237話・積年の怨み
お疲れ様ですっ!
寒暖差でヘバっている緋色で御座いますっ!
プロジェクトの1つが成功を収めたのですが、
喜ぶ余韻など味わう事無く次のプロジェクトがスタートしました><
はっはっはっ・・・やれやれorz
さて、今回のお話ですが・・・。
ズバリっ!『卑弥呼』が活躍しますっ!
てか、そんな話ですっ!(違)
それでは、237話をお楽しみ下さい。
1階のボス部屋で辛勝したセルンが倒れる中、
イザナミの部下である『白蛇』が現れイザナミに変わり治療を始めた。
白蛇の治療が続く中・・・。
突然姿を現した『花魁風の女性』。
それはイザナミの『友』でその名を『卑弥呼』だと告げられた。
「・・・イザナミ様のダチ・・・ですか?」
「はい♪」
そうにこやかに告げた白蛇は、
後ろで無意識のまま『のたうち回る』セルンを見つめた・・・。
「相当苦しんでおられるようですね?」
そう言いつつも白蛇の顏は微笑んでおり、
その様子を見守るしか出来ないイリアと黒紅は戸惑っていた。
「し、白蛇様?セルンは・・・だ、大丈夫なのでしょうか?」
焦りの色を浮かべるイリアに白蛇は『さぁ、どうでしょう?』と、
にこやかに答えると、イザナミと口論していた卑弥呼が声を挙げた。
「そいつの心配はいらねーよ?」
『えっ!?』と慌ててその声に振り向いたイリアと黒紅に、
卑弥呼は何事もないかのように答えた・・・。
「今、その女は『灯』の代償を払っているだけだからさ?
そいつが『タフ』な女なら・・・全然問題なしっ!」
「・・・代償・・・ですか?」
「おうっ!」
威勢のいい返答をした卑弥呼にイリアは唖然としていると、
白蛇が身体を痙攣させるセルンを見て呟いた・・・。
「あらあら、苦痛は彼女の魂にダイレクトに伝わっているので、
こうして肉体だけが波打つのを見ていると、
ほんの少し・・・引きますわね♪」
『・・・・・』
そうにこやかに呟く白蛇に、
イリア達ばかりかイザナミや卑弥呼までドン引きのようだった。
「あ、あんた・・・いい性格してるわね?」
「我が部下ながら流石に引くし・・・」
卑弥呼もイザナミも顔を引き攣らせ、
それを聞いた白蛇は『失礼ですわね?』と、
こんな状況でも笑みを浮かべて居た・・・。
それから30分程経った頃・・・。
激しく痙攣し波打つそのセルンの身体が、
突然その動きを止めた・・・。
「・・・し、白蛇様?」
不安げな表情を見せるイリアに、
白蛇は『終わったようですわね?』と微笑みながら言うと、
静かに横たわるセルンの身体に手をかざした・・・。
薄っすらと白く光る白蛇の手を見ていたイザナミが、
心配からなのか『大丈夫そ?』と口を開くと、
白蛇は『はい♪問題なく生きておられますよ』とそう答えた。
それから30分後・・・。
静かに双眼を開いたセルンは『・・・戻れたみたいね?』と、
抑揚のない声を挙げながら上半身を起こすと、
突然背後から『セルンーっ!』と大きな声を挙げながら、
『ドンっ!』と背後から強い衝撃に襲われた。
『ぐはっ!』と・・・。
その衝突に前屈状態になりながら呻き声を挙げたセルンに、
圧し掛かるイリアは大粒の涙を流しながら喜びの声を挙げた。
「セルーンっ!よがっだぁぁぁ・・・
ほ、ほんどによがったぁぁぁっ!」
前屈状態のセルンは、イリアの重さばかりではなく、
その『牛並み』と呼ばれる『双丘』がセルンの肺を圧迫した。
『ごほっ!ごほっ!』
その息苦しさからセルンは咄嗟に『殺されるっ!?』と、
脳裏にそんな予感が走ると怒声を挙げた・・・。
「ど、どきなさいよぉぉぉぉっ!」
すると次の瞬間・・・。
復活したセルンの身体から『ボッ!』と『黒い炎』が吹き上がると、
イリアの身体はセルンの『黒い炎』に包まれてしまった・・・。
{イリアさんっ!?}
『イリアっちっ!?』
黒紅とイザナミがそう叫ぶ中、
白蛇と卑弥呼の2人は平然とその様子を眺めていた・・・。
「ヒミぞうっ!?白蛇っ!?
