277話 弱体化する亜神の力
お疲れ様です。
今年も11月くらいまで暑いのですかね~?
と、憂う緋色で御座います。
さて今回ですが・・・。
まぁ、ここで話しても仕方がないので、
本編をどうぞw
それでは、277話をお楽しみ下さい。
『行くぞっ!』と、声を挙げヴァンがその声に応えた瞬間だった・・・。
『あ、あれ?』と戸惑う声を挙げた悠斗が、
そのまま地面に片膝を着き身動きがとれなくなったのだった・・・。
「お、おいっ!?ユウトっ!?」
「か、身体に・・・ち、力・・・が・・・」
そう呻くように言った途端、
悠斗の視界は歪み始め、地面に両手を着き苦悶の表情を浮かべた。
『い、一体どうしたんだよっ!?」
そう蹲る悠斗にヴァンがそう吠えるも、
悠斗からは『うぐぐぐ』と言う呻き声しか帰って来なかったのだ。
『お、おいっ!』と再びヴァンが声を挙げた時だった・・・。
『貴様らぁぁぁっ!』と・・・。
怒り心頭と化したニビルが、ヴァンパイアの神力を放出させながら、
爪を伸ばし振りかぶりながら迫っていた。
「チっ!こんな時によっ!」
「雑魚共がぁぁぁっ!」
迫るニビルにヴァンは『ふぅ~』っと息を吐き、
迫るニビルに対し構えを取ると、
背後で蹲る悠斗に対し、背中を向けたまま口を開いた。
「・・・お前の事だ、何か有るんだろう?
お前が復活するまで・・・」
そう言いかけた時、『キッシャァァァっ!』と、
伸ばした爪を振り下ろしたニビルの斬撃を、
ヴァンが声を張り上げながら受け止めたのだった。
「させるかよぉぉぉぉっ!」
「グっ!?」
『バチンっ!』と凄まじい炸裂音を響かせはしたが、
その一撃はヴァンがニビルの手首を掴み凌いでいたのだった。
『ぐおぉぉぉっ!』と・・・。
強引にそのまま爪を捻じ込もうとするニビルに対し、
ヴァンは『させねーって言ってんだろうがぁぁぁっ!』と咆哮した。
そして咆哮し、力の鬩ぎ合いとなった時、
先程言いかけた言葉を、未だ苦悶の表情を浮かべる悠斗に言った。
「ユ、ユウトっ!
お前が復活するまで・・・
この俺が・・・押さえて見せるぜぇぇぇっ!」
そう言い放ちながらニビルの掴んだ手首を引き込み、
バランスを崩した瞬間、
ヴァンはニビルま頭に頭突きをかますと、
すぐさまその横っ腹に、膝を叩き込んだのだった・・・。
『ドスンっ!』と重くも鈍い音が響き、
ニビルは『ゴフっ』と肺の中にある酸素を全てぶちまけ、
『あ゛あ゛あ゛ぁ・・・』っと・・・。
ニビルは強引に酸素を取り入れようとした瞬間、
今度はその胸板に前蹴りを炸裂させたのだった・・・。
『ドカっ!』
『グホっ』
『ヒューン』とそのままフッ飛ばされたニビルは、
冥界の硬い地面を再び滑って行き、
ヴァンの攻撃の威力が見守る連中には想像できたのだった・・・。
「ヴァンのヤツ・・・やるメルっ!
以前とは戦い方が違うメルよ?」
そう声を挙げたスタークが誰に言うでもなく声を挙げた時、
突然スタークの横から『ほっほっほっ♪』と、
聞き慣れた声が聞こえ咄嗟に顏を上げるのだった・・・。
「ラ、ライトニング・・・メルっ!?
あ、あれ・・・?」
一種の出来事に驚き、その四角い瞳を挙げた時、
微笑むライトニングが驚くスタークを密ながら口を開いた。
「ほっほっほっ♪
彼が以前より力を増したのは、
私が彼にほんの少し・・・手ほどきをしたからかもしれませんね?」
微笑みながらそう話すライトニングに、
スタークは『・・・ある意味納得メル』と答えると、
ライトニングは更に続けた・・・。
「本当に以前よりも・・・ほんのすこ~し・・・ですがね?
彼も切羽詰まっていたのでしょうね?
私に頭を下げプライドを捨てて見せたのですから・・・」
そう微笑みながら説明したライトニンクだったが、
その途端・・・突然その表情は一変し、
ニビルと戦うヴァンへと視線を向けると、
『しかしながら・・・』と、とても不満げに続けた。
「・・・あのような喧嘩同然の攻撃では、
そうたいして効果はありませんでしょうな?
