閑話・魔と闇・後編
お疲れ様です。
いきなり寒くなりましたね><
突然の気候変化に戸惑いますが、
頑張りたいと思います。
ってな事で、今回のお話は前回に続き『後編』です。
因みにですが・・・。
前回に引き続き、英二と陸奥しか出ませんが、
楽しんでいただけたらと思います^^
それでは閑話・後編をお楽しみ下さい。
英二と五十嵐は食事を終えホテルへと戻って来た・・・。
「あそこの中華屋まじで美味かったっスね~?」
「はっはっはっ!だろ?
私もこっちに来た時には必ず立ち寄るんだよ♪」
そんな会話をしながら英二はソファーに座ると、
五十嵐はマジックボックスからビールを取り出し、
『君も飲むかい?』と笑顔で進めて来た・・・。
「マ、マジックボックスからビールってっ!?
む、陸奥さん強者っスね?」
驚く英二に五十嵐は苦笑い向けながらソファーに座ると、
缶ビールを1つ手渡した・・・。
「ひ、冷えてるんスね?」
「当然だろ?」
笑顔を向ける五十嵐に英二は缶ビール開けると、
五十嵐に頭を下げて見せた・・・。
「・・・ん?
英二君・・・どうしたんだい?」
英二の行動に不思議そうな表情をして見せた五十嵐に、
顔を上げながら口を開いた・・・。
「・・・上手く言えないんスけど、
今回は話を聞かせてもらったし、中華屋にも連れて行ってもらったし、
な、何かもう・・・色々と世話になりっぱなしで・・・」
そう言って英二は再び頭を下げると、
ビールをテーブルに置いて頭を下げる英二に顏を上げるよう促した。
『そんな事はいいから・・・』そう何度も言った五十嵐は、
ほとほと英二に困り果てていた・・・。
「・・・君ってほんとに律儀なんだね~?」
「あははは・・・そ、そうっスかね?」
「まぁ~、君がそういう人間だから、
あの御方達も気に入られたんだろうね・・・」
そう五十嵐が優しく微笑みながらそう言うと、
英二は『ん?』と疑問の声を漏らした・・・。
「・・・あ、あの~陸奥さん?」
「ん?」
「今、あの御方・・・達って言いませんでした?」
「・・・あぁ~、言った・・・ね?」
「お、俺・・・1人しか知らないんスけど?」
「あぁ~、そっか・・・そう・・・だったね?」
苦笑いを浮かべた五十嵐に英二が首を捻っていると、
頭を掻きながら話していった・・・。
「まぁ~、どうせ明日になればわかるんだけどさ?
君の『修行』を見てくれる御方は1人ではないんだよ」
「・・・えっ?そう・・・なんスか?」
「あぁ、まぁ~、それだけ君に期待してるって事でもあるんだけど、
でも君の場合・・・危うくもあるんだ」
「・・・あ、危うい?お、俺が?」
五十嵐の言葉に険しい顔を見せた英二に、
真剣な眼差しを向けながら話の続きをした。
「指宿英二君・・・正直、君は危うい・・・。
『闇』に捕らわれやすいと言った方がいいかな?
君には思い当たる事があるんじゃないかな?」
五十嵐にそう言われ英二は眉間に『グっ』と皺が寄った時、
その言葉の意図を理解すると困ったような表情へと変わった。
「・・・あ、あるっス・・・ね。
前に『黒蝶』とやり合った時・・・
俺・・・あの女に操られた事があるので・・・」
そう言いながら英二は自分自身が情けなかったのだろう・・・。
俯きながら缶ビールを強く握り締め『グシャっ』と言う音が聞こえた。
「英二君・・・それは仕方がない事だろ?
君は『闇』に対してその対抗策を知らなかったうえ、
天照様に実験台にされちゃったんだからさ?」
「・・・な、何で・・・どうしてソレをっ!?」
余りの驚きに英二は勢いよく顔を上げると、
五十嵐は『まずその話をしようか?』と話を切り出していった・・・。
「あの村に君達が辿り着く前に情報が入ってさ?
私の仲間が先行してーあの村の中に潜入していたのさ」
「あ、あの村にって・・・む、陸奥さん・・・
じゃ、じゃあ・・・あの時・・・。
俺達が戦っていた時、見ていたんスかっ!?」
「・・・そうなるね」
再びビール缶が『グシャ』と音を立てると、
英二は静かに口を開いていった・・・。
「む、陸奥さん達はただ静観していただけって事っスか?」
「・・・そうだね」
「どうしてっスか?
俺達が必死で戦っていた時に・・・
どうして助けてくれなかったんスかっ!?
