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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第三章・冥界編
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244話・余興と赤い瞳

お疲れ様です。


またキーボードが・・・orz

と、項垂れている緋色で御座います。


さて、今回のお話ですが・・・。

正直言って・・・『コメディ回』となっております。


最近コメディ回多いな~とは思っておりますが、

あの『女子ーず』を書いているとついつい・・・w


でもまぁ~、あちらの話では絶賛シリアス中となっているので、

・・・ある意味バランスが取れているのかな?と、思っております。


そして今回は後に・・・繋がるキャラ達が出て来ます。


一応予定としましては・・・。

この『冥界編』の後に続く『冥界・動乱編』に出て来るキャラです。


ここでネタバレってほどでもないので、

お話ししておいてもいいかと・・・。



それでは、244話をお楽しみ下さい。

この冥界のダンジョンに侵入してから、

一度も戦う事もしなかったイザナミだが、

ダチのジェミーを救う為、自ら参戦を決意したのだった・・・。


イザナミの声に呆気に取られていたイリア達だったが、

黒紅の『助けましょうっ!』と言う声に、

各々が頷き合い戦闘モードヘと移行した・・・。


「私達もお手伝いしますっ!」


そんなイリアの声にイザナミは『あざまる~♪』っと、

いつもの口調で笑顔を向けたが、

その目は決して笑ってなどいなかった・・・。


そんな迫力を感じたセルンが、

イザナミへと・・・いや、皆に対し『念話』を送った。


{・・・イザナミ様のお友達を助ける・・・。

 それに異存は御座いません。

 ですがあのジェミーと名乗った女王蜂を、

 一体どうやって助けるのでしょうか?

 何か手があるのなら・・・私達にお聞かせ下さい}


奇声を数回挙げたきり、

ジェミーは滞空したまま項垂れ、その動きを止めていた。


そんな状況を考えながらもイザナミは、

とてもシンプルな事を口にしたのだった・・・。


{作戦って言うのもおこがましい・・・ってか、

 あいつがあの『京都弁の女』に何をされたのかもわからんし、

 って事は~・・・つまり単純明快っ!

 あいつを『ボコっ』て目を覚まさせるしかないっしょ?}


『えっ!?』


自らの眼前に、力強く握らせた拳を見せると、

有り得ない程引き攣らせた笑顔をし見せていた・・・。


「アタシのダチにあの『クソ女』は手を出した・・・。

 出会ったらただじゃおかねーし、

 何があっても必ず報いを受けさせっし・・・」


そう言いながらイザナミの身体からは、

ゆらゆらと神力を立ち昇らせていた。


そしてその視線を動きを止めるジェミーに向けると、

皆に対し『念話』を送った・・・。


{・・・ちょいみんなに頼みがあるんだけど、

 聞いてもらっちゃっていい?}


『・・・頼み?』


{うぃうぃ、アタシはダチの面倒を見るんで、

 あんた達はその部下・・・。

 蜂達の面倒を見てもらいたいんだけど?}


{・・・げっ!}


イザナミの言葉にイリアは無数に滞空する蜂達を見ると、

『サァァァっ』と血の気が引いていった・・・。


{・・・ちょ、ちょっとイリア?

 貴女・・・大丈夫なの?}


そう心配し声を掛けて来るセルンに、

イリアは顏を引き攣らせ『だ、大丈夫・・・よ、あはは』と、

全然大丈夫そうじゃない返答をした時、

イリアは冷静な声を挙げた・・・。


{・・・ねぇ、セルン?}


{ん?}


{あ、貴女・・・大丈夫なの?}


イリアの質問にセルンが首を傾げると、

つづけて質問してきた・・・。


{・・・えっと、あれだけの蜂よ?}


{・・・そう・・・ね?}


{・・・・・}


セルンの反応に言葉を詰まらせたイリアの意図に察すると、

話をこう続けた・・・。


{だって、ほら・・・私が得意な魔法って、

 闇魔法だし、それに私って『虫』・・・嫌いじゃないしね♪}


{・・・そ、そう}


表情を崩す事無くそう言ったセルンに、

イリアは諦め腹をくくると、

イザナミに向き直り、2人は大きく頷い見せた・・・。


{・・・大丈夫そ?}


『はいっ!』


その返事に『ニカっ!』と満面の笑みを浮かべたイザナミは、

不敵な笑みを浮かべながら大きな声を挙げた。


「うっしゃぁぁぁっ!

 盛り上がってきたじゃ~ん♪

 私の初陣にぴっっったりっ!って事っしょ~?

