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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第三章・冥界編
402/403

閑話・運命の糸・後編

お疲れ様です。


今回でミラーズ編は終了します。


楽しんで読んでいただけたらとても嬉しいですっ!


一度書きあげたんですけど、満足いかなくて・・・

全部消しちゃいましたw



それでは、閑話・運命の糸・後編をお楽しみ下さい。

卑弥呼達は悠斗に説明する為、席に着いた・・・。


「悠斗?このミラーズは、とある星・・・

 ん~・・・場所は教えられねーが、今現在かなりまずい状況でな?

 お前の純粋な鬼の力が必要なんだ・・・」


「俺の鬼の力?」


「あぁ・・・。私の力は昔、

 ある鬼の小指から創り出された『勾玉』を源とし、

 『鬼術や鬼道』を行使する事によって鬼の力を得ている。

 一度は肉体を失ったが、イザ子が鬼の勾玉を核にしてな?

 そのまま人の身体を創り出し『鬼の力』を行使するに至っているが、

 お前みたいな純粋な鬼の気を行使する者達からは、

 『マガイモノ』と言われても反論出来ない」


そう説明を始めた卑弥呼は悠斗の反応を見ながらも続けた。


「ミラーズが救おうとしている者の名は訳があって言えない。

 だけどミラ子はその愛する男を目覚めさせる為に、

 お前の持つ鬼の力を確認したいと言って来たんだよ」


そう説明した卑弥呼に悠斗は『なるほど』と頷くと、

正面に座るミラーズを見ながら呟いた・・・。


「・・・愛する人の為・・・か・・・」


「ん?」


ミラーズは首を傾げた瞬間、

悠斗が誰かを思い出しての呟きだと感じると、

卑弥呼に念話を送った・・・。


{・・・彼は今、誰かを思い出していたようだけど?}


そう念話を送ってきたミラーズに卑弥呼は答えた。


するとミラーズは顔を顰め正面に座る悠斗を見ると、

卑弥呼に念話を送った。


{・・・この子の為に彼女は力を与えたのっ!?}


{あぁ・・・だが力を得るには必ず代償がある}


{・・・その代償って?}


卑弥呼は悠斗に視線を向けると複雑そうな表情を見せながら答えた。


{・・・彼女の声だ}


{・・・声?}


{あぁ・・・。

 悠斗の頭の中にある彼女との思い出・・・。

 記憶にしかない彼女の声を代償にこいつに力を与えたんだ}


{・・・えっ?でもちょっと待って?}


{ん?}


{・・・頭の中に映像はあっても、声は消えているって事?}


{あ、あぁ・・・。

 姿や顔は覚えていても声はない・・・}


{・・・そ、そんな}


ミラーズは哀しそうな視線を向けながら、

 飲み物に口を付けていると、悠斗はそんな視線に気づき、

 笑みを浮かべながら口を開いた。


「・・・大丈夫。

 俺はあいつの声がなくたって・・・」


ミラーズはこの時、2つの事に驚いた・・・。


1つは念話での会話が悠斗にバレていた事・・・。

そしてもう1つ・・・。


それはミラーズが悠斗の微笑んだその瞬間、

その笑顔の中身が『からっぽ』である事だった・・・。


そんな悠斗の心情を察したミラーズは、

『クっ』と小さく呻くと悠斗に頭を下げながら口を開いた。


「・・・ごめんなさい」


「えっ?どうしてミラーズさんが謝るんですか?」


ミラーズの突然の謝罪に悠斗は驚いていた。


するとミラーズは頭を上げながら答えた。


「こんな時に一方的な私の我儘に・・・」


そう言いながらミラーズはその視線を落とし、

哀しげな表情へと変わったのだった・・・。


悠斗はそんなミラーズを見て、

寂しげな笑みを浮かべながらこう言った・・・。


「俺は大丈夫です。

 彼女と・・・穂高と約束したから・・・」


「約束?」


「はい・・・。

 穂高から託されたこの力を、

 俺が自分の明日を切り開くために使う事です」


そう言った瞬間だった・・・。


その様子を見ていた卑弥呼とヴァマントは険しい表情を見せていた。


(嘘を着くな・・・。

 お前は死地をただ求めているだけだろうにっ!)


(悠斗・・・今の言葉はミラ子の事を想っての言葉か?)


そう考えていた時、

悠斗は卑弥呼へと視線を向けるとこう言った。


「それで卑弥呼?

