70話 別れと追跡
お疲れ様です。
今回は70話です。
グレイン達は別れてこれからどうなるのか?
ってところなんですけどね~^^;
トラブルには事欠きません><
それでは、70話をお楽しみ下さい。
アシュリナ家に着いて朝を迎え朝食を取る。
悠斗のせいで朝食が遅れた訳なんだが・・・。
その事に対して、悠斗は「俺のせいじゃないのに・・・」
そう言いながら朝食を食べていた。
そんな時、サウザーから声が掛かる。
「ユウト様・・・コホン! ユウト君・・・そ、その~後でわ、私の・・・」
何故かサウザーは緊張しまくっていた。
その理由はロジーが昨夜散々家族の前で、悠斗の武勇伝を聞かせたからだった。
しかも、何故かミュージカル調だったのかは、誰も知らない。
そして今回の一連の騒ぎである。
悠斗は少ない手がかりで真相を暴き、敵の裏を読み対処して見せた他、
誰一人殺さずに全てを収めた。
そしてロジーが知る限り、あの魔方陣の解呪が出来る唯一の存在。
その話を朝まで聞かされる事になったサウザーとアンナは、
目の下に隈が出来るほど疲れていた。
気を取り直し、サウザーは悠斗に願い出る。
「ユウト君、この後私と一緒に来てもらえないだろうか?」
ユウトは食後の紅茶を飲みカップを置いた。
「わかりました。しかし・・・俺だけですか?」
「いや、勿論みんなも一緒で構わないのだが・・・何かあるのかね?」
この時一度、悠斗はこちらを見る視線に気付いたのだが
とりあえず放置する事にした。
しかし何もしない訳ではなく・・・
(白斗・・・気付いているか?)
(勿論気付いてまっせっ!監視役とちゃいますか?)
(監視役ね~・・・)
(なんや主・・・歯切れが悪いでんな?)
(ん~・・・まだ確証はないんだけどさ・・・例の組織、グローリーじゃない感じだな)
(えぇぇぇっ!また新たな組織とか結社とか止めて欲しいわ~っ!)
(あと考えられるとしたら・・・もう一つあるよね?)
(主それが何かわかってますのんかいな?)
(また後で話すよ)
確証もないのに話すと混乱を招く事になるので、
悠斗はまだ黙っておく事にした。
悠斗が白斗と会話し、考え込んでいた頃・・・
サウザーは悠斗の様子がおかしくなった事に気付く。
「ユウト君?だ、大丈夫か・・・ね?」
そう言おうとした時、イリアとグレインが止めた。
「サウザー様、今は何を話しかけても駄目だと思いますよ?」
「ああ、これはこいつの癖・・・なんだろうな?
こうなったら、戻って来るまでほっとくしかねぇーのさ」
「ふむ・・・、そういうモノなのか?」
椅子の背もたれに体重を預けている悠斗の姿を見ていると、
ロジーのフォローが入った。
「ユウト様は私達の事を常に考えて下さっています。
前にも一度申しておりました。
リスクは侵せないと・・・しかし実際お取りになった行動は、
私達の安全を考慮された、とても素晴らしい内容でしたわ」
とても尊敬の念を父親であるサウザーにも伝わる説明だった。
(ふっ、この娘も年頃って事なのだな・・・お父さんは寂しいぞっ!)
顔には出さず娘を微笑ましく見ているかのように思えるのだが、
実際は違う・・・。
ロジーを何処へも嫁がせたくなくて、20歳まで手元に置いていたのだ。
その事は・・・妻であるアンナだけが知るところだった。
だから先程からサウザーを見て「クスクス♪」笑っていたのだ。
それから暫くすると・・・
悠斗が思考の海から還ってきた。
「ふぅ~」
無意識にカップに手を伸ばし口元に持っていくと・・・
「・・・・すみません、紅茶頂けますか?」
傍に控えていたリディが紅茶を注ぐ。
「ユウトおかえり♪」っと、イリアが声を掛けてくる。
「ただいま・・・?」
悠斗の反応に全員が笑い始めた。
悠斗は頭を掻きながら紅茶を飲み息を軽く吐くと・・・
「じゃ~サウザーさん、行きましょうか?」
(さてっと・・・どう動く・・・かな?)
