30話 駆け引きと死
お疲れ様です。
30話ですっ!
とりあえず、30話まできましたっ!
何話まで続くのかは、私にもわかりませんが
これからも頑張って行きたいと思います。
今後とも宜しくお願いします。
ブックマーク及び感想など、宜しくお願いします。
それでは、30話をお楽しみ下さい。
獣人が一人、大きな布を掛けられた死体の傍に居た。
布をめくると・・・
(あいつら馬鹿隊長を殺りやがったにゃ。
全くもう~。こっちにの身にもなってほしいのにゃ
まぁ~私としては、手間が省けたけどにゃ)
前方を歩いて行った悠斗達の後ろ姿が、かろうじて見えていた。
「今まであんたが殺してきた人達と同じ森で死ぬにゃんて、
因果報応って事にゃ。
依頼されて、ロジー様を助けるはずが・・・
ふぅ~・・・予定が狂いまくりにゃ」
獣人はそう言うと、荒っぽく布を再び被せた。
(そろそろ追跡をしにゃいとにゃ・・・。
あの男は油断できにゃいっぽいにゃ~)
獣人は音もなく地面を蹴ると、木の枝に飛びつき
木から木へ移動して行った。
追跡して行くうちに、獣人はある違和感を感じていた。
(なんにゃ?さっきから・・・にゃにか体に纏わり付く感じにゃのは?)
獣人は本能的に、悠斗達からもう少し離れる事にした。
暫く進むと悠斗達が少し開けた場所にある、
大木の下で休憩を取り始めた・・・。
(ん?休憩かにゃ?ダークエルフは見えるけど・・・
男の方は腕しか見えにゃいにゃ~?
でも動いてるし大丈夫だにゃ♪)
暫く監視しているが悠斗達は動く気配がない。
(んー。私も今の間に休憩するにゃ)
獣人は腰の後ろにあるポーチから携帯食を取り出した。
取り出した携帯食を開け「もぐもぐ」とパンを貪る。
一度視線を向けるが、こちらに気付かず談笑していた。
(私もあの二人と話してみたいにゃ。
特にあの男・・・只者じゃないにゃ)
丁度食べ終わり、水を飲んでいた時だった・・・。
「食事は済ませたみたいだね」
「ブフォォッ!!」
突然すぐ傍から声をかけられ水を吐いてしまう。
悠斗は素早く剣を抜き、獣人の首筋に刃を当てる。
「クッ!!」獣人は体を硬直させる。
「さてっと・・・ん?女か・・・君は何処の誰かな?
殺しはしないから大丈夫だよ」
その笑顔とはうらはらに冷たい声で話してくる。
「貴様に話すことはない!」
「だろうね。それにお決まりのセリフも・・・つまらないな
殺さないって言ってるのにな」
悠斗の言葉に顔を引きつらせる。
(この男は私を殺さないにゃ。殺す時の匂いがしないにゃ
本当に面白いヤツにゃ)
「でもまぁ、ここじゃーね。まず降りようか?」
「ふんっ!ことわっ・・・きゃあぁぁぁ!!」
悠斗は獣人女の話の途中で、木の上から一緒に飛び降りた。
抱きかかえられた獣人の女は、真っ赤な顔をしていた。
悠斗は獣人の女を降ろすと・・・
「うっぅぅ。き、貴様っ!」
(こ、こいつ・・・とんでもにゃいヤツにゃ!
からかいがいはありそうだにゃ♪
だからちょいと・・・しかけてみるにゃ!)
獣人の女は短剣を抜くと悠斗に斬りかかった。
悠斗は短剣を持つ腕を受け流すと、手首を捻り上げた。
獣人の女は短剣を落とすと、力なく項垂れてしまった。
(あ、甘かったにゃ。思っていたよりも腕は立つにゃ
次は・・・どうやって遊ぼうかにゃ~♪)
悠斗は獣人の女の腕を縛り上げると、イリアの元へ戻って行く。
イリアは悠斗を見つけると、元気よく手を振っていた。
「・・・はは。元気だな」
イリアの元気な姿を見ると、緊張感がほぐれる気がした。
「お待たせー。この獣人さんが監視してた人だよ」
獣人を降ろすと、イリアが獣人の顔を覗き込んだ。
「へぇ~・・・女だったんだ?」
(あー。また女? ユウトってば、どれだけ女率高いのよっ!)
悠斗を横目で睨みつつ心の中で文句を言っていた。
「さてっと・・・君は何処の誰れ?どうして俺達を監視していた?」
「・・・・・・」
獣人の女は口を開かなかった。
「んー・・・。話してもらえると助かるんだけど?」
(私はまだまだ話さないのにゃ~♪
お前達、私をもっと楽しませるのにゃ)
悠斗の甘さに少し苛立ちを覚えたイリアは剣を抜いた。
イリアの様子を見ていた悠斗は、獣人の女との間に入る。
「イリアさーん?ちょっと気が早いですよ?」
「ユウト・・・ちょっと手ぬるくない?」
「んー。この人・・・敵って感じがしないんだけど?」
「監視してたのに?」
「俺は敵じゃないと思ってるよ?」
(そうにゃ♪私は敵じゃないにゃ。だから楽しもうにゃ♪)
イリアは悠斗がそう言うのなら・・・と、思うのだが・・・。
「じゃ~、敵かどうかは兎も角として・・・
結局何も話さないのであれば、味方かどうかもわからないわ」
「確かにそうなんだけどね」
イリアは獣人の女に剣の切っ先を向けた。
「おいっ!今、殺ってしまうと何もわからないぞ?
