274話 与えた者
お疲れ様です。
腱鞘炎で苦しむ緋色で御座います。
って言うか・・・。
高校野球もいよいよ終わりを迎えますね~?
・・・いとかなし。
さて、今回のお話ですが・・・。
いよいよ悠斗の登場ですっ!
楽しく読んでいただけたら有難いです^^
それでは、274話をお楽しみ下さい。
爆炎の竜巻が消失しその場に立って居たのは、
南雲の知らない赤い短髪で筋骨隆々の男が、
その場に立って居たのだった・・・。
「い、一体・・・あの男は何者なのじゃ?」
南雲がそう声を漏らし、黒犬以外が唖然としていた・・・。
黒犬は眼前に立つ短髪の赤髪の男を見て笑みを浮かべた。
(こ、こいつ・・・本当にやりやがった・・・。
他の神々が言っていた事を鵜呑みにしていた訳じゃねぇ・・・
いや、むしろ・・・
あのガキにこんな力があるだなんて、
こうして実際に自分の目で見ていても、
とてもじゃないが・・・信じられねぇよ・・・)
悠斗の力に驚愕こそしたものの、
黒犬は期待に応えたこの人間に関心を持ったのだった・・・。
(こ、こいつなら・・・きっと・・・)
そう確信した黒犬は棒立ちとなっているその男に声を掛けた。
「よぉ・・・。
お前、ユウト・・・だよな?」
そう声をかけた黒犬に反応したその男は、
背中を向けたまま『あぁ・・・』とそっけなく言った。
「フッフッフっ・・・。
人間にしておくには、正直もったいねぇーぜ・・・」
そう言いながらその男に手をかざすと『鑑定』を行ったが、
『バリンっ!』と鑑定が砕け散った・・・。
「なっ!?
ど、どう言う事だっ?!
何故・・・俺の鑑定が弾け飛んだんだっ!?」
黒犬は己の鑑定を弾かれた事に驚いていたが、
その男は静かに立って居たがポツリと呟いた・・・。
『確か、あの時・・・』
そう呟いた男はゆっくりと目を閉じると、
先程起こった事を思い出していた・・・。
(そう・・・確か、あの時・・・。
俺は黒犬の言葉に乗って魂の刻まれた、
自分の奥底にある力を探していた・・・。
そして何かの力を感じた俺は、その力に触れようとした時、
じぃーちゃんの苦しむ声と、血の匂いに怒りが爆発した。
そしてその時・・・。
真っ暗な世界で・・・見知らぬヤツの声を聞いた)
『お前の為にわざわざくれてやった力だ。
今のうちに少しでも慣れておけ・・・。』
{こ、これは念話・・・か?
だ、誰だ・・・?
俺の頭の中に話しかけて来るヤツはっ?!
・・・姿を見せろっ!}
『はっはっはっ!いいね~♪
そういうヤツは嫌いじゃないぞ~♪
はっはっはっ!
男の子はこうでないとな~♪
そうは思わないか?神野悠斗君♪』
{なっ!?ど、どうして俺の名をっ?!
お前は一体何者なんだっ!
いい加減、姿を見せろよっ!}
『はっはっはっ!
そんなにキョロキョロしたって意味ないぞ~?
俺はそこには居ないからな~♪』
{・・・ちっ!}
『って言うかさ~・・・悠斗?
一応俺はこれでも悠斗の味方なんだぜ?
だからさ~♪
いつまでも腹を立ててないでさ~♪
もうちょい俺と話そうぜ♪』
妙に馴れ馴れしく話しかけて来るその声に、
悠斗は『はぁ~』と溜息を吐くと、
『わかったよ』と諦めて話を聞く事にした。
{・・・それで、あんたは・・・誰なんだ?}
『はっはっはっ♪
残念ながら今はまだ・・・教えられないな~♪
でもその内・・・いや・・・。
お前が成長し続けて行けば・・・もしかすると俺に会えるかもな?
だからその時まで・・・おあずけって事で♪』
{・・・面倒臭いヤツだな~}
額に手を当て再び溜息を吐いた時、
その声の主は話を切り出して来た・・・。
『なぁ、神野悠斗?
面倒臭いとかって言ってんじゃないぞ?
折角お前にその力を与えてやったってのにな~♪】
{・・・与えて?
はぁ?一体どういう事だよ?}
『まぁ~ちょっと上から目線で悪いんだけどな?
人としての力じゃ~、到底立ち向かえる相手じゃないんだ。
だからって言うか・・・。
そいつらと張り合えるだけの力を、
この俺が・・・ギフトとして与えたんだよ♪』
そう告げられた真実に悠斗は肩を竦め『やれやれ』と呆れると、
その声の主は『与えた力』について説明した。
『まぁ~、全部を話すつもりはないんがな?
