276話 双子
!お疲れ様です。
腱鞘炎に苦悶中の緋色で御座います。
さて今回は久々に話が長いですが、
楽しんでもらえたらと思っています^^
それでは、276話をお楽しみ下さい。
深淵のヴァンパイアの力を放出するとエビルと、
亜神である炎神の力を放出する悠斗・・・。
今、2人の激突が始まった・・・。
「行くぞぉぉっ!クソガキィィィっ!」
「来いよっ!ヴァンパイアっ!」
一度上空へと舞い上がったエビルは真っ赤な力を放出すると、
急降下し身構える悠斗への攻撃を仕掛けた。
「クックックっ!
まずはこれからだぁぁぁっ!
ストリゴイ・ブレードっ!」
そう声を挙げながらエビルは両手の爪を伸ばすと、
両腕をクロスし防御を固める悠斗に向かって振り切った。
『バカめぇぇっ!
そんな防御程度で俺の攻撃が止められるかぁぁぁっ!
喰らえぇぇっ!
ブラッディー・エンドォォォっ!』
『シュバっ!』
2つの真っ赤なオーラが斬撃となり空を飛ぶと、
防御を固める悠斗に襲いかかった・・・。
そして放たれた斬撃が悠斗へ向かう中・・・。
悠斗は硬い地面に向かって吠えながら、
炎のガントレットを纏ったその右拳を撃ちつけた。
『グランド・マグナードっ!』
『ドゴーンっ!』
凄まじい轟音を響かせた地面は一瞬にして砕け散り、
エビルの赤い斬撃が直撃する寸前、
『ドッシャァァァっ!』と噴き出したマグマが、
その赤い斬撃を飲み込んだ・・・。
「なっ、何だとっ!?
お、俺の攻撃がいとも簡単に・・・」
驚きながらも激しい怒りを滲ませるエビルに対し、
噴き出したマグマが消失した場所では、
悠斗が半身になりながら上空に居るエビルを睨みつけていた。
「・・・クっ」
怒りで顔を引き攣らせるエビルに、
悠斗は睨みつけながら口を開いた・・・。
「・・・その程度か?」
「なっ・・・なん・・・だとっ?!」
「・・・大層な事言ってた割には、
お前・・・大した事ないよな?」
「・・・はぁ?」
挑発する悠斗に青筋を立てるエビルの怒りは頂点に達し、
限りなく黒に近い赤いオーラを放出し始めた・・・。
「ならば見せてやろう・・・後悔するなよ?」
怒りの形相だったエビルの表情が突然消え失せ真顔になると、
双眼を閉じ沈黙すると、悠斗はその纏う雰囲気に戸惑いを見せた。
(な、何だ・・・?
突然あいつの雰囲気が・・・)
エビルが『はぁぁっ!』と静かなる声を挙げた瞬間双眼が開かれ、
それと同時にエビルの口が耳元迄大きく裂けた・・・。
「・・・ヤバいな」
小さくそう漏れ出た声は無意識ではあったが、
悠斗が本能で感じとった感想に違いはなかった・・・。
『ブチ、ブチブチブチっ!』
『っ!?』
エビルの身体が奇妙な音を奏でながら形状変化させ、
その光景に悠斗ばかりが南雲達も息を飲むほどの光景だった。
『シュゥゥゥゥ』
エビルの身体から凄まじい蒸気が吹き出し、
その蒸気が消えてなくなると『ニヤ~』っと不気味な笑みを浮かべた。
「・・・待たせたな、ユウト・カミノ」
地の底から響くような声を発したエビルに、
悠斗は咄嗟に身構えながらも1歩・・・後退していた。
(ヤ、ヤバい・・・アレは・・・ヤバい気がする・・・)
エビルの纏う雰囲気を本能で感じ取った悠斗は、
牛劇に喉の渇きを感じ気圧された・・・。
そしてそれを固唾を飲んで見ていた南雲が口を開いた。
「あ、あれは・・・何じゃ?
深淵にはあれほどの化け物がいるのか?」
そう言葉を漏らした南雲に黒犬はその肩に触れた。
「・・・あぁ、深淵にはヤツよりも強いヤツは存在する。
そしてそれらは・・・ヤツの比ではない」
『っ!?』
「・・・な、何ですとっ!?
