閑話 日本 11 勝負の行方と白鷹の持ち主
お疲れ様です。
首をちょっと捻って痛いです><
それはさて置き・・・
今回は活動報告にも書きましたが、
閑話・日本ですね・・・。
色々と展開して行く訳なんですが・・・
それと遅れましたが、ブックマークや評価など
有難う御座いました。
これを糧にまた頑張りますので、応援宜しくお願いします。
それでは、閑話・日本・11をお楽しみ下さい。
「白鷲流抜刀術・免許皆伝っ!川崎 いちか・・・DEATH♪」
いちかは上機嫌で白鷹を鞘に収め白鞘袋に入れケースに直した。
「ねぇ~沙耶様?一応、刃潰しは持ってきてますけど・・・?」
「ああ、そうだな。あくまで試合だ・・・」
そう言うと、ケースから黒鞘の刀を取り出した。
沙耶は直樹を呼ぶと・・・
「お前は持って来たんだろうな?」
「は、はい・・・ですが・・・俺の方は・・・」
直樹が持ってきたのは、相棒の片鎌槍の「天津」だった。
「直樹は本身で構わんぞ?」
「もし・・・いちかさんを・・・」
直樹の問いにみんなが笑い出す。
「・・・な、何故笑うのでしょうか?」
直樹の言葉に沙耶は眉間にシワを寄せた。
「お前・・・勝てるとでも?」
「やってみないとわからないじゃないですかっ!
そ、それに、俺なら勝てますよっ!」
そう言い切る直樹だが、悔しさで体が震えている。
「ったく・・・直樹っ!てめぇーは確かに天才の部類に入るんだろうけどよ?
それでもてめぇーには、経験や賭け引き・・・全てが足りねぇーんだ。
今、偉そうな事を言ったが?
もし、お前が負けた時はどうすんだよ?
少なくとも、悠斗なら・・・そんな事は言わねぇーよ」
直樹は黙ったまま、天津を取り出し構えた。
そしていちかは納刀したまま構えている。
英二は壁にもたれると腕を組み、二人の戦いを見守った。
(俺はいちかの戦闘を一度も見てねぇー・・・だから未知数で判断は出来ねぇー
だか、直樹の実力なら俺も知っている。
普通なら、いちかに勝てる見込みはねぇーんだけど・・・
悠斗の弟子ねぇ~・・・あいつが弟子なんてな)
英二はいちかの動きに注目した。
「よしっ・・・では、始めっ!」
沙耶が言葉を発した瞬間、直樹といちかは距離を取った。
「コォォォォ」っと、直樹は呼吸音を返る。
「気道・一之書・操術」
直樹は操術・壱に入る準備段階の気を体に巡らせた。
いちかは納刀したまま顔を伏せて構えていた。
(あいつ・・・何やってんだ?)
英二は微動だにしないいちかに違和感を覚えた。
直樹はいちかの周りをじわりじわりと回りだす。
(いちか先輩の動きが全然読めない・・・重いな・・・)
動いている直樹に対して、いちかは動かず構えたままだった。
しかし直樹に掛かるプレッシャーは重く肩にのしかかっていた。
(誘ってるのか?でもこのままじゃ・・・)
直樹は背後に回ると、槍の特性を生かして突きを放つ。
(先輩避けないのか?!)
その突きがいちかに当たる寸前、
いちかは納刀したまま鞘の小尻で迫る槍の穂先を弾き上げた。
「なっ!」
直樹が一瞬意識がそれた時には、いちかは納刀したまま
直樹の喉元に鞘の小尻を当てていた・・・。
「なっ、ば、馬鹿な・・・」
後ろによろめく直樹を見たいちかは・・・
「・・・何?それ~?ちゃんとやってよっ!」
いちかは直樹のあまりの不甲斐なさに怒っていた。
一連の動きを見ていた英二は・・・
(うっ嘘だろ!?まるで悠斗じゃねぇーかよっ!
鞘の小尻で穂先をかち上げるなんて事・・・他に出来るヤツなんて・・・
しかも、いちかが?)
