209話・囀るなっ!
お、お疲れ様です><
す、すみません・・・寝てました^^;
って言う事で、今回虎恫との戦いですね^^
楽しんで頂ければと思います。
また登録や感想など頂けたら・・・と思います^^
それでは209話をお楽しみ下さい。
いつまでも来ないヴァマント達に苛立ちを見せ、
サンダラーは『冥界門』を呼び出そうとした時だった・・・。
『ブォン・・・。ギィィィ』
『玉座の間』に現れた『門』を見て、
サンダラーは『遅いんだよっ!』と鼻息を荒くしていた。
「すまないな・・・少し時間がかかってしまった・・・」
悪びれる様子もなく右手を上げながらヴァマントが現れると、
サンダラーの怒声が聞こえて来た。
「姉ちゃんっ!遅いんだよっ!
どれだけ待たせるんだっ!」
その怒声にヴァマントは左手首に着けている腕時計を見ると、
『・・・まだ2時間ちょっとじゃないの?』と、
悪びれる事もなくそう言ってのけた・・・。
『女帝と王』が今日何度目かの口喧嘩が始まる頃、
悠斗とライトニングは引き攣った表情を浮かべる『虎恫』に近寄り、
『悪い・・・待たせたな?』と声を掛けた。
「あ、あぁ・・・俺は別に構わないんだが、
あの御二方が・・・な?」
苦笑いを見せた虎恫だったが、
どうやら内心は『いい加減にしてくれ』と言わんばかりだった。
そんな『女帝と王』を放置し、苦笑しながら悠斗は話を進めていった。
「お前・・・どうして此処に?」
そんな悠斗の質問に『フッ』と笑みを浮かべた虎恫は、
その経緯を説明していった。
「なるほど・・・ヴァマントに気に入られから、
新たな命と角が・・・3本だっけ?
確か鬼って角の数が少ないほど強いんだっけか?」
「あぁ・・・俺如きがまさか3本角になれるだなんて・・・
全く予想していなかったからな?
ヴァマント様は俺が『ソレに至っている』とは言われたが、
はっはっはっ・・・未だに信じられんよ・・・」
謙遜と言うには余りにも申し訳なさげな表情を浮かべる虎恫に、
悠斗は『お前にはその価値があると思う』と言ったのだった。
そんな悠斗の言葉に虎恫が少し照れながら、
『お前にそう言われると・・・な?』と、答えると、
『模擬戦・・・楽しみだな?』と悠斗は笑顔を向けたのだった。
すると虎恫は照れ笑いを浮かべながら口を開き、
その真っ直ぐな視線に悠斗も真剣な眼差しをして見せた。
「何の因果がわからないが・・・。
ユウト、お前と再び戦う事が出来るとはな?」
「・・・そうだな。
確かにあの時俺は『またな』と言ったけど、
まさかこんな所でなんてな~?」
「はっはっはっ!確かにそうだな♪」
悠斗と虎恫は少しの間談笑していると『ユウト様・・・』と、
背後で笑顔を向けてるライトニングに声を掛けられた。
その声に悠斗達は言い争いを終えた『女帝と王』を見ると、
ヴァマントが『玉座』に腰を落すと右手を突き出しながら声を挙げた。
『これよりユウトと虎恫の模擬戦を行うっ!』
その言葉に悠斗と虎恫が無言で頷くと、
互いに向き合い握手をした。
「虎恫・・・三本角の力・・・期待してるよ」
「・・・あぁ、悪いがユウト・・・
今度は俺が勝たせてもらうからな?」
「・・・いいね~♪」
「・・・フッフッフッ」
2人は指定された場所まで行くと、
歩みを進めたサンダラーが声を挙げた。
「貴様らにはこれから武器を選んでもらう」
その言葉を言い終えるとサンダラーは指を『パチン』と鳴らした。
すると突然『螺旋状』に空間が歪むと、
その中から部下らしき男達が数名・・・
大きなテーブルを持ちながらゆっくりと出て来た。
「2人共・・・この中から好きなモノを選ぶがよい」
口角を少し上げながらそう言うと、
悠斗と虎恫は様々な武器が置かれたテーブルの前で止まった。
「・・・好きなのでいいんだよな?」
「あぁ、どれでも好きなモノを選べ」
「・・・わかった」
悠斗と虎恫は横並びになると、
テーブルの上に置かれている武器を物色していった。
「何でもいいって言うけどさ~・・・」
そんな事を言いながら見渡して行くと、
悠斗の視線はふと・・・見慣れた形状の武器に視線を止めた。
「・・・嘘だろ?」
そう言いながら悠斗は一瞬、
その視線をサンダラーへと向けると・・・
『・・・何でもいいぞ』と何処か楽し気にそう呟き、
その後、視線を『玉座』に座るヴァマントへと向けると、
無言のままだが悠斗に『ウインク』をして笑みを浮かべた。
「・・・ははは」
乾いた笑いを浮かべる悠斗は迷う事無くソレを手にすると、
その場で刀身を少し抜いたのだった・・・。
(・・・打ち刀か?
