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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第三章・冥界編
364/404

256話 疑似生命体と断末魔

お疲れ様です。


この暑さと全速で凹んでいる緋色で御座います。


・・・何故こんなにも暑い?

最近仕事の都合でゥェザーニュース見てないからな~><

ぐっさんに何故こんなにも暑いのか説明してほしいw


ってな感じでくたばっていますが・・・。


今回のお話は『黒紅』が奮闘し、

あるキャラが戦わない理由なども・・・。


楽しんで読んでもらえたら嬉しく思います。



それでは、256話をお楽しみ下さい。

イザナミ達は順調にダンジョンを攻略して行き、

今現在・・・此処『75階層のボス部屋附近』に辿り着いていた。


だが・・・。

連戦が続きイリアとセルンは明らかに疲弊し、

その疲労は誰が見ても明らかに見えたのだった・・・。


『はぁ、はぁ、はぁ・・・』


呼吸も荒く息も絶え絶えにしている2人を見て、

イザナミは『チっ!』と舌打ちをしながら呟いた・・・。


「思っていたより早くバテてしまったわね・・・

 まぁ、此処までこんなに連戦するとは流石に・・・」


険しい表情を浮かべ『このままでは・・・』と続けて呟いた言葉に、

後ろに居た黒紅も『そうですね』と言っていた・・・。


そして黒紅はイザナミに問いかけた。


「イザナミ様、イリアさんは既に魔力はなく、

 セルンさんももう限界に・・・」


「そんな事はとっくに承知してるしっ!

 だ、だけど・・・休む暇なんて・・・」


壁にもたれかかりながら『ドンっ!』と、

壁を殴りつけるイザナミに、黒紅は返す言葉もなかった・・・。


そんな黒紅のもどかしい気配を背中に感じながらも、

イザナミは苦悩していた・・・。


(・・・この階層に来てからというもの、

 魔物のリスポーンが早過ぎるっ!

 いや、そんな生易しいモノじゃないっ!

 異常としか言いようのないくらいに、

 魔物が次々湧き出て来る・・・

 ふ、ふざんけんなっ!

 一体このダンジョンはどうなってんのさっ!?)


歯を『ギチギチ』とさせながら苦悩するイザナミに、

黒紅はたまらず声を挙げた。


「イザナミ様っ!

 魔力だけではなく、もうポーションのストックもありませんっ!

 どうにか休息をっ!」


そう悲痛な声でイザナミに問いかけると、

頭をボリボリと掻き、

いつものギャル口調は完全になりを潜めていた・・・。


「何もかもが想定外なのよ・・・」


「・・・想定外?」


「えぇ・・・。

 予想よりもモンスターの数があまりにも多い・・・。

 有り得ない・・・有り得ないのよ・・・。

 これはもう異常としか言いようがない。

 それにスタンピートが起こる可能性があるとしても、

 これは流石に・・・」


「・・・ス、スタンピートっ!?」


険しい表情を更に険しくしたイザナミは、

かなり苦悩している様子だった・・・。


そんな時だった・・・。


突然ダンジョンの先の通路から、

『ギャァァー、ギャアァー』と騒がしい魔物声が聞こえ、

その声に反応したイリアとセルンは疲弊した身体を起こそうとした。


「・・・か、身体が・・・も、もう」


「くっ!う、腕が・・・あ、上がらない・・・

 ボ、ポス部屋まで・・・あと少しだと言うのに・・・」


立ち上がろうとしたイリアは再び膝から崩れ、

セルンは壁に身体を預けながら、かろうじて立ち上がった。


「イザナミ様っ!?も、もうあの2人はっ!」


珍しく焦りながらそう声を挙げた黒紅の声に、

イザナミは『ここまでか・・・』と声を挙げた時、

苦悶しそう声を挙げたイザナミに黒紅は声を張り上げた。


「・・・わ、私がメインで戦いますっ!」


「・・・は、はぁっ!?」


突然そう声を張り上げた黒紅に、

イザナミは驚き後方に居た黒紅に振り返ったのだった。


「・・・バ、バカな事言ってんじゃねーしっ!

