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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第三章・冥界編
304/405

209話・囀るなっ!

お、お疲れ様です><


す、すみません・・・寝てました^^;


って言う事で、今回虎恫との戦いですね^^

楽しんで頂ければと思います。


また登録や感想など頂けたら・・・と思います^^



それでは209話をお楽しみ下さい。

いつまでも来ないヴァマント達に苛立ちを見せ、

サンダラーは『冥界門』を呼び出そうとした時だった・・・。


『ブォン・・・。ギィィィ』


『玉座の間』に現れた『門』を見て、

サンダラーは『遅いんだよっ!』と鼻息を荒くしていた。


「すまないな・・・少し時間がかかってしまった・・・」


悪びれる様子もなく右手を上げながらヴァマントが現れると、

サンダラーの怒声が聞こえて来た。


「姉ちゃんっ!遅いんだよっ!

 どれだけ待たせるんだっ!」


その怒声にヴァマントは左手首に着けている腕時計を見ると、

『・・・まだ2時間ちょっとじゃないの?』と、

悪びれる事もなくそう言ってのけた・・・。



『女帝と王』が今日何度目かの口喧嘩が始まる頃、

悠斗とライトニングは引き攣った表情を浮かべる『虎恫』に近寄り、

『悪い・・・待たせたな?』と声を掛けた。


「あ、あぁ・・・俺は別に構わないんだが、

 あの御二方が・・・な?」


苦笑いを見せた虎恫だったが、

どうやら内心は『いい加減にしてくれ』と言わんばかりだった。


そんな『女帝と王』を放置し、苦笑しながら悠斗は話を進めていった。


「お前・・・どうして此処に?」


そんな悠斗の質問に『フッ』と笑みを浮かべた虎恫は、

その経緯を説明していった。


「なるほど・・・ヴァマントに気に入られから、

 新たな命と角が・・・3本だっけ?

 確か鬼って角の数が少ないほど強いんだっけか?」


「あぁ・・・俺如きがまさか3本角になれるだなんて・・・

 全く予想していなかったからな?

