292話 イリアとセルンの運命・前編
お疲れ様です。
車の運転中に足が吊り焦った緋色で御座います。
いや・・・まじで焦ったw
めっちゃ耐えながらコンビニに入りましたよww
『痛てててて・・・』って言いながらw
と、まぁ~そんな事は置いておいて・・・。
この『冥界編』もいよいよラスト・スパート。
気合い入れて頑張りますので、応援のほど宜しくお願いします^^
それでは、292話をお楽しみ下さい。
亜空間から戻った悠斗は『もう夜か・・・』と呟くと、
そのまま宿舎ら戻っていった・・・。
丁度その頃・・・。
イリアとセルンはイザナミ(分体)に呼び出され別室に来ていた・・・。
『コンコンっ!』とドアをノックし入室すると、
そこには、サンダラーを筆頭にイザナミ(分体)と黒犬・・・
そして上位神のヲグナが居た・・・。
張り詰めた空気にイリアとセルンはその身を硬直させたが、
セルンがイリアに『行くわよ』と肩を叩きながら言うと、
頷き用意された席に座った。
『こんな場所ですまないな?』と・・・。
サンダラーが口を開こうとした時、再び扉がノックされ、
入室してきたのは黒犬の同僚でもある『四獣神』の1人・・・白蛇だった。
「遅れてしまい申し訳御座いません」
丁寧に挨拶した白蛇はサンダラーに黒犬の横に座るよう促されると、
イリアとセルンの後ろを進みがてら、
『お二人共、以前は声のみでしたが、お元気そうで・・・』と、
軽く会釈をして通り過ぎ席に座った。
白蛇の優雅な振る舞いにイリアとセルンが見惚れていると、
『コホン』と咳払いしたサンダラーが話を進めて行った。
「えー・・・今回集ってもらったのは他でもない。
姉貴・・・いや、ヴァマントが体調不良の為出席できなくなったが、
期限も近い故に、このメンツだけで進めさせてもらう」
そう口を開くと一同が軽く頷くのを確認したサンダラーは続けた。
「話と言うのは、ユウトの事だ・・・」
そう言った瞬間・・・。
染ま場の空気が引き締まった・・・。
サンダラーは視線をイザナミ(分体)へと向けると、
迷宮での2人の成果を聞いた。
『コクリ』と頷いたイザナミ(分体)は皆に報告した。
「正直・・・最初はどうなるかと思ったが、
2人の成長は著しく見事に限界突破をして見せた・・・。
そして『魂の灯』をも会得し更なる進化も見せてくれた。
誠に大儀であったと言わざるをえんの」
いつものイザナミ(分体)なら、ギャル口調で話しているはずだが、
このメンツではそうはいかないのだろうと、
2人は改めてこの場が普通ではない事を察した。
イザナミ(分体)の報告に、サンダラーは『ふむ』と頷くと、
隣に座るヲグナへと視線を向けた。
「・・・ヲグナ様、いかがでしょうか?」
そう尋ねたサンダラーにヲグナは口を開いた。
「・・・その資格は得たようだね?
俺も最初、2人の資料を見た時、心配もしたが、
何とかなったようで何よりだよ・・・」
『ふぅ~』っと溜息混じりにそう言ったヲグナの顔は、
やや、やつれているようにも見えたが、
笑みを浮かべるとこの場の雰囲気が少し・・・和らいでいた。
ヲグナの様子を見て安堵の息を漏らしたサンダラーが、
『それでは・・・』と声を挙げた時、白蛇が軽く挙手をし口を開いた。
「精神面の方はいかがなのでしょうか?」
『っ!?』
白蛇の声に再び空間が緊張に包まれると、
イザナミ(分体)はとても言いにくそうに『多少は・・・』と言った。
『多少・・・ですか?』
白蛇のその冷たい声にイザナミ(分体)は、
あからさまに緊張が見て取れると、
今度は黒犬が『どうなんだ?』と横目で睨みながら尋ねた。
その声にイザナミ(分体)は、やや緊張気味に答えた。
『1人は・・・』と・・・。
イザナミ(分体)の物言いに黒犬は『なるほどな』と呟くと、
イリアとセルンは『ゴクリ』と喉を鳴らし言い知れぬ恐怖を感じた。
するとセルンが少し震えながらも挙手をすると、
サンダラーの頷きと共に口を開き尋ねたのだった・・・。
「私達はイザナミ(本体)様に2人には資格がある・・・と、
そう言われダンジョンに入りレベルを上げて来ました。
その時、私達が何故・・・選ばれたのかも教えられましたが、
詳しい内容まではお聞かせ頂けませんでした。
ですから・・・この場でどうして選ばれたのかを、
詳しくお聞きしたいのですが?」
少し震えた声でそう尋ねたが、
言い終わる頃にはその震えも消え失せ、
この場に居る神々に対して臆する事無く言い切った。
この時・・・。
一瞬、白蛇の口角が上がったが、ヲグナ以外の者達は気付かず、
ヲグナは内心『こいつは?』と訝し気な表情へと変わったが、
サンダラーによって話は進められた・・・。
「確かに説明しなければ納得もできないだろうな?
