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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第三章・冥界編
400/405

291話 悠斗vsセルン

お疲れ様です。


前書きと後書き書くのを忘れてた><

そんな緋色で御座いますw


今回はセルンの回となりますので、

楽しんでいただければと思います^^


ってか・・・今回話が長いです><



それでは、291話をお楽しみ下さい。

翌日・・・。


再び王宮の広場に集まった面々は、

昨日と同じように分かれていた・・・。


観客の数も昨日よりも増え、

生身の地上人の活躍を一目見ようと集まっていたのだった。


~ イザナミ(分体)陣営 ~


「今日はまたすごい数の人達が来ているのですね?」


そう驚きの声を挙げたのは昨日悠斗と模擬戦を繰り広げたイリアだった。


「あーね?

 昨日のイリアっちの模擬戦の噂が出回ったっぽい」


昨日より騒がしくなったこの場所に少々苛立ち気味のイザナミがそう言うと、

ジェミーが満面の笑みを浮かべていた・・・。


「私もユウトと戦ってみたいだけど~?」


そう声を挙げたジェミーにイザナミは『チっ!』と舌打すると、

ジェミーは『はぁぁぁ?てめー今、舌打ちしたのかぁ~?』と、

突然口論を始め出した・・・。


その様子にイリアとセルンは溜息を吐くと、

イリアは少し緊張気味のセルンに声を掛けた。


「どうなの・・・セルン?」


「なにが?」


「い、いや・・・何だか緊張しているように見えて・・・」


そう話すイリアにセルンは笑みを浮かべながら言った。


「緊張というよりも興奮の方が強いわよ?」


「・・・そう・・・なの?」


心配そうにそう言ったイリアにセルンは笑みを浮かべると、

反対側で話をしている悠斗を見ながら言った。


「・・・私も貴女と同じ。

 勝てないと私の本能がそう言ってる。

 だけどね?貴女がそうだったように、私もユウトの傍に居たい。

 だから勝てないと分かっていても、

 私はこの戦いから逃げないわ・・・」


「・・・セルン」


セルンはそう言いながらその青い瞳を悠斗へと向けると、

イリアは『フフっ』と笑い2人の戦いを見守ろうと思ったのだった。



~ 悠斗陣営 ~


みんなと談笑している悠斗を見た南雲は、

『リラックス出来ておるようじゃの?』と笑みを浮かべていると、

傍に居た虎恫が声を掛けた。


「南雲殿はこの戦いをどう見ておいでですか?」


そう問われた南雲は顎鬚を摩りながら言った。


「あのセルンとか言う者・・・。

 あの引き締まった体つきから見るに、

 スピードは昨日戦ったイリア殿よりも遅いようには見える・・・

 じゃがの?

 その1つ1つの動きから見るに、相当な手練れじゃろうの?