いちかは踵を返すと沙耶に願い出た。
「こんなのは勝負と言いません。もう一度お願いします」
いちかは深々と頭を下げると・・・
「直樹どうする?お前の意思で決めろ!」
直樹は「ギュッ」と、槍を握ると・・・
「もう一度、宜しくお願いします」
こちらもまた深々と頭を下げていた。
「わかった・・・」
再びいちかと直樹は構える。
「・・・先輩。今度は本気で行きます」
「・・・本気で来ても何も変わらないわ♪」
いちかの声はある種の空気を纏っていた。
(・・・先輩何だよ、この迫力は?)
そして対峙した二人に沙耶が合図を出す。
「始めっ!」
先程とは違い今度はいちかが抜刀し、正眼に構える。
英二はいちかの動きに注目する。
(構え方は正眼か・・・しかしこの構えは悠斗にそっくりだな?
あいつってば、その領域にいるのかよ?)
英二は誰よりも悠斗の事をわかっているつもりでいた。
悠斗の強さはその速度にあると・・・。
再び二人は距離を計るのだが・・・
(先輩がいくら速いとは言え、大太刀だからな・・・小回りはきかないはずっ!)
直樹は正面から三段突きを放ち様子を見る。
「シュッ、シュッ、シュッ」小気味よい風斬り音が鳴く。
その三撃目の突きが放たれた時、「キーン」と金属音が鳴り響くと
穂先は真上に上がっていた。
しかしいちかは距離を詰めず後退して距離を取る。
「あんた・・・本気でやらないと次はないわよ?」
いちかの剣気が辺りを支配していく。
(お、俺は多少押さえていたとは言え、あんな弾かれ方って・・・)
「分かりました。俺の最速で行きます。死んでも知りませんから・・・」
直樹の言葉にいちかは薄く笑う。
直樹の剣気もまた・・・大きくなっていった。
(天津よ・・・力を貸してくれ)
「コォォォォォ」っと、直樹の呼吸音が再び変わりだす。
「気道・一之書・操術・壱」
直樹はフェントを掛けながらいちかに迫ると・・・
「槍術・牙旋」
槍の穂先がまるで意思を持つように回転しながら襲ってくる。
いちかは再び薄く笑う。
「白鷲・蛇喰」
いちかの刀がまるで槍を巻き込むように槍を弾き飛ばし、
納刀と同時に直樹に背中を向けると・・・
「はぁぁぁっ!」っと・・・
その気合と同時に背中を向けたまま一足飛びに
後ろ向きなまま直樹に突進した。
体の捻りとその遠心力で抜刀すると・・・そのまま直樹の腹を薙いだ。
「ザァッザッザァァァ!」っと、
直樹を斬った後、地面を滑るように通り抜けていく。
「白鷲・山風」最後にポツリとそう言うと納刀した。
いちかが立上がる瞬間、直樹は気絶し、その場に倒れた。
「・・・勝者、川崎 いちか」
沙耶の宣言と共に試合が終わった。
英二は驚愕の一言だった。
(い、いちかって・・・あんなに強ぇのか?)
いつの間にか英二は組んでいた腕を放し、棒立ちになっていた。
そして試合が終わり、此処は本家の病室・・・。
しかし直樹はまだ目覚めていなかった。
その病室には、沙耶、英二、いちかが居た。
静まり返る病室の中で、沙耶が口を開く。
「なぁ~いちか?いつ習っていたのよ?」
沙耶の言葉に英二もいちかを見る。
「いつって・・・、悠斗さんが一人で狩り行った時とか~
自主練の時ですかね~?」
平然と話すいちかだが、沙耶も英二も驚く。
「いやいや、待てよいちか。一人で狩りって・・・何だよそれ?」
「えっと~特別任務?とか言うヤツですよ?」
いちかの言葉に沙耶は頭を抑える。
「あ、姉貴か・・・全く、悠斗に何をやらせていたんだよっ!」
「えっと・・・沙耶さん、それってまさか・・・?」
「ああ、噂でなら聞いた事があるだろ?