イザナミのヤツ・・・どうして話しておらんだ?」
サンダラーの視線は分体であるイザナミへと向けられたが、
分体は肩を竦めて見せると『はぁ~』と溜息を吐いたのだった。
するとここでヲグナが『私が説明しよう』と声を発すると、
一同が頷き了承を得たヲグナがイリアとセルンに説明していった。
ヲグナの話を聞き終えた2人は、
驚愕すると暫くの間、硬直するためとなったのだった・・・。
2人の様子を見ていたヲグナは、
『まぁ~仕方があるまい?突然、どちらかの命を差し出せと言われれば』と、
イリアとセルンの心情を察すると『ふぅ~』っと溜息が漏れ出た。
すると再びセルンが挙手をすると、
サンダラーの頷きと共に口を開き質問をした。
「それはつまり・・・ヒルコ様の魂の転生先が、
ユウトの彼女であった『ハヅキ・ホダカ』であり、
ヒルコ様の魂の影響を受けたユウトを生き返らせる為には、
2つに分かれたホダカの魂を宿した私達のどちらかの魂が必要だと?」
そう尋ねたセルンに一同が頷いて見せた。
すると白蛇が皆に対し口を開いた。
「すぐに・・・とは、申しません。
いきなり真実を告げられたのです。
お迷いになられるのも当然・・・かと?」
『確かにな?』とそう言ったのは黒犬だった・・・。
「正直なところ・・・。
ユウトに会えるのなら・・・と、そう思っての事だろう。
中途半端な説明をしたこちら側・・・。
いや、イザナミの不手際だと言わざるをえんがな?」
そう言った黒犬はイザナミ(分体)に視線を向けるが、
『妾ではないっ!』と口調を強めると、
『確かにな?』と黒犬も納得はしていた・・・。
「うちの主は適当なところがしばしばあるからな~?
突然真実を知った2人には本当に申し訳ない事をした。
・・・すまんな?」
2人に対し座ったまま頭を下げた黒犬に、
イリアとセルンは無言ながらも『フルフル』と頭を横に振って見せた。
2人の顔色が悪くなり、緊張に包まれた時、
白蛇は『あら?』と口を開くと、指を『パチン』と弾いて見せた。
すると一瞬にして、一同の前にカップとソーサーが出現すると、
その中には暖かい紅茶が既に入れられていた。
「お二人共・・・。
喉が渇いているのでしょ?
まずはお茶でもお飲みなって気持ちを落ち着けて下さいな?」
そう言った白蛇は微笑みを向けるも、
イリアとセルンは双眼が閉じられたままでてる事に驚いていた。
そんな雰囲気を察した白蛇は『フフっ』と笑いながら答えた。
「私の両眼はその昔・・・。
俺らが主、イザナミ様によって抉り取られたのですよ♪」
『フフフっ』と笑いながら言った白蛇に、
黒犬は慌てて『白蛇っ!』と声を挙げると、
『まぁ~良いではありませんか?昔の事・・・故』と、
少し狂気染みた声で言ったのだった・・・。
その返答に苛立ちを見せた黒犬は、
テーブルを『バンっ!』と叩きながら立ち上がると、
ヲグナが『止めないかっ!』と一喝し、
黒犬は怒気を纏わせながらも着席した。
するとセルンが『あの・・・』と言いながら挙手をすると、
サンダラーの頷きの後、皆に尋ねた。
「期限とおっしゃられていましたが、
その期限と言うのは?」
その問いにソンダラーが目を閉じながら答えた。
「明日から・・・1週間ほどだ・・・」
「一週間っ!?」
セルンは驚きの声を挙げたが、イリアは双眼を見開くのがやっとだった。
「何故・・・後、一週間なのですかっ!?」
残りの期限が一週間だと告げられたセルンが、
怒気を滲ませながらそう言うと、
ヲグナが重くなった口を開いた・・・。
「・・・君達・・・いや、命在る者達は本来・・・
この迷宮に来る事はない。
それはここが、亡者の世界である為だ・・・。
君達が迷宮に潜って突破するまでの期間・・・。
気付いていないかもしれんが、
2人の寿命はこうしている間でも、どんどん削られている」
ヲグナの説明を聞いた2人は『そんな・・・』と言葉を吐くのがやっとで、
それ以上の言葉が出ず沈黙していると、
またもや白蛇が2人に口を開いていった・・・。
「通常の人間・・・。
いえ、人族であれば、とっくの昔にその命を使い切り、
今頃亡者となって、この冥界の大回廊を彷徨っているはずです。
ですが、お二人はエルフとダークエルフ・・・。
つまり長寿の命を持つ種族ですので、