 俺の鬼の気でミラーズさんの彼氏さんを助けられるのか?」


そう尋ねた悠斗に卑弥呼は『ニヤり』と笑みを浮かべた。


「あぁ~勿論だ、悠斗。

 うちのバカ弟子に万が一の事が・・・と思ってな?

 ヤツの身体に鬼の因子を・・・ちょいとな?」


そう意味有りげに言った卑弥呼に、

悠斗は肩を竦ませたが、『ん?』と疑問の声を挙げた。


「卑弥呼って・・・弟子が居たのっ!?」


「あ、あぁ・・・それがミラ子の彼氏だが?」


悠斗は『やれやれ』と呆れるとこう言った。


「・・・ならさ?

 とっととミラーズさんの彼氏さんを助けなくちゃな?」


そう言ってミラーズに見せた笑顔は、

今のミラーズにとっては有難いものだった・・・。


「・・・有難う」


涙を浮かべ礼を述べたミラーズを見ながら、

悠斗は卑弥呼に『どうしたらいいんだ?』と尋ねた。


すると卑弥呼は立ち上がりながら、

大きな胸の谷間からあるモノを取り出した。


「・・・それは?」


「・・・見て分かるだろ?

 私が創った『勾玉』だ」


卑弥呼の手の平にある白い勾玉を見ると、

悠斗は手に取りながら『これをどうするんだ?』と尋ねた。


すると卑弥呼は真剣な面持ちとなり悠斗に言った。


「今のお前は魂だけの存在だからな?

 細胞的なモノからって訳にはいかない・・・」


そう卑弥呼が言った瞬間・・・。

悠斗の脳裏には嫌な予感がした。


(えっ?も、もし生身の身体だったら・・・

 俺ってば刻まれる予定だったのかっ!?)


悠斗はそう想像すると不安な表情を見せ、

卑弥呼を見つめるが、その様子に反応すらせず言葉を続けていた。


「つまりだな?

 細胞よりも魂だけの状態の方が都合がいい

 って・・・おい、悠斗?聞いてるのか?」


「・・・ごめん」


自分の身体が切り刻まれる事を想像してい悠斗は、

卑弥呼の話が頭に入らなかったが、もう一度説明を受けると納得した。


「つまり、魂だけの状態の方が、

 鬼の気をその白い勾玉に流し込みやすいって事だな?」


「まぁ~・・・そんなところだ」


『わかった』と答えた悠斗に卑弥呼は『頼むぞ?』と返すと、

悠斗は少しみんなから離れ鬼の気を溢れさせ始めた・・・。


(こ、これが純粋な鬼の気?

 と、とても禍々しい力なんだけど、

 これで本当にリョウヘイが目覚めるの?)


そう疑問を持ったミラーズだったが、

今は親友である卑弥呼の言う事を信じるしかなかった。


そして握り締められた拳の中の勾玉を感じながら、

悠斗はその中へと鬼の気を流しと込み始めた・・・。


「ゆっくりとだ・・・ゆっくりと流し込んでくれ。

 勾玉を壊さないようにな?」


「・・・あぁ」


悠斗が鬼の気を勾玉へと流し込んで行くと、

ミラーズは卑弥呼に念話を送った。


{・・・ヒミぞう?

 貴女の言う純粋な鬼の気って・・・こんなに?}


{あぁ・・・すげーだろ?

 私の鬼の気の濃度とこいつの鬼の気の濃度・・・

 こんなにも差があるだなんてな?}


笑みを浮かべながら悠斗を見る卑弥呼の目が、

とても優しく見えた事に驚いたミラーズは続けた・・・。


{ヒミぞう・・・。

 1つ・・・お願いがあるわ}


{お願い?・・・何だよ?}


{彼と・・・カミノ・ユウトと手合わせがしたいわ}


その瞬間・・・。


『はぁぁぁぁっ!?』と声を挙げた卑弥呼に、

悠斗とヴァマント・・・そしてらぶりんは驚いていた。


「こいつと・・・?

