246話・現れた化け物
お疲れ様です。
さて、今回のお話ですが・・・。
イザナミvs女王蜂・ジェミーの戦いですね。
ここで話してしまっては本文に意味がなくなりますので、
勿論言いませんが・・・w
それと今回のキャラ画像ですが・・・。
間に合いましたが・・・、今はアップしません><
恐らくアップする時間帯は、
緋色が休憩する時間・・・つまりam3:00以降になるかと^^;
勿論それには理由がありますので・・・。
い、いや・・・な、無いかも・・・?(謎9
それでは、246話をお楽しみ下さい。
イリア達がジェミーについて話をしていた頃・・・。
(・・・さっきの蜂はどうして?)
『印』を結び回避しながらそんな事を考えていると、
イザナミは『・・・どうして?』と疑問を持った・・・。
荒れ狂ったジェミーが幾度なく拳による攻撃を繰り返す中、
イザナミの思考は急速に回転し始めた・・・。
(・・・こいつの結界は確かにオートで発動するが、
でもそんな結界にも弱点はあった。
それはジェミー自身が認識していない相手に対しては、
あの結界はオートで発動しない・・・。
あくまであの結界は『タイマン専用』だったはず・・・
なのに・・・)
険しい表情を見せるイザナミはそう疑問を抱くと、
『試してみるか・・・』と呟いた。
(次に大振りした時に・・・)
何かを狙いその瞳に力が宿ると、
イザナミは神力ではなく魔力を己の『草履』に纏わせた。
『アハァッ!』とジェミーが不気味な笑顔を見せ振りかぶると、
イザナミは『・・・ここっ!』と胸の中で声を挙げ、
『ブゥンっ!』とその拳が大きく外れ態勢を崩した瞬間、
魔力を纏わせた左足の『草履』を放った・・・。
『バチバチバチっ!』
至近距離から放たれた『草履』はジェミーに直撃はするものの、
『黄色い結界』に阻まれあえなく粉微塵となった・・・。
(・・・やはりオートである事に間違いはないが、
だがあの様子だと・・・常時発動しているっぽいってか?
・・・ならばっ!)
イザナミは大きく後方へと飛び、
片膝を着きながら着地すると、それと同時に神力放出した。
『シュバっ!』
イザナミの身体から放出された神力は凄まじいモノだった・・・。
いや、異質な・・・と、言った方がいいだろう。
「あ、あれってっ!?」
その放出された神力を目の当たりにしたイリアはそう声を発し、
セルンはその見た事がある力に言葉を失った。
冥界の神力の紫色や神界の神が使う白銀色と違い、
その放出された力はセルンが行使した力・・・。
そう・・・『黒紫の神力』だったのだ。
「・・・じゃ、じゃ・・・私が使った力ってっ!?」
驚きそう呟いたセルンに黒紅が『そうかもしれませんね?』と、
傍で固まるセルンを見ながらそう言った・・・。
セルンが驚くのも束の間・・・。
イザナミは『黒紫の神力』を放出させ、
その口元を緩やかに上げながら気合いの入った声を挙げた。
『冥界眼っ!』
そう発した声に冥界の神力がイザナミの額に集まると、
その額には『ギョロ』っとした『第三の眼』が出現し、
イザナミの神力とは違う『黒紫の神力』が放出された。
『黒紫双腕・虚空宝雷っ!』
そう声を張り上げた途端『黒紫の神力』が凝縮し始め、
それはやがて収束すると、イザナミの背中から、
別の腕が生えたのだった・・・。
その両腕が完全に形成し終えると同時に『印』を結び、
こちらを向いて不気味な笑みを浮かべるジェミーの周囲に、
野球のボールほどの大きさの『雷球』が無数に出現した。
厳しい視線をジェミーへと向けながら、
己の『印』を解く事も無くゆっくりと立ち上がり口を開いた。
「ジェミー・・・。
うぬのその厄介な結界は常時発動しておるようじゃな?
そのままではうぬは力を消費し続け、すぐに死んでしまう・・・。
妾はうぬのそんな姿は見とうもない故、
うぬを瀕死に追い込むが・・・怨んでくれぬなよ?」
そうジェミーに語る口調はとても優しく慈悲深く、
哀しい目を向けるイザナミの心中を察する事が出来るほどだった。
イザナミはジェミーにそう語り終えると、
その周囲に滞空する『雷球』に視線を向け声を挙げた。
「・・・行くのじゃ」
静かにそう言ったイザナミの声に反応した無数の『雷球』は、
一斉にジェミーに向かって衝突した。
『バチバチバヂバチっ!
