表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第三章・冥界編
308/404

213話・激突

お疲れ様です。


只今体調を崩しております・・・。


先週『社畜の強制スキル発動』にて、

体調を崩し、そのまま出張に行ったので、

・・・くたばっておりますw


さて今回のお話ですが・・・。


いよいよ『ヴァン・アレン』との激突です。


楽しく読んでもらえれば嬉しく思いまずが、

登録や感想などいただければ更にっ!嬉しく思いますw



それでは213話をお楽しみ下さい。

『黙って少し待ってろ』


そう告げた悠斗はヴァンとの戦いでボロボロになったスタークを抱えたまま、

虎恫の元へと歩いて行くと・・・。


「虎恫悪い・・・こいつを頼む」


「あ、あぁ・・・そ、それは構わないが・・・

 だけどユウト・・・いくらお前でも相手が悪過ぎる・・・」


「・・・ん?

 お前・・・あいつの事知っているのか?」


訝しい表情を見せた悠斗に虎恫は『知ってるも何も・・・』と、

険しい表情を見せそう答えたのだった・・・。


「・・・話せ」


「あ、あぁ・・・だ、だけど俺も話を聞いたくらいで・・・」


「それでいい・・・教えてくれ」


悠斗はそう言って軽く頭を下げると、

虎恫は少し驚いたようだった・・・。


「お、お前ってヤツは・・・。

 まだ会ったばかりのヤツの事を・・・」


「何言ってんだよ?

 あいつは俺の為にこんなになるまで戦ってくれたんだぞ?」


「だ、だがなユウト・・・。

 相手が悪過ぎる・・・」


険しい表情を見せたまま、

虎恫は真っ直ぐ悠斗の目を見てそう言った・・・。


「だから、あいつの事を何でもいいから教えてくれ。

 ・・・頼む」


虎恫は『はぁ~』っと溜息を吐き、

『お前は言っても聞かないからな・・・』と諦め顔を見せていた。


「俺も噂程度しか知らないが・・・

 ヤツはこの冥界の地で『破壊者の名を継ぐ男』だ」


虎恫の話を聞いた悠斗は瞬間的に振り返り、

こちらを黙って見つめるライトニングを見た。


(どうやら話を聞いて『彼』がどのような『存在』か・・・

 知ったようですが・・・。

 ほっほっほっ♪これはある意味、見物(みもの)ですな♪)



