219話・知られざる真実
お疲れ様です。
梅雨入りですね~?
いや~まじ・・・湿度がキツいです><
って言うか・・・暑いのも苦手なので、
どちらかと言うと寒い方が・・・w
これから夏に向けて再び暑さと戦うのかと思うと、
・・・凹みますorz
それでは219話をお楽しみ下さい。
『卑弥呼』と呟いた黒犬に南雲は驚愕の眼差しを向けていた・・・。
「・・・ん?どうした・・・南雲?」
南雲の視線に気付いた黒犬がそう声を掛けると、
『・・・い、今・・・卑弥呼・・・と?』と、
その名に放心す南雲に黒犬は困った表情を浮かべ、
ちょっと向こうで話そうとヴァン達の元から離れたのだった・・・。
「もしかして・・・俺・・・声に出ていたか?」
「・・・は、はいですじゃ」
苦い表情を見せた黒犬は、
南雲の眼差しに溜息を吐くと小声で話していった・・・。
「お前も知っての通り『卑弥呼』は今『牢獄の中』に在る。
その理由までは言えないが、
この冥界にとってやってはならぬ事をやったからだ・・・」
「・・・卑弥呼様については儂も噂程度にしか知りませぬじゃ。
そしてそれはこの冥界では『禁忌』とされる事だと・・・。
でも・・・どうして『卑弥呼様』なのですかな?」
南雲の言う事は最もな事であり、
黒犬はその声に『そ、それは・・・だな?』と、
珍しく言い淀んだ・・・。
そんな時だった・・・。
『黒犬様ーっ!』と虎恫から突然叫びにも似た声が響いて来た。
その声にただ事ではないと感じた黒犬と南雲は駆け出した。
「どうしたんだっ!?」
「ヴァ、ヴァンの火傷がっ!?」
虎恫は慌てた様子を見せながらヴァンに指を差すと、
『・・・なっ、や、火傷がっ!?』と黒犬は驚きの声を挙げ、
また同様に見ていた南雲もその表情が強張っていた・・・。
「・・・や、火傷がゆっくりとじゃが・・・広がってっ!?」
ヴァンの火傷ははとても酷く、
その両腕にあった『複翼』は焼け落ちていたのだが、
悠斗の『鬼黒炎』はゆっくりとだが燃え広がっていたのだった。
「こ、これはどうすれば止められるのですかっ!?」
そう慌てふためく虎恫に南雲もまた黒犬に視線を向けた・・・。
「・・・す、すまん。
『鬼黒炎』は俺にはどうにも出来んのだ・・・。
情けない話だがな・・・」
そう言って険しい表情を見せた黒犬に、
虎恫は増々動揺を見せパニックになってしまった・・・。
「く、黒犬様にもっ!?
い、いいいい・・・一体・・・一体どうすればっ!?」
そんな虎恫にスタークが跳躍しながら虎恫の頭を叩くと、
『落ち着くメルっ!』と声を張り上げた。
黒犬は『ちっ』と舌打ちしながらも、
サンダラーと共に来るはずの『医療班』の到着を待っていた。
暫くしてサンダラーと共にやって来た『医療班』が到着すると、
ヴァンの容態に言葉を失っていた・・・。
「こ、これはっ!?」
その容態に驚きを隠せなかったサンダラーの口から言葉が漏れると、
黒犬が険しい表情を見せながら悔し気に口を開いた。
「・・・サンダラー様お抱えの医療班になら、
もしやと思っておりましたが・・・」
「・・・・・」
片膝を着く黒犬の言葉に冥界の王であるサンダラーも言葉にならず、
ただ・・・唇を噛み締め己の無力さに耐えていた・・・。
だがその俯いた視線の先には、
今も悶絶するヴァンの姿に頭を数回振ると、
気持ちを切り替え連れて来た医療班に声をかけた。
「と、とりあえず・・・やるだけの事は・・・。
おいっ!すぐさま治療にあたれっ!」
「は、はっ!」
サンダラーの指示で医療班が診断を開始するも、
その医療班の男達はヴァンの容態に身体を震わせて居た・・・。
「・・・ど、どうなのだ?」
「・・・冥王様。
こ、これは我々にはどうしようも・・・」
医療班のある男が苦悶の表情を見せながらそう言うと、
サンダラーは烈火の如く怒号を飛ばした。
「なっ、何故だっ!?
