27話 大根演技と悠斗の決意
お疲れ様です。
腰が痛い今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
私は・・・仕事ですけどね><
今日も熱くなりそうなので、皆さんも気をつけてくださいね?
ブックマーク及び感想など、宜しくお願いします。
それでは、27話をお楽しみ下さい。
見回り隊は悠斗達を見ると気味の悪い笑みを浮かべていた。
「ユウト・・・あいつらこっちに来るぞ」
「どうするか決めたみたいだな」
悠斗とグレインは小声で話していると、
一定の距離に部下達を残し、隊長が一人歩いてきた。
薄ら笑いを浮かべる隊長が話しかけてくる。
「やあ、お待たせしました」
口調を変えて愛想笑いを浮かべている。
「あっ、隊長さん。話は決まったのですか? 」
「はい。ダークエルフの方の件は大丈夫ですので
ご領主の元に行かれて結構ですが・・・」
隊長は悠斗達の反応を見ているようで、視線が落ち着かないでいた。
(まぁ、悪巧みする時って、やっぱり視線はよく動くよな)
悠斗は相手の眼球の動きを見て様子を探る。
「それでですね・・・。助け出された女性は、こちらで責任を持って保護します。
ですから、今日はこのままアシュリナに向かわれても結構ですよ」
「んー。隊長さん、一応身元確認等をされた方が宜しいのでは?
それと、これだけの人が集まっているのですが、
一応皆さんに、この女性が誰か・・・確認を取られたほうが・・・」
悠斗の言葉に隊長は「ニヤリ」と笑うと、言葉を最後まで聞くこと無く答えた。
「あ~いえいえ、それでしたら、後から来た部下の者が
あの女性の事を知っておりまして・・・」
隊長は後から来た部下に振り返り手で指し示すと、
その部下が頭を下げてきた。
「なるほど。そうだったのですね」
「はい。ですので身元確認等は必要ないかと思います」
「それでしたら、こちらも何も言う事はありませんね」
悠斗がそう言うと、隊長は再び気味の悪い笑みをこぼした。
悠斗達に背を向け立ち去ろうとする見回り隊を、悠斗が呼び止めた。
「あっ、隊長さん!」
隊長は体を「ビクッ」っとさせると、少しの間硬直しゆっくりと振り向いた。
「な、何でしょう?」
顔を引きつらせながら不自然に微笑む隊長。
「えっと、グレインさんがですね・・・」
「えっ?お、俺??」
突然名前を出され体を「ビクッ」っとさせて声を上げる。
悠斗は肘でグレインの腹を打つと小さく呻き声をあげた。
「うぅっ」
「あははは、えっと・・・グレインさんがですね
一応アシュリナの見回り隊にも報告をしておいたほうがいい・・・
そう言っていたのですが?」
悠斗の言葉にグレインも慌てて頷く。
一瞬隊長の顔が曇ったのだが、すぐに返答してくる。
「報告はしなくても良いですよ?
この女性は、ロックバルの住民のようなので、
全てこちらで処理します」
悠斗は隊長の言葉に引っかかった。
(おいおい隊長さん、今・・・処理って言ったな?
色んな意味でバレバレだろ?)
悠斗はグレインに顔を向けると、同様にグレインも思っていたようだ。
「なぁー隊長さんよ。聞き違いか? 今、処理っつったか?」
隊長は慌てて訂正を始めた。
「いえいえいえ、失礼致しました。グレイン殿。
この件はこちらで処理します・・・そう言いたかったのです」
(あんなに汗を流していたら、説得力も何もないよね?)
「そうか、こちらの早とちりだったようだな」
グレインの態度を見ていた悠斗は・・・
(はは。意外と演技上手いじゃん。パチパチパチ)
心の中で、グレインに拍手していた。
悠斗はいたずらっ子のような笑みを浮かべると・・・
「あ~隊長さん!その女性の持ち物はどうしましょうか?
