244話・余興と赤い瞳
お疲れ様です。
またキーボードが・・・orz
と、項垂れている緋色で御座います。
さて、今回のお話ですが・・・。
正直言って・・・『コメディ回』となっております。
最近コメディ回多いな~とは思っておりますが、
あの『女子ーず』を書いているとついつい・・・w
でもまぁ~、あちらの話では絶賛シリアス中となっているので、
・・・ある意味バランスが取れているのかな?と、思っております。
そして今回は後に・・・繋がるキャラ達が出て来ます。
一応予定としましては・・・。
この『冥界編』の後に続く『冥界・動乱編』に出て来るキャラです。
ここでネタバレってほどでもないので、
お話ししておいてもいいかと・・・。
それでは、244話をお楽しみ下さい。
この冥界のダンジョンに侵入してから、
一度も戦う事もしなかったイザナミだが、
ダチのジェミーを救う為、自ら参戦を決意したのだった・・・。
イザナミの声に呆気に取られていたイリア達だったが、
黒紅の『助けましょうっ!』と言う声に、
各々が頷き合い戦闘モードヘと移行した・・・。
「私達もお手伝いしますっ!」
そんなイリアの声にイザナミは『あざまる~♪』っと、
いつもの口調で笑顔を向けたが、
その目は決して笑ってなどいなかった・・・。
そんな迫力を感じたセルンが、
イザナミへと・・・いや、皆に対し『念話』を送った。
{・・・イザナミ様のお友達を助ける・・・。
それに異存は御座いません。
ですがあのジェミーと名乗った女王蜂を、
一体どうやって助けるのでしょうか?
何か手があるのなら・・・私達にお聞かせ下さい}
奇声を数回挙げたきり、
ジェミーは滞空したまま項垂れ、その動きを止めていた。
そんな状況を考えながらもイザナミは、
とてもシンプルな事を口にしたのだった・・・。
{作戦って言うのもおこがましい・・・ってか、
あいつがあの『京都弁の女』に何をされたのかもわからんし、
って事は~・・・つまり単純明快っ!
あいつを『ボコっ』て目を覚まさせるしかないっしょ?}
『えっ!?』
自らの眼前に、力強く握らせた拳を見せると、
有り得ない程引き攣らせた笑顔をし見せていた・・・。
「アタシのダチにあの『クソ女』は手を出した・・・。
出会ったらただじゃおかねーし、
何があっても必ず報いを受けさせっし・・・」
そう言いながらイザナミの身体からは、
ゆらゆらと神力を立ち昇らせていた。
そしてその視線を動きを止めるジェミーに向けると、
皆に対し『念話』を送った・・・。
{・・・ちょいみんなに頼みがあるんだけど、
聞いてもらっちゃっていい?}
『・・・頼み?』
{うぃうぃ、アタシはダチの面倒を見るんで、
あんた達はその部下・・・。
蜂達の面倒を見てもらいたいんだけど?}
{・・・げっ!}
イザナミの言葉にイリアは無数に滞空する蜂達を見ると、
『サァァァっ』と血の気が引いていった・・・。
{・・・ちょ、ちょっとイリア?
貴女・・・大丈夫なの?}
そう心配し声を掛けて来るセルンに、
イリアは顏を引き攣らせ『だ、大丈夫・・・よ、あはは』と、
全然大丈夫そうじゃない返答をした時、
イリアは冷静な声を挙げた・・・。
{・・・ねぇ、セルン?}
{ん?}
{あ、貴女・・・大丈夫なの?}
イリアの質問にセルンが首を傾げると、
つづけて質問してきた・・・。
{・・・えっと、あれだけの蜂よ?}
{・・・そう・・・ね?}
{・・・・・}
セルンの反応に言葉を詰まらせたイリアの意図に察すると、
話をこう続けた・・・。
{だって、ほら・・・私が得意な魔法って、
闇魔法だし、それに私って『虫』・・・嫌いじゃないしね♪}
{・・・そ、そう}
表情を崩す事無くそう言ったセルンに、
イリアは諦め腹をくくると、
イザナミに向き直り、2人は大きく頷い見せた・・・。
{・・・大丈夫そ?}
『はいっ!』
その返事に『ニカっ!』と満面の笑みを浮かべたイザナミは、
不敵な笑みを浮かべながら大きな声を挙げた。
「うっしゃぁぁぁっ!
盛り上がってきたじゃ~ん♪
私の初陣にぴっっったりっ!って事っしょ~?