 ってな事で~♪

 それじゃ~元気よく暴れるとしましょうかぁぁぁっ!」


「は、はい・・・た、多分ですが・・・」


『あははは』


1人を除いて元気よく返答すると、

その声の力強さに、

滞空する無数の蜂達が『ビクっ』と体を震わせていた。


そして沈黙するジェミーの身体もまた、

その声に反応するかのように指先が『ピクリ』と動いたのだった。


「みんなーっ!無茶したら許さんしっ!

 おーけーっ!?」


『おーけーっ!』


イザナミの声にイリア達は剣に手をかけ、

重心を落とし戦闘態勢を取った。



イザナミは『ニヤり』と笑みを見せ、

ジェミーに対し仁王立ちの姿勢を見せながら、

大きく両手を大きく突き上げ声を挙げたのだった・・・。


「・・・ってな事で~♪

 女子ぃ~ず・・・れでぃ~・・・ごぉぉぉっ!」


『・・・・・』


そう威勢よく声を挙げたイザナミだったが、

なんの反応も示さないイリア達に戸惑い振り返った。


「えっ?・・・あれっ?・・・なになになにっ!?

 み、みんな・・・どったのっ!?」


色濃く戸惑うイザナミに、

まずイリアが申し訳なさそうに口を開いた。


「い、いや~、あの~・・・ですね?」


そう話し始めたイリアの言葉を遮るように、

イザナミは慌てて滞空する蜂達に焦り顔を見せ、

大きく両手を挙げながらアピールし始めた・・・。


「ちょっ、ちょいタイムっ!ターイムっ!

 い、今の無しっ!無しだからっ!

 ノーカンっ!ノーカンだからぁーっ!

 は、蜂達・・・ちょ、ちょいお前ら落ち着けしっ!

 すてーいっ!すていだかんね~?」


大きく上げた両腕をクロスさせながら、

蜂達に向かってそうアピールすると、

イザナミは慌ててイリア達に駆け寄り円を作るように座らせた。

そしてその説明を求めたのだった・・・。


「いやいやいやいやいやっ!?

 なになになにっ!?

 い、一体どう言う事~?説明しろしっ!

 今、いい感じでイケてたじゃんねっ!?」


双眼を大きく見開きながらそう言ったイザナミに、

イリアは困り顔を見せながら口を開いた。


「いぇ、あの~、その~・・・ですね?

 確かに私達はイザナミ様に、蜂達の相手をしろと言われましたが、

 でも~・・・ですね?

 その蜂達をどう相手すればいいのかと・・・」


「・・・へっ?

 どう相手にすればいいって・・・それくらいわかんでしょうよ?

 ぶち殺す以外に何があんのさ?」


「・・・こ、殺しちゃっていいんですかっ!?」


「ちょいちょいちょい・・・待って、待って・・・。

 ん?あれ?おいおいおい・・・

 な、なんでチミはそんな所で驚く意味がわからんし・・・。

 ってか・・・殺す以外の他に何があんのさ?」


「いや、だって・・・女王蜂は助けるのに、

 その仲間達は殺してもいいのかな~?って・・・。

 それは倫理的にどうなのかな~って・・・。」


「・・・真面目かっ!?

 ってか、イリアっちから倫理ってっ!?

 いつからあんたは博愛主義になったのさっ!?

 ってかさ・・・これだけの蜂達が居るでしょうよ?

 この数を『不殺し(ころさず)』なんて出来る訳ないっしょっ!?

 あいつらにいっっっぱい刺されると痛いよ?

 わかってる?わかってるよね?

 ってか、あんたは『聖母』かっ!?

 いや、『闘牛の聖母』かっ!?」


「・・・と、闘牛の聖・・・母?

 いやぁぁぁっ!また闘牛って言ったぁぁぁっ!?

 イザナミ様ひどーいっ!」


「・・・酷くねーし。

 むしろ優しいくらいだっつーのっ!

 ってか、今はそんな事どうでもいいし・・・」


そう言って気だるそうな表情を見せた時、

今度はセルンが控えめに小さく挙手をしながら口を開いてきた・・・。


「あっ、ちょっと質問があるのですが?」


「・・・あ、あんたって、意外とマイペースよね?

 で・・・何?その質問って?」


「はい、この無数の蜂達を殲滅する事に異存はないのですが、

 でも、あの~・・・ですね?」


そう話し始めたセルンに『ちょい待った』と声を掛けると、

後方で滞空する蜂達に再び声をかけた・・・。


「す、すみませ~んっ!

 あの~、もう少し・・・かかりそうなんで~

 ちょっと休憩しててもらっていいっスかね~?