 ヴァマント様は俺が『ソレに至っている』とは言われたが、

 はっはっはっ・・・未だに信じられんよ・・・」


謙遜と言うには余りにも申し訳なさげな表情を浮かべる虎恫に、

悠斗は『お前にはその価値があると思う』と言ったのだった。


そんな悠斗の言葉に虎恫が少し照れながら、

『お前にそう言われると・・・な?』と、答えると、

『模擬戦・・・楽しみだな?』と悠斗は笑顔を向けたのだった。


すると虎恫は照れ笑いを浮かべながら口を開き、

その真っ直ぐな視線に悠斗も真剣な眼差しをして見せた。


「何の因果がわからないが・・・。

 ユウト、お前と再び戦う事が出来るとはな?」


「・・・そうだな。

 確かにあの時俺は『またな』と言ったけど、

 まさかこんな所でなんてな~?」


「はっはっはっ!確かにそうだな♪」


悠斗と虎恫は少しの間談笑していると『ユウト様・・・』と、

背後で笑顔を向けてるライトニングに声を掛けられた。


その声に悠斗達は言い争いを終えた『女帝と王』を見ると、

ヴァマントが『玉座』に腰を落すと右手を突き出しながら声を挙げた。


『これよりユウトと虎恫の模擬戦を行うっ!』



その言葉に悠斗と虎恫が無言で頷くと、

互いに向き合い握手をした。


「虎恫・・・三本角の力・・・期待してるよ」


「・・・あぁ、悪いがユウト・・・

 今度は俺が勝たせてもらうからな?」


「・・・いいね~♪」


「・・・フッフッフッ」



2人は指定された場所まで行くと、

歩みを進めたサンダラーが声を挙げた。


「貴様らにはこれから武器を選んでもらう」


その言葉を言い終えるとサンダラーは指を『パチン』と鳴らした。

すると突然『螺旋状』に空間が歪むと、

その中から部下らしき男達が数名・・・

大きなテーブルを持ちながらゆっくりと出て来た。


「2人共・・・この中から好きなモノを選ぶがよい」


口角を少し上げながらそう言うと、

悠斗と虎恫は様々な武器が置かれたテーブルの前で止まった。


「・・・好きなのでいいんだよな?」


「あぁ、どれでも好きなモノを選べ」


「・・・わかった」


悠斗と虎恫は横並びになると、

テーブルの上に置かれている武器を物色していった。


「何でもいいって言うけどさ~・・・」


そんな事を言いながら見渡して行くと、

悠斗の視線はふと・・・見慣れた形状の武器に視線を止めた。


「・・・嘘だろ?」


そう言いながら悠斗は一瞬、

その視線をサンダラーへと向けると・・・


『・・・何でもいいぞ』と何処か楽し気にそう呟き、

その後、視線を『玉座』に座るヴァマントへと向けると、

無言のままだが悠斗に『ウインク』をして笑みを浮かべた。


「・・・ははは」


乾いた笑いを浮かべる悠斗は迷う事無くソレを手にすると、

その場で刀身を少し抜いたのだった・・・。


(・・・打ち刀か?

 『刃文』は江戸頃の『足長丁子(あしながちょうじ)

 確か摂津・・・今の大阪で・・・)


そんな事が頭に過ぎりながら『にゃるほど♪』と呟くと、

『カチン』と納刀し『女帝と王』に笑みを浮かべて見せた。


「・・・コレにする」


その声にサンダラーは『それでいいんだな?』と笑みを浮かべ、

ヴァマントは先程と同じように、

笑みを浮かべながら『ウインク』して見せた。


悠斗は心なしか楽し気に指定された位置へと戻ると正面を向き、

目を閉じ集中していった・・・。



そして虎恫はと言うと・・・。


様々な武器を見ながら思考していったのだが・・・。


「やはり俺にはコレしかないな・・・」


そう呟くとソレを手に取り、

『女帝と王』に『コレに決めました』と声を掛けた。


すると今まで無言で居たヴァマントが、

頬杖を着いたまま『貴様もバカの1つ覚えみたいに・・・』と、

やや呆れながらそう言うと、

虎恫は頭を少し搔きながら『俺の相棒はやはり金棒』しか・・・。

そう答えるとサンダラーが口を開いた。


「虎恫よ・・・。

 その『金棒』はこの地の鉱石で作られた一級・・・

 いや、『特級品』だぞ?」


「・・・特級品とはどのような?」


その質問にサンダラーは意地悪く笑みを浮かべると、

『金棒』を指差しながら話していった。


「その金棒はこの『冥界』でのみ採掘出来る、

 『冥鉱石』で作られている・・・」


「・・・冥鉱石?」


首を傾げて見せる虎恫に、

サンダラーは内心『あれ?』と首を傾げて見せると、

『・・・知らぬのか?』と尋ねたのだった・・・。


「・・・はい」


「し、知らぬとあれば・・・」


そう言うと、呆れた顔を見せていたヴァマントが、

その口を開き『知らぬ』と言う虎恫に口を開いた。


「虎恫・・・まさか知らぬとはな?」


「む、無知なもので・・・誠に申し訳なく・・・」


「よいよい・・・知らぬモノはしょうがいわよね~」


やや呆れ気味ではあったがヴァマントは説明し始めた。


「この『冥鉱石』は何を隠そう・・・虎恫よ。

 貴様にこの冥界の地で掘るように命じたモノが、

 今、貴様が手にしている金棒の素材となっているモノよ」


「も、もしや・・・この金棒の素材を・・・

 まさか自分自身の手で?」


「えぇ、己の相棒たる武器だからね~・・・

 そこはさ~やっぱり自分の手で掴み取らないとね~♪」


悪戯っ子のように笑みを浮かべたヴァマントに、

虎恫は『有難き・・・』と頭を垂れ礼を述べたのだった・・・。



その光景を微笑ましく見ていたサンダラーだったが、

その内心は悠斗に対し穏やかではなかったのだった・・・。


(虎恫はこうも礼儀正しくあると言うのに・・・

 このユウトと言う人族は・・・

 な、何なのだっ!?こやつはっ!?

 礼儀も何もない上に逆に無礼ときているではないかっ!?