 もしやとは思うが・・・足元をすくわれんように・・・」


そう南雲が渋い顔をしながらそう言うと、

悠斗が『じぃちゃん』と声を掛けて来た・・・。


「・・・セルンの凄さはよく知っている。

 それに昨日イリアが見せた力がきっとセルンにもあるはずだ。

 だから俺も油断はしない・・・。

 それが彼女への礼儀でもあるんだ。

 まぁ~それに、ちょっと試したい事もあるしね?」


「・・・試したい事じゃと?」


「まぁ~ね」


そう答えた悠斗の瞳は真っ直ぐ反対側に居るセルンへと向けられ、

悠斗が静かに燃えている事を感じたのだった。


そして王宮の扉が『ギィィィっ!』と開くのと同時に、

冥王サンダラーと女帝ヴァマントがその姿を現した。


セルン達は2人に対し頭を下げると、

南雲達もまた頭を下げた・・・。


だが悠斗だけは軽く手を振って見せると、

満面の笑みを浮かべていたのだった。


「な、なぁ・・・姉貴よ?」


「・・・何よ?」


「俺達の立場をあいつ・・・理解出来てんのかな~?」


サンダラー達に手を振る悠斗を見たサンダラーが、

自信無さげにそう言うと、ヴァマントは『知らんっ!』と言い放った。


その物言いにサンダラーは『姉貴?』と不思議そうに顔を向けると、

ヴァマントは『どうした?』と返して来た。


「姉貴・・・何かあったのか?」


ヴァマントの様子に違和感を感じたサンダラーがそう言うと、

『はぁ~』っと溜息を吐きながら答えた。


「・・・ま、まぁ~私にも色々とあるのさ」


そう答えたヴァマントの視線は悠斗と共に居る卑弥呼へと向けられ、

奥歯を『ギチっ!』と噛み鳴らしたのだった・・・。


(卑弥呼のヤツ・・・余計な仕事を増やしやがってっ!

 何が明日・・・ユウトとミラーズ様が戦うから宜しくだぁ~?

 ったく・・・ふざけてんのかっ!?

 その為の亜空間作りを手伝えだなんてっ!

 この私を一体何だと思ってっ!

 ってか、結局私が全部やったんじゃねーかっ!?)


苛々した表情を隠そうともせずに居る、

ヴァマントの視線を感じた卑弥呼は笑みを浮かべていると、

悠斗が声を掛けて来た・・・。


「なぁ~卑弥呼?」


「ん?どうしたんだ?」


「・・・ヴァマのヤツ・・・お前の事を睨んでるんだけど?

 お前・・・何かやったのか?」


そう尋ねた悠斗に卑弥呼は『わっはっはっ!』と笑うと、

悠斗に耳打ちをした。


「実はな?明日のミラ子との戦いの為に亜空間を用意したんだが、

 ヴァマントに創ってもらったのさ♪」


「ま、まじか?」


「あぁ~♪しかも昨日・・・明日の事をあいつに話したものだから、

 あいつ・・・めっちゃくちゃ怒ってやがんの♪」


とても楽しそうに話す卑弥呼に、

悠斗は『お前な~?』と溜息を吐くと振り返り、

ヴァマントに対し『ごめんっ!』とジェスチャーをして見せたのだった。


そしてそれを見たサンダラーはヴァマントに言った。


「な、なぁ~姉貴?

 あいつ・・・こっちに向って一体何やってんだ?」


サンダラーの声が聞こえていないのか、

ヴァマントは謝罪を口にしながらジェスチャーをする悠斗を見て、

『フフっ』と無意識に笑みを浮かべていたのだった。


すると『なぁ、姉貴、姉貴っ!』と、

ヴァマントの身体を激しく揺するサンダラーの頭に、

『ゴツンっ!』と拳を打ち付けたのだった。


『ぐぉぉっ!』と頭を抱え蹲るサンダラーを見下ろしながら、

『貴様~ここ最近、気安く姉貴姉貴と言っているが?』とジト目を向けた。


サンダラーがヴァマントに何故か正座されられ、

この場に居た者達までもが唖然とする中、

卑弥呼は悠斗に『ほれっ』と言って刀を渡した・・・。


そしていつものように癖を披露した瞬間・・・。


『あれ?これって~?』と納刀した悠斗は卑弥呼を見た。


「気付いたか?」


「そりゃ~・・・ね?」


「・・・で?どうだ?」


そうニヤけた顔で言われた悠斗は、

一度刀を抜くとじっくりと観察した後・・・答えた。


「・・・昨日まで使っていた卑弥呼よりもいい感じだ」


(やはりな?

 あの刀では悠斗には軽すぎたか?

 クククっ・・・本当に私を楽しませてくれる男だよ~♪

 やっぱりこのまま『愛人認定』を狙うか?)


「それに肉厚ってのもいいね~

 耐久力もかなりありそうだな?」


そう答えた事に『うんうん』と頷いた卑弥呼は、

『だろ~?』と自慢げに言った。


「この刀はな~?

