215話・ヴァンの素体と羊の秘密
お疲れ様です。
とりあえず無事に退院しましたっ!
ストックはまだあるので問題はないのでご安心をw
さて今回のお話ですが・・・。
簡単に言ってコミカルな話となっております^^
あと数話で悠斗の話は終わり、
残された『人界』の人達の話へと変わります。
楽しんでもらえたら幸いですが、
登録や感想などを頂けたら・・・か・な・り・嬉しく思いますw
それでは215話をお楽しみ下さい。
~ 冥界王・サンダラーの屋敷 ~
意識を消失した悠斗が担ぎ込まれた病室で、
2人の男が悠斗を挟んで向かい合っていた・・・。
(・・・ヴ、ヴァン様が・・・ど、どしてユウトの病室に?
な、何故・・・だっ!?ど、どうして此処にいるっ!?
あ、あれだけ敵対していたではないかっ!?)
冷汗が止まらない虎恫が顏を伏せるもその目は、
『キョロキョロ』と定まる事がなく、
とても居心地が悪かった・・・。
すると突然ヴァンが『・・・おい、お前』と口を開くと、
『はっ、はぃぃぃっ!』と、
虎恫が悲鳴にも似た声を発しながら直立しそのまま固まった。
「・・・と、突然・・・すまん」
「い、いえ・・・お、俺の・・・。
いや、私の方こそ・・・」
「ふむ・・・普通に話せ。
それとだな・・・頼むから座ってくれ・・・。
落ち着かんからな・・・」
「は、はいっ!かしこまりましたっ!」
『ドスンっ!メキっ!』
勢いよく座った虎恫の椅子からは、
悲鳴にも似た椅子の軋みが聞こえ、
その様子にヴァンも無言となってしまった・・・。
「・・・・・」
『はぁ~』っと2人がほぼ同時に息を吐き出すと、
『コホン』と咳払いを1つした後、
未だ眠る悠斗に視線を移したヴァンが静かに口を開いた・・・。
「・・・な、なぁ、お前の名は?」
そう静かに発せられた言葉に虎恫は『虎恫と申し・・・ます』
その返答に苦笑いを見せたヴァンは気分を変えようと、
『自己紹介』を始めた。
「虎恫か・・・まぁ、俺の名を知っているとは思うが、
改めて名乗ろう・・・ヴァン・アレンだ・・・宜しくな」
「・・・はい、ヴァン様」
「・・・ヴァンで・・・いい・・・」
「い、いや・・・でも・・・」
「・・・構わん」
「し、しかし、貴方様は将来この冥界を背負って・・・」
「・・・そんなモノどうでもいい・・・
お互いにこれからは・・・」
「しかしそれではっ!?」
「・・・しっ、しつこいぞお前っ!?
このやり取りを何度するつもりだっ!
も、もう面倒臭いから対等でいいだろっ!?」
「た、たたたた・・・対等など滅相もないっ!」
虎恫の態度にヴァンは顔を顰めると、
『頑固者』に対して苦言を呈した。
「あ、あのな~・・・?虎恫よ。
お、鬼ってのはみんなそうなのか?」
「・・・そ、そうなのか?と言われましても」
「あぁぁっ!もうっ!お前面倒臭せーよっ!?
俺がいいってんだから対等でいいんだよっ!
わかったかっ!?」
「・・・う、うぐっ」
半ば強引にヴァンの迫力に気圧されると、
『・・・わかった』と、漸く返答した虎恫に、
ヴァンは『お前は頑固過ぎるだろ・・・』と、
再び愚痴を言いながら話を進めて行った・・・。
「なぁ、虎恫よ・・・この人族・・・。
ユウトは一体何者なのだ?」
「・・・何者と言われても、
俺とユウトが出会ったのはほんの一瞬のようなモノだから・・・」
「・・・一瞬のような?」
そう聞き返してきたヴァンに、
虎恫眠ったままの悠斗を見ると『フッ』と笑みを浮かべた。
「あぁ・・・。こいつとの出会いは一瞬・・・。
敵同士で出会い、そして俺はこの人族に敗れた・・・」
「敗れたってお前は『鬼』なのだろ?