 フレンドリーにって言うのであれば、

 ある程度の譲歩は・・・ある・・・。

 だがっ!こやつは・・・この地に来たばかりなのに・・・だっ!

 フレンドリーを通り越して『無礼』極まりないっ!

 ぜ、絶様は一体何を考えられて・・・)


指定位置で『ボ~』としている悠斗の姿に、

サンダラーは『ぐぬぬぬぬぬ』と内心怒りの炎を燃やし、

『虎恫よっ!決してこやつにだけは負けてならんっ!』と、

憤怒の形相を隠し平然を装っていたのだった・・・。


そんな愚弟の様子にヴァマントは『ククク』っと笑みを浮かべたが、

内心は『坊やがどこまでやれるかが見物ね?』と、

意識を悠斗の挙動へと向けていたのだった・・・。



虎恫が相棒たる『金棒』を手に、

指定位置まで戻ろうとした時だった・・・。


突然『玉座』に座り頬杖を着くヴァマントから念話が飛んで来た。


{虎恫よ・・・聞こえるか?}


{ヴァ、ヴァマント・・・様っ!?

 は、はいっ!き、聞こえますっ!}


{指定位置に向かいながら話を聞くがよい}


{・・・は、はいっ!}


ヴァマントに言われた通り虎恫はそのまま歩き始めると、

『武器』についての説明がなされた・・・。


{貴様が自らの手で得たその『冥鉱石』の武器は、

 『鬼の力』の強さに応じ、その姿形を変える・・・}


{なっ!?そ、そんな事がっ!?}


{えぇ・・・だから貴様が本気を出せば・・・っと、

 私の言いたい事・・・わかるわよね?}


{・・・はっ!}


{よしっ!虎恫よっ!

 その新しき相棒を以って、

 あの坊やを見事・・・打ち倒しなさいっ!}


{御意っ!}


指定位置に到着した虎恫は一度視線をヴァマントへと向けると、

小さく頷いて見せ、その様子を『ボ~』っと見ていた悠斗は、

『・・・面白いじゃん』と心の中で笑みを浮かべ、

左手に持たれた『刀』に自然と強く握られたのだった・・・。



『・・・両者指定位置へ』


審判を務めるサンダラーが

右腕を前方に突き出しながら声を掛けると、

虎恫は『ふぅ~』と緊張ほほぐすように息を吐き、

『金棒』を一度『ブゥン』と振ると息を吐きながら構えて見せた。


悠斗はサンダラーの声と同時にその場で『くるり』と回転しながら、

『刀』を抜き、正面へと戻った時には既に『納刀』していた。


だが、その様子を見ていたヴァマントの表情が一瞬引き攣ると、

悠斗の行為を見ていたサンダラーと視線を合わせた。


{・・・な、なぁ、姉ちゃんよ}


{・・・貴様の言いたい事はわかる}


{・・・も、もしかして・・・だ。

 ユウトって・・・かなりの腕なんじゃ?}


悠斗の『行為』に目を丸くしたサンダラーに、

ヴァマントは少し焦りながらも会話を続けた。


{も、もしかすると・・・まさか・・・よね?}


{だ、だってさ・・・い、今・・・

 刀を納刀した音・・・聞こえたか?}


{・・・き、聞こえなかった・・・わね?}


{・・・こ、虎恫のヤツ・・・大丈夫なんだろうな?

 ちゃんと『鬼の力』・・・使えるんだよな?}


{それは問題なく・・・だけど・・・何かしら?

