261話 万事休す
お疲れ様です。
ってか・・・。
とりあえず戻りました・・・。
ですが相変わらず体調は悪く、
暫くの間、投稿は不定期となります・・・す、すまぬ・・・。
ですがまぁ~とりあえず無事(?)に戻って来たって事で、
体調と相談しながら続けて行きたいと思いますw
って事で・・・。
それでは、261話をお楽しみ下さい。
イリアとセルンは『灯の力』をベースに、
『冥神珠の力』を上乗せした・・・。
これが『アンダーワールド・モード』
『ブルースピリット』をメインに戦うイリアの力は、
『アンダースピリット』へと進化し、
『青紫の炎』へと変わっただけでなく、
身体能力の向上により速度が桁違いに上がり、
速度を生かした攻撃に特化ししていたのだった。
一方セルンはと言うと・・・。
『黒き刃』もまた『冥界の刃』へと進化し、
『黒紫の炎』をその身に纏うと、
身体能力の向上によりパワーが桁違いに上がり、
そのパワーを生かした攻撃に特化していた。
イリアの『アンダースピリット』の効果は、
スピードに特化し、身に纏う防具の色形状もまた変化した。
それと同時にレイピアもまた長剣ほどの大きさへと進化していたのだった。
『き、聞こえる・・・私にもこの子の声がっ!
行くわよっ!アンダースピリットっ!
敵を焼き尽くせっ!』
そう叫びながらイリアは剣を横一文字に振ると、
剣に纏った『青紫の炎』は数メートル先の魔物達を焼き尽くし、
塵1つ・・・残さなかった。
そしてセルンの『冥界の刃』の効果は、
身に纏う防具の色と形状が変化し、
桁違いにその防具の性能が跳ね上がっただけでなく、
『白銀の双月』に纏っていた『黒き炎』もまた、
『黒紫の炎』へと進化を遂げた。
『吠えろっ!黒紫の刃っ!
敵を斬り裂けっ!』
そう吠えながらセルンは『白銀の双月』を振り下ろすと、
斬りつけたその傷跡からドロドロ溶解し始めたのだった・・・。
その光景を目にしたイザナミと黒紅は、
圧倒的不利な状況下だったにも関らず、
2人の進化した姿に言葉を失うほどだった・・・。
『はぁぁぁっ!』とイリアとセルンが吠える中、
我に返った黒紅が茫然とするイザナミに話しかけた・・・。
「イ、イザナミ様っ!
ふ、2人が・・・あ、あんな戦い方をっ!?」
「あ、あぁ・・・」
そう唸るように口からこぼれたイザナミは、
『ゴクリ』と喉を鳴らすと言葉を続けた・・・。
「しょ、正直・・・お、驚いた・・・。
まさか全く性質の違う2つの力を組み合わせるなんて・・・」
「・・・は、はい。
私も今、目の前で起こっている事が未だに・・・。
で、ですが、これは紛れもない2人の力ですっ!」
「あぁ・・・確かに2人の力だ・・・。
だ、だが・・・」
言葉の途中でイザナミはふと嫌な予感が過り、
顔を顰めた時だった・・・。
突然『ボス部屋』へと続く通路の先から、
『ブフォォォォォォォっ!』と魔物の雄叫びが響き渡った。
「・・・ま、まさか今の・・・今の雄叫びはっ!?」
イザナミがそう叫んだ時、
前線で戦う2もまたその雄叫びに目を細めた・・・。
「セ、セルンっ!?
今の雄叫びはまさかっ!?」
「あ、あぁ・・・まさかとは思うけど・・・」
魔物達を薙ぎ倒しながら2人がそう会話していると、
破壊された鉄の扉の横からニヤけた顔をした大型の魔物が顏を出した。
『ミ、ミノタウロス・ビーストっ!?』
「見かけないと思ったら、仲間の到着を・・・」
「・・・イリア、こいつは思っていたよりも厄介な敵よ」
「・・・そうみたいね」
ニヤけた顔を見せた『ミノタウロス・ビースト』に、
2人は悪寒が走ると突然『ブフォォォっ!』と、
眼前に出て来た『ミノタウロス・ビースト』が吠えたのだった。
すると通路の奥から『ブフォォォォっ!』と返答を思わせる方向が聞こえ、
『ミノタウロス・ビースト』は再びニヤりと笑みを浮かべた。
「や、やはり・・・い、1体だけじゃなかったのかっ!?」
そんな悲痛な叫びがイリアとセルンの背後から聞こえると、
2人は顏を見合わせ口を開いた。
「・・・イリアっ!此処に居る魔物達は残り僅かよっ!