「は、破壊者って・・・ライトニングさんのっ!?」


「あぁ・・・それに・・・だ。

 女帝であるヴァマント様やサンダラー様のご身内らしい」


「・・・まじか?」


「・・・あぁ」


「あの2人の・・・って事はその実力は・・・」


「そう言う事だ・・・。

 いくらお前でも、勝てる見込みは・・・ない」


「・・・ははは」


それを聞いた悠斗は・・・

振り返りこちらを『ジっ』と見ている男を凝視していると、

『いつまで待たせるんだ?』とニヤついた笑みを浮かべて居た。


それを無視し虎恫に向き直ると、

後方でヴァンが何やら悪態をついていたが、

悠斗はさほど気にする様子もなかった。


「さて、どうすっかな~・・・。

 で、かなり厄介な相手って事はわかった・・・」


「の、呑気だな~・・・お前は・・・。

 だがお前が今まで戦って来た相手の中では、

 間違いなく一番強いはずだ・・・」


「・・・だろうな・・・でもさ・・・」


「・・・ん?」


薄く笑みを浮かべた悠斗が虎恫に『サンキュー』と礼を言うと、

言葉を続きをする事もなく背を向け、

虎恫の不安げな言葉がかけられた・・・。


「・・・死ぬなよ?」


その言葉に悠斗は『ははは』っと笑うと、

『知ってるか~?俺、今・・・死んでるんだけど?』

そう言うと掌を『ひらひら』とさせながら、

待たせているヴァンの元へと歩いて行くのだった・・・。


「・・・わかってる。

 だから言ってんだよ・・・。

 死んでいるお前にはもう・・・後がないってな?」


そんな言葉が虎恫の口から出るも、

悠斗に届くはずもなかったが、虎恫は言わずにはいられなかった。


悠斗は虎恫が言わんとしている事は充分に理解していた。

だが悠斗は虎恫の言った・・・。

『恐らくお前が戦った相手の中で一番強い』

その言葉に心の中で『一番じゃ・・・ないよ』と笑みを浮かべると、

悠斗は手も足も出なかったとある『一本角の鬼』の事を思い出した。



「・・・悪い。待たせたな?」


右手を軽く上げながらそう言った悠斗に、

ヴァンは『フっ』と笑みを浮かべた。


「俺を待たせるとはいい度胸してるな?」


「・・・まぁ~、度胸だけなら負けないつもりだ」


「ほざきやがる・・・。

 人族の分際でその態度・・・気に入らんな」


「あぁ~・・・態度に関しては自覚している。

 サンダラーにも色々と言われているからな~?」


「・・・貴様」


悠斗の言葉にあからさまに不機嫌そうな表情を浮かべると、

『チラっ』と一度、サンダラーへ視線を向けた。


「貴様・・・叔父上はこの冥界の王だぞ?

 勿論、知って呼び捨てにしているんだよな?」


「・・・あぁ」


「・・・覚悟は出来ているって事でいいよな?」


「・・・覚悟なら、生前から出来てるよ」


「ほざけっ!」


ヴァンが怒りの形相を浮かべたと同時に、

その身体から『ブワっ』と冥界の神力が噴き出し、

一瞬にしてその場の空気が変わったのだった・・・。


(くっ!こ、こいつ・・・半端ないな・・・)


冥界の神力が先程と同じようなに、

突風となって悠斗に叩きつけられると、

それに堪り兼ねた悠斗は後方へと飛び退き、

半身になって構えたのだった。



そんな時だった・・・。


この緊張を壊す様にずっと片膝を着いていたパルサーの声が響いた。


「お、お待ち下さいっ!ヴァン様っ!」


その声に『ギロっ』と睨みつけたヴァンの瞳に、

パルサーは額から汗が噴き出した。


「な、何もヴァン様が戦わなくてもっ!?

 こ、こんな無礼極まりない人族などっ!

 この私が・・・」


(こうべ)を垂れながらそう声を挙げたパルサーに、

ヴァンは苛立ちを見せると、

その口は思いがけない言葉が言放たれた・・・。


「・・・この人族の実力から言って、

 お前が勝てる確率は、およそ『60%』ほどだが・・・

 それでもヤると言うのか?」


「・・・は、はぁっ!?

 えっ・・・?・・・えっ!?

 ろ、60%・・・で・・・ですかっ!?

 そ、そんな・・・まさかっ!?

 そんな事など有り得るはずが・・・」


ヴァンの言葉にパルサーは驚愕し、

それはまたこの場に居た者達も同様だった・・・。


そしてそれを見守るボイドもまた・・・。

ヴァンの言葉に驚いていた。


(そんな事が有り得るはずがない・・・。

 姉貴は・・・俺達ヴァンパイアの中でも、その強さは別格だ。

 だからあんな人族になど遅れを取るはずが・・・)


