68話 父と娘
お疲れ様です。
今回は68話ですね~。
馬車で急ぎ屋敷に戻ったロジー達は
領主であり、ロジーの父親でもあるサウザーに会う。
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これからも頑張りますので、宜しくお願いします。
それでは、68話をお楽しみ下さい。
悠斗達は敵の襲撃を撃退する間に、ライトが手綱を握る馬車を、
急ぎ屋敷へ向かわせるのだった。
そして・・・
馬車は速度を増し街道を突き進む。
ライトは大声でミレイを呼んだ。
「ミレイっ!魔法で明かりを頼むっ!この速度だっ!横転の可能性があるっ!」
御者台の窓からミレイが返事をすると、ライトの魔法が周りを照らす。
「助かった!このまま突き進むぜっ!はいやぁっ!」
ロジー達を乗せた馬車は更に速度を上げると街道を駆けて行った。
そしてその頃、悠斗達は・・・
黒装束の者達を倒し、拘束していくイリア達・・・
「グレインさん?一応拘束はしたけど・・・でもこれって?」
「ああ、そうだな?ユウト・・・だろうな?」
グレイン達が敵を殺すこと無くなぎ倒していく中、
突如額の魔方陣が消え、黒装束の者達が倒れていった。
「にゃ~・・・意外とあっけなかったのにゃ・・・」
「そうでんな~?もう少し手応えっちゅーもんがな~?」
「おい、犬・・・。お前はイリアの肩に乗っていただけなのにゃ?
何かを言う権利はないのにゃ」
「ひどっ!!いくら何でも言い方ってもんがありまっせ?」
「犬っ!どうして防御結界を張らなかったのにゃっ!」
「う、うるさいわいっ!そんなもん張る必要あらへんかったやんっ!」
セルカと白斗は言い争っていたが・・・
イリアは悠斗を探していた。
「ユウトォォォォ!終わったわよぉぉぉっ! ・・・一体何処へ行ったのよ・・・」
その頃丁度悠斗はセルンが消えた直後だった。
「・・・グローリーか。面倒臭い事になったな?」
悠斗は夜空を見上げ愚痴っていた。
そして・・・。
グレインやイリア達が悠斗を探していると・・・
「よっ!ただいま♪」
「うおっ!!」
突然目の前に現れた悠斗にグレインが腰を抜かした・・・
「お、お前・・・ど、何処から?」
悠斗を指さすグレインは悠斗に指を差しながら驚いていた。
声を聞いたイリア達も悠斗の元へ集まる。
「ユ、ユウト・・・一体何処へ行っていたのよ?」
「そうにゃ、結構探したのにゃっ!」
イリアとセルカが文句を言う中、白斗だけは黙っていた。
それは何故か?
悠斗はセルンとの会話を念話を通して、白斗にも聞かせていたのだった。
その為、その会話を聞く事を優先した白斗は結界を張らなかったのだった。
(なぁ~主・・・なんや色々と面倒な事になりましたなぁ~?)
(ふぅ~・・・だな?やれやれ・・・)
白斗と念話で話していると、復活したグレインが悠斗に詰め寄る。
「ユウトォォォっ!まだ説明してもらってねぇーぞぉぉっ!」
グレインの剣幕に悠斗は顔を引きつらせながら・・・
「わ、わかったから・・・な?ちょっ、ちょっと落ち着けよ?」
「お、落ち着けって・・・無理な話だろ?
い、いいいいきなりのお前が現れたんだぞ?}
悠斗は溜息を吐きながら、みんなに話した。
「えっとー・・・テレレーレッレレテッテー♪
悠斗はレベルが上がった。悠斗は瞬間移動を覚えたっ!」
「主・・・ノーブルでは通用しませんで?」
「・・・ですよね?」
イリア達は少し固まっていたが、悠斗の言動に慣れたせいか復活も早かった。
「な、なあ?ユウト・・・?」
グレインの声がいつもよりバリトンヴォイスだった。
「しゅ、瞬間移動って言ったか?」
「はい・・・い、言いましたけど?ハハハ・・・イ、イヤダナー・・・」
「ユウト?なんで片言なのよ?」
「そうにゃ・・・どうして黙っていたのにゃ?」
悠斗は三人に「ジリジリ」と追い詰められていく。
「ははは・・・べ、別に隠していたつもりはないんだけど?