気を抜かないでっ!」
「わ、わかっているわ、セルンっ!」
そう声を掛け合う2人は、今・・・。
目の前に居る魔物達に集中し次々に倒して行った。
『ザシュっ!ボっ!』
『ズシャっ!ドカっ!シュゥゥゥ』
イリアとセルンは前線で奮闘し、
この『ボス部屋』に居る魔物達が残り数体になった時、
『ドスっ、ドスっ、ドスっ、ドスっ』と重い足音を響かせて、
『ボス部屋』の前のフロアに、
新たな『ミノタウロス・ビースト』が入って来た。
「・・・クっ!ついに来たわね」
そう唸るように言ったセルンの言葉にイリアは、
『・・・ここからが本番って訳ね?』と口にした。
2人は顏を見合わせると一旦後方へと下がると、
魔物達を見据え剣を構えながら口を開いた・・・。
「・・・セルン、まだいけそう?」
滑るように隣り合わせなったイリアはそう問いかけると、
セルンはその意図を察し囁くように返答した。
「・・・正直わからないわ」
「そ、そう・・・よね」
「えぇ・・・。
2つの力を融合させたのはただの思い付きだったけど、
今のところ問題は別に・・・だけど・・・。」
そうセルンの声にイリア『だけど・・・何?』と尋ね、
より一層険しい表情へと変わったセルンはこう言った。
「・・・この力の限界値が全くわからない」
「限界値?」
「えぇ・・・。
本来なら力が使用出来る限界値って、
ステータスボードを見なくても本能的なモノでわかるでしょ?」
「えぇ、そうね」
「だけど、この力・・・。
アンダーワールド・モードの限界値って、
全く感じ取れないのよ・・・」
「で、でも、それは・・・限界なく使えるって事じゃないの?」
「・・・バカな事言わないでっ!」
「えっ?」
「・・・こんな物凄い力、
永遠に使い続ける事なんて有り得ないでしょっ!?」
セルンが顏を顰め苛立ちを見せると、
イリアは『・・・た、確かに』と慌ててそう返答した。
「正直こんなバカげた力・・・。
そのリミットが来た時、私達の身体にどんなことが起こるのか、
全くわからないのよ?
融合もたまたま上手くいっただけなのに、
何も感じ取れずこのまま限界を迎えたら・・・」
そう深刻そうに言ったセルンの額からは汗が滲み流れ始めていた。
深刻そうに話すセルンにイリアは動揺が隠せずに居ると、
背後からイザナミの声が響いて来た。
「あんた達っ!一旦そのモードは解除しろしっ!」
『っ!?』
イザナミの声に2人は一瞬後ろを振り向くと、
再び正面に視線を戻しながら『わかりましたっ!」と声を挙げた。
そして2人が顏を見合わせ頷き合うと、
『シュパっ!』と『アンダーワールド・モード』を解除した。
すると解除した瞬間・・・。
2人はほぼ同時に『がくっ』と力が抜け、
床に片膝を着くと頭が割れそうなほどの頭痛が襲った。
『うぐっ』
突然片膝を着いたイリアとセルンに慌てたイザナミは、
『お、お前達っ!?』と声を挙げ、
黒紅もまた『お2人共っ!?』と声を発した。
イリアとセルンがそんな声に応えようとした時、
『ドスっ、ドスっ』と重そうな足音を立て、
4体の『ミノタウロス・ビースト』が侵入して来たのだった。
「・・・ヤ、ヤバい」
そうイザナミが呟いている中、
『クっ』と呻きながらセルンが立ち上がった。
「・・・イ、イリアっ!
これからが本番よっ!さっさと立ち上がって剣を構えなさいっ!」
「・・・わ、わかってるわ、セルンっ!
わ、私だってこんな所で・・・」
立ち上がった2人は、
不敵な笑みを浮かべる魔物達に向けて武器を構えると、
背後で見つめていたイザナミは黒紅に念話を送った。
{・・・黒紅たん}
{イザナミ・・・様?}
{・・・残弾はどれくらいある?}
{・・・木製弾が600発と瓦弾が400発くらいです}
{・・・って事は連射すれば、
3~4分ほどで全弾撃ち尽くすって事ね?}
{・・・お、恐らくですが}
{わかったわ}
短くそう答えたイザナミはそのまま沈黙し、
黒紅はいつ声が掛かってもいいようにと準備を始めた・・・。
それから数分間・・・。
イリアとセルンは剣を構えたまま、
肌が赤黒い『ミノタウロス・ビースト』と睨み合い、
それを後方から見守るイザナミと黒紅は、
固唾を飲んで見つめていたのだった・・・。
(・・・じょ、状況はどんなに考慮しても、
アタシらが圧倒的不利・・・。
イリアもセルンも満身創痍な上、黒紅たんも・・・。
そして一番どうしようもないのが・・・このアタシ。
神の『分体』とあろう者がこの体たらく・・・。
残りの神力もほぼ・・・ゼロ。
ど、どうする・・・ア、アタシ・・・。
一体アタシはこの子達に何か出来る事は?)
