255話 立ち向かう意思
お疲れ様です。
まじでこの湿度・・・死ぬorz
ひょっとしたら夏の暑さよりも、
この梅雨の時期の湿度の方が苦手・・・かも?
さて、今回のお話ですが・・・。
言わずと知れた『女子~ず』の続きです。
楽しんで読んでもらえると嬉しく思います^^
それでは、255話をお楽しみ下さい。
イザナミがセーフティーゾーンを出てから数分後・・・。
戻って来たイザナミは黒紅の扉から入ると同時に声を挙げた。
「・・・明日、此処を出発する事になったからっ!」
声を張り上げながらそう言った事に、
イリアとセルンは顏を見合わせ驚いていた・・・。
するとイザナミは続けて口を開いた。
「ってか、いつまで休憩すんのさ?
セルぴょん、あんたは暫くの間、私の許可なく魔力を使うのは禁止っ!
だからとっとと剣術の訓練をやれしっ!」
「は、はいっ!」
瞳をギラつかせてそう言われたセルンは、
飛び上るように立ち上がると、
マジックボックスから木刀を取り出し素振りを始めた。
そしてそんなセルンに釣られる形でイリアも立ち上がると、
イザナミから『ちょい待った!』と声がかかった・・・。
「・・・?」
その声に無言になったイリアに、
険しい表情を浮かべながら歩いて来るイザナミに、
背中に何か冷たいモノが流れるのを感じていると、
ふとこんな質問を投げられたのだった・・・。
「イリアっちってさ~?
得意な魔法ってある?」
「・・・得意な魔法?」
「うぃうぃ・・・」
そう尋ねられたイリアはダンジョンの天井に視線を向けると、
『うーん』と唸り始め『風魔法が一番得意かも』と答えた。
するとイザナミは『風か~』と、
イリア同様に天井を見上げながらそう呟くと、
視線を戻し再び質問してきた。
「風と言えば基本的な攻撃魔法は『エア・バレット』よね?」
「・・・そう・・・ですね」
「一度に何発発射出来んの?」
『えっと~』と再び考え始めたイリアは、
すぐさま『4発くらいですかね』と答えると、
その答えに何が気に入らないのか、
イザナミはあからさまに不機嫌な顔付きへと変わった。
「はぁぁ~?4発って・・・たった~?」
「えっ!?
よ、4発って・・・少ないですか?」
イリアの返答にイザナミは『はぁぁぁ~』と溜息を吐くと、
イリアから距離を取りこう言った・・・。
「とりま数はいいけど・・・イリアっちの『エアバレ』
ちょいアタシに向かって撃ってみ・・・」
「はい?」
突然そんな事を言われたイリアが困惑していると、
『いいから撃てってーのっ!』とどやされてしまった。
『は、はいっ!』と返事をしたイリアが魔力を放出し、
イザナミに言われた通り『エア・バレット』を放ったのだった。
『バシュっ!』と小気味良い風の発射音が聞こえ、
素振りを続けるセルンもまたその様子を伺っていると、
放たれたエア・バレットは、『へっくしょんっ!』と、
イザナミは向かって来る魔法へくしゃみをすると、
瞬時に霧散してしまったのだった・・・。
『っ!?』
その様子に驚いたのはイリアだけではなく、
素振りを止めて見ていたセルンもまた驚く事になった。
「ど、どうして私の魔法が『くしゃみ』なんかで?」
意味が分からない・・・。
そんな表情を浮かべるイリアに、
鼻の下を擦りながらイザナミは呆れた様子を見せていた・・・。
「ってか・・・魔法の基本ってのが全然理解出来てねーし」
そう口を開いた瞬間、
イリアはとても嫌な感じがし身体を硬直させながらも身構えた。
するとイリアの直感は当たっていたようで、
『キっ!』と鋭い視線を向けたと同時に、
イザナミがイリアへ向けて手をかざした瞬間、
『エア・バレットっ!』と声を挙げつつ風魔法を放った。
『バシュっっ!』と先程とは違いキレのいい風切り音が聞こえると、
イザナミの放ったエア・バレットはイリアの顔を掠りながら、
後方の壁に炸裂していたのだった。
「こ、これが・・・私と同じ・・・?」
イリアがその威力と速さの違いに驚く中、
イザナミは未だ手を向けたままの姿勢でこう言った・・・。
「・・・魔法舐めんな・・・乳女」
その言葉を聞いた瞬間、
イリアは『ガクっ』と膝から崩れ落ち、
深く項垂れてしまった・・・。
(わ、私の魔法と一体何が違って・・・?)