だけどまぁ~、今まで藻掻き苦しみ、抗ったおかげで、
この俺とこうして話せるまでに至った・・・。
だからまぁ~、そのご褒美として・・・説明してやるよ♪』
{・・・言葉の端々にイラっとする事を混ぜて来るけど、
まぁ~、その辺のところは俺も知りたかったところだしな・・・}
『あははは♪いいね~♪
ってな事でだけど・・・』
{・・・ん?}
『お前に与えた力ってのは、
もう薄々気付いているかとは思うが、
『亜神の力』だ』
{・・・亜神}
『・・・そう『亜神の力』だ。
お前は以前にもその亜神力を使っただろ?』
声の主にそう言われた悠斗は視線を上へと向けながら思い返すと、
『もしかして・・・』と口を開いた。
{・・・水神の事か?}
『正~解~♪』
(どうしてかはわからないけど、
こいつ・・・妙にノリが軽いんだよな~?
常に上から目線のクセにな・・・)
『でさ・・・悠斗?』
{・・・ん?}
『一応念の為・・・って事で、
亜神の力を使う上での注意事項を話しておくよ♪』
{注意事項なんてモノがあるのか?}
『あるに決まってんだろ?
この能天気めっ!♪』
(こ、こいつ・・・)
声の主に多少ではあるが苛々しつつも悠斗は話に耳を傾けた。
『まず・・・基本的な事を言うと。
亜神の力を永遠に使える訳じゃなくて、
時間制限があるからな♪』
{・・・時間制限?}
『あぁ、時間制限があるんだよ。
何故かと言うと・・・。
亜神の力を行使するには、生身の身体・・・
いや、人間の身体がその凄まじい力に耐えられないんだよ♪』
{・・・なるほどね}
『でさ・・・?
お前は此処まで来るのに様々な経験を積み、
それらを活かして此処まで来た・・・。
だから今のお前は既に人間の領域を越え進化し、
ステータスにもあったと思うが『鬼人』となった』
悠斗はその話を聞きながら、
『あぁ~そう言えば・・・』と思い出していると、
声の主は呆れながらも続けた。
『ま、まぁ~そういうところが悠斗らしいって言うか?
はっはっはっ!本当に面白いヤツだな~♪』
{・・・ほっといてくれよ}
『はいはい・・・。
話を続けるぞ~?』
{・・・あ、あぁ、頼む}
『で・・・さ。
いくら悠斗が鬼人になったからと言って、
亜神の力は過ぎた力だ。
だから時間制限があるんだよ』
時間制限があると聞いた悠斗は『なるほど』と興味深そうに聞き、
また声の主は、そんな悠斗に好感を持っていた。
{なぁ・・・。
その時間制限って・・・どれくらいなんだ?}
『そうだな~・・・。
だいたい最大で30分・・・と言ったところかな?』
{・・・30分か}
『とは言っても・・・。
力をフルで使った場合、
当然その力の分に応じて時間は短くならからな?
だからちゃんと考えて行使しないと、
中途半端にリミットが来るからな?』
{・・・そうだな。
わかった・・・}
『そして注意事項の2つ目・・・。
悠斗に与えた力は5つ」
{・・・へぇ~5つもあるのか?}
『それら5つの力を代わる代わる行使する事は可能だけど、
時間制限である30分間の間だけだ。
別に違う力と代わったからって、時間がリセットされる事ない』
{・・・にゃるほど}
声の主の説明を聞いた悠斗は色々と考え始めていたようだったが、
声の主は説明をこう付け足した・・・。
『だけどな・・・悠斗?』
{・・・ん?何だ?}
『決して亜神の力を過信するなよ?
度が過ぎた力を行使すれば、
その負担は必ずお前の身体に返って来るからな?』
{・・・そうだな。頭には入れておくよ}
説明を終えた声の主は『じゃ~そろそろ』と言った時、
突然愚痴をこぼすように独り言が声に出た。
『って言うか・・・。
悠斗とはやっっっと話せるようになったってのに、
あいつはまだ俺と話せないとか・・・有り得ねぇ~・・・。
悠斗には『亜神の力』を・・・。
そしてあいつには『異形の力』を与えてやったってのに、
あいつときたら、いつまでビビってんだかっ!
はぁ~・・・ったく・・・やってられねぇ~なぁ~・・・』
まるで小言のような公地を聞いた悠斗が呆れ、
『まだ声が聞こえてるぞ~』と念話を送ると、
声の主は『ヤバっ!』と慌てた様子を見せていた・・・。
そして最後に悠斗にこう言った・・・。
『いつもお前達の事は見ているからな?