 悠斗と戦いだぁぁぁ~っ!?」


『えぇぇぇぇぇっ!?』


卑弥呼の声に皆が一斉に驚き、

その際に悠斗の手の平の中の勾玉が、

小さく『パキンっ!』と音を立てて砕けた。


「・・・あっ」


やり直すはめになった悠斗だったが、

白い勾玉に鬼の気を流し込み終わると、小さな赤い光を放った。


それを確認した卑弥呼は悠斗から勾玉を返してもらうと、

白い勾玉が真っ赤に染まっていたのだった。


卑弥呼は『ニヤり』と笑みを浮かべながら、

『赤い勾玉』を差し出したが、ミラーズは首を横に振った。


「卑弥呼・・・それを受け取る前に・・・」


そう言ったミラーズに卑弥呼は『まじなのか?』と返答すると、

ミラーズは迷う事無く頷いた。


悠斗に向き直ったミラーズは真剣な眼差しを向けながら言った。


「ユウト・・・一度私と手合わせしてくれない?」


再びそう尋ねたミラーズに、悠斗は険しい表情を浮かべた。


「彼氏さんを助ける事と、

 俺と手合わせする事に意味があるって事?」


「えぇ、貴方と手合わせをする事で、

 私なりの答えが見つかるかもしれないと思うから・・・」


「もし・・・答えが得られなかったら?」


「・・・それでも構わない。

 私は私の意思でユウトの・・・鬼の力の事を知りたいわ」


悠斗はミラーズの固い意思を感じると『わかった』と答えた。



悠斗とミラーズが同意の元・・・。


ヴァマントが創り出した亜空間の開けた場所で対峙した。


そしてそれを見ていたヴァマントは卑弥呼に尋ねた。


「なぁ、卑弥呼?

 ユウトと手合わせする事に意味はあるのか?」


「さぁ~・・・どうなんだろうね~?」


「はぁ?」


ヴァマントの問いに卑弥呼の返答は予想と違ったようで、

そして話を聞いていたらぶりんまでもが驚いていた。


卑弥呼を見上げるらぶりんの視線に気づくと、

笑みを浮かべながら口を開いた。


「娘よ・・・心配すんじゃねーよ?」


「どういう意味です?」


ミラーズの事を心から心配しているらぶりんに、

卑弥呼はわざとらく満面の笑みを見せるとこう言った。


「手合わせ・・・いや、この戦いはそうはかからねーよ?」


「・・・どういう意味ですか?

 ミラーズ様があの人族に負けるとでも?

 ユウトさんがいくら鬼の気を行使出来ると言っても、

 所詮は人族の・・・生身の身体なんですよ?

 元とは言え、ミラーズ様は深淵の女王です。

 負けるはずはありません」


睨み付けるように反論したらぶりんに、

卑弥呼は『ニヤり』と笑みを浮かべた。


「まぁ~、見てな・・・。

 私が言うよりも見た方が早いってーの♪」


そう言うと卑弥呼は対峙する悠斗とミラーズへと視線を向け、

『ウズウズするね~?』と言って2人の戦いを見守り、

またらぶりんも心配そうな表情を浮かべながら、

ミラーズを見守るのだった・・・。



「ミラーズさん・・・剣はなしでいいんですね?」


「えぇ、私は神力を・・・。

 君は鬼の気を・・・」


「了解です」


そう言葉短く返答すると、悠斗は踵を返し歩き始めた。


そして適度な距離を取ると、

ミラーズは見守る卑弥呼に声を挙げた・・・。


「ヒミぞうっ!お願いっ!」


「あいよ~」


2人が対峙すると周囲に緊張感が張り詰めた・・・。


悠斗はミラーズの揺るぎない意思を感じ取り笑みを浮かべるが、

ミラーズは悠斗の余裕な雰囲気に違和感を感じていた・・・。


(ど、どうしてユウトからは緊張感を感じないの?

 まさか本当にこの私に勝てるとでも?

 私の正体を知ってなお余裕すら感じる・・・。

 リョウヘイとは違う力を感じるわ)



2人が対峙し構えを取ると、卑弥呼は笑みを浮かべながら手を挙げ、

振り下ろすと同時に声を挙げた。


「始めっ!!」


卑弥呼の合図とともに駆け出し、

ミラーズは身体に冥界の紫色の神力を纏わせ、

悠斗は赤い鬼の気を身体に纏わせながら激突した。


『はぁぁぁっ!』


2人の声が亜空間に響き渡るも、

その攻防は見ている者達も手に汗を握った・・・。


『フォンっ!シュっ!ブォンっ!』


ミラーズは徐々にペースを上げ、

未だに一撃のヒットも与えず躱し捌き続ける悠斗に内心舌を巻いた。


(クっ!は、速いっ!?