ってな事で~♪
それじゃ~元気よく暴れるとしましょうかぁぁぁっ!」
「は、はい・・・た、多分ですが・・・」
『あははは』
1人を除いて元気よく返答すると、
その声の力強さに、
滞空する無数の蜂達が『ビクっ』と体を震わせていた。
そして沈黙するジェミーの身体もまた、
その声に反応するかのように指先が『ピクリ』と動いたのだった。
「みんなーっ!無茶したら許さんしっ!
おーけーっ!?」
『おーけーっ!』
イザナミの声にイリア達は剣に手をかけ、
重心を落とし戦闘態勢を取った。
イザナミは『ニヤり』と笑みを見せ、
ジェミーに対し仁王立ちの姿勢を見せながら、
大きく両手を大きく突き上げ声を挙げたのだった・・・。
「・・・ってな事で~♪
女子ぃ~ず・・・れでぃ~・・・ごぉぉぉっ!」
『・・・・・』
そう威勢よく声を挙げたイザナミだったが、
なんの反応も示さないイリア達に戸惑い振り返った。
「えっ?・・・あれっ?・・・なになになにっ!?
み、みんな・・・どったのっ!?」
色濃く戸惑うイザナミに、
まずイリアが申し訳なさそうに口を開いた。
「い、いや~、あの~・・・ですね?」
そう話し始めたイリアの言葉を遮るように、
イザナミは慌てて滞空する蜂達に焦り顔を見せ、
大きく両手を挙げながらアピールし始めた・・・。
「ちょっ、ちょいタイムっ!ターイムっ!
い、今の無しっ!無しだからっ!
ノーカンっ!ノーカンだからぁーっ!
は、蜂達・・・ちょ、ちょいお前ら落ち着けしっ!
すてーいっ!すていだかんね~?」
大きく上げた両腕をクロスさせながら、
蜂達に向かってそうアピールすると、
イザナミは慌ててイリア達に駆け寄り円を作るように座らせた。
そしてその説明を求めたのだった・・・。
「いやいやいやいやいやっ!?
なになになにっ!?
い、一体どう言う事~?説明しろしっ!
今、いい感じでイケてたじゃんねっ!?」
双眼を大きく見開きながらそう言ったイザナミに、
イリアは困り顔を見せながら口を開いた。
「いぇ、あの~、その~・・・ですね?
確かに私達はイザナミ様に、蜂達の相手をしろと言われましたが、
でも~・・・ですね?
その蜂達をどう相手すればいいのかと・・・」
「・・・へっ?
どう相手にすればいいって・・・それくらいわかんでしょうよ?
ぶち殺す以外に何があんのさ?」
「・・・こ、殺しちゃっていいんですかっ!?」
「ちょいちょいちょい・・・待って、待って・・・。
ん?あれ?おいおいおい・・・
な、なんでチミはそんな所で驚く意味がわからんし・・・。
ってか・・・殺す以外の他に何があんのさ?」
「いや、だって・・・女王蜂は助けるのに、
その仲間達は殺してもいいのかな~?って・・・。
それは倫理的にどうなのかな~って・・・。」
「・・・真面目かっ!?
ってか、イリアっちから倫理ってっ!?
いつからあんたは博愛主義になったのさっ!?
ってかさ・・・これだけの蜂達が居るでしょうよ?
この数を『不殺し(ころさず)』なんて出来る訳ないっしょっ!?
あいつらにいっっっぱい刺されると痛いよ?
わかってる?わかってるよね?
ってか、あんたは『聖母』かっ!?
いや、『闘牛の聖母』かっ!?」
「・・・と、闘牛の聖・・・母?
いやぁぁぁっ!また闘牛って言ったぁぁぁっ!?
イザナミ様ひどーいっ!」
「・・・酷くねーし。
むしろ優しいくらいだっつーのっ!
ってか、今はそんな事どうでもいいし・・・」
そう言って気だるそうな表情を見せた時、
今度はセルンが控えめに小さく挙手をしながら口を開いてきた・・・。
「あっ、ちょっと質問があるのですが?」
「・・・あ、あんたって、意外とマイペースよね?
で・・・何?その質問って?」
「はい、この無数の蜂達を殲滅する事に異存はないのですが、
でも、あの~・・・ですね?」
そう話し始めたセルンに『ちょい待った』と声を掛けると、
後方で滞空する蜂達に再び声をかけた・・・。
「す、すみませ~んっ!
あの~、もう少し・・・かかりそうなんで~
ちょっと休憩しててもらっていいっスかね~?