あのエビルをも上回るヤツが・・・?」
黒犬の言葉にスタークと虎恫は口を開けたまま唖然とし、
南雲は無意識ながら握った拳を固めていた・・・。
そして変身をし、真の力を見せたエビルと、
その化け物と対峙する悠斗に視線を向けながら呟いた。
「・・・悠斗。
一体どうするつもりじゃ?」
そう言葉を漏らした南雲の背中を黒犬は無表情で見つめ、
悠斗へと視線を向けると心の中で呟いた。
(さぁ、ユウト・・・。
お前があの御方に選ばれた男なら、
これくらいの壁は乗り越えてもらわんとな?)
そう思いながら黒犬は、その口を微かに緩めたのだった・・・。
『ヒュゥゥ~』っとこの冥界の地を這うように、
悠斗の足元を冷たい風が吹き抜けていく・・・。
エビルの纏う力に悠斗は喉の渇きを感じるが、
決してその瞳は怯えてなどいなかった・・・。
(・・・ヤバいと思うけど、
でも・・・何故かな?
負ける気はしないんだよな・・・)
そう思った時、悠斗の口元が上がると、
それを目にしたエビルが怒声を挙げた。
「このガキィィィィっ!
その無礼な態度はなんだぁぁぁぁっ!?」
「っ!?」
その怒声に少し驚きはしたものの、
悠斗は口角を上げながら半身になり構えをとってみせた。
「・・・御託はいい。
さっさと来いよ・・・ヴァンパイア」
『クイクイっ』とエビルを挑発するように手招きした悠斗に、
エビルの怒りは激しさを増し、
上空で真っ赤なヴァンパイアの神力を放出した。
『うっ』とそのヴァンパイアの神力の熱量に、
悠斗は一瞬顔を背けたが、その構えを解く事はなかった。
「・・・貴様は必ずぶち殺すっ!
うおぉぉぉぉぉっ!」
怒声と共に急降下したエビルに対し、
悠斗は亜神の力である爆炎を噴き上げると、
構えた右拳にその力を溜めた・・・。
『ストリゴイ・ランスっ!』
そう声を張り上げながらエビルの伸びた右手の爪が突然折れ、
ヴァンパイアの神力を纏いながら形状変化すると、
その爪は1本の真っ赤な矛先を鈍く光らせた槍となったのだった。
「っ!?」
その槍に悠斗は眉をピクリと動かすが、
構えを解く事も無く『はぁぁぁっ!』と呻るように声を挙げ、
エビルとの間合いに意識を向けた・・・。
そして急降下して来るエビルが、
ヴァンパイアの真っ赤な神力を槍に流し込みながら、
絶叫と共に気合いの突きを繰り出した。
『喰らえっ!
ストリゴイ・ストライクっ!』
エビルの槍の矛先が一瞬『キラリ』と瞬くと、
高周波の波が悠斗を襲い、その高周波に悠斗は顏を歪ませた。
(くっ・・・この高周波は・・・
だけど・・・これは本命じゃないはずだ・・・)
高周波に悠斗は顏を歪ませたが、
その攻撃は序章に過ぎないと核心すると、
悠斗は頭の中で右拳に凝縮される力のイメージを固めて行った。
「どんな小細工をしようともっ!
この俺の真の一撃を阻む事など出来んぞぉぉっ!」
(この高周波が障壁の役目を果たしているんだろうけどっ!
亜神のっ!この炎神の力ならっ!
こんな高周波の障壁などっ!)
そう悠斗が頭の中でイメージを固めた瞬間、
胸元へと迫る真っ赤な力を纏う槍の矛先が微かに見え、
その矛先へと向かって瞬時に右拳を引き絞り放った・・・。
『一撃には一撃をっ!
ブラスト・ストライクっ!』
引き絞った右拳に爆炎の力を凝縮した悠斗は、
腰を落し左足を力強く踏み出すと同時に腰を回転させ、
『うぉぉぉぉぉっ!』と気合いの声を張り上げながら右拳を放った。
『ドォォォンっ!』
「うわぁぁぁっ!」
凄まじい爆音が響き渡る中、
2人の激突を見守っていた南雲達は驚愕する事となった。
悠斗の2ⅿ手前で大爆発を起こし、
その爆風と衝撃波で悠斗は10ⅿ近く吹っ飛ばされたが、
南雲達の視線はそんな悠斗を追う事無く、
驚愕したまま上空を見つめたままだった・・・。
時間にして4~5秒といったところだろう・・・。
上空を見上げたままの南雲達の頭がさらに上に向き、
やがてその頭はゆっくりと地面へと向けられた・・・。
その後すぐに『ドサっ』と落下音が響き、
砂塵が舞い、その砂を冥界の風が攫っていった・・・。
『痛っつつつつつ・・・』
悠斗が身体歩起こし痛打したのであろう、
後頭部を押さえていると、スタークが声を張り上げた。
「ユ、ユウトォォォっ!?