貴様達はこの俺が認める超一流の医療班なのだぞっ!?
こ、こんな『火傷』如きがっ!
どうして何ともならんのだぁっ!?」
「お、恐れながら冥王様っ!
こ、この火傷はただの火傷では御座いませんっ!」
「そ、そんな事・・・貴様に言われなくても・・・
わかっておるわぁぁぁぁっ!
し、しかし貴様ら以上の『回復魔法』の使い手などおらんっ!
だから・・・何としてでも・・・」
口を開き怒号を叫びつつもその口調は、
徐々に弱まり己の不甲斐なさに力なき言葉となり、
『ドサっ』と硬い地面に膝を着いたのだった・・・。
「く、くそっ!本当にどうにもならんのか・・・」
右手で己の額を押さえながら強く硬い地面に拳を打ち付けると、
その様子に医療班達は己の持てる全ての力で事に当たる事にした。
しかし・・・。
あらゆる『回復魔法』で処置を試みるも、
『鬼黒炎』は決して消失せず、
その『炎』の燃え広がりはゆっくりとだが、
ヴァンの肩口附近にまで燃え広がっていた・・・。
「こ、このままでは・・・」
サンダラーが口惜しくそう声を挙げた時だった・・・。
突然その場に『神界の門』が出現し扉が開くと、
その中から出て来たのは、苛立ちを隠す事もなく不貞腐れた・・・。
『ヲグナ』だった・・・。
『ヲ、ヲグナ様っ!?』
そう声を挙げた黒犬は急ぎヲグナの前に駆け出すと、
片膝を着き頭を垂れ、
また他の者達も急ぎ黒犬に習ったのだった・・・。
「わ、わざわざご足労頂き誠に・・・」
そう黒犬が口を開いていった時、
ヲグナは面倒臭そうにその言葉を遮った・・・。
「あぁ、あぁ・・・そういうのは別にいいから・・・」
「・・・えっ!?」
「ったく・・・。
みんなさ~・・・俺の事を『便利屋』だとか思ってないか?」
「い、いえ・・・け、決してそのような事はっ!」
不機嫌そうにそう言ったヲグナに、
サンダラー達も神妙な面持ちとなっていた・・・。
「・・・って言うかさ。
黒犬君に事情を聞いて来たんだけどさ・・・。
な~に?また・・・『悠斗君』絡みなのか?」
そう言いながらジト目を向けるヲグナに、
サンダラーは伏せた顔を上げる事が出来ず返答した。
「は、はい・・・。
ま、誠に申し訳なく・・・」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬ・・・。
ま、また・・・『彼』なのか・・・。
色んな所から話には聞いていたんだけど・・・。
ははは・・・また・・・彼なのか・・・。
ってか・・・。
あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!もうっ!
彼って一体なんなのさっ!?
トラブルばっっっっっかじゃんっ!?
俺ってばそこそこ偉い『神』なんだよっ!?
ねぇっ!知ってたっ!?
俺ってばそこそこ偉い神なんだよっ!?
ったく・・・便利屋じゃないっつーのっ!」
そう言いながら頭を掻き毟り始めたヲグナに、
一同は顔を伏せたまま冷や汗を流していた・・・。
そして再びヲグナが『あぁぁぁっ!もうっ!』と叫び声を挙げると、
突然項垂れ『・・・あぁ~あ』と言いながらヴァンの元へと向かった。
「・・・確かにコレは厄介だな」
固唾を飲んで見守る一同に振り返ると、
視線をこの場に相応しくない建造物を見つめた。
「・・・アレって確か黒犬君の『封印術』だよな?」
視線を黒犬へは向けずそう言うと、
『はい、動きを封じるにはこうするしかなかったもので・・・』と、
顔を伏せながらも悔し気な表情を浮かべて居た。
「って事はつまり・・・彼は今、暴走状態・・・
って事でいいのかな?」
「・・・はい」
『ふむ・・・』と・・・。
その場で黒犬の創り出した『術』を見据えながら、
ヲグナは何やら考え始めた。
その間にもヴァンを焼き続ける悠斗の『鬼黒炎』は広がり、
一同の焦りが頂点に達しようとしていた・・・。
(じ、時間が・・・な、何をヲグナ様は悠長にっ!?