それにもし、敵だったとしたら・・・
あんな木の上で、のんびりと食べてないってっ!」
「はぁ?そんな所で食事してたの? 嘘でしょ?」
「だろ?だから敵じゃないかも・・・って思ったんだ」
二人は捕らえられた獣人の女を見ると、
なぜだか恥ずかしそうな顔をしていた。
(あ、あれは本気で油断してたにゃ。
そろそろ引き際にゃんだけど・・・もう少し楽しみたいにゃ♪)
悠斗は獣人の女に向き直ると・・・
「そろそろ話してくれないかな?」
「ふんっ!甘ちゃん相手に話すはずないにゃ!」
イリアはその言葉に眉を「ピクッ」っと動かすと、
獣人の女の首に剣の切っ先を当てた。
「あんた、調子に乗っているんじゃないわよっ!
私はユウトと違って、あんたを殺る事なんて、何とも思ってないわ」
その様子を見ていた悠斗はため息を吐く・・・。
「えっとさー。話す気がないのなら俺達は先に行くから・・・。
君は殺さないけど・・・そうだな・・・。
首から下を埋めておこう」
「「はぁ?」」
イリアも獣人の女も耳を疑っていた。
「ユウト、どういう事?」
「頭部だけ出すって事は、獣に弄ばれて・・・
それはもう、大変な事になる・・・ただそれだけだけど?」
獣人の女には、悠斗の笑顔がとても恐ろしいモノに感じていた。
「ふんっ!そ、そうだとしてもっ!叫べば誰かくるにゃ!! 」
「あはははは!来るかな~?あー。でも違うモノなら来るかもな」
悠斗はアイテムバッグから、岩場で倒した狼の死骸を取り出した。
そして、その死骸を獣人の女の目の前に置くと、
ナイフを取り出し狼の体を何ヶ所か切り裂いた。
「き、貴様!何をする気にゃ!」
「えっ?何って・・・この死骸は新鮮だからさ。
血も硬化してないんだ・・・もうわかるよな?」
悠斗は狼の体を切り裂き、その血を獣人の女の周りに撒き始めた。
獣人の女は、これから自分の身に降りかかる事が予想できた。
「ちょっ、ちょっと待って!!」
獣人の女の声が聞こえなかったかのように、血を撒いていく。
「私も手伝うわ」
イリアもナイフで切り裂き、血を周辺に撒いていく。
悠斗はある程度の血を撒き終わると、土魔法で穴を掘る。
(こ、こいつら・・・ほ、本気なのかにゃ?)
獣人の女が何を思っていたかを察した悠斗は冷笑を浮かべる。
「うん。俺は本気だよ?もう一度言うけどさ・・・
俺達は君を殺さない。・・・そう、俺達は・・・ね?」
悠斗は言い終わると、女を担ぎ上げ・・・穴に入れた。
「待ってにゃ!は、話すにゃ!!」
「えっー?もう話すのー?もう少し頑張ってくれよ」
悠斗は冷笑を浮かべながら「頑張ってくれ」と、言う。
獣人の女はイリアに助けを求めるかのように、視線を合わせてくる。
「私を見てもダメよ?助ける気・・・ないもん」
イリアは悠斗を手伝うため近づいてくると、
獣人の女の穴の中に土を入れ始めた。
ある程度土を入れ終わると・・・
「ねぇ?話すなら・・・今のうちだと思わないの?」
獣人は何度も頷くと、話を始めた・・・。
「ちょっと待てよ!イリア、何か勘違いしてないか?」
「えっ?勘違いってなんの事?」
「えっとー。イリアは、この獣人の女が話したら解放するって思ってる?」
「え、ええ。そうだけど違うの?」
本当にそう思っていたイリアは意味がわからなかった。
「いやいやいや、違うよ?俺は本気でそうするつもりなんだけど?」
「えっ?だって、この流れって助けてあげる展開でしょ?」
「そんな展開はなーーーいっ!!」
「はい??」
「いいか?まず、この女は何もしゃべらない。
俺達は早くこの森を抜け出し、
ロジーを安全地帯に連れて行かなければならない。
だから!こんな所で時間を食っている場合じゃないんだよ」
悠斗に説明されると納得してしまったイリア。
だがしかし、少し違和感があったので聞いてみる。
「ねぇ、ユウト。一応わかったんだけどね?