ブゥブゥブゥブゥンっ!』
イザナミの『雷球』が直撃するのを阻んだ結界だったが、
その攻撃は結界の中に居るジェミーに問答無用に襲い掛かった。
『ぎゃぁぁぁぁぁっ!アバッ!アバアバアバババババっ!』
『雷球』の電気が結界の中に居るジェミーを襲い、
やがてソレはジェミーの身体から黒い煙りを立ち昇らせた。
「・・・確かうぬのその結界の弱点は電流であったよの?
ただでさえ、常時発動しておるその結界に、
絶えず攻撃が加えられ続ければ、その力の消費も半端ではあるまい?
それと同時にうぬのその結界は電流には弱いときておるからの・・・。
故に・・・じゃ。
一度に周囲から大ダメージを受けるほどの攻撃を受けたら、
その負荷にうぬの結界は耐えられなかろう?」
そう言ったイザナミの『第三の眼』が『ギンっ!』と強く光ると、
周囲に散らばり攻撃を仕掛ける『雷球達』は最大限の力を放った。
『バチィィィィィィィィィィっ!』
凄まじい落雷を想像させるほどの轟音が『ボス部屋』に鳴り響く。
『バチンっ!』と一瞬・・・。
ジェミーの『黄色い結界』が激しい音を放ちながら亀裂を生むと、
『パキパキ』と音を立てて崩れ落ち消失したのだった。
「・・・ふぅ~、これでこやつも」
そう一息付き安堵した瞬間だった・・・。
イザナミの背後の空間が渦を巻きながら黒い穴が出現すると、
『キェェェェェっ!』と奇声を発しながら何者かが現れ、
油断していたイザナミを襲った。
『危ないっ!』とそれを見ていたイリア達が声を発するも、
『えっ!?』とイザナミが声を挙げた時にはもう遅かった・・・。
『ドカっ!』
『バキっ!ゴキっ!』
『グフッ』
『ズザザザザァァァァっ!』
何者かの蹴りが直撃したイザナミは、
この『ボス部屋』の硬い床を無様に滑って行った・・・。
『イザナミ様っ!?』
イリア達は声を張り上げつつ駆け出すと、
床に倒れているイザナミの安否の確認をした・・・。
「・・・イザナミ様っ!イザナミ様っ!?」
イリア悲鳴にも近い声を発し、
セルンや黒紅もまた激しく動揺していた・・・。
床に倒れ意識を消失しているイザナミの姿を見たセルンは、
身体の中で何かが『ドクンっ』と脈打った・・・。
(よ、よくも・・・よくもイザナミ様を・・・)
焦り悲しげだったセルンの表情は、
身体の中で脈打つモノと呼応するかのように、
その表情に怒りが滲み出して来た・・・。
セルンは怒りの形相で振り返り、
イザナミを襲った相手を見た時・・・大きく双眼を見開き固まった。
「・・・こ、こいつは・・・何?」
セルンが見たモノには頭部から出ていた『角』があった。
その何者かの大きさは、
離れた場所から見ているセルン達にも大きく見え、
茶色と黒の軽装な鎧の強度はあまり高くは無さそうに見えた。
そしてとても大きな瞳は黄色く、その口から牙が覗いており、
特徴的な印象を受けたのは白く染まった短い顎鬚であり、
その男の身体を覆っている筋肉量にセルンは息を飲むと、
再び同じ言葉を言った・・・。
「こ、こいつは・・・何?」
そんな言葉が再びセルンから聞こえると、
イリアと黒紅もまた『ゴクリ』と息を飲んだ・・・。
そしてセルンと同じく『こいつは・・・何?』と口にすると、
黒紅がポツリと呟いた・・・。
{あ、あれは・・・お、鬼?}
『っ!?』
黒紅の言葉にイリアとセルンは同時に視線を向けると、
その大きな体を一歩踏み出しながらこう言った・・・。
{ま、間違いありませんっ!