悠斗を単独で使って何かをしてるって話を・・・」
「は、はい。噂・・・の領域は出ないんスけどね。
俺もその噂は知ってますよ?」
沙耶と英二は「ポカーン」と、しているいちかを見る。
「いちか・・・その姉貴の任務について、何か知っているのか?」
「いいえ、ただ私は、悠斗さんが出かけるので付いて行ってるだけですよ?
まぁー最初は黙って付いて行っていたんですけど、
どうやら最初からバレていたみたいで・・・♪」
「お、前な~・・・よく無事だったな?
結構やばかったりしたんだろ?」
「まぁ~そうですね~。でもその頃から剣術習うようになって、
弟子入りをお願いしたら、即OKでしたよ♪」
沙耶も英二も溜息を吐いた。
「弟子入りって・・・悠斗がよく許したよな?」
「ああ、私も正直弟子を取るとは思っても見なかったけど・・・
いちかの話を聞く限りじゃ・・・相当のセンスを持っていた・・・
まぁ~そんなところでしょうね」
いちかは沙耶の言葉に笑顔で首を振ると・・・
「違いますよ?沙耶様?」
「違う・・・とは?」
「何でも~私が付き纏うので、鬱陶しかったらしくて・・・
それでも離れないから、面倒になって、弟子にしたらしいですよ♪」
いちかの爆弾発言に二人は固まった。
「・・・いちか、てめぇー完全なストーカーじゃねぇーかぁぁっ!」
「あ、ああ・・・そ、そう・・・だな」
「えっ~!ストーカーって黙ってこっそりとかの人でしょ?
私は、悠斗さん、今日もストーカーしまーすっ!って、宣言してからですもん♪」
二人はまたもやいちかの言葉に固まった。
「さ、沙耶さん・・・これってでもやっぱストーカーなんじゃ・・・?」
「ふむ・・・でも、いちかは宣言しているからな?」
「いやいやそれでもですよ?
こいつ、ストーカーって自ら言っちゃってますからね?」
「でも英二・・・本人が許可をしたって事はもうストーカーじゃないだろ?」
英二と沙耶は気がつけば病室でストーカー談義になっていた。
そんな時・・・
「あ、あの~・・・皆さん、うるさいんですけど?」
直樹がいつの間にか目覚めて抗議してきた。
「あっああ・・・す、すまねぇ」
「いや、別に良いんですけどね?でもここは病室だし・・・」
直樹がぐちぐち言い始めると・・・
「あんた・・・偉そうに何様なの?」
いちかが不機嫌な顔する。
「言っておくけどね?あれってただ当てただけで
振り切ってないんだからね?」
その言葉を聞いた英二と沙耶は・・・
「えっ?何?まじなのかそれっ!」
「いちか・・・あれって、ただ当てただけなの?」
「はい、そうですよ?振り切ったら、いくら刃潰しでも
死んじゃうじゃないですか~♪」
いちかは満面の笑みを見せるが、それを食らった直樹は青ざめていた。
「皆さんどうしたんですか~?師匠なら刃潰しで丸太くらい切断できますよ?
あっそうだ・・・狩りの時、熊を刃潰しで両断してましたし~♪」
その言葉に英二と沙耶は心当たりがった。
ある日沙耶が帰宅すると、今日は熊鍋をするから楽しみにしておくようにと、
食堂の山野のおばさんが楽しそうに言っていた事だった。
「あ、あの~沙耶さん?お、俺・・・心当たりがすごーーくあるんスけど?」
「ふっ、奇遇だな英二・・・私も今それを思い出していたところだ」
二人で冷たい汗の流れを感じていた時・・・
「ああ~それです、それです~♪
あの時はもう、山野のおばちゃんがとても嬉しそうにしてたんですよ~♪」
二人の勘は見事に的中した。
話を変えようと、英二が思いを巡らすと、
丁度、視界の中に白鞘袋が目に入った。
「あ、ああ、そうだ、いちか・・・
お前のその刀・・・一体どうしたんだ?