それなのに人族如きにお前は敗れたのか?」
ヴァンの物言いに虎恫は『敗れた・・・か・・・』
そう含みのある笑みを浮かべながら呟くと、
目の前には不思議そうに首を傾げるヴァンに苦笑いをして見せた。
「あぁ・・・俺はこの人族に負けた・・・。
しかも・・・だ。
ほぼ一瞬と言っていいくらいにな・・・」
「・・・嘘だろ?」
「いや、嘘ではない・・・。
そしてそれはこの冥界の地でも証明された・・・」
「・・・戦ったのか?ユウトと?」
興味深そうにヴァンが身を乗り出して聞き返すと、
『敗者』となったにも関わらず、
この虎恫は楽し気に話していくのだった・・・。
「フッフッフッ・・・戦った・・・戦ったよ・・・。
まぁ~再び出会えるとは思ってもいなかったが、
この冥界で多少なりとも鍛えた俺だ・・・。
正直・・・勝てると思っていた」
「・・・だろうな?
お前は伯母上に気に入られていたと聞くからな?
『生』を再び受けたお前は以前とは比べ物にはならんだろ?」
「・・・そうだな。
ヴァマント様に俺には『三本角』の価値があると言ってもらえたからな。
だからまぁ~、俺もついその気になっていた。
だが、こいつは・・・ユウトは・・・
そんな俺を実力も出さずに簡単にあしらって見せた・・・。
それこそ・・・子供扱いするようにな?」
「お、鬼を子供扱いって・・・」
「ハッハッハッ・・・まぁ~鬼を知る者であれば、
当然そう言うだろうが・・・な。
でもユウトは・・・俺にこう言った・・・。
『手加減はした・・・』とな?」
虎恫の話にヴァンは眉間に皺を寄せ、
再びその視線を悠斗へと向けると『・・・こいつがね~』と、
そう言いながらも、何故かニヤけていたのだった・・・。
「ハッハッハッ!笑っちまうだろ?
こいつは鬼相手に・・・手加減したと言ったんだ」
「・・・だな?
確かにそれは・・・笑える話だ」
そうヴァンの言葉がこぼれたものの、
その表情に笑みはなく険しい表情を浮かべていた。
(・・・鬼を相手に己の力を出さずに勝つって、
こいつの存在は一体?)
するとふと・・・。
眠る悠斗の傍らに立て掛けられていた『刀』に視線が移ると、
『・・・これって、ユウナギさんの?』と、言葉が漏れ、
その名に虎恫は訝しい表情を浮かべて居た。
不意にヴァンはその立て掛けられていた刀に手を伸ばすと、
自分の顏の前で静かに引き抜き、
その鈍く光る『刃』をじっと見つめ笑みを浮かべ言葉がこぼれた。
「あの鬼の気を纏っても、刃は何ともないのだな?
・・・流石だぜ・・・ユウナギさん」
再び聞いたその名に興味を持った虎恫は、
ヴァンに『それは誰だ?』と尋ねたが、
『すまん・・・今は言えないのだ』と断った。
「そ、そうか・・・それは残念だが・・・」
「すまんな?伯母上達から許しが出たら話してやるよ」
「・・・わかった、その時を楽しみにしている」
そして1時間程経過した時だった・・・。
虎恫の様子が『そわそわ』している事に気付くと、
戸惑いの表情を浮かべたヴァンが、堪り兼ねて口を開いた。
「お、おい・・・虎恫。
何をそんなにそわそわしているんだ?」
そう尋ねられた虎恫は『チラっ!チラっ!』とヴァンを見ながら、
何やら戸惑っているようだった。
「だから・・・虎恫っ!
俺に何か言いたいのなら言えっ!