あ、あんた達何とかしなさいよっ!」
そう慌てふためくイザナミを他所に、
卑弥呼は『別に心配する事ないでしょ?』と平然にそう言った。
『キっ!』とイザナミが卑弥呼を睨みつけるも、
そんな視線などスルーしていた卑弥呼は、
顎で黒く燃えているイリアへと示した・・・。
「っ!?」
指し示されるまま視線を向けたイザナミは唖然としていた・・・。
それはイザナミばかりではなく、
『黒い炎』を放ったセルン自身や黒紅までもが唖然としていたのだった。
するといつの間にかイザナミの隣に居た白蛇が口を開いた。
「よく見て下さいませ・・・イザナミ様?」
「・・・・・」
「あのダークエルフは燃えてはおりません♪」
険しい表情を見せたイザナミが『どうして?』と呟くと、
白蛇は『黒く燃える』イリアに笑みを浮かべながら答えた。
「よーくご覧下さいませ・・・。
あのダークエルフは燃えないように、
自らの『灯』で防御したのです♪」
白蛇がそう言うように、イリアの身体を『青い炎』が包み込み、
セルンの『黒い炎』からその身を守っていたのだった・・・。
「・・・嘘でしょ?
あ、あんな不意打ちで・・・?」
「ふふふ♪恐らく彼女自身も驚いているかと思われますが、
恐らく・・・オートで『灯』が守ったのだと推測できます♪」
一瞬、顔を『ヒク』つかせたイザナミは、
『ぶるーすぴりっとが・・・?』と呟いた。
卑弥呼と白蛇以外が固まる中・・・。
イリアは驚きながらも自らの周囲を見渡していた・・・。
「えっ!?わ、私・・・燃えて・・・ない?」
そう誰に言うでもなく呟くと、
我に返ったセルンがイリアの元へと滑るように座り込むと、
イリアを包む『黒い炎』の中に手を突っ込んだ・・・。
「イ、イリアっ!?だ、大丈夫なのっ!?」
「う、うん・・・だ、大丈夫みたい・・・」
「ご、ごめんっ!わ、私・・・」
「あはは・・・」
イリアが苦笑しつつも自らも『青い炎』の中に手を突っ込んだ時、
一瞬・・・『キュィィィィン』と、
この2人を除いて全ての者達がその『高周波』に耳を塞ぎ呻き声を挙げた。
時間にして4~5秒といったところだろう・・・。
その直後『黒と青の炎』は消失し、
火傷1つ負ってもいないイリアと対面した・・・。
するとイリアは『にこっ』と笑顔を唖然とするセルンに向けると、
楽し気にこう言った・・・。
「びっくりしちゃったね~?」
あっけらかんとそう言ったイリアに、
セルンは溜息を吐きながら項垂れてしまった・・・。
「セルン?」
「あ、あんたね~?
無事だったから良かったけど・・・
最悪あんたは私の『炎』で燃やし尽くされていたかもしれないのよ?」
俯いたセルンの表情はわからなかったが、
その細い肩が小刻みに揺れている事はわかった・・・。
「・・・ブルースピリットに助けられちゃった♪」
そう楽し気に答えるイリアに、セルンは再び溜息を吐くと、
「・・・ごめんね?」と謝罪を口にした・・・。
するとイリアは『ハっ』と何かを思い出すと、
謝罪するセルンに口を開いた。
「でも・・・熱くなかったよ?」
「・・・?」
「一応ブルースピリットが私を守ってはくれたけど、
セルンの『黒い炎』・・・。
全然熱さなんて感じなかったよ?」
そんなイリアの言葉にセルンもまた何かを思い出すと、
自らの手を見ながら『そう言えば・・・』と口にした。
セルンの言葉に微笑んだイリアは、
再び『青い炎』を出現させ何かを促すように視線を投げた。
その意図を察したセルンは、
おもむろにイリアの『青い炎』に手を伸ばし、
ゆっくりとソレに触れた・・・。
「あ、熱く・・・ない」
「でしょ?♪」
そう楽し気に言ったイリアに『どうして?』と尋ねるも、
『フルフル』と首を横に振るだけで理由はわからなかった・・・。
するとその様子をじっと見ていた卑弥呼が笑みを浮かべながら、
疑問に首を傾げる2人に声をかけたのだった・・・。
「別に不思議がる事はないだろ?」
『・・・えっ?』
「はっはっはっ!あんた達・・・鈍いんじゃないの?」
声を挙げて笑う卑弥呼に2人は更に首を傾げると、
『・・・まじか?』と顔を引き攣らせながら説明した。
「よく考えてみなよ?