 黒紅たんがいくら『破滅の門』で硬いからってっ!

 いつまでも耐えられる訳ないしょっ!?」


「だ、大丈夫ですっ!

 少なくともイリアさんとセルンさんが・・・

 そ、その・・・た、立ち上がる事が出来るようになるまでっ!

 ユウト様の門であるこの私がっ!

 耐えきって見せますからっ!

 で、ですからっ!ですからお願い致しますっ!

 どうかこの黒紅にっ!」


「だ、だめだっ!」


「イ、イザナミ様っ!?

 だ、だって・・・イザナミ様は今・・・

 そ、その・・・戦えないのでしょっ!?」


「なっ!?

 く、黒紅・・・たん・・・な、何故それを・・・?」


黒紅の言葉に驚きを隠せないイザナミに、

更に話を続けて行った・・・。


「や、やはり・・・そうなのですね?」


「・・・い、いつ気付いた?」


「い、いや、その・・・気付いたって言いますか・・・。

 あの『ボス部屋』で『蜂の女王』や『鬼』との戦闘の後、

 明らかにイザナミ様の様子が変わりましたし・・・。

 それに皆さんが戦闘中も、こうして壁にもたれ、

 よく見なければわかりませんが、薄っすらと汗も・・・」


(って言うか、もう見た目から・・・)


「・・・くっ、まじか」


「・・・はい、しかしあの時・・・。

 いつ代わったのかは分かりませんけど、

 今、此処におられるイザナミ様って・・・恐らく・・・」


そう言葉が続く黒紅の話を遮るかのように、

イザナミは『言うなしっ!』と声を荒げた・・・。


『・・・ヒィっ!』と小さく悲鳴を挙げた黒紅に、

イザナミは『すまない』と小さな声で謝罪すると、

『誰にも言わないでくれ』と口止めをしたのだった・・・。


(誰にもって・・・

 そう言われても、皆さんはもう・・・)


そう口には出さず思っていると、

イザナミの口が堅く閉じられ・・・。

その拳がブルブルと震えているのを見た黒紅は、

『このままでは・・・』と再び決意すると声を挙げた。


「どうか・・・どうかお願い致しますっ!

 この黒紅にこの場はっ!」


そう叫ぶ黒紅にイザナミが顏を顰め苦悩するも、

『・・・わ、わかった』と苦痛な表情で答えたのだった。


その声に黒紅は『やってやりますともぉぉぉっ❕』と声を張り上げ、

『ドスドス』と通路を進む中、

イザナミは再び苦悩していた・・・。


(くっ!・・・こんな時に戦えぬとは・・・)


そう自分を責める言葉を吐露しながら、

『ドスドス』と通路を進む黒紅の姿に、

『すまぬ』と謝罪を口にした。


黒紅は疲弊する2人の前へと出ると、

人で言う、胸を張るように通路一杯に身体を大きくし、

何時魔物が現れてもいいように備えていた・・・。


「わ、私が必ず皆さんをっ!」


そう意気込む黒紅を見ていたイリアとセルンは驚き、

その視線を壁にもたれかかるイザナミへと向けた・・・。


「・・・黒紅たんの申し出で、

 この場はあの子に任せる事にしたから・・・」


険しい表情でそう言ったイザナミに、

イリアとセルンは己の不甲斐なさを呪っていた。


(・・・わ、私の魔力制御が甘いせいで、

 魔力切れなんておこさなければ・・・)


(・・・私の『魔力腺』の炎症がなければ、

 黒紅に負担なんて・・・)


各々がそう反省していると、

歩いて来たイザナミがダンジョンの床に座り込み、

2人に対し苦笑して見せた・・・。


「・・・ははっ。すまぬな?

