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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第三章・冥界編
337/408

237話・積年の怨み

お疲れ様ですっ!


寒暖差でヘバっている緋色で御座いますっ!

プロジェクトの1つが成功を収めたのですが、

喜ぶ余韻など味わう事無く次のプロジェクトがスタートしました><


はっはっはっ・・・やれやれorz



さて、今回のお話ですが・・・。


ズバリっ!『卑弥呼』が活躍しますっ!

てか、そんな話ですっ!(違)


それでは、237話をお楽しみ下さい。

1階のボス部屋で辛勝したセルンが倒れる中、

イザナミの部下である『白蛇』が現れイザナミに変わり治療を始めた。


白蛇の治療が続く中・・・。

突然姿を現した『花魁風の女性』。

それはイザナミの『(ダチ)』でその名を『卑弥呼』だと告げられた。


「・・・イザナミ様のダチ・・・ですか?」


「はい♪」


そうにこやかに告げた白蛇は、

後ろで無意識のまま『のたうち回る』セルンを見つめた・・・。


「相当苦しんでおられるようですね?」


そう言いつつも白蛇の顏は微笑んでおり、

その様子を見守るしか出来ないイリアと黒紅は戸惑っていた。


「し、白蛇様?セルンは・・・だ、大丈夫なのでしょうか?」


焦りの色を浮かべるイリアに白蛇は『さぁ、どうでしょう?』と、

にこやかに答えると、イザナミと口論していた卑弥呼が声を挙げた。


「そいつの心配はいらねーよ?」


『えっ!?』と慌ててその声に振り向いたイリアと黒紅に、

卑弥呼は何事もないかのように答えた・・・。


「今、その女は『灯』の代償を払っているだけだからさ?

 そいつが『タフ』な女なら・・・全然問題なしっ!」


「・・・代償・・・ですか?」


「おうっ!」


威勢のいい返答をした卑弥呼にイリアは唖然としていると、

白蛇が身体を痙攣させるセルンを見て呟いた・・・。


「あらあら、苦痛は彼女の魂にダイレクトに伝わっているので、

 こうして肉体だけが波打つのを見ていると、

 ほんの少し・・・引きますわね♪」


『・・・・・』


そうにこやかに呟く白蛇に、

イリア達ばかりかイザナミや卑弥呼までドン引きのようだった。


「あ、あんた・・・いい性格してるわね?」


「我が部下ながら流石に引くし・・・」


卑弥呼もイザナミも顔を引き攣らせ、

それを聞いた白蛇は『失礼ですわね?』と、

こんな状況でも笑みを浮かべて居た・・・。



それから30分程経った頃・・・。


激しく痙攣し波打つそのセルンの身体が、

突然その動きを止めた・・・。


「・・・し、白蛇様?」


不安げな表情を見せるイリアに、

白蛇は『終わったようですわね?』と微笑みながら言うと、

静かに横たわるセルンの身体に手をかざした・・・。


薄っすらと白く光る白蛇の手を見ていたイザナミが、

心配からなのか『大丈夫そ?』と口を開くと、

白蛇は『はい♪問題なく生きておられますよ』とそう答えた。



それから30分後・・・。


静かに双眼を開いたセルンは『・・・戻れたみたいね?』と、

抑揚のない声を挙げながら上半身を起こすと、

突然背後から『セルンーっ!』と大きな声を挙げながら、

『ドンっ!』と背後から強い衝撃に襲われた。


『ぐはっ!』と・・・。

その衝突に前屈状態になりながら呻き声を挙げたセルンに、

圧し掛かるイリアは大粒の涙を流しながら喜びの声を挙げた。


「セルーンっ!よがっだぁぁぁ・・・

 ほ、ほんどによがったぁぁぁっ!」


前屈状態のセルンは、イリアの重さばかりではなく、

その『牛並み』と呼ばれる『双丘』がセルンの肺を圧迫した。


『ごほっ!ごほっ!』


その息苦しさからセルンは咄嗟に『殺されるっ!?』と、

脳裏にそんな予感が走ると怒声を挙げた・・・。


「ど、どきなさいよぉぉぉぉっ!」


すると次の瞬間・・・。

復活したセルンの身体から『ボッ!』と『黒い炎』が吹き上がると、

イリアの身体はセルンの『黒い炎』に包まれてしまった・・・。


{イリアさんっ!?}


『イリアっちっ!?』


黒紅とイザナミがそう叫ぶ中、

白蛇と卑弥呼の2人は平然とその様子を眺めていた・・・。


「ヒミぞうっ!?白蛇っ!?

