41話 本気と本気
お疲れ様です。
今回の話はオウムアムアと悠斗の模擬戦の続きですね。
これからどうなるのか、日々四苦八苦しておりますが
楽しい話が出来ればいいなーっと、思っております。
ブックマーク及び感想など、宜しくお願い致します。
評価などもいただければ幸いです。
それでは、41話をお楽しみ下さい。
ミスティ達が大浴場を堪能し出てきた。
温泉の話で盛り上がっていた時、凄まじい音が聖域に鳴り響く。
何事かと駆け出したミスティ達が見たものは・・・
「い、いやぁぁぁぁ!!ユウトーッ!!」
イリアが見たモノは悠斗が地面を数回バウンドし、
全身から血しぶきが飛び散っている光景だった。
「ユ、ユウトー!!ダメにゃぁぁ!!」
「悠斗様っ!」
イリアとセルカは半狂乱で駆け出す。
ミスティは顔を歪ませると、瞬間移動で悠斗の元へ・・・
「ゆ、悠斗様!!お気を確かにっ!」
気を失っている悠斗を診断する・・・
ミスティの顔から血の気が引いた。
「し、心臓が・・・」
その言葉にオウムアムアの顔が歪むと・・・
「わ、我がやりすぎた・・・す、すまぬ。
謝っても仕方がない事だが・・・・そ、それでも・・・」
「お黙りなさいっ!!」
ミスティに一喝されると言葉を飲み込んでしまう。
「だ、大丈夫ですわ!」
ミスティが悠斗に手をかざそうとした時・・・
悠斗の体が白く輝く・・・。
イリアとセルカが到着した後も暫く白く輝いていた。
「ミ、ミスティ様・・・こ、これは?」
白く輝く悠斗を見て不安の色が消えなかった。
「わ、私にもわかりませんが・・・でもこの光は・・・
蘇生?・・・いえ、少し違いますわね」
ミスティは神眼を使い、鑑定を行うと・・・
「えっ?こ、これは・・・」
ミスティの驚きように一同が問いただす。
「ど、どうしたのだ?ミスティ様!」
「一体どうしたのにゃ!」
「ミスティ様っ!」
一同の大声に我に返るミスティ。
「か、鑑定の結果、潰れた心臓の再構築を行っていますわ。
私にも分かりかねますので質問されても答えられませんわ」
一同が驚愕し、悠斗をただ見守る事しかできなかった。
暫くすると、輝きが収まった。
「うぅっ・・・んぁ・・・」
意識を取り戻した悠斗に一同が歓喜の声をあげた。
「悠斗様っ!」
「「ユウト様っ!」」
「ユウトっ!」
意識を取り戻した悠斗は体を起こすと・・・
「ん?あれ?・・・どうして皆此処に?」
女三人は涙を流し、オウムアムアも安堵で顔を歪ませていた。
「あっ・・・ああ~、なるほど」
一同が悠斗に説明を求めると・・・
「えっと・・・オウムアムアが亜神の力を解放する前にさ、
風呂場で聞こえた、アナウンスの事を思い出したんだよ。
特殊回復魔法?ってのを習得したらしくて、
内容を確認したら、破壊された箇所の再構築と蘇生ってのがあって、
便利かも~って思ったんで、事前にかけておいたんだ」
ありえない出来事に呆然としている一同。
「ふ、風呂場でそんな魔法を?」
呆然としたままのミスティの言葉が口から漏れると・・・
「あ、ああ・・・」
暫くの間沈黙が続く・・・。
ミスティは厳しい目で悠斗を見つめる。
「えっ?何?俺・・・何かした?」
顔を引きつらせながらミスティを見ると・・・
「悠斗様・・・私の気の所為・・・で、あればいいのですが。
悠斗様は、オウムアムアの攻撃をわざと・・・
わざと、お受けられたのではないですか?」
