262話 窮地
お疲れ様です。
病気や仕事・・・。
そして引っ越しとここ最近色々とめまぐるしい生活を贈っている、
緋色火花で御座います。
完全にリハビリが出来る状況にはならず、
四苦八苦しております。
まぁ、そんな状態ですので、
『Ⅹ』も完全に休止中ではありますが、
一応『生きていますよ~♪』と伝えておきますw
まあ、満足に小説を書く事もまだ出来ませんが、
暫くの間はとりあえず『2ヶ月1』くらいでアップ出来ればと思っております。
完全復活にまでは当分時間がかかりますが、
それを目指して頑張りたいと思いますw
メンタルをかなり削られておりましたが、
回復に向かっておりますのでご安心を・・・w
それでは、262話をお楽しみ下さい。
『万事休す』とそう呟いた声は、
勿論前線で戦うイリアやセルン・・・。
そして緊張し集中している黒紅に聞こえるはずもなかった・・・。
前線で未だ戦闘継続中のイリアとセルンは、
不気味で余裕な態度を見せる『ミノタウロス・ビースト』に困惑していた。
「・・・セルン、どうする?」
背後で戦闘態勢に入っているセルンにイリアがそう小声で尋ねると、
セルンは緊張感を途切れさせる事無く返答した。
「・・・魔物の考えている事なんてわかる訳ないでしょ?
そんな事を考えても仕方がないんだから、
集中して緊張を途切れさせないでっ!
しっかり前を向きなさいっ!」
小声ながらもイリアに叱りつけるように言ったセルンに、
イリアは内心『お母さんっ!?』と突っ込んでいた。
その時一瞬・・・。
2人から向かって一番左端に居た魔物が1歩・・・。
その巨体を動かした瞬間、
『うぉぉぉっ!』と黒紅が声を挙げながら『ドドドッ!』と、
『木製の鬼弾』をぶっ放した。
『チュインっ!チュインっ!チュインっ!』と・・・。
黒紅の放った『木製の鬼弾』が魔物に命中するも、
『ミノタウロス・ビースト』は直撃した場所をただ、
『ポリポリ』と掻くだけだった・・・。
『・・・えっと~』と、黒紅は言葉に迷い、
上手く自分の感情が言葉に出来ないで居ると、
魔物達は一斉に『ブフォっ!』と声を挙げた。
その声と同時に魔物達はイリアとセルンの周りを回りながら、
大きな斧を『ブンブンっ!』と振り回していると、
イリアとセルンは背中合わせになりながら、
魔物達が襲い掛かる瞬間に目を凝らしていた・・・。
{イリア、ヤツらが攻撃に転じた瞬間、
灯を使用するのよっ!}
{わ、私は使えるけど・・・セルン、貴女はっ!?}
{私の事はどうでもいいっ!
イリアはイリアに出来る事をっ!
私には私に出来る事をするだけだからっ!}
{・・・わかったわ。
セルン・・・貴女の事・・・信じているわ}
イリア達の周りを回り続ける者達から視線を逸らせる事無く、
その一挙手一投足に目を凝らしていた・・・。
そんな時だった・・・。
魔物達の動きを観察していると、
セルンが何かに気付き再び念話を送って来た・・・。
{イリアっ!魔物達の足の動きに集中してっ!}
{・・・足の動き?}
{ええ・・・。
どんな動きでも必ず攻撃に転じる時は、
下半身が重要になるわ。
だから下半身の動きさえ見ていれば活路はあるはず。
それに私達・・・この動きに慣れて来たしね♪}
{フフっ・・・確かにそうね♪}
互いに薄く口角を上げ念話を終了させた時だった・・・。
イリアの前を通り過ぎた魔物の足が・・・。
前に踏み込むのを目の端で捉えると声を挙げた。
「セルンっ!」
「おーけーっ!」
踏み込んで来た魔物が大きく斧を振りかぶると、
イリアとセルンは行動に移った・・・。
「その程度の踏み込みならっ!」
