231話・上位神の威厳と創造神の失態
お疲れ様です。
最近キリキリと胃が痛む緋色で御座います。
勿論、仕事関係で痛むのですが・・・><
さて、今回は・・・。
後半の話に出て来る『ミアプラ』がやらかしますw
まぁ~、やらかすとは言っても、そう言う事ではないのですがw
って言うか・・・。
『コメディ化』が止まらない・・・orz
そんな緋色ではありますが、
今後とも温かい目で見てやって下さいw
仕事の合間にコツコツと書いておりますので、
ストックは充分にありますっ!
(か、感想で誉めてもいいんですよ?w)
それでは、231話をお楽しみ下さい。
イザナミの言葉に何とも言えない空気が漂う中、
静かに目を閉じたイリアは小さく頷きながら、
まるで念仏でも唱えるように呟いていた・・・。
『私達だけでも大丈夫・・・大丈夫・・・。
全然・・・問題・・・ない・・・全然・・・』
そう何度か呟く中、次第にイリアの眉間に皺が寄るが、
その様子を見かねたセルンがイリアの肩に手を乗せた・・・。
「・・・えぇ、問題ないわ。
私達だけでも充分やれるから自信持って・・・」
「・・・えぇ、有難うセルン」
一瞬・・・。
セルンがイザナミに厳しい視線を向けるも、
イザナミは満面の笑みを浮かべみんなに『念話』を飛ばした。
{行ってらっさぁ~い♪}
『クっ!』と呻くようにイリアとセルンの『念話』が届くも、
イザナミの満面の笑みは一片の揺らぎすらなかった・・・。
そして2人の意思が固まった直後・・・。
イザナミは意気込む2人にアドバイスを口にした。
「あんた達・・・。
あの『スピードスパイダー』は、
あんた達の想像を超えた速度だからね?
油断してると・・・一瞬で死ぬわよ?」
イザナミのそんなアドバイスにイリアは『キっ!』と睨むも、
再びセルンがその肩に手を乗せた事で気持ちを切り替えると、
2人で最終の打ち合わせを『念話』でし始めた。
そんな中・・・。
イザナミは黒紅に『念話』を飛ばした。
{黒紅たん・・・}
{・・・はい?}
{見ての通りこの子達は意気込み過ぎて空回りしてるっしょ?}
{・・・そうですね。私から見てもそう思われます}
{フフフっ♪さっすが悠斗坊やの『門』よねん♪
まるっとお見通しって事ね~♪}
{いえ、まるっとはいきませんが、
でも、イリアの感情の変化は顕著に出ています・・・。
誰がどう見ても空回っているのは明らかです」
冷静にそう分析した黒紅に、イザナミはご満悦な表情をしていた。
そして黒紅こう伝えたのだった・・・。
{・・・ってな事で~♪
黒紅たん・・・。
この2人を守ってあげてね~?}
{・・・はい、主様のお仲間ですから当然です}
{ういうい・・・いいね、いいね~♪
それとさっきアタシが言った『特性』の事・・・
ちゃんと理解してる~?}
{はい、問題ありません・・・。
『アレ』・・・ですよね?}
{ういうい♪そそっ・・・アレよ・・・アレ♪
よーしっ!よしっ!