・・・こ、こいつは鬼という化け物ですっ!}
「お、鬼っ!?オーガじゃなくてっ!?」
そう声を発したセルンに黒紅は『はい』と答えた。
イリアは小声ながら『アレ・・・が?』と口にすると、
セルンは声を少し荒げながら説明を求めた。
するとイリアは『鬼』と呼ばれた化け物から目を逸らす事も無く、
セルンに説明した・・・。
「・・・鬼と言うのは以前ノーブルの地で、
ユウトが戦った事がある魔物よ」
「・・・ユ、ユウトが・・・アレとっ!?」
「えぇ・・・。
私はその時『岩場の聖域』で修練していたから、
実際にはその戦いを目にしていないから、
『鬼』の強さまではわからないけどね」
真っ直ぐ向けられたイリアの眼光に、
その『鬼』が嫌な笑みを浮かべ立って居た・・・。
そんな『鬼』を凝視しながらもイリアの話は続いた・・・。
「あと、ミスティ様から聞いたのは・・・。
『鬼』にもランクがあって、『角』の本数が多いほど力は弱く、
圧倒的に個体数が少なく希少である『1本角の鬼』は、
軽く魔王ですらも凌駕するとか・・・」
『っ!?』
その話を聞いたセルンと黒紅は驚き、
『魔王ですら凌駕すると?』と呻くように口を開くと、
イリアのその額からは一筋の汗が流れ落ちた・・・。
「・・・わ、私達の実力じゃ、と、とてもじゃないけど・・・」
相手を凝視はするものの、そんな本音がイリアからこぼれ、
また黒紅からは・・・。
『圧倒的に力の差が・・・』と悔し気な声を挙げていた。
この時イリア達の脳裏に浮かんだのはただ1つ・・・。
『・・・どうすれば?』
そう不安な気持ちが脳裏を過ぎった時だった・・・。
嫌な笑みを浮かべ立って居た『鬼』が、
『ジュルっ』と舌舐めずりをした。
そして再びニヤっと笑みを浮かべた時、
ゆっくりとこちらに歩み始めたのだった・・・。
『クっ』とイリア達が呻いた時、
突然後方から『ブブゥーーン』と、
今まで後方で滞空していた無数の蜂達が一斉にこちらへと向かって来た。
『・・・チっ!』とセルンが舌打ちをし、
イリアが困惑した表情を浮かべ、
黒紅が蜂達の前に立ちはだかろうとした時、
先頭で飛んでくる蜂からメッセージを飛ばして来た。
黒紅が『えっ!?』と声を挙げる中、
その蜂は再びメッセージを送って来た・・・。
黒紅の様子にセルンが『どうしたの?』と尋ねると、
黒紅は蜂から送られて来たメッセージを口にした。
{こ、ここは私達が引き受けます・・・と・・・}
『えっ?』
{貴女達はイザナミ様を連れてここから逃げて・・・と}
蜂からのメッセージを聞いたイリア達は、
戸惑い・・・また困惑した・・・。
「ど、どうして蜂達がっ!?」
「・・・わ、私達に・・・逃げろと?」
{・・・はい}
困惑し言葉を失うイリアとセルンに、
黒紅は言葉をこう続けた。
{恐らく『女王蜂』を何とかしようとしたイザナミ様に恩を感じ、
今度は蜂達がそれに報いようとしているのかもしれません}
「・・・そ、そんな」
「蜂達が・・・」
そう声を発した時だった・・・。
突然蜂達の羽音が大きさを増すと、
その黒い目が赤に変わり『鬼』に向かって突撃し始めた。
『ブブブゥゥゥゥーンっ!』
その羽音は凄まじい音だった・・・。
この戦いの最中でもこれほどの大きな羽音を響かせた事はなく、
その羽音はイリアとセルンの耳をつんざいた。
耳を塞ぎ蹲るイリアとセルンを見た黒紅はこう言った・・・。
{・・・御二人とも、イザナミ様をお願い致します}
{えっ!?}
{く、黒紅・・・?貴女、一体何を言っているの?}
イリアとセルンが薄目を開けながらそう『念話』で返答すると、
『ガタっ』とその身体を2人に向けた・・・。
{私は破滅の門・・・。
多少ではありますが『鬼』の攻撃には耐えられるでしょう。
ですからその間に・・・}
{バっ、バカな事言わないでっ!}
{えぇ・・・黒紅、イリアの言う通りよ?
仲間である貴女を置いては行けない・・・。
それにまだ・・・負けるとは決まっていないわ}
{・・・き、決ってないって、セルンさん・・・?