それだけの力があるのに・・・どうしてなんスかっ!?」
少し大き目な声でそう訴えると、
五十嵐は真っ直ぐと英二の目を見据えながら、
英二に話していった・・・。
「英二君・・・さっき私が話した事忘れたのかい?」
「・・・なっ、何スかっ!?」
「僕達の役割の話の事だよ・・・」
五十嵐の言葉に『あっ』と声が漏れた英二は、
外に出る前に離された事を思い出したのだった・・・。
「・・・どうやら思い出したようだね?
私達の仕事は君達を見守り監視する事・・・。
とは言っても、実は私の方にも落ち度はあったんだ・・・」
「・・・落ち度?」
「あぁ、あの黒い着物の女性・・・。
つまり『黒蝶』が『闇の者』かどうかわからなかったんだ・・・」
潰れかけた缶ビールの中身を『グイっ』と流し込むと、
『どう言う事っスかっ!?』と声を荒げた。
『彼女・・・あの『黒蝶』からは質のいい、
『冥界の神力』が感じ取れたんだよ・・・』
「・・・質のいい?
あ、あの・・・陸奥さん?
質とかってあるんスか?」
「あぁ、勿論・・・あるよ?
彼女の場合・・・『闇落ち』した濁った力ではなく、
どちらかと言うと『澄んだ』力を感じたんだよ」
「・・・い、意味が」
戸惑う英二に五十嵐はもう少し分かりやすいよう言葉を砕いた。
「『闇の力』ってのは基本的に淀んでいるんだよ。
それだけではなく、匂いもきつい。
『魔』と戦う時、同じような感覚はあるはずなんだけど?」
尋ねられた事に英二は黙ったまま『コクン』と頷くと、
五十嵐も小さく頷き話を進めた・・・。
「だけど彼女は・・・黒蝶は違った・・・。
感覚的で申し訳ないけど色で例えると、
『闇』とはドス黒い色をしているんだが、
黒蝶は純粋な黒・・・と言った感じかな?
同じ黒である事に違いはないが、
彼女の黒は気高いんだよ・・・」
五十嵐はそう感覚的にそう答えるも、
英二はよくわからないといった様子を見せていた・・・。
「ん~・・・どう言えばいいんだろうね?
普通『闇の者』なら、君を洗脳する事無く殺すだろう。
だけど君は違った・・・。
それは力があるからだと言われたら、それは否定出来ないけど、
正直あの場所に居た仲間達の顔ぶれを見たら、
君を仲間に引き入れる意味がわからない・・・」
「・・・はい?ど、どう言う事っスか?」
焦った感じで英二が身を乗り出しながらそう言うと、
五十嵐は渋い表情を浮かべながら話を続けた。
「気を悪くしないでもらいたいんだけど・・・。
あの場に居た中で君が弱いからだよ?」
「うぐっ・・・よ、弱い・・・?
・・・俺が・・・弱い・・・がくっ」
五十嵐の辛辣な言葉に英二は一瞬して項垂れ、
力無くソファーに腰を沈めた・・・。
「い、いや・・・あ、あの~・・・え、英二・・・君?
だ、だから・・・悪気はないんだってばっ!
き、聞いてるっ!?私の話・・・聞いてるっ!?」
それから暫くの間、
英二が復活するまで五十嵐の苦闘は続いたのだった・・・。
英二が何とか復活してから・・・。
五十嵐は再び話を始めた。
そしてその直後の事だった・・・。
ふと何か違和感を感じた五十嵐は険しい表情を見せていた・・・。
(・・・い、いや、でも・・・どうして彼女は英二君を選んだんだ?
確かに英二君はあの中では弱い・・・。
だけどもう1人・・・更に弱い者が居たはずだ。
それにもう1つ・・・。
私自身、まだソレを一度も見た事はないが、
話に聞いていた『モノ』と符合する感じがする・・・。
もしかして・・・彼女は・・・?)
険しい顏で考え始めた五十嵐に、
英二は訝しい表情を見せていた・・・。
(ど、どうしたんだよ?陸奥さん。
急に似合わない顏して・・・。
何か思う事でもあるのか?)
険しい顔をで何かを考え始めた五十嵐に、
英二は無性に不安を感じていた・・・。
「む、陸奥さん・・・?