じゃ~黒紅たんっ!つー事で~♪
シクヨロ~♪}
{・・・はいっ!}
黒紅とイザナミが『念話』を終えた頃、
イリアとセルンも打ち合わせを終えると息を軽く吐き、
リラックスしていた・・・。
「じゃ~・・・みんな頑張っていったんさーいっ!」
『おっけーっ!』
皆がそう声を挙げたと同時に飛び出すと、
セルンは早速『火球』を放った。
「ファイヤーボールっ!」
セルンの放った『火球』が前方を走るイリアの横を掠めると、
群がっていた『スピードスパイダー』に直撃した。
『ボっ!』と1体の『青い縞模様の蜘蛛』が炎に包まれると、
群がっていた『スピードスパイダー』は散開し、
2体が攻撃に備え、あとの3体は魔法を放ったセルンに迫って行った。
「・・・来たわねっ!」
横をすり抜けセルンへと向かう『蜘蛛』を横目に見ながら、
イリアはレイピアを抜刀しながら声を挙げた。
『はぁぁぁぁぁぁっ!』
目標を燃える『蜘蛛』へと定めたイリアは、
『シュっ!』っとレイピアを振り下ろすと、
『ギィィ!』と断末魔の声を挙げそのまま息絶えた・・・。
『次っ!』
勇ましくそう声を挙げたイリアを他所に、
セルンは迫る『蜘蛛』に構う事もせず、
前衛で戦うイリアにバフを重ね掛けしていった・・・。
「スピード強化・・・毒耐性強化・・・。
筋力向上・・・視力強化・・・」
迫る『蜘蛛』に構わず集中し、
イリアの為に『バフ』を放ったセルンに、
『蜘蛛』が襲い掛かった・・・。
{セルンさんは私が守りますっ!}
一瞬顔を顰めたセルンだったが、
突然目の前に立ちはだかった黒い影に自然と口角が挙がった。
襲い掛かった『蜘蛛』だったが、
突然現れた黒紅に衝突すると『キュっ!』と声を挙げ、
そのまま『ズルっ』と落下した。
「・・・助かったわ、黒紅。
ありがとね♪」
{いえいえ♪}
そう声を挙げたのも束の間・・・。
『蜘蛛』は起き上がり黒紅から距離を取り糸を出し始めると、
それはやがて収束し一本の『白い槍』となった・・・。
3体居る『蜘蛛』が各々にソレを作ると、
『キィィィっ!』と声を挙げながらその『白い槍』を放った。
『黒紅っ!』とセルンの声が挙がる直前、
『任せて下さいっ!』と言った黒紅が『白い槍』を弾くと、
防御した黒紅と通路の隙間から、セルンは『火球』を放った。
『ボっ!』と一体の『蜘蛛』が燃え上がったのだが、
何だか様子がおかしかった・・・。
「・・・あ、青白く・・・光って?」
セルンが眉を寄せそう口にした途端・・・。
突然燃え上ったはずの『蜘蛛』が『シュゥゥ』と音を立て、
燃え上った『火球』を『レジスト』したのだった・・・。
「・・・青白く光るとレジストされるっ!?」
そう思ったセルンは前方で戦うイリアに『念話』を送り伝えたが、
そのイリアは苦戦を強いられているようで『念話』には答えなかった。
そんなイリアにセルンは『ブルースピリットよっ!』と声を挙げると、
後方に飛んだイリアは『おっけーっ!』と言いながら腰を落し、
声を高らかに挙げた・・・。
『アーマード・ブルースピリットっ!』
そう声を挙げた瞬間・・・。
牛並みと言われる大きな胸の辺りから『青い火』が出現すると、
その『青き火』は分裂し、各部アーマーへと変化した。
『キっ!』と目を細めたイリアは駆け出しながら、
『ウエポンズ・ブルーフレイムっ!』と叫ぶと、
再び牛並みの大きな胸の間から出現した『青き火』が、
イリアの持つ『レイピア』に燃え移った・・・。
『ボっ!』
『ブルーフレイム・ソードっ!』
そう声を挙げながら飛びかかって来た『蜘蛛』に斬りかかるも、
間一髪捉えきれず『蜘蛛』は『キィ』と笑っているかのようだった・・・。
だが・・・。
「・・・フっ♪甘いわね?」
薄く笑みを浮かべたイリアがそう言うと、
突然難を逃れたはずの『蜘蛛』の身体か『ボっ!』と音を立て燃え上った。
『ギィィィィ』と苦しみながら裏返り、
悶え苦しんでいたがその断末魔はすぐに消え、
『シュっ』と塵になって消え去った・・・。
「・・・さぁっ!次はどいつよっ!?」
そんな声を聞きながら、セルンも負けられないとばかりに気合いを入れた。
だがセルンを守る為に立ち塞がる黒紅が邪魔をし、
思うように攻撃が出来なかった・・・。
(・・・タ、タイミングがっ!?)
明らかに連携が取れていない様子に、
苛立ちを募らせる者がもう一人居た・・・。
それは後方から戦闘を眺めているイザナミだった・・・。
(く、黒紅たんっ!?
ちょ、ちょっとあんたっ!私の言った『特性』の事・・・
ちゃ、ちゃんとわかってるっ!?
ってかっ!あぁ~あぁぁぁっ!?
黒紅たんが邪魔で、セルンが思うように攻撃出来ないんだってばっ!)
黒紅はセルンを守る為、身体を張り必死に防御していたのだが、
それが返ってセルンの邪魔をする事になり、
ギクシャクとした連携になってしまっていた・・・。
(いやいやいやいやっ!ち、違うからっ!?
た、確かに黒紅たんは『門』だから硬いっちゃ~硬いんだけどさ?
ぜんっっっっっぜん違うからっ!