イリアはそう声を挙げながら瞬時に『灯』を使用し、
レイピアだけに『青い炎』を纏わせ、
踏み込んだ魔物よりも早く鋭く反応しながら、
レイピアを振り抜いたのだった。
『ザシュっ!』
『ブフォっ!?』
そしてセルンはイリアとは対照的にバックステップで下がりながら、
丁度後方を回って来た魔物に対し『そこっ!』と声を挙げ、
身体を捻りながら飛び蹴りを食らわせた。
『ドカっ!』
『ブフォっっ!?』
『ドシャっ!』
セルンに蹴りの不意打ちを喰らって魔物は大きく飛ばされると、
『ボス部屋』の壁へと衝突し瓦礫と一緒に、
そのまま滑り落ちるように腰を落した。
『ポタポタポタ』とイリアが斬りつけた魔物は腹から大量の血を流し、
ヨロヨロとしながら後退った・・・。
「・・・これなら何とかなる」
そうイリアが小さく安堵の息を漏らした瞬間だった。
突然『ポゥ』っと淡い緑色の光が魔物を包むと、
見る見るうちに深かったその傷が塞がったのだった。
「・・・な、何故っ!?」
そう声を挙げ驚いていると、後方でセルンの驚く声が聞こえた。
「一体どうしてっ!?」
そのセルンの声にイリアは『そっちもっ!?』と声を挙げると、
セルンは『えぇ・・・』と言いながら別の場所へと視線を向けた。
「見て・・・あんな所に隠れているヤツが居るわ。
そいつがこいつらを回復させたみたいね」
「えっ?」
イリアはセルンに促されとある方へと身体を向けると、
『ボス部屋の入口』に、見慣れぬ魔物が杖を持って立って居た。
「・・・あいつは?」
イリアは鋭い視線を向けながら口を開くと、
セルンはその魔物の正体を説明した。
「こいつ・・・以前に1度出会った事あるわ。
とは言っても、身体の色が違うみたいだけどね・・」
「身体の色?」
「えぇ・・・。
私がこいつと出会ったのは、南国の洞窟内で見たのよ。
私の記憶では確か名は『リザード・メイジ』
狡猾な蛇型の魔物で低級ではあるけど、
回復魔法と攻撃魔法を使っくる鬱陶しい魔物よ」
「低級とは言え回復魔法と攻撃魔法をね~・・・」
『リザード・メイジ』はイリア達の会話がわかるのか、
『ニヤり』と笑みを浮かべながら、
『シャシャシャシャ!』と笑っているようだった。
魔物達は『リザード・メイジ』に呼応するように、
薄汚い笑い声を発すると、セルンは『さて・・・』と呟いた。
「・・・力は強くないと言っても、
魔法を使用する魔物が増えるなんてね・・・」
そう言いながら何故かセルンは『白銀の双月』のモードを切り替え、
『弓・モード』にすると顔を引き攣らせながらポツリと呟いた。
「・・・まだ試した事ないけど、
丁度いい機会ね・・・」」
『?』
セルンの呟きに・・・。
イリアばかりか魔物達も頭の上に『?』を浮かべていると、
セルンはイリアと黒紅に念話を送った。
{・・・黒紅、別に当たらなくていいから、
あいつらに向けて『例のダンガン?』ってのをぶっ放してっ!
そして狙う場所は・・・魔物達の足元よっ!}
{・・・は、はいっ!?あ、足元ですかっ!?}
{それとイリアっ!
何でもいいから黒紅の攻撃を避けながら接近戦をっ!}
{く、黒紅の攻撃を避けながらっ!?
そ、そんなに速く動けないってばっ!}
{・・・ゴチャゴチャ言わないっ!
この乳女っ!
貴女の持ち味はスピードでしょっ!?
死にたくなかったら、避けて見せなさいよっ!}
突然一方的なセルンの提案にイリアと黒紅は戸惑いはしたものの、
現状が何とかなるならば・・・と、
『わかったわ』と渋々承諾したのだった・・・。
{・・・カウントダウン後に行動開始よ。
みんな・・・抜かりなくいくわよっ!