 私がお前の為に丹精込めて打った気合いの一振りだ」


「・・・ま、まじか?俺の為に?」


「あぁ~そうさ・・・悠斗?」


「ん?」


「この刀は将来・・・お前の愛人になる為の手付けだ♪」


そう卑弥呼がしたり顔で言った瞬間、

悠斗の周りに居た者達の動きが止まった・・・。


そして卑弥呼が『ん?みんなどうした?』と言った瞬間・・・。


『はぁぁぁぁぁっ!?』と何とも言えない声が上がったのだった。


その声はこの広場に居た者達全員に聞こえると、

『何だ何だ?』と皆の注目が集まっていた。


だが、そんな状況を知らないヴァン達が声を荒げた。


「おっ、おおお・・・お前ーっ!?

 この前の闘技場でも『愛人宣言』したんだってなぁ~?」


「・・・ん?それがどうした?」


平然とヴァンの前でも臆する事もなくそう答えた卑弥呼に、

ヴァンは『貴様ぁぁぁっ!』と怒声を発するも、

突然卑弥呼は怒り狂うヴァンの顏を掴みその手に力を入れ始めた・・・。


『メキっ!メキメキメキメキっ!』


『グっ!グォォォォォォっ!?』


顔面が潰れるかと思う程のその怪力を前に、

南雲を始め皆が止めに入り、ようやく顔面を掴んだ手が離れると、

見下ろしながら卑弥呼が言った。


『・・・この程度で破壊者の名を継ぐだぁ~?』っと、

 盛大にヴァンを煽っていたのだった。


するとヴァンは卑弥呼の底知れない力を知ると、

小さい声ながらも『す、すみませんでした』と謝罪した。


そんな様子を見ていた悠斗は、

『お前ら何やってんだよ?』と容赦なく告げると、

ヴァンのこめかみに青筋が浮かんだ。


(い、一体誰のせいで・・・ぐぬぬぬぬ)


この広場はもはや様々なハプニングが起こり、

収拾がつかなくなった時、ヴァマントの声が響いた。


「いい加減に黙らんかぁぁぁっ!」


その一声に一気に静まり返ると、

ヴァマントは顎を『クイっ』とさせ、サンダラーが前へと出て来た。


「・・・これからユウトとセルンの模擬戦を始める。

 両者・・・指定位置へっ!」


悠斗とセルンが互いの陣営の者達に頷いて見せると、

セルンは指定位置へと歩み始めた・・・。


悠斗も一歩前へと踏み出した時、

振り返った悠斗は卑弥呼に尋ねた・・・。


「卑弥呼・・・この刀の銘は?」


そう悠斗に尋ねられた卑弥呼は、

『ニヤ~』と不気味な笑みを浮かべながら言った。


『・・・ストライクフリーダム卑弥呼だっ!』


『・・・・・』


悠斗陣営が言葉を失う中・・・。


悠斗は『にゃるほど♪』と笑みを浮かべ歩みを始めると、

スタークが声を挙げた。


「ユウトォォっ!?ほ、本当にそれでいいメルかっ!?」


「・・・問題なーしっ!