あんた達の『魂』って元々1つでしょ?」
『・・・はい』
「そんな『魂』同士がお互いを傷つけ合うなんて事が、
ある訳ないでしょうが?」
『・・・・・』
卑弥呼の説明にイリアとセルンは互いに顔を見合わせると、
『そう言うモノ・・・なの?』とセルンがそう言った・・・。
「ん~・・・どう・・・なんだろ?
でも、こうしてお互いの『炎』に触れあっても、
身を焦がすような熱さは感じない・・・」
「そうね?
確かに熱くないって言うか・・・
心が休まる・・・そんな温もりは感じわね?」
そう言いながら微笑んだセルンに、
イリアもまた微笑んで返したのだった・・・。
そんな2人を『ふっ』と笑みを浮かべた卑弥呼が、
何気に視線をイザナミへと向けると、
1人『ぽかーん』と呆気に取られだらしない顔を向けていた・・・。
「はぁ?」
イザナミのその表情に卑弥呼は『まさかでしょ?』と呟き、
座り込むイザナミの視線に合わせるようにしゃがみ込むと、
ジト目でその顔を覗き込んだ・・・。
「・・・イザ子、あんたまさか・・・?」
「ほ、ほぇ?な、何が・・・?」
「あんたまさか・・・その事に気付いてなかったの?」
「・・・うっ」
卑弥呼の言葉が図星だったのか、
小さく呻き声を挙げながら顏を背けると、
卑弥呼は『あぁーん?』と低くドスの利いた声を挙げた・・。
「まさか・・・まさかだよな~?
イザ子さんよ~?」
「・・・な、何言ってんだかわからんし・・・」
「イーザー子ーっ!?」
「・・・・・」
問い詰める卑弥呼に顏を背けたまま、
いつまでもとぼけるイザナミに・・・キレた・・・。
顔を背けるイザナミの頭部を『ガシっ!』と頭頂部から掴むと、
強引に頭を自分へと向かせ始めた・・・。
『メキっ!グググググっ!』
途轍もないパワーで強引に顔を向けさせると卑弥呼に、
イザナミはその痛さから悲鳴に近い声を挙げた。
「痛っ!?イタイタイタイタイタイタイタ・・・
メキっ!メキっていったぁぁぁぁぁっ!
お、折れるっ!ア、アタシの首が折れるぅぅぅぅっ!?」
激痛による悲鳴を挙げ始めたイザナミに
卑弥呼は顏を近付けた・・・。
その距離・・・2cmほど・・・。
そして囁くように・・・ドス黒い声で言った・・・。
『お前・・・そういうとこな?』
「・・・へっ!?」
『お前のそういうとこ・・・私はどうかと思うぞ?』
「・・・ご、ごめんなさい」
「うっしっ!」
卑弥呼のバカ力による激痛からなのか・・・。
またはそのドス黒い声と威圧によるモノなのかは分からないが、
イザナミの目には薄っすらと涙が滲んでいた・・・。
謝罪の言葉を聞いた卑弥呼は立ち上がり、
目の前では互いの別れてしまった『魂同士』が懐かしむように、
イリアとセルンは互いの『炎』に触れていたままだった・・・。
そしてその目からは一筋の涙がこぼれ落ち、
そんな光景に卑弥呼はうっすらと口角を上げていた・・・。
(フフっ・・・漸く出会えたんだ・・・
そりゃ~涙の1つも流れるってもんだ・・・)
『ほっ』と安堵の息を吐いた卑弥呼とは違って、
座り込んでいたイザナミもまた・・・
1粒の涙を流し落とした・・・。
「イザ子・・・?あんた何を泣いて?」
不思議そうにそう聞いた卑弥呼に、
イザナミは『ポツリ』と呟いた・・・。
「あ、あれは間違いなく・・・」
そう言い切るとイザナミは立ち上がり、
ゆっくりと互いの『炎』を交わらすイリアとセルンの下へと向かった。