「あ、ああ、はい」
悠斗のマイペースさに戸惑うもみんなの様子は「ニヤニヤ」と笑っていた。
(なるほど・・・これが昨夜娘の言っていた、天然という種族なのか。
しかし、そういう種族がいたとはな・・・世界は広いな)
ロジーの説明は少し偏っていたため、サウザーは「天然」と言う
絶滅したとされる種族が居るのだと、盛大に勘違いしていたのだった。
そして場所を移動して此処は応接室。
改めて今回のロジーの事件について話していた。
「なるほど・・・これだけ証拠が揃っていれば、ロックバルの連中も焦る訳だな?
それにその組織とやらなんだが?」
「えっとー・・・それについてはまだ分かっていませんので・・・」
イリアとセルカは悠斗に違和感を感じたが、
何か理由があるのだろうと思いスルーした。
(また隠し事してるのね?はぁ~、もう慣れたけど・・・)
(まだ話す段階ではにゃいって事にゃのかにゃ?)
しかし二人は心とはうらはらに顔は「ニヤ」けていた。
グレイン達は気付いたがこちらもまたスルーした。
サウザーは不思議そうな顔をするも娘であるロジーの表情もニヤけており
このまま話を続けるしかなかった。
すると・・・ドアを叩く音がした。
サウザーは返事をすると一人のメイドが入ってきた。
「旦那様・・・お手紙が届いております」
そう言ってサウザーに近づくと豪華な箱に入った手紙を取り出し渡した。
(あの手紙・・・にゃるほど♪)
「有難うステア、下がっていいぞ」
「はい、失礼致します」
軽く一例をしてメイドは出ていく。
サウザーは手紙の内容を確認する。
溜息を吐いた後、その手紙を握り締めた。
悠斗はサウザーの表情である程度検討がついていた。
「サウザーさん?その手紙ってロックバルの領主ですか?」
「あ、ああ・・・ガリウス・ロックバル子爵だ」
全員が話しの続きを聞きたがっているとわかったのか、サウザーが話始めた。
「まぁ~内容はわかりやすい挑発だな?
息子を侮辱した不敬罪と私を罵ってきたが、こちらには証拠がある。
だからそこはいいのだが・・・」
そこまで言ったサウザーの顔に汗が滲んでいた。
グレインがサウザーの様子が気になり声を掛けた。
「おいっ!サウザー何かあるんだよな?ならば俺に言えっ!
幼馴染のお前の力になるぞっ!」
グレインの発言に、団員達がグレインを見ていた。
すると・・・
「お、おいっ・・な、何だよ?」
「いや、団長って領主様と幼馴染だったの?」
ミレイの疑問は団員全員の疑問だった。
「あ、ああ・・・言わなかったか?」
「・・・聞いてねーよ・・・団長っ!」
ライト達は怒っていた。
「な、何でそんなに怒っているんだ?」
「団長・・・あんたユウトに散々隠し事について、色々と言ってなかったか?」
「そうよ・・・団長もユウトの事は言えないわね?」
ライトとミレイはユウトに謝れとまで言ってきた。
メンデルは紅茶を飲みながら静観していたのだが・・・
「グレイン・・・私とは長い付き合いなはず。
まだまだ隠し事がありそうですね~」
メンデルの物静かな瞳に、火が灯るのをグレインは見た。
この後、散々謝り倒したグレインをサウザーが見て笑っていたのだった。
少しサウザーも落ち着くと・・・
「話を戻すが、ガリウスには後ろ盾があってな?
その後ろ盾を巻き込んでくるらしいのだ・・・流石に私と言えど・・・」
深刻な表情をするサウザーに悠斗はにこやかに口を開いた。
「えっと~・・・その件と言うか、その後ろ盾については俺に任せてもらえるかな?」
サウザーは悠斗の突然の申し出に驚いていた。
「ユ、ユウト君・・・そ、それはどういう?」
「まぁ~今はちゃんとした事が言えなくて、不安にさせてしまうかもしれないけどさ、
なるべく早くなんとかするからさ♪」
サウザーは悠斗の言葉を信じる事が出来ず口ごもる。
「お父様・・・ユウト様を信じて下さい。
この御方は決して裏切る事は致しません。
それどころか・・・それ以上の成果を私達に見せてくれるはずです」
ロジーの言葉にサウザーは目を丸くさせ驚いていた。
(勝手にハードル上げちゃったよ~・・・あ~あ・・・どうしよ?)