だって・・・聞かれてないし・・・」
その言葉を聞いたイリアとセルカは、額を抑えると・・・
「ああ~・・・そういう人だったわ・・・」
「全くにゃ、そういう人なのにゃ」
イリア達の様子を見ていたグレインもまた呆れていた。
その頃、漸く屋敷に辿り着いたロジー達は・・・
「ロジーっ!着いたぞっ!馬車の準備を頼むっ!」
「わ、わかりましたっ!」
アシュリナの家紋が入った馬車は滑り込むように到着すると、
全員が指示通りに事を進めて行った。
アシュリナ家の門番にロジーが指示を出すと、急ぎ領主に伝えに行き、
そして、もう一人に馬車を数台出すよう指示を出す。
少しして屋敷の中からサウザーが慌てて駆け寄ってくると・・・
「ロジーっ!無事だったかっ!一体何故・・・」
サウザーが娘を心配して話しかけてくるのだが、ロジーはその話を止める。
「お父様っ!今は一刻を争うのですっ!
ですから今はっ!無駄に話している場合ではないのですっ!」
ロジーの毅然とした態度に、サウザーはただ頷く事しか出来なかった。
そのフォローをリディに任せると、ロジーは悠斗に与えられた仕事に戻った。
そして先程の門番の一人が馬車を更に二台用意すると・・・
「こ、これでは・・・足りません」
ロジーが思い悩んでいるとサウザーが声を掛けてきた。
「ロジー、こんな時は父に頼るのだ・・・」
サウザーは優しい言葉で焦る娘を諌めた。
「お、お父様・・・」
「ある程度の事はリディに聞いた。
お前の恩人の為だ、これはアシュリナ家の家名に賭けて私が引き継ごう」
そうサウザーが言い終わると、衛兵に指示をだす。
「よ、宜しいのですか?」
「勿論だっ!私は家名に誓うとまで言ったのだぞっ!すぐに用意するのだっ!」
「お、お父様・・・」
サウザーは優しく笑うと、サウザー自身も駆け出し屋敷の中へ入って行った。
門の外で待つライト達荒波の旅団は・・・
「・・・この馬はもう駄目だな。かなり無理をさせてしまった。すまん」
ライトは懸命に走らせた馬に対して、優しく撫でてやり、
メンデルもまた、桶に魔法で水を入れ飲ませ労をねぎらった。
そしてミレイは、馬車をチェックしていくと・・・
「これは駄目ね・・・車軸に亀裂が入っているわむしろよく持った方よ?」
チェックを一通り済ませ、門の中に入りロジーに駆け寄る。
「ロジー様、あの馬車はもう使い物になりません」
「それに、馬も・・・俺が無理をさせ過ぎた・・・すまねぇ」
謝るライト達にロジーは微笑むと・・・
「わかりました。有難う御座います。
此処からはアシュリナ家が家名を賭け引き継いでくれるそうです」
その時のロジーの顔は、苦悶に満ちていた。
(わ、私が仰せつかった仕事ですのに・・・)
ロジーが悔しさで拳を握る中、屋敷からサウザーが出てきた。
ライト達は膝を着くと礼を取る。
「荒波の旅団だね?」
「はっ!ロジーお嬢様をお連れ致しましたっ!」
「ふむ、ご苦労だったっ!」
サウザーは領主として発言するが・・・
「有難う。ロジーの父として、礼を言う・・・本当に有難う」
顔を上げたライト達は、父親らしいサウザーの優しい笑顔に
自然と顔を緩ませるのだった。
「い、いえ、この功績は荒波の旅団ではないのですっ!」
ライトはそう発言すると・・・
「今はそんな事をしている暇はないのだろ?」
「・・・サ、サウザー様・・・」
屋敷の庭の奥から、馬の嘶き(いななき)が聞こえる。
屋敷の敷地の奥から豪華な馬車が現れる。
「お、お父様っ!その馬車は・・・
王都へ登城する際に乗られる馬車ではありませんかっ!」
ロジーとリディも含め、全員が驚いていた。
「はっはっはっ!娘の命の恩人達だぞ?
これくらいの事をせねば、その恩に報いた事にならないだろ?」
豪快に笑い笑顔を見せる領主の心遣いに一同全員が頭を垂れる。
豪華な馬車が領主サウザーの前に来ると停車した。
御者が声を掛けると・・・
「君・・・下り給え。この馬車は私、サウザーが御者を務めるっ!」
サウザーの発言に全員が止めに入るも・・・
「これは私自ら行う事で私自身の意思を皆に示さなければならないのだっ!