 アタシの見込みの甘さがあんた達を・・・」


あぐらをかきながら頭を下げ、

そう謝罪し始めたイザナミに2人は慌てて声を挙げた。


「ま、待って下さい・・・。

 謝罪なんて・・・そんな・・・事・・・」


「そうですよ、イザナミ様・・・。

 わ、私達が不甲斐ないせいで・・・こうっなているのですから・・・」


『はぁ、はぁ、はぁ』と息を荒げながらそう言った2人に、

イザナミは再び『すまぬな』と微笑んで見せた。


そんなイザナミの微笑みを見ていると、

ふと・・・イリアは『あの・・・』と声を挙げた。


「・・・ん?何?」


「あの~・・・イザナミ様・・・?」


イザナミの顏付近を凝視するかのように、

イリアはじっと見つめ、イザナミが『何?』と再び口にすると、

おもむろに尋ねたのだった・・・。


「もしかして今のイザナミ様って・・・

 『分体』ってヤツですか?」


「なっ!?お、おま・・・おまっ・・・」


突然のイリアの言葉にイザナミはあからさまに動揺し、

セルンまでも『あぁ~やっぱり?』と声を挙げた・・・。


「セ、セル・・・ぴょんまでっ!?」


イザナミの声にセルンはイリアと顔を見合わせると、

小さく『コクリ』と頷いて見せたのだった・・・。


そして黒紅の時と同じように、

『いつから?』と尋ねると、黒紅と同様の返答が返って来た。


『あちゃ~』と言わんばかりに、

イザナミは頭を抱え込んでしまった。


(う、嘘っしょっ!?まじでかっ!?

 こ、こんな連中にアタシの『術』が見破られてたなんてっ!?

 アタシの『術』の精度が落ちたってのっ!?

 ・・・さ、酒・・・か?

 それとも・・・た、煙草かっ!?

 い、いや・・・待て・・・もしかすると・・・

 ホ、ホストかっ!冥界のホスト通いのせいで金が無くなって、

 そ、それでバイトに明け暮れ暫くサボってたのが原因っ!?

 なになになにっ!?

 どうして見破られたのか・・・ま、全くわかんないんですけどっ!?)


あぐらの姿勢のまま頭を抱え込んだイザナミの視線は、

ダンジョンの床を朧げに見つめ、

思考がループしているのか・・・。

その視線の先に噴き出した汗が『ポタポタ』と落ちて行った。


そしてゆっくりと顔を上げながら2人を見ると、

恐る恐る尋ねたのだった・・・。


「ど、どどど・・・どうして・・・わかった?」


その問いに2人は再び顔を見合わせると、

『どうしてって・・・』とイリアが口にしていった・・・。


「・・・着物と言うモノは兎も角、

 肌が露出した部分・・・。

 つまり手や顔・・・そしてはだけた胸元・・・

 それらを見ると・・・ね~?」


そう言いながらその視線をセルンへと向けると、

『えぇ、それと・・・』と言葉を続けた・・・。


「よく見ると、その露出した肌の部分だけが、

 何故か・・・薄っすらとですが白く光っておられますし?

 それよりも一番わかりやすいのは・・・」


『ゴクリ』とセルンの言葉に喉を鳴らしたイザナミは、

『・・・わ、わかりやすいのは何?』と尋ねた。


「・・・えっとですね。

 あの『ジェミー』との一戦の後・・・」


そうセルンが口にした時、

イザナミは『わかったっ!』と声を挙げた。


「あの後、私が体調悪そうにしていたからっしょっ!?」


ニヤりと何故かしたり顔でそう言ったイザナミだったが、

セルンは『いえ、違いますけど?』と言い、

『えっ!?違うのっ!?』と驚く声に頷きながら答えた。


「まず・・・あからさまにメイクが違い、

 瞼にベッタリと銀色の・・・」


「・・・へっ?」


「メイクに・・・髪飾りも違っていますし・・・」


「ま、まだあるのかっ!?」


己が今『分体』である証拠が次々と暴かれ、

イザナミは驚きが隠せなかったのだった・・・。


「はい、見た限りで言いますと・・・。

 恐らくこれが一番わかりやすいかと・・・」


「なっ、なんじゃっ!?は、早く申せっ!」


「は、はい・・・」


再びギャル語が消えたイザナミに、

2人は驚いたが、互いに顔を見合わせると、

イリアとセルンは2人同時に声を挙げた・・・。


『・・・あからさまに胸・・・小さいですよね?

 って言うか・・・むしろ・・・ないって言うか?』


「・・・ほへっ❕?