 銘なんてこの戦いじゃ関係ないじゃんね?」


何も気にする素振りも見せずそう言って歩いて行く悠斗に、

唖然としたヴァンは呟いた。


「じゃ~何で聞いたんだよ?」


「メルメルっ」



両者指定位置に着くと悠斗は『ん?』と疑問の声を挙げた。


「あれ?セルン・・・武器は?」


そう尋ねたがセルンは微笑むだけで何も言わず、

握手をした後、セルンは何も言わずに指定位置に着いた。


悠斗は不思議そうにしながらも位置に着くと、

サンダラーの合図の声が上がった。


「始めぇぇぇっ!」


悠斗はその瞬間、今度は普通に刀を抜きながら駆け出した。


一瞬、悠斗の行動に驚きを見せたセルンだったが、

すぐさま笑みを浮かべると駆け出し、

悠斗と激突する寸前にマジックボックスから武器を取り出した。


『っ!?』


『シュパっ!』


セルンの行動に今度は悠斗が驚いた。


そしてその隙を見逃さなかったセルンは躊躇なく振り抜くと、

それを紙一重で躱し後方へと逃れ距離を取った。


「ふぅ~焦った~・・・って・・・双剣っ!?」


セルンの手に握られていたのは双剣であり、

悠斗がセルンの武器が双剣とは知らず驚きの様子を見せていた。



するとそれを見ていたイザナミは『ニシシシ』と笑うと、

イリアは尋ねたのだった。


「どうしてまたギリギリで?」


「あーね♪

 少しでも悠斗殿を驚かせようとしたんよ~♪

 まぁ~挨拶がわり・・・ってね?

 それにセルぴょんが言ったんよ~

 ちょっと悠斗殿と遊びたいって・・・さ♪」


「あ、遊びたいってっ!?」


「ニシシシっ!

 草生えまくりだしぃ~♪」


舌を出して笑みを浮かべたイザナミに、

イリアは『あはは』と乾いた声を挙げたのだった。



「へぇ~・・・セルンが双剣とはね~?」


そう楽しげに笑う悠斗にセルンは言った。


「この武器の名は『白銀の双月』と言って、

 ユウトの所に居る卑弥呼様が創った武器なのよ」


「・・・まじか?」


一瞬悠斗は後ろに居る卑弥呼を睨みつけてやろと思ったが、

その瞬間に後方へと跳んだセルンは、着地と同時に攻撃に出た。


「えっ!?ゆ、弓っ!?」


驚く悠斗にセルンは躊躇いもなく矢を放った。


『シュパっ!シュパっ!シュパっ!』


(三連射っ!?)


悠斗は驚きつつもその矢を刀を納刀しながら捌くと、

片膝を着くセルンに向かって跳躍した。


そして空中で刀を構えると降下し始めた瞬間・・・。


「空中ではそうそう動けないわねっ!」


そう言いながら再び矢を連射した。


だが今度は先程よりも矢の数が1本多かった。


「やるな~・・・でもっ!」


悠斗は今度は捌くことはせず、

全てその身を捩じりながら全ての矢を躱すと、

セルンは『チっ!』と舌打ちしつつ後方へと跳んだ、


そして悠斗とセルンがほぼ同時に着地した瞬間、

セルンは『はぁぁぁぁっ!』と声を挙げながら突っ込んで来た。


悠斗は目を細めると再び納刀しながら抜刀術の態勢に入り、

鯉口を切った・・・。


そして初動を始めた瞬間、再びセルンは声を挙げた。


『イグニッションっ!』


『っ!?』


悠斗は咄嗟に後方に逃れたが、

着地した時には既にセルンは悠斗の間近に迫っていた。


『・・・ウェイクアップっ!ブラックエッジっ!』


『ボっ!』と黒き炎がセルンを包み込むと、

その両手に持っていた『白銀の双月』と呼ばれた武器が、

漆黒に染まっていた。


それを見ていた卑弥呼は『なっ!?』と思わず声を挙げると、

セルンの攻撃を刀で弾いた悠斗を見ながら呟いた。


「・・・私の創った武器が色と形を変えたぁ~っ!?

 こんな事・・・今まで一度も・・・」


そう呟いていた頃、


悠斗は『ちっ!』と舌打ちをしながらセルンの猛攻をさばいていた。


「くっ!思っていた以上にしつこいっ!」


防戦一方だった悠斗はセルンの攻撃に苦戦していたが、

着地と同時に攻撃を仕掛けて来るセルンに対し、

悠斗は身を屈ませながらその足を薙ぎ払った。


『ドカっ!』とセルンの足を薙ぎ払った悠斗は、

再び距離を取りながら言った。


「・・・俺の虚をついたつもりなんだろうけど、

 俺に通用するとは思ってないんだよね?」


セルンは悠斗の声に立ち上がりながら答えた。


「えぇ・・・ただちょっと、からかってみただけよ?」


「へぇ~。それで?

