283話 力の講義と卑弥呼の力
お疲れ様です。
湿度まじでやめてください・・・。
と、懇願したい緋色で御座います。
って言うか・・・。
読者の皆さんは曲の方は聴いていただけました?
気に入ってもらえると嬉しいです。
そして今回、後ほどアップするのは『卑弥呼の曲』となっております。
聴いてもらえたら幸いです。
それでは、283話をお楽しみ下さい。
第二之門を解放した瞬間・・・。
卑弥呼は本能で鬼の気を感じると膝が『ガクガク』と震え、
何故か双眼から涙が溢れ出たのだった・・・。
「ははは・・・はっ・・・」
そう乾いた笑い声を挙げた卑弥呼だったが、
自分の奥底に眠る・・・。
いや、封印していた感情が溢れ出た・・・。
「そ、そうか・・・わ、私は・・・
きょ、恐怖したんだ・・・鬼のその圧倒的な強さを前に・・・。
そ、そうだ・・・そうだった・・・」
『ワナワナ』と震えながらそう漏らした声が悠斗に届き、
訝し気な顔で卑弥呼を見ていると、その視線に気づいた卑弥呼は、
涙で『グシャグシャ』になった顔を上げると着物の袖で涙を拭った。
「・・・卑弥呼?
あんたに何があったのかは知らない・・・
だけど・・・大丈夫か?」
ほんの一瞬・・・。
悠斗の言葉から気遣いが感じられた卑弥呼は立ち上がると、
『すまん・・・感謝する』と言い、
改めて悠斗を見ると目を細めた・・・。
(・・・ん?鬼の気が色濃くなっているのか?
それに些かその顔つきも大人っぽく・・・?)
微細ではあるが悠斗の変化に気付いた卑弥呼は呼吸を整え、
左手の掌に指で何かを書きはじめた・・・。
すると悠斗が興味を持ったのか卑弥呼に尋ねてきたのだった。
「なぁ、卑弥呼?
それ・・・一体何を書いているんだ?」
模擬戦とは戦闘中であるにも関わらず、
そう尋ねられた卑弥呼は『フフっ』と声を漏らした。
(いい度胸だ・・・神野悠斗。
その図太さ・・・私の弟子に学ばせたいもんだよ?
とは言っても、私も質問しているからね~?
お互い様・・・って事だね?)
『フフっ』と笑った事に気付いた悠斗は『おいっ!』と声を挙げた。
「俺の質問聞こえてた?」
「あ、あぁ・・・コレだろ?」
卑弥呼はそう言いながら掌を見せると、
まだ書き終えていない文字が悠斗に見えたのだった。
「あぁ~、そっか?
俺が途中で話し掛けちゃったからだね・・・ごめん。
でもさ?書く物・・・持ってないよね?」
『こ、この子は何て純粋なんだろう?』
そう感じた卑弥呼は再び笑みを浮かべると口を開いた。
「ま~だうちのバカ弟子には見せてないんだけどさ~?
まあ、今回は特別サービスって事で・・・♪」
ウインクしながら大きな胸の前で『パンっ!』と合掌すると、
『鬼術・無限図』と呟くと、卑弥呼の身体に無数の図形が浮き出たのだった。
「・・・す、すごっ!?」
素直に驚いたのであろう・・・。
卑弥呼は『悪くないね~?』と笑みを浮かべると、
身体に浮き出た図形について解説したのだった・・・。
「私の身体に浮き出た図形は、術を簡略化し、
力の消費を抑える為に彫られた・・・言わば魔法陣みたいなモノさ」
「・・・おお~♪
魔法陣・・・かっけーっ!」
「フっ・・・まるで子供みたいな事を言うな?」
悠斗の反応に照れた卑弥呼がそう言うと、
悠斗は『・・・まだ一応子供なんだけど?』と告げると、
『あっ、そうだった・・・』と何故か項垂れた。
『だ、大丈夫か?』と心配そうな声を掛けて来た悠斗に、
卑弥呼は苦い顔をしながら向き直ると続けた・・・。
「・・・見てな?」
卑弥呼は花魁風の衣装の襟元を両手で掴むと、
勢いよく『ズバっ!』とはだけて見せた・・・。
『うおっ!?』と悠斗の驚きの声が挙がった瞬間、
卑弥呼は悪戯っ子のような表情に変わると、顔を背ける悠斗の前まで歩き、
『な、何っ!?』と再び驚きながら顏を上げた瞬間・・・。
『ニヤ~』と不気味に笑った卑弥呼は行動に出た。
「・・・ま、まじ?」
『ガシっ!』と途轍もない力で後頭部を持たれると、
そのまま悠斗の顔を己の大きな胸の谷間に押し付けたのだった。
『ボフンっ♪』
『あっ♪』と悠斗の吐息が大きな胸の谷間から聞こえ、
卑弥呼は今、まさに・・・感無量だった・・・。
そして『グリグリ』と押し付けながらも無駄に説明していった。
「この魔法陣1つ1つには『巻物』なんかが入っていたり、
術を行使するのに必要な工程を簡略化する為の『術式』があるのさ』
『フガフガ・・・』
真っ赤な顔をしている悠斗にご満悦だった卑弥呼は、
悠斗の顔をその大きな胸から解放すると、
その魅力的な太ももにタッチした瞬間・・・。
『バシュっ!』と赤い鬼の気が吹き出した・・・。
『くっ!』と悠斗が吹き出した鬼の気の圧力に顏を顰めると、
卑弥呼は説明したのだった・・・。
「正確に言うと、私は冥界の者ではない・・・。
つまり、冥界の神の類でもないのさ」
「そ、そうなのかっ!?」
余程驚いたのだろう・・・。
(私の胸に埋まっている時よりも反応が大きいのが気になるが?)