 生身の肉体じゃない分、どうしても反応は遅れるはずなのにっ!?

 こ、この子・・・強いっ!)


笑みすら浮かべミラーズの攻撃を全て弾き返す悠斗だったが、

内心はかなり驚いていたのだった・・・。


(あの細い腕からは想像もつかないくらいに、

 素早く攻撃も重い・・・。

 元とは言え・・・さ、流石に深淵の女王・・・

 現役を退いてこの連撃・・・流石だね・・・)


2人は一度後方に下がり、態勢を整えると悠斗は声を挙げた。


「・・・ミラーズさん、かなり強いですね?」


そう言われた事に驚いたミラーズだったが、

再び顔を引き締めながら返答した。


「君も・・・かなりの強者なのね?

 少々侮っていた事を謝罪するわ・・・」


ミラーズが薄く笑みを浮かべながらそう言うと、

悠斗もまた口角を挙げながら言った・・・。


「なら・・・もう少しスピードアップといきますか?」


『えっ?』とミラーズが声を挙げた瞬間・・・。


悠斗は『はぁぁっ!』と短く鬼の気を放出すると、

一気に駆け出しミラーズの懐に入った・・・-。


(は、速いっ!?)


悠斗は右拳を繰り出し、それをミラーズが弾くと、

突然ミラーズの視界から悠斗が消えた・・・。


「えっ?」


「こっちです・・・」


悠斗の声に思わず反応したミラーズは、

自分の足元へと視線を向けた瞬間・・・。


『バシっ!』とミラーズの左足に痛みが走り、

顔を顰め対処しようとすると、今度は背後から悠斗の声が聞こえた。


「いきますよ?」


「クっ!」


『ドンっ!』とミラーズの右肩の後ろに衝撃が走ると、

ミラーズは後方に居る悠斗に旋回しながら裏拳を放った。


「甘いっ!」


放たれた裏拳を悠斗はしゃがみ込み、

自分の右肩をミラーズの軸足となる左足に当てると、

バランスを崩したミラーズの腹に悠斗は右肘を食い込ませた。


『ドスっ!』


『うぐっ!』


その打撃にミラーズの身体は九の字に折れ曲がると、

チャンスとばかりに留めの一撃を顔面に放った悠斗だったが、

ミラーズは咄嗟に身体を捻り躱すと、

驚く悠斗の首筋に手刀を直撃させた・・・。


『シュっ!』


『バシっ!』


『くっ!』


悠斗の顔が一瞬歪み、今度はミラーズがチャンスとはがりに追撃するが、

その攻撃は間一髪悠斗が躱し2人は距離を取った。


「・・・おしいっ!」


「危なかった~♪」


2人の攻防が始まってから20分ほど経過していたが、

ヴァマントは2人が放つ雰囲気に違和感を感じ尋ねた。


「な、なぁ・・・どうして2人は楽しそうなんだよ?」


唖然とした顔を見せながらそう尋ねて来たヴァマントに、

卑弥呼は『ニヤ~』っと笑みを向けた。


「わかんないのかい?

 どう見たってあの2人はこの戦いを楽しんでんだよ」


すると隣に居たらぶりんが、花魁衣装の袖を引きながら尋ねた。


「卑弥呼・・・楽しいってどう言う事ですかっ!?

 少なくともミラーズ様はユウナギ様の事を想ってっ!」


そう少し興奮気味に声を挙げたらぶりんに、

卑弥呼は『わからないのかい?』と言いつつ続けた。


「ミラ子は悠斗のペースにはまっちまったのさ?」


「・・・ユウトさんのペース?」


「あいつは言っていたんだよ?

 未知なる力と戦えるのが楽しみだってな?

 それとは正反対のミラ子だ・・・。

 あいつはその特性とも言える激情を以って戦いに臨んだが、

 そんな張り詰めたミラ子と戦いたくはなかったのさ?」


そう話す卑弥呼にヴァマントは尋ねた。


「もっと分かりやすく言えよっ!」


「・・・ったく~しょうがねー連中だな~?

 いいか~?

 愛する人の為に戦うミラ子に悠斗は悠斗なりに応えているって訳さ?」


そう説明した卑弥呼だったが、2人には届かなかったらしい・・・。

『やれやれ』と肩を竦めた卑弥呼は続けた。


「気が付かないのかい?