ど、どうして身体を張って防御してんのよっ!?
『特性』を考えたらさっきの『白い槍』の攻撃で、
その『特性』を生かせば、
全部倒せているはずなのにぃぃぃぃぃっ!)
いつの間にか取り出した白いハンカチを咥え、
苛々しながら引っ張っていたのだった・・・。
その時だった・・・。
余りの苛々につい・・・イザナミから声が漏れた・・・。
「あんたっ!いい加減にアタシの言った『特性』に気付けっちゅーのっ!
・・・・・・・・・・あっ」
その大きな声に前方で戦闘するセルンと黒紅の動きが止まると、
隙を突き・・・『スピードスパイダー』の一体が行動に出た。
『キキィっ!』
そう声を発した『蜘蛛』は壁を走り、
まだ固まっているイザナミに襲い掛かろうとした時だった・・・。
{イザナミ様ぁぁぁっ!}
そう声を挙げた黒紅の身体が赤い光を放つと、
屋根瓦の1つが『バシュンっ!』と音を立てて発射された。
『シュルシュルシュル・・・』っと、
回転しながら高速で発射されたその屋根瓦は、一直線に飛んで行くと、
イザナミに迫った『蜘蛛』を一瞬にして斬り裂いた・・・。
『ザシュっ!』
『ドスっ!』
「・・・い、今・・・何が・・・?」
茫然としながらそう呟いたイザナミの視線が黒紅を捉えると、
目を見開き『ゆらゆら』と浮き上がる『屋根瓦』に驚いていた。
そして黒紅は後方に居るイザナミに向けてこう言った・・・。
{こ、これがイザナミ様の言っていた『特性』ってヤツですねっ!}
そう言うとイザナミが『い、いや・・・ちょっと・・・』と、
言い始めるも・・・。
テンションが上がっていた黒紅にその声は届かなかった。
{うぉぉぉぉっ!黒紅っ!やってやりますともぉぉぉぉっ!
こいつら全部『駆逐』してやりますともぉぉぉっ!
ふはははははっ!このゴミムシ共めがぁぁぁぁっ!}
そう叫び声にも似た声を挙げながら、
『ドスっ!ドスっ!』と前方へと移動し攻撃を始めた。
「い、いや・・・だから・・・黒紅・・・たん?」
何度も瞬きをしながらそんな言葉がこぼれ始めると、
イザナミはこちらを見つめる視線に気付いた・・・。
そしてその視線の主はイザナミにだけ聞こえるように、
『念話』を飛ばして来た・・・。
{・・・イザナミ様?}
{・・・は、はい}
{・・・あの子はもう止まらないですよね?}
ジト目を向けてそう『念話』を飛ばして来たのは、
顏を盛大に引き攣らせ『ポツン』と取り残されたセルンだった・・・。
その視線はもはや『戦意喪失』しており、
イザナミを貫くが如く・・・その視線を向けていたのだった・・・。
{い、いやぁ~・・・ア、アタシが言いたかったのは、
そ、そう言う事じゃないんだってば・・・}
{・・・へぇ~}
{いやいやいやっ!ほ、ほんとだってばっ!
まじでそうじゃなくてっ!}
{・・・へぇ~}
セルンにとってイザナミの言葉は『もうどうでもいい』と言った感じで、
取り着く島もなかったのだった・・・。
「い、いや・・・だからさ?
ア、アタシが言った『特性』ってのはそうじゃなくてさ?
ちょ、ちょっと・・・セルン?
聞いてる?ねぇってばっ!?アタシの言う事を信じてぇぇぇっ!」
『ゴチャゴチャ』になった胸の内を言い始めるも、
セルンのジト目は一切揺らぐことはなく、
それをどうにか説得しようと再び口を開けた時だった・・・。
{イザナミ様ーっ!終わりましたぁ~♪}
それはそれは元気な黒紅の声が聞こえた瞬間・・・。
『ガクっ!』と膝から崩れ落ちたイザナミは再び血の涙を流しのだった。
「あ、あの子達の・・・た、戦いを・・・
ほとんど見れなかった・・・。
け、結局・・・『ブルースピリット』がどんなモノなのかを・・・
知る事もなく・・・た、ただ・・・『破天荒な門』に・・・
うぅぅぅぅぅ・・・。
やっぱり・・・『門』って・・・さ?
『所有者』に似る・・・のね?
空気読めない所なんて・・・一緒じゃん?
ア、アタシ・・・地球の『上位神』・・・よね?