お、お前っ!すごいメルゥゥゥっ!」
そんなスタークの声に悠斗は『ん?』と、
後頭部を押さえながら視線を向けると、
虎恫が素早く無言で何度も何度も頭を上下させ頷いていた。
(・・・虎恫のヤツ、壊れた人形みたいになってるな?)
そんな感想を思いつつも『あっ』と思い出した悠斗は、
立ち上がりながら視線をエビルへと向けると、
そこにはボロボロになったエビルが地面に倒れていたのだった・・・。
(少し無茶しちゃったけど、まぁ~何とかなったな)
『ふぅ~』っと安堵の息を漏らした悠斗はその歩みを進め、
冥界の大地に仰向けで倒れるボロボロになったエビルを見下ろした。
「・・・で?
誰が誰に勝てる訳ないって?」
「うっ、うぐっ・・・こ、この俺が・・・
こ、こんな・・・こんなガキ1人に・・・ゴホっ!」
吐血し悠斗の鼻にエビルの血液の匂いが届くも、
悠斗は冷めた瞳でエビルを見ていた・・・。
そして一度顔を上げ、周囲を見渡した悠斗は、
周り倒れる堅狼族達を見て苛立ちを募らせた・・・。
「お前のせいで、この狼達は・・・」
怒りが悠斗を支配し、再び向けられたその瞳は、
まるで炎の如き怒りの炎で満たされていた。
そんな悠斗の瞳に『クっ』と言葉を詰まらせたエビルは、
その瞳から顏を背けると『こんなはずでは・・・』と呟いてた。
悠斗は倒れるエビルに怒りの声を静かに挙げた。
「・・・これで終わりだエビル」
『ふんっ!』と・・・。
握り固められたその拳に『炎神』の力が込められると、
爆炎を纏う右拳が『ゴォォっ!』と呻りを上げ始めた。
『消えろぉぉぉっ!エビルーっ!』
悠斗の怒号と共にその爆炎を纏った拳が放たれようとした瞬間・・・。
『シュバっ!』と空気を切り裂き悠斗の右肩を貫いた。
『がはっ!』
突然右肩に激痛が走り、膝を折った悠斗は、
その右肩から流れる血に顏を歪めた・・・。
「ど、どこからっ!?」
激痛に顏を歪めながらも敵を察知しようとした時、
後方にある大きな岩場を踏みしめながら、
何者かが高笑いと共に姿を現した。
「ワァ~ハッハッハッ!
無様だな~・・・エビル・・・
いや・・・兄貴よ」
『っ!?』
皆がその男に驚き言葉を失っている間でも、
その男の口が閉じる事はなかった・・・。
「何だ何だ~?
兄貴よ・・・こんなヤツにやられたってのか~?
優等生なお前は所詮・・・これが限界ってところだな~?
クックックっ・・・ざまぁ~ねーな?」
その男の言葉に辛うじて上半身を起こしたエビルは顏を顰め、
何か因縁でもあるかのように悔し気に掠れた声を挙げた。
「・・・ニ、ニビル。
き、貴様・・・ど、どのツラ下げて・・・お、俺の前に・・・」
「クックックックっ!
ワァ~ハッハッハッハっ!」
したり顔で高笑いするニビルにエビルは怒りを募らせるも、
もはや立ち上がる力など残されてはいなかった。
この2人が兄弟だと知った者達の動揺は隠せなかったが、
そんな中・・・。
黒犬だけは鋭い眼光を向けていた。
「・・・ヤツの名はニビル。
俺も詳しいことまでは分からないが、
エビルとは双子の兄弟で同じ主に仕えていたんだが、
見ての通り、弟のニビルは素行が余りにも悪くてな?
何かとんでもない問題を起こし追放されたと風の噂で聞いた・・・」
「ふ、双子っ!?」
「あぁ・・・あそこでバカみたいに大声を張り上げている男が、
エビルの弟・・・ニビルだ」
そう説明する黒犬に南雲達は『追放?』と訝しい費用上を見せたが、
再びニビルのバカ笑いが響き、会話を止めたのだった・・・。
「ワァ~ハッハッハっ!
兄貴は実力もないくせに、ご機嫌取りだけは上手かったもんな~?
はみ出し者の俺をいつも見下してよ~?