ミスティの発言に全員の視線が集まる。
「ミ、ミスティ様? それってどう言う・・・」
「私にも教えてほしいにゃ!」
「我も回答を望む」
目を閉じ少し考えると・・・
「恐らくですが、悠斗様は特殊回復魔法を、
試されたのだと思いますわ」
ミスティの発言に今度は悠斗に視線が集まる。
「今のは本当なの?ユウト様?」
「本当にゃのか?」
「真か?」
全員の視線に「たじたじ」になってしまう悠斗は・・・
「は、はい・・・。おっしゃる通り・・・です」
悠斗の答えに女三人がブチギレる。
「にゃゃゃぁぁぁぁ!!お前は本当に馬鹿にゃのかにゃぁぁぁ!!」
セルカの怒号が耳をつんざき・・・
「ユウトーーー!!あんた何やってんのよぉぉぉ!!」
イリアは涙目で抗議し・・・
「悠斗様・・・はあぁぁぁ・・・」
ミスティは「よ、よ、よ、」っとしなだれる。
悠斗は慌てて三人に謝罪する。
でもその時、オウムアムアだけが怒りの形相だった。
「えっ?えっ?・・・な、何?どうした?」
悠斗はオウムアムアの威圧に悪寒が走った。
「ユウト・・・本当に・・・我の攻撃が?」
「あ、ああ・・・見えてはいた・・・でも、体の反応が悪かった」
「・・・・そうか」
オウムアムアは両拳を握り締めると・・・
「続きをやろう。次は・・・亜神の力を使う」
オウムアムアの真剣な眼差しに悠斗は頷いた。
悠斗が立上がると・・・
「待ってください、悠斗様。
今、ご無理をなさってはいけませんわ」
「そ、そうよ、ユウト様、少し休んでからでも・・・」
「今はやめとくにゃ!焦る事にゃいにゃ!」
三人は止めるが、既に悠斗の耳には届かなかった。
オウムアムアのオーラに悠斗は正面から向き合っていたからだった。
「皆・・・悪いな。離れてくれ・・・」
「ちょっ、ちょっと!やめなさいよっ!」
「お前本当に馬鹿にゃのかっ!やめるにゃ!」
「お止め下さい!悠斗様!!」
悠斗は視線を三人に向けると・・・
「邪魔しないでくれ・・・」
その冷徹な言葉に三人は何も言えず後ずさる。
ミスティはオウムアムの前に立ちはだかり・・・
「お止めなさい!オウムアムア!」
オウムアムアは悠斗から視線を外さず・・・
「断る」
「時空神たる私の命令ですっ!」
「いくら神の言葉でも、引けぬ時がある」
「くっ!」
「では、私が止めますっ!」
「出来るものなら・・・な」
オウムアムアに立ち塞がっているミスティに・・・
「ミスティ・・・もう一度言う、離れてくれ」
「し、しかしっ!」
視線を再びオウムアムアに向けながら話す。
「こいつは前に異形の魔に負けた・・・。
俺もいずれそいつと戦わないといけない。
亜神に勝てないようじゃ・・・ヤツには勝てない。
だから・・・邪魔するな」
悠斗の冷たい殺気がミスティに突き刺さる。
「うっ・・・わ、わかりました。
下がりますが・・・危険だと思ったら・・・
その時は介入させて頂きますので・・・」
「チラッ」っと、一度ミスティに視線を向けるが、
すぐにオウムアムアに視線を戻す。
「わかったけど・・・止められるかな?」
そう言うと、二人は少し歩くと再び対峙する。
二人の気迫がその空間を支配する。
「フッ。今度は殺す気で行く」
「ああ、受けてたつぜ。かかって来いよ」
静かに闘争心を燃やす二人。
自然体の構えから闘気が溢れ出す。
(さてっと・・・気道なしで何処までやれるか・・・だな)
(亜神に勝つ気か・・・なめるなっ!)