『ギュっ』と・・・。
膝に置かれた手を強く握り締めながら、
イリアは考え込んでいた・・・。
だがその答えが見つからず、
顔を上げたイリアはイザナミに口を開いた・・・。
「わ、私とイザナミ様の魔法は・・・
一体・・・一体何が違うのでしょうかっ!?」
力強い視線でそうイザナミに尋ねると、
イザナミはその視線を黒紅へと向けこう言った・・・。
「黒紅たん・・・わかる?」
突然話を振られた黒紅は一瞬戸惑いはしたものの、
すぐに『はい』と答え何が違うのかを口にした。
「私が思った事で恐縮ですが・・・。
恐らく魔力の凝縮速度と魔法に対する理解力・・・ですかね?」
そう答える黒紅にイザナミは口角を緩やかに上げると、
イリアに向き直り口を開いた。
「・・・ほぼ正解♪
まぁ~点数を付けるとしたら80%ってところね~♪
残りの20%は・・・
まぁ・・・経験を積む事でしか理解出来ないと思うし、
繰り返し実戦で使う事でしか掴めないしょ♪」
そう答えるイザナミにイリアは何度か頷きながら、
黒紅が言った・・・。
『魔力の凝縮速度と理解力』を何度も繰り返し呟いていた。
そんなイリアの様子を見てイザナミは笑顔を浮かべると、
完全に手が止まっているセルンに『ギロっ!』と、
厳しい視線を向けた・・・。
「セルぴょんっ❕完全に手が止まってっしっ!
サボってると永遠に素振りをする事になるけど・・・
それで・・・おーけー?」
『うぐっ』と呻き声を挙げたセルンは、
慌てて素振りを再開すると、
その日の夜には完全に両腕が上がらなくなっていた。
翌朝・・・。
皆がそれぞれ朝食を食べ終え、
焚火などの後始末をしている時、イザナミが口を開いた。
「片付け終えたら出発の準備よろ~♪」
皆が『はい』と返事をすると、
イザナミは再び黒紅の扉を抜け退出して行った。
その光景を何度か見ていたイリアは、
少し身体が重そうなセルンに声を掛けたのだった。
「・・・セルン?
イザナミ様って、一体何をしに出ているのかな?」
「あ、あぁ・・・。
それは私も少し気になってはいるんだけど・・・
いててて・・・」
肩をグルグルと回しながらそう答えるセルンに、
イリアは『大丈夫なの?』と心配したが、
『ただの筋肉痛だから』と苦笑まじに返された。
片付けが終わり出発の準備が終わった直後、
イザナミが黒紅の扉を潜り抜け戻って来た・・・。
そして皆を見た時、出発の準備が追えた事に気付くと、
イザナミは少し真剣な面持ちで『行くよ』と告げたのだった。
イリアとセルンは、
イザナミの様子に少し不安を感じながらも急ぎ、
セーフティーゾーンを後にすると、
戦闘を歩くイザナミはふと足を止め、振り返り口を開いたのだった。
「・・・此処からの戦闘はかなり厳しくなるっぽい」
『・・・なるっぽい?』
皆がその物言いに違和感を感じていると、
再び皆を見ながら話を続けた・・・。
「セルぴょんは魔力使用を禁止。
『魔力腺』を休ませ炎症が引くまでね?
それとイリアっちは、魔法攻撃をメインにする事っ!
少しは後方で全体の動きを見て立ち回れるようにする事っ!
そして黒紅たんは~・・・んー・・・えっと~・・・
・・・好きにしてちょ♪」
『ガクっ』と・・・。
イザナミの指示にワクワクしていた黒紅はズッコケると、
『私だけ雑なんですけどっ!?』と抗議の声を挙げていた。
その抗議を完全スルーするイザナミに、
イリアとセルンは苦笑を浮かべながら、
先頭を歩くイザナミの後を歩み始めたのだった・・・。
それから少しダンジョンの通路を歩いていると、
ふと・・・イザナミの足が止まり『あっ』と声を漏らすと振り返り、
セルンに向かって口を開いた・・・。
「そうそう・・・忘れてた・・・」
そう言ったイザナミに首を傾げたセルンに、
イザナミはマジックボックスを開き腕を突っ込むと、
『あった♪あった♪』と笑みを見せ楽し気に口を開いた。
『テレレレッテレ~♪
・・・めっちゃ重いだけの双剣~♪』
「・・・えっ?
