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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第三章・冥界編
394/408

285話 紅のクロノスの鎖

お疲れ様です。


仕事しつつも音楽にはまっている緋色で御座います。


さて、仕事がちょい・・・ヤバくなってきたw

まぁ~笑いごとじゃないんだけどw


今回は重要な話となりますので、

楽しんで読んでいただけたら・・・と。



それでは、285話をお楽しみ下さい。



『き、君は一体誰なんだっ!?

 さっきも確か・・・き、君の声を聞いたんだっ!

 頼むっ!姿を見せてくれっ!』


悠斗は赤い霧が立ち込める紅の門の内側で声を張り上げ、

彼女が姿を現すのを待っていたのだった・・・。


『ジャラッ・・・ジャラっ・・・』


「っ!?ま、また鎖の音がっ!?」


悠斗は警戒を強め周囲を見渡したが、

鎖の存在どころか声の主の姿すら発見出来ず顔を顰めていた。


『・・・今、行きます』


「えっ?」


彼女の声を聞いた悠斗は慌てて警戒を解くと、

再び周囲を見渡した・・・。


「・・・ど、何処なんだっ!?」


悠斗がそう声を挙げた時だった・・・。


『ジャラジャラジャラっ!』と鎖の音がより鮮明に聞こえた時、

悠斗は腰の辺りから何かが這い出て来るような感覚に陥った。


「なっ、何だっ!?」


慌てて確かめると悠斗は『えっ?』と声を挙げ、

『赤い鎖』が悠斗の身体の中から這い出て来たのだった。


「こ、この鎖って・・・まさかっ!?」


悠斗の驚いた声に『赤い鎖』は何も言わず、

ただ・・・鎌首をもたげ悠斗の顔をじっと見つめているようだった。


「こ、この赤い鎖って確か、俺が鬼の気を制御出来ず、

 港町を飛び出した後、ミランダやクロと一緒に居た時に・・・?」


その『赤い鎖』からは敵意を感じず、

悠斗は警戒は怠らないものの少し安堵していた。


するとその『赤い鎖』から頭の中へと直接声が送られて来た。


『私はクロノス・・・いえ、紅のクロノスです』


「・・・紅のクロノス?」


『はい。とある女神が貴方の為に、私を・・・』


「とある女神って?」


「ごめんなさい・・・。それは言えないのです」


悠斗は紅のクロノスと名乗ったその鎖に尋ねた。


「君はあの時もそうだったけど、どうしてまた?」


『貴方がピンチ・・・だったからです』


そう答えたクロノスに悠斗は当時の事をもい出しながら、

『・・・なるほどね』と呟くと再び尋ねた。


「クロノス・・・聞きたい事がある」


『・・・なに?』


「俺はどうすればいいんだ?」


『・・・どうすれば・・・ですか?

 そんな事、わかりきっているはずでしょ?』


「わ、わかる訳・・・いや、わかりたくない・・・」


まるで子供の様にそう言った後、

紅のクロノスから視線を外し目を伏せた。


『・・・貴方はどうして力を欲するの?』


「それは・・・ラウルとの約束を・・・」


クロノスと視線を会わせる事もないままそう答えると、

『嘘よね?』と返って来た・・・。


「う、嘘・・・じゃない・・・」


悠斗のその言葉に紅の鎖は威圧するように、

『ジャラっ』と身体を波打たせた。


「ほ、本当だ・・・。

 俺は創造神・ラウルからこの世界の魔を退治してくれと・・・」


『・・・確かにそうなのでしょう?

 でも、貴方の心の中は違うはずです』


「い、いや・・・でも俺は・・・」


紅の鎖によってそう告げられた言葉に、

悠斗は拳を握り締めながら否定した・・・。


『なら、どうして・・・。

 貴方は相手が生身だという事だけで恐れるのですか?

 貴方の敵はみんな・・・生身ではありませんか?

 一体何が違うと言うのです?』


「そ、それは・・・」


紅の鎖の追及によって悠斗は俯き目を閉じてしまった。

すると紅の鎖は諭すように話を続けた・・・。


『貴方には創造神の依頼よりも叶えたい事があるのではないですか?』


その言葉に『ドキっ!』と悠斗の魂が震え、

驚いた表情のまま紅の鎖を見たのだった・・・。


「ど、どうしてその事を?」


余りの驚きに悠斗が思わずそう口から言葉が零れると、

紅の鎖は『ジャララっ!』と身体をくねらせながら返答・・・

いや、確信とも言える言葉を発した・・・。


『・・・死にたいのでしょ?』


「っ!?」


『貴方の事だから創造神の依頼はやり遂げるでしょう?

