65話 ロジーの演説
お疲れ様です。
今回は65話ですね~。
微妙に物語が進んで行ってます。
そしてロジーは・・・んー・・・どうなるのでしょうか?
次にアップするのは、閑話・日本ですね。
いつも通りにアップしますので、こちらも宜しくお願い致します。
それでは、65話をお楽しみ下さい。
悠斗達は突然騒ぎ出した部屋へ向かうと・・・
「ユ、ユウトーっ!」
首を締められ宙に浮いているイリアが苦しむ姿がそこにあった。
「イリアっ!」
悠斗は叫ぶと同時に詰め寄り黒装束の男の右肩を掴むと
関節を外し、イリアが解放されると同時に膝蹴りを当て、男を吹き飛ばす。
「ごほっごほっ」っと、咳き込むイリアの前に立つと構える。
吹き飛ばされた黒装束の男が立上がると・・・
「!?」
その男の額には、アマルテアの時と同じ魔法陣が浮かんでいた。
「ユウト様っ!」
セルカの声に悠斗が反応すると指示をだす。
「セルカっ!イリアを頼むっ!」
セルカがイリアの元へ近づくと・・・
「ユウト様っ!ライトがっ!」
悠斗が視線を移すと、ライトが狭い部屋の隅で倒れていた。
「ライトォォォっ!」
グレインは駆け寄ると、安否の確認をした。
「ユウト、ライトは大丈夫だっ!」
「わかった、グレインはライトに付いててくれっ!」
「わかったっ!」
黒装束の男の視線はあらぬ方向を見ていたが、
その目に光は宿っていなかった。
「セルカ、イリアを連れて此処を出ろ?いいな?」
「わかったにゃ」
セルカはイリアを抱えるようにして出ていく。
すると、騒ぎを聞きつけてきたミレイとメンデルと白斗がやってきた。
「主っ!」
「白斗っ!グレインの前に防御結界をっ!」
「らじゃっ!」
メンデルの肩に乗った白斗がグレイン達の前に防御結界を展開した。
「OKでっせっ!」
悠斗は一気に近づくと、黒装束の男の首元に手刀を落とす。
ところがその男は手刀が当たった瞬間、悠斗に掴みかかった。
「「「ユウトっ!」」」
荒波の旅団達が叫んだが、白斗だけは「ニヤリ」と笑ってた。
黒装束の男が掴みかかった瞬間、悠斗はその男の腕をへし折っていた。
「悪い・・・誰かそこに落ちてるロープを取ってくれ」
「わ、私が・・・」
そう言ってロープを拾いに走ったのはミレイだった。
「こ、これ・・・」
ミレイはロープを掴むと悠斗に渡した。
「ありがと」
そしてそのロープで縛ると・・・。
「誰か、解呪を使える人っている?」
「わ、私が使えます」
悠斗の言葉にメンデルが手を挙げながら近付いてきた。
(主・・・なんで主が解呪しませんの?)
(あ~っと、それは・・・実験?)
(またかいな)
白斗がブツブツと言っている間に、
メンデルはその男に解呪を使ったのだが・・・
「・・・効かない?何故なんだ?
馬鹿な・・・も、もう一度・・・」
メンデルは何度か解呪を使用してみたが、解除されなかった。
(・・・やっぱりか)
(やっかいでんな?)
メンデルはかなり焦っていたようなので、悠斗がメンデルの肩を叩く。
「落ち着いて下さい、メンデルさん」
悠斗の言葉に一度目を閉じ、気持ちを落ち着かせていた。
「すまないユウト君、私には解呪できないようだ」
悠斗はメンデルに微笑むと・・・
「あ~・・・この魔方陣って特殊みたいです。
俺もまだ核心が持てなかったんで、お願いしたんですけど・・・」
そう言って悠斗は黒装束の男に手をかざす。
「解呪(ディスペル」
するとその男の額に浮き出ていた魔方陣が「パキンっ!」と音を立て壊れた。
その様子を見ていた荒波のメンバーは唖然とするしかなかった。
「俺の解呪はちょっと特殊みたいで、こういうのに強いみたいです」
そして悠斗は男を担ぐと、みんな揃って部屋を出ていく。
部屋を出る時の悠斗の目つきは鋭かった。
再び男を担いだまま大部屋に来た悠斗は男を降ろしヒールを使用した。
男の怪我が治るのを確認すると、悠斗はしゃがみ込み、男の頬を叩く。
「おーい・・・起きてくださーい」
何度か叩いた時、黒装束の男は覚醒した。
「こ、ここは・・・?あっあれ?あ、あんたたちはっ!」
男は何もわからず困惑していた。
「落ち着いて下さい。俺の名前は悠斗、貴方の名前を聞かせてください」
悠斗の落ち着いた声に黒装束の男も落ち着きを取り戻していった。
「あ、ああ・・・俺の名前はロイサム・・・アシュリナで食堂をやっています」
グレインはロイサムと名乗る男の顔を見ると・・・
「ロ、ロイサムじゃねーかっ!」
「グ、グレインさんっ!?」
二人の反応に、荒波のメンバー達も近付いてくる。
「あら?!本当にロイサムじゃないの?」
「ロイサム・・・何故こんな所に?」
知り合いだと分かると、荒波のメンバーは騒ぎ始めた。
「なぁ~グレイン説明してもらっていいか?」
悠斗の問いに説明を始めるグレイン。
「ああ、こいつは最近低価格で美味い飯を出す店の店主なんだが・・・
またこれが美味いのなんのってよ?