 あ、あんた達何とかしなさいよっ!」


そう慌てふためくイザナミを他所に、

卑弥呼は『別に心配する事ないでしょ?』と平然にそう言った。


『キっ!』とイザナミが卑弥呼を睨みつけるも、

そんな視線などスルーしていた卑弥呼は、

顎で黒く燃えているイリアへと示した・・・。


「っ!?」


指し示されるまま視線を向けたイザナミは唖然としていた・・・。


それはイザナミばかりではなく、

『黒い炎』を放ったセルン自身や黒紅までもが唖然としていたのだった。


するといつの間にかイザナミの隣に居た白蛇が口を開いた。


「よく見て下さいませ・・・イザナミ様?」


「・・・・・」


「あのダークエルフは燃えてはおりません♪」


険しい表情を見せたイザナミが『どうして?』と呟くと、

白蛇は『黒く燃える』イリアに笑みを浮かべながら答えた。


「よーくご覧下さいませ・・・。

 あのダークエルフは燃えないように、

 自らの『灯』で防御したのです♪」


白蛇がそう言うように、イリアの身体を『青い炎』が包み込み、

セルンの『黒い炎』からその身を守っていたのだった・・・。


「・・・嘘でしょ?

 あ、あんな不意打ちで・・・?」


「ふふふ♪恐らく彼女自身も驚いているかと思われますが、

 恐らく・・・オートで『灯』が守ったのだと推測できます♪」


一瞬、顔を『ヒク』つかせたイザナミは、

『ぶるーすぴりっとが・・・?』と呟いた。


卑弥呼と白蛇以外が固まる中・・・。

イリアは驚きながらも自らの周囲を見渡していた・・・。


「えっ!?わ、私・・・燃えて・・・ない?」


そう誰に言うでもなく呟くと、

我に返ったセルンがイリアの元へと滑るように座り込むと、

イリアを包む『黒い炎』の中に手を突っ込んだ・・・。


「イ、イリアっ!?だ、大丈夫なのっ!?」


「う、うん・・・だ、大丈夫みたい・・・」


「ご、ごめんっ!わ、私・・・」


「あはは・・・」


イリアが苦笑しつつも自らも『青い炎』の中に手を突っ込んだ時、

一瞬・・・『キュィィィィン』と、

この2人を除いて全ての者達がその『高周波』に耳を塞ぎ呻き声を挙げた。


時間にして4~5秒といったところだろう・・・。

その直後『黒と青の炎』は消失し、

火傷1つ負ってもいないイリアと対面した・・・。


するとイリアは『にこっ』と笑顔を唖然とするセルンに向けると、

楽し気にこう言った・・・。


「びっくりしちゃったね~?」


あっけらかんとそう言ったイリアに、

セルンは溜息を吐きながら項垂れてしまった・・・。


「セルン?」


「あ、あんたね~?

 無事だったから良かったけど・・・

 最悪あんたは私の『炎』で燃やし尽くされていたかもしれないのよ?」


俯いたセルンの表情はわからなかったが、

その細い肩が小刻みに揺れている事はわかった・・・。


「・・・ブルースピリットに助けられちゃった♪」


そう楽し気に答えるイリアに、セルンは再び溜息を吐くと、

「・・・ごめんね?」と謝罪を口にした・・・。


するとイリアは『ハっ』と何かを思い出すと、

謝罪するセルンに口を開いた。


「でも・・・熱くなかったよ?」


「・・・?」


「一応ブルースピリットが私を守ってはくれたけど、

 セルンの『黒い炎』・・・。

 全然熱さなんて感じなかったよ?」


そんなイリアの言葉にセルンもまた何かを思い出すと、

自らの手を見ながら『そう言えば・・・』と口にした。


セルンの言葉に微笑んだイリアは、

再び『青い炎』を出現させ何かを促すように視線を投げた。


その意図を察したセルンは、

おもむろにイリアの『青い炎』に手を伸ばし、

ゆっくりとソレに触れた・・・。


「あ、熱く・・・ない」


「でしょ?♪」


そう楽し気に言ったイリアに『どうして?』と尋ねるも、

『フルフル』と首を横に振るだけで理由はわからなかった・・・。


するとその様子をじっと見ていた卑弥呼が笑みを浮かべながら、

疑問に首を傾げる2人に声をかけたのだった・・・。


「別に不思議がる事はないだろ?」


『・・・えっ?』


「はっはっはっ!あんた達・・・鈍いんじゃないの?」


声を挙げて笑う卑弥呼に2人は更に首を傾げると、

『・・・まじか?』と顔を引き攣らせながら説明した。


「よく考えてみなよ?