 む・・・胸?

 わ、妾の胸が・・・?」


『・・・はい、見事に『ない』ですよね?』


見事にシンクロした2人の声に、

イザナミは己の胸へと視線を落とすと、

『あっ』と何かに気付き声をこぼした・・・。


「・・・あぁ、た、確か昔・・・。

 スーパーモデルとか言う輩の衣装が着てみたくて、

 本体で試すのには面倒で・・・あぁ、あぁぁ・・・

 そうそうっ!

 その時に『私』を作って・・・

 メイクや体形もその時に色々と・・・ぐぬぬぬぬ」


そう声を挙げたイザナミに、

イリアとセルンは『すーぱーもでる?』と顔を見合わせていたが、

それに納得したイザナミは『あちゃ~』と自己嫌悪に陥っていた。


「『疑似生命体』で在るが故の・・・なるなる♪

 あの時、咄嗟に作った『分体』だったから、

 神力の量が極端に少なくて・・・だからかぁ~♪

 納得・・・納得だわ~♪

 『分体』のアタシったらなんてお茶目さん♪

 テヘペロっ♪」


そう納得し茶目っ気たっぷりなイザナミだったが、

それを見ていたイリアとセルンは不思議そうに尋ねた。


「イザナミ様・・・。

 どうしてあの時から『分体』に代わられたのですか?」


「・・・あの時、怪我も治ったはずですよね?」


その2人の質問にイザナミは『コホン』と咳払いをすると、

イリアとセルン・・・。

そしてその会話に聞き耳を立てている黒紅は衝撃の真実を知った。


「えっと~・・・。

 アタシ達『神』ってのはさ?

 冥界のダンジョン・・・

 つまりこの『始まりのダンジョン』への介入は、

 基本的に禁止されてんのよね~♪

 でもさ、あのさ?

 『50階層』くらいまでなら~、

 『神本体』でも・・・ギリセーフっ!

 アウトよりの~・・・セーフっ!

 まさに『グレーゾーンっ!』

 ってか、あん時って『ボス部屋』だったじゃん?

 まじであの後『分体』に・・・つまり『私』に代わんなかったら~

 色々と罰則があるんよ~♪

 ってか、まぁ~そんな事情だったつー訳なのさ♪」


『・・・・・』


顔を引き攣らせながらイザナミの話に耳を傾けていると、

突然黒紅の声が響いた・・・。


「皆さんっ!来ますっ!」


その声に反応は示すものの、

辛うじて立ち上がったイリアとセルンの様子に、

イザナミは『・・・まずい』と言葉を漏らした。


(体力は多少回復したものの、

 この様子ではそうはもたない・・・。

 クッ!そ、それにしてもどうしてこちらが見つかったっ!?

 魔物が感知出来る範囲ではないはずなのにっ!?)


イザナミが苦悩する中『グギャァァァっ!』と声を響かせながら、

魔物達はこちらへと向かって来る・・・。


『黒紅たんっ!攻撃開始っ!』


そんな声が響き渡ると黒紅は、

『わっかりましたぁぁぁっ!』と声を張り上げ、

宙に浮き始めた『瓦』に赤銅色の気が溢れ始めた。


そして『ギュルギュルギュルっ!』と高速回転し始めると、

『飛ぶ瓦ぁぁぁぁっ!』と黒紅の絶叫が響き渡った。


『ギュルギュルギュルーっ!』


高速回転しなが6枚の『瓦』が魔物に向かって飛んで行き、

暗く見えない通路の奥で、

『ウギャァァァっ!』と魔物達の断末魔が響き渡った。


「や、やったかっ!?」


思わずそう声を挙げたイザナミは『あっ!』と声を挙げると、

慌てた様子で自分の口を両手で塞いだ。


『イ、イザナミ様っ!?』


イザナミの様子を見てそう驚きの声を挙げた2人に、

苦々しい表情を浮かべながら呟いた。


「フラグ・・・立てちゃった」


そう言いながら『がくっ』と項垂れたイザナミに、

2人は『ふらぐ?』と首を傾げていると、

黒紅の張り上げた声が更に続いた・・・。


「次、来ますっ!」


「フ、フラグ回収はやっ!」


『っ!?』


『グギャァァァっ!』と再び魔物の雄叫びが聞こえ、

身構えるイリアとセルンに黒紅がこう言った・・・。


「貴女達はまだ休んで居て下さいっ!