そんな視線を向けられては・・・気になって仕方がないぞっ!?」
虎恫は『あはは・・・そ、そうだよな~?』と乾いた笑みを見せると、
『なぁ~・・・ヴァン』と、話を切り出して来た。
「と、とても言いにくく・・・き、聞きにくい事なのだが?」
そう話を切り出した虎恫の表情は、
とても緊張した面持ちへと変わった。
『ゴクリ』
「なっ・・・な、何が聞きたいっ!?」
虎恫の緊張が移ったのか、
ヴァンは声を張り上げながら思わず立ち上がった。
「・・・ヴァンっ!」
「・・・なっ、何だよっ!?」
「お、お前の素体って・・・」
「俺の・・・素体?」
ヴァンの『素体』について虎恫が口を開いた時、
再び緊張が走ると再び『お前の素体って・・・と・・・』
緊張しながらも虎恫がそう言いかけた時だった・・・。
『お前の素体って『鳥さん』なんだな?』
「うぎゃぁぁぁっ!?」
「う、うおぉぉっ!?」
突然『ガバっ!』と起き上がった悠斗が、
虎恫の言葉を奪い楽し気に声を挙げたのだった・・・。
余りの出来事に虎恫とヴァンは大声を挙げると、
座る椅子から数センチ飛び上っており、
その反動で窓から垂れ下がる『カーテン』に半身を隠したのだった。
「あっはっはっはっ!2人とも~♪
驚いてやんの~♪
まじでウケるぅ~♪」
『お、おま・・・おまおまおま・・・』
とびっきりの笑顔で話す悠斗に、
身体の半身を隠したヴァンは、驚きのあまり上手く話せずに居た。
すると突然・・・。
悠斗が眠っていたベッドの向かい側の『カーテン』が引かれると、
『お前達っ!五月蠅いメルゥっ!!』と、
スタークが追い打ちをかけるように怒声を発した。
『うっぎゃぁぁぁっ!?』
『ぐぅおぉっ!?』
再び驚きの声を挙げた虎恫は再び飛び上ると、
その引き攣った表情の頬を嫌な汗が伝って行ったのだった・・・。
そしてヴァンはと言うと・・・。
『はぁ、はぁ、はぁ・・・』と、
腰でも抜かしたのか病室の床に尻もちを着き、
肩で息をし、心臓の辺りを押さえていた。
「ヴァン・・・お前~・・・驚き過ぎだろ~?
あっはっはっはっはっ!」
「そうだメル~♪
ヴァンって意外と臆病なんだメル~♪」
崩れ落ちたヴァンを、悠斗とスタークが笑い飛ばしていると、
少し落ち着いた虎恫が溜息を吐きながら口を開いた。
「お、お前達・・・何をやってんだよ?
俺達を驚かせてそんなに楽しいか?」
虎恫の言葉に悠斗とスタークは視線を合わせると、
『ニヤ~』と笑みを浮かべた。
「そりゃ~楽しいに決まってるだろ?
鬼と破壊者を継ぐ男なんだからさ~♪」
「・・・くっ」
「とっても面白いメル~♪
とくに・・・ヴァンのあの驚きようったら笑えるメル~♪」
「・・・ぐぬぬぬ」
虎恫とヴァンはそう苦悶の表情を浮かべていると、
突然『バンっ!』とドアが開き、
看護師が『だ、大丈夫ですかっ!?』と飛び込んで来た。
そして再び虎恫とヴァンの叫び声が屋敷中に響き渡ると、
今度は看護師の怒声が響き渡り、
それは1時間にも及んだのだった・・・。
暫くしてサンダラーの屋敷から追い出される形となった者達は、
『トボトボ』と屋敷の門から出て来ると、
今後について話を始めたのだった・・・。
「で・・・ユウト・・・。
お前はこれからどうするんだよ?」
この冥界の地に家を持たない悠斗は、
虎恫の問いに『うーん』と唸っていた。
そして暫く考えた結果、
その答えにヴァンも虎恫も呆れ返っていた・
「そうだな~・・・野宿でもいいかな~って思ってるけど?」
『・・・は、はぁぁ~?』
「・・・えっ!?ダ、ダメなのかっ!?」
本気で驚いた様子を見せる悠斗に、
この場に居た全員が『こいつはヤバい』と本気で思っていた。
するとその小さい身体を最大限に使うように、
スタークが何度も飛び跳ねながら何かをアピールしてきた。
「ぼ、僕の・・・僕の家に来るといいメルっ!」
満面の笑顔を見せながらそう言って来たスタークに、
ヴァンは渋い表情を見せると、やや説教気味に口を開いたのだった。
「お、お前の家って・・・。
ダ、ダメに決まってるだろっ!?」
「ど、どうしてダメメルっ!?」
「そ、そりゃ~お前・・・。
お前の住む森は『冥界の保護区』だからに決まっているだろっ!?」
「・・・?」
ヴァンの声にスタークは大袈裟なほど首を傾げて見せると、
『・・・知らない・・・のか?』と驚いていた。
すると悠斗が2人の話の間に入ると、
『『保護区』って何だ?』と尋ねて来た。
「あ、あぁ・・・このスタークの住む森って、
別名『強者の森』って言われているんだが・・・」
「強者の森?」
「あぁ、基本的にその森へ入る事は禁じられていてな?
