284話 鬼華繚乱と閉ざされた門
お疲れ様です。
喘息まじで辛い緋色で御座います・・・orz
さて、今回のお話は・・・。
ちょっと色々と繋がって来ておりますので、
楽しんで頂けたら・・・とw
それでは、284話をお楽しみ下さい。
『鬼道・身体奥義っ!』
卑弥呼がそう吠えた瞬間・・・。
『ドクンっ!』と悠斗の胸の辺りが波打ったが、
悠斗は卑弥呼から視線を外さず呼吸を整え備えた・・・。
(ひ、卑弥呼の鬼の力に引っ張られているのかっ!?
って事はつまり・・・鬼の力同士は干渉し合うという事なのかっ!?)
卑弥呼を見据えていた悠斗と目を合わせると、
不敵に笑みを見せ、さらに印を組み替えながら再び吠えた。
『一徹繚乱っ!』
卑弥呼は『剣印』を胸の前で組みながら『はぁぁぁぁぁっ!』と吠えると、
その身体から真っ赤な鬼の気が溶岩のように噴出した。
『シュゥゥゥっ!』と夥しい蒸気が噴き上がり、
周囲が霞んで行った・・・。
「・・・それが奥義ってやつか?」
蒸気の霞が晴れぬ中・・・。
悠斗は卑弥呼の左頬が妙に光っている事が気になった。
(な、何だ?何故?)
そう考えた瞬間、卑弥呼は声を挙げた。
「これはまぁ~、鬼の力を受け取ったその代償・・・。
言わば『呪い』みたいなもんだ・・・」
「・・・呪い?」
そう声に出した悠斗だったが、卑弥呼からの応えはなく、
じっと構え悠斗を見据えていた・・・。
悠斗もまたその視線に気づくと口を閉じ、
静かに構えると『・・・いくぞ』と呟いた。
『ドンっ!』と悠斗の踏み出した跡は焦げ臭い異臭を放ち、
その踏み出しが異常な事を告げていた。
卑弥呼はその踏み出し跡を見たが、
『フフっ、面白い』と呟くとガードを固めて見せた。
(なっ!?打ち合いに来ないっ)
悠斗は躊躇いはしたが『なら、行くっ!』と踏ん切り、
ガードを固める卑弥呼へ攻撃を仕掛けた。
『はぁぁぁぁっ!』
『バキっ!』と凄まじい音を発したが、
悠斗と卑弥呼・・・どちらにも目立った負傷はない事を判断すると、
『まだまだいくぞっ!』と悠斗の攻撃速度は上がった。
『はぁぁぁぁっ!』
『ドカドカドカドカっ!シュっ!ドスっ!』
悠斗の連撃は止まる事を知らず、
ガードを固める卑弥呼に容赦なく襲い掛かった・・・。
(うぐっ・・・ぐぐぐぐっ・・・は、速い上に重いっ!
だ、だが・・・こ、この程度であれば・・・)
悠斗の攻撃は更に続き、時間にして5分ほど経過した時、
攻撃をやめた悠斗は後方へと飛び着地した。
そして構えつつも苦々しい表情を見せていたのだった。
(か、固い・・・っていうか、攻撃しているこっちが痛いくらいだ。
あの奥義ってのは一体どうなってんだよっ!?)
そう思いつつも悠斗の表情には戸惑いが滲み出ていたのだった。
そしてそれを見ていた卑弥呼の口角が上がった。
(悪くない・・・悪くはないのさ・・・悠斗?
だが、お前には・・・致命的な弱点があるのさっ!)
そう思った瞬間・・・。
卑弥呼は一瞬にして悠斗の前に躍り出た・・・。
「・・・えっ?み、見えなかっ・・・」
悠斗が茫然とそう声が漏れ出た時、
卑弥呼は悠斗に聞こえるようにこう言った・・・。
「奥義・一徹繚乱は言わば本来の奥義へと続く予備動作に過ぎない。
つまりだ・・・悠斗・・・。
次へと繋げる為に『一徹する』・・・と言う意味だ・・・わかるか?」
「・・・じゃ、じゃあ・・・まだ奥義は?」
『あぁっ!これからだっ!
行くぞっ!悠斗っ!奥義・鬼華繚乱っ!』
『ドンっ!』と卑弥呼の鬼の気の質が跳ね上がると、
一気に悠斗に襲いかかったのだった・・・。
『ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドっ!』
ガトリングガンの放射のように卑弥呼が放った両拳は、
悠斗の腹へと直撃し、その勢いが止まる事はなかった。
そして悠斗もまた、吹き飛ばされないよう鬼の気で身体強化をし、
先程の卑弥呼のように受けきるつもりでいたようだった・・・。
(ぐっ、ぐぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
ひ、卑弥呼の攻撃が・・・み、見えないっ!