3・2・1・・・ゴーっ!}
黒紅は『いきまぁぁぁぁすっ❕』と声を張り上げ、
『木製の鬼弾』を小気味よく『ドドドドドっ!』と連射をし始め、
イリアは合図と共に『灯』を使用し速度を上げ突っ込んだ。
『ドドドドドドっ!』と黒紅が連射する中、
イリアは背後に迫る『木製の鬼弾』の気配を捉え、
速度を落とす事無く突っ込んで行った・・・。
黒紅の連射によって魔物達附近に白煙が立ち視界を悪くした。
『リザード・メイジ』は声を張り上げながら、
『火の魔法』を発動すると、突っ込んで来るイリアに対し、
闇雲に数発の『火の球』を撃ち放った・・・。
『ボっ!ボっ!ボっ!』
『灯』の影響で『五感』が鋭くなっていたイリアは、
その魔法攻撃を紙一重で躱しながら白煙が包む中へと浸入し、
立ちはだかる『ミノタウロス・ビースト』の前へと躍り出た。
そしてセルンはイリアが白煙の中に侵入したのを確認すると、
後方に大きく飛びながら『弓』を構え、
『黒き刃よっ!』と声を張り上げながら、
弓を引き絞った・・・。
いつの間にか引いた弓にはセルンの声に呼応するように、
その弓には『黒い矢』が番われており、
『そこっ!』と声を響かせながら渾身の『矢』を放った。
『ヒュンっ!』と一瞬・・・。
『ミノタウロス・ビースト』のこめかみの横を通り過ぎた矢は、
『ドスっ!』と魔物に突き刺さると同時に『黒い炎』に包まれ、
『ゴォォっ!』と音を響かせながら一瞬にして塵と化したのだった。
「白煙中でお前の魔法が私に居場所を教えてくれたのよ・・・。
魔法が使えた事を後悔するのね」
そしてイリアはそんな『炎の音』を感じながら、
フェイントを織り交ぜ接近し肉迫し始めた・・・。
(今のうちに一気に距離をっ!)
だが魔物はそんなイリアの行動を読んでいたのか、
大きな斧を横に構えると、笑みを浮かべながら振り抜いた。
『ブフォっ!』
勝った・・・とでも言わんばかりに歓喜を声を挙げた瞬間、
イリアは声を張り上げた。
『アンダーワールド・モードっ!』
瞬時にイリアの防具とレイピアがその形状を変えると、
迫る魔物の斧に対し『青紫の炎』を纏ったその剣は、
容赦なく斬り捨てた・・・。
『ギィィーンっ!』
その光景を見た『ミノタウロス・ビースト』は、
信じられないと言わんばかりに驚きを見せていると、
突然目の前に居たイリアが姿を消し、
背後から声が聞こえた・・・。
『遅いわ・・・』
『タっ!』と背後でイリアが跳躍する音に、
『ミノタウロス・ビースト』は身体を反転させると、
そこには既に・・・。
イリアが『青紫の炎』を纏わせた剣が振りかぶられていた。
『・・・ディメンション・スラッシュっ!』(次元斬)
『ザンっ!』
『スタっ!』
イリアは声を挙げながら真上から剣を振り下ろすと、
そのまま何事もなく着地し魔物に対しくるりと背を向けた・・・。
『ブフォっ!?』
魔物はイリアの行動に困惑しながらも己の身体をあちこちまさぐり、
何事にもなっていない事に更に困惑するのだが、
白煙が立ち込める中・・・。
イリアが背を向けその白煙の中に姿を消そうとした寸前。
我に返った魔物は慌ててそのごつい拳を振りかぶった。
『コツ、コツ』と魔物に背を向け歩くその足を止めた時、
イリアは剣を納刀しながら振り返る事無くこう言った・・・。
『あなたの命運は・・・尽きたわ』
『ブフォ?』
そして次の瞬間・・・。
頭頂部から真っ直ぐ下に向かって青紫色の線が走ると、
魔物の視界にはイリアの背中が2分割され上下にズレた・・・。
『っ!?』
慌てた魔物は己の頭部を強く押さえながら、
更に困惑すると突然・・・『ボっ!』と・・・。
『青紫の炎』が魔物の視界を塞いだのだった・・・。
『ブフォォォォっ!?』
『ゴォォォォっ!』と激しく青紫色に燃える魔物を見る事無く、
イリアはそのまま白煙の中に姿を消したのだった。
黒紅による攻撃で辺りに粉塵が立ち込める中、
『リザード・メイジ』を撃破したセルンは苦悶の表情を浮かべ、
肩を上下に揺らしながら『はぁ、はぁ』と大きく息を荒げていた・・・。
(・・・と、とりあえず倒すには倒したけど、
の、残り・・・2体・・・。
わ、私は今の一撃でもう力が・・・。
あ、後はイリア頼みになるけど、あの子だって恐らくもう・・・)
大きく息を荒げながら朧げに見えている視界で、
イリアの姿を必死に探していた。
そして粉塵が収まり始め、その中に朧げにイリアを見つけた時、
セルンは安堵の息を漏らすと同時に念話を送った・・・。
{イリアっ!聞こえる?}
{・・・・・}
{イ、イリアっ!?}
朧気だがセルンは収まりつつある粉塵の中に立つイリアを捉えていたが、
だがイリアからの念話の返答はなかった・・・。
(・・・イリア?)