 悠斗のヤツ・・・鬼の気を・・・

 鬼魂之門を一門ずつ・・・わかりやすく開けてミラ子に見せてんだよ?」


『っ!?』


ヴァマントは『鬼魂之門』の事を知っている為、

かなりの驚きを見せていたが、らぶりんは知らない為首を傾げていた。


卑弥呼は悠斗の力の事を説明してやると、

らぶりんは納得したように口を開いた。


「・・・ははは。

 ユウトさんって・・・とても優しい方なのですね?」


「・・・だな♪」


卑弥呼達がそう話していた時だった・・・。


2人は次の段階へと足を踏み入れていた・・・。


『はぁぁぁぁっ!』


ミラーズは深淵の女王たる力の証でもある、

紫炎(しえん)の神力』を放出し、

悠斗は『鬼魂之門・第二之門』を開いた・・・。


(ミラーズさんのあの激しい紫の炎・・・

 あれが・・・紫炎の神力か・・・すげー・・・

 ヤバいくらいに圧力を感じる)


(さ、さっきよりも赤い鬼の気の濃度がっ!?

 な、何なのよ・・・鬼の気って・・・。

 それに禍々しさもより強く・・・)



2人は駆け出し激突を繰り広げて行く・・・。


ミラーズの拳に纏わせた紫炎の力が悠斗の頬を焦がし、

悠斗の蹴りがミラーズの脇腹にめり込んだ・・・。


『うぐっ!』と呻き声を挙げたミラーズに、

悠斗は笑みを浮かべながら言った・・・。


「ミラーズさん・・・一気にいきますね?」


『っ!?』


ミラーズが驚くのも束の間・・・。


悠斗は『はぁぁぁっ!』と声を開けながら、

ミラーズの身体に連撃を叩き込み始めた・・・。


『ドッドッドッドっ!』と・・・。

身を屈めながら拳を叩き込みつつ体捌きでミラーズの背後に回り込むと、

膝裏を蹴り地面に膝を着かせ、

高々と上げられた右足をその肩口に踵落しを放った。


『ドスっ!』と凄まじい衝撃に『ぐぁぁっ!』と声を挙げたミラーズは、

その衝撃の強さに前のめりに倒れたのだった・・・。


『ミラーズ様っ!?』


らぶりんとヴァマントが思わずそう声を張り上げた時、

悠斗は攻撃をやめるとミラーズに手を差し伸べながら口を開いた。


「・・・これくらいにしておきましょう」


「・・・・・」


「・・・ん?」


無言になったミラーズに首を傾げた悠斗は、

『まだ・・・』と呟くと『ミラーズさん?』と尋ねた悠斗にこう言った。


「まだよっ!私はまだやれるわっ!」

 負ける訳にはいかないのよっ!

 私はっ!私はっ!」


そしてミラーズはうつ伏せの態勢のまま、

紫炎の神力を全身から放出させると、顔を背けた悠斗に蹴りを放った。


『ドスンっ!』


『うぐっ!』


悠斗の腹にめり込んだミラーズの蹴りに、

悠斗は数メートル飛ばされ、

立ち上がるミラーズは追撃のチャンスだと思った。


『はぁぁぁぁっっ!』と駆け出したミラーズは、

全身から更に強力な力を放出すると、


地面に倒れる悠斗に向かって吠えた。


『ブレイジング・アフェクションっ!』(燃え上る愛情)


右拳に紫炎の神力が凝縮されると、

力強く踏み出し渾身の一撃を放ったのだった・・・。


『ゴォォォォォっ!』


紫炎の一撃が唸りを上げて立ち上がろうとする悠斗に迫った。


(ヤバいっ!)


そう本能で感じた時だった・・・。


突然『キィィィィンっ!』と小さな音を響かせ、

悠斗の瞳が緋色となると、

全ての動きがスローモーションとなった・・・。


(俺は真紅の門を開けていないのに何故っ!?)


そう疑問を抱きつつも、

悠斗はミラーズの放った渾身の一撃を、

鬼の気を纏わせた足で蹴り飛ばした。


『ドカっ!』


「えっ!?そ、そんな・・・」


ミラーズは一瞬の出来事に声を漏らし、

そしてそれはこの戦いを見守っていた者達も同様だった・・・。


「い、今・・・一体何がっ!?」


「ひ、卑弥呼っ!?」


ヴァマントとらぶりんが驚愕し声を挙げる中、

卑弥呼は冷や汗を流しながら口を開いた。


「こ、これだよ・・・これ・・・。

 私の時もそうだった・・・。

 決まったと思った瞬間、あいつは・・・

 悠斗はそれを上回って来るのさっ!