ユウトも食ったら病みつきになるぜ?」
悠斗は呆れた顔をすると・・・
「そう言う話じゃくてさ?」
「ああ、すまねぇ・・・ははは。つい・・・な?
でな?美味くて安い店を出すものだからよ、恨みを買っちまったみたいでよ
たまたま常連だった俺達に話がきたって訳なんだ」
悠斗はロイサムの拘束を解き話をした。
「ロイサムさん、何を覚えていますか?」
「・・・た、確か・・・食材が切れたから買い物に行って・・・
そ、それから・・・」
暫く考え込んだロイサムは険しい顔をした。
「あっ!思い出したっ!青紫のフードを被った女に声を掛けられて、
そうだっ!俺、あの女の道案内をしたんだっ!
そしたら・・・そうっ!路地で同じ色のフードを被った連中に・・・」
ロイサムはそこまで話すと・・・
「あ~・・・すみません。ここまでしか覚えていないです」
「その話は何日前かわかりますか?」
「今日は何日ですか?」と、聞いてきた。
その問いにミレイが答える。
「今日は23日だけど?」
ロイサムは手を顎に当て考える。
「た、確かあれは・・・穀物の入荷日だったから・・・2日前ですっ!」
「分かりました、有難う御座います」
悠斗は立上がると、メイドのリディの元へ歩き出した。
ずっと傍に着いていた、ロジーの頭を撫でた。
「大丈夫、助けるからさ♪」
ロジーに笑顔を向けるとリディに手をかざし解呪した。
解呪したリディは自分の身に何が起きたのかが把握できなかったが、
ロジーが声を掛けると、大粒の涙を流した。
「お、お嬢様ーっ!」
「ロジー、この人の事は任せたよ?」
「はい。有難う御座います。ユウト様っ!」
そしてまた、ロジーも涙を流していた。
リディを任せたロジーの元を離れグレイン達の傍に行く。
「なぁ~ユウト?どうしてロイサムの事が俺達は分からなかったんだ?」
グレインの問いに、悠斗はわかっている事だけを伝えた。
「なにっ!何重にも阻害魔法を掛けているだとっ!」
グレインは怒りの形相をするのだが・・・
「なぁ~、ところでよ?阻害魔法って何重にもかけられるとどうなるんだ?」
そのグレインの言葉に仲間達も含め、
「ガタッ」と、コケたのは言うまでもない。
「このハゲっ!わからんのに怒っとったんかいっ!!」
小さな犬にまで突っ込まれたハゲ・・・もとい、グレインは落ち込んでいた。
「だ、団長・・・本気で言ってるの?」
呆れた顔をしたミレイが説明する。
「いい?ユウト・・・さん?が話してくれた、この場合の阻害魔法って言うのは、
その個人の情報を無理矢理捻じ曲げるモノなの?
それを何重にも重ねがけって・・・
あと、私達が通常掛ける認識阻害などの魔法は、
魔力量を少なくして使用しているのよ?
もし、下手に解呪なんてしようものなら・・・」
「も、もの・・・なら?ど、ど、どどどうなるんだよ?」
グレインは事の重大さに気付くと青ざめていた。
「・・・ふぅ、廃人になるわ」
荒波の旅団全員が無言になった。
暫くしてライトが覚醒すると、ライトは悠斗に何度も頭を下げていた。
その後、荒波の団員達が、悠斗の活躍と解呪について話していた。
(やっぱり使徒様は偉大なんだ・・・俺を信者にしてくれねーかな~?)
ライトもまたロジーと同じで、狂信者として覚醒して行くのであった。
悠斗達は全員に解呪を使用すると、それぞれに事情を聞いていく。
そして・・・
「なぁ~ユウト?って事は、ここ数日の間でここに居る11名全員が
その青紫のフードを被った連中に拉致られ、
魔法を掛けられたって事になるんだが?」
「まぁ~・・・そうなるね?」
「ならどうして、騒ぎにならねーんだ?