 いや、そのほら~・・・。

 一瞬・・・まじで一瞬なので・・・。

 す・ぐ・にっ!終わるんで~」


『・・・・・』


『ブブゥーン』と『羽音』を響かせていた蜂達だったが、

イザナミの言葉の意味を理解したのか、

幾分かその『羽音』が小さなくなったように思えた・・・。


(うっしっ!さっすがは昆虫~♪

 あのバカの部下だけあるわ~♪

 チョレ~♪まじチョレ~♪

 ってか、そんなことはどうでもいいし・・・)


そして再びしゃがみ込みながらセルンを見ると、

顔を少しヒクヒクさせながら口を開いた。


「ってかさ・・・さっさと言えし・・・」


「えっと・・・あっ、はい。

 コホン、では失礼ながら・・・。

 私の質問はごく簡単な事です。

 イザナミ様のご友人を解放した後・・・」


そう言いながら言葉を切ったセルンは、

その視線を無数の蜂達が居る、更に後方を見ながら口を開いた。


「・・・あの途轍もない大きさの蜂の巣はどうするのですか?」


「・・・ん?蜂の・・・巣?」


セルンの視線を追うようにイザナミも視線を向けると、

小首を傾げながら逆に質問した。


「ん~・・・蜂の巣ね~?

 ってか、セルぴょん?

 蜂の巣にえらくこだわっているっぽいけど、

 アレがどったの?」


「い、いえ・・・単純にどうするのかな~って・・・」


「ん~・・・まぁ~、どのみちこの場を乗り切ったら、

 当然この場を離れる訳だから、別にど~でもよくね?」


真顔でそう言ったイザナミにセルンは顔色を変え、

激しく項垂れて見せたのだった・・・。


「えっ!?セ、セルぴょんっ!?

 おいおいおい・・・どした?どした?」


項垂れるセルンの肩を思わず掴み、

心配そうに声をかけたイザナミはその理由を聞いた。


「い、いえ・・・だ、大丈夫・・・です」


「なになになにっ!?

 その言い方って尋常じゃない感じじゃんっ!?

 あの蜂の巣に一体何があんのさ?

 まさか、エルフの言い伝えとかで、

 『秘宝的』なモノが隠されているとかっ!?」


イザナミのその言葉に『ハっ!』と顔を上げたセルンは、

掴みかかりそうな勢いで迫った。


「えっ!?あの蜂の巣に『秘宝』なんてモノがあるのですかっ!?」


「えっ、いや・・・知らんけど・・・。

 ってか、近い・・・近いしっ!

 いや~、あんさ~あ?

 あんたの雰囲気的にそれっぽいモノがあるのかな~って?

 でも、そう言うのが無いのなら・・・ってか、無いだろうけど、

 じゃ~あんたがそんな真剣に言う理由って何なのさ?」


そう尋ねたイザナミに答えるべく、

セルンが顏を上げると、その目には薄っすらと・・・。

涙が滲んでいたのだった・・・。


「セ、セルぴょんっ!?

 なっ、泣いてんのっ!?嘘でしょっ!?」


余程の事情があると悟ったイザナミは、

優しくセルンの肩に手を乗せると『話してみそ?』と尋ねた・・・。


そしてセルンは『ぐすん』と涙ぐみながら、

その理由を話したのだった・・・。


「わ、私・・・は・・・」


「うんうん」


「私は蜂蜜が大好きなのです・・・」


「・・・そっか~♪蜂蜜がね~・・・って・・・。

 ・・・はぁ?・・・ん?

 ちょ、ちょっと何言ってんのかわからんし・・・」


イザナミの顔を真剣に見つめ、

力強く握り拳をして見せたセルンの発言に、

皆の時が・・・止まった・・・。


みんなの反応に一瞬眉間に皺を寄せたセルンは、

再び声を挙げた・・・。

ちょっと声も大きめに・・・。


「私は蜂蜜をこよなく愛しておりますっ!」


「ハチ・・・ミツを・・・こよなく?」


「はいっ!」


「ん~、えっと~・・・何だろ?

 この子達って~・・・かなりズレてる痛い子なのかな~?

 んと~・・・な、なぁ~・・・セルンさんや?」


「はいっ!」


そう力強く返答したセルンに、

イザナミは『にこり』と優しく微笑んで見せると、

セルンの顔が『パァァ~』っと華やいだ。


そして次の瞬間・・・。


「どうでもいいしぃぃぃぃぃっ!」


と、イザナミの怒号が響いた・・・。


「・・・えっ!?」


「いやいやいやいやっ!お、おい・・・お前・・・

 そこのちょいといかしたショートボブのエルフさんやっ?」


「・・・ちょいと・・・?は、はいっ!」


「今、そう言う話ししてなかったよね~?