その声を聞いたサンダラーは口を半開きにし、

ヴァマントは玉座から少し・・・その身を乗り出していた。


そして思わずヴァンに声を挙げたのだった・・・。


「ヴ、ヴァンっ!?それは本当なのっ!?」


隠す様子もなくそう声を挙げたヴァマントに、

ヴァンは肩を竦めおどけて見せると、

『伯母上とあろう者が・・・』と口を開いたのだった。



「この人族の潜在能力は異常な程・・・高い」


『なっ!?』


「まぁ~でも・・・。

 伯母上や叔父上が分からぬのも・・・仕方がないか・・・」


やや呆れながらそう答えたヴァンに、

『説明しろっ!』とサンダラーが声を荒げた。


「はっはっはっ・・・。

 説明も何も・・・御二方はお忘れですか?」


「な、何をだっ!?」


「俺の眼は・・・特別だって事を・・・」


『・・・あっ』


ヴァンにそう言われ何かを思い出した『女帝と王』は、

その言葉だけで納得したようだった。


だが1人・・・この場で納得出来ない者も居た。


「・・・説明しろよ」


「・・・ん?」


その声の主へと視線を向けたヴァンは、

左腰に『刀』を携え腕組をする悠斗に肩を竦め、

呆れ顔を見せたのだった。


「お、お前・・・ほんっっっとうに態度でかいなっ!?」


「あぁ、態度がでかいのは俺が生まれた時からだ」


「・・・どう言う事だ?」


「俺は生まれた瞬間発した言葉が・・・

 『俺を崇め奉れっ!』って産声をあげたらしいからな?」


その瞬間・・・。

この冥界の玉座の間の刻が再び止まった・・・。


この場に居た者達が唖然する中、

ただ1人・・・『ま、まじかっ!?すげーっ!?』と、

本気で驚いて見せたのは誰でもないヴァンだった・・・。


悠斗は内心『あっ、こいつバカだな』とは思ったが、

それを口にせず、ポーカーフェイスに徹した。


「・・・う、産まれた瞬間からとは・・・な。

 それじゃ~・・・仕方がないとしか言いようがない・・・」


「・・・まぁ~、嘘だけどな♪」


「・・・・・」


「・・・・・」


「・・・嘘かよっ!?」


「・・・遅いよ」


顏を盛大にヒクつかせたヴァンは内心腹立たしさに煮えくり返っていた。

そんなヴァンの様子に悠斗は更に挑発をし始めたのだった。


「・・・嘘に決まってんだろ?

 って言うか・・・そんな産声をあげるヤツが居たら、

 まじで大物だろ?

 ・・・バカなの?」


「うぐっ・・・き、貴様ぁぁぁぁっ!」


『バシュっ!』


怒りの頂点に達したヴァンは冥界の神力を放出し、

その青紫の神力の濃度が増した。


(・・・くっ・・・す、凄まじいな・・・。

 ちょっと・・・調子に乗り過ぎた・・・)


悠斗はやり過ぎたと自覚はしているものの、

その口元は涼し気に笑みを浮かべて居た。


「その態度・・・万死に値するっ!」


「ごたくはいいからさ~・・・。

 さっさと来いよ」


半身になって構える悠斗は刀の柄に手を添えると、

『カチっ』と鯉口を切って、臨戦態勢を整えた。


(さ~て・・・どう出て来るか・・・な?)


受信を低くし構える悠斗を気にする様子もなく、

ヴァンは『うぉぉぉぉぉっ!』と雄叫びを挙げると、

悠斗に向かって駆け出した。


それと同時に悠斗は躊躇いもなく刀を抜き、

横一線に薙いで見せた。


『シュインっ!』


虎恫の目からはヴァンが駆け出した瞬間に、

悠斗が抜刀した事に理解出来なかったが、

それは瞬時にして理解する事になったのだった・・・。


「おっと・・・」


抜刀し横に薙いだ瞬間、その剣筋の先にヴァンが既に居た・・・。


余裕な笑みを浮かべそう言ってのけると、

ヴァンは悠斗に向けてニヤり楽し気に口角を上げていた。


「・・・貴様の剣の腕・・・中々いいようだな?」


「そりゃどーも・・・。

 だけど余裕で見切ったお前に褒められてもな?」


「クックックッ・・・気にするな。

 俺が誉めたのだぞ?光栄に思うがいい・・・」


「・・・光栄に・・・ね~?

 上から目線とは・・・やれやれ・・・はぁぁぁっ!」


そう言ったと同時に悠斗は再び攻撃に転じると、

その剣先を見る事もなくヴァンは躱して行く。


「はっはっはっ!そんな剣速では俺を捉える事は出来んぞっ!」


「はぁぁぁぁっ!」


『ヒュンっ!ヒュンヒュンヒュンっ!』


悠斗は徐々に剣速を上げて行き凄まじい連続攻撃をし始めると、

冷静に悠斗の分析をしていた。


(こ、こいつ・・・本当に人族なのかっ!?

 人族としての限界を軽く越えているではないかっ!?

 だが・・・見切れない剣速ではないがな)


ヴァンは悠斗の攻撃を躱して行く中、

悠斗と言う人族に次第に興味を持つようなり、

今、この瞬間が楽しくなっていた・・・。


「おっ!?やるじゃないか?」


「まだまだぁぁぁっ!」


凄まじい剣速で攻撃を放つもヴァンは余裕で躱し、

その表情には笑みを浮かべて居た。


だがこの様子に1人・・・。

拳を握り『うぐぐぐぐ』と唸る者が居た。


「ユ、ユウトのヤツ・・・こ、こんなにも強く速いのかっ!?