私は誰一人として、民を見捨てたりしないという意思をな?
それが敵に対する、私の決意表明となるのだっ!」
サウザーの意思表明により、全員が感謝の拍手をする。
そして主体となる者達が集まり、馬車の振り分けを決めていく。
馬車は兵の遠征用に特注された11人乗りの馬車が2台と、
登城用の豪華な馬車が定員6名の馬車が一台の合計三台である。
ライト達冒険者はそれぞれ一台づつ乗り込み、万が一に備え、
それそれの馬車に2名づつ騎士が馬で並走する。
ロジーは父サウザーと一緒に御者台に乗ると・・・
「此れより、ユウト様の指示に従い、救出作戦に移行しますっ!
護衛各自は、担当馬車と並走し敵に備えよっ!以上、しゅっぱーーーつっ!」
ロジーの掛け声と共に馬車が教会跡を目指し出発した。
そして再び悠斗達は・・・
「で・・・瞬間移動ってのは?」
全員に追い詰められ、小さくなっていた悠斗は説明しはじめた。
「えっと・・・瞬間移動って言っても、長い距離は無理な訳でして・・・
あと~、一緒に移動出来るのは・・・多分二人まで?・・・だと、思います」
グレインは少し訝しげな顔を向けると・・・
「その、多分ってのはどういう事なんだ?」
「多分ってのは・・・やった事がないので・・・ははは」
今、悠斗と白斗以外は、瞬間移動が人数制限がなければ
とても楽なのにと思っていたところだった。
「ねぇユウト?此処からどれくらい移動できるの?」
「あー・・・このルートで言うと、教会跡までは飛べないけど・・・半分くらいかな?」
グレインとイリアは話し合うと・・・
「ねぇ、ユウト?教会跡に残してきた人達が心配なんだけど、
見てきてもらっていいかしら?」
「あ、ああ、最初からそのつもりだったから、問題ないけど?」
「じゃ~ユウトが戻るとしてだな・・・あとは誰を連れて行くんだ?」
グレインとイリアの中では、二人が戻る事に決定しているようだった。
「グレイン・・・まだ実験してないから危ないと思うんだけど?
「その実験ってのは俺が立候補するぜ♪」
「いやいや・・・なるべくなら体重が軽い人のほうがいいんだけど?」
「た、体重制限があるのか?!」
「・・・分かんない♪」
「・・・・・・て、てめぇ・・・本音は?」
「ふっ、それは勿論・・・柔らかい方がいいに決まってるだろうがぁぁぁっ!」
悠斗の心からの訴えに森の住人である鳥たちが一斉に飛び立つ。
「お前・・・正直過ぎやしねーか?」
「グレイン・・・いくら神の使徒であっても、悲しいかな・・・俺は男なんだっ!」
そう言い切る悠斗の姿に全員が呆れる。
「でも悪いんだが・・・俺の方がいいんじゃねーか?」
「でもな~・・・此処に捕獲している人達が12名だろ?
何かあった場合、力が強い男が居たほうがいいんじゃないのか?」
悠斗の言った事は勿論正論だったので、グレインは渋々残る事にした。
そして結局一緒に付いて行くのは、イリアだった。
白斗は連絡要員として、グレイン達と残る事になった。
そして悠斗とイリアは移動する前に・・・ぽつりと・・・
「さてっと・・・行こうかイリア・・・落としたらごめん」
「えっ?な、何?」
そしてグレイン達の前から姿を消すと・・・
「にゃぁ~?ユウト様・・・落としたらとか言ってにゃかった?」
「あ、ああ・・・い、言ってた気がするが・・・」
「・・・主が一人で行っても良かったんちゃいますのん?」
「「・・・・・・・」」
沈黙が流れる街道に、また風も少し冷たかった。
悠斗とイリアは、瞬間移動の限界距離で一度着地すると・・・
「ね、ねぇ?ユウト・・・ちょっと・・・気持ち悪いかも」
「あはは。最初は俺もそうだったから、気にする事ないよ?