 あんた・・・わかってる?

 今、アタシ達は、この無数の蜂達を前に、

 決死の覚悟で殺り合うところっしょっ!?

 そんな状況でどうして蜂蜜の心配っ!?

 イミフなんですけど~?」


顔を真っ赤にしてそう怒鳴り散らすイザナミに、

セルンは真顔で『ですが・・・』と言葉を続けた。


「ですがイザナミ様っ!

 蜂蜜はとても甘く美味しいモノなのですっ!」


「うふ♪そんな真顔で応えるなんて~・・・って、

 知っとるわぁぁぁぁっ!

 ばっっっかじゃねーのっ!?

 しかもいい顏してほざきやがってぇぇぇっ!

 どんだけ蜂蜜が好きなんよっ!?

 さっきも言ったけどどうでもいいわぁぁぁぁっ!」


『ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ』と息を荒げそう怒鳴ったイザナミに、

セルンはあからさましょげて見せたのだった・・・。


「ったく・・・うちの子達はどうしてこうも・・・

 あっ、め、眩暈が・・・。

 だ、誰か・・・『命の母』を買って来て・・・」


『・・・命の・・・母?』


「い、いや・・・何でねーし・・・。

 ちょい言ってみただけだし・・・全然大丈夫だし・・・」


そう愚痴を言い始めると、

黒紅が『あの~』っと空気も読まず話しかけて来た・・・。

 そんな黒紅にイザナミは苦笑いを浮かべながら溜息を吐いた。


「ってか・・・さっすが悠斗の門だわ~。

 主に似てぜんっっっぜんっ!空気読まねーのな~?

 もうこれは草越えて笹だわ~♪」


そう皮肉を込めて言ったつもりだったが、

黒紅は華麗にスルーし、空気を読まず話し始めたのだった・・・。


{・・・私も質問があるのですが?

 宜しい・・・でしようか?}


「うわ~・・・何だろこの子?

 アタシの事スルーした癖に、自己主張してきたんですけど~?

 まじウケんですけど~?」


{・・・それでですね、イザナミ様?}


「聞いてねーし・・・。

 ってか、とりま別にいいんだけどさ・・・。

 で?この空気を読まず声を掛けたその質問って何さ?」


頭を押さえながら黒紅の質問を聞く事になったイザナミは、

少しだけ『もう帰ろうかな?』と思っていた。


{有難う御座います。

 そして質問なのですが・・・}


「・・・どぞ」


{イザナミ様が先程おっしゃった、

『じょしーず』となるものは一体何の事なのでしょうか?}


「えっ!?・・・そ、そこっ!?

 そこがそんなに気になるのっ!?」


{はい、それが一体何か知りたく思いまして・・・}


イザナミは軽く眩暈を覚えると、

黒紅のその無機質な身体に項垂れたのだった・・・。


そして『はぁぁぁぁぁぁぁ』っと、

とても深く溜息を吐いたイザナミは、その説明をすると、

『あぁ~なるほど~♪』っと、とても良い返事が返って来た。


「あぁ~・・・もういいし・・・ただただ疲れただけだし・・・。

 特に悠斗の門に絡んでも、アタシが惨めなだけだし・・・。

 こいつらに『おつむツンツルテン』な連中に、

 構ってたらキリねーし・・・」


そんな呟きがイザナミの口からこぼれると、

脱力感を感じながらも律儀に待機する蜂達に手を挙げた。


「・・・ってな事で、ごめん、お前達、お待たせ。

 もうどーーーでもよくなったからさ~・・・

 さっさと殺り合っちゃおうぜ」


とても気だるそうに言ったイザナミに、

蜂達はむしろ困惑しているようだった・・・。


そして軽く『ふぅ~』っと息を吐き、

呼吸を整えると、振り返らずみんなに指示を出した。


「イリアっち・・・敵はみんなぶち殺せ・・・OK?」


「は、はいっ!」


「そしてセルぴょん・・・。

 ハチミツはあんたの好きにしていいから、

 しっかりと戦えし・・・」


「了解ですっ♪」


「あぁ~・・・めっちゃいい返事に、

 アタシの心は晴れやかだわ~・・・

 そして最後に黒紅たん・・・。

 ・・・もう何でもいいから好きにして・・・」


{・・・私だけ雑っ!?}


「ってな事で・・・無駄過ぎた余興はこのくらいでっと・・・」


指示を出し終えたイザナミは、

眼前に居るダチのジェミーの事だけを考える事にした。


(必ずあんたを助けっからっ!待ってろしっ!)