は、早く・・・早くせねば・・・ヴァンは・・・)
地面に片膝を着くサンダラーの拳が更に握り締められた時、
ヲグナの口から一同が驚愕する言葉が告げられた・・・。
『・・・切断して腕ごと封印するしかない・・・か』
そう告げられた言葉に慌てたサンダラーが声を挙げた。
「う、腕ごとっ!?
お、お待ち下さいっ!ヲグナ様っ!?」
「・・・ん?何?」
やや不機嫌そうに振り返ったヲグナに、
咄嗟に土下座に変えたサンダラーはその、
その額を固い地面に擦り付けながら声を挙げた。
「な、何卒っ!ご再考をっ!」
「・・・どうして?」
「ヴァ、ヴァンのヤツは近い将来っ!
必ずこの冥界を背負って立つ男になりますっ!
で、ですから・・・な、何卒ご再考をっ!」
今のサンダラーは己の立場に構う事無く、
ヲグナに哀願したのだが、
そのヲグナは表情一つ変える事無く、
無情な言葉が言い放たれたのだった・・・。
「・・・だから何?
このまま尽きるよりはいいでしょ?」
「・・・なっ!?」
無情にもそう言い放たれた言葉に、
サンダラーは思わず顔を上げ、無表情のヲグナに愕然とした・・・。
「そ、そんな・・・そんな・・・」
『ワナワナ』と身体を震わせて居るサンダラーに、
無表情だったヲグナの表情から笑みが浮かぶと、
軽い口調でこう言った・・・。
「心配するな・・・冥王よ。
切断した両腕は今後の為の研究の素材として、
役に立てるからさ~」
『なっ!?』
余りにも軽い口調でそう言ってのけたヲグナに、
この場に居た全員が身体を震わせ怒りが込み上げたのだが、
ギリギリで堪えたサンダラーが奮える声で口を開いた。
「・・・ヲ、ヲグナ・・・様」
「・・・今度は何?」
「そ、それは余りにも・・・」
「だって、しょうがないじゃない?
実際こうなっちゃっているんだから・・・」
全身怒りで震えるサンダラーは、
最後の想いを込めながら、言葉を絞り出した。
「・・・あ、あいつは・・・鳥・・・人族・・・です。
りょ、両腕・・・を・・・う、失って・・・し、しまった・・・ら」
限界に近いサンダラーの言葉が続く中、
ヲグナは一瞬何かに気を取られた・・・。
その様子にサンダラーの我慢が限界突破した時、
『きっ、貴様ぁぁぁぁっ!』と怒声を発しながらヲグナに掴みかかった。
「まっ、待てっ!い、今はっ!」
掴みかかったサンダラーを振り払おうとしたその瞬間・・・。
『ザシュっ!ザシュっ!ザシュっ!ザシュっ!』と、
黒犬が施した『黒門籠城陣』が斬り裂かれた・・・。
『んなっ!?』
「ちっ・・・やはり今の彼をこの程度の術では・・・」
サンダラーを振りほどいたヲグナは、
瓦礫と化し土煙りが舞うその場所に『彼』が居るのを視認した。
「・・・やはり出て来たか?」
その光景に『術』を施した黒犬は驚愕し、
『・・・お、俺の封印術が?』と茫然としていた。
そしてそれは黒犬だけに限った事ではない・・・。
ヲグナを除く全員がその光景に立ち尽くしていた・・・。
『ヒュ~』と瓦礫によって舞っていた土埃りが風に攫われると、
その場に佇む悠斗の姿にヲグナまでもが眉間に皺を寄せていた。
『ジャリっ』
眉間に皺を寄せたヲグナが一歩前へと踏み出すと、
『本当に君は規格外だな?』と呟いた。
そしてこの場に居た全員が見たのである。
擬体であるはずの悠斗の額から・・・。
『一本の角』が生えていた事を・・・。
その光景に誰もが口を開けたまま硬直していると、
こちらへと顔を向けた悠斗が『ニヤり』と悍ましく笑った。
「なっ、何なんだ・・・ア、アレ・・・は?」
「・・・な、何故・・・擬体から・・・つ、角が・・・?」
「・・・あ、有り得ない・・・ありえ・・・な・・・い」
「ユ、ユウト・・・ど、どうして・・・メル?」
それぞれの口から眼前で起こっている光景に、
そう言葉が漏れていた・・・。
「・・・クックックッ。
コの程度の・・・モの・・・で・・・。
ナンとか・・・出キる・・・トデも?」
そんな言葉がこの場に居た全員の頭の中に悠斗の声が響いて来た。
「クッ・・・暴走が『魂』を乗っ取ったか?