め、めっちゃ・・・重いだけ・・・の?」
楽し気に取り出した『双剣』をリズムに乗せながら、
唖然とするセルンに『双剣』を見せると、
イザナミは『ぐふふ♪】と嫌な笑い顔を見せながら手渡した。
『ドスっ!』
『っ!?』
鈍い音を立て地面に落ちた『双剣』の重さに、
セルンの顔は引き攣り・・・。
またイリアはその落下音の重厚さに『嘘っ!?』と驚いていた。
セルンは笑みを浮かべるイザナミに視線を移すと、
『こ、こんな重い武器・・・』と言葉を続けた。
「こんな重量がある武器で戦えって言うんですかっ!?」
思わずそう声を荒げるセルンにイザナミは真顔になると、
地面に落ちた『双剣』に視線を移しながら返答した。
「・・・クダクダ言ってんじゃねーしっ!
乳女とカッチカチ娘っ!
この程度の事に立ち向かえないようではっ!
悠斗になんてぜってぇー会えねーしっ!
それが嫌なら・・・
困難に立ち向かう意思くらい見せなっ!」
「・・・・・」
ドスの利いたイザナミの声にセルンとイリアの肩が跳ねた。
「・・・いいか?この筋肉カッチカチ娘っ!」
『っ!?』
「き、筋肉・・・カッチ・・・カチ?
さ、さっきも確かそう言って・・・」
突然変なネーミングで呼ばれたセルンは固まり、
イリアはただオロオロとしていたが、
黒紅は1人・・・『おお~♪』と何故か楽し気にしていた。
茫然とするセルンにイザナミは構う事はせず話を続けた。
「この程度の重量を軽々と扱ってもらえないと、
この先・・・まじで死ぬよ?」
「し、しかし・・・この重さは・・・」
「しゃらぁぁぁぷっ❕」
イザナミの怒声に再び肩を跳ねさせた2人に、
真顔を向けるイザナミは話を続けた・・・。
「この重さの『双剣』をどうやったら扱えるか・・・。
そしてどうやったら長く戦えるかを考えろしっ!
そんな事も考えずこの先・・・
あんたはジーマーのバイヤーになんだかんねっ❕」
「・・・ジ、ジーマーの・・・バ、バイヤー?」
「・・・生きて悠斗に会いたいのならっ!
こんな重量の武器くらい扱って見せなっ!
お前の筋肉は・・・ただの見せかけかっ!
この筋肉カッチカチ娘っ!」
「ま、また・・・カッチカチって・・・。
さ、三度・・・も?
ユ、ユウトにも言われた事ないのにぃぃぃっ!?」
「うるせーっ!知らんしっ!黙れっ!」
そう怒声を発したイザナミの声は、
このダンジョンの通路を激しく駆け抜けて行った・・・。
そしてこの時・・・。
それを黙って見つめていた黒紅はこう思っていた。
(で、出たっ!イザナミ様の暴論っ♪)と・・・。
そう怒声を浴びたセルンは軽く目を閉じ、
イザナミの言葉を頭の中で繰り返すと、
目を開き決意を込めながら口を開いた。
「・・・や、やって見せます」
「うっしっ!」
『ニシシ』とそう悪戯な笑みを見せながら、
イザナミは視線を『双剣』へと移すと、
セルンは『ふぅ~』と呼吸を整えながら『双剣』を掴んだ。
『はぁぁっ❕』と気合いを入れながら『双剣』を握ると、
セルンの筋肉に力が伝わり『ギシギシっ!』と収縮する音が聞こえた。
「お、おもっ・・・重い・・・」
顔を顰めながら漏れたセルンの声に、
イザナミは助言とも言える言葉を伝えた・・・。
「このバカみたいな重さの双剣を扱うのには、
コツってもんがあんのさ」
「コ、コツ・・・ですか?」
「うぃうぃ・・・。
力任せで振り回してっとさ~?
すぐに筋肉が悲鳴をあげっから、
まずは・・・『力の向きを瞬時にどう変えるか?』
ソレを掴むよう考えろし・・・」
「・・・力の方向を瞬時に?」
「力の向きを瞬時どう変えるか?
最初から出来るとは思ってないけど、
試行錯誤しながらやって見ろしっ!」
イザナミの助言に俯きそう呟くと、
セルンは『はいっ!考えますっ!』と力強い眼差しを向けた。
セルンの返答に『うっしっ!』と笑みを見せたイザナミは、
再び歩み始め、ダンジョンの通路を進み始めたのだった・・・。
時は少し戻って、イザナミが出発前に退出した後・・・。
T字路の壁に少し汗を額に浮かべながらもたれかかると、
とある人物と念話を開始していった・・・。
{で・・・?
このダンジョンがおかしい理由って検討ついてたり?}
{・・・んまぁ~、確実とまでは言わないけどさ~?
6~7割くらいの確率でなら・・・ね?}
{6~7割ね~・・・}
険しい表情を浮かべそう呟いたイザナミに、
念話の相手は『そんなもんね』と答えた。
{てか・・・。
聞くのを忘れていたんだけどさ~?