見ていて腹立たしいモノがありますが、致し方ありませんな?」
口調は穏やかなモノだったが、
その瞳の奥には感情の欠片もないように見えたのだった。
そしてニビルとヴァンの喧嘩染みた戦闘が続く中、
苦悶の表情を浮かべ、何が何だか訳も分からないといった悠斗に、
少し前に聞いたエイトの声が流れて来た・・・。
『はっはっはぁ~・・・悠斗~?
お前・・・なにやってんのさ?』
{そ、その声は・・・エイトっ!?}
『ピンポーン♪正解~♪
・・・じゃなくてっ!
お前~・・・もう俺の言った事、忘れたのか~?』
{・・・言った事?}
『あぁ・・・。
折角お前に与えた『亜神の力』の注意事項をさ~?』
{あ、あぁ・・・そ、そうだけど・・・でも・・・}
『でももヘチマもないんだよ・・・。
全くお前は・・・。
だから気をつけろと言ったろ~?
亜神の力には制限があるってさ~・・・。
それにフルパワーで使うとその制限時間も短くなるって、
俺・・・言ったよね~?』
苦悶の表情を浮かべ身動きが取れなくなった悠斗に、
エイトは容赦なく説教し始めたが、
その説教は諭す・・・。
というよりも、嫌味ったらしく言ってるだけだった。
暫くの間、エイトの嫌味ったらしいぐちぐちとした言葉が続くと、
いつ終わるかも知れないエイトの声に、たまらず声を挙げた。
{エ、エイト?と、とりあえず説教なら後で聞くからっ!
俺が動けるようになるには、どうしたらいいのか教えてくれっ!}
そう願い出た悠斗の声に、エイトは『そうだね~』と、
何かを思案している様子だった・・・。
そして『そうだな・・・』と呟くと・・・。
『後30秒くらいでパワーダウンした女性の姿になるぞ?』
{・・・えっ?じょ、女性?
エイト・・・。今、女性の姿になるって言った?}
エイトの言葉に耳を疑った悠斗がそう尋ねると、
『さっきも言ったろ~?』と不貞腐れながら答えたが、
悠斗は『それは聞いてないんだけど?』と返答した。
するとエイトは『あれれ~?あははは』と乾いた笑い声を挙げると、
悠斗に『残りだいたい5分だから♪』と、そう告げ、
さっさと消えたのだった・・・。
今まで時間でも止まっていたのか?
そう思えるほど、状況は進展しておらず、
ヴァンもニビルも戦闘の真っ最中だった・・・。
(も、もしかして・・・時間止まってた?
そんな力が作用した事を感知出来なかったんだけど?)
そんな疑問が悠斗の頭を過ぎった時だった・・・。
突然『シュワンっ!』と力の消失を感じた悠斗は、
眼前にある地面がはっきりと認識出来るようになっていた・・・。
(う、動けるのかっ!)
何か確信めいたモノを感じた悠斗は、
身体の感覚を確かめるように立ち上がり拳を握ると、
ニビルと戦うヴァンに声を張り上げた。
『ヴァァゥァァンっ!』
その張り上げた声にヴァンは思わず振り返ると、
『お、お前・・・もう・・・うご・・・』と、
途中まで聲を発したが、それはすぐさま戸惑いの声へと変わったのだった。
『ユ、ユユユ・・・お、お前・・・ユウトなのかーっ!?』
ヴァンの焦る声に悠斗は『あぁ・・・』と答えた瞬間、
『キィェェェっ!』とニビルの咆哮が木霊し、
ヴァンが『あっ・・・』と声を挙げた刹那・・・。
『バキっ!』と強烈な右拳がヴァンの顔面にヒットしたのだった。
『あばっ!』と悲鳴にならない声を挙げたヴァンはフッ飛ばされ、
大の字で地面に横たわるはめになったが、
それをスルーするかのように悠斗は構えながらこう言った。
「時間がないんだっ!ヴァンっ!
いつまでも寝てないで、とっととこいつをやるぞっ!
遅れるなよっ!」
ヴァンのダメージも考える素振りすら見せず、
悠斗がそう命令すると、ヴァンのこめかみ激しくヒクつき声を荒げた。
「き、貴様ぁぁぁぁっ!?
さっきから何、勝手な事を言ってやがるっ!?
そ、それにその姿はなんだぁぁぁっ!?
まずは説明しろよぉぉぉっ!」
怒りの形相でそう解答を求めるヴァンに、
悠斗は不機嫌顔を向けると睨みつけて来た・・・。
「・・・いいから、まずは働けよ?