眉間に少し皺を寄せ訝し気にした時、
重苦しいようなイリアの念話が返って来た・・・。
{・・・な、何?
な、何か・・・あった?}
イリアの返答にセルンは首を傾げつつ視界に映るイリアを見ると、
フラフラとどこか頼りになく動いているのが見て取れた・・・。
{・・・イリアっ!?だ、大丈夫なのっ!?}
{・・・だ、大丈夫・・・よ。
ま、まだ・・・まだやれるわ・・・}
(・・・嘘ね)
心の中でそうポツリと呟いたセルンは、
軽く痙攣する身体を無理矢理動かし、
『弓・モード』になっている『双月』に寄りかかりながら、
無理矢理に立ち上がったのだった・・・。
そして朧げに見えているイリアを真っ直ぐ見つめながら、
厳しい表情を見せたセルンは念話を送った・・・。
{・・・その言葉、信用していいのね?}
{・・・・・}
{わ、悪いけど正直なところ・・・。
私は打ち止めよ。
だからもし・・・貴女が言った言葉が本当なら・・・
私はイリア、貴女に全てを託したいと思っているわ}
{・・・・・}
セルンの言葉に沈黙したイリアは突然ゆらゆらと殻を揺らすと、
『ドサっ』と言う音と共にセルンの視界から消えたのだった・・・。
「イリアっ!」
そうセルンが声を張り上げるのと同時に粉塵が消え去ると、
『リザード・メイジ』が居た部屋の入り口の壁に、
不気味な笑みを浮かべた『ミノタウロス・ビースト』が2体、
壁にもたれかかってこちらを見ていたのだった・・・。
「チっ!」
そう舌打ちをしながらセルンは反射的に『双月』を構え、
『矢』を射ろうとしたが、『矢』が出現するどころか、
『弓の弦』さえ引く事が出来なかった・・・。
『チっ!ならばっ!』と声を挙げながら、
セルンは『双月・双剣モードっ!』と声を張り上げたが、
今のセルンにその力はなく『弓・モード』のままの『双月』は、
セルンの手の中で沈黙したままだった・・・。
「クっ!や、やはり・・・」
不気味な眼差しでそんなセルンを見ていた『魔物達』は、
ゆっくりと壁から背中を離すと互いに顔を見合わせ、
下卑た笑みを浮かべながら頷き合って居た・・・。
「イ、イリアっ!イリアっ!?
た、立ち上がりなさいっ!早くっ!」
焦りの色を大きく浮かべたセルンがそう叫ぶと、
床に倒れていたイリアの指が『ピクリ』と反応した。
「うっ・・・。うぅぅ・・・」
軽く呻いた後、イリアは声がした方へと顔を向けると、
弓にもたれかかりながら必至に呼びかけているセルンが映った。
「セ・・・セル・・・ン?」
意識を失っていたであろうイリアが息を吐くようにそう呟くと、
『早く立ち上がってっ!』という、
セルンの悲鳴にも似たような声が届いた。
「・・・えっ?」
「立ってっ!」
必至の呼びかけにイリアは『はっ!』となり、
『魔物』が居るであろう方向へと顔を向けた瞬間・・・。
『ブフォーーっ!』と雄叫びと共に1体の『魔物』が駆け出すと、
何の躊躇を見せる事もなく『魔物』は床に横たわるイリアを蹴り上げた。
『グシャっ!』と人体から発せられる事のない音と共に、
蹴り上げられたイリアの身体は、
『弓』にもたれかかるセルンに向かって飛び、
『きゃぁぁぁっ!』と2人の悲鳴が部屋に木霊しながら激しく衝突し、
『ドゴーン』と音を立てながら壁へとぶつかると、
瓦礫と共に2人は折り重なるように倒れ沈黙した。
「セルンさんっ!?イリアァァァっ!?」
悲鳴にも似た声を後方で支援していた黒紅が挙げ、
厳しい表情を浮かべ『クっ!』と呻いて見せたイザナミに、
『ミノタウロス・ビースト』は、
とても愉快気に大きく笑って見せていたのだった。
ってな事で・・・。
今回のお話は如何だったでしょうか?
楽しんでてた抱けたのなら幸です^^
暫くの間はゆっくりと書いて行きたいと思います^^
ってなことで、緋色火花でした。




