241話・目覚めとその代償
新年明けまして、おめでとう御座います。
2024年も宜しくお願いします。
新年迎えていきなり震災とは・・・><
皆様の武士を祈っております。
さて、今回のお話は前回の続きとなります。
そして画像の方ですが、
いつも通り今週中にはアップしますw
少なくとも夕方以降になるかと・・・。
何故ならまだ仕事中なのでw
盆も正月もないもので・・・><
納期って本当に恐ろしいですね・・・><
それでは、241話をお楽しみ下さい。
1人駆け出したセルンは3体の『ゴブリン・ナイト』へと向かい、
それを待ち受ける魔物達は意味有り気に笑みを見せていた・・・。
「グゲゲゲ・・・」
その様子をセルンの後方で見ていたイザナミの眉間に皺が寄った。
(・・・やはり何かあるわね?
それにアタシ自身、あいつらに対し疑問もあるしね)
『はぁぁぁぁっ!』と気合いの入った声を挙げながら、
セルンは魔物達に斬りかかるも、
その攻撃が『ゴブリン・ナイト』に当たる事はなかった・・・。
『クっ!どうしてっ!?』
そう呻くセルンを他所に『ゴブリン・ナイト』達は、
予想もしない動きを見せていた・・・。
セルンがレイピアを振り、敵に当たる瞬間、
他の魔物がその防御力が高い盾で受け一撃を与える事が出来なかった。
今のセルンの攻撃なら、
硬いと言っても『灯の力』でその盾を斬り裂ける・・・。
だか、魔物が割り込む事によって、攻撃の打点がずらされてしまい、
魔物の盾を斬り裂けなかったのだった。
「こ、こいつらっ!?」
「グゲゲゲゲ」
その様子を後方で見ていたイリアと黒紅は、
『あっ!?惜しいっ!』や『もう少しだったのにっ!』と、
呑気な声を挙げていたが、イザナミは違った・・・。
(・・・あーね。
おかしいと思ってたし・・・。
どうして全員で戦わなかったのかと思ったら、
ハハハ・・・そう言う事~?
あの3体・・・どうやら知能レベルはかなり高いみたいね~?
ってか、どこぞの誰かに『教育』を受けていた説あるっしょ?」
3体の『ゴブリン・ナイト』に対し、
そう評価し口元を微かに上げていたイザナミだったが、
その瞳は決して笑って等いなかったのだ。
(・・・セルぴょん。
そんなに焦って居たら、見えるモノも見えんし・・・)
「はぁぁぁぁっ!」
『シュっ!』
『ガキンっ!』
「ま、またっ!?こ、こいつら・・・」
苛立ちの表情を見せるセルンに溜息を1つ吐いたイザナミは、
悩んだ末に『念話』を飛ばした。
{セルぴょん・・・。
そのまま聞いて欲しいんだけど、
そいつらがさっきのヤツらと同じじゃない事はわかるっしょ?
ちょい冷静になれし・・・。
ここに来るまでで経験はもう十分に積んだっしょ?
なら、いい加減・・・その成果を見せて欲しいんですけど?}
(っ!?)
『念話』を聞いたセルンは我に返ると敵との距離を取り、
『ゴブリン・ナイト達』のフォーメーションに意識を向けながら、
セルンは再び攻撃を試みた・・・。
『はぁぁぁっ!』
『ブゥンっ!シュっ!ガキンっ!』
『グギャっ!』
『シュバっ!』
セルンは縦に剣を振り、
そのまま下から斜め左へと切り上げた瞬間、
敵の左後ろに居た敵が前に出てその攻撃を盾で防ぎ、
すかさず右後ろに居た1体が前へと飛び出し、
剣を弾かれたセルンに攻撃を仕掛けて来たのだった・・・。
(・・・な、なるほどね。
巧みな連携が取れているわね)
『シュタ』と後方に飛んだセルンは着地すると、
『フゥ~』と息を吐きながら呼吸を整え、
眼前で嫌な笑みを見せる『ゴブリン・ナイト達』に、
鋭い眼光を向けたのだった。
『「・・・やるじゃない?