しかし兄貴よ・・・。
たかが人族のガキに、ざまぁ~ね~なぁ~っ!」
そう言い放ちながら大きな岩場から飛び降りたニビルは、
一瞬にして悠斗の背後を取ると、
慌てて回避しようとする悠斗の首を掴み吊り上げた。
『うぐっ・・ごほっ、ごほっ!』
『ギチギチ』とゆっくりと・・・。
首を掴んだその手に力が入り、悠斗の顔が苦悶に歪む・・・。
ニビルはそんな苦悶の表情を浮かべる悠斗の顔をまじまじと見つめると、
『ニヤ~』と楽し気に笑みを浮かべた。
「おいおい、このクソガキ・・・
お前の力はこの程度なのか?」
「うがっ!ごほっごほっごほっ!」
余りの苦しさに悠斗は咳き込み、
やがてその口からは一筋の血が流れ落ち始めた・・・。
「・・・ハァ~ハッハッハァーっ!
ざまぁ~ねーなガキっ!
ほらほらほらっ!
俺の手から脱出しねーと、お前はこのまま死ぬんだぜ~?
どうだ・・・ガキっ!
ほらほらほらっ!とっとと脱出してみやがれってんだっ!」
ニビルの残忍とも言えるその行動に、
南雲達は拳を硬く握り締め、怒りの表情で顔を歪ませていた。
『黒犬様っ!』と虎恫が黒犬にそう声を挙げるも、
黒犬は視線を向けるだけで一歩も動こうとはしなかった。
だが腕を組んでいた黒犬の手には力が込められ、
いつからか、黒犬の鋭い爪が肉に食い込み血を流していたのだった。
そんな黒犬達の事など気にする事もなく、
ニビルは首を掴む手に、更に力を入れ始め、
悠斗の意識が朦朧とし始めた瞬間・・・。
『オラァァァァっ!このクソガキィィィィっ!
少しは抵抗してみろよぉぉぉぉっ!』
そう声を荒げると同時にニビルは、
吊るし上げたままその拳を悠斗の腹にめり込ませた。
『うがっ!』と苦悶の売る気を挙げた悠斗だったが、
ニビルは『まだまだぁぁぁっ!』とそのバカでかい声を張り上げ、
悠斗をタコ殴りし始めた・・・。
『ユウトォォォっ!』と、
スタークと虎恫の悲痛な叫びが響き渡るも、
悠斗を殴り続けるニビルには届く事はなく、
顔の形が崩れ始めた悠斗に不敵な笑みを浮かべていた・・・。
「何だよ~?もう終わりなのかよ~?
もっと・・・もっと俺を楽しませろよぉぉぉっ!」
そうバカみたいな大声を張り上げながら拳を振りかぶり、
『終わりだ・・・このガキィっ!』と、
声を挙げ拳を振り抜こうとした瞬間・・・。
『うぉらぁぁぁぁっ!』
突然、気合の入った声が響き渡ると、
悠斗の首を掴んでいたニビルは吹き飛び、
先程の大きな岩場に激突し、粉々に岩場を吹き飛ばした。
「よっと・・・おい、ユウト?
お前・・・生きてるか?」
顔が腫れ上がり辛うじて目を開けた悠斗は、
その身体を抱きかかえている男に驚きの声を挙げた。
「・・・お、お前・・・な、なんで・・・ここ・・・に?」
悠斗のそんな声に男は『ニヤり』と口角を上げた。
「・・・ちょっと嫌~な予感がしたんでな?」
「・・・まじか」
意味有り気にそう言った男に悠斗は少し胡散臭そうな目を向けると、
突然その男の背後から、聞き慣れた声が聞えて来た・・・。
「ほっほっほっ♪
嘘は宜しくありませんな~・・・ヴァン?」
その声に悠斗の視線はヴァン背後へと向けられると、
その後ろにはライトニングが微笑んでいたのだった。
「ラ・・・ライト・・・ニングさん?」
呟き程度にしか聞こえない悠斗の声に、
ライトニングは微笑むと口を開いた。
「・・・おやおやユウト様。
少し会わない間に見違えましたな~?
これはアレ・・・ですかな?
男子3日会わざれば刮目して見よ・・・と、言うやつでしょうか?
ほっほっほっ♪」
ライトニングの陽気な言葉に、
ボロボロであるはずの悠斗は苦痛に顔を歪めながらも口角を上げた。
すると『なぁ・・・』と再びヴァンがその口を開いた。
「ユウト・・・お前・・・負けそうなのか?」
「・・・はぁ?」
真剣な眼差しでそう言ったヴァンに、
悠斗はこめかみをヒクつかせた。
「・・・お前ポロポロだな~?
はっはっはっ!
つていうか・・・ユウト、お前・・・死ぬのか?