 嫌な予感しかしないんだけど?}


{・・・お、俺もだ}


そんな会話を念話を通してしていると、

痺れを切らした悠斗から声が挙がった・・・。


「おい・・・まだか?」


不敵な面構えを見せながらそう言った悠斗に、

サンダラーの表情は強張り内心では声にならない声を挙げていた。


だが・・・。

『冥界の王』としてのプライドがソレに耐えると、

右手を突き出しながら『・・・始めっ!』と号令を発した。


「・・・ユウトーっ!行くぞーっ!」


声を張り上げ気合を入れる虎恫とは対照的に、

悠斗は『ニヤり』と口角を上げただけだった・・・。



『うおぉぉぉぉぉぉっ!』


合図と同時に一度『金棒』を振り回した虎恫は、

雄叫びを挙げながら駆け出すが、

悠斗はただ静かに構え、その場から一歩も踏み出さなかった。


そんな悠斗の様子にサンダラーは顔を顰め、

ヴァマントは首を傾げたのだった・・・。


{ユウトのヤツっ!どうして一歩も動かないのだっ!?}


{・・・な、何なのよ?この坊やは・・・。

 一体どうして・・・?}


不思議がる『女帝と王』の気など知る由もなく、

悠斗はただ目を閉じ切迫して来る虎恫へと意識を向けていた。


半身になり腰を落し刀の鍔にそっと親指を押し当て、

右手をそっと柄に這わせながら、

鬼気迫る虎恫の気配を探って行く・・・。


悠斗は『本物』に限りなく近い『刀』を手にした事で、

全神経が研ぎ澄まされて行くのを感じ、

その久しぶりの感覚に高揚していた・・・。


(・・・わかる。

 身体は擬体でも、この感覚だけは・・・

 フフフ・・・

 この張り詰めた緊張感・・・たまらない・・・)


悠斗は久方ぶりに感じた感覚に心を躍らせながら、

その手に持つ刀を通して『結界』を張り、

勢いよく押し寄せる虎恫の波動が、

その『結界』に触れるのを待ったのだった・・・。


『うぉぉぉぉぉぉっ!ユウトォォォォっ!

 臆したかぁぁぁぁっ!』


気合いの雄叫びを挙げた虎恫は、

勢いよく踏切るのと同時に上段に金棒を振り上げると、

悠斗の頭上で気合いの籠った一撃を振り下ろしたのだった・・・。


『喰らえぇぇぇぇぇっ!ユウトォォォっ!』



一方静かに構える悠斗はと言うと・・・。


頭上に飛び上った虎恫の跳躍力に一瞬、

その表情を『ピクリ』とさせたが、

悠斗は微動だにせず迫る気迫を感じ取っていた。


(面白い・・・これだから戦いってのは・・・)