 しかしその過程での死を・・・貴方は恐れてはいない・・・。

 相手が生身だと言うだけで躊躇う人が自分の命を軽視している。

 いつ死んでもいい・・・。

 その為に貴方は仲間達の為に『本』を残し、

 自分がいつ居なくなってもいいようにしているのではないですか?』


「お、俺は別にそんな事は・・・」


『神が依頼するほどの相手に死ぬ気・・・ではなく、

 相打ち覚悟で戦いを挑む・・・。

 貴方は・・・残された人達がどう思うのかわからないのですか?

 今、こうしている時も、

 貴方の身体を守る為、仲間達や女神達が守っていると言うのに?

 本当に・・・仲間達の気持ちがわからないのですか?』


「・・・・・」


紅の鎖の言葉に何も言い返せなくなってしまった悠斗は、

身体が『ブルブル』と震えてしまっていた。


すると紅の鎖は話をこう続けた・・・。


『死ぬのが前提で戦いを挑む・・・。

 貴方は『絶』と戦った時もそうでしたよね?』


「・・・ぜ、絶っ!?

 ど、どうして君が絶の事をっ!?」


紅の鎖の言葉に顏を上げ問うと紅の鎖は続けた・・・。


『ずっと・・・見ていました。

 貴方が『岩場の聖域』で過ごしていた日々・・・。

 そして港町での大立ち回りで住人達に感謝された事、

 女神や勇者と戦い、正しい道へと連れ戻した事も全部です』


「き、君は一体・・・誰なんだ?」


そう悠斗が震える声で尋ねた時だった・・・。



突然紅の鎖が『カっ!』と赤く発光すると、

『きゃあぁぁぁっ!』と叫び声を挙げ『ジャラジャラっ』と地面に落ちた。


「お、おいっ!ど、どうしたんだよっ!?」


『・・・・・』


そう何度も問いかけた悠斗だったが、

紅の鎖はただの鎖と化し、色も紅から通常の銀色へと姿を変えていた。


悠斗の問いかけに何も反応を示さなくなった鎖に茫然とすると、

そのまま地面に座り込み、鎖を胸に抱き締めた・・・。



~ 嘆きの森 ~


悠斗の身体が眠る場所から少し離れた場所に、

ミスティの居る小屋が在り、

外に在る白いテーブルのセットが置かれている場所で、

1人険しい表情を浮かべていた・・・。


(・・・クロノスの反応が消えた?

 もしかして、彼女は正体を知られる事に?

 い、いえでも、それにしては・・・?)


ミスティはクロノスの鎖の反応がない事に動揺し、

苦悩していた時だった・・・。


突然『ガサっ!』と物音がすると、ミスティは慌てて振り返った・・・。


「・・・ミスティ?

 君はここで、一体何をしているんだい?」


突然のラウルの訪問にミスティは動揺し勢いよく立ち上がった。


『ガシャンっ!』とテーブルの上に置かれていたカップが地面に落ち、

飲みかけの紅茶を全て零したのだった。


そんな様子を見ながらラウルは足を進めると、

茫然とするミスティに変って、紅茶のカップを拾い上げた。


「・・・君がこんなに動揺するなんてね?」


「ラ、ラウル・・・」


ラウルを汚れたカップに付いた土を落とすとテーブルの上に置き、

椅子に腰を掛けると『ミスティ』と声を掛け、

座るように促した・・・。


そしてじっとミスティの目を見つめながら口を開いた。


「・・・話してもらえるんだよね?」


「・・・・・」


ラウルの問いかけにミスティは何も応えず、

ただ、身体を小刻みに震わせて居た・・・。


するとラウルは『ふぅ~』と息を吐くと、

マジックボックスから紅茶のセットを取り出し、

未だに震えているミスティの前に、暖かな紅茶を差し出した。


「飲みたまえ・・・。

 震えているじゃないか?」


そう進められたミスティは『コクリ』と頷くと、

差し出された紅茶を一気に飲みほした・・・。


するとラウルは今まで見せていた厳しい表情とは違って、

温かな笑顔を見せると口を開いた。


「・・・そう言えば、君の娘さん。

 あの御方の分体が居られる星にいるんだってね?」


突然ラウルに話を振られたミスティは、

ぎこちなく『は、はい・・・』と答えた。


「僕も彼女には暫く会っていないんだけど、

 元気にしているかい?

