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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第三章・冥界編
375/406

267話 陰・呼吸

お疲れ様です。


緋色火花です。


今現在、忙しさも半分ほど・・・。

でもまぁ~、すぐにまた伊佐が敷くなるんだろうけど・・・。


ってな感じなので、

相手時間に頑張って書いておりますっ!


実際には・・・。

趣味に走るほどの時間は・・・ないっ!

なので・・・orz


ってか、キャンプに行きたい・・・。


それでは、267話をお楽しみ下さい。

ルチアーノとボレアスが仲間達の所へと戻ると、

ボレアスが皆に『聞けーっ!』と声を張り上げた。


その声に静まり返った皆を前に1歩踏み出したルチアーノが皆を見渡し、

鋭い眼光を向けながら口を開いた。


「・・・皆聞けっ!

 偵察部隊により標的の居場所は判明したっ!

 そして狙いは『カミノ・ユウト』と言う男だがっ!

 この男の傍にはじじぃが1人居り、邪魔してくることが予想されるっ!

 だからまずっ!そのじじぃを叩くっ!

 その後・・・人間を美味しくいただこうじゃないか?♪

 お前達っ!『堅狼族』の誇りに掛けてっ!

 その命・・・賭けなっ!」


そう気合の入った声を挙げたルチアーノに、

皆が『おおーっ!』と声を張り上げ、狼の姿に変異すると、

ルチアーノの雄叫びと共に、皆も空へと雄叫びを挙げた。


勢いよく山を下る『堅狼族』を見つめる執事は不気味な笑みを浮かべ、

舌舐めずりをしながら呟いた。


『味見・・・くらいは・・・♪』


そう呟くと一瞬にして山頂から姿を消したのだった・・・。



『堅狼族』が駆け出す中、

南雲と悠斗の修練は続いていた・・・。


南雲が投げる石礫を悠斗が避けると言うモノだが、

そう単純な修練ではない・・・。


直線的に進みながらも南雲が投げる石礫を円を描くように避ける。


『ジャリっ!ザァっ!シュっ!』


最初は石礫の大きさも小石程度で投げる速度も遅かった。

だが修練の内容が色濃く増して行くと、

次第の石礫の大きさも、その投げる速度も変化していった。


『ジャリっ!ザァっ!シュっ!ドカっ!』


「ぐふっ!」


一歩前へとその足を踏み出した瞬間、

速度を増した大きな石礫が悠斗の腹に直撃し、

蹲る悠斗に対し無表情で南雲は投げ込んだ・・・。


「ぐはっ!うっ!」


石礫の痛さに片膝を着いた瞬間、

南雲は投擲を止め悠斗に対し厳しい表情を見せた。


「悠斗・・・身体の使い方が全然なっとらんっ!

 踏み出し小円で攻撃を躱すだけじゃろっ!

 何度同じ事を繰り返すんじゃっ!」


そう叱咤する南雲に可愛い孫への思いは微塵もなかった。

ただそこには『師匠と弟子』が居り、

修練に明け暮れる光景があった・・・。


「くっ・・・。

 い、痛て・・・ぇ・・・く、くそっ・・・

 まじで・・・キツい・・・」


顔を顰め、まるで愚痴を吐くように声を漏らす悠斗に、

南雲の表情は微塵も動かない・・・。


「・・・やめても良いのじゃよ?」


「・・・っ!?」


静かにそう言った南雲に悠斗は苦悶の表情のまま顏を上げ、

南雲の揺るぎない視線に『チっ!』と舌打ちした。


「・・・や、やめない・・・よ。

 な、何の為に・・・お、俺はこんな所に・・・。

 俺は・・・あいつに勝ちたいからね・・・

 だ、だから・・・じぃーちゃん・・・つ、続けようぜ・・・」


「・・・ふっ」


苦悶に顏を歪めながらもそう言った悠斗に、

南雲の口角が少し上がった・・・。


「うむ・・・続けると言うのならそうするが、

 しかしの・・・悠斗や」


「・・・?」


「お主は気付いておるかの?」


南雲の言葉に思い当たる節がない悠斗は首を傾げて見せた。


その様子に南雲は顎を『クイっ』と指し示しながら口を開いた。


「・・・ほら、そこを見てみー」


「・・・ど、どこ?」


「地面じゃよ・・・」


南雲の声に『地面?』と呟きながら視線を向けたが、

何を指し示しているのがわからず再び首を傾げた。


「・・・わからぬとはの?