気勢をあげたオウムアムアが先に動いた。
「行くぞっ!ユウトっ!!うおぉぉぉぉ!!」
一直線に向かってくるオウムアムアに対し・・・
「身体強化っ!Lv.5!!」
悠斗もまた一直線に迎撃していく。
「うおぉぉぉ!!」
オウムアムアが拳を放つと悠斗は拳をかいくぐり
オウムアムアの腹へ拳を繰り出す。
オウムアムアは左腕で悠斗の攻撃を払いのけると、
繰り出した拳の肘を曲げ、そのまま体重をかけ肘を打ち下ろす。
「死ねぇぇぇ!!」
オウムアムアが叫びながら悠斗の後頭部を狙う。
悠斗は払いのけられた腕の反動を利用すると、
かがんだまま半回転する、
そのまま後ろ向きで、オウムアムアの股の下をくぐり抜けた。
「な、なんだとっ!」
「いけるっ!!」
悠斗はオウムアムアの背後を取るとジャンプし、
後頭部目掛け蹴りを放つ。
何かが爆発したような音をたてて、オウムアムアがふっ飛ばされる。
「ぐはっっ!!」
(Lv.5・・・完全に慣れたな)
壁に激突したオウムアムアは、
何事もなかったかのように起き上がる。
「フフッ、まだまだぁぁぁ!!」
再びオウムアムアが白く光る・・・亜神の完全開放である。
「うおぉぉぉ!!」
(ははは・・・生きた心地がしないな・・・やれやれ)
悠斗は身体強化Lv.5を完全に自分のモノとした。
「今度はこっちから・・・行くぜっ!」
「来いっ!ユウトォォォ!!」
身体強化を使いながらオウムアムアとぶつかる寸前に、
隠蔽を使い姿を消す。
だが、亜神と化したオウムアムアにはもう通用しない。
「見え見えだぞっ!」
背後を取った悠斗にオウムアムアの蹴りが迫ると・・・
「ここだっ!」
悠斗は後方へ思いっきりジャンプするのと同時に・・・
「火球!!」
発現した火球を、オウムアムアの蹴り出された足に投げた。
轟音が鳴り響き土煙が上がる。
土煙が晴れると、左足が弾け飛んだオウムアムアの姿があった。
「ぐぉぉ・・・ぐぬぬぬ」
失くなった足を押さえ座り込んでいる。
しかし悠斗は構えを解かない・・・
悠斗のその姿を見たオウムアムアは、
苦悶に満ちながらも口角をあげる。
(フッ。最初から狙っていたのか?フフッ)
「み、見事だユウト」
悠斗は構えをそれでも解かない。
「わかった。我も本気出す。うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
オウムアムアは雄叫びをあげると、
強烈な光がオウムアムアの中へ飲み込まれていく。
「ま、待たせた・・・ユウト」
肩で息をしながら立上がるオウムアムア。
吹き飛んだ足も再生されていた。
その姿は洗練された肉体と、白いオーラを纏った、
亜神・オウムアムアだった。
(す、すげーな・・・まじか!やっぱりとっておきがあったか)
悠斗は亜神の姿を見ても臆さず構えていた。
(貴様の器の底が見えぬな。面白い)
「面白いぞぉぉぉ!」
亜神のオーラが全開放され、大地が震える。
そして唸りと共に・・・悠斗に向かってきた。
「ぐぉぉぉぉ!!」
迫る亜神に悠斗は・・・
(さて・・・俺もやってみるか、本気ってヤツをなっ!)
「うおぉぉぉぉ!!!身体強化!Lv.6! 」
悠斗は身体強化Lv.6を使い地面を蹴ると爆発音がした。
二人は再び正面から打ち合う。
迫る拳を払い蹴りを止め投げを防ぎ・・・
一進一退の攻防が続き、そして一度、二人は後方へ距離を取った。
「ニヤリ」と笑う二人。
だが悠斗は肩で荒い息をしていた。
「はぁはぁはぁはぁはぁ」
(やっ、ヤバイな・・・限界が・・・近い・・・くっそっ!)
悠斗の状態は誰が見ても限界ギリギリだった。
だが、見ている三人は誰も止める事も出来ない。
それどころか・・・この闘いに見惚れていた。
(悠斗様・・・なんと猛々しい御方。
最初の印象とはまるで別人ですわね♪)
(ああ~・・・ユウト・・・私も貴方の傍で戦いたいわ)
(す、凄まじいのにゃゃ!わ、私もま、負けていられないのにゃ!)