 確か~・・・名は・・・」


ラウルは澄み切った青空を見上げながら、

まだ赤ん坊だった頃のミスティの娘の事を思い出していると、

『・・・ロザリアです』とそう言った・・・。


「そうそうっ!ロザリアちゃんっ!

 確か彼女も君と同じ『時空神』になる為に頑張っているんだろ?」


「は、はい・・・」


ラウルはミスティの表情が優れない事に首を傾げると、

テーブルに頬杖を着き砕けた表情へ変えながら声をかけた。


「ふむ・・・もう僕は君が何をしていたか尋ねてはいないんだけど?

 どうして君の表情は曇ったままなんだい?」


そう尋ねたラウルにミスティは『はっ』とすると、

勢いよく顔を上げて『ラ、ラウル様・・・実は・・・』と、

何かを言おうとした時だった・・・。


突然『あっ!』と・・・。

声を挙げたミスティはそのまま口を閉ざしてしまたのだった・・・。


ミスティの様子にラウルは険しい表情に変わり、

『何かあるのなら話してくれ』と尋ねた時だった・・・・。


ミスティは俯き汗を浮かべながら『実は娘が・・・』と、

話を続けようとした瞬間・・・。


『ガサっ!』と・・・。

勢いよく現れたのは『現・深淵の女王・ミランダ』だった。


ラウルやミスティが驚く中、

ミランダは『・・・どうしたのよ?』と尋ねると、

ミスティの様子がおかしい事に気付いた・・・。


するとミランダは『ちょっとっ!ラウルっ!』と声を荒げ、

その勢いにたじろぐとミランダはラウルに詰め寄り声を荒げた。


「ちょっとっ!あんたまさかミスティにっ!?」


「はぁ?えっ!?えぇぇぇぇっ!?

 ぼ、僕が・・・?

 僕がミスティに一体何をするんだよっ!?」


そう声を挙げたラウルにミランダはミスティに視線を向けると、

無言のまま頭を左右に振って見せた。


「な~んだ・・・セクハラじゃないのか~?

 ざ~んねん♪」


「は、はぁぁぁぁっ!?

 ミ、ミランダっ!?その残念ってのはどういう意味なのさっ!?」


そう声を荒げると、ミスティは立ち上がり、

『ちょっと気分が・・・』と言って、

頭を下げると小屋へと戻ってしまったのだった。


取り残されたラウルとミランダは互いに顔を見合わせると首を傾げ、

『どうなってんのよ?』とミランダに尋ねられると、

ラウルは少し複雑そうな表情をしながら答えた。


「ん~、どうやら彼女の娘さんとあまり上手く・・・ね?」


そう言って話を誤魔化したのだった。


「ふ~ん・・・子を持つと色々大変なのね?」


そう気楽に答えたミランダに、ラウルは苦々ししい表情を見せると、

肩を竦めながら口を開いたのだった。


「君の母親・・・元・深淵の女王・ミラーズ様が哀しむよ?」


ラウルの嘆きにミランダは『フンっ!』と鼻息荒くすると答えた。


「何が母親よっ!

 パパが亡くなってからすぐに新しい男を見つけて、

 何処かへ行っちゃうんだからっ!

 って言うか、ママとは全然連絡も取れないしっ!」


そう苛立ちを見せたミランダにラウルは『やれやれ』と思いながら、

『今、彼女はユウナギ君の所に居るんだけどね~?』と、

複雑そうな表情をしていたのだった・・・。


「フンっ!どーせ、ママの事だから、

 どこぞの勇者あたりにちょっかいでもかけてんじゃないのかしら?」


ミランダはその美しく長い銀髪をたなびかせ愚痴を零していたが、

『・・・おっしゃる通りで』と・・・。

ラウルは愛想笑いをするしかなかったのだった。



~ 真紅の門内 ~


あれからどれほど時間が経過したのかはわからない。

ただ、悠斗はただの鎖となってしまった紅の鎖を抱き締めていた。


(何故かはわからないけど、とても安心する・・・)