そ、それにこの『熱風』は何なんだっ!?
で、でも・・・お、俺だってっ!卑弥呼のように出来るはずだっ!)
『うおぉぉぉぉっ!』と気合いの声を挙げ、
卑弥呼の攻撃を耐え続けていた時、
卑弥呼は攻撃を続けながら悠斗の赤く染まった瞳をじっと見ながら言った。
「悠斗・・・それは悪手だな?」
「なっ、ど、どうしてっ!?」
「今からその答えを・・・教えてやんよ~♪
ほらほらっ!いくよぉぉぉぉっ!」
『ドドドドドドドドドっ!』と卑弥呼の連射が続く中、
次第に悠斗は違和感を感じ『くっ』と声を漏らした。
「わかったかい?質さ・・・悠斗?
攻撃の威力の質を変えただけさ・・・クククっ!
ほ~らっ!まだまだ行くよっ!」
悠斗は卑弥呼の声を聞いた瞬間、
『ヤバイ』と判断し大きく後方へと飛んだが、
着地の瞬間、背後から『遅いよ?』と妖艶な声が聞え、
その声に振り返った瞬間、『ドカっ!』と鈍い音と共に
悠斗は飛ばされ、まるでピンボールのように何度も弾き飛ばされて行った。
『ドカっ!』と衝撃が走るたびに悠斗は悶絶した。
(い、息が・・・)
「ほ~ら・・よっとぉぉぉっ!」
『ドスンっ!』
強烈な卑弥呼の蹴りが悠斗の右肩口に直撃すると、
そのまま悠斗は地面に落下し、
何度かバウンドしながら闘技場の壁付近にまで転がって行った。
その光景を見ていた者達は、
全くこの展開を予想すらする事が出来ず口を開けたまま硬直していた。
だがそんな中・・・。
サンダラーと黒犬だけは驚きつつも冷静に状況を把握していた。
{・・・こうも一方的になるとはな?}
{まぁ~、相手はあの卑弥呼だ・・・。
ユウトは善戦した方だと思わなくもないが、
だがな・・・?)
{・・・あぁ、まさかあの悠斗にこんな弱点があるとはな?}
黒犬とサンダラーは目の前で起こっている光景に、
小さく頭を振っていた・・・。
(・・・悠斗?これがお前の限界なのか?
余りこの俺をがっかりさせんなよ?}
黒犬の眼光が怪しく光っていたのだった・・・。
卑弥呼は着地すると地面に転がり悶絶している悠斗の所へと向かった。
「・・・悠斗?
これでお前も少しはわかったんじゃないのか?」
「・・・・・」
「・・・何だ?
まだ動けないのか?」
「くっ・・・」
ゆっくりと確実に・・・。
左頬に赤く光る鬼の呪われた紋様を浮かべ、
身体から真っ赤な鬼の気をゆらゆらと立ち昇らせていた。
(くっ・・・お、俺に・・・致命的な?
なっ、何なんだよ・・・それは?)
『ヒューヒュー』と悠斗の呼吸が乱れており、
誰の目から見ても戦闘不能である事は理解出来た・・・。
だが・・・。
卑弥呼は地面に転がる悠斗の前に立つと、
『フンっ!』と鼻息荒く仁王立ちした・・・。
「・・・わからないのかい?」
「・・・・・」
「そうかい、そうかい・・・なら・・・」
卑弥呼は倒れている悠斗の頭を左手で掴み上げると、
闘技場の壁に向かって投げつけたのだった・・・。
『っ!?』
見守る連中が驚く中、
壁に投げつけられた悠斗は壁にめり込み、
崩れ落ちそうになった瞬間、卑弥呼は猛然と駆け、
悠斗の腹に左足でまるで串刺すように蹴りを放った。
『かはっ!』
悠斗は卑弥呼の蹴りによって再び壁にめり込むと、
『ダラン』っと項垂れたのだった・・・。
『ユウトォォォォっ!?』
見守っていた者達が一斉に声を挙げ、
未だ悠斗の腹に左足を食いこませる卑弥呼に向って猛然と駆け出した。
「貴様ぁぁぁぁぁっ!」
「その足を話すメルゥゥゥゥっ!」
「卑弥呼殿ーっ!そこまでですっ!」
ヴァン、スターク、南雲がそう声を張り挙げながら、
悠斗を救い出そうとすると、卑弥呼はその瞳を『真紅』へと変えた。
南雲は一瞬にして卑弥呼の危険さに気づき、
地面を滑りながらなんとか止まる事が出来たが、
ヴァンとスタークは構う事無く攻撃に出た。
『いかんっ!よすのじゃっ!2人共ーっ!』
『その足を離せってんだぁぁぁぁぁっ!』
『そこの女ーっ!どくメルゥゥゥっ!』
瞬時にスタークはその羊毛を真っ赤に染め戦闘力を上げると、