 さぁ~、悠斗・・・またあの時の光景を私に見せてくれっ!」


卑弥呼は悠斗の一挙手一投足を見つめ、

恍惚とした表情を浮かべていた・・・。



ミラーズの渾身の一撃を防いだ悠斗は眼光鋭く見つめると言った。


「・・・ミラーズさん、正直今の一撃はヤバかったです。

 貴女の彼氏さんを想う気持ちは・・・

 いえ、愛情の深さがこんな俺にもよく分かりました。

 だから俺も貴女のそんな気持ちに応えたいと思います」


「・・・ユ、ユウト。

 でも、でも私はそれでも・・・

 紫炎の魂は死なないっ!」


「はははっ・・・いいね・・・ミラーズさん。

 その黄金の瞳から貴女の揺るがない気持ちは分かりました。

 だから・・・俺の鬼の力を使い貴女を倒します」


悠斗はそう言うと空に向かって声を張り上げた。


『第三之門・・・真紅の門・・・解っ!』


『ギィィィィっ!』


悠斗の赤い霧が立ち込める精神世界・・・。

そこにそびえる『真紅の門』が開かれた・・・。


その瞬間・・・。


悠斗の身体から膨大で禍々しい真紅の鬼の気が放出されると、

その圧倒的な力の前にミラーズ『ゴクリ』と喉を鳴らした。


「こ、これが・・・この真紅の力が鬼の気っ!?

 この子のどこにそんな・・・こんな禍々しい力がっ!?」


とめどなく溢れ出る真紅の鬼の力にミラーズが動揺すると、

悠斗は半身になりながら構え、静かに双眼を閉じた・・・。


「そうですよね?

 こんな禍々しい力・・・。

 でも、ちょっと待っていて下さいね?」


「えっ?」


そして悠斗の精神世界では、

悠斗の目の前に『不死鳥の門』が建っていた・・・。


不死鳥の紋章が刻まれた紅の門・・・。


その扉に触れ押しながら、悠斗は傍に咲く赤い華に視線を向けた。


「穂高・・・俺はミラーズさんの願いを叶えたい。

 俺の力が役に立つと言うのなら・・・。

 だからさ?不死鳥の力を・・・借りに来たんだ・・・」


『ギィィっ!』


「・・・行って来るよ」



不死鳥の門の扉を開いた悠斗は、

双眼を開くのと同時に再びその瞳が緋色に染まった・・・。


『キィィィンっ!』と小さく音を響かせ、

悠斗の身体から放出されている真紅の鬼の気の色が変化し始めた。


「この力は俺も把握している訳じゃないけど、

 鬼の禍々しい力じゃなく、不死鳥の再生の力を混ぜて行使する」


悠斗の静かなその声にミラーズは『ふ、不死鳥?』と言葉を漏らすと、

悠斗は静かに頷きその力を右拳に集めた・・・。


悠斗の気持ちを受け取ったミラーズは『フっ』と笑みを浮かべると、

力を凝縮する悠斗に向かって言った。


「君の人を想う気持ち・・・

 今度は私がその力を真っ向から受け止めるわっ!

 さぁっ!ユウト・・・放ちなさいっ!

 鬼と不死鳥の力を私に見せなさいっ!」


『コクリ』とミラーズの言葉にうなずいた悠斗は、

矢を放つが如く右拳を脇に引きつけ絞っていった・・・。


(鬼道の呼吸は使わない・・・。

 純粋に人の想いだけで放つ・・・

 鬼の魂と不死鳥の浄化の力を合わせて・・・)


『・・・さぁ、いこうか』


悠斗の口から言葉が零れた瞬間、

緋色の瞳を揺らめかせながら一歩踏み込んだ悠斗は渾身の一撃を放った。


『鬼魂・(さえず)りっ!』


『バシュゥゥゥゥゥっ!』


水の放出を想像させるその射出音・・・。


ミラーズは全身にありったけの紫炎の神力を纏わせると、

両腕を正面に突き出した・・・。


「受け止めきって見せるわっ!」


『ザッパーンっ!』と・・・。

まるで大波の衝撃を受けたかのような感覚に陥ると、

ミラーズはその威力と衝撃に飲み込まれ、

抵抗も虚しく弾き飛ばされたのだった・・・。


『きゃぁぁぁぁぁっ!』


『ビィヤァァァァァァァァァァァァァっ!』


弾き飛ばされる中、ミラーズは聞いた・・・。


(こ、この鳴き声が・・・不死・・・鳥・・・)