悠斗はそう思いながら鎖を撫でた時だった・・・。


突然『ジャラっ』と悠斗の手の中で動いた鎖が、

再び紅へと色を変え、再び悠斗の顔の近くで鎌首をもたげた。


「・・・だ、大丈夫なのか?」


そう心配そうな声を挙げる悠斗に紅の鎖は言った。


『それほど時間もないようです。

 ですから・・・』


そう紅の鎖が声を挙げると悠斗は慌てて、

『ちょっと待ってよっ!』と声を挙げた。


「突然どうしたんだよ?」


『・・・聞いて下さい』


そう声色を変えた紅の鎖に悠斗は戸惑ったが、

その真剣な声色に悠斗は頷くしかなかったのだった・・・。


『・・・このクロノスの鎖の中で意識を保っていられる時間は、

 それほど長くはありません・・・。

 ですから、先に貴方に伝えたい事があります』


そう言うと紅の鎖は『ジャラっ!』と鎌首を真逆の方へと向けると、

『・・・ついて来て下さい』とそう言った。


悠斗は言われるがまま、赤い霧が立ち込める中、

指示された通りに歩いて行った・・・。


そして暫く歩いて行くと、紅の鎖は『止まって下さい』と言い、

その指示に従うと続けて指示された・・・。


『・・・貴方の鬼の気を放出して下さい』


「えっ!?鬼の気を今ここで?」


『早くっ!』


紅の鎖が悠斗にキツく言うと、

『あれ?この言われ方って?』と、どこか懐かしい感じがした。


再び『早くっ!』と催促されると、

戸惑いながらも悠斗は『はぁぁっ!』と鬼の気を放出した。


すると悠斗の鬼の気と周囲に立ち込めた赤い霧が反応し合い、

一瞬にして周囲の赤い霧が晴れたのだった・・・。


そして悠斗はそこで目にしたモノは・・・。


「・・・赤い・・・門?

 とても小さいけど・・・これも?」


『・・・はい。

 この『紅の門』は人が1人が入れるほどしかありません』


悠斗は首を傾げながら紅の鎖に尋ねた。


「・・・この門を潜れってこと?」


紅の鎖は悠斗の方へと鎌首を向けると、

『ジャララっ』と小さく頷いたのだった。


突然悠斗の目の前に姿を現した『紅の門』に近付くと、

その柱には何かが彫刻されていた・・・。


(・・・鳥の彫刻?

 これって~・・・朱翼の紋か?)


そう思った時、紅の鎖は悠斗にこう尋ねたのだった。


『貴方は力が欲しいですか?』と・・・。


『どういう事?』と・・・。

尋ねた悠斗に紅の鎖は少し焦ったかのように少し声を荒げた。


『私の意識はまた閉じてしまうかもしれません。

 だから急ぎたいのです。

 ですからもう一度聞きます・・・。

 貴方は力を欲しますか?』


すると悠斗は紅の鎖に真剣な眼差しを向けるとこう言った。


「答える前に少しいいかな?」


『・・・何でしょうか?』


「君はどうして俺に、この紅の門の力をくれようとしているんだ?

 理由・・・あるんだよね?」


『・・・・・』


その問いに少し沈黙した紅の鎖だったが、

何かを決意すると口を開いた。


『・・・本来のクロノスの鎖の役目は、

 貴方が鬼の門を過剰に使用しない為の言わば『楔』が目的なのです』


「・・・楔?」


『はい、鬼の門の代償は・・・ご存知ですか?』


紅の鎖の発言に驚いた悠斗は『代償なんてあるのかっ!?』と尋ねた。


『はい、勿論あります・・・。

 でも当然でしょ?

 力を得るには必ず代償を支払わなければなりません。

 ですから貴方は鬼の門を潜る度に、

 人としての心や感情を失っていくのです』


「人としての心と感情?

 でも・・・俺は全くそんな事はないと思うけど?」


そう答えた悠斗に紅の鎖はその鎌首を左右に振ると、

悠斗に説明をした。


『いえ、貴方は・・・変わられました』


「・・・俺が変った?」


『はい・・・。

 以前の貴方は今よりももっと感情の表現は大きかった。

 だけど、今の貴方は・・・。

 でも、戦闘になると貴方の中のリミットが外れて、

 以前の貴方のように表情も豊かになっています』


そう説明された時、悠斗は訝し気な表情をすると、

少し怪しむような声を紅の鎖に向けて言った。


「・・・君は何者なんだ?