プププププっ・・・」
そう言いながらヴァンは自分の口元を押さえながら、
満面の笑みを浮かべ、心から楽しそうにしている事が見て取れた。
すると悠斗はボロボロの顔をヒクつかせると、
苛立ちながらこう言った・・・。
「い、いや・・?
ぜ、全然・・・やれるし?」
「・・・んな訳ねーだろ?」
「いやいや・・・まじでこれからなんで・・・」
「どこがこれからなんだよ?
圧倒的にズタボロだろうが?」
「お前・・・目・・・見えてんの?
どこをどう見たら、この俺がズタボロなんだよ?
一度眼科・・・行った方がいいんじゃね?」
顔をヒクつかせながらヴァンに言い返すと、
今度はヴァンがその顔をヒクつかせた・・・。
「・・・だって、お前・・・死にそうだろ?
お前が死にそうって・・・ププププっ・・・
この俺様が助けてやろうか?
あんなヤツ・・・俺が指1本で倒してやんぞ?」
ヴァンは調子に乗り始め悠斗の顔の前で人差し指を突き出すと、
悠斗は無言のままヴァンの人差し指に視線を向けた・・・。
そして『へぇ~、指1本でか~?』とそう掠れた声を漏らすと、
一気にヴァンの人差し指を掴み、
容赦なく『ボキっ!』と・・・へし折った・・・。
『痛てぇぇぇぇぇっ!ぐおぉぉぉぉぉっ!』と、
ヴァンの絶叫が響く中、
咄嗟に悠斗の身体から手を離され、
この冥界の硬い地面に後頭部を打ち付け悶絶したのだった。
そしてそれを後ろから見ていたライトニングは『おやおや・・・』と、
2人が悶絶し転げ回る姿に溜息を吐いたのだった。
そして少し落ち着きを取り戻し、
悠斗がフラフラとしながらも立ち上がった時だった・・・。
「・・・ボロボロのユウトを見てられないから、
俺がとっととやっちまうがいいよな?」
何故かヴァンが笑みを浮かべながらそう言うと、
悠斗は『あぁ~ん?』とガンを飛ばした。
「何言ってんのお前?
俺のどこが負けそうなんだよ?
今から、俺のターンでしょうが?」
「フっ・・・俺のターンって・・・お前、そんな余裕あんのか?」
「あるしっ!全然あるしっ!
今から俺があいつらをかる~くぶっ飛ばす予定なんだよっ!」
「はぁぁぁっ!?
お前のどこにそんな余裕があんだよっ!?」
「余裕ならいつでもあるしっ!
って言うか・・・ここから大逆転し圧勝するしっ!」
再び言い争いが続く中、
そんな不毛なやり取りを見ていたスタークが呟いた。
「・・・やっぱりあいつら・・・バカメル」
その声に虎恫が何度か頷くと、黒犬は呆れた表情を浮かべていた。
暫く2人の不毛なやり取りが続いていた時だった・・・。
突然『ドカーン』と岩場の瓦礫が吹き飛び、
苛立ちの表情を浮かべていたニビルが立って居た・・・。
「き、貴様らぁぁぁぁっ!
いつまでしゃべってんだっ!このクソがぁぁぁっ!」
怒声を挙げながら身体からエビルと同じように、
真っ赤な・・・いや・・・。
エビルよりもドス黒いヴァンパイアの神力を放出した。
それを見ていた悠斗とヴァンは顏を見合わせると笑みを浮かべ、
互いの拳を合わせるとこう言った・・・。
「ヴァン・・・。
後で決着つけようぜ・・・」
「あぁ・・・ユウト。
お前が瀕死だろうがなんだろうが・・・
俺に着いて来いよっ!」
「言ってくれるね~?
見掛け倒しのヴァン様~♪」
「みっ、見掛けっ!?
おまっ・・・おまおまおまっ!?」
「いいから、とっとと行くぞっ!ヴァンっ!」
「おうよっ!」
鋭い眼差しを向けた2人が捉えた先には、
ドス黒いヴァンパイアの神力を放つニビルが笑みを浮かべていたのだった。
つてな事で・・・。
今回はこのようなお話となりました。
今回はコメディー的なセリフも有りますので、
楽しんで頂けたかな?
そんな事を思っておりますw
さて・・・次回ですが・・・。
ちょっと仕事の都合で時間が取れず、
少し空いてしまうかと・・・。
最大で2週間くらいになるかもしれませんが、
ちょくちょく書いて行くので、そこまでお待たせしなくて済むかも?
また、活動報告にて告知させていただきますので、
その時はまた読んでやって下さい。
ってなことで、緋色火花でした。




