップしている。
だけど何だ?違和感が・・・あるな?)
悠斗は考え込むが違和感があるだけで答えが出なかった。
そして何度かやり方を変え、挑戦させていく。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・」
100発近く撃ったところでイリアの体力が切れ膝を着いた。
悠斗は手をかざしヒールを使用すると・・・。
「イリア・・・ちょっと今度は深く潜ってみてもらえるか?」
悠斗は簡単に「もっと深く」と言うのだが、これは実に大変な事なのだ。
集中して自分の中に潜るのは、並大抵の努力では潜れない。
深く潜るほど、体力と精神力がすり減っていく。
(イリアの青い炎って・・・俺のゲートと同じモノじゃないのか?)
悠斗のゲートと言うのは、悠斗の鍵となる言葉を発し、
深く奥底に眠る力・・・言わば「生命エネルギー」を糧とし発現させるモノだったのだ。
鍵となる言葉を使用する事によって、
深く潜らず、ダイレクトに繋げる・・・そういう代物。
だから鍵を使って使用すれば、それだけ自分の体力や精神力が奪われる。
また長時間使用すると、それだけ反動も大きいと言う事だった。
自分の生命エネルギーを対価に力を得る。等価交換なのである。
イリアは深く・・・もっと深く潜っていく。
イリアの額からは大粒の汗が流れ出ていた。
(もっと・・・もっと・・・もっと深く・・・集中して・・・)
イリア本人はまだ自覚出来ていないが、既に体力は限界が来ており
膝が「ガクガク」揺れていた。
(・・・これはキーとなる言葉を作ったほうがいいかもな?)
悠斗がそう思っていると、イリアが自分の中に何かを見つけた・・・
(何これ?・・・まるで嵐だわ・・・まだこんなに私の中に・・・)
イリアがそう思った瞬間、全てが限界を迎え、膝から崩れ落ちてしまった。
咄嗟に悠斗はイリアを抱き止める。
「はっはっはっ・・・ご苦労さん」
イリアは苦悶の表情を浮かべながらも、
確かに自分の中に何かがあった事を見つけた。
「有難うユウト・・・何かが掴めそうよ?」
「だろうな?イリア・・・今、いい顔してるからさ♪」
悠斗は限界を迎えたイリアをお姫様抱っこしつつ、
備え付けられたベンチまで移動すると、イリアをベンチに寝かせた。
「ユウト・・・私・・・何かを見つけたわ」
「ああ、そうみたいだな?」
「ええ、確かにそれに触れたわ♪」
そう言うとイリアは力尽き、そのまま眠ってしまった。
悠斗はイリアのそんな満ち足りた笑顔に触発され、
己自身も修練を始めた。
修練場の中央に行き、被害が出ないように土魔法で頑丈な壁を
10m程離れた場所に自分を囲うよう展開すると・・・
「コオォォォォ!」
悠斗の呼吸音が変わると・・・
「気道・魔導気・・・合一っ!!」
両手を胸の前で合掌するように合わせ、体中に循環させていく。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
悠斗の体から赤銅色の気が溢れ肌の色も変わり、眼球も爬虫類のような目になる。
「阿修羅モードっ!」
変異が完了した瞬間、土魔法で頑丈に作られた壁に亀裂が走った。
(・・・ぐっ!ここから・・・)
「はぁぁぁぁぁぁっ!はあぁぁっ!!」
「阿修羅モード・・・零 -ZERO-」
その一瞬、悠斗は膝から崩れ落ちかけたが、なんとか堪えた。
(やっぱ零 -ZERO-を使わないと制御出来ないな・・・)
悠斗はそのまま再び土魔法を使用し、壁を生成したのだが・・・
(あれ?壁が赤銅色になってるんだけど?)
今、阿修羅化した悠斗の周りの壁は、赤銅色へと変化していたのだった。
そして壁に向かって鑑定をしようとすると・・・
(はい?普通の壁の130倍の硬さって・・・何?)