一応確認のために中身を検分されたほうが宜しいかと思いますが?」
その一言に隊長含め、部下達の顔が一斉に引きつった。
「えっ、い、いや、そ、その~・・・・」
言葉が出てこない隊長を尻目に、悠斗はアイテムバッグから
女性の荷物を出し始めた。
「ちょっ!ちょっと、ちょっと待ったぁぁ!!!」
慌てふためく隊長は、必死の形相で悠斗を止めた。
「はい?どうしましたか?えっとー・・・まだありますけど?」
「いや、あのー・・・ですね。ちょっと、それはー・・・」
隊長は汗を「ダラダラ」と流し始めた。
「ん?何か困った事でも?」
とぼけつつ隊長を追い込んでいった。
(このくらいでいいかな?)
悠斗はそろそろ潮時だと思い、隊長に助け舟を出す。
「あっ~!この人数でしたら、皆さんで分担すれば持っていけますね?」
悠斗は15歳に似合う無邪気な笑顔で提案した。
「お、おう!そ、そうだな!我らもそう言おうと思っていたところだったのだ」
悠斗の誘いに乗った隊長は、荷物をそれぞれ部下達に持たせた。
上手く誤魔化せたと思った隊長は上機嫌になり、
「あ~・・・・君は確か、ユウト君と言ったかな?」
「はい、そうです」
「ふむ、この度の働き・・・見事だったと言っておこう。
それでだが・・・こんな気持ちのいい若者に何か褒美を・・・と、思ってな?
まぁー少ないが、我から少々ではあるがこれを受け取ってくれ」
隊長の懐から取り出されたモノは・・・革袋。
つまり・・・金だ。
悠斗は白々しく無垢な顔で、中身を確認すると・・・
「うわぁー!銀貨5枚も!」っと、大根演技をしてみせた。
それに気を良くした隊長は・・・
「まぁー。ユウト君からしたら大金だろうが、
我からすれば・・・まぁ~子供の駄賃くらいだからな、
気にする事なく受け取り給え!」
悠斗はお礼を言い、グレインとイリアの方へ振り向くと・・・
すでに悠斗に笑顔はなく、鋭い眼光が光っていた。
その様子を見た2人は、あまりの迫力に「ゴクリ」と息を飲んだ。
「お、お前・・・」
「なぁ、グレイン・・・」
「な、なんだ?」
「盾のモチーフに船の帆と剣の家紋に心当たりはあるか?」
「あ、ああ・・・サウザー様の家紋だが・・・どうした?」
グレインは悠斗の抑え込まれた殺気に寒気を感じていた。
「アシュリナの令嬢という、物的証拠は俺が持っている」
「そ、それは本当なのか?」
「ああ・・・彼女の身元を証明する品を数点な」
悠斗の返答に、2人の様子をずっと伺っていたイリアが口を開く。
「ユ、ユウト・・・。私はあの女性に鑑定を使ってみたんだけど・・・」
「鑑定・・・出来なかったんだろ?」
「えっ?ええ・・・。どうしてそれを?」
「まぁー今それは置いといて・・・。何故鑑定が出来なかったか・・・
まずはそれを答えるよ。」
グレインもイリアも緊張した面持ちで聞く。
「誰がやったかはわからないけど・・・あの令嬢には、
認識阻害・意識覚醒阻害・鑑定阻害と・・・
何重にも、阻害魔法が施されているようなんだ」
「そ、それって本当なの?何重にも阻害魔法なんて・・・ありえないわ」