 お、俺との時とは全く動きが・・・。

 うぐぐぐ・・・」


虎恫が必死に悠斗とヴァンの動きを追いながら、

そう声漏らした時だった・・・。

ある事に気付いた虎恫の頭に疑問が生じた・・・。


(・・・んっ!?

 ユウトのヤツ・・・どうして鬼の気を纏っていないっ!?)


そう思っていたのは虎恫だけではなかった・・・。

この2人の激突を見守る『女帝と王そして破壊者』・・・。

この3人もそう思っていた。


(坊や・・・どうして鬼の気を使わないのっ!?

 鬼の気なしで勝てるだなんてまさか・・・

 そんな事思ってないわよねっ!?)


(・・・ユウトノヤツ・・・どうして鬼の気を使わないのだっ!?

 そんな余裕が貴様にあるとでも思っているのかっ!?)


(・・・何か策でもあるのでしょうか?

 ただでさえ勝てる要素などはコレっぽっちもないと言うのに、

 一体彼は何を・・・?)


三者三様・・・。

各々がそう思いこの激突を見守っていると・・・。


「はぁぁっ!」


『ヒュンっ!』


悠斗が隙を見つけ気合いと共に放たれた一撃だったが、

難なく躱して見せたヴァンはニヤりと笑みを浮かべた。


「くっ!?お、おしい・・・」


「フッフッフッ・・・おしいな?

 まだ踏み込みが足りないのではないか?」


「・・・言ってろっ!」


再び連続攻撃を行うも、その刃がヴァンへと届く事はなかった・・・。


「・・・ならばっ!」


そう言葉を吐き捨てると悠斗は、

後方へと身体を一回転させるのと同時に、

『カチン』と刀を納刀し、鞘を腰から引き抜くと、

悠斗は『ふぅ~』と大きく息を吐いて見せた。


「・・・何をしようと無駄だ・・・人族」


「・・・まだ終わらんよ」


ヴァンが肩を竦めながら『諦めろ』と勧告するも、

悠斗はニヤりと笑みを浮かべ『抜刀術』の態勢をとった。


「・・・懲りないヤツだな?

 これだけやってまだ諦めないとは・・・。

 その『しつこさ』だけは、認めてやるよ」


抜刀術の態勢を取ったまま、悠斗は口を開き、

またその言葉にヴァンの顔色が一瞬変わった・・・。


「・・・遊びは此処までだ」


「・・・何?」


「ヴァンって・・・言ったよな?」


「・・・あぁ」


「俺の名は『神野悠斗』だ・・・

 覚えとけ・・・クソ野郎・・・」


「・・・く、くそっ!?

 きっ、貴様ぁぁぁぁぁぁぁっ!

 これで終わりだぁぁぁぁぁっ!」


ヴァンがそう怒声を発し冥界の神力を更に放出した時だった・・・。


(まだ試してないけど・・・ぶっつけでやるしかないっ!

 見てろよぉぉぉ・・・バカなイケメン野郎っ!)


覚悟を決めた悠斗は、溜めていた鬼の気を二ヶ所に集め、

全神経を集中した・・・。


『・・・さぁ、いこうか』


『カシャンっ!フォォォ・・・・フォォォォォンっ!』


(・・・よし・・・いい感じだ・・・。

 溜めた鬼の気を一気にっ!行くぜ・・・ヴァンっ!)


『・・・バシュっ!フォォォンっ!!

 ドンっ!ズザザザザァァァァ』


抜刀術の構えを取る悠斗の足元から、

高音が響き渡ると一気に駆け出した・・・。


だがその速度は・・・

尋常ではなく、到底人族が辿り着ける速度ではなかったのだった。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


気合いと共に凄まじい速度で迫る悠斗に、

流石のヴァンも予想出来ずその表情が引き攣っていた。


「なっ!?は、はやっ・・・・」


『ドスっ!ズガガガガっ!』


ヴァンが驚きの余り声を出した瞬間、

既に悠斗は抜刀しており、その攻撃に腕をクロスさせ、

冥界の神力を纏わせ防御に徹するしかなかった。


「ぐぁっ!」


その凄まじい衝撃に無意識に目を閉じ呻いた瞬間、

片目を開けたヴァンは再び驚く事になった・・・。


(まっ、まだ来るのかっ!?)