 あんた達の『魂』って元々1つでしょ?」


『・・・はい』


「そんな『魂』同士がお互いを傷つけ合うなんて事が、

 ある訳ないでしょうが?」


『・・・・・』


卑弥呼の説明にイリアとセルンは互いに顔を見合わせると、

『そう言うモノ・・・なの?』とセルンがそう言った・・・。


「ん~・・・どう・・・なんだろ?

 でも、こうしてお互いの『炎』に触れあっても、

 身を焦がすような熱さは感じない・・・」


「そうね?

 確かに熱くないって言うか・・・

 心が休まる・・・そんな温もりは感じわね?」


そう言いながら微笑んだセルンに、

イリアもまた微笑んで返したのだった・・・。


そんな2人を『ふっ』と笑みを浮かべた卑弥呼が、

何気に視線をイザナミへと向けると、

1人『ぽかーん』と呆気に取られだらしない顔を向けていた・・・。


「はぁ?」


イザナミのその表情に卑弥呼は『まさかでしょ?』と呟き、

座り込むイザナミの視線に合わせるようにしゃがみ込むと、

ジト目でその顔を覗き込んだ・・・。


「・・・イザ子、あんたまさか・・・?」


「ほ、ほぇ?な、何が・・・?」


「あんたまさか・・・その事に気付いてなかったの?」


「・・・うっ」


卑弥呼の言葉が図星だったのか、

小さく呻き声を挙げながら顏を背けると、

卑弥呼は『あぁーん?』と低くドスの利いた声を挙げた・・。


「まさか・・・まさかだよな~?

 イザ子さんよ~?」


「・・・な、何言ってんだかわからんし・・・」


「イーザー子ーっ!?」


「・・・・・」


問い詰める卑弥呼に顏を背けたまま、

いつまでもとぼけるイザナミに・・・キレた・・・。


顔を背けるイザナミの頭部を『ガシっ!』と頭頂部から掴むと、

強引に頭を自分へと向かせ始めた・・・。


『メキっ!グググググっ!』


途轍もないパワーで強引に顔を向けさせると卑弥呼に、

イザナミはその痛さから悲鳴に近い声を挙げた。


「痛っ!?イタイタイタイタイタイタイタ・・・

 メキっ!メキっていったぁぁぁぁぁっ!

 お、折れるっ!ア、アタシの首が折れるぅぅぅぅっ!?」


激痛による悲鳴を挙げ始めたイザナミに

卑弥呼は顏を近付けた・・・。


その距離・・・2cmほど・・・。


そして囁くように・・・ドス黒い声で言った・・・。


『お前・・・そういうとこな?』


「・・・へっ!?」


『お前のそういうとこ・・・私はどうかと思うぞ?』


「・・・ご、ごめんなさい」


「うっしっ!」


卑弥呼のバカ力による激痛からなのか・・・。

またはそのドス黒い声と威圧によるモノなのかは分からないが、

イザナミの目には薄っすらと涙が滲んでいた・・・。


謝罪の言葉を聞いた卑弥呼は立ち上がり、

目の前では互いの別れてしまった『魂同士』が懐かしむように、

イリアとセルンは互いの『炎』に触れていたままだった・・・。


そしてその目からは一筋の涙がこぼれ落ち、

そんな光景に卑弥呼はうっすらと口角を上げていた・・・。


(フフっ・・・漸く出会えたんだ・・・

 そりゃ~涙の1つも流れるってもんだ・・・)