 俺をどう・・・したいんだ?」


『・・・私を信じて』


「・・・君が何者かもわからないのに、どうして信用できると?」


悠斗がそう正論を口にすると、紅の鎖の鎌首が僅かに項垂れた。


『・・・薄々、気付いているのでしょ?』


「・・・だから、それを確かめたい」


『どうして・・・そう思ったの?』


「上手く言えない・・・。

 だけど、何となく・・・懐かしい気持ちと同時に、

 油断すると涙が出そうになる。

 それってつまり・・・そう言う事じゃないのか?」


『・・・・・』


「俺にこんな気持ちにさせるのは世界中にただ1人だけだ・・・。

 それに君は俺の事を名で呼ばないんだね?」


『・・・えっ?』


悠斗の言葉に動揺した紅の鎖は沈黙すると、

悠斗は話を続けた・・・。


「きっと俺の名を言うと・・・ボロが出るとかさ?

 そんなどうでもいい事でバレるから言わないんだろ?」


悠斗は少し懐かし気な表情ょしたのだが、

紅の鎖は過剰に反応した・・・。


『悠斗っ!?だれがボロが出るとか、

 どうでもいい理由なんて言うのよっ!?

 あんたは本当に昔からっ!空気読まないんだからっ!

 いい加減にしなさいよねっ!』


「・・・・・」


『あっ・・・えぇ~と~・・・

 し、しまった・・・つ、つい。あはは』


紅の鎖がそう自己嫌悪に陥った瞬間、

悠斗の目からは大粒の涙が零れた・・・。


『・・・悠斗』


悠斗は涙を拭いながら言った。


「ほ、ほら・・・や、やっぱり・・・だ」


『あはは・・・ね、ねぇ、コレってノーカンに出来ない?』


紅の鎖がそう言った瞬間、悠斗は珍しく

『あははははっ!』と声を挙げて笑った。


『笑う事ないでしょっ!?』


そう怒る紅の鎖に悠斗微笑みながらこう言った。


『・・・穂高』と。


少しの間沈黙した後、

紅の鎖・・・穂高は説明し悠斗はそれを聞いた。


「つまりは今の穂高は俺の脳内に在る、

 穂高の記憶をクロノスの鎖が思念体として目覚めさせ、

 君を紅の鎖へと?」


『えぇ・・・。

 でも、元々無茶な話らしく、とある女神様が無理矢理に・・・。

 まぁ~でも、私は悠斗と話せるのなら何でも良かったけどね?

 それでも制約があるし、それに・・・』


そう穂高が言った瞬間、

悠斗はとても嫌な感じがし目を細めた・・・。


すると穂高は『ほらね?』と呆れたような声色に変わるとこう言った。


『あんたってさ?

 昔から無駄に頭いいしさ?

 それに天然だから空気も読めないじゃん?

 絶対に何かに気付いたって・・・私にはわかっちゃうんだからね?』


「・・・酷い言われようなんだけど?」


すると穂高もまた、隠しても無駄だと理解すると説明した。


『さっきも言ったけど、今の私は悠斗の頭の中にある、

 穂高の記憶の思念体・・・。

 クロノスが私に求めた要求は・・・私の・・・穂高の記憶』


「えっ!?ちょっと待てよっ!?