 これからどうするんだ?」


そう言った悠斗にセルンは笑みを浮かべた・・・。


「勿論、今度は真面目に戦うけど?」


「・・・了解」


そう言った悠斗は刀を抜き正眼に構えると、

それを見ていたヴァンが声を挙げた。


「な、なぁ~ナグモさんよ~?

 完全にユウトのヤツ・・・押されてなかったか?」


心配そうにそう言ったヴァンに南雲は笑みを浮かべた。


「何を言っとるんじゃ?

 悠斗のヤツをよう見てみ~?」


南雲の声にヴァンは悠斗をじっくりと見ると、

『・・・わ、笑ってる?』と呟いた。


「そうじゃ・・・あいつはあのエルフが、

 トリッキーな攻撃を仕掛けて来た事を認識すると、

 悠斗もまたそれに付き合い今までとは違う防御法を試しておったんじゃよ?

 それに先程悠斗も言っておったじゃろ?

 刀を確かめていた時に、耐久力も高そうじゃと言っておったじゃろうが?」


ヴァンは先程言っていた言葉を思い出しながら、

今までの防御を見て『なるほど』と口にしたのだった・・・。


(確かにユウトのヤツが、

 今まであんな防御の仕方をしたのを一度も見てねーな?)


そう思った瞬間・・・。


『あっ』と声を開けたヴァンに、今度は卑弥呼が声を挙げた。


「ようやく気付いたようだね~?」


そう声を挙げた卑弥呼は続けた。


「あの刀・・・『鬼華(おにはな)』はな?

 前に悠斗が使った『卑弥呼』とは違って重いんだよ?」


「・・・重い?」


「あぁ・・・あいつの鬼の気に耐えられるように、

 錬込んでいるのさ。

 だからまず悠斗はその防御力を知る為に、

 わざと抜刀術ではなく、刀を抜いての攻防に付き合ったって訳さ♪』


「・・・まじかって・・・んっ!?卑弥呼?

 あの刀にはちゃんと名があんのかよっ!?」


「今更気付いたか?」


そうヴァン達が話していた頃・・・。



悠斗は卑弥呼よりも重い刀の防御力を理解しつつも、

その本質とも言える特性を感じ取っていた。


(はははっ・・・卑弥呼のヤツ、またとんでもないモノを♪)


手に馴染む刀に笑みを浮かべていると、

突然セルンが声を挙げた・・・。


「見せてあげるわ・・・ユウト。

 そして私の想いを受け止めてっ!」


「あぁ~・・・受け止めてやるよ。

 掛かって来いよ・・・セルンっ!勝負だっ!」


悠斗の声に『フフっ♪』と楽しげに笑ったセルンは、

『はぁぁぁぁっ!』と気合いの声を挙げながら吠えた。


『アンダワールド・モードっ!

 黒紫の炎よっ!

 爆炎と成りて咆哮せよっ!』


『バシュっ!』


『ゴオォォォォっ!』


セルンの咆哮と共にブラックエッジが黒き光を放つと、

セルンの身体が黒紫の炎に包まれ、

それはやがて黒紫の爆炎となった・・・。


渦を巻くその黒紫の爆炎が消失した瞬間・・・。


『ブブゥン』と漆黒に染まった鎧が姿を現し、

金色で縁取られたその鎧には放電現象すら見受けられた。


そしてそれよりも・・・悠斗が一番驚く事があった。

その手にはセルンには似つかわしくない大剣が握られていたのだった・・・。


「・・・ま、まじか?」


驚く悠斗にセルンは声を挙げた・・・。


『ブラックエッジ・ストリーム・モード』


これを見ていた卑弥呼は驚愕していた・・・。


「さ、流石にこれは・・・嘘だろ?

 わ、私の創った武器が、一度ならず二度までもっ!?

 しかも・・・大剣っ!?

 灯の力・・・?

 この力は・・・イリアの時にも感じたけど、

 まさか・・・冥界珠のっ!?