イザナミはその悔しさから苛立ち、
全身に力が入り苦悶に満ちていた・・・。
(な、何か出来る事は?)
そう再び考えていた時だった・・・。
「・・・ん?」
何かに気付いたイザナミはこの緊迫する状況の中、
再び黒紅に念話を送った・・・。
{黒紅たん・・・}
{・・・はい、何ですか?}
{ちょいこの場を任せてもいい?}
{ま、任せるって?
ま、魔物が動いたら私は一体どうすればいいのですか?}
{その時は黒紅たんの判断に任せっから。
ってか・・・。
隙があればガンガン撃っちゃって!}
イザナミの念話に黒紅は了承すると、
ゆっくりとイザナミは後ろへと下がって行ったのだった。
(・・・何とかなるかもしれない)
顔を引き攣らせ、汗が滲む額を拭いながら、
イザナミは黒紅の背後に隠れるように身を潜めたのだった。
イザナミが魔物達の視界から外れた時、
『ミノタウロス・ビースト』はこの緊張状態に耐えられなく、
1体が『ブフォォォっ!』と吠えながら、
その手に持つ大きな斧を振りかぶり駆け出したのだった。
突然咆哮し大きな武器を振りかぶりながら突進して来る敵に、
イリアは一瞬、その緊張からか身体を硬直させてしまった・・・。
「バ、バカっ!
イリアっ!油断しないでっ!」
「えっ、えっ!?」
この『始まりのダンジョン』に来てからというもの、
イリアは数多くの経験値を稼ぎ、
レベルを上げ、新たな力にも目覚めた・・・。
だが、幼き頃から戦っていたセルンと比べると、
この緊張下の中での戦闘経験は雲泥の差だった・・・。
緊張から来る硬直状態にイリアは一歩に動けずに居ると、
セルンは『チっ!』と舌打ちをしながら、
未だ硬直状態にあるイリアの前に躍り出た。
『黒き刃よっ!』
そう声を挙げたセルンの身体から、
『黒き炎』が噴き出し防具の形状が変化した・・・。
「イリアっ!私から離れてっ!」
セルンの叫びにイリアは我に返り冷静さを取り戻すと、
小さく頷きながら後方にバックステップするの同時に、
『ブルースピリット』を身体に纏わせ、
着地と同時に高く上げられたその掌の上には、
『ボっ!』と青く燃え盛る『青き炎の球』を準備していた。
セルンの背後から『ブルースピリット』の気配を感じたセルンは、
緩やかに口角を上げると『双剣』状態の『白銀の双月』に、
『黒き炎』を纏わせた・・・。
『ブフォっ!』
そう吠えながら振りかぶった大きな斧を、
力一杯振り下ろした『ミノタウロス・ビースト』は、
受身の態勢を取るセルンに対し勝ち誇った表情を浮かべていた。
そんな魔物にセルンは『甘いっ!』と声を挙げながら突っ込むと、
大きく広げられた股の下をくぐりながら、
『白銀の双月』を振ったのだった。
『ドカっ!』
『シュパっ!』
ほぼ同時にそんな音が聞こえ、
セルンが魔物の股を潜り抜け態勢を立て直すと、
『プシャァァァっ!』と『ミノタウロス・ビースト』の股下から、
血飛沫が飛び散っていた。
そしてそれと同時に攻撃をスタンバイしていたイリアは、
『青き炎よっ!』と声を挙げながら放ち炸裂すると、
一瞬にして『青き炎』は燃え広がり、
『ミノタウロス・ビースト』を焼き尽くした・・・。
だがセルンはその光景を見る事無く、
すぐさま襲い掛かって来るであろう残り3体の魔物に対し、
鋭い視線を向け双剣を構えていた・・・。
だが・・・。
「・・・こ、来ない?