ってか、『上位神の威厳』って?
だ、誰か・・・誰かこんな哀れなアタシに教えてよぉぉっ!
フフフ・・・全く・・・トホホ・・・だわ・・・」
イザナミの苦難の道は続く・・・のだった・・・。
そして此処は『嘆き森』・・・。
悠斗の元へと辿り着いた双子の兄妹・・・。
淡い緑色の空間の中で横たわる悠斗を見ると、
『パパ~♪』っとミアプラが楽し気に声を挙げた・・・。
「あ、あれれ~?ねぇ、エルナト~?」
「・・・何だい?」
「パパ・・・起きないよ?」
「・・・うん。
一応パパって死んでるからね」
「・・・そっか~♪」
そんな双子の何気ない会話に、
この場に居た者達は言葉を詰まらせ何も言えなかった・・・。
するとミアプラがあどけない瞳でアリエルを見ると、
更に皆が言葉に詰まった・・・。
「ねぇ、アリエル様~?」
「・・・ん?何かな?」
「この中に入ってもいーい~?」
「・・・・・」
再び言葉に詰まったアリエルが複雑そうな表情を見せると、
双子の後ろからカロンが2人の頭を撫でながら口を開いた・・・。
「すまんな~・・・2人とも」
「・・・ん?」
「この緑色の空間の中には、
俺達神でさえ・・・入れねーんだよ・・・」
そう言ったカロンは歩みを進めると、
淡い緑色の結界に指先で触れて見せた・・・。
『ピシっ!』
「・・・ほらな?」
カロンが結界に触れた途端・・・。
その触れた部分に電流が走り、その中に入る事を拒絶したのだった。
その様子を目の当たりにしたミアプラが悲し気にしていると、
エルナトが『・・・もしかしたら?』とそう呟き一歩踏み出した。
「お、おいっ!坊主っ!?」
そんな声をカロンが挙げるも、エルナトは気にする様子もなく進むと、
腕を組みながら小首を傾げたエルナトはゆっくりと手を伸ばした。
『危ないっ!』
ノーブルの神々がそう声を挙げた時だった・・・。
エルナトは突然『ハハハ』と小声で笑って見せると、
その伸ばした右手に『神精力』を纏わせた。
そして再び小声で『・・・これなら?』
そのエルナトの声によどみはなく、確信を持って手を伸ばすと、
『神精力』を纏ったその腕は結界の中に難なく浸入する事が出来た。
『・・・おぉぉぉ』
この場に居た者達が驚きどよめきを見せていると、
振り返ったエルナトはミアプラに視線を向けた・・・。
「・・・わかるよね?」
「うん♪」
ミアプラもエルナトに習って『神精力』を纏わせると、
その腕を浸入さえ、やがて双子は結界の中に入って行った・・・。
「まっ、まじかよ・・・?
あいつら・・・入っちまったぜ・・・」
カロンの口からそんな言葉が漏れ、
ミスティやミランダも目を見開き驚いていた。
双子は一度結界の外に居る者達に振り返ると、
元気な声で『行って来る♪』とそう告げ駆け出した。
そして悠斗の元まで辿り着いた双子が、
ゆっくりと顔を覗き込むと顏を見合わせ首を傾げた・・・。
「お、おい・・・あの兄妹達・・・一体どうしたんだ?」
双子の兄妹が年齢に似合わない険しい表情を見せ、
思わずカロンがそう口を開くと、
何かに気付いたミスティの口が無意識に開いた・・・。
「あの子達・・・怒ってる?」
そんなミスティの言葉にこの場に居た者達の視線が集まり、
淡い緑色の結界の中からエルナトの声が聞こえて来たのだが、
その声は怒っているようだった・・・。
「・・・ちょっと!誰ですかっ!?
パパの邪魔をする人はっ!」
『・・・邪魔?』
数人の神々が揃って口を開いた時、
突然背後から『やぁ~みんな・・・お待たせ♪』と、
この場に似つかわしくない軽い口調の声が聞こえた・・・。
その声に振り返った者達の視線に尋常じゃない圧力を感じると、
声の主である『創造神・ラウル』は顏を引き攣らせた・・・。
「・・・な、何?
ぼ、僕・・・何かしたっけ?」
そう言いながらラウルは隣に居た天照と月読を見るも、
肩を竦ませ頭を横に振って見せた・・・。
すると・・・。
淡い緑色の結界の中から『あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』と、
双子の兄妹の大きな声が聞こえたのだが、
その声には『怒気』が込められていた・・・。
「えっ?えぇっ!?ぼ、僕っ!?