 あの力をモノにしたって言うのかいっ!?」


そんな驚愕の声を挙げる中・・・。


イリアはセルンの真の姿を見て笑みを浮かべていた。


「あの羅樹羅っていう1本角の鬼が言っていた・・・。

 私は後2段階のレベルアップがあると・・・。

 そしてセルンは3段階以上・・・と。

 最初に見た時は唖然としたけど、戦闘特化であるセルンは、

 防御や回復特化の私よりも戦闘力が上なのよ・・・

 ユウト?舐めていたら、ただじゃすまないわよ?」


そう言って冷笑を浮かべているイリアに、

イザナミは『お主も化け物じゃがの?』と笑っていた。



ここ、闘技場内でこの模擬戦を見ていた者達は言葉を失っていた。


セルンの力の凄まじさに皆が何も言えなくなっていたのだった。


勿論それはヴァマントやサンダラーも同様で、

玉座から立ち上がり、目の前で起こっている事象に言葉が出なかった。


皆が沈黙する中・・・。


悠斗は無意識に口角が上がっていた。


(最初は以前とは違うセルンの体つきに驚いたけどさ?

 でも今はその意味がよくわかるよ。

 その筋肉は伊達じゃないってね?

 そしてその大剣を勿論十分に扱えるって事もさ・・・。

 凄いよ・・・セルン。

 だけど・・・)


無意識に口角が上がった悠斗を見たセルンは、

『流石ね?』と心の中で思いつつも大剣を肩に担ぐと駆け出した。


『吠えなさいっ!ブラックエッジっ!』


『ブオンっ!』


『っ!?』


駆け出した瞬間・・・。


セルンは力強く踏み込み冥界の強靭な床を踏み抜くと、

大剣を苦も無く振り抜いた・・・。


『シュババババババっ!』


大剣の刃から放たれた『黒き閃光』が悠斗に襲い掛かると、

悠斗は横へと跳び片手を着きながら空中で回転して着地した。


「・・・やるじゃん♪」


「まだまだぁぁぁっ!」


『はぁぁぁぁぁっ!』と声を挙げながら接近して来たセルンに、

悠斗もまた駆け出すと、ブラックエッジと鬼華が激突した。


『ギチギチギチギチっ!』


互いに鍔迫り合いが始まると至近距離にセルンの顔が来た。


「ユ、ユウト・・・。

 わ、私程度で手こずっているなんて・・・

 死んで、腕・・・落ちたんじゃないの?」


「・・・い、言ってくれるじゃん?

 なら、俺も1つ・・・試させてもらうよ」


「・・・?」


鍔迫り合いをしながら互いに力押しを始めた時、

突然『キィィィィンっ!』という音がセルンの耳に届いた。


(こ、この音ってっ!?)


セルンは険しい表情で悠斗の目を見た瞬間・・・。


『そ、その瞳はっ!?』


無意識にセルンの口から出た言葉に、

悠斗の眼光が鋭くなると口を開いた・・・。


「これは・・・穂高がくれた力だっ!」


「ほ、穂高ってっ!?」


「セルンっ!俺の蹴りを上手く避けろよっ!」


「えっ!?け、蹴りっ!?よ、避けるっ!?」


悠斗は『はぁぁぁぁっ!』と声を挙げると、

ほぼゼロ距離の間合いの中、突然セルンの顎に衝撃が走った。


『バキィィっ!』


『うぐっ❕』


(な、何?い、今・・・一体何が?

 あ、あれ・・・?私・・・今、どうなって?」


空中を舞ったセルンは悠斗の真下からの蹴りの衝撃で脳が揺れ、

状況が整理出来なくなっていた・・・。


『ドッシャァァっ!』と地面に落ちたセルンは、

大剣に寄りかかりながら立ち上がり呼吸を整えると、

正眼に構えたのだった・・・。


「こ、この程度じゃ・・・わ、私には勝てないわよ?」


「・・・知ってる」


「・・・フフフっ、言う・・・じゃない?」


「なぁ、セルン?」


「・・・?」


「・・・使える力があるのなら、今、使えよ?」


そう言った悠斗の言葉の意味が理解出来なかった。


「ど、どう言う意味よ?」


「次の俺の攻撃で勝負は決まる」


「・・・ふ、ふざけないでよっ!