「ああ、そんな外道のやる事をヤツらがしたと言うのか?」
悠斗から令嬢の現状などを聞かされ、冷静さを失っていた。
「二人共・・・少し落ち着けよ」
「落ち着いてなんていられないわ!特に・・・意識覚醒阻害の魔法なんて・・・
例え意識が回復したとしても、必ず何処かに障害が残るのよ?」
「ああ、そうだぜ!ロジーに何かあったら・・・
サ、サウザーの旦那は・・・どれだけ悲しむ事か・・・」
「ふぅ~」っと、悠斗は息を吐く。
「二人共、それなら安心していいよ。俺はエリクサーを持っているからさ」
悠斗の言葉に「きょとん」とする二人・・・。
「ああー、騒ぐ前に言っておくけど、今、騒いだら・・・わかってるよね?」
悠斗がそう言うと、二人は手で口を隠し、何度も頷く・・・。
「どうして俺がそんなモノを・・・とか、そう言う事は聞かないでくれ」
その言葉に再び何度も頷く二人。
(エリクサーは万能薬だから、とても貴重なモノらしいけど
俺はミスティからたくさんもらってるからな・・・
まぁ、そんな話は出来ないけどね)
悠斗達が話をしていると、見回り隊の隊長が歩いてきた。
「グレイン殿と旅のお二人、この度は本当に助かりました。ありがとう」
隊長は白々しく礼を述べ頭を下げる・・・が、
悠斗は隊長が頭を下げた時、笑っていたのを見逃さなかった。
(こいつ・・・まじでゲスだな)
頭を上げた隊長は悠斗達を見ると・・・
「我々はこれより、荷物の整理をしてから帰路に着く予定なので
皆さんはアシュリナへ向かってください。ご協力感謝する」
そう言うと、隊長は足早に戻って行った。
その後姿を見ていたグレインは・・・
「ちっ!あの野郎、何か言われる前に逃げやがったぜ!」
舌打ちするグレインを他所に、悠斗は地形の確認をしていた。
一通り確認すると・・・
「さて、街道へ戻りますか?」
「で?勿論、この後どうするかは決まっているんだろうな?」
「ええ、勿論ですよ」
「なら・・・教えろ」
「グレイン・・・ところで、アシュリナへは戻らなくていいんですか?」
「そうだな・・・」
グレインは仲間にハンドサインを送った。
「何んていうサインを出したんだ?」
「あ?ああ、誰か一人ギルドへ行って、依頼達成の報告をしてこいってな」
「なるほどね」
悠斗を見つめる二人はそれぞれに思うところがあった。
(ユウトの口調もそうだが、少し漏れていた殺気も感じなくなったな
こいつ、ひょっとすると・・・俺よりも・・・)
(ユウトの口調は戻ったけど・・・まだ何か・・・)
二人の事はスルーして歩いて行く悠斗を二人が追う。
「な、なぁーユウトよー。次はどーすんだよ?」
焦らされるのが嫌いなグレインは悠斗に詰め寄る。
「はぁ~・・・わかりましたよ、もう!」
悠斗はかなり面倒臭そうだった。
「そう邪険にするなよ~。俺達はもうダチだろ?」
ニヤけた顔で懐いてくるグレインが少し鬱陶しくなる悠斗だったが・・・
「はいはい、わかりましたよ」
「へへっん、若いうちは大人の言う事は聞くもんだぜ♪」
悠斗をからかうように言葉を投げかけてくる。
「ふーん。なら・・・次の作戦を立ててもらいましょうか?