「さて、ユウトよ。貴様はよくやった・・・
しかしっ!人の力では亜神は超えられぬっ!行くぞっ!」
「あはははっ!ゼェゼェ・・・言って・・・くれ・・・るぜ。
ゼェゼェ・・・見てろ・・・よ・・・てめぇ!」
亜神は力を溜めるとその力を爆発させ襲ってくる。
悠斗も限界に挑み大地を蹴る。
再び正面から打ち合う。
何度目かの攻防を繰り返すと、次第に悠斗が押され始めた。
「フフッ。限界のようだな。人間っ!もらったぁぁ!!」
勝ちを意識した亜神は悠斗が笑っている事に気付かなかった。
「終わりだ」
亜神の拳が悠斗の顔面を襲う・・・
悠斗は闘うさなかに魔法をイメージしていた。
より精密に、より精巧に・・・そして・・・より強固に。
亜神の拳が顔面に迫った時・・・
「ガキーンッ!」
亜神が気がついた時には何かに拳が弾かれていた。
「なっ、何ぃぃ!ば、馬鹿なっ!」
「アヴソリュート・アイスクリスタル・シールド」
氷結晶の密度を高密度に圧縮し、
それを小型のシールドに形成した盾。
亜神の拳は高密度な氷結晶の盾に弾かれたのである。
「から・・・のぉぉぉ!!」
悠斗の右の肩から指先まで、雷の鎖が巻き付いてた。
「ライトニング・チェーン・ブレイクッ!」
雷の鎖を纏った悠斗の右腕が、亜神の腹にめり込むと・・・
腕に巻き付いていた雷の鎖が「パキーンッ!」と弾けた瞬間、
落雷の音と共に亜神の腹が爆発した。
亜神は後方へふっ飛ばされ転がると、腹には大穴が開いていた。
「ミ、ミスティ・・・か、回復を!早くっ!」
「は、はいっ!」
ミスティは悠斗の指示通り、オウムアムアの元へ行くと治療を始めた。
悠斗はオウムアムアの治療を見ると・・・その意識を手放した。
「ユ、ユウト?」
「ユウトダメにゃゃ!!」
イリアとセルカは悠斗の元へ駆け寄ると、
イリアが鑑定を使用し診断を始めた。
「イリア、ユ、ユウトの具合はどうなのにゃ?」
「少し黙ってっ!」
イリアに諭され黙り込むセルカ。
「ふぅ・・・。セルカ、ユウトは大丈夫よ♪
気絶しているだけだから安心していいわ♪」
「よ、良かったのにゃゃゃ!!」
大粒の涙を流しながら安堵するセルカ。
イリアはセルカをそっと抱き締めると優しく背中を抱いた。
(全くもうっ!心配ばかりかけるんだからっ!
気絶なら気絶って言いなさいよっ!)
全く、理不尽な物言いである。
イリアはセルカから離れると、再び悠斗に向き直り
ハイ・ヒールを数回かける。
表面上の傷は見当たらなくなった。
イリアはミスティ達の事が気にかかり、
セルカと共に駆け寄ると・・・
「オムウアムア様の容態は?」
険しい表情でミスティに尋ねる。
「え、ええ・・・もう平気よ♪悠斗様の容態は?」
「はい。ただの気絶でした♪」
「ふふふ♪あの方らしいですわね♪」
そんな会話をしてた時、オウムアムアが意識を取り戻した。
「ん?こ、此処は?・・・わ、我は・・・負けたのか?」
そう言いながら体を起こす。
「ええ、負けはしましたが・・・とても素晴らしい闘いでしたわ♪」
「・・・そうか」
オウムアムアを心配して、覗き込んでいるイリアとセルカ。
「うぬらにも心配かけたようだな。すまなかった」
座りながらも二人に頭を下げるオウムアムア。
「心配しましたよ?本当に・・・お加減はいかかですか?」
「うむ。今は何とも無いようだ。ミスティ様のおかげだ」
その言葉にイリアは笑顔を向けた。
「にゃー、でかぶつっ!無事で良かったのにゃ♪
私も心配したのにゃ♪」
セルカはオウムアムアの背中を「バンバン」叩きながら
無事な事を喜んでいた。
「い、痛い・・・痛い・・・や、やめぬか・・・」
セルカとオウムアムアのやり取りに二人は笑っていた。
ミスティは立上がると、悠斗の元へ向かい
悠斗に浮遊魔法をかけ、小屋へ連れて行く。
オウムアムア達は二人でオウムアムアを引っ張り上げると
「ワイワイ」賑やかに小屋へ歩き始めた。
オウムアムアは視線を悠斗に向ける・・・
(我は負けたのだな。負けるはずのない闘いに・・・
ユウトと居れば、我も更に強くなれる・・・感謝だな。
人族と言う者は侮りがたし・・・。
我はユウトの歩く先が見たい・・・そして我もまた・・・)
天を仰ぎ歩いて行くオウムアムアの足取りはとても軽かった。
ラウル ・・・ 悠斗君の模擬戦かー!見たかった!
ミスティ ・・・ ラウル様は何をしていらしたのですか?
ラウル ・・・ 僕はしっかりと仕事してましたよ~♪
ミスティ ・・・ おかしいですわね?!某フードショップでお姿を・・・
ラウル ・・・ うっ。あー忙しいな~♪僕は仕事してくるよー
ミスティ ・・・ 一体どなたが仕事をしている事やら・・・
ってなことで、緋色火花でした。