それによ?アシュリナには冒険者が大勢いるにも関わらず
どうして冒険者を拉致らなかったんだ?」
悠斗は椅子に座ると背もたれに体重を預けて考えた。
(どうして・・・?確かに冒険者のほうがポテンシャルはダンチだよな?
一般人を使う利点は?それにどうして騒ぎにならない?)
悠斗が思案をしていると、ミレイがコーヒーを持ってきた。
「あ、あの・・・ユウト・・・さん?」
ミレイの声に悠斗が目線だけ合わせ頭だけ縦に振った。
そしてミレイが持ってきたコーヒーに手を伸ばすと、思考の海へ潜った。
「こりゃ~ユウトのヤツ潜っちまってるな~」
ライトがグレインの肩を叩く。
「ユウトの邪魔になるから俺達は外に出ようぜ?」
「そうね・・・。その方が私もいいと思うわ」
「私も賛成です」
完全に黙ってしまった悠斗を見たグレイン達は、悠斗を一人残し一度外に出た。
解呪された者達が、イリア達によって、食事をしていた。
「グレイン・・・テーブルに座って?食事にしましょ?」
その言葉にグレインが慌てる。
「おいおいっ!火なんて使ったら此処の場所がっ!」
慌てて火を消そうとするグレインにセルカが蹴りを入れる。
「このっハゲっ!!やめるのにゃっ!」
「痛っ!!セルカてめぇぇっ!」
喧嘩しそうになった二人をライトが止める。
「団長、イリア達が何も思わずにこんな事するなんてないと思うぜ?
そうだよな~お二人さん?」
ライトはイリア達を見ると笑っていた。
「ふふ♪正解よ♪」
「ど、どう言う事だよ?」
グレインは納得していないようだった。
すると今度はミレイが・・・
「ユウト・・・さんの仲間よ?何かしたんじゃないの?」
その言葉を待っていたかのように、白斗がテーブルの上で
2本立ちになると・・・
「おっ?ねぇーさんもやっと主の凄さがわかったみたいやな~♪
でもな?今回は主やなくて、ワシでんねんっ!
ん?別に誉めんでもええさかいな?
ワシがごっつい結界張ったから、火や煙、音も気にせんでええで?」
その意気揚々とした白斗のセリフにイリア達が笑っていた。
「さ、さすが・・・犬・・・じゃなかった。聖獣様だな~」
グレインは誉めたつもりだったが、「犬」に反応する白斗だった。
「おいっ!こらっ!ハゲっ!今度犬言うたら・・・頭かち割るぞっ!」
小さいナリはしているが、迫力だけは人一倍だった。
「す、すまんっ!」
白斗の勢いに負けたハゲ・・・じゃなかった。
グレインは素直に頭を下げたのだった。
悠斗以外の全員が食事を終え、ティータイムで和む中。
魔方陣で操られてい者達が話し合っていると、
ロイサムとリディが代表で、グレイン達に声を掛けてきた。
「な、なぁ~グレインさん、その、お、俺達はこれからどうすれば?」
ロイサムの質問にグレインは頭をさすると・・・。
「そうだな・・・。イリア、どうすればいいと思う?」
急に話をフラれたイリアは「わからない」と、リアクションを取ると・・・
「・・・ユウト待ちって事だな?」
そんなグレインの言葉にロイサムが疑問を投げかける。
「グレインさん?その・・・さっきのユウトって子なんだけど?
一体何者なんですか?
それと・・・ここのリーダーってグレインさんじゃないんですか?」
ロイサムの言葉に、荒波の旅団全員がグレインの言葉を待つ。
グレインは周りを気にする様子もなく「ニヤ」けると・・・
「あっはっはっはっ!俺如きが「使徒様」に叶う訳ねーだろっ!
俺達凡人と一緒にするもんじゃねーぜっ!」
グレインのとんでも発言に、此処に居た全ての者達が固まった。
その硬直からいち早く解放されたのは白斗だった。
何故ならば、白斗も同じ過ちをしていたからだった。
(あ、あかん・・・ワシもこんな空気やったんやな?
ワシもあのハゲみたいに平然としとったんやろな~・・・
わぁ~・・・コレ、めっちゃ恥ずかしいわぁー・・・あ、あかん、見てられへんわ」
白斗は未だ平然としてるグレインに声をかける。
「な、なぁ~グレインはん?ワシと同じ事やってまっせ?
自分で気付いとりませんよな?
今のあんさん・・・めっっっちゃ恥ずかしい事になっとりまっせ? 」
振り向いたグレインの顔は、みるみる顔が青ざめ、
そして大粒の汗が「だらだら」と滝のように流れていくのだった。
「あっ!あぁぁぁっ!えっ?あっ?うおぉぉぉぉぉぉぉっ!