『ほっ』と安堵の息を吐いた卑弥呼とは違って、

座り込んでいたイザナミもまた・・・

1粒の涙を流し落とした・・・。


「イザ子・・・?あんた何を泣いて?」


不思議そうにそう聞いた卑弥呼に、

イザナミは『ポツリ』と呟いた・・・。


「あ、あれは間違いなく・・・」


そう言い切るとイザナミは立ち上がり、

ゆっくりと互いの『炎』を交わらすイリアとセルンの下へと向かった。


「・・・こ、こんな形で・・・あんたに出会おうとは・・・

 正直・・・想定しなかった・・・。

 確かにこの2人の『魂』は我の子である事に間違いはない、

 だが、実際こうして2人の『炎』が交わるまで、

 我は何も感じられなかった・・・。

 だが、今は・・・」


その時だった・・・。


一瞬、イリアとセルンの『炎』が、

何かを弾くように『パチンっ!』と激しい音を立てた・・・。


その異変を察した卑弥呼と白蛇が、

よたよたと歩くイザナミの前へと躍り出ると、

その2種類の『炎』は混ざりながら渦を巻き、

イザナミへと『炎の槍』を放った・・・。


『ゴォォォォォっ!』


『ドシャっ!』


一瞬速く『防御結界』を張った卑弥呼と白蛇に防がれるも、

その『炎の槍』は幾度となく放たれたのだった・・・。


『ドシャっ!ドシャっ!』


放たれたその『炎の槍】は『防御結界』に阻まれ、

幾度なく弾かれようとも、その攻撃は続いた・・・。


卑弥呼と白蛇の『防御結界』の後方で、

イザナミは眼前で起こっている出来事に目を見開いていた。


「な、何でっ!?何でアタシ・・・攻撃されてんのよっ!?」


『クゥゥっ』とその衝撃に声を漏らし始めた卑弥呼は、

後ろで呟くイザナミに声を荒げた。


「あ、あんたに積年の恨みってヤツがあんじゃないのっ!?

 こ、この衝撃からでもわかるけどっ!

 イザ子への恨み・・・っパねぇーよっ!」


「イ、イザナミ様っ!?な、何でもいいので、謝って下さいっ!

 け、結界が・・・結界が限界に・・・。

 あ、あなた達・・・何とか出来ないのですかっ!?」


苦悶の表情を浮かべた白蛇がイリアとセルンにそう声を挙げるも、

2人からは『せ、制御出来ないっ!』と混乱していた。


「どうして攻撃し続けているのよっ!?

 わ、私達は何もしていないのにっ!

 く、黒い炎も消せないっ!?」


「ひ、卑弥呼様っ!白蛇様っ!

 と、止まりませんっ!

 魔力も『灯』も使用していないのに止まりませんっ!

 一体どうすればっ!?」


セルンとイリアがそう叫び声を挙げる中も、

『炎の槍』の攻撃は止むどころか、

その威力は増していったのだった・・・。


「こ、このままじゃ・・・わ、私達も・・・」


「くっ・・・こ、これ以上放たれてはっ!」


白蛇と卑弥呼がそう訴えるも、

混乱しているイザナミにはどうする事も出来ずただ・・・

『オロオロ』とするばかりだった・・・。


「そ、そんな・・・なんで・・・」


「・・・ヤ、ヤバい・・・こ、この威力・・・

 くっ!?しゃ、洒落になんねーっ!」


恨みを以って放たれる『青と黒の炎の槍』の威力は想像を絶し、

卑弥呼と白蛇も限界を迎えようとしていた・・・。


「ダメか・・・」


卑弥呼は歯を食い縛りながらそう呻いた時、

『もう止めて下さいっ!』とこの場に居た全員の頭に声が響いて来た。


その声に皆が反応し視線を向けると、

大きな巨体を揺らして黒紅が卑弥呼と白蛇の前に躍り出た・・・。


『ドシャっ!ドシャっ!ドシャっ!』


限界に近い卑弥呼と白蛇の前に躍り出た黒紅は、

容赦なく放たれる『炎の槍』を、

その身体で受け止め始めたのだった・・・。


「あ、あんたっ!何やってんだっ!どきなっ!

 い、いくらあんたが『門』だからってっ!

 無事で済むはずないんだぞっ!」


そんな卑弥呼の怒号が後方から響くも、

黒紅はその声を打ち消すように声を張り上げた。


{う、うぐっ!・・・ど、どきませんっ!

 こ、こんなの・・・。

 こんなの間違ってますからっ!}


そして次の瞬間・・・。


{もう止めて下さぁぁぁぁいっ!}


そう絶叫すると同時に、

黒紅は一瞬赤く光りながら、己の『扉』を開いた・・・。


『ギイィィィーっ!』


暴走する『魂の灯の炎』が容赦なく黒紅を襲うも、

その『青と黒の炎』は、

開け放たれた黒紅の『扉』へと吸い込まれて行った。


すると暫くすると諦めたのか『魂の灯』からの攻撃は止み、

それと同時に2人を包んでいた『炎』は消失した。


卑弥呼と白蛇は攻撃が止んだ事に安堵すると、

そのまま床にへたり込んだ・・・。


「・・・やっと止まったな。

 正直あれ以上続けられたらヤバかった・・・」


「・・・紙一重でしたわね」


攻撃が完全に停止した事を確認した黒紅が、

己の『扉』を閉めると『や、やっと止まった』と、

卑弥呼達と同じように安堵の息を漏らしていた・・・。


だが、安堵したのも束の間・・・。


今まで卑弥呼と白蛇に守られていたイザナミが我に返った・・・。


「どっ、どう言う事よぉぉぉっ!?」


『っ!?』


その怒声に振り返った者達を気にする事もなく、

怒り心頭なイザナミは怒声を発した。


「一体何が不満で私に矛先を向けたってのよっ!