またいつの日かその機会があったら、話でもしようぜ?』
{・・・機会があったら・・・か。
まぁ~別にいいけど・・・ところでさ?}
『・・・ん?何?』
{お前の事・・・何て呼べばいいんだ?
名を知らなきゃ話し辛いだろ?}
『あぁ~・・・そうだな~?
じゃ~・・・。
エグゼクティブ・プロデューサーとかって呼んでくれてもいいけど?』
{・・・な、長いし面倒臭いから却下だっ!}
『・・・ちぇっ。
あぁ~・・・それなら・・・。
『クラウド・エイト』ってのはどう?』
{・・・却下だっ!
って言うか・・・もうエイトでいいんじゃね?}
『えぇぇぇぇっ?!
エイト~?
何だが・・・ダサく・・・ね?』
{・・・あんたにピッタリな気がするなっ!}
妙な自信を持ってそう言い切った悠斗に、
声の主は渋々ながら承諾し、
『じゃ~そう言う事で~♪』と言いながらエイトは消えたのだった。
『さてっと・・・』と悠斗が周囲を見渡そうとした時、
再びエイトから声が届いた。
『因みにだけど・・・。
俺との会話をしていた時間は5秒くらいだからな?
安心して戦えよ~♪
神野悠斗~♪
ってな事で・・・ばいちゃっ♪』
(・・・ば、ばいちゃ?
エイトってもしかして・・・日本人か?)
そんな疑念が悠斗の中に生まれたが、
突然自分が炎の渦の中に居る事に驚くも、
その炎の壁を通して見えるエビルに、苛立ちを募らせるのだった。
(と、突然何が起こったっ?!
そ、それにあの爆炎の渦の中に感じるこの気配・・・
た、只者じゃない・・・)
エビルは爆炎の渦の中居るただならぬ気配に血の気が引いていた。
(南雲は兎も角として・・・
このままでは黒犬を頬無る事など・・・)
『ゴォォォっ!』と渦巻くその爆炎に圧倒されながらも、
エビルが思案を巡らせていると、
『ん?』と傍に倒れ気絶している1頭の堅狼が目に入った。
(この獣は気絶しているだけ・・・か?)
エビルは周囲に目を向けると数体の堅狼は皆同じようだった・・・。
一計を案じたエビルは覚悟を決めると、
己の手首を切りその紫色の鮮血が噴き出した。
「こんな下等な獣達を眷属にしなければならないとはっ!
はぁぁぁぁっ!
ブラッド・ミニオンズ・スコールっ!」
深淵のヴァンパイヤの力を注ぎ込んだ血液が勢いよく上空を舞うと、
気絶し倒れている数体の堅狼族達に降り注いだ・・・。
「さぁっ!立ち上がれっ!我がミニオンズ・・・」
エビルの声と共に気絶していた数体の堅狼が動き始め、
その口からは大量の唾液が滴り落ちていた・・・。
「クックックっ・・・。
只今を以って・・・この場にいる者達には、
等しく『死』をプレゼントしよう。
この獣達は今・・・。
俺の『駒』として進化し力も上がった。
まぁ~、それでも俺からすれは雑魚と何ら変わりないが、
でもっ!貴様達にとってはこの獣達の口から滴り落ちる唾液は、
殺傷力の非常に高い『猛毒』となっている。
かすり傷の1つでも負った時には・・・
クックックっ・・・ワァ~ハッハッハっ!」
そんなエビルのバカ笑いとも言うべきその声に、
爆炎の中に居た悠斗はブチギレていたのだった・・・。
(・・・狼達を雑魚って言ったな?
お前だけは・・・許さないからなっ!)
悠斗の怒りが頂点に達した瞬間、
魂の奥底から怒りの力が噴き上がると同時に腕を突き上げ吠えた。
『・・・来いよっ!炎神っ!』
その瞬間、渦巻く爆炎が『ドドーンっ!』と爆音を響かせると、
渦を巻いていた爆炎が消失し、
その中心には誰も見た事もない男が立って居た・・・。
短髪赤髪のツンツンヘアーの筋骨隆々で高身長・・・。
その分厚い胸板からは、
凄まじい力を生み出すであろう事が容易に見て取れた。
そしてその瞳・・・。
まるで炎のように燃え盛るその瞳は、
全てを焼き尽くさんとする意思があり、
その口からは短くはあるが、2本の牙が生えていたのだった。
(・・・あ、あれ?
この空気が肌に当たる感覚って・・・もしかして?)
