閑話 日本 6 英二と涼華
お疲れ様です。
この夏、色々なイベントの中止で
夏気分は一体どこへやら・・・。
縁日での買い食いがしたい今日この頃でした。
それでは、閑話6をお楽しみ下さい。
天照が神界に戻り、英二達の前から消えた。
一同暫く無言の後に解散となり、それぞれが戻っていく。
部屋を出る時、現当主である半蔵から、再び礼を言われた。
「ところで英二君、もし・・・部下達に息子の事を聞かれたら、
海外に特務で行った事にしておいてくれるかね?」
「特務・・・ですか?」
「色々と決定するまでには、時間がかかるだろうからな」
「ですね・・・。わかりました。それでは失礼します」
「ああ、気をつけてな」
英二は再び塚本に案内され、廊下を歩く。
「英二さんはそのうち、悠斗様の所へ行かれるのですか?」
「ん?ああ・・・俺はそのつもりなんだが、
どうなるか正直俺にもわかんねぇーな」
「色々な方達の、それぞれの事情があるのですね・・・。
例え、それが神であっても。」
「あはは、ま、まぁーそういう事だな。
でも俺達はいつも神達の都合で動かされていると思うぜ」
「神達の都合ですか・・・」
塚本は英二の顔を「チラッ」っと見ると、いつもの笑顔はなかった。
長い廊下を渡り玄関へ到着すると、英二は歩き慣れた廊下の方を見た。
「なぁ、シュウよ・・・。俺が言う事でもねぇーんだけどよ。
あいつの部屋の掃除は宜しく頼むな」
「はい。かしこまりました。誠心誠意やらせて頂きます」
「ああ、頼むぜ」
英二は外に出るとまだ雨は降っていた。
塚本に傘を渡されると、肩を落とした英二は歩き出す・・・
「じゃーな」
「お気をつけて・・・」
塚本は、英二の姿が見えなくなるまで見送っていた。
英二が正門から出ると、大介が車の中で待っていた。
英二を見つけた大介は、外へ飛び出すと英二の元へ駆け寄った。
「英二さん、お疲れ様です」
「あ、ああ・・・。お前、まさかずっと居たんじゃ?」
「いえ、流石にここにずっと居ても邪魔になりますし、
絶対に、本家の人達から怒られますよ」
「あはは、そうだな」
「そ、それに・・・ですね・・・少し言いにくい事が・・・」
「ん?何だよ?」
大介が言い迷っていると、車の窓が降りて
川崎いちかが顔を覗かせた。
「英二さんおっっそーーーいっ!」
「い、いちか・・・」
英二は顔を引きつらせ隣りに居た大介を睨んだ。
「え、えっと・・・ですね・・・。こ、こいつが勝手に・・・」
大介は英二から顔をそらすと、車に駆け寄り
「さ、さあ!帰りますかっ!」
英二の返事を待たず車に乗り込んだ。
「ったく・・・おめぇらよ・・・」
違う意味でまた、英二の顔は曇ってしまうのだった。
車に乗り込むと、いちかが「ソワソワ」していた。
「な、何だよ。言いたい事があるなら言えよ」
「えっと。悠斗さんは戻られました?」
(まぁ、こいつからはやっぱそのセリフは出るよな~・・・
ったく。こいつ、何で来てんだよ)
英二は愛想笑いを浮かべると、悠斗の事情を説明した。
「特務・・・ですか・・・。ご当主からの仕事なら・・・
私達に言えないのは当然なんでしょうけど、
それでもやっぱり・・・」
(ええー!それくらいの事で涙ぐむのかよっ!まじかっ!
俺の時はちゃんと心配してくれるヤツって居るのかね~?)