 まぁ、良い・・・悠斗や・・・

 己の足跡を見てみー・・・」


「・・・足・・・跡?」


悠斗は南雲が示した自分の足跡を見て見ると、

『あっ』と声を漏らした。


「・・・わかるかの?

 お前は無意識で儂が投げる石礫の距離を空け、

 躱しやすいようにしておったのじゃ・・・」


「ま、まじか・・・全然気づかなかった・・・」


顏を顰め悔しがる悠斗に南雲は再び口角を上げ、

『まだまだじゃな?』と笑みを浮かべた・・・。



その後・・・。


暫くの間は『陰流』の基礎となる、

踏み込みと小円の体捌きをみっちりと修練し、

悠斗も疲労困憊になった時だった・・・。


「・・・ん?なんじゃ?」


突然険しい表情を見せた南雲に悠斗は『どうしたの?』と尋ねた。


「・・・何者かがこちらに向かって来ておるようじゃ」


「こっちに?」


悠斗の声を聞き終わらないうちに南雲は目を閉じると、

サーチを使いこちらへと向かって来るモノを調べた・・・。


「こ、これは・・・1人・・・じゃない?

 なっ!?」


双眼を見開き、その眼光が鋭さを増すと悠斗に告げた。


「悠斗っ!こちらに20体ほどの・・・。

 いや、この速さは四足歩行の・・・。

 と、言う事は・・・群れでこっちに来よるの・・・」


「・・・に、20頭の群れって事っ!?

 じ、じぃーちゃん・・・敵なのかっ!?」


驚く悠斗に南雲は『恐らくの・・・』と返答すると、

これからの展開を予想しながらふと・・・悠斗を見た。


(い、いかんっ!ゆ、悠斗のヤツ・・・

 今は『魂』だけの存在じゃ・・・

 ま、まずい・・・の・・・)


そう考え焦った南雲は悠斗に声を挙げた。


「悠斗っ!お前は戦ってはならんっ!

 良いな?」


「なっ・・・何でだよっ!?

 俺も戦うに決まってんだろっ!」


南雲の言葉に苛ついた悠斗がそう声を挙げると、

南雲は『バカもんっ!』と声を荒げた。


「忘れたのか?!

 お前は今、擬体ではないのだぞっ!」


「・・・あっ。

 い、いや・・・でも・・・」


「向こうの攻撃はお前には当たるが、

 お前の攻撃は全て当たらんのだっ!

 忘れたのかっ!」


「うぐっ」


南雲の激に顏を顰めた悠斗は『じゃ~どうするんだよっ!』と聞き返すと、

『うむ・・・』と考え込んだ南雲はこう言った・・・。


「お前は今すぐ逃げるか・・・

 もしくは・・・隠れておれっ!

 邪魔になるっ!」


「じゃ・・・邪魔っ!?この俺がっ!?

 そ、そんな・・・そんな馬鹿なの事があるかよっ!

 俺に逃げろだってっ?!

 ふ、ふざけるなっ!」


そう南雲に怒鳴り返しはするが、

南雲の言った事を理解している悠斗は困惑した表情を見せていた。


(た、確かにじぃーちゃんの言う通りだけど・・・

 で、でも・・・20体以上なんだろ?!

 このまま1人にできるかってんだよっ!)


そう考えるも『魂だけの存在』である悠斗には何も出来ない・・・。

それを理解した上で他に手はないかと苦悩したのだった。



『ドッドッドッドッドっ!』


まるで地鳴りの如く大地を震わせ駆けて来る『堅狼族達』


先頭を駆ける長であるルチアーノが仲間達に吠えた。


「いいかっ!お前達っ!