「・・・こ、こんな形で・・・あんたに出会おうとは・・・
正直・・・想定しなかった・・・。
確かにこの2人の『魂』は我の子である事に間違いはない、
だが、実際こうして2人の『炎』が交わるまで、
我は何も感じられなかった・・・。
だが、今は・・・」
その時だった・・・。
一瞬、イリアとセルンの『炎』が、
何かを弾くように『パチンっ!』と激しい音を立てた・・・。
その異変を察した卑弥呼と白蛇が、
よたよたと歩くイザナミの前へと躍り出ると、
その2種類の『炎』は混ざりながら渦を巻き、
イザナミへと『炎の槍』を放った・・・。
『ゴォォォォォっ!』
『ドシャっ!』
一瞬速く『防御結界』を張った卑弥呼と白蛇に防がれるも、
その『炎の槍』は幾度となく放たれたのだった・・・。
『ドシャっ!ドシャっ!』
放たれたその『炎の槍】は『防御結界』に阻まれ、
幾度なく弾かれようとも、その攻撃は続いた・・・。
卑弥呼と白蛇の『防御結界』の後方で、
イザナミは眼前で起こっている出来事に目を見開いていた。
「な、何でっ!?何でアタシ・・・攻撃されてんのよっ!?」
『クゥゥっ』とその衝撃に声を漏らし始めた卑弥呼は、
後ろで呟くイザナミに声を荒げた。
「あ、あんたに積年の恨みってヤツがあんじゃないのっ!?
こ、この衝撃からでもわかるけどっ!
イザ子への恨み・・・っパねぇーよっ!」
「イ、イザナミ様っ!?な、何でもいいので、謝って下さいっ!
け、結界が・・・結界が限界に・・・。
あ、あなた達・・・何とか出来ないのですかっ!?」
苦悶の表情を浮かべた白蛇がイリアとセルンにそう声を挙げるも、
2人からは『せ、制御出来ないっ!』と混乱していた。
「どうして攻撃し続けているのよっ!?
わ、私達は何もしていないのにっ!
く、黒い炎も消せないっ!?」
「ひ、卑弥呼様っ!白蛇様っ!
と、止まりませんっ!
魔力も『灯』も使用していないのに止まりませんっ!
一体どうすればっ!?」
セルンとイリアがそう叫び声を挙げる中も、
『炎の槍』の攻撃は止むどころか、
その威力は増していったのだった・・・。
「こ、このままじゃ・・・わ、私達も・・・」
「くっ・・・こ、これ以上放たれてはっ!」
白蛇と卑弥呼がそう訴えるも、
混乱しているイザナミにはどうする事も出来ずただ・・・
『オロオロ』とするばかりだった・・・。
「そ、そんな・・・なんで・・・」
「・・・ヤ、ヤバい・・・こ、この威力・・・
くっ!?しゃ、洒落になんねーっ!」
恨みを以って放たれる『青と黒の炎の槍』の威力は想像を絶し、
卑弥呼と白蛇も限界を迎えようとしていた・・・。
「ダメか・・・」
卑弥呼は歯を食い縛りながらそう呻いた時、
『もう止めて下さいっ!』とこの場に居た全員の頭に声が響いて来た。
その声に皆が反応し視線を向けると、
大きな巨体を揺らして黒紅が卑弥呼と白蛇の前に躍り出た・・・。
『ドシャっ!ドシャっ!ドシャっ!』
限界に近い卑弥呼と白蛇の前に躍り出た黒紅は、
容赦なく放たれる『炎の槍』を、
その身体で受け止め始めたのだった・・・。
「あ、あんたっ!何やってんだっ!どきなっ!
い、いくらあんたが『門』だからってっ!
無事で済むはずないんだぞっ!」
そんな卑弥呼の怒号が後方から響くも、
黒紅はその声を打ち消すように声を張り上げた。
{う、うぐっ!・・・ど、どきませんっ!