な、仲間が殺られたのに・・・何故っ!?」
動揺を浮かべるセルンに魔物達は笑みを浮かべて見せると、
正面に立つ1体を残し、ゆっくりと移動し始め、
セルンを囲むように広がって行った・・・。
「こ、こいつら・・・一体何を?」
『ミノタウロス・ビースト』の行動に警戒を強めた時だった。
突然『ブフォっ!』と一際高い方向を放つと、
囲んだ魔物達は3体同時に攻撃を仕掛けた・・・。
『セルンっ!?』
そんなイリアの声が後方が聞こえるも、
攻撃に転じた魔物達の猛攻にセルンは応戦した。
だが疲弊しているセルンに対し魔物達の猛攻は止まらない。
「くっ!こ、こいつらっ!?」
魔物達の攻撃を紙一重で躱し、弾き、受け流して行くも、
徐々にセルンの体力は削られ、
イリアもまた『青き炎』の連続発射により疲労は色濃く出ていた。
すると突然魔物の1体が『ブフォンっ!』と声を発すると、
その魔物達はニヤつきながら攻撃を止めた・・・。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。
な、何故・・・こ、攻撃を・・・」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。
い、一体この魔物達は何を考えて・・・」
ゆっくりと後退りながらイリア達と距離を取った魔物は、
鼻息荒くしつつもイリア達を冷静に見ていたようだった。
セルンは『このままでは・・・』と呟きながら、
双剣を握り締めたその瞬間、がくっと突然膝から崩れ落ちた・・・。
「セルンっ!?」
「セルンさんっ!?」
イリアはそう声を挙げながらセルンの元へと行き、
片膝を着くその身体を包み込むように支えた・・・。
「つ、冷たいっ!?」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・」
呼吸を荒くするセルンの身体は冷え切っており、
抱き締めたイリアはその体温の低さに驚いていたのだった。
「セルンっ!?大丈夫なのっ!?」
そう声を掛けるもセルンは歯を食い縛り、
力の限り立ち上がろうとしていた・・・。
「た、多分・・・『灯の力』を使い過ぎたせいかも・・・ね。
だけど・・・私はまだやれる・・・」
セルンを抱きかかえるように一緒に立ち上がったイリアは、
身体の状態が異常である事は容易に理解出来た。
「・・・セルンは少し下がってて」
満身創痍のセルンを気遣いそう声を掛けるも、
セルンは頑なに『まだやれるわ』と返して来た。
イリアはそんなセルンに怒声を発した。
「いい加減にしてっ!」
「なっ!?」
「貴女がまともに戦えない事くらいわかるわっ!
私のせいで今、こうなっている事もわかってるっ!
だからセルン・・・。
今度は私に前衛をやらせて・・・お願い」
魔物達を見据えていたイリアの視線が一瞬、
セルンへと向けられると、その視線の強さにセルンは笑みを見せた。
「わ、わかったわよ・・・。
だけど・・・私は離脱はしない。
それにまだ・・・あいつらは本当の力を出していないはず。
黒紅もまだ少しは戦えるっぽいし・・・
みんなでこの場を乗り越えるわよ」
そう話すセルンにイリアは『わかったわ』と了承すると、
後方で様子を見守る黒紅に声をかけた。
「黒紅っ!支援をお願いっ!」
その声に黒紅は『了解致しましたぁぁっ!』と、
元気よく返答すると、前衛に立ったイリアは剣を構え、
セルンはやや後方へと移動し魔法の準備をしたのだった。
そしてイザナミは・・・。
咲へと進む『ボス部屋の鉄扉』の前でイリア達の声を聞きながら、
念話を使用していた・・・。
{・・・いつまで待たせんのよっ!}
そう怒鳴ったイザナミに相手は『もう少しかかる』と返答した。
そしてイザナミは現状の説明をすると、
相手は『心配するな』と笑いながらこう言った。
{・・・そろそろ先遣隊がそちらに到着するはずだよ。
だからその『鉄の扉』をなんとかして開けなっ!}
{・・・む、無茶な事を。
ロックが外れず魔法的にも物理的にもどうにもなんねーしっ!}
{・・・そこを何とかするのがイザナミだろっ!?
甘ったれてんじゃねーよっ!}
{別に甘えてねーしっ!
だけど現状・・・か・な・り・・・ヤバいんだってばっ!}
{でもよ~イザナミ・・・。
その扉を何とかしねーと、どのみちどうにもならんだろ?
それに『例のモノ』も使えずじまいになるぜ?}
{くっ・・・}
念話を終えたイザナミは『重厚な鉄の扉』を見上げたまま、
どうにもならないこの現状に険しい表情を浮かべるのだった。
『・・・万事休す・・・ね』
ってな事で・・・。
今回のお話はいかがだったでしょうか?
ってか・・・。
緋色がこんな感じなのに登録者数減ってない・・・。
うぅぅっ・・・ありがたや~♪
登録者様方には感謝しております。
不定期ですが、これからも応援の程宜しくお願いしますっ!
・・・ほんとに、不定期でごめんよ~><
ってなことで、緋色火花でした。