 このまま一気に雪崩れ込むっ!

 隊列を守りっ!陣形を崩すなっ!」


『ワォォォォーンっ!』


ルチアーノの声に仲間達が雄叫びを挙げると、

20頭の狼達が3つに別れ隊列を取りながら駆け抜けて行く。



「と、遠吠えっ!?」


獣の遠吠えに険しい表情を見せた悠斗が声を挙げると、

南雲は『この遠吠えは・・・』とその表情を滲ませ声を挙げた。


「悠斗っ!この遠吠えは『堅狼族』じゃっ!」


「け、堅狼族っ!?

 な、何だよ、それっ!?」


そう声を挙げた悠斗だったが、南雲にその声は届かず、

ただ・・・その表情がより一層険しくなったのだった・・・。


(じ、じぃーちゃんのあの表情・・・。

 余程の相手って事か?

 しかも敵は20頭ほど・・・ど、どうする・・・

 どうするんだよ、じぃーちゃん・・・)


己が今、何も出来ない状態に苦悩していた時、

南雲が腕を翳しこの場から離れるよう促した。


「さ、下がれっ!下がるのだっ!悠斗よっ!」


その切羽詰まった声に『チっ!』と悔し気な声を漏らすと、

悠斗は南雲の指示に従い距離を取った・・・。


そんな悠斗の気配を背中で感じながら、

南雲は悠斗へと念話を送った。


{よいか、悠斗よ・・・。

 『堅狼族』とはかなり厄介での?

 その体毛や皮膚は異常なほどまでに硬く、

 通常の剣撃などダメージは通らんのじゃ・・・

 しかも・・・じゃ。

 魔法耐性90%ときておる・・・}


{・・・ま、まじか?

 魔法耐性90%って・・・}


{うむ、それにの・・・}


そう口走った南雲は一瞬その言葉を淀ませるも、

直ぐに話の続きをした。


{・・・あやつらの爪と牙はの、

 今のお前にとっては致命傷となりかねんのじゃ・・・}


{・・・致命傷?今の俺にとって?

 何だよそれ・・・どう言う意味だよ?}


{うむ・・・。

 あやつらの牙と爪は、魂そのものをも殺傷する能力があるのじゃ}


{・・・・・}


{儂がお前に戦うなと言った理由は・・・ソレなのじゃ}


そう説明された悠斗は苦悶の表情を滲ませ、

成す術が己にない事を完全に理解し、再び南雲からの距離を取った。


(くそっ!ぎ、擬体があれば・・・)


そう自分の胸の中で吐き捨てるも、

どうしようもないこの現状に悠斗は苛立ち己を呪った。


そんな時だった・・・。


苦悩する悠斗を無視するかのように、

南雲の『来たぞっ!』と言う声が響き渡った。


南雲は咄嗟にマジックボックスから刀を取り出し、

流れる様な動作で刀を腰に据えた。


そして両目を閉じ『ふぅ~』っと呼吸を整えると、

刀を引き抜き正眼に構えた。


(・・・どこまでヤレるかの?)


迫り来る『堅狼族』を前にそんな思いが脳裏に過ると、

『堅狼族』の遠吠えが響き、それを合図に隊列が分散した。


(・・・な、何をっ!?)


突然隊列の分散を目撃した南雲は半歩後退し、

正眼の構えから刀を肩に担いだ・・・。


南雲から見て三方向に別れた『堅狼族』を感じ、

周辺視野で細かな感覚を研ぎ澄ませて行く・・・。


(さて・・・どこから仕掛けて来るんじゃ?)


南雲は右手で刀を担ぎ、左手に魔力を集中し始めた。


(闇雲に魔法を放っても、

 あの統率されたモノ達じゃ・・・

 簡単に避けられてしまうの・・・)


そう考えながらも準備は整えたが、

統率が取れ予想もつかない敵の動きに、

南雲の顔に汗が滲み始めた・・・。


南雲を囲みながら三隊の『堅狼族達』が南雲の集中力を削ぐかのように、

グルグルと駆け回って行く・・・。


(くっ!こ、こうも走り回られたのではっ!)