そう考えるとイザナミの目付きは変わり、

その身から神力を溢れさせたのだった・・・。



~ 冥界のとある大きな屋敷の一室 ~


大きな暖炉があるその部屋の中では、

白過ぎる肌をした女性が、ワイングラスを手にし、

クルクルと中の赤ワインを回していた・・・。


暖炉の火が『パチパチ』と音を立て、

その暖炉の火の灯りだけがその女性をオレンジ色に染めていた。


『コンコン』


「・・・入りなさい」


『ギィィィ』っと扉を開けて中へと入って来たのは、

初老の少し腰の曲がった執事だった・・・。


その女性は振り返る事もなく、

『それで、どう?』とそう冷たく尋ねた・・・。


「はい、イザナミ様率いる一行は、

 予想よりも早いペースでダンジョンを攻略中で、

 只今、50階層の『ボス部屋』にて、

 『女王蜂のジェミー』と対峙しておられるようです」


「へぇ~♪」


そう言いながら赤ワインをグっと飲み干したその女性は、

とても愉快そうに笑うと、言葉を続けた・・・。


「あの耄碌(もうろく)ババァ・・・。

 意外や意外・・・頑張ってんじゃ~ん♪

 足腰立たないかと思いきや、ふふふ・・・やるわね~?」


「・・・そうで御座いますな?

 私も(こと)の外、予想よりも早く中階層に到達し、

 私も驚きを隠せませんが・・・。

 まぁ~、ご健勝の様で・・・」


無表情でそう言った執事に、

その女性は『ニヤり』と笑みを浮かべた。


そしてサイドテーブルにワイングラスを置いたその女性が、

ゆっくりと立ち上がると振り向き、

妖しくも恐ろしい笑みを浮かべた・・・。


「まぁ~、多少は?

 日程がズレ込む事になりそうだけど、

 あのババァをぶち殺す事に何も変わりはないわ♪」


そう微笑む女性の目は冥界の神力を放出しながらとても赤く、

その白過ぎる肌と相まって、異様な雰囲気を纏っていた。


すると少し腰が曲がった初老の執事が尋ねてきた・・・。


「しかしながら、お嬢様?

 あの方との商談では、イザナミ様ではなく、

 『カミノ・ユウト』とか言う下賤なる人族の抹殺の依頼であって、

 別にイザナミ様に構う事は・・・」


そう尋ねて来た執事に、お嬢様と呼ばれた女性の瞳が、

異様なほどに赤く光ったのだった・・・。


「・・・私に指図を?」


「めっ、滅相も御座いませんっ!」


そう謝罪を口にしながら片膝を着いた執事に、

その女性は右手を真横に振った・・・。


『スパっ!』


「・・・えっ?」


『ボトっ』


『プシャァァァっ!』


一瞬の内にその執事の首を飛ばした女性の顔は、

怒りで崩れ、その美貌は見る影も失っていた・・・。


「・・・御戯れを」


「・・・お前が悪い」


「はっはっはっ・・・これは大変申し訳御座いませんでした」


首を落とされたはずの執事の頭部は、

いつの間にかその身体の両手の中に既にあった・・・。


『ニヤり』と笑みを浮かべながらその執事は、

己の頭部を元の位置に戻すと、

その切断面が『シュゥゥゥ』と煙りを立ち昇らせながら治まり、

何事もなかったかのように片膝を着き頭を垂れた。


「・・・無礼でしょ?」


「はっ、誠に申し訳御座い載せんでした。

 しかしながらお嬢様・・・。

 ご依頼を反故にされてはあの方も黙ってはいないのでは?

 それにあの方の醸し出す雰囲気は大変危険な匂いが致します故、

 くれぐれも判断をお間違えないように・・・」


そう執事に指摘されたその女性は、

窓辺へと近づくと、闇へと染まった外を見ながら、

『ギチっ!』と奥歯を食い縛り呟いた・・・。


『・・・マイノーター、厄介極まりない化け(おんな)だわ』


そう呟いた女性の瞳は再び妖しく赤く光ったのだった。




ってな事で・・・。

今回の『コメディ回』は如何だったでしょうか?


面白いと思って頂けたのなら嬉しくは思います。


そして最後に出て来た謎の人物達は、

前書きでお話しした通りです。


そして次回のお話では、いよいよ戦闘に入ります。


また、登録や感想など頂けたら・・・と思います。

ちょっとモチベ上げたいです。



ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱりマイノーターちゃんでしたね♥︎ この後の活躍(?)を楽しみにしています♪ 前半のコメディシーン、セルンの蜂蜜ネタと黒紅の全く空気読まない発言、イザナミの言い回しなど、私はこういうの…
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