悠斗が己の両手を力強く握りながら『フっ』と口角を上げた。
(ま、まじか・・・?
コレって・・・生身の肉体じゃ・・・ね?)
久しぶり肉の感覚を味わっていた時、
再びあの声の主から念話のようなモノが送られて来た。
『・・・悠斗が今感じている事は事実だ。
お前は今、生身の肉体を得たんだよ♪』
{・・・はっはっ、まじか?
でも・・・エイトっ!サンキューなっ!}
『・・・今は礼などいらないから、
ちゃっちゃと・・・。
YOU・・・あいつを殺っちゃいなよ♪』
{・・・YOUってエイト・・・お前な~?}
『はっはっはっ!まぁ~冗談はさておいてだな?
悠斗・・・』
{・・・ん?}
『これからの君の戦いに、幸あらんことを♪』
{・・・あぁ、これからも頑張ってみるよ}
そう悠斗に伝えた『エイト』はその気配を消したのだった・・・。
(・・・あのエビルってヤツはまじで許さない)
ギロリと鋭い眼光で睨み付けた『炎神の瞳』に、
エビルは悪寒が走ったのだった・・・。
その瞳に睨まれたエビルは思わず声を張り上げた。
「なっ、何なのだぁぁぁっ!貴様はぁぁぁっ!」
そう声を張り上げたエビルを睨みつけていた悠斗だったが、
この間にも生命力が次第に弱まる南雲の気を感じ、
『じぃーちゃん?』と呟くと同時にその場から姿を消した。
『・・・や、やつは何処だっ?!』と、
エビルが口にする頃には既に、
悠斗は倒れる南雲の前に立って片膝を着いていた。
「・・・じぃーちゃん?」
「・・・?」
そう悠斗の口が動くのが見えた南雲は、
『や、やはり・・・悠斗なのか?』と声を漏らした時、
『あぁ、そうだよ、じぃーちゃん』と微笑んだ・・・。
「・・・み、見違えたと言うよりも、
も、もはや・・・べ、別人・・・じゃの?
お前の気を感じ取れた事で、辛うじてわかるが・・・
それにしても・・・お、お前・・・」
苦しそうに顔を上げ、そう言った南雲に、
悠斗は『もうしゃべるなよ?』と呆れたような表情を浮かべた。
「ひょひょっ・・・ま、まさかまさかじゃ・・・の?」
「じぃーちゃん、今すぐ回復するから、
ちょい黙っててくんない?」
そう言って笑って見せた悠斗は手をかざすと、
『炎の治癒』と優しく言うと、
南雲の肩に置かれた手が赤とオレンジ色の光を放ち、
それと同時に一瞬にして南雲は炎に包まれた。
『っ!?』
それを見ていたスタークと虎恫が『ナグモーっ!?』と声を挙げるも、
南雲の身体を包んだ炎が消え失せると、
致命傷とも言えるその怪我が、完全に治癒したのだった・・・。
『そ、そんな事がっ!?』と・・・。
悠斗の後方でエビルが声を挙げていたが、
気にする素振りも見せず、悠斗は南雲に声を掛けた。
「もう、大丈夫だよ?じぃーちゃん」
「い、いやはや・・・こりゃ~驚いたわい。
儂はもう駄目じゃと思うておったと言うのにの?
ひょっひょっひょっ♪
長生きはするもんじゃの~?
なぁ~・・・悠斗よ♪」
南雲は己の完治具合を確かめながらそう楽しそうに笑うと、
悠斗は南雲を立たせ黒犬達の居る場所へ行くよう促した。
だが南雲は怪我が完治すると、
『儂も一緒に・・・』と申し出たが、
悠斗は首を横に振り、その申し出を断った。
断られるとは思っていなかった南雲は、
『何故じゃ?』と尋ねると、悠斗は鋭い眼光と共にこう言った。
「あんな雑魚・・・俺1人で充分だって・・・」
「なっ、なんじゃとっ?
い、いや、でも・・・あやつは・・・」
1人で充分と言った悠斗に南雲は険しい表情を浮かべ、
エビルが如何に強者だと口を開こうとした時、
悠斗は南雲をじっと見て、
『まぁ、見ててくれよ・・・じーちゃん』とそう笑って見せた。
だが、この時の南雲は、
笑って見せた悠斗の瞳の奥が笑っていない事に気付くと、
一言『お前の好きなようにやって見せい』と笑って言ったのだった。
ってな事で・・・。
今回のお話はいかがだったでしょうか?
『炎神』の初登場ですが、
今回はまだ活躍していませんw
次回を楽しみにしていただければ・・・とw
ってなことで、緋色火花でした。