いや、そのほら~・・・。
一瞬・・・まじで一瞬なので・・・。
す・ぐ・にっ!終わるんで~」
『・・・・・』
『ブブゥーン』と『羽音』を響かせていた蜂達だったが、
イザナミの言葉の意味を理解したのか、
幾分かその『羽音』が小さなくなったように思えた・・・。
(うっしっ!さっすがは昆虫~♪
あのバカの部下だけあるわ~♪
チョレ~♪まじチョレ~♪
ってか、そんなことはどうでもいいし・・・)
そして再びしゃがみ込みながらセルンを見ると、
顔を少しヒクヒクさせながら口を開いた。
「ってかさ・・・さっさと言えし・・・」
「えっと・・・あっ、はい。
コホン、では失礼ながら・・・。
私の質問はごく簡単な事です。
イザナミ様のご友人を解放した後・・・」
そう言いながら言葉を切ったセルンは、
その視線を無数の蜂達が居る、更に後方を見ながら口を開いた。
「・・・あの途轍もない大きさの蜂の巣はどうするのですか?」
「・・・ん?蜂の・・・巣?」
セルンの視線を追うようにイザナミも視線を向けると、
小首を傾げながら逆に質問した。
「ん~・・・蜂の巣ね~?
ってか、セルぴょん?
蜂の巣にえらくこだわっているっぽいけど、
アレがどったの?」
「い、いえ・・・単純にどうするのかな~って・・・」
「ん~・・・まぁ~、どのみちこの場を乗り切ったら、
当然この場を離れる訳だから、別にど~でもよくね?」
真顔でそう言ったイザナミにセルンは顔色を変え、
激しく項垂れて見せたのだった・・・。
「えっ!?セ、セルぴょんっ!?
おいおいおい・・・どした?どした?」
項垂れるセルンの肩を思わず掴み、
心配そうに声をかけたイザナミはその理由を聞いた。
「い、いえ・・・だ、大丈夫・・・です」
「なになになにっ!?
その言い方って尋常じゃない感じじゃんっ!?
あの蜂の巣に一体何があんのさ?
まさか、エルフの言い伝えとかで、
『秘宝的』なモノが隠されているとかっ!?」
イザナミのその言葉に『ハっ!』と顔を上げたセルンは、
掴みかかりそうな勢いで迫った。
「えっ!?あの蜂の巣に『秘宝』なんてモノがあるのですかっ!?」
「えっ、いや・・・知らんけど・・・。
ってか、近い・・・近いしっ!
いや~、あんさ~あ?
あんたの雰囲気的にそれっぽいモノがあるのかな~って?
でも、そう言うのが無いのなら・・・ってか、無いだろうけど、
じゃ~あんたがそんな真剣に言う理由って何なのさ?」
そう尋ねたイザナミに答えるべく、
セルンが顏を上げると、その目には薄っすらと・・・。
涙が滲んでいたのだった・・・。
「セ、セルぴょんっ!?
なっ、泣いてんのっ!?嘘でしょっ!?」
余程の事情があると悟ったイザナミは、
優しくセルンの肩に手を乗せると『話してみそ?』と尋ねた・・・。
そしてセルンは『ぐすん』と涙ぐみながら、
その理由を話したのだった・・・。
「わ、私・・・は・・・」
「うんうん」
「私は蜂蜜が大好きなのです・・・」
「・・・そっか~♪蜂蜜がね~・・・って・・・。
・・・はぁ?・・・ん?
ちょ、ちょっと何言ってんのかわからんし・・・」
イザナミの顔を真剣に見つめ、
力強く握り拳をして見せたセルンの発言に、
皆の時が・・・止まった・・・。
みんなの反応に一瞬眉間に皺を寄せたセルンは、
再び声を挙げた・・・。
ちょっと声も大きめに・・・。
「私は蜂蜜をこよなく愛しておりますっ!」
「ハチ・・・ミツを・・・こよなく?」
「はいっ!」
「ん~、えっと~・・・何だろ?
この子達って~・・・かなりズレてる痛い子なのかな~?
んと~・・・な、なぁ~・・・セルンさんや?」
「はいっ!」
そう力強く返答したセルンに、
イザナミは『にこり』と優しく微笑んで見せると、
セルンの顔が『パァァ~』っと華やいだ。
そして次の瞬間・・・。
「どうでもいいしぃぃぃぃぃっ!」
と、イザナミの怒号が響いた・・・。
「・・・えっ!?」
「いやいやいやいやっ!お、おい・・・お前・・・
そこのちょいといかしたショートボブのエルフさんやっ?」
「・・・ちょいと・・・?は、はいっ!」
「今、そう言う話ししてなかったよね~?