ヴァンを追い抜き先手を取った。
「喰らうメルゥゥっ!」
「・・・フンっ、雑魚がっ!」
スタークの蹴りが卑弥呼の腹に直撃し『メキっ!』と凄まじい衝突音を発したが、
卑弥呼は『フンっ』と鼻息を荒くしていた。
「メ、メルっ!?」
蹴りの態勢のまま微動駄にしない卑弥呼に唖然としていると、
そのスタークの背後から、今度はヴァンが『うぉりゃぁぁっ!』と、
飛び蹴りを放ったのだった・・・。
『バシっ!』
『っ!?』
卑弥呼はヴァンの飛び蹴りを右手で難なく受け止め、
口角を微かに上げながら言った・・・。
「私は雑魚に用はねーんだがな~?」
「なっ!?雑魚だとっ!?」
そう卑弥呼と会話する中も、
卑弥呼の左足は悠斗の腹にめり込ませたままであり、
スタークの蹴りを腹に受け、ヴァンの蹴りを右手で掴んだまま、
卑弥呼は平然と会話をしていたのだった・・・。
『ば、化け物・・・メル』
『け、蹴りの態勢のまま受け止めただとっ!?』
そんなスタークとヴァンの呟きが卑弥呼に届くと、
『ニヤっ』と笑みを浮かべた卑弥呼は2人に声を張り上げた。
『邪魔だぁぁぁぁぁぁっ!』
真っ赤な鬼の気を爆発させたかのように、
弾け飛んだ鬼の気の威力に2人は弾き飛ばされ地面を転がった。
『ぐあっ!』
『メっ、メルゥゥっ!』
その様子を見てたパルサーは、
この場から動かないで居る虎恫に尋ねた。
「おい、そこの3本角の鬼?
貴様は仲間・・・なんだろ?
どうして戦わないんだ?」
そう虎恫に口を開くと虎恫は『ジロリ』とパルサーを睨みつけた。
一瞬、パルサーの背中に冷たいモノが走ったが、
顔を顰めて見せると虎恫は口を開いた・・・。
「あいつ・・・。
悠斗のヤツはまだ・・・終わってない気がするんだ」
「・・・あの人族がまだ終わってない?
ハッハッハっ!バカな事を言うんじゃないよ~・・・鬼。
どう見てもあの小生意気な人族は戦闘不能だろうに?」
「・・・いや、俺にはわかる。
あいつは・・・悠斗はまだ終わってない」
虎恫は真っ直ぐと項垂れたままの悠斗を見ると、
『・・・ここからだよな?』と呟いたのだった。
卑弥呼に腹を蹴られ壁にめり込んだ悠斗の意識は既に飛んでいた・・・。
だが卑弥呼はその左足を降ろそうともせず、
真紅の瞳で悠斗を見つめていたのだった・・・。
(さて・・・悠斗?
お前は自分の致命的な弱点を見つける事はできたのか?
鬼の門・・・私の中の鬼の気が、何かあると告げているんだ。
・・・わかるかい?
私はね・・・待っているのさ・・・。
次の扉を開くお前の事をね?)
悠斗の意識の中・・・。
「んんっ・・・こ、ここは・・・?」
悠斗は倒れていた身体を起こすと、
目の前が赤い霧で包まれていた事に驚いた・・・。
「た、確か俺は卑弥呼と戦って・・・?
そ、それにどうして・・・真紅の門がっ!?」
そう驚きの声を挙げたのも束の間・・・。
悠斗は目の前にある真紅の門に違和感を感じた。
「と、閉じて・・・?」
悠斗は赤い霧を追い払うように掻き乱しながら、
必死に視界を確保しようとした。
「き、霧が邪魔でっ!くっ、くそぉぉっ!」
必死で何かを探しながら真紅の門へと近づくと、
手で触れながらあるモノを探していた・・・。
暫く探していた時、『あっ』と声を挙げると、
『き、傷が無い・・・』と口にした。
「真紅の門の表側には、右の扉の下に刀で斬れた跡があったはずだ。
そ、その傷が・・・な、無いって事は・・・?」
すると悠斗の表情は絶望したかのようなモノへと変わると、
『ペタン』とその場に座り込んでしまった。
「・・・って、ここはやはり・・・門の中・・・だ。
で、でも、どうして開いてないんだ?
門は俺の意思でどうにでも出来るはずじゃないのかっ!?
一体どうなってんだよっ!」
そう声を挙げた悠斗は『はっ』と顔を上げると、
正面にある第三之門ではなく、後方にある第四之門へと顔を向けた。
「ま、まさか・・・?
まさか俺に・・・第四之門を・・・開けろ・・・と?