『刃文』は江戸頃の『足長丁子』
確か摂津・・・今の大阪で・・・)
そんな事が頭に過ぎりながら『にゃるほど♪』と呟くと、
『カチン』と納刀し『女帝と王』に笑みを浮かべて見せた。
「・・・コレにする」
その声にサンダラーは『それでいいんだな?』と笑みを浮かべ、
ヴァマントは先程と同じように、
笑みを浮かべながら『ウインク』して見せた。
悠斗は心なしか楽し気に指定された位置へと戻ると正面を向き、
目を閉じ集中していった・・・。
そして虎恫はと言うと・・・。
様々な武器を見ながら思考していったのだが・・・。
「やはり俺にはコレしかないな・・・」
そう呟くとソレを手に取り、
『女帝と王』に『コレに決めました』と声を掛けた。
すると今まで無言で居たヴァマントが、
頬杖を着いたまま『貴様もバカの1つ覚えみたいに・・・』と、
やや呆れながらそう言うと、
虎恫は頭を少し搔きながら『俺の相棒はやはり金棒』しか・・・。
そう答えるとサンダラーが口を開いた。
「虎恫よ・・・。
その『金棒』はこの地の鉱石で作られた一級・・・
いや、『特級品』だぞ?」
「・・・特級品とはどのような?」
その質問にサンダラーは意地悪く笑みを浮かべると、
『金棒』を指差しながら話していった。
「その金棒はこの『冥界』でのみ採掘出来る、
『冥鉱石』で作られている・・・」
「・・・冥鉱石?」
首を傾げて見せる虎恫に、
サンダラーは内心『あれ?』と首を傾げて見せると、
『・・・知らぬのか?』と尋ねたのだった・・・。
「・・・はい」
「し、知らぬとあれば・・・」
そう言うと、呆れた顔を見せていたヴァマントが、
その口を開き『知らぬ』と言う虎恫に口を開いた。
「虎恫・・・まさか知らぬとはな?」
「む、無知なもので・・・誠に申し訳なく・・・」
「よいよい・・・知らぬモノはしょうがいわよね~」
やや呆れ気味ではあったがヴァマントは説明し始めた。
「この『冥鉱石』は何を隠そう・・・虎恫よ。
貴様にこの冥界の地で掘るように命じたモノが、
今、貴様が手にしている金棒の素材となっているモノよ」
「も、もしや・・・この金棒の素材を・・・
まさか自分自身の手で?」
「えぇ、己の相棒たる武器だからね~・・・
そこはさ~やっぱり自分の手で掴み取らないとね~♪」
悪戯っ子のように笑みを浮かべたヴァマントに、
虎恫は『有難き・・・』と頭を垂れ礼を述べたのだった・・・。
その光景を微笑ましく見ていたサンダラーだったが、
その内心は悠斗に対し穏やかではなかったのだった・・・。
(虎恫はこうも礼儀正しくあると言うのに・・・
このユウトと言う人族は・・・
な、何なのだっ!?こやつはっ!?