 この距離は・・・私の距離ですからっ!」


その声の力強さにイリアとセルンは驚きはしたものの、

口角を緩やかに上げ『お願いっ!』と返答したのだった。


そんな2人の声に気を良くしたのか、黒紅は・・・。

『うおぉぉぉぉっ❕滾って参りましたぁぁぁっ!』と声を挙げ、

通路を塞ぐほどのその大きな身体から赤銅色の気を放出した。


『ユウト様の門であるこの私の実力っ!

 これから御見せ致しましょうっ!

 そしてっ!』


赤銅色の気を放出しながら黒紅は、

その赤く染まった『瓦』を10枚浮かせ、

皆には見えぬ暗闇の通路の先の魔物を次々とロックオンし、

『捉えましたっ!』とニヤけたように口を開いた。


そして『ふっ』何かを思い自笑しながら声を挙げた。


『ふっふっふっ・・・。

 見せてもらいましょうかっ!

 この75階層の魔物の実力とやらをっ!』


「く、黒紅たん・・・。

 そ、その知識は・・・どこからっ!?」


イザナミのツッコミには反応を示す事無く、

『ギュルギュルギュルーっ!』と、

再び高速回転し始めた『瓦』が、

ロックオンした魔物達目掛け発射された。


『あっっったれぇぇぇぇっ❕』


暗闇の通路を飛んで行く『瓦』を見ながら、

黒紅がそう声を張り上げると、

複数の断末魔を挙げる魔物達の声が響き渡った・・・。


そしてその様子を黒紅と通路の隙間から見ていた者達は、

『ゴクリ』と喉を鳴らしながら感想を述べていた・・・。


「く、黒紅・・・たん・・・

 ま、まじマーベラスで草っ!」


「く、黒紅・・・す、すごっ!」


「・・・わ、私の弓よりも・・・嘘でしょっ!?」


各々がそう感想を漏らす中、

『ハァ、ハァ』と呼吸を乱す黒紅の息に気付いた。


「く、黒紅・・・大丈夫なのっ!?」


「・・・無茶し過ぎよっ!?」


イリアとセルンが呼吸を荒くする黒紅を心配そうにしていると、

黒紅は『き、気合・・・入れ過ぎました♪』とそう言った。


『あははは』と黒紅の声にぎこちない笑みを浮かべて居ると、

イザナミは黒紅の巨体に手を触れながら囁くように口を開いた。


「・・・黒紅たん、まだ・・・いける?」


「・・・は、はいっ!