(主、当然あの事と関係あるんやんな?)
(まぁ~それはある・・・と、言いたいところだけどね)
(なんや主?自信おまへんのか?)
(いや、そう言う事じゃなくてさ~。ロジーの期待が重いのですよ・・・ははは)
(シッシッシッ♪流石狂信者でんな~♪今後の展開に期待しとりますわ♪)
(変な事にならないといいな~・・・)
そしてその話は一旦保留と言う事で、次の話に移った。
その話とは、昨日保護されたアシュリナの民達の事だった。
保護された民達は今日の昼頃、
馬車に乗り込みこの屋敷の衛兵が護衛に付きアシュリナへ戻るそうだ。
「で?グレイン達はどうするんだ?」
「俺達はロイサム達と一緒に戻る事にするぜ」
だがこの時、ロジーとライトがアイコンタクトを取り、
広角を釣り上げていたのをユウト以外は知らなかったのだった。
(・・・何事も起きませんように)
そう神に祈る悠斗だったが・・・
「ピローン」と、久々のメールが来たので確認する。
件名 ・・・あの子ってさ・・・
(ん?あの子ってロジーの事か?)
悠斗は内容を確認する。
「あの子って僕の話を聞かないんだもんっ!
僕って偉いはずだよね?ね?ね?ね?
(ラウル・・・どんだけ自信ないんだよっ)
なのに・・・ミスティ達の言う事しか聞かないんだもぉぉぉんっ!」
そのメールを一緒に見ていた白斗は・・・「知らんがな」
そう冷たくつぶやいていた。
そんな二人を見ていたグレインが・・・
「お前ら・・・また何か企んでるのか?」
グレインが「ニヤニヤ」しながら聞いて来たが・・・
「あ~・・・ちょっとラウルの悩みを聞いてただけだけど?」
創造神の悩みって何だ?と、その場に居た全員が思っていた。
サウザーに至っては・・・
(そ、創造神様にも悩みがあるのか・・・
そのような事を相談されるユウト様とは一体・・・
ま、まさか・・・創造神様を超える存在なのではっ!)
娘と同じく勘違いが暴走していくサウザーもまた・・・
(私も信者になれないだろうか?)と、本気で考え始めていたのだった。
その時、ロジーの目が妖しく光ったのは言うまでもない。
そして別れの昼・・・
グレインは駄々を捏ねている真っ最中だった。
「なぁ~メンデルよ~・・・飯を食ってから帰ろうぜ~?」
「駄目ですよ・・・グレイン。
本当なら私達は昨日の夜には戻っているはずだったのですから・・・」
「しかし時間も時間だろ?」
「・・・グレイン駄目です」
そんな会話をしていたが、ミレイの魔法によって眠らされたグレインは、
ライト達の手によって、引きずられて馬車に乗り込むのだった。
見送りに着ていた悠斗達に別れを告げる。
「ユウトっ!数日のうちに街に来るんだろ?その時は俺達が案内してやるからよ」
「ああ、ライト頼むよ?頼りにしてるよ♪」
「イリアとセルカ~今度女だけで飲みに行きましょ!」
「ふふ♪楽しみにしてます♪」
「沢山食べるのにゃ~♪」
そしてメンデルはいつの間にか白斗と仲が良くなっており、
「今度防御魔法について教えてくださいね?聖獣様?」
「おうっ!任せときーなっメンデルはんっ!気を付けて帰るんやで?」
「はい」
等と、一通り別れを告げると「出発っ!」の合図と共に、
アシュリナへ戻って行った。
そしてその夜・・・
夕食を食べ終えた悠斗達はそれぞれサウザー達と親睦を深めていた。
サウザーは悠斗との話に熱中していたのだが・・・。
「ユウト君・・・いえ、ユウト様・・・
まだ私には話していない事があるのではないですか?」
小声で話してくるサウザーに紅茶を飲みながら小さく頷く。
「それは話せない理由があるのですね?」
そしてまた悠斗は小さく頷く。
「話せる時が来たら、話して頂けるのでしょうか?」
そう尋ねると悠斗はカップをソーサーに戻した。
「はい、それは勿論♪」
悠斗の笑顔に安堵したサウザーは周りにバレないように息を深く吐いた。
「私共としましては、いつまで居てもらっても構いませんが?」