南雲に圧し掛かるプレッシャーが増し、

汗が頬を伝った時だった・・・。


グルグルと駆け回る『堅狼族』の一頭が、

突然『ワオンっ!』と声を挙げた。


「く、来るかっ!?」


無意識でそう声がこぼれた瞬間、

南雲の真後ろを駆けている狼のうち2頭が隊列を離れ、

緊張の中に居る南雲に襲い掛かった。


『グァオンっ!』


2頭同時に飛びかかっては来たが、咄嗟に身体を屈め回転させながら、

襲いかかる狼に対しすくい上げるように切り上げた。


『ヒュオンっ!ガキンっ!』


南雲の反応速度と技術の高さにルチアーノは驚き、

己の見積もりの甘さを修正せざるを得なかった・・・。


『タンっ!タンタンっ!』


南雲に躱され着地した狼達はリズム良く弾むと、

丁度その着地地点の先に駆けて来た隊列へと戻り、

その身体に刀の傷など1つもなかったのだった・・・。


そしてそれを見ていた南雲は改めて『堅狼族』の堅さに驚き、

『うむ・・・』と言葉を漏らしながら舌を巻いた。


(普通なら完全に斬っておるはずなんじゃがの・・・

 まさかコレほど硬く俊敏とは・・・の・・・

 ・・・厄介な事・・・この上ないの)


そう考えながらも周辺視野をブレさせもせず、

刀を担ぎ次の行動を待つ南雲の手に汗が滲んだ・・・。


次第に疲労していく南雲を見ていたルチアーノはボレアスに指示を飛ばし、

仲間達に対し複数の吠え方をした。


その異様な圧迫感を感じた南雲は更に集中力を上げ、

これから始まるであろう戦いに備え、乱れる呼吸を整えていった。


(・・・何かが来る。

 ここは久々に儂も『気道』を使うかの・・・

 と、なればじゃ・・・。

 持続と耐久特化の『(かげ)・呼吸』・・・。)


南雲は周辺視で気を配りながら呼吸を変化させた・・・。


『スゥゥゥゥゥ・・・コォォォォォォォォォォォォォォォォ』


『っ!?』


突然南雲から発せられた奇妙な音に、

敏感に反応した『堅狼族達』は後方に飛び退きその足を止めた。


(ひょっひょっひょっ♪

 凄まじいほどの危険察知能力じゃの~・・・

 見事としかいいようがないの~♪)


心の中でそう考えながらも、

実際はそんな余裕などどこにもなかった・・・。



そして一連の動きを離れた場所で見ていた悠斗は、

鋭い眼光へと変わっていた・・・。


(あ、あの緩やかで独特・・・。

 そしてあの籠るような重厚な呼吸音・・・

 あ、あれってもしかして・・・『陰・呼吸』なんじゃ?

 ま、まじか・・・じぃーちゃんすげー・・・

 俺の家族も誰一人・・・扱えないのにな・・・

 実際俺も未だ未完成の呼吸法・・・。

 出来なくはないけど、持続しないんだよな~・・・

 超難関の『陰・呼吸』・・・。

 俺もいずれは・・・)


南雲の『技』を見る事になった悠斗は、

改めてその凄さに舌を巻き目を凝らし見つめていた。



呼吸音を変えた南雲に危機察知した『堅狼族達』が距離を取る中、

南雲は更に集中し『陰・呼吸』を発動させた。


『陰・呼吸・・・四忍気息(しにんきそく)・・・』


そう呟きニヤり笑みを浮かべた南雲に、

ルチアーノとボレアスに悪寒が走ったのだった・・・。




ってな事で・・・。


今回のお話はいかがだったでしょうか?


南雲の戦いがこれから始まりますっ!

実際に武道では様々な呼吸法があり、

今回の南雲の呼吸法にピンと来る人がいるのでは?


もし、居るのであれば、嬉しく思いますw

もうマイナー過ぎてw


ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
武道の専門的な事はわかりませんが、悠斗の師匠である南雲の戦い、期待しています♪
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