そう思った卑弥呼だったが『コホン』と咳払いをすると続けた。
「私の身体は確かに創られたモノであるが、
擬体とは違う・・・。
生身なんだ・・・」
「・・・な、生身って・・・まじかっ!?」
「あぁ・・・。
だからお前達人間となんら変わりはない・・・。
ただちょいと、頑丈というくらいだろうな?」
悠斗も今の話に言いたい事は勿論あったが、
卑弥呼の話に興味が湧いた為黙っていると話は続いた。
「いくら私が『術』によって鬼の気を操ろうとも、
それには当然限界がある。
人の身体だ・・・当然だろ?」
「確かに・・・」
「あぁ・・・だからだ・・・。
私は身体中の随所にタトゥを施し、戦いの途中で力が枯渇しないよう、
色んな場所にタトゥを通して仕込んでいるのさ」
卑弥呼の話に何度も頷く悠斗にこう言った・・・。
「お前は今・・・第二之門と言ったな?」
「あぁ、第二之門を開けた」
すると今度は『色々と説明したお返しをしろ』と言われた悠斗は、
律儀にも『わかった』と答え説明したのだった。
そして今までの話を聞いていたのは勿論・・・。
この場に居た者達も同じであり、
悠斗の説明に生唾さえ飲む事を躊躇う程に聞き耳を立てていた。
『・・・元々俺のご先祖が鬼を退治したとかで』と、
そう説明した悠斗に卑弥呼はとても興味深そうに聞き、
また、他の連中も同様だった・・・。
「俺の力は元々『隔世遺伝』の類らしいけど、
何代前だよ?って思わなくもないけどさ・・・」
「確かにな?これじゃ~まるで・・・」
そう卑弥呼が無意識に口からこぼれた言葉に『はっ』とした卑弥呼は、
思わずその次の言葉を飲み込んだ・・・。
「・・・ん?どうしたんだ?」
そう尋ねられた卑弥呼は『いや、何でもない』と答えると、
悠斗は妙な眼差しを向けながらも引き下がったのだった。
『それで…』と暫く説明した後、
悠斗は『本題なんだけどさ?』と言いながら始めた。
「俺の鬼の門・・・。
正確には『鬼魂之門』って言うらしい・・・」
「・・・鬼魂之門」
「あぁ・・・。
一応『とあるヤツ』から聞いた話だけどさ?
鬼魂之門には1つの門の中に小さな門が2つあり、
段階を踏んで開けるんだけど、俺はもう慣れちゃったからね?」
「・・・ほう」
そう口から出た声ではあったが、内心興味がある事ばかりで、
この時が永遠に続けばいいとさえ思っていた。
すると悠斗が『続けるよ?』と言うと卑弥呼は無言のまま頷いたのだった。
「俺が実際に開けたのは第四之門までだ・・・。
だけど、第四之門は力が制御しきれなくてさ?
だからまだ開ける訳にはいかない・・・」
「なるほど・・・幾つもの門があり、
その様子からそれぞれに違いがあるようだな?」
「あぁ・・・違いはある。
第一之門は正直・・・微妙に赤いだけの大きな門で、
第二之門は結構豪華なくらいで赤と黒の門だけど、
第三之門は・・・違う」
「・・・違う?」
「あぁ・・・。
第三之門の周囲には『赤い霧』が立ち込めていて、
視界は悪い・・・だけどさ?