「ははは、俺達もやる事があるので・・・
でも数日はやっかいになるかもしれません」
「数日・・・ですか?」
「はい、でも、此処を出発する時は、なんとかなっていると思います」
「はい、例の後ろ盾の事でしょうか?」
「はい」
そう言うと、イリア達に声をかけ部屋に戻って行った。
この部屋を出る時、サウザーは悠斗が笑っていたのを見逃さなかった。
サウザーの家族達も就寝の為に部屋へ戻る。
この時、ロジーを呼び止め二人で少しの間話すと部屋へ戻り就寝した。
悠斗達は、一度部屋へ戻ると、再び悠斗の部屋に集まり作戦会議を行った。
「主・・・今日動くんでっか?」
「そうだな、そろそろ動き出すはず・・・なんだよね?」
「私達は退路を塞げばいいのね?」
「ああ、でも多分状況は変わっていくはずだからね」
「その他ににゃにかご要望にゃんかはあるかにゃ?」
「要望か~・・・それじゃ~一つだけあるにはあるんだけどさ・・・」
セルカは悠斗の意図が読めず首を捻る。
「セルカ・・・あの折り紙の魔法って・・・俺にも使える?」
「にゃ?ユウト様があの魔法を使うのかにゃ?」
「えっと、あの魔法ってさ?ひょっとして追跡もできたりするんじゃないのか?」
悠斗の言葉に驚くセルカは・・・
「ど、どうしてわかったのかにゃ?」
「いや、普通にわかるじゃん?手紙が運べて視界や聴覚も共有できるんだろ?
それにセルカは暗殺者でもある訳だしさ、使えるんじゃね?ってさ♪」
その言葉にセルカは項垂れた。
「はぁ~・・・まさかバレるとは思っても見なかったのにゃ
確かにユウト様の言う通りなのにゃ?
でも難しいと思うのにゃ」
「あははは、そんなのわかってるって♪
俺も覚えていた方が都合良いだろうしさ?
もしなんだったら、みんなが使えるようになるといいかもな」
悠斗の提案にセルカは最初・・・「そんな馬鹿にゃ事は無理なのにゃ」と、
そう言っていたのだが、もし使えるのなら、今後連絡手段として
活躍の場が広がると思い、承諾したのだった。
しかし残念ながら、使用できたのは悠斗だけだった。
「わ、私には・・・くっ」
膝を折り地面に屈服するイリアはセンスのなさに落ち込んでいた。
「イリア、この魔法は元々適正の問題なのにゃ
だからそんなに落ち込む事はないのにゃ?ユウト様が変態なだけなのにゃ♪」
「ちょっっっと待ていっ!今、変な単語が組み込まれていたのだけど?」
「なんにゃ?変態の事なのかにゃ?」
「そうっ!それですっ!おかしな事を言わないようにっ!」
そんな会話で深夜を過ぎると・・・
「主・・・動きはりましたで?」
「わかった。白斗はイリアに付いていてくれ」
「らじゃー!燃える展開ですわぁぁぁっ!やったるでっ!」
「セルカは広く動けるようにしておいてくれ?
それと・・・万が一の時は、例の魔法で・・・」
「あの魔法は楽しみだにゃ♪」
「ねぇユウト?危険はあると思うの?」
「多分・・・あると思うから気をつけろよ?」
「了解!」
何者かが動き出した事により、悠斗達は素早く展開していく。
悠斗もまた、「ニヤリ」と笑みを浮かべると、暗闇の中へ消えて行った。
それを窓から見ていたロジーは・・・
「ユウト様・・・お気をつけて・・・」
窓辺に照らされた月夜の明かりに立つロジーは静かに待つのだった。
「・・・冷えるわね」
悠斗もまたそんなロジーを暗闇から見ていた。
「・・・勘がいいヤツだな」
「ニヤリ」と再び笑う悠斗の笑みには、確かな温もりが宿っていた。
ラウル ・・・ ん~・・・悠斗君はトラブルに愛されているね?
ミスティ ・・・ まぁ~それは原作者様のせいなのですけどね♪
ラウル ・・・ あははは。悠斗君は巻き込まれ体質っぽいからね~♪
ミスティ ・・・ これからどんな展開になるのか楽しみですわ♪
ラウル ・・・ 早く港町に行かないかな~♪
ミスティ ・・・ どうなりますやら~♪
ってなことで、緋色火花でした。