陸奥さん・・・大丈夫っスかっ!?」
英二は五十嵐の肩を掴み揺さぶると、
思考の海に潜っていた五十嵐は我に返った・・・。
「ご、ごめん・・・私とした事が・・・」
「い、いえ・・・陸奥さん、どうかしたんスか?」
英二のその質問に五十嵐は『あぁ、ちょっとね・・・』と答えると、
その事に口を開かない事に、『何かあるな?』と感じ取ったのだった。
そして再び話は『闇』について続けられた・・・。
「黒蝶の事は兎も角・・・。
君は『闇』に対する抵抗力が低いんだ。
それは勿論、一度『闇の力』が君のその身体の中に染み込んだ・・・。
その事もそうなんだけど、それともう1つ・・・」
「・・・もう1つ?」
「あぁ、それは『天照様』に植え付けられた・・・
『鬼の力』を模した力の事だよ」
「・・・ですよね?」
英二も思い当たる事があり、項垂れるように返答すると、
五十嵐は目を細め、今までにない冷たい口調でこう切り出した。
「君はその『創られた力』をどうしたい?」
「・・・はい?」
そう尋ねられた英二は一瞬、何を言われたか理解出来ず居た。
そんな英二に対し五十嵐は黙って見つめたまま、
その視線を英二から逸らす事はなかったのだ・・・。
「い、いや・・・だから、どうするか?って・・・
そんな事を言われたって、この力を消す事なんて・・・」
頭の中で五十嵐の言葉を思い出しながら、
そう返答するしかない英二にもう一度尋ねたのだった・・・。
「その力・・・英二君、君はどうしたい?」
「・・・い、いや、たから俺にそんな事を言われたって、
俺にはどうしようもない訳で・・・)
そう淀み答えたのだが、五十嵐の言葉に英二は目を閉じ考えた。
(・・・俺の力は天照様に実験的に植え付けられモノだ。
それが禍々しいと前に桜さんにそう言われはしたが、
・・・でも俺は)
深く息を吸い、それをゆっくりと吐き終えると、
閉じた目を開き英二は真っ直ぐ五十嵐を見つめた・・・。
「陸奥さん・・・」
「・・・決まったかな?」
「はい、俺はこの力を手放す訳にはいきません」
「・・・どうしてだい?」
「はい、それは・・・この力を手放すと、
俺にはもう『闇の者達』と戦う術がありませんので」
「・・・そうか」
「そ、それに俺はあいつとの約束が・・・」
「・・・約束?
あ、あぁ~・・・神野悠斗君の事だね?」
「そ、そうっスけど・・・あいつの事、知ってるんスか?」
「・・・勿論、よーく知ってるよ♪
だけど彼は私の事は知らないけどね?」
「そう・・・スか」
「だから君はその力を手放す訳にはいかない・・・と?」
「はい・・・」
英二の声に五十嵐は頷くと、
強い意志を以って目の前に居る英二を見据えた・・・。
「・・・覚悟があるって事でいいんだね?」
「・・・うっス」
「もし、万が一・・・。
君が『闇』に捕らわれてしまったら、
私達は英二君・・・君を・・・全力で始末しなければならない。
それは分かってもらえるね?」
「・・・はいっ!勿論っスっ!」
強き眼でそう答える英二に、
『ふぅ~』っと大きく息を吐いた五十嵐は笑顔を向けて来た。
「・・・君の覚悟はよくわかったよ。
だから私達に処分されないように、
しっかりと修行しなくちゃね?」
「了解っスっ!」
英二の覚悟を確かめた五十嵐は微笑み、
この人物の純粋な心が『闇の力』に取り込まれた時、
自分自身の役割を強く胸に刻みつけるのだった・・・。
それから英二と五十嵐は雑談を交えながら、
もうすぐ始まる『修行』について話し始めていくと、
英二はあからさまに不安げな表情を見せていた・・・。
「ん?そんな深刻な顔をしなくてもさ?」
そう心配した声を挙げた五十嵐に英二は苦々しい顔をして見せていた。
「い、いや~・・・どうにも俺は要領とか悪くて・・・。
いっつも悠斗のヤツにあーだこーだと言われていたんですよ」
「あっはっはっはっ!
彼はある意味特殊な子だからね~?
一見奇抜な修練に見えても、1つ1つがちゃんと理に適っている。
まぁ~、後はその内容が尋常じゃないくらいハードだったりするから、
普通の人にはさっぱり理解できなくて当然さ♪」
とても楽しいそうにそう言った五十嵐に、
英二は心の中で『兄貴ってのが居たら、こんな感じかな?』と、
そんな感傷に浸っていた・・・。
すると五十嵐は『あっ、そうだ・・・』と口にすると、
英二に対し少し身を乗り出し話しかけていった。
「・・・ところで英二君?
君は『例の技』の練習はしているのかな?」
そう尋ねて来る五十嵐に、英二は苦笑いを浮かべると、
『どうなんスかね~?』とやや自身無さげに話し始めた・・・。
「別に悠斗みたい自信を持って『日々精進』なんて事、
口が裂けても言えないっスけど、
でも・・・出来る範囲でやってますよ?