そうでなくっちゃ、歯応えがないってものね」
(・・・私に欠けているモノ。
それは・・・『闘争心』
ここに来るまでの間、イリアを見て来たからわかる。
あの子には私にはない・・・『闘争心』がある。
少しの攻撃にも怯まない突進力。
何も考えず突き進んでいる訳じゃない・・・(多分)
イリアには心を突き動かす『情熱』があるから・・・)
「見せてあげるわっ!私なりの『情熱』ってヤツをっ!」』
セルンの胸の内の葛藤とそのセリフに、
後方で見ていたイザナミが苦々しい笑みをみせる中、
セルンは目を閉じ集中し始めた・・・。
(・・・ふーん。
なになになにっ!?バチクソ集中してんじゃん♪
ちょい・・・期待しちゃうし♪)
ほくそ笑み期待に胸を膨らませるイザナミを他所に、
セルンは双眼を見開くと同時に駆け出し声を挙げた。
『ブレイジング・アーマーっ!』
一瞬『ボっ!』とセルンの身体を『黒い炎』が包み込むと、
軽装備から通常の黒い装備へと戻しながら先頭の敵へと向かって飛び上がり、
マスクを閉じながら左手を先頭の敵へと向け魔法を使用した。
「闇魔法っ!グラビティー・プレスっ!」
『ブォンっ!』
『グギャっ!?』
一瞬にして1体の魔物が石畳の上に圧し潰されると、
着地したセルンは振り返り黒い炎をレイピアに纏わせながら、
横に振り抜き斬撃を飛ばした。
『黒い刃っ!』
黒い炎を纏った斬撃が2体の『ゴブリン・ナイト』に迫る。
魔物達は慌てながらもその強固な盾を前方に突き出すと、
『ブラックエッジ』がさく裂した途端、
『ボっ!』と黒く燃え上がり一瞬にして裂けた。
『グッギャァァァっ!?』
その激しい黒い炎の威力に、
慌てて盾を手放した魔物達は後方に飛び退き危機回避をした。
(今までの私なら追撃の為の魔法を使うところだけど、
でも今の私はっ!)
「逃がさないっ!」
同時に危機回避をした魔物達を見たセルンの心に、
『闘争心』と言う名の『火』が着いた。
そしてセルンのマスクの中の双眼が妖しく青く光った刹那、
その脳裏に以前に聞いた声が流れて来た。
{・・・汝に欠けていたモノ。
それは『闘争心』
今一歩踏み込めないで居た汝はソレを克服出来たのだ。
そして今一度・・・汝に問う。
『汝は更なる力を欲するか?』}
『・・・勿論っ!その力を私にっ!』
セルンの返答に声の主の口調が変わり、
まるで我が子にでも話すかのように慈愛に満ちた声となった。
{・・・其方の願い、叶えると致しましょう。
その力で其方が求めるモノを掴むがよい。
そしてその『言霊』は既に其方の中に・・・}
『コクリ』
戦いの最中、刹那の瞬間に交わされた言葉に、
セルンは頷きながらも駆け出した。
そして声を発する瞬間・・・。
再び声が脳裏に流れた。
{・・・力には必ず『代償』がある事を、
努々(ゆめゆめ)忘れるでないぞ?}
最後にそう告げると声は消え去り、
それと同時にセルンは1体の『ゴブリン・ナイト』の懐に入っていた。
「捕ったわ・・・」
そう静かな口調で呟いたセルンの声に反応した魔物だが、
既に時遅く・・・その恐怖に絶望していた。
「・・・目覚めなさい、我が力っ!
ウェイク・アップっ!」
『ボっ!!』
黒い炎が・・・。
いや、セルンの身体から放出されたのは、
ただの『黒い炎』ではなかった・・・。
その光景を後方で見ていた者達は、
セルンから放たれたその『黒い炎』に驚き言葉を失っていたが、
イザナミは『いいじゃんっ!いいじゃんっ!スゲーじゃんっ!』と、
その光景に興奮が抑えられずに居た。
「なになになになにっ!?
黒い炎の中に『紫の炎』が混ざってんですけどぉーっ!?
ちょいちょいちょいーっ!何よあれーっ!?