今の彼は彼であって・・・彼では・・・ない・・・」
一人ゆっくりと歩み始めたヲグナが舌打ちをしながら呟くと、
悠斗の・・・いや、『悠斗であったモノ』が視線をヲグナへと移した。
「・・・ソウ・・・か。
オ前・・・ハ・・・神・・・だな?」
「・・・あぁ、俺は『上位の神』だ。
元・神野悠斗・・・無様で醜い姿になったモノだな?」
ヲグナがそう言った瞬間・・・。
『バシュっ!』と悠斗であったモノの身体から、
『真っ赤な鬼の気』が噴き出した・・・。
「・・・ほう。『四之門』を開けたな?
おめでとう・・・だけどな・・・?」
ヲグナそう言い終わり、悠斗であったモノとの距離が、
わずか数メートルになると『ピタリ』とその場で足を止めた。
「・・・神・・・如キが・・・何んダ?」
「フッフッフッ・・・。
悠斗君・・・いや、邪悪なる鬼よ・・・聞け。
その暴走・・・俺は以前・・・見た事があってな?」
「・・・?」
「あぁ~・・・そうか?
なるほどな・・・。そう言う事だったのか?」
「お前・・・何を・・・言っている?」
悠斗であったモノの口調が急速に上達すると、
ヲグナの口角が上がり、またその様子に『鬼』は目を細めた。
その上達した『鬼』の口ぶりに、
ヲグナは意思疎通が可能だと確信すると、
『ニヤけ』ながら話をしていった・・・。
「フッフッフッ・・・。
以前、俺の所に・・・とある情報が入って来てな?」
「・・・?」
「日本と言う国で鬼に出会った『老人と子供』が居たと・・・」
「・・・?」
「その老人は子供を守る為・・・鬼と戦い敗れたと・・・」
「・・・何の話だ?」
「まぁ~聞けよ・・・鬼」
首を少し捻りながらも『鬼』はヲグナの言葉に聞き入っていた。
それは何故か・・・?
『鬼』は己自身も不思議ではあったが、
その話に何かが引っ張られるのを感じていたのだった。
そんな態度にを見せた『鬼』に、
ヲグナは表情を崩す事無く話を続けた・・・。
「だかな?鬼よ・・・。
その老人は・・・その鬼との戦いでは命を落とさなかった」
「・・・ほう。奇跡ってやつだな?」
「あぁ~そうさ・・・まさに奇跡だよ。
だがその老人はそれからすぐに死んだんだよ」
「・・・致命傷を受けていたと言う事だろ?
その鬼が殺した事に変わりはないだろ?」
「いやいやいや・・・そうじゃないんだ」
「・・・どう言う事だ?
何が違うと言うんだ?」
そう疑問を口にした『鬼』に、
ヲグナは『ニヤけ』た表情を真顔へと変えると、
話の確信へと移った・・・。
「・・・確かに老人は死んだ。
それは間違いではない・・・。
では、何故・・・すぐに死んだか?
簡単な話だ・・・鬼よ。
それは・・・もう1人・・・鬼が居たからなんだよっ!」
この場に居た者達にはヲグナの話の意味が分からなかった・・・。
だが、只一人・・・それを知る者が居た・・・。
そう・・・それは誰でもない・・・。
生前『鬼』から『孫の命』を守る為、
『鬼』と熾烈な戦いを繰り広げた老人・・・。
この場でヲグナの話を黙って聞いていた・・・
『神野南雲』だったのだ・・・。
(あぁ・・・そうじゃ・・・。
確かに儂はまだ幼い悠斗を守るべく『鬼』と戦った・・・。
その『鬼』との戦いに決着が着いた時、
あの『鬼』は儂に『見事だった人間よ。貴様の勝ちだ』と、
そう言葉を残し消えたんじゃ・・・。
じゃがそのすぐ後の事じゃ・・・。
ガタガタと震え立ち尽くす悠斗の安否を確認し終わった時、
居たんじゃ・・・そこに・・・。
もう一体の・・・『鬼』が・・・)
南雲は当時の様子を鮮明に思い出すと、
その額から一筋の汗が『ツー』っと流れ落ちた。
(その時儂は満身創痍じゃった・・・。
つい先程の鬼との戦いで刀身は『ボロボロ』じゃったし、
体力の限界はとうに越えておった・・・。
ただでさえ・・・鬼に勝つのは困難を極めるのじゃが、
その状態では・・・一矢報いるのが精一杯じゃった。
そう・・・確かあの時・・・)
南雲は生前に見た最後の光景を思い出した・・・。
~ 回 想 ~
「ゴホっゴホっ!