な、何で・・・?どうしてっ!?」
双子の兄妹の『怒気』が向けられたラウルは、
困惑し激しく動揺していると、
怒りの表情を浮かべた双子が駆け出し、
いとも簡単に結界を突破して来たのだった・・・。
その様子にラウル、天照、月読が驚いていると、
間もなく到着した双子の兄妹がラウルを指差し声を荒げた。
『ラウル様がパパを苦しませる張本人だねっ!』
しっかりとシンクロしてそう告げられたラウルは、
再び困惑の色を浮かべ、周り何いた者達の顏を見た・・・。
だが皆が揃って頭を振ると、更に困惑したラウルが口を開いた。
「えっと・・・僕が何か・・・したの?」
『うんっ!』
『怒気』を向けたままそう力強く返答した双子に、
増々ラウルは困惑し焦り始めた・・・。
「ぼ、僕が・・・悪いの・・・かな?」
『うんっ!』
再び揃ってそう答えるとエルナトが一歩前に踏み出し、
ラウルを見ながら口を開こうとした・・・。
ところが・・・。
突然エルナトの背後からこんな声が聞こえて来た・・・
「ちょっと待って下さい、エルナト君・・・」
「・・・く、君っ!?」
驚いた様子で振り返ったエルナトは、
腕を組み『ふっふっふっ』と謎の笑みを浮かべるミアプラを見た。
「・・・ミアプラ?」
「・・・ここは私が」
「・・・あ、あぁ、わかったよ」
肩を竦ませながらそう答えたエルナトに、
ミアプラは無言で頷くと一歩・・・ラウルに対し正面を向けた。
「・・・な、何?」
戸惑うラウルにミアプラは腕を組むと左右にゆっくりと動き始め、
まるでどこかの『名探偵』のような口ぶりで話を始めて行った・・・。
「・・・ラウルさん」
「・・・さんっ!?」
「今回パパがこのようになった・・・。
コホン、いえ・・・。
今回『神野悠斗さん』をこの状態にした犯人は・・・。
ズバリっ!
ラウルさん・・・貴方ですね?」
(聞き慣れたBGMが突然流れて来る)
「はっ、犯人っ!?ぼ、僕がっ!?
ど、どどどどどうして僕がっ!?」
慌て始めたラウルにミアプラは『ふっ』と鼻で笑って見せると、
いつの間にか取り出した『黒い眼鏡』をかけて話を続けた・・・。
この時・・・。
天照と月読はこんな会話を『念話』でしていた。
{・・・どこぞで見た光景じゃの?}
{そ、そうですね・・・ほほほ・・・姉上}
{それにしてもこの子達はどこから学んだのかの?}
{ふふふ・・・嫌ですわ・・・姉上。
勿論こんな事を教えられるのはこのノーブルでただ一人っ!}
{・・・悠斗殿じゃの}
{あ、姉上ーっ!?私に最後まで言わせて下さいっ!
『真実はいつも・・・』とかって言いたかったですっ!}
{お、お前まで何を感化されておるのじゃっ!?}
{・・・はっ!す、すみません・・・}
{・・・も、もうよい}
天照と月読が『念話』する中、
ミアプラの『ショー』は続いていった・・・。
「ラウルさん・・・。
貴方は~『悠斗さん』をこのノーブルに招いた際・・・
彼に~・・・いくつかの『スキル』を授けたのではありませんか?」
「た、確かに・・・か、彼が困らないようにと・・・」
「ふっふっふっ・・・。
そうでしょう、そうでしょう・・・。
貴方は~誰に対しても分け隔てる事もなく『善意』で行っている事・・・」
「・・・ぜ、善意?」
「ですが~・・・それが今回・・・
仇となってしまったようですね~?」
「ぼ、僕の善意が・・・仇に?」
「えぇ・・・。
今回貴方の善意が・・・彼をこのようにしてしまったんですよ~」
「・・・ぼ、僕が・・・悠斗君を?」
「はい・・・そうです。
本来ならば~・・・彼は・・・
決してこのような状態になるはずではなかった・・・
違いますか?」
「い、いや・・・でも、違うかどうかと言われたら・・・
決して僕が何かしたからでは・・・なくて・・・」
ラウルは妙に汗ばみ始めると、
俯きその眼球が激しく泳ぎ始めたのだった・・・。
「ど、どうして僕が悠斗君を?