ベリーwktkなんですけどーっ!♪」
後方で歓喜するイザナミを他所に、
セルンの身体が放出された『黒紫の炎』が何かに変化するよりも早く、
黒く染まり『黒紫の炎』を纏ったレイピアが、
一瞬にして『ゴブリン・ナイト』を斬り捨てた・・・。
『ドサっ』
『グギャギャギャっ!?』
仲間が殺られたその光景に恐れを抱いた1体が、
じわりと後方へと下がった瞬間、
『黒紫の炎』が形を成し、セルンの身体に定着した。
『っ!?』
定着した鎧は普段装着している『紫色の鎧』ではあったものの、
それは色彩だけであって、形は全く別物だった・・・。
セルンは大きく変貌した己の鎧には目も暮れず、
『グラビティー・プレス』によって未だ・・・。
石畳に這いつくばる魔物を視界に捉えながら、
じわりと下がる魔物を見据えた。
そして退こうとする魔物にレイピアの切っ先を向けると、
セルンの眉間に皺が寄った・・・。
(・・・あれ?
レイピアの刀身は黒いままなのね?
・・・他に何か在るって・・・事?)
『力の目覚め』によって変化した鎧とは違い、
何の変化も見せない『黒い刀身の剣』にセルンは疑問を抱いた。
だが、今は戦闘中である・・・。
疑問を抱きつつも目の前の敵に集中したセルンは、
退こうとする敵ににじり出た・・・。
『グゲャっ!?』
セルンの迫力に恐れおののいた『ゴブリン・ナイト』は、
一目散に逃走を計ろうとしたが、
セルンはそれを許さず声を荒げながら駆け出した。
「逃がす訳ないでしょっ!」
そうセルンが吠えた時だった・・・。
セルンの咆哮に応えるかのように、
その身体の中が急激に熱くなるを感じ、
『クっ!』と呻き声を漏らしながらも進んだ足を止めなかった。
『ザザァァー』と逃走を計った『ゴブリン・ナイト』を追い越し、
石畳の上を滑りながら停止すると剣ではなく、
右の掌に『黒紫の炎』を出現させた・・・。
(頭の中に流れて来る・・・。
この『黒紫の炎』の使い方・・・。
そしてこの技の名は・・・)
一瞬の間に追い越された『ゴブリン・ナイト』が、
慌てて急停止を試みるが時既に遅く、
眼前でその右手の中に揺らめく『黒紫の炎』を持つセルンに、
絶望の色を浮かべた・・・。
「・・・遅い」
「グギャっ!?」
『ゴブリン・ナイト』が絶望の声を挙げた途端、
眼前に居たはずのセルンの姿は無く、
既にその身は懐に侵入していた・・・。
そして絶望する『ゴブリン・ナイト』はセルンの声を聞いた・・・。
『・・・黒死蝕』
『っ!?』
『トンっ』と・・・。
『ゴブリン・ナイト』の身体に軽く押し当てられた『黒紫の炎』は、
何の変化も見せず『ゴブリン・ナイト』の身体の中へと消えた。
そして次の瞬間・・・。
『グ・・・ギャ・・・』
『ゴブリン・ナイト』はこの時感じた・・・。
その身体の中が一瞬にして蝕まれ内臓が溶けていくのを・・・。
そう呻き声を漏らしながら石畳の上に倒れると、
『グズグズ』とその身体が解け始め、
僅か数秒で倒れた石畳の上から消え去った・・・。
倒れ消え失せた『ゴブリン・ナイト』を見る事もなく、
佇むセルンに後方に居る者達は茫然としていた。
「・・・す、凄い。
あ、あれが・・・セルンの・・・?
覚醒した・・・力・・・」
{・・・す、凄過ぎます。
か、覚醒しただけで・・・こ、こんな力が?}
イリアと黒紅が言葉を吐き出すように口からこぼすと、
イザナミが悔し気に口を開いた。
「・・・アレが元・我が子の力ってか?
まーじ・・・ウケんですけど?
ってか・・・えげつねー技だし・・・まじ引くし・・・」
そう言ったイザナミの言葉が聞こえていないのか、
その声にイリアも黒紅も反応を示さなかった。
一方セルンはただ茫然と己の両手を見つめていた・・・。
(・・・こ、これが私の力?
ハハハ・・・冗談でしょ?)
己の使用した力の威力に戸惑ってはいるものの、
確実に成長し強くなっている事を実感し興奮していた・・・。
そんな時だった・・・。
『グ・・・ゲ・・・』っと『ゴブリン・ナイト』の声が聞こえた。
その声に一瞬にして我に返ったセルンは、
未だ『重力』に捕らわれ石畳に這いつくばる残り1体を見た。
(・・・えっ!?まだ・・・魔法の効果が切れてない?)