こ、こんなの・・・。
こんなの間違ってますからっ!}
そして次の瞬間・・・。
{もう止めて下さぁぁぁぁいっ!}
そう絶叫すると同時に、
黒紅は一瞬赤く光りながら、己の『扉』を開いた・・・。
『ギイィィィーっ!』
暴走する『魂の灯の炎』が容赦なく黒紅を襲うも、
その『青と黒の炎』は、
開け放たれた黒紅の『扉』へと吸い込まれて行った。
すると暫くすると諦めたのか『魂の灯』からの攻撃は止み、
それと同時に2人を包んでいた『炎』は消失した。
卑弥呼と白蛇は攻撃が止んだ事に安堵すると、
そのまま床にへたり込んだ・・・。
「・・・やっと止まったな。
正直あれ以上続けられたらヤバかった・・・」
「・・・紙一重でしたわね」
攻撃が完全に停止した事を確認した黒紅が、
己の『扉』を閉めると『や、やっと止まった』と、
卑弥呼達と同じように安堵の息を漏らしていた・・・。
だが、安堵したのも束の間・・・。
今まで卑弥呼と白蛇に守られていたイザナミが我に返った・・・。
「どっ、どう言う事よぉぉぉっ!?」
『っ!?』
その怒声に振り返った者達を気にする事もなく、
怒り心頭なイザナミは怒声を発した。
「一体何が不満で私に矛先を向けたってのよっ!
ふっ・・・ふざけんじゃねーしっ!」
拳を握り青筋を浮かべるイザナミは、
ここぞとばかり抗議を口にした・・・。
「イ、イザ子・・・あんた・・・」
「イザナミ様・・・それはあんまりなのでは?」
卑弥呼と白蛇がそう声を挙げると、
怒りにその身を震わせるイザナミは食ってかかった・・・。
「せっっっかくこのアタシがっ!
別れた1つの『魂』を会わせてやったのにも関わらずっ!
このアタシを攻撃するなんて有り得ないっつーのっ!
まじで・・・まじで有り得んし・・・。
母親に対してその愚行・・・断じて許さんしっ!」
唖然とするイリアとセルンに向けて、
イザナミが拳を向けながらそう言い放つと、
その2人の身体の中から『青と黒い火』が姿を現した・・・。
そしてその『火』は渦を巻くように1つの球体に変化すると、
赤い光を放ちながら、やがてソレは揺らめく人型へと変化した・・・。
影・・・と、言うにはハッキリし過ぎ・・・。
人・・・と、言うには朧過ぎた・・・。
皆がソレに眉を潜め警戒していると、
それぞれの頭の中に低く冷たい憎悪に満ちた、
女性らしき怨みの声が聞こえ始めた・・・。
{・・・母とはなんぞ?}
『っ!?』
{愚神・イザナミに問う・・・。
母とは・・・何ぞや・・・?}
その怨みに満ちた声に『魂』までも凍てつくような気がした・・・。
「ぐ、愚神・・・だとっ!?
くっ・・・き、貴様・・・こ、このイザナミに対し・・・
ぶ、無礼であろう・・・に・・・」
{無礼とは・・・また・・・。
どの顔下げて・・・無礼などと・・・}
突然口調が変わったソレに、イザナミは怒りの形相へと変わり、
その身体から『冥界の神力』が吹き出した・・・。
「いい・・・いい度胸じゃ・・・。
この上位神たるこの妾に・・・無礼極まりない・・・。
良かろう・・・。
この妾自らその『魂の残りカス』ごと・・・
消滅させてくれようぞっ!
妾に仇成す者よ・・・己の愚かさを悔いて滅びよっ!」
この言葉が本来のイザナミなのだろう・・・。
口調と共にその姿をも変貌させたイザナミは、
『冥府の住人』たる『絶望の威圧』を放ち始めた・・・。
若々しいその美貌とは真逆の、
その憎悪に満ちた『鬼の如き形相』と・・・。
身体もまた・・・骨と皮だけの醜い姿へと変貌した。
するとソレもまた・・・。
その揺らめく身体から『神力』を溢れさせ、
まさに『一触触発』の『臨戦態勢』へと移っていた・・・。
その光景に冷や汗を滲ませたのは卑弥呼だった・・・。
(冗談じゃなってーのっ!
こんな所でこの2人がやり合ったら・・・
このダンジョン事・・・崩壊しちまうだろうがっ!)