あんた・・・わかってる?
今、アタシ達は、この無数の蜂達を前に、
決死の覚悟で殺り合うところっしょっ!?
そんな状況でどうして蜂蜜の心配っ!?
イミフなんですけど~?」
顔を真っ赤にしてそう怒鳴り散らすイザナミに、
セルンは真顔で『ですが・・・』と言葉を続けた。
「ですがイザナミ様っ!
蜂蜜はとても甘く美味しいモノなのですっ!」
「うふ♪そんな真顔で応えるなんて~・・・って、
知っとるわぁぁぁぁっ!
ばっっっかじゃねーのっ!?
しかもいい顏してほざきやがってぇぇぇっ!
どんだけ蜂蜜が好きなんよっ!?
さっきも言ったけどどうでもいいわぁぁぁぁっ!」
『ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ』と息を荒げそう怒鳴ったイザナミに、
セルンはあからさましょげて見せたのだった・・・。
「ったく・・・うちの子達はどうしてこうも・・・
あっ、め、眩暈が・・・。
だ、誰か・・・『命の母』を買って来て・・・」
『・・・命の・・・母?』
「い、いや・・・何でねーし・・・。
ちょい言ってみただけだし・・・全然大丈夫だし・・・」
そう愚痴を言い始めると、
黒紅が『あの~』っと空気も読まず話しかけて来た・・・。
そんな黒紅にイザナミは苦笑いを浮かべながら溜息を吐いた。
「ってか・・・さっすが悠斗の門だわ~。
主に似てぜんっっっぜんっ!空気読まねーのな~?
もうこれは草越えて笹だわ~♪」
そう皮肉を込めて言ったつもりだったが、
黒紅は華麗にスルーし、空気を読まず話し始めたのだった・・・。
{・・・私も質問があるのですが?
宜しい・・・でしようか?}
「うわ~・・・何だろこの子?
アタシの事スルーした癖に、自己主張してきたんですけど~?
まじウケんですけど~?」
{・・・それでですね、イザナミ様?}
「聞いてねーし・・・。
ってか、とりま別にいいんだけどさ・・・。
で?この空気を読まず声を掛けたその質問って何さ?」
頭を押さえながら黒紅の質問を聞く事になったイザナミは、
少しだけ『もう帰ろうかな?』と思っていた。
{有難う御座います。
そして質問なのですが・・・}
「・・・どぞ」
{イザナミ様が先程おっしゃった、
『じょしーず』となるものは一体何の事なのでしょうか?}
「えっ!?・・・そ、そこっ!?
そこがそんなに気になるのっ!?」
{はい、それが一体何か知りたく思いまして・・・}
イザナミは軽く眩暈を覚えると、
黒紅のその無機質な身体に項垂れたのだった・・・。
そして『はぁぁぁぁぁぁぁ』っと、
とても深く溜息を吐いたイザナミは、その説明をすると、
『あぁ~なるほど~♪』っと、とても良い返事が返って来た。
「あぁ~・・・もういいし・・・ただただ疲れただけだし・・・。
特に悠斗の門に絡んでも、アタシが惨めなだけだし・・・。
こいつらに『おつむツンツルテン』な連中に、
構ってたらキリねーし・・・」
そんな呟きがイザナミの口からこぼれると、
脱力感を感じながらも律儀に待機する蜂達に手を挙げた。
「・・・ってな事で、ごめん、お前達、お待たせ。
もうどーーーでもよくなったからさ~・・・
さっさと殺り合っちゃおうぜ」
とても気だるそうに言ったイザナミに、
蜂達はむしろ困惑しているようだった・・・。
そして軽く『ふぅ~』っと息を吐き、
呼吸を整えると、振り返らずみんなに指示を出した。
「イリアっち・・・敵はみんなぶち殺せ・・・OK?」
「は、はいっ!」
「そしてセルぴょん・・・。
ハチミツはあんたの好きにしていいから、
しっかりと戦えし・・・」
「了解ですっ♪」
「あぁ~・・・めっちゃいい返事に、
アタシの心は晴れやかだわ~・・・
そして最後に黒紅たん・・・。
・・・もう何でもいいから好きにして・・・」
{・・・私だけ雑っ!?}
「ってな事で・・・無駄過ぎた余興はこのくらいでっと・・・」
指示を出し終えたイザナミは、
眼前に居るダチのジェミーの事だけを考える事にした。
(必ずあんたを助けっからっ!待ってろしっ!)