制御しきれないあの門を開けろと言うのかっ!?」
悠斗はそう言いながら立ち上がると、
目の前にある第三之門の扉を『ドンドンドンっ!』と叩きながら叫んだ。
「だ、駄目だっ!こ、ここを・・・ここを開けてくれっ!
卑弥呼の身体は人間の身体・・・生身なんだっ!
だから第四之門なんて開けたら・・・あの人はっ!
た、頼むっ!真紅の門っ!ここを・・・此処を開けてくれっ!頼むっ!
だ、第三之門でさえ俺は手加減・・・?」
悠斗は勢い余って零れ出た言葉に思わず『はっ』とした。
「・・・て、手加・・・減?
い、いや・・・でも俺は別にそんな事・・・?」
悠斗は自分が無意識で手を抜いていた事に気付いたのだった。
「ひ、卑弥呼が生身・・・だから?
卑弥呼が言っていた、俺の致命的な弱点って・・・まさか?」
その時だった・・・。
悠斗は咄嗟に真紅の門へと顔を上げると、
『そ、そんな・・・』と声を挙げ青ざめた時だった・・・。
『・・・聞こえる?』
「・・・えっ?」
突然聞こえた女性の声に悠斗は咄嗟に振り返り、
声の主を探した・・・。
「だ、誰っ!?君は誰なんだっ!?」
周囲の赤い霧を必死で掻き分け声の主を探していると、
突然頭の中に直接『ジャラっ』と金属音が聞こえた・・・。
「・・・この金属音って・・・く、鎖の音・・・か?」
そう言った瞬間、
『ブォォォォっ!』と真紅の門の中に強い風が吹いた。
「なっ、何だっ!?この風はっ!?」
そしてこの瞬間・・・。
とある2名が何かを感じ声を挙げた・・・。
~ 闘技場内 ~
「こ、これはっ!?
悠斗の意識の中で何かが起こっているようだな?」
左足を未だに悠斗の身体に突き刺したままの卑弥呼が何かを感じ、
それに呼応するかのように卑弥呼の鬼の気も色濃くなっていった。
「クククっ・・・いいぞ・・・悠斗。
さ~て・・・お前は鬼の門の中で何を選択するのだろうな~?
それに悠斗。
私はこんな事もあろうかとさ~♪
『鬼華繚乱』のとっておきを残しているのさ♪
だから悠斗・・・早く戻って来い・・・クククっ!
楽しみで仕方がないよ♪」
そう楽し気に笑う卑弥呼は悠斗が目覚めるのを静かに待つのだった。
~ 嘆きの森 ~
白く長い髪を束ねている女神が突然、
胸を押さえ膝から崩れ落ちた・・・。
「・・・ま、まさか、また・・・クロノスの鎖がっ!?
一体悠斗様の身に一体何が起こっているのっ!?
い、以前にも1度・・・クロノスの鎖が反応した事があったけど、
すぐに彼女の気配は消えたけど・・・
で、でも・・・こ、今度はっ!?」
『嘆きの森』を聖域化した事によって邪気が消え失せ、
小鳥も囀る森へと変わる中・・・。
胸を『ギュッ』と掴み苦しそうな表情を浮かべながら、
悠斗の事を心配していたのは・・・『時空神・ミスティ』だった・・・。
その苦しそうな表情をしながらもミスティは考えていた。
(ク、クロノスの鎖は、悠斗様の身に万が一と思い、
私が内緒で与えたモノではあるけど・・・。
でも、悠斗様に異変があり・・・クロノスが・・・
い、いえ・・・『紅の鎖』が目覚めたのだとしたら・・・?)
ミスティは椅子に手を掛けながら立ち上がると、
椅子に腰を下ろし疲れ切った表情を見せていた・・・。
そしてその様子を静かに見ていたラウルは険しい表情を浮かべていた。
だが、その事にミスティは気付く素振りさえ見せていなかった。
(・・・ゆ、悠斗様?
一体貴方の身に何が起こっているのかは分かりませんが、
紅の・・・いえ、彼女ならきっと、貴方を導いてくれるはずです。
これは私が犯した罪の・・・せめてもの・・・謝罪です。
ですが・・・『クロノスの鎖』の導きが終わった時には・・・。
どうか悠斗様・・・お気を確かに・・・。
そして、全てを受け入れ一歩を踏み出して下さい・・・。
私はこの地で祈っております)
ミスティはそう思いながら手を組み澄み切った青空の下で、
悠斗の事を祈るのだった・・・。
ってな事で・・・。
今回のお話はいかがだったでしょうか?
楽しんでもらえたらとても嬉しく思います。
そして今回『活動報告』の方では・・・。
卑弥呼の新曲をアップしますので、
良ければ聴いてやって下さいっ!
ってなことで、緋色火花でした。