構える悠斗の口角が少し上がったと同時に、

『カチっ』とその親指が鍔を押し込み鯉口を切った・・・。


『うぉぉぉぉぉぉぉっ!』


虎恫が勢いよく振り下ろす金棒が迫り、

その重量と頭上から降り下ろすその勢いが・・・

加速度的に増すのを感じると・・・。


『はぁぁっ!』


『今更何をっ!?』


『シュっ!』


『っ!?』


『ドゴンっ!』


悠斗の静かな気合いが虎恫に届く頃、

その金棒の一撃は硬い冥界の大地に振り下ろされたが、

しかしその場に悠斗の姿はなかった・・・。


冥界の大地の土煙りが少し舞う中、

『女帝と王』達の口が半開きになっていた。


『ど、何処にっ!?』と虎恫が慌てた様子で振り返った時、

虎恫の視界が『グラリ』と揺らいだ・・・。


「あ、あれ・・・?」


『ガクンっ』と身体の力が抜けるような感覚に襲われると、

虎恫の膝が『ガクガク』と揺れていたのだった。


「お、俺の・・・ひ、膝・・・が・・・」


視界が霞み朧げに揺らぐ悠斗の背中を見ながら、

崩れ落ちるのを『否』とする虎恫は、

金棒を支えに倒れる事を『拒否』したのだった。


そんな時だった・・・。


朧げに見える悠斗から静かな口調で声が聞こえた。


『神野流剣術・鉄甲弾』


そう言い終えた悠斗から『カチン』と音が聞こえ、

たった今、納刀した事を告げたのだった・・・。


虎恫は『ガクガク』と未だに震える膝を気にする事もなく、

絞り出すように『な、何を・・・した?』と声を発した。


「・・・・・」


背中を見せたままの悠斗は何も語らずに居たが、

声を発したのは、この戦いを見ていたサンダラーからだった。


「虎恫よ・・・。

 貴様は斬られたのではなく・・・。

 『柄の突き』を喰らったのだ・・・」


「つ、柄・・・?」


「あぁ・・・。

 貴様が振り下ろした瞬間・・・。

 まさにその金棒がユウトの脳天に直撃する寸前の事だ。

 こいつは身体を捻りながら攻撃を躱し、

 尚且つ・・・跳躍しながらその身を反転させ刀の柄を・・・

 貴様の鳩尾(みぞおち)に叩き込んだのだ・・・」


「なっ・・・なん・・・と・・・」


サンダラーの説明に虎恫の双眼は見開かれ、

朧げに見える悠斗の背中を見つめた。


「あ、あの・・・一瞬・・・で・・・

 ま、まさか・・・そんな事・・・が・・・?」


『理解出来ない』と言わんばかりに、

虎恫は説明された話を頭の中で繰り返していた。


すると背中を向けたままの悠斗から声が発せられた・・・。


『・・・手加減はした。

 だからすぐに復活出来るから安心しろ』


『んなっ!?』


悠斗の思いも寄らぬその言葉に、

虎恫ばかりではなく『女帝と王』も目を見開き、

ライトニングはその表情を強張らせていた・・・。


そしてその言葉は主だった者達ばかりではなく、

『女帝と王』の部下達も驚愕させるモノだった。


「そ、そんなバカな事がっ!?」


「あ、あいつ・・・ひ、人族なのだろっ!?」


「し、しかも大したレベルでもない星の人族がっ!?」


多数のどよめきが聞こえ、

その場に居た者達の動揺が溢れかえり始めると、

『認めぬ・・・』と今にも倒れそうな虎恫から声が挙がった。


「・・・手加減・・・した・・・だと?」


その地を這うようなその声に、

背中を向けていた悠斗が虎恫に向き直った。


「・・・あぁ、確かに手加減した。

 おごりでも何でもなく・・・本気になる必要がなかった」


「なっ・・・何だとっ!?」


「虎恫・・・お前・・・鬼の力はどうした?」


「・・・うぐっ」


そう言い放った悠斗の視線は虎恫を射抜くように放たれ、

その眼光はとても厳しいモノだった・・・。


「三本角の鬼の力は・・・どうしたよ?

 お前・・・俺を舐めてんのか?

 そんなヤツにどうして俺が本気で応えなくちゃならないんだよ?

 『認めぬ・・・』って一体何言ってんだ?

 勝手な事言って・・・囀るなっ!」


「うぐぅぅ」


悠斗のその剣幕と怒号に、

その場の雰囲気が凍り付いたのだった・・・。


『グウの音』も言えない状況に『女帝と王』が協議すると、

 休憩を挟んで『再戦』と言う事になったのだった・・・。


悠斗と虎恫は互いに用意された場所で、

用意されたお茶と御菓子を振舞われてたが、

悠斗の機嫌はすこぶる悪く・・・

その場に近付く者も居なかった・・・。


そんな時だった・・・。


その様子を見かねたライトニングが歩き始めると、

『少し宜しいですかな?』と、微笑みながら悠斗に声を掛けた。


「ユウト様・・・」


「・・・何?」


「ご気分が優れないようで・・・」


「そりゃ~ね・・・そうでしょ?」


不機嫌そうにそう答える悠斗に苦笑すると、

ライトニングは『ほっほっほっ♪』といつものように笑って見せた。


「それにしても何ですな~?」


「・・・何が?」


「先程ユウト様は『剣術』と・・・申されましたが、

 ユウト様の御国では皆が扱えるモノなのでしょうか?」


突然ライトニングからそんな質問が投げ掛けられると、

悠斗は驚きの表情を見せながらも説明していった。


「なるほど~・・・ふむふむ。

 『魔を狩る一族』であるが故・・・と、言う訳ですな?」


「あぁ・・・。

 だから気付いた時には『剣術』を学び、

 『魔』に対して如何に戦うか・・・

 それを3歳くらいから教わり始めたんだ・・・」


「さ、3歳とは・・・い、いやはや・・・

 それはそれは・・・」


ライトニングは持ち前の人懐っこさとその寛容さで、

すこぶる機嫌の悪い悠斗をほぐして行った。



それを少し離れていた場所から見ていた者達・・・。


それは悠斗に『グウの音』も言えなくなった虎恫と、

ヴァマントとサンダラーだった・・・。


「お、おい・・・姉ちゃん・・・。

 あいつ・・・笑い始めたぜ?」


「そ、そう・・・みたいね?