冥界に居ても、ある程度は生きていく事は可能なのです」
するとここで沈黙していたイザナミ(分体)が声を挙げた。
「長寿の種族だったのも、何かの縁・・・なのかもしれんの?」
そう言うとイザナミは(分体)は再びその口を閉じたのだった。
『・・・・・』
全てを知り言葉が上手く出て来ない2人に、
『折角・・・100階層もあるダンジョンを突破出来たのにな?』と、
サンダラーが呟くと、2人の目には涙が溜まっていた。
そしてそれをただ見ている事しか出来ないイザナミ(分体)は、
膝に置かれた両拳をただ、握り締める事しか出来なかったのだった・・・。
するとヲグナが哀れな目を2人に向けながら言った。
「悪い・・・とは思っている。
だが、俺達は悠斗君に生きてもらわなければならないんだ。
この世の厄災から・・・この世界・・・
いや、全世界を守ってもらう為に・・・。
悠斗君は我々の・・・
いや、全世界の生きる者達を守ってもらわねばならないんだ。
だから・・・」
ヲグナは余程辛かったのだろう・・・。
神であるが故の無力さに・・・。
顔をゆがめ苦悶に満ちた表情を見せるも、
2人は俯き身体を震わせているだけだった・・・。
『それに・・・』と苦悶の表情を浮かべたままのヲグナは続けた。
「先程セルン君だったかな?
君が尋ねた『期限』は、彼・・・
悠斗君にもその期限があるんだ」
悠斗にも期限があると聞かされたセルンは、
涙で頬を濡らしながらも勢いよく顔を上げると、
声を張り上げた。
「ユ、ユウトにも期限がっ!?
で、でもどうしてですかっ!?
ユウトは今、魂だけの存在なのでしょっ!?
どうしてユウトに期限があるのですかっ!?」
そう怒声にも似たセルンの声に、
今度はサンダラーが答えた・・・。
「確かにあいつ今、魂だけの存在だ・・・。
だかな?本来亡者という者達は、この大回廊を彷徨い歩く間、
己の行いを反省し後悔しながら奈落へと落ちて行く・・・
それが大前提なのだ。
だがユウトの場合・・・。
一時は彷徨い歩きはしたが、すぐに我々によって保護され、
神々の仕事の為に、無理矢理この冥界の理を曲げておるのだ。
あの大回廊から外れた亡者の行く末を知っているか?」
そう尋ねたサンダラーに、セルンは『いえ』と答えると、
サンダラーは大回廊を外れた亡者達の行く末を教えた。
「まずはソウル・イーターと呼ばれる者達に捕食され、
彼らの栄養となる。
他には個人差があるが、大回廊を外れた者は、
奈落に落ちる事もなく・・・そして魂の再生もされる事もなく、
消滅・・・してしまうのだ」
「・・・しょ、消滅っ!?」
冥界の真実を知ったセルンは激しく動揺するも、
怒りに任せその眼光を向けるとこう言った。
「神だと言うのならっ!
どうして神々の皆さんはその命を救う為に、
命を・・・魂を投げ出さないのですかっ!」
セルンが怒りに任せてそう言った時だった・・・。
突然『ギィィィっ!』と扉が開くと、
姿を現したのはヴァマントだった・・・。
ヴァマントは扉を閉め歩き始めると、
怒声を発したセルンにこう言った・・・。
「それはな?
貴様も知っているだろうが、我々神々は自らの力を分散し、
全世界の生命が居る星々に分体を派遣し、
秩序を守る為に監視しているからだ・・・。
その為、我々には・・・厄災と戦うだけの力がない。
もし、分体など派遣しなければ、誰もか弱き人族などには頼まんっ!」
そう言いながらヴァマントは威圧を放ったが、
セルンの眼光が鈍くなるどころか、更に瞳の奥に力が宿った。
それを見ていたヲグナは内心『ほう~中々やるね?』と感心するも、
ヴァマントを睨みつけるセルンは口を開いた。
「・・・か弱き?
か弱き人族ですってぇぇぇっ!」
そう激怒した瞬間・・・。
セルンの隣で震えていたイリアが呟いた。
『バーニング・ブルー…』
そう呟いた瞬間・・・。
突然イリアの身体を蒼き炎が包み込み、
鎧と剣へと姿を変えると、一瞬にしてヴァマントの懐に潜り込み、
その蒼く燃え盛る剣を喉元に突きつけた・・・。
『っ!?』
その余りの速度に驚いた神々はイリアの戦闘能力に驚いたが、
喉元に突きつけられた剣を前に、ヴァマントは顎を上げながら口を開いた。
「ほ、ほう・・・中々やるじゃないか?