礼儀も何もない上に逆に無礼ときているではないかっ!?
フレンドリーにって言うのであれば、
ある程度の譲歩は・・・ある・・・。
だがっ!こやつは・・・この地に来たばかりなのに・・・だっ!
フレンドリーを通り越して『無礼』極まりないっ!
ぜ、絶様は一体何を考えられて・・・)
指定位置で『ボ~』としている悠斗の姿に、
サンダラーは『ぐぬぬぬぬぬ』と内心怒りの炎を燃やし、
『虎恫よっ!決してこやつにだけは負けてならんっ!』と、
憤怒の形相を隠し平然を装っていたのだった・・・。
そんな愚弟の様子にヴァマントは『ククク』っと笑みを浮かべたが、
内心は『坊やがどこまでやれるかが見物ね?』と、
意識を悠斗の挙動へと向けていたのだった・・・。
虎恫が相棒たる『金棒』を手に、
指定位置まで戻ろうとした時だった・・・。
突然『玉座』に座り頬杖を着くヴァマントから念話が飛んで来た。
{虎恫よ・・・聞こえるか?}
{ヴァ、ヴァマント・・・様っ!?
は、はいっ!き、聞こえますっ!}
{指定位置に向かいながら話を聞くがよい}
{・・・は、はいっ!}
ヴァマントに言われた通り虎恫はそのまま歩き始めると、
『武器』についての説明がなされた・・・。
{貴様が自らの手で得たその『冥鉱石』の武器は、
『鬼の力』の強さに応じ、その姿形を変える・・・}
{なっ!?そ、そんな事がっ!?}
{えぇ・・・だから貴様が本気を出せば・・・っと、
私の言いたい事・・・わかるわよね?}
{・・・はっ!}
{よしっ!虎恫よっ!
その新しき相棒を以って、
あの坊やを見事・・・打ち倒しなさいっ!}
{御意っ!}
指定位置に到着した虎恫は一度視線をヴァマントへと向けると、
小さく頷いて見せ、その様子を『ボ~』っと見ていた悠斗は、
『・・・面白いじゃん』と心の中で笑みを浮かべ、
左手に持たれた『刀』に自然と強く握られたのだった・・・。
『・・・両者指定位置へ』
審判を務めるサンダラーが
右腕を前方に突き出しながら声を掛けると、
虎恫は『ふぅ~』と緊張ほほぐすように息を吐き、
『金棒』を一度『ブゥン』と振ると息を吐きながら構えて見せた。
悠斗はサンダラーの声と同時にその場で『くるり』と回転しながら、
『刀』を抜き、正面へと戻った時には既に『納刀』していた。
だが、その様子を見ていたヴァマントの表情が一瞬引き攣ると、
悠斗の行為を見ていたサンダラーと視線を合わせた。
{・・・な、なぁ、姉ちゃんよ}
{・・・貴様の言いたい事はわかる}
{・・・も、もしかして・・・だ。
ユウトって・・・かなりの腕なんじゃ?}
悠斗の『行為』に目を丸くしたサンダラーに、
ヴァマントは少し焦りながらも会話を続けた。
{も、もしかすると・・・まさか・・・よね?}
{だ、だってさ・・・い、今・・・
刀を納刀した音・・・聞こえたか?}
{・・・き、聞こえなかった・・・わね?}
{・・・こ、虎恫のヤツ・・・大丈夫なんだろうな?
ちゃんと『鬼の力』・・・使えるんだよな?}
{それは問題なく・・・だけど・・・何かしら?