お・と・な!なんでしょ?」
悠斗はグレインに仕返しをする。
「す、すまん・・・ちょっと調子に乗った」
簡単に折れるグレインにコケそうになる。
(俺はどうしてこんな若造に頼っているんだ?不思議なヤツだ・・・
こいつ本当に15か?まぁー退屈しなさそうだけどな)
「とりあえず・・・街道に出たら、グレイン達とは別行動する」
「はぁー?そりゃねぇーぜ!ユウトよー、最後まで付き合うからよ!」
再び悠斗はため息を吐くと・・・
「グレイン、イリア・・・そのまま反応せず聞いてくれ」
二人は無言で頷く。
「気づいてるか?二人共。隠蔽使って俺達を監視しているヤツが二人居る」
二人は気配察知を使うのだが・・・
「本当に居るのか?確認できねーぞ?」
「ごめんなさい。私にも確認できないわ」
「・・・認識阻害と気配阻害を使っているみたいだよ」
「また・・・阻害魔法かよ。いらつくぜ」
「・・・ユウト、どうしてそれがわかるのよ?」
「その話はまた今度な・・・」
悠斗は説明を後にすると、何故グレイン達と別行動なのかを話した。
「恐らくだけど・・・。監視されているのはグレインだ」
「何で俺ってわかるんだよ」
「ん?普通見ず知らずの旅人・・・っていうか、こんな若造より
A級冒険者の方を監視するのは当たり前だろう?」
「あ、ああ~・・・そういう事か」
「おいおい、普通分かるだろ?」
「はっはっはっ!お前と居るとそういうのを忘れるぜ♪」
「のんきだな~・・・」
悠斗は苦笑しながら歩いて行く。
「監視されたままじゃ助けられないからね。
だからグレイン達にはアシュリナに戻ってもらいたいんだけど・・・」
「まぁ言いたい事は理解したが・・・」
「だったらさ・・・あの森の向こう側で見張っているヤツが居るはずだから
邪魔・・・って言うか、声を出させて位置を知らせてくれないか?」
「あの森まで声が届くのか?」
「まぁー何とも言えないけどね」
グレインは腕を組みながら考えるが届くかどうかわからない。
「お前がロジーを助けるにあたって、大切に思う事はなんだ?」
「んー。彼女の命を最優先って事と・・・
グレイン達には戻って欲しいって事かな?」
本音を迷わず言ってくれた悠斗に笑いつつ感謝する。
「わかった!お前はロジーだけじゃなく、
俺達にまで気を遣ってくれているって事だな?」
「ま、まぁー・・・そう・・・なるかな?」
悠斗は少し恥ずかしそうな素振りを見せる。
「はっはっはっ!お前ってヤツは本当に面白いヤツだな!
わかった!俺達はアシュリナで、お前達を信じて待ってるからよ!
だから・・・ちゃんと帰って来いよな?」
悠斗はグレインの気持ちに苦笑すると・・・
「ああ、当然だろ!必ずアシュリナには行くさ。
でも多分・・・数日かかるかも・・・ね」
「そうか・・・何かあるんだな?」
「・・・ああ」
グレインはこの時、悠斗が何かを決意した顔を見た。
そして街道に着いた時・・・
「なぁグレイン、俺達とは違う道で戻ってくれ」
「えっ?でもよ?俺はお前達を迎えに来たって言う・・・」
「あ~・・・それはあの監視達には知られてないと思うぞ」
「そうなのか?」
「ああ、仲間を連れて戻ってきた連中よりも、少し後から来たからな」
「お前がそういうなら・・・」
「あの角にある雑木林付近で別れよう」
「わかった。ユウト・・・無理するなよな?」
「ああ、勿論だ」
グレインはこの後何が起るのか、経験上予想ができた。
(もし、俺の予想が正しかった時は・・・助けてやるからな)
グレインは悠斗をこのまま終わらせたくなかったのだ。
そして3人は街道沿いの分かれ道の角にある雑木林で分かれるのだった。
ラウル ・・・ 原作者頑張るね~
ミスティ ・・・ ええ、誰かさんより頑張っておられますわ♪
ラウル ・・・ それって誰の事なのかな~?
ミスティ ・・・ 勿論・・・ラウル様ですわ
ラウル ・・・ 最近、君・・・僕に辛辣だよね?
ミスティ ・・・ 当然だと・・・言わせて頂きますわ
ラウル ・・・ 僕は君に何をしたのだろうか?
ミスティ ・・・ 手料理の件・・・お忘れですか?
ラウル ・・・ (手料理を拒否したのを根にもっていたのか・・・)
ミスティ ・・・ 何か言い訳でも?
ラウル ・・・ あっ!お腹痛い!!とう!
ミスティ ・・・ ちっ!逃げたか!
ってなことで、緋色火花でした。