えっ!?ぼ、僕は一体彼に何をしたと言うんだっ!?」
そしてこの時・・・。
怪しく光るミアプラの目が俯くラウルに向けられると・・・。
その時だった・・・。
いつの間にかイザナミの神界の門が背後に姿を現すと、
『ギィィィっ!バタンっ!』と・・・。
どこかで見た『アイキャッチ』のように扉が閉まり、
一呼吸置いて、再び『ギィィィ』と音を立てながら扉が閉まった。
そしてこの時・・・。
天照と月読は再び『念話』で会話していた・・・。
{・・・これもどこぞで見た光景じゃの?}
{そ、そう・・・ですね}
{まさかとは思うが・・・の?}
{何ですか・・・?姉上}
{ま、まさか母上の門のヤツ・・・。
コレり為に・・・残って居るのではあるまいな?}
{ま、まさか~・・・姉上。
これはただの偶然かと思われますが?}
{・・・なら、いいのじゃがの?}
そんな会話を天照と月読がしていると・・・。
『コホン』と咳払いをしたミアプラは、
俯くラウルに指を差しながらこう言い放った。
「貴方の善意が与えた・・・その『特殊回復スキル』がっ!
彼を・・・。『神野悠斗さん』の・・・。
『鬼の力』を半減させているんですよっ!」
(そして再び聞き慣れた名BGM)
「なっ・・・僕の与えたスキルがっ!?」
そんなミアプラの説明に『ドクン』と激しく・・・
ラウルの心臓を跳ね上げた・・・。
「ぼ、僕の与えたスキルで悠斗君が?」
「ええっ!そうですよ・・・。ラウルさんっ!
貴方の無償で与えられたそのスキルがっ!
回復しているはずの彼をっ!窮地に立たせているんですよっ!」
「そ、そんなぁぁぁぁっ!」
「ふっふっふっ・・・はっはっはっはっ!」
『がくっ』と膝から崩れ落ちたラウルとは対照的に、
ミアプラが似つかわしくない笑い声を挙げると、
突然そのミアプラに『えいっ!』と言いながら、
エルナトが『チョップ』を振り下ろしたのだった・・・・。
「い、痛ぁぁぁいっ!何するのよっ!?」
「・・・ミアプラ~?
もうその辺で『名探偵ごっこ』は止めておこうね~?」
「うぅぅ・・・だって・・・」
頭を押さえながら涙目で蹲るミアプラの頭を撫でると、
エルナトは崩れ落ちたラウルの傍に寄りしゃがみ込んだ・・・。
「ラウル様の与えたその『スキル』が、
パパの『鬼の力』でもある『『急速再生』を邪魔していたんです。
だからパパは今・・・あの状態になっているみたいです」
エルナトのその声に顏を上げたラウルは、
土下座をして双子に詫びたのだった・・・。
「すまない・・・。
これは僕の・・・創造神の失態だ・・・。
本当にすまない・・・」
心から謝罪したラウルにエルナトは頭を優しく撫でると立ち上がり、
こちらを見つめる者達に対し口を開いた・・・。
「僕達があの中に入った時・・・。
パパの思念体がそう言って教えてくれたんだ・・・。
でも、パパも一度死んでから気付いたみたいだよ?
・・・困ったパパですよね~♪」
エルナトがそう言いながら笑うと、
皆もそれに釣られ笑い始めたのだった・・・。
そして再び振り返ったエルナトは、
ラウルに手を差し伸べながらこう言った。
「パパも死んだ直後くらいに気付いたらしいです・・・。
そしてパパの思念体はラウル様に伝言をと・・・」
「・・・伝言?彼が・・・?
悠斗君の思念体が・・・僕に伝言を?」
「はい・・・」
「な、何だって?僕に何んだってっ!?」
エルナトの小さな両肩を掴みながらそう言うと、
『にこり』と笑みを浮かべたエルナトは悠斗の『伝言』を告げた。
「『・・・どんまーい♪』・・・だって♪」
『・・・・・』
この時、周りの者達が『ズッコケ』たのは言う間でもなかった・・・。
ってな事で・・・。
今回のお話はいかがだったでしょうか?
ミアプラの暴走・・・ふむふむ。
当初はこんな感じではなかったんですけどね・・・^^;
き、気が付いたら・・・か、身体が縮んでっ!?
じゃなくて・・・。
イザナミの影響が・・・><
イザ子の呪いかっ!?
楽しく読んで頂けたら、
登録や感想など宜しくお願いしますっ!(切実)
ってなことで、緋色火花でした。