嫌な予感しかしないんだけど?}
{・・・お、俺もだ}
そんな会話を念話を通してしていると、
痺れを切らした悠斗から声が挙がった・・・。
「おい・・・まだか?」
不敵な面構えを見せながらそう言った悠斗に、
サンダラーの表情は強張り内心では声にならない声を挙げていた。
だが・・・。
『冥界の王』としてのプライドがソレに耐えると、
右手を突き出しながら『・・・始めっ!』と号令を発した。
「・・・ユウトーっ!行くぞーっ!」
声を張り上げ気合を入れる虎恫とは対照的に、
悠斗は『ニヤり』と口角を上げただけだった・・・。
『うおぉぉぉぉぉぉっ!』
合図と同時に一度『金棒』を振り回した虎恫は、
雄叫びを挙げながら駆け出すが、
悠斗はただ静かに構え、その場から一歩も踏み出さなかった。
そんな悠斗の様子にサンダラーは顔を顰め、
ヴァマントは首を傾げたのだった・・・。
{ユウトのヤツっ!どうして一歩も動かないのだっ!?}
{・・・な、何なのよ?この坊やは・・・。
一体どうして・・・?}
不思議がる『女帝と王』の気など知る由もなく、
悠斗はただ目を閉じ切迫して来る虎恫へと意識を向けていた。
半身になり腰を落し刀の鍔にそっと親指を押し当て、
右手をそっと柄に這わせながら、
鬼気迫る虎恫の気配を探って行く・・・。
悠斗は『本物』に限りなく近い『刀』を手にした事で、
全神経が研ぎ澄まされて行くのを感じ、
その久しぶりの感覚に高揚していた・・・。
(・・・わかる。
身体は擬体でも、この感覚だけは・・・
フフフ・・・
この張り詰めた緊張感・・・たまらない・・・)
悠斗は久方ぶりに感じた感覚に心を躍らせながら、
その手に持つ刀を通して『結界』を張り、
勢いよく押し寄せる虎恫の波動が、
その『結界』に触れるのを待ったのだった・・・。
『うぉぉぉぉぉぉっ!ユウトォォォォっ!
臆したかぁぁぁぁっ!』
気合いの雄叫びを挙げた虎恫は、
勢いよく踏切るのと同時に上段に金棒を振り上げると、
悠斗の頭上で気合いの籠った一撃を振り下ろしたのだった・・・。
『喰らえぇぇぇぇぇっ!ユウトォォォっ!』
一方静かに構える悠斗はと言うと・・・。
頭上に飛び上った虎恫の跳躍力に一瞬、
その表情を『ピクリ』とさせたが、
悠斗は微動だにせず迫る気迫を感じ取っていた。
(面白い・・・これだから戦いってのは・・・)
構える悠斗の口角が少し上がったと同時に、
『カチっ』とその親指が鍔を押し込み鯉口を切った・・・。
『うぉぉぉぉぉぉぉっ!』
虎恫が勢いよく振り下ろす金棒が迫り、
その重量と頭上から降り下ろすその勢いが・・・
加速度的に増すのを感じると・・・。
『はぁぁっ!』
『今更何をっ!?』
『シュっ!』
『っ!?』
『ドゴンっ!』
悠斗の静かな気合いが虎恫に届く頃、
その金棒の一撃は硬い冥界の大地に振り下ろされたが、
しかしその場に悠斗の姿はなかった・・・。
冥界の大地の土煙りが少し舞う中、
『女帝と王』達の口が半開きになっていた。
『ど、何処にっ!?』と虎恫が慌てた様子で振り返った時、
虎恫の視界が『グラリ』と揺らいだ・・・。
「あ、あれ・・・?」
『ガクンっ』と身体の力が抜けるような感覚に襲われると、
虎恫の膝が『ガクガク』と揺れていたのだった。
「お、俺の・・・ひ、膝・・・が・・・」
視界が霞み朧げに揺らぐ悠斗の背中を見ながら、
崩れ落ちるのを『否』とする虎恫は、
金棒を支えに倒れる事を『拒否』したのだった。
そんな時だった・・・。
朧げに見える悠斗から静かな口調で声が聞こえた。
『神野流剣術・鉄甲弾』
そう言い終えた悠斗から『カチン』と音が聞こえ、