悠斗の刀の切っ先が瞬時に向きを変えると、

一直線にヴァンの喉元へと突き放たれた。


「まだだぁぁぁぁぁぁっ!」


『ズドンっ!』


息を着く暇なく放たれたその『突き』の衝撃は、

今まで受けたどの一撃よりも鋭く・・・

そして貫通力を纏っており、

流石のヴァンも苦悶の声を挙げるしかなかったのだった・・・。


「こ、こいつぅぅっ!ぐぁぁぁぁっ!

 神力を纏っているのにも関わらず・・・こ、この衝撃っ!?」


『ズザザザザザ・・・・』


悠斗が放った一撃の突きの威力に顏を歪めたヴァンは、

そのまま10ⅿ以上も『玉座の間』の床を滑る事になった。


『カチン・・・シュゥゥゥゥ』


ヴァンは『うぐぅぅ』と声を漏らしながら目を開けると、

足元から『白煙』を上げている悠斗が静かに刀を納刀し、

ヴァンを睨みつけながら呟いた。


『白鷲流・奥義・疾風二連撃・・・マキシマム・ブースト』


「・・・ぐ・・・ぁぁ・・・きっ、きさ・・・ま・・・。

 ま、まだ・・・か、身体が痺・・・れ・・・て・・・」



悠斗が放った『奥義・疾風二連撃』とは・・・。


本来この技は『赤銅色の気』を以って放たれるのだが、

今の悠斗にはこの技を放つ事は出来ない。


ならば何故・・・?


そう悠斗はその擬体の魔石に溜めていた『鬼の気』を使用し、

脚部にあるスラスターを開き一気に距離を詰め、

トップスピードからの横一閃を放った後、

その切っ先をヴァンに向け突きを放ったのだった・・・。


擬体のスラスターをフルに活かしての『奥義』

それ故の・・・『マキシマム・ブースト』だった。


技を放った直後・・・。


悠斗が駆け抜けた道筋は焼け焦げ、未だに黒い煙が立ち昇っており、

脚部から露出したままのスラスターは赤く焦げ臭い匂いを放っていた。


『シュゥゥゥゥ』


だが悠斗の『奥義』を喰らったヴァンだったが、

その両腕をクロスさせた隙間から、

片目が覗いており、またその眼力が衰えている事もなかった・・・。


「・・・まじか」


「ぐぅぅ・・・こ、この俺が・・・

 こ、こんな人族如きに・・・なんて無様な・・・」


腕をクロスし受けきったヴァンは、

漸く身体の痺れが収まるのを感じると、

悠斗を食い殺すような目付きへと変わった。


すると突然・・・。

ヴァン睨み返すように鋭い目付きへと変わると、

『うぐっ』と呻き声を挙げ前のめりに倒れ始めたのだった。


「ぐはっ・・・」


『カツンっ!』


突然呻いた悠斗の膝が崩れ落ちたが、

納刀されたままの刀を地面に着きながら倒れる事を拒否すると、

『ポタ、ポタ』と流れ出る大汗が床を濡らして行った・・・。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・。

 た、溜めた鬼の気を・・・い、一気に解放・・・したら・・・

 く、くそっ・・・こ、こんなにも・・・ダ、ダメージがっ!?」


『ガクガクガク』


悠斗の両膝が大きく『ガクガク』と震え始め、

両腕をクロスにしていたヴァンがゆっくりと防御を解き、

顏をヒクつかせながら笑みを浮かべた。


「ユウト・・・貴様・・・」


「・・・ちっ!あ、足が・・・。

 か、身体に・・・ち、力・・・が・・・」


凄まじい形相で睨みつけたヴァンに、

悠斗は舌打をしつつもこの現状が不利な事に焦っていた。


「ユウト・・・貴様・・・。

 よくもこの俺の身体に・・・傷を・・・」


『ポタっ、ポタっ』


そんなヴァンの両腕から『紫色の鮮血』が垂れ落ち、

その威力の凄まじさを物語っていた。


(くっ・・・あの程度の傷しか・・・)


悠斗は己の力の無さに悔しい思いをしていたが、

周りに居た者達はそうではなく、

『破壊者の名を継ぐ者』が負傷した事に驚きを隠せなかった。。


「ヴァ、ヴァンの腕から・・・血がっ!?」


「う、嘘だろっ!?アレだけ冥界の神力を纏っていたんだぞっ!?

 そ、それにヴァンの身体は・・・」


「・・・まさかこんな事が?