あんたの声・・・若くね?
最初全然誰かわかんなかったし・・・}
イザナミの問いに念話の相手は『ギャハハッ!』と笑うと、
『会えばわかんじゃね?』と悪戯っぽくそう言っておどけていた。
そんな声に『あっそ』と愛想なく不満顔を見せたイザナミに、
念話の相手は真剣な声を挙げ話していった・・・。
{あのさ~・・・イザナミ。
ちょい気にかかる事があんだけど?}
{・・・気になる事?}
{あぁ・・・。
このダンジョンの魔物達がかなり狂暴化してる気がすんだけど?
あんたはどう感じた?}
『狂暴化』と聞いてイザナミは眉間に皺を寄せると、
考え込み始めた・・・。
(この70階層に来てからこいつの言った事は感じてた・・・。
それに魔物のリスポーンが早い気もするけど、
これって正常なの?
あの『鬼』の事と言い、その背後に居る何者かの存在・・・。
そしてあいつの言った『狂暴化』
一体誰が何の目的で動いて・・・?)
イザナミが更に険しい表情で考えている時、
『お、おいっ!聞いてんのかっ!?』と、
苛立ちながら念話の相手が声を挙げていた・・・。
{ご、ごめん・・・ちょい考え事してたから、
お前の話を全然聞いてなかったわ♪
悪りぃ~悪りぃ~♪}
{お、お前・・・ふざけんなよっ!}
そう怒声を挙げた念話の相手は、
最後に意味有り気に言い残した・・・。
{・・・とりあえず『先遣隊』は送ったからさ~、
まぁ~何とかなんじゃね?}
{何とかって・・・適当かっ!?}
『ギャハハハっ!』と念話の相手の笑い声が頭の中に響き渡ると、
イザナミは顏を顰め軽く数回頭を振っていた・・・。
そして『それじゃ~な』と声が聞こえた所でイザナミは、
『おい、ちょっと待て』と言い引き留めたのだった・・・。
{・・・何?どうかしたか?}
{おい・・・。
『例の薬』は持っているか?}
そう真剣な声で語り掛けたイザナミに、
念話の声の主もまた同様の声で返した・・・。
{・・・あぁ、勿論あるけどさ?
そんなに・・・まずいのか?}
{・・・あぁ。
お前の話とこちらの状況から推察すると、
・・・かなりヤバい}
そう深刻そうに言ったイザナミに、
相手は『・・・まじか?』と返答すると、
暫く沈黙した後・・・こう言った。
{『先遣隊』どころの話じゃねーな~?
・・・わかったわ。
私に任せなっ♪}
{・・・すまぬ}
{・・・・・}
念話の相手に対しそう言ったイザナミに、
相手が何故か沈黙していたが、
すぐに『ギャハハハッ!』と爆笑すると、
その相手は、すぐさま念話を終了させた・・・。
気だるそうに壁にもたれるイザナミは『ふぅ~』と、
軽く息を吐くと壁に寄りそうように歩き始めた・・・。
(ってか・・・さ。
問題が色々と山積みなんて・・・先行き不安しかね~わ~、
ってかっ!このまま進んだらアタシら・・・
ヤベェーし・・・。
って事は早急に・・・うちの子達の戦闘力アップが優先っ!
こうなったら・・・もうスパルタしかねーしよっ?)
『フフフッ』と苦笑気味に笑みを浮かべるながら、
イザナミはセーフティーゾーンへと戻って行くのだった・・・。
そして現在・・・。
険しい表情をしたイザナミの目の前では、
複数の魔物と戦っているイリアとセルンの姿があった・・・。
「はぁぁぁぁっ!」
『ズシャっ!』
「風魔法っ!エアバレットっ!
4発同時発射っ!」
『バシュっ!』
『ウギャァァァァっ!』
イザナミが以前言ったように、
前衛で超重量の双剣を振るい戦うセルンと、
後衛で魔法攻撃に徹するイリアが、ぎこちなくも善戦していた。
そしてその場に居た魔物達を殲滅した時、
イザナミはポツリと呟いたがそれは無意識なようだった。
「・・・そう、もたないか」
その呟きは前方で息を切らしているイリアとセルンには届かず、
イザナミの後方に居た黒紅だけが唯一聞き取る事が出来ていた。
(イザナミ様は一体何を・・・?)
そんな疑問が黒紅頭の中を掠めたが、
イザナミの性格上、そのうちに言うだろうと考え、
その場では何も聞く事はなかったのだった・・・。
ってな事で・・・。
今回のお話はこんな感じとなりました。
ところどころふざけてはしまいましたが、
楽しんで頂けたのなら嬉しく思います。
ってなことで、緋色火花でした。