驚くのも無理はなかった・・・。
セルンの体感時間ではとっくの昔にその効力は切れ、
ボロボロ状態であったとしても、
その魔法の効力から解放されているはずだったからだ。
(・・・いつもならとっくに)
石畳に這いつくばる『ゴブリン・ナイト』を見た後、
再び己の両手を凝視したセルンは素直に驚いていた。
(・・・この力は魔法の効果時間も?
そ、それに・・・威力までもが・・・)
その力に暫くの間驚いていると、
後方から苛立ったイザナミの怒号が聞こえた・・・。
「セルンっ!いつまでもボ~っとすんなしっ!
とっとと息の根止めろしっ!」
その怒号に後方に向き直ったセルンは、
『は、はいっ!すみませんっ!』と言いながら深々と頭を下げ謝罪した。
「あ、あのバカっ!そんな事する暇があったら、
さっさと殺れってのっ!」
『ギリギリ』と奥歯を噛み締め苛立ちを見せるイザナミに、
『ヤバい』と顔を引き攣らせたセルンは残りの魔物へと走れ出した。
石畳の上に這いつくばる『ゴブリン・ナイト』の下へと辿り着くと、
『シュインっ!』と黒い刀身の剣を抜き、一気にその首に突き刺した。
『・・・グゲっ』
最後の『ゴブリン・ナイト』の死を確認したセルンは、
剣を引き抜くと踵を返し、イザナミ達の元へと戻る為、
歩み始めた・・・。
ゆっくりとこちらへと向かってくるセルンを見ていたイリアは、
その視線を外す事無く、イザナミへと問いかけた・・・。
「イザナミ様・・・」
「・・・うい?」
「・・・私とセルンの『灯』は元々1つだったはずですよね?」
「うぃうぃ」
「それなのに・・・私の『灯』は・・・
一度も私に語り掛けて来た事がありません。
・・・どうしてなのでしょうか?」
「・・・あ~」
イリアの問いにイザナミはそう言ったきり、
次の言葉は出て来ず押し黙ってしまうと、
こちらに向かって来たセルンが到着してしまった・・・。
イリアはイザナミの答えを聞く事を諦めたのか、
すぐさまセルンに駆け寄り労いの言葉を投げかけた。
「セルンっ!御疲れ様っ!
凄かったわっ!」
黒紅も駆け寄りイリアと同じく労いの言葉をかけ、
セルンが『有難う♪』と満面の笑みを浮かべて見せていた・・・。
『ふぅ~・・・』っと・・・。
セルンが大きく息を吐きながらその装備を解いた時だった・・・。
突然セルンの身体に激痛が走り『ビクン』と身体が跳ねると、
『グっ、ガァァァァっ!』と呻き声を挙げながら苦しみ始めた。
「セ、セルンっ!?」
{セルンさんっ!?}
「っ!?」
イリアと黒紅が突然苦しみ始めたセルンに声をかけるも、
その顔には汗が流れ始め・・・。
立ったまま身体中の筋肉が激しく痙攣し動けないでいた。
「セ、セルンっ!?一体何がっ!?
イ、イザナミ様っ!?
セルンがっ!セルンがっ!」
{イザナミ様ーっ!セルンさんがぁぁぁぁっ!}
慌てふためくイリアと黒紅の声にイザナミもまた慌てた様子で、
立ったまま身体中の筋肉を痙攣させるセルンに駆け寄った。
「お、おいっ!セルンっ!?
い、一体何が起こってんのさっ!?
セ、セルンっ!?ア、アタシの声・・・聞こえてるのっ!?
お、おいっ!おいってばっ!?」
「グゥゥゥアァァァァァァァァァァっ!」
『セルンっ!?』
激痛に苦しむセルンが絶叫し意識を手放そうとした時だった・・・。
朦朧とするセルンの脳裏に先程言われた言葉を思い出した。
『力には必ず代償がある事を・・・』
(あぁ~・・・そっか。
もしかして・・・これが・・・その・・・代・・・償?)
一瞬『フっ』と笑ったセルンはそのまま意識を手放したのだった。
ってな事で・・・。
今回のお話は如何だったでしょうか?
2024年も頑張りたいと思うので、
応援のほど宜しくお願いします。
また・・・。
登録や感想など宜しくお願い致します。
ってなことで、緋色火花でした。