 イザナミ様の・・・ご命令とあらばっ!」


『ハァ、ハァ』と荒く呼吸をしつつもそう言った黒紅、

イザナミは軽く息を吸い込むと続けた・・・。


『・・・5分でいいから』


『・・・5分?』


黒紅は勿論の事・・・。

イリアとセルンまでもがイザナミの言う『5分』に首を傾げ、

不思議そうにしていたのだった。


そして『頼む』と言葉短くイザナミがそう言った後、

イリアとセルンに向き直り真剣な眼差しを向けながら口を開いた。


「・・・顏貸せ」


『か、顏っ!?』


口調こそ荒かったが、イリアとセルンはその真意を感じると、

『はい』と言って素直に従い黒紅から少し離れた。


イザナミがその足を止め振り返り、

2人に視線を向けると『ふぅ~』と・・・。

何かを決意したかのように息を吐いた。


そして再び決意在る視線を向けた時、

その迫力にイリアとセルンの背筋がピーンと伸びた。


「・・・黒紅たんが今は頑張ってくれてるけど、

 正直・・・ジリ貧よね?」


『は、はい・・・』


「で・・・。

 考えたんだけど・・・さ。

 現状を打開する手は・・・あるには・・・ある」


そう聞かさせた2人はイザナミに肉迫しながら、

『手があるのですかっ!?』と興奮気味に言い迫った。


イザナミは腕を組み顔を少し伏せながら静かに頷き答えた。


「・・・あるにはある。

 だが正直この手は使いたくなかったんだけど、

 この場を切り抜けるには・・・もうこれしか・・・」


顔を伏せながらそう静かに言ったイザナミに、

2人は『その手とやらを教えて下さいっ!』と言うと、

『・・・わかった』と言いながら伏していた顔を上げたのだった。


そして『うむ』とそう呟くように口を開くと、

イザナミの目の奥が鈍く光りこう言った。


「・・・お前達にアタシの冥界の神力を与える」


『・・・・・』


そう聞かされた2人は・・・。

イザナミの言った事が理解できなかったのか、

茫然としたまま動けずに居た。


すると『ふぅ~』と溜息混じりに苦笑いを浮かべると、

イザナミは説明していった。


「・・・正直、冥界の神力をお前達に与えると、

 どうなるかは全く予想出来ない。

 だけどね・・・。

 『灯』を使える今のお前達になら・・・

 冥界の神力を与えても使えるはずだと思っている」


「わ、私達に・・・冥界の神力を?」


「い、いくら『灯』が扱えるからと言っても、

 冥界の神力とは全く別物なはず・・・」


拳に力を込めながらそう言った2人に、

イザナミは小さく頷きながらもこう言った。


「・・・力を行使する事は出来るが」


そう言いながら大きく呼吸したイザナミは、

2人を目を見ながら続けた。


「・・・その後、お前達の身に何が起こるか、

 私にもわからない・・・。

 だから・・・さ・・・。

 イリアとセルン・・・2人に決めてもらいたい・・・

 冥界の神力を受け取るか・・・受け取らないかを・・・。

 もし受け取らなくても私は決して責めたりはしない。

 だからお前達に決めて欲しい・・・」


今までに見た事もないイザナミの言葉とその真剣さに、

2人は俯き押し黙ってしまった。


その様子にイザナミはその視線を黒紅に向けながら、

最後にこう言った・・・。


「・・・時間はあまりない。

 急かすようで悪いが決めて欲しい」


そうイザナミが言った瞬間、

黒紅が『新手が来ますっ!』と声を挙げた。


一度皆が黒紅の声にその視線を向けたが、

すぐにその視線を戻すと、

2人は顏を見合わせ小さく頷きながら真剣な眼差しを、

イザナミに向けたのだった。


『・・・受け取りますっ!』と・・・。


イリアとセルンの声に、少しの間沈黙が訪れたが、

軽く息を吐いたイザナミは『わかった』と答え、

2人に対し『そこに座れ』と言って座らせた・・・。


『目を閉じて居ろ』


その声にすぐさま反応したイリアとセルンは、

素直に従い目を閉じると、

イザナミの呟く声が聞こえた・・・。


「・・・すまぬな。

 目を開けたままじゃ・・・少々グロかろうと思ってな?」


『・・・?』


『も、文字通り・・・なんだけど・・・ね』


その小さな声に2人が不思議がっていると、

突然・・・。

『はぁぁぁっ!』と言うイザナミの気合いの声に身体がビクついた。


そして続けざま・・・。

イリアとセルンの耳にイザナミの藻掻き苦しむ声が響き渡ったのだった。


『イ、イザナミ様っ!?

 い、一体何をされているのですかっ!?』


そんな黒紅の困惑する声が聞こえる中、

イザナミの『ぐぁぁぁぁぁっ❕』と・・・。

叫ぶ断末魔のような声が響き渡ったのだった。



ってな事で、今回の話はいかがだったでしょうか?


楽しく読んでもらえたのなら嬉しく思います。


さて、次回は・・・。

ま、まぁ~今回のラストでお察しの事かと思いますが、

・・・想像力を働かせてしまうと『グロ』くなります。


ですからあ・ま・り・・・。

想像力を働かせないようお願い致しますw



ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 黒紅、頑張ってますね♥︎ しかしまさかイザナミが分体になっていたとは・・・ 前から思ってましたが、伏線多いし設定も細かくて、なんか「ライト」ノベルじゃないですね(笑) 次回も楽しみにし…
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