貴女とあろう人が相手との実力差がわからないはずは・・・}
セルンのそんな声に黒紅は唖然としたが、
その力強い眼差しにそれ以上言えなかったのだった・・・。
{そうよ・・・黒紅。
貴女だけを置いては行けない・・・。
私もセルンも誰1人・・・置き去りにしないわっ!}
{御二人とも・・・}
イリア達はそんな会話を『念話』でする中、
蜂達は突然現れた『鬼』に総攻撃を行っていた・・・。
後方から『毒』を飛ばしつつ、近接戦闘を仕掛けていく・・・。
だが攻撃を喰らう『鬼』は逃げ惑うどころか、
微動だにせず、ただ・・・嫌な笑みを浮かべていただけだった。
その様子をスキルを使用し見ていた黒紅は驚きの声を挙げた。
{・・・は、蜂達の攻撃が届いていないっ!?}
『・・・えっ!?』
黒紅の声に驚きの声を挙げた2人に、
黒紅は更に口を開いていった・・・。
{あ、あの『鬼』の身体から漏れ出ている『鬼の気』に、
蜂達の『毒』がその『熱』で蒸発し、
また直接攻撃を行った蜂達もまた・・・そ、その熱で・・・}
「・・・そ、それほどの高熱を」
顔を顰めそう言ったイリアに、セルンはこう言った・・・。
「・・・イリアっ!
どんなにその熱が凄くても、私達ならっ!」
「・・・あっ、そっか。
私達の力は恐らく熱にも強いはず・・・
もしかしたら・・・」
イリアとセルンは互い『コクリ』と頷き合うと、
立ち上がり黒紅に声をかけた。
「黒紅・・・イザナミ様を頼むわ」
「・・・もしもの時は、ノーブルに帰還して」
{・・・お、御二人とも}
そう言葉を言い残したイリアとセルンに、
黒紅は『大丈夫ですっ!貴女達御二人ならば・・・』と返答した。
その言葉にイリアとセルンは頷くと、
『行くわよ・・・』とセルンが声をかけた走り出した。
「ブルースピリットっ!」
「・・・イグニッションっ!」
駆け出しながらそう声を挙げると、
それぞれの胸の辺りから『青い火と黒い火』が姿を現し、
2人を導くように先行すると、
イリアとセルンは更に声を挙げた・・・。
「ブルーフレイム・アーマーっ!」
「ブレイジング・アーマーっ!」
イリアとセルンの声に呼応したそれぞれの『火』が、
2人の身体に燃え広がり、それが一瞬にして『鎧』となった。
「・・・みんなーっ!ここは私達にっ!」
「貴女達は後ろに下がりなさいっ!」
イリアとセルンの声に反応した蜂達は、
2人の変化した姿に『一縷の望み』を託し、
最低限の仲間を残し後方に下がって行った・・・。
『ザザァァー』っと床を滑りながら足を止めた2人は、
その鬼の大きさに『ゴクリ』と息を飲み、
鬼の周囲に焼けただれ絶命している蜂達の多さに汗を浮かべた・・・。
(・・・で、でかい。に、2ⅿ以上は・・・
そ、それに・・・この蜂の死骸の数・・・)
(でも、私達2人なら・・・)
イリアはこちらを『ギロリ』と睨む鬼を見つめ、
改めて鬼の迫力に寒気が走った・・・。
だが、セルンはこの場に居ても冷静で在り、
ゆっくりと動きながら鬼の様子を伺っていた・・・。
(た、確かに大きいし威圧感も半端じゃないわね・・・。
間違いなく、今まで出会った事のない敵。
だけど・・・)
ジリジリと動きながら鬼を観察すると、
その大きな身体の筋肉量の多さと・・・。
頭部に生えている角の数が4本だと確認する事が出来た・・・。
{・・・イリアっ!鬼の迫力に飲まれないでっ!}
一瞬セルンの視界の中に、
鬼の迫力に飲まれたイリアが視界に入り、
咄嗟に『念話』を送ったのだった・・・。
{・・・ご、ごめんっ!}
そう『念話』を返したイリアは、
セルンと同じようにゆっくりと動き始めると、
鬼の左右に2人は移動する事が出来た・・・。
そして『ふぅ~』っと、イリアが軽く息を吐いた時、
突然鬼が口を開いたのだった。
「・・・何だ、貴様らは?」
『っ!?』
見た目通りに低い声でそう言った鬼は、
『ギロリ』と眼球だけ動かしセルンを睨みつけた。
(い、威圧がっ!?
に、睨まれただけ・・・なのに・・・)
鬼のその睨みだけで、セルンの背中に悪寒が走った。
するとセルンを見透かすように、
再び鬼が口を開いたのだった・・・。
「お前達・・・俺を前にして中々いい度胸だな?