そう考えるとイザナミの目付きは変わり、
その身から神力を溢れさせたのだった・・・。
~ 冥界のとある大きな屋敷の一室 ~
大きな暖炉があるその部屋の中では、
白過ぎる肌をした女性が、ワイングラスを手にし、
クルクルと中の赤ワインを回していた・・・。
暖炉の火が『パチパチ』と音を立て、
その暖炉の火の灯りだけがその女性をオレンジ色に染めていた。
『コンコン』
「・・・入りなさい」
『ギィィィ』っと扉を開けて中へと入って来たのは、
初老の少し腰の曲がった執事だった・・・。
その女性は振り返る事もなく、
『それで、どう?』とそう冷たく尋ねた・・・。
「はい、イザナミ様率いる一行は、
予想よりも早いペースでダンジョンを攻略中で、
只今、50階層の『ボス部屋』にて、
『女王蜂のジェミー』と対峙しておられるようです」
「へぇ~♪」
そう言いながら赤ワインをグっと飲み干したその女性は、
とても愉快そうに笑うと、言葉を続けた・・・。
「あの耄碌ババァ・・・。
意外や意外・・・頑張ってんじゃ~ん♪
足腰立たないかと思いきや、ふふふ・・・やるわね~?」
「・・・そうで御座いますな?
私も殊の外、予想よりも早く中階層に到達し、
私も驚きを隠せませんが・・・。
まぁ~、ご健勝の様で・・・」
無表情でそう言った執事に、
その女性は『ニヤり』と笑みを浮かべた。
そしてサイドテーブルにワイングラスを置いたその女性が、
ゆっくりと立ち上がると振り向き、
妖しくも恐ろしい笑みを浮かべた・・・。
「まぁ~、多少は?
日程がズレ込む事になりそうだけど、
あのババァをぶち殺す事に何も変わりはないわ♪」
そう微笑む女性の目は冥界の神力を放出しながらとても赤く、
その白過ぎる肌と相まって、異様な雰囲気を纏っていた。
すると少し腰が曲がった初老の執事が尋ねてきた・・・。
「しかしながら、お嬢様?
あの方との商談では、イザナミ様ではなく、
『カミノ・ユウト』とか言う下賤なる人族の抹殺の依頼であって、
別にイザナミ様に構う事は・・・」
そう尋ねて来た執事に、お嬢様と呼ばれた女性の瞳が、
異様なほどに赤く光ったのだった・・・。
「・・・私に指図を?」
「めっ、滅相も御座いませんっ!」
そう謝罪を口にしながら片膝を着いた執事に、
その女性は右手を真横に振った・・・。
『スパっ!』
「・・・えっ?」
『ボトっ』
『プシャァァァっ!』
一瞬の内にその執事の首を飛ばした女性の顔は、
怒りで崩れ、その美貌は見る影も失っていた・・・。
「・・・御戯れを」
「・・・お前が悪い」
「はっはっはっ・・・これは大変申し訳御座いませんでした」
首を落とされたはずの執事の頭部は、
いつの間にかその身体の両手の中に既にあった・・・。
『ニヤり』と笑みを浮かべながらその執事は、
己の頭部を元の位置に戻すと、
その切断面が『シュゥゥゥ』と煙りを立ち昇らせながら治まり、
何事もなかったかのように片膝を着き頭を垂れた。
「・・・無礼でしょ?」
「はっ、誠に申し訳御座い載せんでした。
しかしながらお嬢様・・・。
ご依頼を反故にされてはあの方も黙ってはいないのでは?
それにあの方の醸し出す雰囲気は大変危険な匂いが致します故、
くれぐれも判断をお間違えないように・・・」
そう執事に指摘されたその女性は、
窓辺へと近づくと、闇へと染まった外を見ながら、
『ギチっ!』と奥歯を食い縛り呟いた・・・。
『・・・マイノーター、厄介極まりない化け物だわ』
そう呟いた女性の瞳は再び妖しく赤く光ったのだった。
ってな事で・・・。
今回の『コメディ回』は如何だったでしょうか?
面白いと思って頂けたのなら嬉しくは思います。
そして最後に出て来た謎の人物達は、
前書きでお話しした通りです。
そして次回のお話では、いよいよ戦闘に入ります。
また、登録や感想など頂けたら・・・と思います。
ちょっとモチベ上げたいです。
ってなことで、緋色火花でした。