し、しまった・・・ど、どっどっどっどっどうしたらいいんだぁぁぁっ!」
グレインは頭を抱え込みながら地面に崩れた。
その様子を見ていた旅団の団員達は、テーブルに伏せており、
また・・・イリア達は大爆笑していた。
「あーっはっはっはっ!だ、駄目・・・お、お腹が・・・く、苦しい・・・わ」
イリアも椅子に座りながら腹を抱え苦しそうにしており、
「にゃぁぁっはっはっはっ!こ、この・・・ハ、ハゲ・・・やってしまったのにゃ♪」
セルカは崩れ落ちたグレインの頭を笑いながら「ペシペシ」叩いていた。
「あはははははっ!わ、私も、ダメです。お、お腹が・・・」
ロジーはテーブルを「バンバン」叩きながら苦しんでいた。
白斗はグレインの様子をテーブルの上から見下ろしていた。
(ワ、ワシは笑えんわ~・・・
一度ある事は二度ある・・・そう言いますしな~?
ワシも気ぃーつけなあかんな)
白斗は自分への戒めの為に、グレインの姿を心に刻みつけるのだった。
そしてグレインの話が旅団の団員達や、イリア達の様子を見て、
本当の話だと実感した者達が、素早く席を立つと、イリア達の前に跪いた。
「あ、あの・・・使徒様の従者様達なのでしょうか?」
突然の行動に団員達やイリア達は唖然としていた。
イリアはセルカと顔を見合わせ困っていると、
思わぬ伏兵が・・・いや、狂信者達が・・・。
突然ロジーとライトの二人が席を立つと、ロジーが演説を始めた。
「聞きなさいっ!アシュリナの者達よっ!
私達は一人の使徒・ユウト様と出会ったのです。そして導かれるのです」
(なんやなんや?一体何が始まったんや?
ヤバいんとちゃうのコレ?あかんヤツやないのコレ~?)
白斗が心配する中、ロジーの演説は続く。
「そして・・・これからっ!始まるのですっ!
私達の街、アシュリナは、首都グランフォートに比べ規模は小さく弱小です。
しかし、今日まで頑張って来られたのは・・・何故ですかっ!
皆さんっ!私達の信仰は正しいからなのですっ!
下級騎士達は、歪み膨れ上がった権力で私達民を食い物にしていますっ!
何度訴えても首都グランフォートは私達を踏みにじりました。」
白斗が気がつくと、グレイン始め旅団の全員がロジーの後ろに並び
片膝を着き控えていた。
(あ、あかんて・・・み、みんなどないなってしもうてんねん?
ワシ・・・なんや怖いわ・・・これ、ほんまにあかんヤツや・・・)
白斗の不安は無限大に広がりつつあった。
しかしそれでも・・・。
「私達、アシュリナの民達は、信仰の・・・
いえ・・・使徒。ユウト様の名の元に、立ち上がらなければなりませんっ!
私達アシュリナの民は・・・幸せを導くユウト様に忠誠を誓わねばなりませんっ!
私事・・・ロジー・アシュリナは何度も命を救われたのですっ!
アシュリナの民達が一丸となってっ!横暴な下級騎士達に報わねばなりませんっ!
それが・・・全ての民の命を救うのです。
立てっ!民達よっ!ユウト様の名の元に立ち上がるのですっ!」
ロジーが演説を終えると、一度静まり返った。
そして・・・「うおぉぉぉぉぉぉっ!!」っと、歓声が上がると・・・
「ユウト様ーっ!ユウト様ーっ!」と、アシュリナの民達が歓声を上げた。
その歓声の中、犬・・・もとい、聖獣である白斗は・・・
「こ、これが信仰と言う名の・・・狂気っ!!」
そう叫んだ白斗だったが、誰にもその声は届かなかった。
(ワシ・・・帰りとうなってもた)
火の粉とその明かりが夜空を照らす光景がとてもむなしく思えた。
ラウル ・・・ ねぇーミスティ。
ミスティ ・・・ はい、どうされたのですか?
ラウル ・・・ ロジー君なんだけど・・・何かヤバくね?
ミスティ ・・・ ふふふ♪確かに危なそうな匂いがぷんぷんと・・・♪
ラウル ・・・ この子ってさ?ほんとに今後重要な役割を担うの?
ミスティ ・・・ んー・・・未来は常に変化致しますので・・・
ラウル ・・・ それって助けた意味・・・なくね?
ミスティ ・・・ それこそ、神のみぞ知るって事ですわ?
ラウル ・・・ 神の味噌汁がなんだってぇー?
ミスティ ・・・ ・・・・・・・・・・・・・死ね(ぼそっ)
ラウル ・・・ orz
ってなことで、緋色火花でした。