ゆ、悠斗・・・や・・・」
「じ、じぃーちゃん・・・こ、こわ・・・」
孫である悠斗の修練の場として居た山奥・・・。
先の戦いで木々が薙ぎ倒され荒れた中、
突然現れたもう一体の鬼を前に、南雲は悠斗を隠す様に、
『ボロボロ』に『刃が欠けた刀』を正眼に構えていた・・・。
「怖いのは儂にもよ~くわかるわい・・・。
じゃけどな・・・悠斗よ。
怖いのは・・・良い・・・。
じゃが・・・決して・・・お前のその心は折ってはならんっ!」
「そ、そんな事言ったってっ!?」
「ゴホっゴホっ・・・。
な、な~に・・・し、心配せんでいいわい・・・悠斗よ。
儂の命に代えても・・・お前だけは守って見せるわい」
「で、でも・・・じぃーちゃんは・・・じぃーちゃんはもうっ!?」
「ひょっひょっひょっ!ゴホっゴホっ!
お、お前を守る為じゃ・・・こんな鬼なんぞ・・・
一体や・・・百体・・・。
この超イケてる神野南雲が成敗してやろうぞっ!
ゴホっゴホっゴホっ!」
南雲はこの時今持てる最大限の笑みを浮かべながらそう言った。
それは『ボロボロ』になった南雲が最後に・・・。
背後で震える孫である悠斗に教える最後の修練でもあった。
「じぃーちゃん・・・」
「ひょっひょっひょっ!
良いか・・・悠斗よ・・・。
魔を狩る一族の者の宿命じゃ・・・。
何が在ろうと・・・決して・・・。
その心を折ってはならんぞっ!良いかっ!悠斗よっ!」
『ぐすん』と鼻をすすりながら南雲の言葉に、
悠斗は力強く『はいっ!』と答えたのだった・・・。
それを背に聞いた南雲は口角を上げ、
微笑んだその目尻には・・・
ありったけの皺が寄せ集まっていたのだった・・・。
そして『コォォォォっ!』と呼吸音を変えた南雲は、
もう震えの治まった悠斗にこう告げた・・・。
「見ておれ・・・悠斗よ・・・。
儂の生き様・・・しっかりとその目に焼き付けよっ!」
「はいっ!」
(もう思い残す事は・・・ないわい・・・。
ただ、悠斗の成長を見てやれないのは名残の惜しいが、
これも『魔を狩る一族の定め』じゃ・・・。
ふっふっふっ・・・仕方なかろうの~)
『鬼よ・・・儂の名は・・・神野南雲じゃっ!
その名を刻んで滅びよっ!参るっ!
はぁぁぁぁぁぁぁっ!』
今在る力をその一刀に賭けた南雲は駆け出した・・・。
「じぃーちゃぁぁぁぁぁぁんっ!」
背後でそう声を挙げた悠斗に想いを馳せて・・・。
(そう言えばあの時、儂の一刀は・・・)
懐かしむように思いを巡らせた南雲は、
『はっ!』とすると、禍々しい鬼の気を発する悠斗を見た。
「ま、まさか・・・そ、そんな・・・まさかっ!?」
呻くように口からこぼれた言葉に、
その場に居た者達に届く事はなかったのだった・・・。
ってな事で・・・。
今回のお話はいかがだったでしょうか?
姿が変わった悠斗に一体何があったのか?
そしてそれに思い当たるじぃーちゃん・・・。
今回はそんなお話でした・・・。
これからも楽しんで頂けるよう頑張りますので、
今後とも応援のほど宜しくお願いします^^
ってなことで、緋色火花でした。