 じ、じゃ~、穂高の記憶が無くなるって事かっ!?」


突然慌て始めた悠斗に穂高は落ち着くよう話すと、

悠斗は無言ながら頷いたのだった。


『私が悠斗と話したい一心で払う代償は、

 穂高の記憶全部じゃなくて・・・』


そう言い始めた時、穂高は少し沈黙してしまったのだった。


今の穂高は鎖である為、悠斗は穂高の考えがわからなかった。

すると穂高は決意を以って悠斗に話した・・・。


『悠斗の記憶から無くなるモノは・・・私の声』


「こ、声っ!?」


『うん・・・私の映像は頭の中に残るけど、

 泣いたり笑ったり・・・つまり、全ての私の声よ』


「そ、そんな・・・」


悠斗の記憶から穂高の声が無くなると聞いて目を伏せた悠斗に、

穂高は説明した・・・。


『私がそこまでして前に現れたのには理由があって、

 1つはさっき話した『人の心』が無くなって行くと言う事、

 そして悠斗は本能で・・・いえ、魂で・・・

 『深紅の門』を拒否している事・・・』


「・・・た、確かにそう言われると」


『・・・でも、このままだと悠斗は前へと進めない。

 だから私は・・・』


そう言うと鎖の鎌首を小さな『紅の門』へと向けると、

そのまま話していった。


『私はこの紅の門へと導く為に、

 こうやって悠斗の前に出て来たのよ』


「つまり、穂高がこの紅の門の導き手だって事?」


『えぇ、そうよ・・・。

 だから悠斗・・・この紅の門を潜って、

 『深紅の門』とはもう関わらないで・・・』


悠斗はその視界に『深紅の門』を視界に入れたが、

穂高が代償まで払って導いてくれた事に心から感謝していた・・・。


そして考えた結果・・・。


『・・・わかった。穂高、紅の門の扉を開き潜るよ』


そう言った瞬間、何故か穂高は『えぇ』と言いつつも、

どこか寂しそうにしていたのだった。


その事に首を傾げつつも悠斗は『紅の門』へと向き直ると、

穂高へと視線を移し『開ければいいんだよね?』と尋ねた。


『えぇ・・・。悠斗・・・扉を開いて新しい力を。

 それが私の願いなの・・・』


悠斗は大きく頷きながら『わかった』と返答すると、

一歩前へと踏み出した・・・。


そして『紅の門』の両開きの扉に両手を着くと、

『はぁぁぁぁっ!』と鬼の気を放出しながら扉を押すと、

『ギィィィっ!』と少しずつ開いていった・・・。


そして扉を開き切り、一度振り返った悠斗は言った。


『・・・このまま入るのか?』


鎖の鎌首が『コクン』と頷くと、

悠斗は笑顔で『じゃ~後でな?』と言った瞬間だった・・・。


穂高は頷きながらも小さな声で言った。


『ごめん、悠斗・・・私、嘘ついた・・・』


その声は悠斗に届かなかったが、

穂高のあからさまな様子に悠斗は扉から引き返そうとした。


すると穂高は『戻って来ないでっ!』と、

既に泣き声になっており、異変を感じた悠斗は血相を変え、

引き返そうとすると、穂高は悠斗を突き飛ばすかのように、

悠斗の身体に自らが体当たりをしたのだった・・・。


悠斗が『穂高っ!?一体どうしてっ!?』と声を挙げた時、

穂高は門の中へと消えていく悠斗へと言った。


『・・・私は悠斗の中の思念体。

 貴方の導きが終わったと同時に、私の声は代償として支払われるの。

 ごめんね?だからもう・・・会えないわ。

 だけど私は・・・』


そう言いながら穂高は『紅の門』の段数の少ない階段を見つめると、

『・・・私はここで『赤い華』となって、いつまでも・・・』と、

そう言うと消え去る悠斗に最後の言葉を告げた・・・。


『不死鳥よ、彼を導いてあげて。

 さようなら、悠斗・・・愛してるわ』


そう言った瞬間・・・。

穂高は・・・。

紅のクロノスの鎖は溶けるように消滅したのだった・・・。


~ 闘技場内 ~


『んんっ・・・』と意識を取り戻した悠斗は、

自分が今、置かれている状況を理解すると、

未だに悠斗の身体に左足を突き刺したままの卑弥呼へと言った。


「・・・どれくらいたった?」


すると卑弥呼は満面の笑みを浮かべこう言った・・・。


『・・・5分だ』と・・・。


『そうか・・・』とそう返答した悠斗に卑弥呼は言った。


「さて、悠斗・・・この状況をどうする?」


卑弥呼の問いに悠斗は『フフっ』と薄く笑うと、

悠斗の右手が卑弥呼の左足に触れると一瞬にして『ボっ!』と、

卑弥呼の左足が炎に包まれた。


『ぐあっ!』と悲痛な声を挙げた卑弥呼は地面を転がり、

火を消し止めると『ニヤっ』と、

不敵な笑みを浮かべながら立ち上がった。


だが、内心は動揺していた・・・。


(・・・今の力は?

 悠斗は第四之門を開けたんじゃないのかっ!?)


笑みを浮かべつつもそう思っていた時、

悠斗は壁の中から出て来ると首を『ゴキっ!』と鳴らしながら言った。


『さぁ、いこうか?』


そう言った刹那・・・。

悠斗の身体から得体の知れない力が噴き出すと、

悠斗の瞳は『緋色』となったのだった・・・。




ってな事でですね?


悠斗の中の穂高が消えました・・・。


これから悠斗はどうなって行くのか、

楽しみにして頂ければと思います。


今回は伏線だった鎖なども回収できましたし、

まぁ~、他の伏線を仕込んではいますが・・・w


それと、今回の曲はまた『活動報告』に張っておきますので、

お手数ですが『コピペ』を宜しくお願いします。



ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
曲と合わせてすごく切ない回でしたね。。。 途中泣けてきました。 思いましたが先に曲を聴いてからお話読んだ方が良かったです♥︎
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