それに悠斗の白鷲も何でお前が持ってるんだよ?」
英二がそう言うと、悠斗の刀が入っている白鞘袋を取り出す。
「それが~変・・・なんですよね~?」
「「変?」」
「はい。悠斗さんがいなくなる前日に、私ってば呼び出されちゃいまして・・・。
それで何かな~って・・・
デートかな~って、思っちゃったりもしたんですけど~。
俺の白鷲を暫く預かっておいてくれって言うんで驚きましたけどね?
あの時はもう、涼華様に言われていたのかな~って・・・?」
英二と沙耶は悠斗の白鞘袋を見つめていた。
(あいつ・・・何か感じていたのかもしれねぇーなー)
英二は悠斗との別れの時を思い出していると・・・
沙耶が白鷹を見つめ・・・
「なぁ~いちか、それでお前のその・・・白鷹なんだが・・・
それはどうしたんだ?」
「これですか?この刀もその時にもらったんですけどね・・・
いきなり、お前は免許皆伝だから、白鷲の兄弟刀の白鷹をやるって・・・」
「や、やるって・・・そんな簡単な・・・」
「ああ、そうだぞ?しかも大太刀をやるだなんて・・・あの子は・・・」
英二も沙耶も、いちかの話にずっと驚きっぱなしだった。
「あ~、でもこの白鷹なんですけど~
白鷲に比べると、二周りほど短いんですよね?
一度白鷲を使わせてもらったんですけど、私には長いし重いしで・・・」
沙耶は白鷹を見つめていた・・・。
それに気付いた英二が話し掛ける。
「沙耶さん?さっきも思ったんですけど、
この白鷹の事・・・知ってるんですか?」
その言葉にはっとした沙耶は・・・
「いちか?その刀の前の・・・持ち主って知ってるの?」
「いいえ・・・誰かいたんですか?って言うか・・・持ち主って居たのっ?!」
すると沙耶は少し間を置き話し始めた。
「私が言っていいかどうかもわからないけどね・・・
その刀の前の持ち主は、悠斗の彼女だった女の刀なのよ?」
その言葉に鋭く反応した英二は・・・
「ま、まさかそれって・・・う、嘘でしょ?
穂高ちゃんが・・・俺達と同じ凶祓い師?」
「・・・誰ですかぁーっ!その人ーっ!聞いた事ないんですけどーっ!」
いちかはあからさまに、拒絶反応を示すが、沙耶は話を続けた。
「いちか・・・葉月家って知ってるよな?」
「はい、勿論知ってますよ?それに今、葉月家の方が来てますよね?」
英二は前に呼び出された時、受けっとったメモを持ってきたのが
葉月家の人だった事を思い出した。
「ああ、今もうちの手伝いをしてもらっているんだが・・・
その手伝いに来てもらっているのが、悠斗の彼女だった穂高の妹だ」
「えっ?稲穂ちゃん来てるんスか?
じゃ~俺にメモを届けてくれた人ってのは?」
「ああ、その稲穂だ」
いちかは悠斗の彼女の話が聞きたくて沙耶をせかす。
「沙耶様っ!話の続きっー!」
いちかがそう叫んだ瞬間・・・医務室のドアが開いた・・・
「・・・なんの騒ぎなの?」
ドアを開けて入ってきたのは、いちかの知らない人だった。
英二 ・・・ おいっスーっ!へっへ~今回はちゃんと俺の出番があったな!
天照 ・・・ うむ。妾じゃ♪
英二 ・・・ 天照様・・・誰に言ってるんだ?
天照 ・・・ これを見ている者に決まっておろう?
英二 ・・・ これって誰かに見られてるの?
天照 ・・・ うむ。だがの?それはお主の気にするところではないのじゃ
英二 ・・・ は、はぁ~?まぁー天照様がそう言うのなら・・・
天照 ・・・ っと、言う訳じゃっ♪また・・・のっ♪
英二 ・・・ 何も伝わらねぇーよっ!
ってなことで、緋色火花でした。