時間ねーって言ってる・・・よな?」
その声は間違いなく女性であるのだが、
物言いは間違いなく悠斗本人だったのだ・・・。
そんなやり取りを見ていたニビルも戸惑いながら、
悠斗と呼ばれた女性に『はぁ~?こいつが?』と疑問の声を挙げた。
そんな声に対し悠斗は『はぁ?』と睨みを利かせるが、
未だ信じられないと言った表情で口をあんぐりとしていたのだった。
「女の姿になったからって、別に何がどう変わる事もないしっ!」
口調は悠斗そのものだったが、
その肉体と声は誰がどう聞いても十代の女性の声だったのだ。
「ちょ、ちょっと待て・・・」
そんな声がヴァンから聞こえてきたが、
『時間がないっつったろ~?』と苛立ちがオーバーフローしており、
これ以上聞く耳を持たないと理解したヴァンは声を挙げた。
「わかったよ・・・ユウト。
あいつを・・・ニビルをやるぞ・・・。
でもな?ちゃんと後で説明しろよな?」
無理矢理納得したと言わんばかりにそう言ったヴァンに、
悠斗は『あぁ・・・』と答え、
眼前で状況が理解出来ていないニビルはただ顏を顰めていた。
「・・・チっ!意味がわからんが、
兎に角・・・貴様らを葬る事になんら変わりはない。
命乞いしたところで、もはや何の意味ももたん事を教えてやろう」
微かに笑みを浮かべたニビルが『シュイン』と爪を伸ばすと、
悠斗は静かにその拳に炎神の力を凝縮した・・・。
(あ、あれ?さっきと感覚が・・・?)
悠斗は身体に違和感を感じ拳に視線を落とすと、
先程よりも力が集らない事に顏を顰めた。
(まじか~?って言うか・・・今の俺って女になってるんだっけ?
まぁ~エイトがわかりやすくしてくれたのかもしれないけどさ?
これって~・・・セクハラとかになるんじゃね?
ってか、男よりも強い沙耶姉~が聞いたら、
きっとブチギレるんだろうな~・・・)
悠斗はこの状況に似つかわしくなく笑みを浮かべ、
今は遠い存在となった日本に居る『沙耶』の事を思い出し、
顔がニヤついていたのだった。
そんな悠斗にニビルの眼光が鋭さを増すと、
『そんな余裕がどこにあると言うんだぁぁっ!』と、
ニビルは怒声を挙げると共に飛び出した。
「ユウトーっ!来るぞっ!」
「わかってるよ」
ヴァンから見て、どこか呑気に見えた悠斗に声を掛けながらも、
爪を大きく振りかぶるニビルに牽制をかけ、
注意を自分に向くように大振りで拳を放った。
『うぉらぁぁっ❕』
(別にこの攻撃は当たらなくていい・・・
ただ、ユウトへの攻撃をキャンセル出来さえすれば・・・)
呑気に見えた悠斗を庇うべく、
ヴァンは自らが囮となって悠斗への注意を逸らそうとした。
「フンっ!そんな大振りがっ!」
そうのたまいながら身を引き、
スウェーしヴァンの拳を躱そうとした時、
突然声が挙がった・・・。
「誰が呑気にしてるってっ!?」
『えっ?』
悠斗の声に一瞬驚いたヴァンとニビルだったが、
すぐさま悠斗の行動に驚く事になった。
『うぉりゃっ!』
悠斗は声を挙げながら、
大振りするヴァンの拳に裏拳を当て、その拳を加速させたのだった・・・。
ニビルはスゥェーし空振りをした瞬間に攻撃に転じようとしたが、
その目論見は悠斗によって阻止されるどころか、
裏拳によるヴァンの拳の速度アップによって、
強烈な一撃が顔面にヒットし大切を崩したのだった。
『ぐはっ!』とニビルが態勢を崩した瞬間、
『行くぞっ!ヴァンっ!』と発すると同時に、
『任せろっ!』と声が挙がると、
初めて見せる悠斗とヴァンの連続攻撃が始まった・・・。
『シュっ!シュバっ!』
悠斗の拳が放たれ、ニビルの後方に移動したヴァンは、
回し蹴りを放った・・・。
『ドカっ!ドスっ!ベキっ!ドゴっ!』
その衝撃音と共に、面白いようにニビルの身体が宙を舞い、
まるで木の葉でも舞うが如く空を彷徨い舞っていたのだった。
『はぁぁぁっ!うぉらぁぁっ!はぁぁっ!そりゃあっ!』
『ドカっ!ドスンっ!ベキっ!ドゴーンっ!』
宙に舞うニビルは息も絶え絶えになり、
2人の連続攻撃による猛攻でまはや息継ぎをする暇もなかったのだった。
そして悠斗が宙へと舞いニビルの上空へと達すると、
『歯ぁぁぁっ!食い縛れぇぇぇっ❕』と怒声を発しながら、
悠斗の左拳から爆炎が噴き上がり、
意識が遠のく中、それを目にしたニビルは恐怖に支配された。
「やっ、やめっ・・・ろっ・・・」
息も絶え絶えなニビルの掠れた声が悠斗の耳を触ったが、
見た目の爆炎とは違い、
その冷めきった瞳にニビルは『カっ!』と目を見開いた。
『プリメットっ!ブリットォォォっ!(急降下する弾丸)』
爆炎に包まれた悠斗の左拳が『ゴォォォっ!』と呻りを上げ、
ニビルの鳩尾に全体重をかけたい爆炎の拳が、
今・・・直撃した・・・。
『ドゴォォォンっ!』
『カハっ!