そう考えていた英二だったが・・・
(ああ・・・居ない。そんなヤツ、きっと居ねぇー・・・)
英二は深い溜め息を吐いていた。
大介は車を出し宿舎に到着した。
車中では、いちかの相手をずっとしていたので
英二の疲れはピークに達していた。
車を降りて宿舎に向かう英二・・・
「英二さん!お疲れ様でした!」
大介の声が後ろから聞こえると
「ああ、お疲れ」と、振り向かず手を上げた。
英二の様子を見ていた大介は・・・
(やっぱり・・・悠斗様は戻ってこないんだ・・・)
大介は何か確信めいたモノを感じ取っていた。
そして、いちかも・・・。
英二が降りた車内は沈黙が支配していた。
次の日・・・
あまり眠れなかった英二はあくびをしながら部屋を出ると・・・
「おはようございます。英二さん。
涼華様が本家に来るようにと、連絡がありました」
「まじか?」
「はい。残念ながら・・・まじです」
大介は英二が涼華の事が苦手なのを知っていた。
「それと英二さん。朝食を食べてから向かいますか?」
「ああ、食べてから行くことにするよ」
「わかりました。車の準備してきます」
そう言うと、大介は車を用意するため向かって行った。
「急がなくていいからなぁー!」
英二は玄関に向かう大介に大声で言うと、
こちらを振り返り手を上げていた。
大介は、英二と悠斗を尊敬していた。
何度も命を救われた大恩人であり、
この世界に入る事が出来たのも、二人のおかげでもあった。
それを知っている英二は、大介の後姿を見ながら・・・
「お前は色々と気を遣い過ぎなんだよ」
そうつぶやくと食堂へ向かった。
朝食を食べ終わり本家に向かうため
大介が待つ外へ移動すると・・・そこには戒斗が立っていた。
「ん?よう!戒斗じゃねぇーか。こんな所でどうしたんだ?」
「ういーす。英二さん。俺が迎えに来ました」
戒斗は少し不満顔だったので、ある程度の想像がついた。
「わぁーたよっ!じゃー行くか」
英二が戒斗に促されるまま、車に乗り込もうとした時・・・
「英二さーん!」
大介といちかがこちらへ駆けて来る。
「んあ?一体どうしたんだよ?お前ら?」
「車では送れなくなってしまったけど、せめて見送りくらいはと・・・」
「あっ、私はただの冷やかし的に見送り!」
「ん?冷やかしの見送りって何なんだよ!
「てへへ♪」
「てへへ、じゃねーよ・・・ったくよ」
いつもの連中といつもの会話をすると、
英二は戒斗の車で本家に向かった。
「英二さんの隊って、相変わらずっスよね」
「あはは、ま、まぁーな。うちの隊は自由だからな~」
「俺は規律こそが大切だと思うんスけどね~」
「規律ばかりだと肩が凝っちまうぜ・・・俺はそんなのごめんだね」
そんな英二の発言に、戒斗は苦笑するばかりだった。
「まぁ、うちはうち!他所は他所ってな!」
「兄貴も同じ事言ってましたよ」
「ははっ!あいつも堅苦しいのは嫌いだからな~・・・。
あいつはいつも、自分で居たいのさ」
「俺にはわかりそうにもないっスね」
「へへっ。だろうな・・・」
戒斗と話をしていると本家に着いてしまった。
道場前で車を降りると、涼華が玄関口に居た。
「おはよう姉貴」
「おはようございます。統括」
「ふむ。おはよう」
(相変わらず表情崩さねぇーなー。
いくら美人でも、この人の顔は朝から見たくねぇーな)
そんな事を思っていると、涼華がこちらを睨んできた。
「英二・・・。今、私に対して・・・不埒な事を・・・」
「お、思ってませーーーんっ!」
涼華の言葉が言い終わる前に言葉を被せて難を逃れる。
「そ、そうか」
三人は道場に入る前に、応接間で話をする事にした。
「朝早くからすまんな・・・」
「ふぅ。姉貴よ~・・・それ本当にそう思ってんのか?」
「・・・思ってないわ」
「「だ、だよな~・・・」」
思ってもいない事を平気で言えるのが涼華という女だ。
目的の為には手段を選ばず、最短で事を成すのである。
「で、涼華さんよ・・・俺を呼んだのは何故だ?」
英二は二人の喧嘩が始まる前に、要件を聞いておきたかったのだ。
「ふむ。お前を呼び出したのは・・・これからの事だ。
お前は悠斗を追いかけて行くつもりなんだな?」
「ああ、勿論そのつもりだ」
「そうか・・・」
「あー・・・でもな。それは俺の努力次第なのかもしれねぇーが、
最悪・・・。俺は悠斗の所へは行けないかもしれない」
涼華だけではなく、戒斗もまた驚いた表情をしていた。
「英二さん、それはどう言う事っスか?」
「・・・・」
「ん?英二・・・言えない事なのか?」
二人とも何も言わない英二に眉を寄せる。
「い、いや・・・そんな事はねぇーんだが・・・
これは俺の勘になるんだが?」
「別に勘でもいいんじゃね?」戒斗は気楽に言う。
「ああ、私は英二の勘を信じよう」
その言葉に英二は頷くのだが、一つ・・・確かめる事がある。
「なぁ・・・涼華さんよ。何で此処には俺達しか居ないんだ?