ってか、俺には地道にやる事しか出来ないんで・・・ははは」
頭を掻きながら照れ臭そうに言った英二に、
五十嵐は微笑ましく見ていた・・・。
「そうか・・・確かに地道にやるのが正解だね?」
英二の言った事に肯定してくれた英二は、
満面の笑みを見せると、ふと・・・疑問に思った事を口にした。
「あの~・・・ところで陸奥さん?」
「・・・ん?何かな?」
「陸奥さんから見て・・・俺の『黒獅子』ってどうっスか?」
英二から見て強者と認定したこの五十嵐に、
自分の力の完成度が気になりそれを尋ねたのだった・・・。
すると五十嵐はやや笑みを浮かべながら口を開いた。
「・・・えっと~。
少しふざけた感じで言うのと、真剣な感じ・・・
どっちがいい?」
「・・・はい?」
「・・・ん?」
「いやいやいやいやいやっ!?
む、陸奥さんっ!?
お、俺ってばいつもこんな感じなんで、
真剣さに欠けているかもしれませんけど、
俺・・・まじで聞いてるんでっ!」
五十嵐の物言いに焦った英二は、
早口でそう言うと五十嵐は『あははは』と笑っていた・・・。
(こ、この人・・・雲を掴むような感じで、
や、やりにくいっつーか・・・?
ってか、この空気を読まない感じ・・・あいつを思い出すな~?)
ふと、英二の脳裏の中に『ニヤり』と笑う悠斗の顔を思い出すと、
強く拳を握り締め怒りを堪えたのだった・・・。
そんな英二の仕草に五十嵐は不思議そうな顔を見せると、
『じゃ~おちゃらけた感じはここまでで・・・』と、
微笑みながらその肩を竦めて見せた。
「私から見て、君の『黒獅子』の完成度は、
30%くらいじゃないかな?」
「さっ、30%っ!?た、たったそんだけっスかっ!?」
「あぁ・・・君は驚いているようだけど、
あの『黒獅子』って技は実に奥深いんだ・・・」
「・・・奥深い?」
「あぁ・・・君が具現化したあの『黒獅子』の姿は、
私が知るモノとは別物で・・・そして弱々しい・・・」
『弱々しい』と聞いた英二は深く項垂れて見せはしたが、
俯いたその目には力が宿っており、
『負けてたまるかっ!』と強い信念が見て取れたのだった・・・。
そんな雰囲気を察した五十嵐は『クスっ』と笑うと、
『今から言う事を参考にしてほしい・・・』と口を開いた。
「君が扱うその『黒い鬼の力』は、言わば『負の力』だ」
「・・・負の力?」
「あぁ、聞くところによると・・・。
悠斗君の中に眠る『鬼の力』を参考にしたのだろうね?
だからと言って、簡単にマネる事なんて出来ない・・・。
『天照様』が一体どんなモノを利用し、
そして何を使ったかはわからないけど、
その力を操る代償が必ずあるはずだ・・・。
だから君はまず・・・『メンタルの強化』を行うのがいいかもね?
決して折れない・・・その心を・・・」
「・・・心」
「うん、一応私も・・・。
君の修行を手伝う事を頼まれているからさ?
一緒に頑張ろうじゃないか?」
五十嵐の言葉に思わず英二は笑顔になり、
『手伝ってくれるんスかっ!?』と喜んでいた・・・。
「あぁ、でも正直最初は気乗りしなくてね?」
「えっ?」
「だけど君とこうして交流を持ってみて、
私は君の力になってあげたいって思ったんだよ・・・」
「あっ、あっ・・・あざぁぁーすっ!」
その歓喜から英二は勢いよく立ち上がると、
身体を90度にし感謝を伝えたのだが、
一瞬笑顔を見せた五十嵐の顔から笑顔が消えると、
抑揚のない口調へと変わった・・・。
「それにさ・・・君と一緒に居た方が・・・
『俺』にとっても都合がいいようだしな・・・」
突然口調が変わった五十嵐に、
英二は『えっ!?』と驚き顔を上げた。
そんな英二がまじまじと五十嵐を見ていると、
鋭い目付きへと変わった五十嵐は『ポツリ』と呟いた。
『俺は復讐者だ・・・。
君と一緒に居れば、彼女の敵に・・・。
『花蓮』を殺したヤツに会えそう気がするからな?』
「・・・か、花蓮って・・・ま、まさか・・・そんなっ?」
英二の声に反応する事無く、
再びマジックボックスから取り出し、缶ビールを一気に飲み干した後、
カーテンが閉まる窓の向こうへと睨みを利かせていたのだった。
ってな事で・・・。
今回のお話はいかがだったでしょうか?
陸奥の口から『花蓮』という名が出て来ました・・・。
今後、その名を覚えておいてもらえればと思います。
登録してくれている読者様方に少しでも、
楽しんで頂けるよう、今後とも頑張りたいと思いますので、
応援のほど宜しくお願いしますっ!
ってなことで、緋色火花でした。