アッ・・・ガっ・・・』
その強烈な音が冥界の地に響き渡った時、
それを食い入るように凝視していた南雲は無意識に呟いた。
「こ、この音・・・。
ま、まるで・・・まるで大口径の拳銃の発砲音のようじゃ・・・」
抽象的ではあったが、南雲のその言葉はすんなり納得いくほど、
悠斗の放った一撃は凄まじかったのだった。
『ヒューンっ!ドゴォォォンっ!』
この冥界の大地の堅い地面に激突したニビルは、
土や砂を大量に巻き上げ落下した・・・。
そしてその舞い上がる土砂が四方へと落ち、
土や砂煙りが晴れた頃、
そこには『爆心地』とも思えるほどの大きなクレーターが広がり、
その円の中心には・・・丸く身体を縮め倒れるニビルの姿があった。
『ジャリっ・・・ジャリっ』と・・・。
悠斗とヴァンがその大きなクレーターに近寄ると、
『うっ・・・うぅぅぅっ・・・』と弱々しく呻くニビルの姿を見た。
「・・・チっ!あれで死なないとはな?」
舌打ちしながら悠斗へと視線を向けたヴァンは、
一瞬その目を大きくさせると、すぐさま悠斗から顏を逸らせ、
『ユ、ユウトっ!』と何故か赤面しながら声を張り上げた。
「ん?どうしたんだ?」
「い、いや・・・あ、あの・・・そ、それっ!」
「ん?それって・・・何?」
ヴァンの慌てっぷりに首を傾げた悠斗に、
今度は右手を両眼を塞ぎながら悠斗に向かって指を差して来た。
「だ、だから・・・それっ!それっ!」
「だから、それって一体何だよっ!?
ヴァン・・・いい加減にしろよっ!」
ヴァンの言葉の意味がわからない悠斗は苛立ちながらそう声を挙げると、
遠くで見守っていたスターク達が慌てながら声を張り上げていた。
『ユ、ユウトォォォォっ!?
お、お前っ!服っ!服メルよっ!』
「・・・ん?含める?何を?」
これでも悠斗は真剣である・・・。
本気でみんなの言葉の意味が分からず首を傾げていた時、
突然その背後から『ほっほっほっ♪』とライトニングの笑い声が聞こえ、
その瞬間『ファサァァァ~』っと、
大きな布が悠斗の身を包み込んだのだった。
そして驚きながら顏をライトニングへと向けると、
いつも通りの笑顔のまま、悠斗に声を掛けたのだった。
「ほっほっほっ♪
少々・・・コホン、いえ・・・
だいぶ・・・かなり・・・その御胸辺りがやはり少々・・・?
い、いえ・・・か・な・り・・・
衣装がユウト様の速度に耐え切れず・・・
御胸が・・・露出しておられます故・・・」
そう少し照れながら言ったライトニングに、
悠斗は自然と『・・・胸?』と呟きながら、
その視線を降ろすと・・・。
「うぎゃぁぁぁっ!?
む、むむむ・・・胸がぁぁぁっ!?
ま、まじかぁぁぁっ!?」
「ほっほっほっ♪
これこそがまさに・・・若さ故の過ち・・・ですな~?
ほっほっほっ♪」
そんなライトニングの声を頭上で聞く事になった悠斗は、
慌ててしゃがみ込み、その大きな布の中で縮まっていたのだった。
そして未だ顏を赤らめながらも悠斗を見るヴァンに、
顔を真っ赤にしながら声を荒げた。
『こっ、こっち見んなっ!この鳥野郎っ!』
「と、鳥・・・や、野郎・・・?
は、はぁぁぁぁぁっ!?
ユウトォォォっ!
貴様ぁぁぁぁっ!誰が鳥だっ!誰がぁぁぁっ!」
ニビルとの戦闘が終わり、静寂に包まれたはずだった冥界の大地に、
悠斗とヴァンの罵り合う声が響き渡っていたのだった・・・。
ってな事で・・・。
今回のお話は悠斗の絶叫で終わりましたw
確かに服・・・破れちゃいますよね?w
でもまだ・・・今回の戦いは終わりじゃないんです。
後に遺恨を残す事になる出来事が・・・。
と、ネタバレはこのくらいで・・・w
ってなことで、緋色火花でした。