そう思った悠斗は、阿修羅モードをやめた。
そして赤銅色の壁に近づくと・・・
「はぁぁぁぁぁっ!」
っと、思いっきり殴ってみたが・・・「グシャッ!」と、音を立てて砕けたのは
悠斗の拳の方だった。
悠斗は悲鳴をあげるのを堪えヒールで全快させると、
もう一度壁を触り感触を確かめた。
「・・・130倍って・・・まじか?」
そうつぶやいていると、屋敷中から修練場に人が集まってきた。
「ユウト様ーっ!そこに居られるのか?」
サウザーの声が聞こえてくるとその声に応えた。
「一体何が起こっているのですか?」
「ちょっ、ちょっと待ってくださいね?」
悠斗はサウザーにそう言うと、壁を昇り外側に出た。
近衛騎士達も悠斗の傍に集まってくる。
近衛騎士を見た悠斗は・・・
「すみません・・・どなたか、この壁を壊して見てもらえますか?」
そう近衛騎士に聞くと一人が手を挙げた。
手を挙げたのは、近衛騎士の副長を務めるラドールだった。
ラドールは屈強な大男で武器は重厚な大戦斧を使う騎士である。
「私が砕いて見せましょう」
ラドールは大戦斧を構え振りかぶると・・・
「キェェェェェっ!」と、金切り声を挙げ大戦斧を振り下ろした。
「キイィィィィンっ!」と、いう金属独特の音が敷地内に響き渡るのだか、
赤銅色の壁は傷一つついておらず・・・
それどころか、大戦斧の刃が砕けてしまっていた。
ラドールも両手が痺れ動けなくなっていた。
「ば、馬鹿なっ!た、たかが土の壁如きにっ!」
「ユウト様・・・これは一体?」
「んー・・・。これは俺の特殊な力を使って、魔法を使用したら、
何故かこうなったんですよね?
実はコレ・・・俺も初めての体験なんですよ・・・」
「ユウト様も気付かない御力がまだあると言う事ですか?」
「いや、気付かないと言うか・・・
俺はもう人間辞めてしまった感があるからね~」
平坦な口調でそう話す悠斗を全員が見ていた。
「その御力を私達にも見せて頂きたいのですが?」
サウザーは好奇心から目を輝かせ悠斗を見ていたのだが・・・
「すみません、ラウルからあまり使うなと言われているのですから・・・
それに、変異した姿を見られるのはちょっと抵抗があるって言うか・・・」
それを聞いたロジー以外は全員落胆していた。
そんな話をしていた時に、セルカと白斗が戻ってきた。
「ユウト様~♪ただいまなのにゃ♪にゃ?一体何事なのかにゃ?」
「主・・・どないしたんでっか?」
セルカと白斗はお互いに連携を取る戦い方を、
森の探索をしながら練習していたのだった。
セルカと白斗に事の次第を説明した。
「・・・阿修羅だったかにゃ?あの状態で魔法を使うと、
こんな事ににゃるのかにゃ?」
「うん・・・何故かこうなりました」
「主・・・これで城壁作ったらすごいもん出来るんとちゃいます?」
白斗の言葉にアシュリナ家の面々がざわめく。
「いやいや・・・この色で城壁って・・・おかしくね?」
「まぁ~確かに、こんな色の壁なんて作った日には、
あの領主ヤバイんとちゃいますかぁ~?って噂は出ると思いますわ」
そして再び白斗の言葉でがっくりと項垂れる面々が居た。
「しかしまぁ~主もとんだ副産物を産みはりましたなぁ~?」
「副産物ねぇ~・・・まぁ、確かに戦闘では使えそうだよな~」
全員が何かに使えないか考えては見たものの、
何も浮かばなかったので、この件は保留となった。
そして全員が仕事に戻ると・・・
「あっ、そうだ・・・これで白斗の犬小屋でも作ろうか?
すっげーお洒落なのが出来ると思うんだけど?」
悠斗の言葉に目を輝かせた白斗は・・・
「ほ、ほんまかいな~?それはごっつう嬉しいわ~♪
ワシもこれでお洒落な一戸建てが・・・・って、なんでやねんっ!」
と、ノリツッコミで今日も陽が暮れていくのだった。
ラウル ・・・ 今回はイリア君の特訓が少しあるね~
ミスティ ・・・ イリアさんも頑張ってますわね♪
ラウル ・・・ 君から見てイリア君はどうなんだい?
ミスティ ・・・ そうですわね~・・・まだ眠っている力が多々ありますわね?
ラウル ・・・ 多々って・・・そんなに彼女はすごいのかい?
ミスティ ・・・ 素養はかなりのモノだと思いますわ♪
ラウル ・・・ へぇ~♪では僕も彼女は注目しておこうかなっと。
ってなことで、緋色火花でした。