門を開けた瞬間、その第三之門の色が『真紅』である事がわかるんだ」
「真紅の・・・門か・・」
「あぁ・・・。
そして第四之門・・・ただ大きいだけの門ではなく、
いたる所に掘られている彫刻が色とりどりの色彩で・・・」
「ほほう・・・実に興味深いな?
ただの彫刻ではなく、色とりどりの色彩とはな?」
そう話していた時、悠斗の表情が少し優れないように見え、
卑弥呼は『大丈夫か?』と声を掛けると、
『・・・門が呼んでる』と虚ろな目でそう言ったのだった。
「お、おいっ!悠斗っ!しっかりしろっ!」
卑弥呼は慌てて悠斗の両肩を掴むと激しく揺すり、
我に返るのを待ったのだった。
少しの間・・・。
『ボ~っ』としていた悠斗だったが、
卑弥呼の顔を見るとこう言った・・・。
『だ、第四之門は・・・『深紅の門』だ・・・』
その言葉に首を傾げた卑弥呼は聞き返した。
「お前が先程言った第三之門『真紅』の事じゃないのかっ!?」
「あ、あぁ・・・」
頭を何度か振りながら立ち上がった悠斗は卑弥呼の手を取り、
文字を書きはじめた・・・。
『深紅』と・・・。
それを見た卑弥呼は眉間に皺を寄せ、
『深い紅と書いて・・・深紅か?』と声を漏らした。
「あぁ・・・」
悠斗は手を仰ぎ『ふぅ~』と深呼吸すると、
卑弥呼はマジックボックスを開き、
その中から水の入った水筒を取り出し手渡した。
『有難う』と言いながら受け取った悠斗は水を流し込むと、
『ぷはぁぁぁっ!』と大きく息を吐いた。
その様子に卑弥呼は安心からか笑みが見えると、
悠斗に尋ねたのだった。
「開け放たれた門はお前が閉じない限り、
開きっぱなしなのか?」
卑弥呼が悠斗の瞳を覗き込みながらそう言った事で、
『あぁ、なるほどね』と察した悠斗は答えた。
「あぁ、俺が閉ざすという事を考えない限り、
鬼魂之門は開きっぱなしで鬼の力もいつまでも流れ続けるんだ」
「・・・流れ続けるって?
ど、どれだけ身体に負担が・・・」
そう悠斗の身体を心配するように言った卑弥呼に、
悠斗は笑顔を向けると『もう慣れちゃったよ』とそう言ったのだった。
(こ、この子は本当に・・・?)
その笑顔に顔を伏せた卑弥呼は口角を上げると、
再び顔を上げ不敵な笑みを見せながら言った・・・。
「・・・とてもいい話を聞かせてもらったよ。
有難う・・・悠斗」
「いや、俺の方こそ」
そう言い終えた2人は互いに『ニヤっ』と笑みを見せると、
どちらからともなしにこう言った・・・。
『続き・・・やろうぜ(よ)?』
その声を合図に2人は大きく飛び退くと流れるように構えた。
「第二之門の力・・・見せてもらおうか?」
『あぁ・・・。卑弥呼の力も見せてくれよな?」
「フフフっ・・・見せてやんよ♪」
突然2人が距離を取ったかと思えば、
再び戦いが始まった事に驚きつつも呆れていたが、
でも誰も何も言わずそのまま戦いを見つめるのだった。
「さて・・・悠斗、行くぞっ!」
「・・・来いよっ!」
『はぁぁぁぁぁっ!』と互いに駆け出した両者は、
闘技場でぶつかった・・・。
『はぁぁぁぁっ!うぉりゃぁぁっ!』
『まだまだぁぁぁっ!』
互いに譲らず猛攻が続くのだが、
少し時間が経過し始めると、再び悠斗が押され始めたのだった。
(くっ!?な、何でまたっ!?
こっちは第二之門まで開けているのにっ!?)
卑弥呼は攻防を継続しつつも悠斗の表情や目の動き、
瞳孔の収縮までも観察しデータ収集しており、
その能力は『鬼術』によるモノだった・・・。
その事に気付く事もない悠斗の焦りの色は濃くなり、
卑弥呼の拳が悠斗の身体に当たり始めた・・・。
「おらおらおらぁぁぁっ!
どうしたぁぁっ!?