意識が薄れる中、不死鳥の鳴き声を聞いたミラーズは、

そのまま飛ばされ意識をうしない地に倒れたのだった。


『そこまでぇぇぇぇぇっ!』


その瞬間、卑弥呼が試合の決着を告げる声が放たれた。



~ 数分後 ~


意識を取り戻したミラーズが目を開けると、

そこには心配そうに覗き込むらぶりんとヴァマントの姿があった。


2人から『大丈夫?』と声を掛けられるも、

無意識ながらミラーズは悠斗の姿を探し悠斗を見つけると、

起き上がり声を挙げた・・・。


「・・・ユウト?」


その声に悠斗と卑弥呼は微笑みながら近付くと、

俯いたミラーズは言った・・・。


「私・・・負けたのね?」


その言葉に卑弥呼が頷くと、顔を挙げたミラーズは悠斗に言った。


「あの一撃・・・強烈なはずなのに・・・

 どこか人の温もりみたいなモノを感じたわ。

 それにあの鳥の声・・・

 恐らくあの声が不死鳥の声なのね?」


「俺もまだわからないけど、

 多分、そうだと思う」


「・・・そう。

 あの不死鳥の残響・・・フフっ。

 とても暖かく感じたわ・・・」


そう言いながら優しく微笑んだミラーズに、

悠斗もまた微笑みミラーズの肩に手を置いて言った・・・。


「ミラーズさん、これは別に勝ち負けじゃないでしょ?」


「・・・えっ?」


悠斗の言葉に耳を疑ったような表情を見せたミラーズに悠斗は言った。


「俺達は互いの信念の為に答えを探していただけだろ?」


「・・・あっ」


「・・・それでいいんだと俺も思う」


そう言った悠斗の言葉にミラーズは涙を流しながら言った。

『有難う・・・』と・・・。


その後、テーブルを囲みお茶を飲んでいた時だった・・・。


突然神界の門が現れ扉が開くと、

その中から恐る恐る顔を覗かせた者が居た・・・。


「あ、あの~・・・卑弥呼さーん?」


その声に聞き覚えのある卑弥呼の視線が向けられると、

盛大に顔を引き攣らせた卑弥呼は拳を鳴らしながら言った。


「てんめ~・・・今更何をのこのこと?」


『ヒィっ!』と怯えた声を挙げた瞬間だった・・・。


『えっ!?』とすぐさま声色を変えたミランダは口をパクパクさせていた。


そんな様子を見せたミランダを見たミラーズは、

笑みを浮かべながら口を開いた。


「久しぶりね・・・?ミランダ♪」


「マっ、ママァァァァァっ!?」


絶叫に近い声を放ちつつも、ミランダの視線が泳ぐと、

その視線の先に悠斗らしき人物を見つけた・・・。


「ま、まさか・・・ユ、ユウト・・・なの?」


少し声が震えているのがわかるほど、

感嘆していたミランダに悠斗は軽く手を挙げながら言った。


「やぁ、ミランダ・・・久しぶり~♪」


『ユウトォォォォっ!』と・・・。

再び絶叫に近い声を張り上げたミランダは駆け出した。


「ちょっ、えっ!?ちょっと待ってぇぇっ❕

 ミランダァァァァっ!?」


『ガッシャーンっ!』


駆け出したミランダはテーブルを飛び越えると、

そのまま悠斗に飛びついたのだった・・・。



『運命の糸・ミラーズ編・完・エピローグへ・・・』

 

ってな事で・・・。


今回のお話はいかがだったでしょうか?

面白いと思ってもらえたなら光栄です。


そして活動報告の方には、

ミラーズの新曲をアップしていますので、

聞いていただけたら嬉しいです。


少しでも緋色の世界を共感してもらえればと思っています。


そして次回は、ミラーズ編のエピローグとなります。



ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
正直、手合わせとはいえイリアやセルンを骨折させるほどボコれる悠斗にやや引いていたので、その心理が少し理解できたように思います。 こちらのミラーズの曲も素敵ですね♪ 「愛のために戦う」て感じがすごくし…
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