王族の一部の者達にしか立ち入れを許されていないんだ・・・」
『・・・どうして?』と、
当然ながら訪ねて来る悠斗の声にヴァンは渋い表情を浮かべた。
「ま、まぁ~・・・お前になら話してもいいだろ?」
そう答えたヴァンは門の前から歩きながら説明を始めたのだった。
そしてその説明とはこうだった・・・。
遥か昔の事ではあるが・・・。
まだこの冥界の地に種別関係なく出入り出来た時代の事・・・。
その見た目の可愛らしさ・・・。
そしてその戦闘力に羊達を誘拐する者達が現れ始め、
『戦闘民族』である羊達は『密漁』の対象となり、
事態は『戦争』に発展するほど大きな出来事なった。
羊達を守る為に冥界の住人達は立ち上がったのだが、
『戦争』へと発展してしまった以上・・・。
『死者』も多数出す事になったのだった。
堪り兼ねた冥界の神々は神界の神々と協議した結果。
冥界の地にいくつかの『門』を設置し、
直接冥界の『大門』へと入れる者は、
『許可』を受けた者か『死者』のみとなったのだった・・・。
その為に『大回廊』が在る『大門』の傍には、
それを監視する『門番達』が常駐しており、
許可なき者達は即刻抹殺される事となった・・・。
大まかではあるがヴァンの説明を聞いた悠斗は、
『・・・あのさ~』と声を発した。
「・・・でも保護区になってるって事は?」
「あぁ・・・未だに密漁はあるんだよ」
「・・・まじか」
悠斗が険しい表情を浮かべて居ると、
それまで話を黙って聞いていた虎恫が口を開いた。
「そう言えばヴァン・・・。
お前、スタークと戦っている時、
『人界』で戦っていたような事を言ってなかったか?」
虎恫の問いに『あぁ~』とその時の会話を思い出したヴァンは、
その『人界』での話をし始めたのだが、
『女帝と王』にユウナギの事を口留めされている為、
話は少し濁す事にしたのだった・・・。
「・・・まぁ~そんな事があったが、
無事にスタークを救出し、この地に戻って来たんだ」
「・・・にゃるほど。
つまり未だ『密漁』は続いているから、
『保護区』となっているって事か~・・・」
「あぁ、そう言う事だ・・・」
「でもさ~、良かったよな?」
「・・・何がだ?」
何気なく言った悠斗の言葉に一瞬その場に緊張が走り、
『ん?』と首を傾げた悠斗はヴァンの表情が強張った事に気付いた。
「・・・えっと~」
「ユウト・・・良かったとはどう言う意味だ?」
悠斗と向き合う形で足を止めたヴァンに戸惑いを見せると、
虎恫が慌てて2人に間に割り込んで来た。
「つ、つまり・・・アレだろ?
いい人族に助けられて良かったって話だろ?