悠斗っ!お前の力は・・・第二之門の力はそんなモノかぁぁぁっ!?」
「ぐぉぉぉぉっ!」
『ドスっ!バキっ!ドゴンっ!』
『ぐわぁぁぁっ!』
「・・・ほらよっとぉぉぉっ!ぶっ飛べぇぇっ!」
『ヒュンっ!』
卑弥呼が声を張り挙げながら悠斗を蹴り上げると、
悠斗は凄まじい速さで上空へと飛ばされた。
いつ止まるのか?と思いつつも薄く目を開けると、
下で不敵きな笑みを浮かべている卑弥呼が見えた。
(くっ、くっそぉぉぉっ!?
や、やるしか・・・ないのかっ!?)
凄まじい速度で空へと飛んで行った悠斗は落下すると同時に目を閉じ、
己の魂の中に在る『第三之鬼魂門』の前に立ち見上げていた。
『・・・いくら卑弥呼が強いと言っても、
その身体は人間と同じ・・・生身・・・
くっ・・・や、やるしかないのか・・・?
だ、誰か・・・応えてくれ・・・』
霧が立ち込める第三之門の前で迷っていた時、
無意識ながら悠斗は声が零れていた・・・。
『・・・穂高』と・・・。
すると突然『ギィィィィィっ!』と、
悠斗の意思とは関係なく第三之門が開いたのだった・・・。
『な、何で・・・ど、どうして勝手に門がっ!?』
驚いた悠斗は思わず目の前にある『真紅の鬼魂之門』に問いかけた。
『何故だぁぁぁぁっ!?』
そう叫びにも近い声を挙げた時だった・・・。
その『第三之鬼魂之門』から微かに声が聞こえた・・・。
『まよわ・・・な・・・で・・・』
「・・・えっ!?だ、誰だっ!?」
『・・・はや・・・く・・・』
(・・・お、女の・・・声?)
どこで聞いた事あるような・・・。
そんな懐かしい声に悠斗は訳が分からず声を張り上げた。
『・・・やるしかないのかぁぁぁっ!』
そう悠斗が声を張り上げた瞬間、
第三之鬼魂之門の中から、夥しい真紅の鬼の気が噴き出した。
悠斗は『カっ!』と双眼を開くと、地面にぶつかる寸前に右手を出し、
『ドスンっ!』とその衝撃を片手で受け止めつつ、
そのまま身を翻し、卑弥呼との距離を取りつつ着地した。
そして悠斗と卑弥呼の視線が交わり合った瞬間、
『ゾクっ!』と卑弥呼は途方もないその鬼の気の威圧に『うぐっ』と呻いた。
(こ、これは恐らく・・・第三之門を解放したのか?
こんなにも・・・ち、違うモノなのか?
こうなったら私も本気にならないと・・・ヤ、ヤバい・・・ね?)
卑弥呼は悠斗の纏う鬼の威圧に圧倒されつつも、
笑みを浮かべて見せながら大きく息を吸い込むと印を結び、
正面で沈黙したまま構えている悠斗に言った・・・。
「・・・悠斗、そ、それが第三之門なんだな?」
『コクリ』
『そ、そうか・・・クククっ・・・。
な、なるほどな?
だが・・・言ったよな?』
「・・・ん?」
『・・・お前に次があるように、私も次があるってな?』
「あぁ・・・言ってたな?
卑弥呼は・・・見せてくれるのか?」
『あぁ・・・見せてやんよ・・・。
だからちゃ~んと・・・見ておくんだよ?』
「あぁ・・・わかったよ」
卑弥呼は悠斗の瞳が『真紅』に染まったのを確認すると、
踏ん切りが着いたのか、再び印を組み直しながら言った。
『・・・もう手加減は出来ない』
『・・・俺もだ』
『クククっ・・・いいね~?
じゃ~・・・悠斗・・・本気で行くぜ?』
『・・・来いよ、卑弥呼っ!』
『はぁぁぁぁっ!』と悠斗が真紅の鬼の気を噴き上げるのを見ながら、
口角を上げた卑弥呼は『ゾクゾクが止まらないね~?』と言った。
『・・・鬼道・身体奥義っ!』
そう卑弥呼が吠えた瞬間、
悠斗の胸の奥辺りが『ドクンっ!』と波打ったのだった・・・。
『うぐっ』と声を漏らしつつも卑弥呼から視線を逸らさず、
呼吸を整えると構え、卑弥呼の眼光が鈍く光るのを見たのだった・・・。
ってな事で・・・。
今回のお話はいかがだったでしょうか?
楽しいでもらえたら嬉しいです。
卑弥呼との戦闘は書いていて楽しいですし、
この組合せを待っていたので書きがいがありますw
それと、曲のほうは勿論『やる勇』の方でもありますので、
興味があれば一度どうぞ^^
ってなことで、緋色火花でした。