 ほっほっほっ・・・驚きのあまり、う、上手く言葉が・・・」


『女帝と王と破壊者』

それぞれがそう口にした時、虎恫は口を開けたまま硬直していた。


(い、いぃぃぃ・・・一体何がっ!?

 お、俺には何も・・・何も見えなかった・・・。

 気付いた時には・・・もう・・・)


そう心の中で呟いた時、

虎恫は自分の身体の状態に気付いた・・・。


その膝が小刻みに震え汗だくになっており、

今すぐにでも座り込みたい衝動に駆られ息を荒くしていた。



そして数分経った頃・・・。


悠斗を睨みつけていたヴァンがゆっくりと、

その歩みを進ませた・・・。


「貴様・・・貴様・・・貴様・・・」


まるで念仏を唱えるかのようにブツブツとそう言い始め、

刀を突っ張り棒のように踏みとどまっていた悠斗の前に辿り着いた。


「・・・ユウト」


「・・・ちっ」


そう悠斗が舌打ちをした瞬間・・・。


互いの間の空間に閃光のようなモノが発すると、

ヴァンは怒りの形相にその顔を歪ませていた・・・。


「・・・貴様をこのまま野放しにしておく事は出来ん」


「・・・お、俺は・・・しぶといから・・・さ」


また悠斗はそのダメージにより満足に戦える状態ではなかったが、

その瞳にはまだ力が宿っていた・・・。


「そ、その瞳・・・き、貴様は・・・危険だっ!

 この冥界の地で散れぇぇぇぇぇっ!」


「まっ、まだだぁぁぁぁっ!」


『ヒュンっ!ズバっ!』


「ぐぁぁぁぁぁぁっ!」


『ボトっ。ブッシャァァァァっ!』


ヴァンの拳が悠斗の顔面に放たれた時、

悠斗は声を挙げ後方に倒れ込みながら抜刀し、

その一撃は見事・・・放たれたヴァンの腕を切断したのだった。


肘から下を切断されたヴァンは絶叫しながら蹲り、

『ワナワナ』と身体を震わせて居た。


「ぐぁぁぁぁっ!お、俺の・・・俺の腕がぁぁぁっ!?」


地面に仰向けのまま倒れ込んだ悠斗は、

『はぁ、はぁ』と荒い息を吐きながら、

視線だけを蹲るヴァンへと向けていた。


「・・・やっ・・・やった・・・ぜ。

 はっはっはっ・・・ざ、ざまぁぁぁぁぁぁっ!

 ははは・・・ははは・・・ははは・・・」


悠斗がそう笑った瞬間・・・。

そのまま意識を失い動かなくなり、

束の間の静寂が訪れた・・・。



「よ、よく・・・も・・・よくも・・・この俺の腕を・・・

 き、貴様・・・だけ・・・は・・・」


そう呻きながら『ヨロヨロ』と立ち上がったヴァンは、

切断された右腕の処置をし始めた。


苦痛と怒りに顏を歪めたヴァンは、

『はぁぁぁっ!』と神力を切断された右腕に集約し始めると、

気合いの声を放つのと同時に『ズリュっ!』と腕が生え再生したのだった。


『はぁ、はぁ・・・ゆ、油断していたとは言え・・・

 こ、こんな人族如きに・・・』


そう呻きながらマジックボックスを開くと、

その中から一振りの槍を取り出し意識のない悠斗身体の上で構えた。



まさに悠斗の胸板に、ヴァンの槍が振り下ろされようとした時、

その戦いの様子を見つめていた者が慌てふためいていた・・・。


『おいおいおいっ!誰も止めないのかよっ!?』


「くたばれぇぇぇぇぇっ!ユウトォォォっ!」


『ヒュオンっ!』とヴァンは迷いなく悠斗の胸板にその槍を

撃ち放ったのだった・・・。



ってな事で・・・。


今回のお話はいかがだったでしょうか?

やっと『脚部スラスター』を使用する事が出来ましたねw


いつ出そうかと思っていたのですが、

使用するチャンスがあって良かったですw


因みに・・・。

ストックはまだあるのでご安心頂ければとw

んー・・・2話ほどまだありますw


今後とも応援の程宜しくお願いします^^



ってなことで、緋色火花でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 迫力ある戦いでしたね♪ スラスターの使い方にも驚きでした!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