見た所お前達は・・・エルフとダークエルフのようだが・・・。
フフフフフっ・・・そうか・・・そうか・・・。
お前達が『マイノー』・・・いや、
『ミノタウロス』が言っていた・・・者達か?」
『っ!?』
『ミノタウロス』と言う名を聞いた2人だったが、
イリアとセルンはそれが
『京都弁の女』である事は知らなかったのだ。
何故ならイザナミと会話をしていた時、
その会話は全て『念話』で行われていた為だった・・・。
「・・・ミノタウロスっ!?」
「・・・ま、魔物がどうして私達の事をっ!?」
戸惑う2人が困惑していると、
その鬼はニヤりと不気味な笑みを浮かべた・・・。
「まぁ、いい・・・。
俺の仕事はお前達・・・いや・・・。
イザナミとか言う上位神をただ殺すだけだからな。
それを邪魔する者ならば・・・例え女であっても・・・殺す」
そう言った途端・・・。
『バシュっ!』と鬼の身体から『鬼の気』が放出されたのだが、
その『鬼の気』は、今までにないモノだった・・・。
『きゃあっ!』
『クっ!』
突然放出された『鬼の気』の風圧の重さに、
2人はそう声を挙げたのだった・・・。
「き、聞いていた話だと・・・。
鬼の・・・鬼の気は『赤銅色』だと・・・
そ、それに・・・ユウ・・・」
そう呻くように声を挙げたイリアの言葉が終わらない内に、
今度はセルンが『でもこれはっ!?』と声を挙げた。
「ほぅほぅ・・・お前達?
鬼を・・・知っているような口ぶりだな?
すると何か?
お前達は鬼の強さの源が何かも知っていそうだな?」
『ギロリ』と今度はイリアを睨みつけながらそう言うと。
イリアはその威圧に負けじと言い返した・・・。
「えぇっ!勿論知っているわよっ!
あんた達鬼の強さは頭部に生える角の数で決まっているってっ!」
「ほう~・・・一応わかっているようだが・・・
それだけか?」
「・・・えっ?」
「鬼の強さは角の数で決まる・・・。
それだけか・・・と、俺はお前に聞いているのだ」
「そ、それだけ・・・って?
ほ、他にも・・・何か?」
鬼の強さについてそう聞かれたイリアだったが、
その鬼の声にその綺麗な青い目が泳いだのだった・・・。
「そうか・・・それ以外の事は知らぬようだな?」
「・・・他に何がっ!?」
思わずそう聞き返したイリアに、
鬼は突然高らかに笑い声を挙げこう言った・・・。
「愚かで下等な生物共め・・・」
そう言った時・・・。
その鬼はふと何かを考えていたようだったが、
すぐに笑みを浮かべると口を開いたのだった・・・。
「何だか面白そうな事になっているようだな?」
『?』
「フフフフっ・・・。
そうか、そうか・・・お前達はもしかして・・・?」
『?』
「あの女・・・色々と嗅ぎ回っているみたいだな?
面白い・・・これは面白くなってきたな・・・ククククっ」
突然ブツブツと言い始めた鬼が突然『パチン』と指を弾くと、
この『ボス部屋』の空間に結界が張られた。
「これで覗かれる心配はあるまい・・・。
クックックックッ・・・」
「なっ、何がそんなに面白いのよっ!?」
「・・・鬼っ!私達を舐めるんじゃないわよっ!」
『ボっ!』と同時に2人の身体から、
それぞれの色の炎が猛った・・・。
その姿に『ほう~、これはまた・・・』と、
鬼は興味深そうに見つめこう言った・・・。
「中々これは悪くないな・・・?」
その言葉に2人の顔がより険しくなると、
鬼は笑みを浮かべこう言った・・・。
「・・・なるほどな、だいたいわかった。
お前達は多少ではあるが『魂の灯』を使えるようだな?」
『っ!?』
「だが・・・。
それはまだ本当の『魂の灯』の入り口に過ぎん」
「・・・い、入り口っ!?」
『あぁ・・・』と、そう言った鬼はイリアに顏を向けると、
突然凝視し始め笑みを浮かべた後・・・こう言った。
「あと・・・二段階は上がるようだが、
お前のタイプは『防御系や回復系特化』のようだが、
鍛え方によっては、攻撃も・・・ふむ、中々悪くないな」
「・・・えっ!?
ぼ、防御系・・・?回復系っ!?」
そう声を挙げたイリアに構う事なく、
今度はセルンに向き直り再び凝視した・・・。
(こ、この鬼・・・まさか『鑑定』をっ!?)