 ふっ・・・ふざけんじゃねーしっ!」


拳を握り青筋を浮かべるイザナミは、

ここぞとばかり抗議を口にした・・・。


「イ、イザ子・・・あんた・・・」


「イザナミ様・・・それはあんまりなのでは?」


卑弥呼と白蛇がそう声を挙げると、

怒りにその身を震わせるイザナミは食ってかかった・・・。


「せっっっかくこのアタシがっ!

 別れた1つの『魂』を会わせてやったのにも関わらずっ!

 このアタシを攻撃するなんて有り得ないっつーのっ!

 まじで・・・まじで有り得んし・・・。

 母親に対してその愚行・・・断じて許さんしっ!」


唖然とするイリアとセルンに向けて、

イザナミが拳を向けながらそう言い放つと、

その2人の身体の中から『青と黒い火』が姿を現した・・・。


そしてその『火』は渦を巻くように1つの球体に変化すると、

赤い光を放ちながら、やがてソレは揺らめく人型へと変化した・・・。


影・・・と、言うにはハッキリし過ぎ・・・。

人・・・と、言うには朧過ぎた・・・。


皆がソレに眉を潜め警戒していると、

それぞれの頭の中に低く冷たい憎悪に満ちた、

女性らしき怨みの声が聞こえ始めた・・・。


{・・・母とはなんぞ?}


『っ!?』


{愚神・イザナミに問う・・・。

 母とは・・・何ぞや・・・?}


その怨みに満ちた声に『魂』までも凍てつくような気がした・・・。


「ぐ、愚神・・・だとっ!?

 くっ・・・き、貴様・・・こ、このイザナミに対し・・・

 ぶ、無礼であろう・・・に・・・」


{無礼とは・・・また・・・。

 どの(ツラ)下げて・・・無礼などと・・・}


突然口調が変わったソレに、イザナミは怒りの形相へと変わり、

その身体から『冥界の神力』が吹き出した・・・。


「いい・・・いい度胸じゃ・・・。

 この上位神たるこの妾に・・・無礼極まりない・・・。

 良かろう・・・。

 この妾自らその『魂の残りカス』ごと・・・

 消滅させてくれようぞっ!

 妾に仇成す者よ・・・己の愚かさを悔いて滅びよっ!」


この言葉が本来のイザナミなのだろう・・・。

口調と共にその姿をも変貌させたイザナミは、

『冥府の住人』たる『絶望の威圧』を放ち始めた・・・。


若々しいその美貌とは真逆の、

その憎悪に満ちた『鬼の如き形相』と・・・。

身体もまた・・・骨と皮だけの醜い姿へと変貌した。


するとソレもまた・・・。

その揺らめく身体から『神力』を溢れさせ、

まさに『一触触発』の『臨戦態勢』へと移っていた・・・。


その光景に冷や汗を滲ませたのは卑弥呼だった・・・。


(冗談じゃなってーのっ!

 こんな所でこの2人がやり合ったら・・・

 このダンジョン事・・・崩壊しちまうだろうがっ!)


『ちっ!』と舌打ちをした卑弥呼は、

白蛇に向け声を挙げ指示を飛ばした・・・。


「白蛇っ!あの2人を護れっ!」


「貴女に言われなくても承知しておりますっ!」


卑弥呼が動くのと同時に白蛇もまた行動を開始し、

イリアとセルンの前へと立ち塞がると強固な『結界』を展開した。


それを横目に見ながら卑弥呼は己に『神力』を纏わせると、

『絶望神』と化したイザナミとソレとの間に割って入った・・・。


いつ衝突するかも分からない2人の間に割って入った卑弥呼は、

『ボス部屋』の床を滑りながら『印』を結んだ・・・。


『鬼道・断魔の印・・・。

 『黒影柔縛糸の(こくえいじゅうばくしのじん)


卑弥呼の結んだ『印』から足元を伝い、

床に『蜘蛛の巣状』に広がった『黒い文字』が、

ソレの足元まで展開すると、

卑弥呼の『(ばく)っ!』と発したその声に連動し、

ソレの足元から包み込むように『黒い文字』の網に包まれ、

『捕縛』されたのだった・・・。


{っ!?}


『捕縛』を横目に見ながら、

卑弥呼は素早く振り返り己の親指を噛み切ると、

自らの血を掌に押し当て再び違う『印』を結び声を挙げた・・・。


『鬼道・悪鬼退散っ!