 ライのヤツ・・・上手くやってくれたみたいね?

 やれやれだわ~・・・まじでやれやれだわ~・・・」


安堵の息を漏らすヴァマントだったが、

『問題は・・・こいつ・・・よね?』と、

落ち込む虎恫の前に座りながら茶をすするヴァマントと、

その隣でお菓子を食べ始めたサンダラーの視線が痛かった。


「わ、私は・・・」


そう『ブツブツ』と言い始めた虎恫に、

ティーカップを置いたヴァマントが話を切り出した。


「あんたね~・・・

 どうして最初から鬼の力を使わなかったのよ?」


「は、はぁ・・・ま、まぁ~最初はユウトの出方をと・・・」


俯きながらそう話し始めた虎恫に、

今度はサンダラーが御菓子で汚れた指先を舐めながら、

口を開いていった。


「お前・・・生前あいつに負けてんだろ?」


「うぐ・・・は、はい・・・」


「ならよ~・・・出方とか伺ってんじゃねーよ」


「・・・は、はい」


「ったくよ~・・・

 お前にはどうしても勝ってもらわないと困るんだよ」


そんな言葉がサンダラーから聞こえると、

顏を上げた虎恫は『はい?』と首を傾げたのだった。


そんな虎恫にサンダラーは『ニヤっ』と笑みを浮かべると、

目を閉じ再びお茶を飲み始めたヴァマントを気にしながら、

小声で言い始めた・・・。


「姉ちゃんとライと賭けをしていてな~?」


「か、賭け・・・ですかっ!?」


「お、おうよ♪

 それでもしその賭けに勝ったら・・・

 フッフッフッ・・・何とっ!

 俺の代わりに暫くの間・・・仕事をしてくれるってんだっ!」


「は、はぁ・・・」


「で、でな?」


虎恫にとって『どうでもいい』その話の内容に呆れていると、

黙っていたヴァマントがサンダラーの話を遮ってきた。


「虎恫よ・・・。

 今度は本気でやれ・・・」


「・・・はい」


「私が直接教えてあげたのよ?

 その三本角に似合う力を私に見せなさい」


「・・・御意」



休憩が終わりそれぞれが持ち場に戻る頃、

悠斗と虎恫は指定された位置に向かって歩き始めた。


その時、虎恫はどうしても気になっていた事を、

念話を通してヴァマントに聞いたのだった。


{・・・もしヴァマント様が賭けとやらにお勝ちになった場合、

 一体何を・・・?}


その素朴な疑問に『玉座』に腰を落したヴァマントは、

『ニヤり』と笑みを浮かべてこう言ったのだった・・・。


{私が勝った暁には・・・。

 勿論♪勇者の国に旅行に行くのよ~♪}


{ははは・・・わ、私は負けた方がいいのでは?}


{・・・まぁ~そう思わなくはないけどさ~

 でも・・・私が教えたんだから・・・

 貴様には進化を見せてもらわないとね?}


{・・・ははは、ぜ、全力を尽くしますっ!}


虎恫とヴァマントが話し終えた頃、

指定された位置に着いた悠斗と虎恫は武器を構え、

サンダラーの合図を待った。


そして・・・。


「只今より模擬戦を開始するっ!

 両者・・・『本気でやれよ?』」


冷たくも恐ろしい声に互いに緊張した面持ちになると、

再び武器を構え合図を静かに待つのだった・・・。


『・・・始めっ!』


サンダラーの合図と共に戦いの火蓋は切って落とされたのだが、

その決着に誰もが声を発する事が出来なかった・・・。



ってな事で・・・。


今回は

お話はいかがだったでしょうか?

悠斗がブチギレてましたね~w


今後も楽しんでいただけるよう頑張りますので、

応援のほど、宜しく御願い致します^^



ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「『本物』に限りなく近い『刀』」てのが意味深ですね♪ 前回と今回の話が結構好きなんですが、 ヴァマントのキャラや言動が気に入ってるみたいです♥︎ ライトニングも、もう1つの小説でよりもキ…
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