此処で一度休憩でもする?」
悠斗の心遣いは嬉しかったが、間を開けるとつらくなりそうなので
そのまま続けて移動した。
悠斗達が教会跡に着くと、ロイサムが悠斗達に気付くと駆け寄ってきた。
「ユウト様、どうなりましたか?」
「ああ、大丈夫だよ?敵は排除したから安心してよ♪」
「ああ、で、でわ、我々は帰れるのですね?」
「勿論帰れるよ~今ロジー達が馬車を向かわせてくれているだろうからさ
そしたらそれに乗って一度サウザー様の屋敷に行ってからって事になるけどね?」
悠斗の言葉に安堵するアシュリナの民達は手を取り合い喜んでいた。
そんな時白斗から連絡があった。
(主~只今此方にロジーはんが到着したところですわ~)
(そかそか♪良かった♪後は宜しくな)
(らじゃーっ!)
白斗からの連絡を受け、その内容をみんなに話した。
それから暫くすると、馬車が到着した。
三台のうち一台は満員になったので、そのまま屋敷へと向かい
残り二台が教会跡に来た。
アシュリナの民達が嬉しそうに馬車へと乗り込んでいく。
その姿を見ていた悠斗に声が掛かる。
「君がユウト君かな?」
振り返るとゴールドの短髪をした渋めの貴族とロジーが立っていた。
「はい、悠斗は俺ですけど?」
悠斗とイリアは膝を着こうとすると、サウザーがそれを止める。
「ユウト君、それと君がイリア君かな?膝は着かなくていいよ?」
悠斗は微笑みながら「わかりました。サウザー様」そう言いながら立ち上がった。
悠斗とサウザーは握手を交わす頃、馬車への乗車が終わり、
残り数名と悠斗とイリアが豪華な馬車に乗った。
「ガタガタ」と、馬車が揺れる中、悠斗は睡魔に襲われ眠ってしまった。
イリアは眠ってしまった悠斗の頭を抱えると、静かに自分の足の上に頭を置いて
悠斗の髪に触れていた。
一緒に乗り合わせたロイサムは、悠斗を見つめるイリアの姿がとても美しく見えた。
そして御者台で手綱を握るサウザーと、横に座るロジーは・・・
「お父様、この度はご迷惑を掛けてしまい、申し訳ありませんでした」
娘の言葉に少し笑いそうになるサウザーだったが・・・
「これくらいの事、父として当然の事ではないか?
こちらも落ち度があったとは言え、お前にも迷惑を掛けてしまったな?
よく無事で帰ってきた。私はそれだけで満足なのだよ?」
手綱を操りながら笑顔を見せるサウザーにロジーは頭を下げた。
「なぁ、ロジー?ユウト君とは一体何者なのだ?」
「・・・・・・」
黙り込んでしまったロジーを見てサウザーは優しく言葉を続ける。
「彼に何もしないから大丈夫だぞ?彼は娘の恩人なのであろう?」
「はい。何度も命を救って頂きました」
「ふむ、此処では話せないと言う事・・・と、思っていいのだな?」
「はい。しかしながらお父様?」
「ん?」
「此処に居る者達全員が、ユウト様の事をご存知なのです」
サウザーはこの時のロジーの物言いに違和感を感じていた。
(此処に居る者達が彼の事を知っているとは・・・?
何か秘密にしなくてはならない事があると言う事なのか?)
「ふむ、そうか・・・私にはその話を聞かせてもらえるのだろうか?」
「・・・一度ユウト様と相談させて頂けませんと、私では判断できません」
「お前の様子から、彼は敵ではない事は充分に伝わっている。
だから彼の事はロジー・・・お前に任せる事にするぞ?」
ロジーは父親であるサウザーにより掛かると、
馬車の揺れに身を任せ、そのまま眠ってしまったのだった。
(・・・ユウト・・・様か・・・。話すのがとても楽しみだ」
サウザーは屋敷までの道のりが遠く感じるのであった。
ラウル ・・・ サウザー中々いい父親っぷりだったね~?
ミスティ ・・・ ふふふ♪出来る父親を持つとその子供達は大変ですわね♪
ラウル ・・・ と、言う事は何かい?君達も僕の下では大変と言う事なのかな?
ミスティ ・・・ 私は・・・「出来る」と、申し上げたはずですが?
ラウル ・・・ ふっふっふっ・・・はっはっはっ!それはまさに私の事ではないかっ!
ミスティ ・・・ 言葉がでませんわね。
ラウル ・・・ 立てっ!神達よっ! 僕の元へ集いこの世を照らすのだぁぁぁ!
ミスティ ・・・ その演説に集まる神達は・・・いなさそうですね♪
ラウル ・・・ ふぁっふぁっふぁっふぁっ!
ってなことで、緋色火花でした。