 降魔覆滅(ごうまふくめつ)っ!』


卑弥呼は結んだ『印』が光り輝くと、

まるで鞘から刀を引き抜くように掌からドス黒い・・・。

いや、それは紛れもなく『血液』で出来た武器・・・。

『太刀』を引き抜いたのだった・・・。


『血刀・紅夜叉(べにやしゃ)っ!』


卑弥呼は大きく前へと一歩踏み出しながら、

『血刀・紅夜叉』を肩に担ぎ、

カブキの見栄の如く構えながら声を張り挙げた・・・。


「目覚めろぉぉぉっ!イザナミィィィィっ!」


そう雄叫びを挙げながら、

卑弥呼は肩に担ぐようにしていた『血刀・紅夜叉』に、

神力を纏わせながら力の限り振り抜いた・・・。


『鬼道・血刀術・斬魔の太刀っ!斬っ!』


『シュオンっ!』


『悪鬼』と化したイザナミへ一筋の赤い閃光が伸びると、

まるでそこに物質もなかったかのように通過し、

『ピシっ!』と亀裂音を発しながら一瞬縦に割れた・・・。


『グギャァァァァァァァっ!』


『悪鬼』と化したイザナミがそう絶叫した瞬間、

卑弥呼が放った一撃が身体の『正中線上』に赤い筋を作ると、

その身体が突然燃え上り『断末魔』の声を挙げた・・・。


『ゴォォォ』っと、音を立てて赤く燃えたイザナミが、

『ドサっ』と倒れると、やがてその動きを止め静寂が訪れた。


『ふぅ~』っと・・・。


卑弥呼がその額に滲んだ汗を着物の袖で拭いながら、

『血刀』を納刀するように、自らの掌へと納めたのだった・・・。

そして冷たい眼差しを向け、

動かなくなったイザナミを見て呟いた・・・。


「どんだけ不器用なのさ?」


その言葉の意味を誰も理解する事は出来なかったが、

そう呟いた卑弥呼の表情は哀しみの表情へと変わっていた・・・。


「さて・・・お次はっと・・・」


イザナミの『活動停止』を確認した卑弥呼は、

そう言いながら振り返ると、

『捕縛』されているソレに柏手(かしわで)を打って一礼した。


そして静かに近付くと、

『黒い文字の網』に『捕縛』されたソレを見て、

卑弥呼は溜息を吐きながら気だるそうに口を開いた。


「・・・あんたの気持ちはわかるつもり。

 だけどね~・・・それは違うんじゃねーの?

 道理を通し訴えねーと・・・

 あんたは今後も・・・暗闇の中って事・・・

 わかんねーのかよ?あぁん?」


静かな口調ではあるが、その言葉は荒々しく、

『捕縛』されたソレにそう言い放った・・・。


{・・・わ、我の積年の怨み・・・。

 は、晴らさぬ訳にはいかぬであろう・・・}


『・・・積年の怨み・・・ね?』


そう言葉を口にした卑弥呼の顔は、

イザナミの時と同じく・・・哀し気な表情となっていたのだった。



ってな事で、今回のお話はいかがだったでしょうか?


面白いと思ってもらえたらとても嬉しく思います。


今回はカッコいい卑弥呼の活躍でしたが、

次回がどうなるのか楽しみにして頂けたらと思います。


楽しく読んで頂けたら、

登録や感想など頂ければとても嬉しいですっ!


てか、感想が欲しい・・・。



ってなことで、緋色火花でした。


P・S 『活動報告』に急遽ではありますが、

    イリアをアップしました・・・。

    すっっっかり忘れていたので・・・申し訳御座いませんっ!


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― 新着の感想 ―
[一言] イリアって体全体に対して胸が大きいですね。 確かに「牛女」と言われるだけありますね(笑) 今回はチャラそうだったイザナミや卑弥呼のシリアスなシーンのギャップが面白かったです。 謎もまだまだ…
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