確かイリアと言ったか?
この私に剣を突きつけるとは・・・
貴様・・・一体どういうつもりだ?」
イリアはヴァマントに剣を突きつけながら睨みを効かせ、
冷汗が浮かぶヴァマントにこう言った・・・。
「神々とやらはそんなに偉いんですかっ!?」
「なっ、何だとっ!?」
「神々は人々を・・・
そこに生きる者達を守ってこその神ではないのですかっ!?」
「きっ、貴様・・・我々神を愚弄するのかっ!?」
「この程度の言葉に怒るなんて・・・
それじゃ~人族達と何も変わらないじゃないですかっ!
何が神よっ!
人族を・・・命ある者達を舐めないでよっ!」
そう怒声を発したイリアに、セルンは『フっ』と笑みを浮かべると、
『確かに・・・ね』と呟くと咆哮しいた。
『イグニッションっ!
ブラック・エッジっ!』
セルンは全身を黒き炎が包み込み、跳躍しヴァマントの背後を取ると、
『白銀の双月』の刃を背中に当てながら言った。
『貴女からは他の神々とは違うモノを感じるわね?
女帝さん・・・貴女・・・一体何を隠しているのかしら?』
この時、2人の行動に驚きはしたが、
神々達は止めに入らなかった・・・。
ヴァマントの突然の乱入・・・。
そしてその傍若無人の振る舞いに、神々達は止める気も無かったのだった。
ヴァマントの行いに対し肩を竦める者・・・。
呆れる者・・・そして笑う者達まで現れた。
そんな神々を見たヴァマントは『お前達』と声を発するも、
誰一人・・・その声には答えなかった。
「くっ!貴様ら・・・」
「私の『魂の灯』が・・・いえ、ホダカが言ってるわ。
この女は何かを隠しているってねっ!」
セルンの言葉に同調したイリアが『コクリ』と頷くと、
蒼き炎が猛り、ヴァマントの衣装の襟を『ジュゥゥっ』と焦げ付かせた。
『そこまでだっ!君達っ!』
突然ヲグナが怒声を発し、この部屋に緊張が走ると、
ヴァマントに剣を突きつけるイリアとセルンに言った。
「2人共・・・すまない・・・。
もうそのくらいにしてやってくれ・・・」
そう言ったヲグナは頭を垂れると謝罪を口にした。
『っ!?』
上位神であるヲグナの行動に驚いた者達は一斉に立ち上がると、
イリアとセルンに対し深々と頭を下げて見せたのだった。
「君達の言う事は最もだ・・・。
だが、我々神々達は、最高神様の理を捻じ曲げる事は許されないのだ。
気持ちもわかる・・・そして無理難題を言っているのもわかっている。
だが・・・我々にはこうするしかないのだ」
上位神であるヲグナの声に、
深々と頭を下げた神々が声を揃え『すまなかった』と謝罪を口にした。
イリアとセルンはその光景に驚くと、
ヴァマントに突きつけた剣を収めこう言った・・・。
「ユウトだけに重荷を背負わせないわ・・・。
女帝さん・・・貴女の命は、神々の謝罪で取らないであげるわ。
精々・・・感謝する事ね?」
『お、おのれ・・・セルンっ!
そして・・・イリアっ!貴様達・・・覚えていろよっ!』
「・・・ふ~ん、別にいいですよ?
確か皆さんの話では、私かセルン・・・どちらかが死ぬんですよね?
その時って・・・覚えていられるのかな~?
・・・ねぇ、セルン?」
「フッフッフっ・・・確かにそうね?
あぁ~それと女帝さん?
言ってる事・・・なんだか矛盾していません?
神がそんな雑魚・・・みたいなセリフを吐くんですね?
現世に戻った時、みんなに教えなくちゃね?」
「ぐぬぬぬ・・・き、貴様ら・・・」
そう告げたセルンとイリアは、再び席に座ると、
白蛇に出されたお茶を飲み干し、笑みを浮かべながら、
『さて皆さん、続きをどうぞ?』と言ったのだった・・・。
そしてこの光景を見せられた神々は、
苦笑いを浮かべる者、顔を顰める者・・・
そして笑っている者もいたのだった・・・。
ってな事で・・・。
今回のお話はいかがだったでしょうか?
色々と回収されるモノ、そしてまだ引っ張るモノはありますが、
楽しんでいただければ・・・と、思います。
ってなことで、緋色火花でした。