『ちっ!』と舌打ちをした卑弥呼は、
白蛇に向け声を挙げ指示を飛ばした・・・。
「白蛇っ!あの2人を護れっ!」
「貴女に言われなくても承知しておりますっ!」
卑弥呼が動くのと同時に白蛇もまた行動を開始し、
イリアとセルンの前へと立ち塞がると強固な『結界』を展開した。
それを横目に見ながら卑弥呼は己に『神力』を纏わせると、
『絶望神』と化したイザナミとソレとの間に割って入った・・・。
いつ衝突するかも分からない2人の間に割って入った卑弥呼は、
『ボス部屋』の床を滑りながら『印』を結んだ・・・。
『鬼道・断魔の印・・・。
『黒影柔縛糸の陣』
卑弥呼の結んだ『印』から足元を伝い、
床に『蜘蛛の巣状』に広がった『黒い文字』が、
ソレの足元まで展開すると、
卑弥呼の『縛っ!』と発したその声に連動し、
ソレの足元から包み込むように『黒い文字』の網に包まれ、
『捕縛』されたのだった・・・。
{っ!?}
『捕縛』を横目に見ながら、
卑弥呼は素早く振り返り己の親指を噛み切ると、
自らの血を掌に押し当て再び違う『印』を結び声を挙げた・・・。
『鬼道・悪鬼退散っ!
降魔覆滅っ!』
卑弥呼は結んだ『印』が光り輝くと、
まるで鞘から刀を引き抜くように掌からドス黒い・・・。
いや、それは紛れもなく『血液』で出来た武器・・・。
『太刀』を引き抜いたのだった・・・。
『血刀・紅夜叉っ!』
卑弥呼は大きく前へと一歩踏み出しながら、
『血刀・紅夜叉』を肩に担ぎ、
カブキの見栄の如く構えながら声を張り挙げた・・・。
「目覚めろぉぉぉっ!イザナミィィィィっ!」
そう雄叫びを挙げながら、
卑弥呼は肩に担ぐようにしていた『血刀・紅夜叉』に、
神力を纏わせながら力の限り振り抜いた・・・。
『鬼道・血刀術・斬魔の太刀っ!斬っ!』
『シュオンっ!』
『悪鬼』と化したイザナミへ一筋の赤い閃光が伸びると、
まるでそこに物質もなかったかのように通過し、
『ピシっ!』と亀裂音を発しながら一瞬縦に割れた・・・。
『グギャァァァァァァァっ!』
『悪鬼』と化したイザナミがそう絶叫した瞬間、
卑弥呼が放った一撃が身体の『正中線上』に赤い筋を作ると、
その身体が突然燃え上り『断末魔』の声を挙げた・・・。
『ゴォォォ』っと、音を立てて赤く燃えたイザナミが、
『ドサっ』と倒れると、やがてその動きを止め静寂が訪れた。
『ふぅ~』っと・・・。
卑弥呼がその額に滲んだ汗を着物の袖で拭いながら、
『血刀』を納刀するように、自らの掌へと納めたのだった・・・。
そして冷たい眼差しを向け、
動かなくなったイザナミを見て呟いた・・・。
「どんだけ不器用なのさ?」
その言葉の意味を誰も理解する事は出来なかったが、
そう呟いた卑弥呼の表情は哀しみの表情へと変わっていた・・・。
「さて・・・お次はっと・・・」
イザナミの『活動停止』を確認した卑弥呼は、
そう言いながら振り返ると、
『捕縛』されているソレに柏手を打って一礼した。
そして静かに近付くと、
『黒い文字の網』に『捕縛』されたソレを見て、
卑弥呼は溜息を吐きながら気だるそうに口を開いた。
「・・・あんたの気持ちはわかるつもり。
だけどね~・・・それは違うんじゃねーの?
道理を通し訴えねーと・・・
あんたは今後も・・・暗闇の中って事・・・
わかんねーのかよ?あぁん?」
静かな口調ではあるが、その言葉は荒々しく、
『捕縛』されたソレにそう言い放った・・・。
{・・・わ、我の積年の怨み・・・。
は、晴らさぬ訳にはいかぬであろう・・・}
『・・・積年の怨み・・・ね?』
そう言葉を口にした卑弥呼の顔は、
イザナミの時と同じく・・・哀し気な表情となっていたのだった。
ってな事で、今回のお話はいかがだったでしょうか?
面白いと思ってもらえたらとても嬉しく思います。
今回はカッコいい卑弥呼の活躍でしたが、
次回がどうなるのか楽しみにして頂けたらと思います。
楽しく読んで頂けたら、
登録や感想など頂ければとても嬉しいですっ!
てか、感想が欲しい・・・。
ってなことで、緋色火花でした。
P・S 『活動報告』に急遽ではありますが、
イリアをアップしました・・・。
すっっっかり忘れていたので・・・申し訳御座いませんっ!