 いいわ、ユウト・・・じゃ~見せてあげるわ」


セルンは深く息を吸い吐き出すと声を張り上げた。


『ブラックエッジよっ!我が声に応えよっ!

 黒紫の爆炎となりて 咆哮せよっ!

 はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』


『ボンっ!』と・・・。

セルンの身体から吹き出した黒紫の爆炎が舞い上がると、

大剣を構えたセルンの瞳が紫色へと変化した・・・。


それを見た悠斗は不敵に笑みを浮かべると、

双眼を閉じ己の中にある『不死鳥の門』前で『赤い華』を見つめていた。


セルンは悠斗が静止した事によって、

昨日のイリアとの模擬戦を思い出すと、楽しげにその口角を挙げた。


「行くわよっ!私の渾身の一撃をっ!」


「・・・来い」


双眼を閉じたままの悠斗に構う事もなく、

『己の道は己で切り開くっ!』と叫びながら駆け出した。


悠斗は剣の結界を張ると後ろ脚に体重を乗せ、

迫るセルンの気配を感じながら呟いた。


『我は無なり・・・。

 紅の魂の理を以って刃を振るう者なり・・・』


「うぉぉぉぉっ!吠えろっ!黒紫の牙っ!

 パープリッシュ・ブラック・ハウリングっ!」(黒紫の咆哮)


セルンの咆哮と共に大剣の先端から黒紫の閃光が放たれると、

悠斗は静かに鯉口を切った・・・。


そして双眼が開かれ瞳が緋色に染まった・・・。


『キィィィィィンっ!』


悠斗は迫りくる黒紫の閃光がまるでスローモーションのように見えると、

笑みを浮かべながら再び呟いた。


『白鷲流・抜刀術・断魔の太刀・・・餓狼(ガロ)っ!』


悠斗はスローモーションに見えているセルンの一撃に怯むどころか、

前方へと踏み出しながら抜刀し、

その鞘走りと遠心力を利用しながらその場で一回転すると、

右脇に引きつけられた『鬼華』を真っ直ぐに突き出した。


『ズッバァァァンっ!』


『ビャァァァァァっ!』


轟音と共に再び鳥の残響が響き渡ると辺りは煙りに包まれ、

王宮の広場は静寂に包まれた・・・。


イザナミ達や南雲達も同様・・・。

この光景を目にした者達は周囲に立ち込める煙りが晴れるのを待った。



すると徐々に煙りが消え失せ始めた頃・・・。


セルンが居る方向に背を向ける形となっていた悠斗に、

見ていた者達は驚いていたが、『カチン』と納刀した瞬間・・・。


『ドサっ!』と未だ晴れぬ煙りの中で何かが倒れる音がした。


すると悠斗が片膝を着き納刀したままの姿勢で言った。


「・・・強かったよ、セルン」


そう言った瞬間・・・。


立ち込めていた煙りは消え失せ、

セルンがうつ伏せで気絶し倒れていたのだった。


『・・・・・』


皆が沈黙する中・・・。


サンダラーがゆっくりと玉座から立ち上がると、

笑みを浮かべながら腕を前へ突き出し声を挙げた・・・。


「それまでっ!勝者・・・ユウトっ!」


その瞬間・・・。


『うおぉぉぉぉぉぉぉっ!』と言う観客達の歓喜に満ちた声が上がり、

セルンに背中を向けたまま立ち上がると、

悠斗は気絶するセルンへと手をかざした。


『ハイ・ヒール』


淡い緑色に包まれたセルンはの傷は完全に治癒され、

倒れているセルンの元へと向かうと、

急ぎ駆け付けるイリアへとセルンを預けた。


「大丈夫だよ?