さっきの言葉に引っかかるんだけど・・・本音は?」
「ふぅ~・・・本音?本音は・・・面倒臭いからですっ!!」
「ははは・・・結局はソレなのね」
悠斗の言い分に呆れてしまうのだが、
確かに今は、早くこの森を出て、ロジーを安全地帯に・・・。
イリアが手を止め考えていると・・・
「だから、私は話すって言ってるにゃ!!」
「・・・・」
「どうして黙ってるにゃゃゃ!!」
獣人の女の言っていた言葉が耳に入ってこなかったイリア。
「はっ!ユ、ユウト!この女がしゃべるって!」
悠斗に訴えかけるイリアだったが、悠斗は手を止めない。
「ちょっと!ユウトってばっ!」
「おいっ!貴様っ!こっちを向くにゃ!」
暫く二人は悠斗に訴えかけるが、無言を貫き作業をしていく。
「本当に待って!ユウト!」
「いや・・・もう・・・どうでもいい・・・面倒臭い」
イリアが思っていたよりも、悠斗の声はとても冷たかった。
そして、悠斗の腕を掴み作業を止めさせる。
「どけよ・・・イリア、邪魔だ」
「どうしたのよ?ユウト。あの人話すって・・・」
「お前さ・・・仲間達の敵を打つんだろ?そんな事で敵が打てるのか?
話したから・・・助けるとか・・・。そうじゃなくてさ・・・
交渉事ってのは駆け引きだ。
そのタイミングを逃したら、当然、こういう結果になる。
イリアの発言は「フワフワ」してる事が多い。
そういうの・・・気持ち悪いからやめろ」
悠斗の言葉にイリアは掴んでいた手を離した。
「どうして、今・・・そんな事を・・・?」
「ふぅ。俺を誘惑してふざけたり・・・いい加減逃げるなよっ!
いつまで自分を誤魔化すんだよ!そういうの・・・もう、やめろよ」
イリアは「ペタン」と、力なく座り込んでしまう。
悠斗の眼光が獣人の女を追い詰めていく。
「ごめんなさい。ごめんなさい・・・話します。全部話します」
獣人の女は、念仏を唱えるように・・・同じ言葉を繰り返す。
悠斗はそれでも土を入れ続けた。
イリアも座り込んだまま、動けないでいた、
獣人の女はもう諦めていた。
(私はここで・・・。どうして?私が・・・調子に乗ったから?
あの男の・・・言うように・・・賭け引きを間違えたから?
そうね。楽しくなって・・・遊んだ罰ね。
・・・私・・・ここで死ぬんだ)
本気の涙がボロボロ流れ始めた。
「君は駆け引きに失敗した。俺は何度も殺さないって言ったのにな。
俺達に少し話して、「生」を取るべきだったんだ」
悠斗にミスを指摘され小さく頷く。
「敵ではない・・・それはすぐにわかったよ。
君は好奇心から俺達のやり取りで遊んでいた・・・。
それが君のミスだ」
(私は本当に楽しんで遊んでいた。この男の行動をもっと見たくて・・・
でも、相手を選ぶべきだった。そして・・・引き際も・・・)
悠斗は最後の土を入れ、獣人の女は頭部だけが地面から露出していた。
獣人の女はもう何も話さず、ただ黙って終わりを待っていた。
「ねぇ・・・君?自分がしてしまった事をちゃんと理解した?」
獣人の女は涙を流しながら悠斗の顔を見上げ頷いた。
「OK~!じゃ~次からは気をつけるんだぞ~」
獣人の女は何を言われているか理解できなかった。
(えっ?な、何?・・・次って?)
獣人の女が困惑する中、
悠斗を見上げると「にかっ!」っと笑っていた。
悠斗は地面に手を着くと、獣人の女が埋もれていた土は
魔法で綺麗に取り除かれていた。
獣人の女は理解できない・・・自分の状況・・・
そして・・・悠斗の行動・・・。
悠斗は獣人の女を引っ張り上げると、拘束を解いた。
そして、イリアの元へ歩いて行くと・・・
イリアの頭頂部に手刀を軽く当てる。
「とうっ!! 」
「ぽんっ!」と言う音と軽い衝撃で、我に返るイリア。
顔を上げ、悠斗を見る・・・
そこには、いつもの優しい悠斗の笑顔があった。
拘束を解かれた獣人の女とイリア・・・
二人共、ただ呆然としているのだった。
ラウル ・・・ 30話おめでとう♪頑張ってるね~
ミスティ ・・・ 本当におめでとうございます。
ラウル ・・・ まぁ、話の展開は遅いけどね~W
ミスティ ・・・ 楽しんで書いているのですから、良いのでは?
ラウル ・・・ そうだね~でも、僕達の出番も作ってくれよ?
ミスティ ・・・ そうですわね?私達も悠斗さんと絡みたいですわ♪
ラウル ・・・ 今後とも頑張っておくれよ~
ミスティ ・・・ それと、軽いやけどを大事になさってくださいね。
ってなことで、緋色火花でした。