な、なっ!ユウトっ!?」
「あ、あぁ・・・そうだけど?」
表情を変える事無く肯定して悠斗に、
ヴァンは『・・・そう言う意味か?』と呟くと、
その場の緊張が解けたのだった。
誤解が解けた悠斗達は再び移動を始めると、
スタークが『だからどうするメルか?』とみんなに口を開いた。
「ん~・・・俺の家はヴァマント様に借りているんだが、
とても狭くベッドも1つしかないしな~」
虎恫は『すまん』と悠斗に対して頭を下げると、
『だから野宿でいいってばっ!』と悠斗は声を挙げた。
すると虎恫は悠斗の言葉に『お前な~』と反論してきた。
「お前此処が何処かわかってんのかっ!?」
「・・・冥界だろ?それくらい分かってるよっ!」
「いいやっ!お前は全然わかってねーよっ!」
「・・・分かってますぅ~」
「ユウト・・・お前というヤツはっ!」
まるで子供の喧嘩ような言い争いに、
ヴァンは呆れ返りスタークは『おろおろ』としていた。
「いいか・・・ユウトっ!」
「・・・何だよ?」
「この冥界の地は死者達にとっても命がけなんだぞっ!?」
「・・・死んでいるのに?」
「・・・あ、あぁ、そうだよっ!」
「この冥界には死者ですら安息出来ない理由ってのがあるんだよっ!」
「・・・どういう事だよ?」
ついさっきまで『死者』だった悠斗には理解出来なくて当然である。
何せこの地・・・冥界では、
死者の魂を専門に食す・・・
『ソウルイーター』が存在するからだった。
「・・・ソウルイーター?」
「あぁ、そいつらは死者を襲い魂を喰らう者達だ。
魂を食われた者達は『転生』する事などなく、
そいつらの力となり『負』のエネルギーとして、
永遠に彷徨う事になるんだ」
虎恫の声に悠斗はヴァンに視線を向けると、
軽く『コクリ』と頷いて見せた。
無表情に頷くヴァンを見ながら悠斗は『ニヤっ』と笑みを浮かべると、
『そいつら・・・強いのか?』とそう尋ねてきた。
「・・・はぁ?お前、何言ってんだ?」
楽し気に尋ねてきた悠斗に、流石のヴァンも怪訝な表情を見せると、
悠斗は再び笑みを浮かべると口を開いていった・・・。
「そいつらを狩って行けば・・・
俺はもっと強くなれるんじゃ・・・ね?」
『・・・はぁぁぁぁっ!?』
悠斗の声にこの場に居た面々が呆れた声を挙げ、
虎恫は頭を抱え込みながら諭すように話し始めた。
「お、お前・・・相手が誰か説明したよな~?
ソウルイーターってのは、物理攻撃が通用しないんだぞ?」
虎恫は呆れながらも悠斗にそう言い聞かせようとするも、
その悠斗は反論したのだった。
「魂だけだからそう言っているんだろうけどさ~、
俺には・・・鬼の気があるでしょうがぁぁぁっ!」
『なっ!』とそう言いながらヴァンに促すと、
『・・・そうとは限らないだろ?』と冷たく反論され、
またスタークには『強引過ぎるメル』と呆れたように言われた。
すると悠斗は辺りを『キョロキョロ』とし始めると、
『じゃ~試しにやってみようじゃんかっ!』と声を挙げた。
周りの静止を振り切るように駆け出した悠斗は大回廊に向かうと、
ふとその視界に『ゆらゆら』と浮遊しているモノを見つけたのだった。
「・・・ん?アレが・・・そうじゃないのか?」
目を細めソレを凝視すると、
ソレの手には『死神』が持つ『大鎌』があり、
『魂を喰らう者』のイメージにぴったりだった。
「おぉ~♪居た居た居たぁぁっ!
アレ・・・だよな?
でも・・・あの姿って俺達のイメージにある・・・
『ザ・死神』なんだけど・・・まぁ~いいっか~♪」
悠斗は左の腰に携えた『刀』に視線を落とすと、
『はぁぁぁぁっ!』と気合いを入れた後、
一目散に駆け出したのだった・・・。
そしてその背後ではこんな声が発せられていた。
「そ、それはソウルイーターじゃないっ!
それは『死者』に対し『絶対無敵』なっ!
『死神様』だぞぉぉぉぉっ!?」
そんな虎恫の声も聞こえない程、
悠斗は楽し気に向かって行ったのだった・・・。
その光景を茫然と見る事になった者達は・・・。
「あ、あのバカっ!
いくら擬体を纏っていようと、魂だけの存在のお前にっ!
ソレはどうしようもないんだよ・・・」
そんな言葉が虎恫の口からこぼれ落ちたのだった・・・。
ってな事で・・・。
今回のお話はいかがだったでしょうか?
病室で騒いで追い出されると言うお話でしたが、
楽しんで頂けたでしょうか?
次回は思いがけない人が登場しますので、
楽しんで頂けたらと思います^^
ってなことで、緋色火花でした。