 威力は充分に抑えているからさ♪」


「ユウトは大丈夫なの?」


「あぁ、全然問題なしっ!」


「・・・あははは」


悠斗が笑顔でそう言ってのけた事に、

今、イリアの腕に抱かれているセルンを見て、

少し気の毒になったイリアだった・・・。



そしてその夜・・・。


ヴァン達が祝勝会と称してどんちゃん騒ぎを始めてから数時間後・・・。


逃げるように宿舎から出た悠斗は、

ふと・・・人影が居る事に気付いた・・・。


「あれは・・・セルン?」


その人影がセルンだと気付いた悠斗が声を掛けると、

少し不貞腐れたセルンが口を開いた。


「・・・手加減してくれたんだってね?」


「・・・えっと~」


その物言いに悠斗はどう言おうか悩んでいると、

セルンは『クスっ』と笑いながら口を開いた。


「冗談よ?ごめんごめん」


「・・・ったく、もう」


苦笑いを浮かべた悠斗はセルンを送りがてら歩いて行くと、

セルンは悠斗の腕を絡ませてきた。


「・・・ねぇ、昨日さ?

 私・・・見てたんだ~・・・」


「・・・だね」


「知ってたのっ!?」


「あははは・・・バレバレだったけど?」


「うっ・・・。

 ごめん・・・覗くつもりはなかったんだけど・・・」


「いいよ、別に・・・」


『いいよ』と言った悠斗の言葉に、一瞬『ムっ』としたセルンだったが、

その瞳が哀しそうにしているのが見え、言葉を飲み込んだ・・・。


「私もイリアと同じ・・・貴方の事を愛してるわ。

 最初に出会って助けてもらってから、今までずっとね?」


「・・・そっか」


「・・・私も貴方から離れるつもりはないわ。

 例え何があったとしても・・・」


「でもさ?こんなヤツ・・・ロクでもないよ?」


そう言った悠斗に『ドカっ!』と蹴りを入れると、

悠斗は『痛っ!?』と驚きの表情を見せた。


そんな悠斗にセルンは言った・・・。


「私・・・基本的に暗殺者体質だから?」


「あ、暗殺者体質って何っ!?」


『あははははっ!』と笑ったセルンは、

悠斗の首に腕を絡ませると耳元で囁いた・・・。


「狙った獲物は逃がさないって事よ♪」


悠斗はこの後の展開が想像出来、

やんわりと腕をほどこうとした時だった・・・。


(あ、あれっ!?う、動かせないんだけどっ!?

 ち、力・・・つ、強っ!?)


『グググググっ!』と物凄い力で、

脱出しようとする悠斗の首を固めながら言った。


「言ったでしょ?逃がさないって♪」


「うっ」


するとセルンは強引に悠斗に口づけをしたのだった。


(昨日聞こえちゃったんだ・・・。

 ユウトが『ごめん』って言ったのを・・・。

 その言葉の意味は私にも分からない。

 だけど文字通りの意味じゃない事はわかったわ。

 だから私は・・・貴方にどんな事があっても離れない。

 ユウト?覚悟してね?フフっ♪)


そして少しの時間が経ち、唇を離した時にセルンが言った。


「・・・拒否したら殺すから・・・ね?」


「うっ・・・は、はい」



こうしてセルンを無事?に、送り届け宿舎に戻って行くと、

灯りの下に人影が見えた・・・。


「・・・卑弥呼か?」


そう言うと卑弥呼が『あぁ・・・』と言いながら悠斗に近付くと言った。


「・・・そろそろ行くぞ?」


その真剣な表情の卑弥呼に悠斗は『わかった』と答えると、

卑弥呼は『時空洞』を開き、2人はそのまま姿を消したのだった。



ってな事で・・・。


今回のお話はいかがだったでしょうか?

『活動報告』の方にセルンの曲もアップしておりますので、

聴いて頂けると幸いです^^



ってなことで、緋色火花でした。


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― 新着の感想 ―
セルンの力技キス、最高でしたw
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