その理由を聞かせてもらえねぇーと・・・話せねぇーな」
涼華は少し息を吐くと、戒斗を見てから答えた。
「そうだな。理由は簡単だ・・・私は他人を信用していない
例えそれが身内であってもだ」
「それじゃー答えになってねぇーよ」
「ふむ。まず此処に居ない二人について話しておこうか・・・。
まず沙耶だが、あいつが一番問題外だ。
拳で語る者はこの場所にはふさわしくない。
また・・・悠斗の事よりも己の好奇心・・・
いや・・・そうではないな。自己満足と言えばいいか・・・?
どちらにしても、己を優先させる者など私は信用しない!」
そう言い切る涼華に戒斗も英二も固まってしまった。
それは、涼華も沙耶も二人からすれば、仲が良く見えていたからである。
それが・・・信用しないと言ったのだ。
「それで三女の事だが・・・あいつはただのブラコンだからな、
悠斗の為なら他人がどうなろうと構わない・・・そんな奴など
この話し合いになど呼べるはずもないだろう」
「確かに貴子はそうだな~・・・俺に斬りかかってきた事なんて
一度や二度じゃないもんな・・・」
「まぁ、貴子ちゃんからしたら、戒斗・・・てめぇーがよ
悠斗の事をディスるからだぜ?わかってんのかよ?」
「わ、わかってるよ英二さん!だけどさ・・・」
口ごもる戒斗を見た涼華は薄ら笑いを浮かべると・・・
「英二よ・・・戒斗は・・・こやつは、ただのツンデレだ」
「「はぁ?」」
涼華の言葉に再び固まる戒斗と英二。
戒斗は涼華の言葉に食って掛かるが、相手になどしていなかった。
「こいつはな・・・皆の前では悠斗をディスるのだが、
今回の事だって、真っ先に私の所へ来て、対策をと・・・
そう言ってきたのだ。
悠斗の事を尊敬しているが、本人の前だと言えない・・・
ただのツンデレのチキン野郎なだけなんだ」
涼華の言葉に項垂れしまった戒斗を見た英二は・・・
戒斗の口から魂が抜けだそうとしているのが見えたのだった。
「お、お前・・・まじかっ!まじなのかっ!
ただのツンデレチキン野郎だったのかっ!」
「は、はぁ?はぁぁぁぁ?ち、違いますぅ~!
ツンデレでもチキンでもねーよっ!」
顔を真っ赤にして怒る戒斗にもはや何も言うまい・・・
剥がされた仮面の下には・・・ただのツンデレチキン野郎が居たのだった。
その様子を少し笑いながらも、涼華が追い打ちをかけてくる。
「英二よ。これからはこやつの事を・・・
ツンチキと呼ぶがいいぞ」
「ツ、ツンチキ?」
「ああ、ツンデレチキン野郎の略だな」
もう何も言えなくなってしまった戒斗は
ただただ・・・顔が青ざめていくのだった。
「だ、大丈夫だって・・・戒斗よ~
俺はそんな風に呼ばねぇーからよっ!」
「え、英二さんっ!」
戒斗は英二の手を握り締めると頭を下げるのであったが・・・
しかし涼華は見ていた・・・
英二の顔が「ニヤリ」と笑っていたのを・・・
「ふっ・・・若いな・・・」
その言葉に英二が「ポツリ」とつぶやいた・・・。
「あんたの方が・・・俺より年下だからな?」
そのつぶやきが聞こえたかどうかは定かではないが、
涼華を見た時、そっぽを向いて口笛を吹いていたのを見逃さなかった。
「さて・・・本題に入るか?」
「・・・まだ入ってなかったのかよ」
英二は涼華の目が鋭く光った事をまだ知らなかった。
英二 ・・・ 俺達の話って・・・遅くね?
天照 ・・・ ふむ・・・そうじゃの。ちぃーとばっかし遅いかの?
英二 ・・・ ですよね?こんな事で悠斗と合流できるのか不安です!
天照 ・・・ ふむ、一度原作者殿に聞いてみるかの?
英二 ・・・ まじですかっ!頼んますっ!
ラウル ・・・ ふっふっふっ!そんな事僕がさせないっ!
天照 ・・・ 己!下郎!!
英二 ・・・ ラウル・・・お前・・・暇そうだな
ラウル ・・・ はぅorz
ってなことで、緋色火花でした。