一瞬鬼の眼が光った事を見逃がさなかったセルンが、
そう判断すると鬼はそれに気付き口角を上げた・・・。
「お前は中々鋭いな?
戦場でも渡り歩いた口か?」
「っ!?」
「そうか、そうか・・・なるほどな。
お前は頭がいい様だ・・・。
それに・・・その『黒い炎』・・・。
まさに攻撃に特化しているようだが・・・
あの『青い炎』の女と同じように、
まだ2段階・・・いやそれ以上・・・伸びしろがあるようだな?
ほほう、こいつは面白い。
攻撃に全振りとはな~?クックックッ・・・。
でもまぁ~・・・。
俺からの忠告としては、防御系や回復系も学ぶとよいぞ?
お前の役にきっと役立つはずだ・・・」
『・・・・・』
突然鬼がそう助言をし始めた事に、
イリアもセルンも言葉を失い茫然としていた・・・。
すると我に返ったセルンが声を挙げた。
「・・・私達にそんな事を教えて一体何が目的なのよっ!?
お前が企んでいる事を・・・話しなさいっ!」
「フっ・・・企みだと?
さっきも言ったが俺はただ・・・依頼されて仕事に来たまでだ。
だがな・・・?
その仕事の依頼は先延ばしにするとしよう・・・」
「・・・さ、先延ばしっ!?」
「あぁ、このまま俺が仕事の依頼を実行してしまったら、
あいつが喜ぶだけだと思ってな?」
「あいつって・・・
まさかそれは『ミノタウロス』とか言うヤツのっ!?」
そう険しい顔がより一層キツくなると、
その鬼の口角が上がった・・・。
「・・・いや、あの女ではない。
その背後に居る・・・ヤツだ・・・。
そしてソイツは・・・俺が追っているヤツでもあるしな?
おっと・・・。今のは忘れてくれ♪
まぁ、兎に角・・・。
俺が仕事を遅らせる事が出来れば、
アイツはどう・・・動くか楽しみだな~♪
クックックッ、アスラのヤツ・・・」
『アスラっ!?』
イリアとセルンが同時にそう声を挙げると、
その鬼は踵を返し2人に背中を見せた・・・。
「・・・鬼っ!?一体何をっ!?」
そう言ったイリアに鬼は振り向かずこう言った・・・。
「さっきも言った通り・・・。
イザナミとか言う上位神の始末は先延ばしにする」
「・・・どうしてっ!?」
「・・・俺にも色々と思う事があってな?
ただ利用されるのは・・・好きではないのでな?
それに・・・だ。
色々と繋がったモノでな?
クックックッ・・・愉快、愉快♪」
そう言うと鬼は空間に手をかざすと、
渦を巻きながら『黒い穴』が開いた・・・。
そしてその『黒い穴のへり』に手を掛けた時、
その鬼はこう言った・・・。
「俺の名は『羅樹羅』とでも名乗っておこう・・・。
因みにだが・・・俺の角は4本ではない」
『えっ?』
『羅樹羅』と名乗ったその鬼が振り返って見せると、
その鬼の眼が金色に染まり瞳が縦に割れ光った・・・。
その眩しさに顏を背けた2人が目を開けると、
その鬼の頭部の額からは・・・『1本の角』が見て取れ、
『羅樹羅』と名乗った男から自然と漏れ出す力の強さに、
その場に居た者達は息苦しさを感じた・・・。
「・・・い、1本・・・角っ!?」
「・・・う、嘘?」
あからさまに動揺した2人に、
『羅樹羅』と名乗った鬼は最後にこう言った・・・。
「お前達・・・神野悠斗とか言う小僧に宜しくな?」
『っ!?』
『悠斗』の名を聞いたイリアとセルンに、
笑みを浮かべた『羅樹羅』はその『黒い穴』に消えたのだった・・・。
「ど、どうして・・・ユウトの名がっ!?」
「あ、あいつ・・・一体何者なのよ?」
『羅樹羅』が消えた辺りを見つめる2人の背後では、
『モゾっ』と何かが動き始めたが、
イリアとセルンはその気配に気づかなかったのだった・・・。
ってな事で・・・。
今回のお話はいかがだったでしょうか?
ふむ・・・。
新たな鬼が登場で、ヤツが依頼した事・・・。
今後の展開を楽しみにしていただけたらと思います。
ってなことで、緋色火花でした。