たった今、納刀した事を告げたのだった・・・。
虎恫は『ガクガク』と未だに震える膝を気にする事もなく、
絞り出すように『な、何を・・・した?』と声を発した。
「・・・・・」
背中を見せたままの悠斗は何も語らずに居たが、
声を発したのは、この戦いを見ていたサンダラーからだった。
「虎恫よ・・・。
貴様は斬られたのではなく・・・。
『柄の突き』を喰らったのだ・・・」
「つ、柄・・・?」
「あぁ・・・。
貴様が振り下ろした瞬間・・・。
まさにその金棒がユウトの脳天に直撃する寸前の事だ。
こいつは身体を捻りながら攻撃を躱し、
尚且つ・・・跳躍しながらその身を反転させ刀の柄を・・・
貴様の鳩尾に叩き込んだのだ・・・」
「なっ・・・なん・・・と・・・」
サンダラーの説明に虎恫の双眼は見開かれ、
朧げに見える悠斗の背中を見つめた。
「あ、あの・・・一瞬・・・で・・・
ま、まさか・・・そんな事・・・が・・・?」
『理解出来ない』と言わんばかりに、
虎恫は説明された話を頭の中で繰り返していた。
すると背中を向けたままの悠斗から声が発せられた・・・。
『・・・手加減はした。
だからすぐに復活出来るから安心しろ』
『んなっ!?』
悠斗の思いも寄らぬその言葉に、
虎恫ばかりではなく『女帝と王』も目を見開き、
ライトニングはその表情を強張らせていた・・・。
そしてその言葉は主だった者達ばかりではなく、
『女帝と王』の部下達も驚愕させるモノだった。
「そ、そんなバカな事がっ!?」
「あ、あいつ・・・ひ、人族なのだろっ!?」
「し、しかも大したレベルでもない星の人族がっ!?」
多数のどよめきが聞こえ、
その場に居た者達の動揺が溢れかえり始めると、
『認めぬ・・・』と今にも倒れそうな虎恫から声が挙がった。
「・・・手加減・・・した・・・だと?」
その地を這うようなその声に、
背中を向けていた悠斗が虎恫に向き直った。
「・・・あぁ、確かに手加減した。
おごりでも何でもなく・・・本気になる必要がなかった」
「なっ・・・何だとっ!?」
「虎恫・・・お前・・・鬼の力はどうした?」
「・・・うぐっ」
そう言い放った悠斗の視線は虎恫を射抜くように放たれ、
その眼光はとても厳しいモノだった・・・。
「三本角の鬼の力は・・・どうしたよ?
お前・・・俺を舐めてんのか?
そんなヤツにどうして俺が本気で応えなくちゃならないんだよ?
『認めぬ・・・』って一体何言ってんだ?
勝手な事言って・・・囀るなっ!」
「うぐぅぅ」
悠斗のその剣幕と怒号に、
その場の雰囲気が凍り付いたのだった・・・。
『グウの音』も言えない状況に『女帝と王』が協議すると、
休憩を挟んで『再戦』と言う事になったのだった・・・。
悠斗と虎恫は互いに用意された場所で、
用意されたお茶と御菓子を振舞われてたが、
悠斗の機嫌はすこぶる悪く・・・
その場に近付く者も居なかった・・・。
そんな時だった・・・。
その様子を見かねたライトニングが歩き始めると、
『少し宜しいですかな?』と、微笑みながら悠斗に声を掛けた。
「ユウト様・・・」
「・・・何?」
「ご気分が優れないようで・・・」
「そりゃ~ね・・・そうでしょ?」
不機嫌そうにそう答える悠斗に苦笑すると、
ライトニングは『ほっほっほっ♪』といつものように笑って見せた。
「それにしても何ですな~?」
「・・・何が?」
「先程ユウト様は『剣術』と・・・申されましたが、
ユウト様の御国では皆が扱えるモノなのでしょうか?」
突然ライトニングからそんな質問が投げ掛けられると、
悠斗は驚きの表情を見せながらも説明していった。
「なるほど~・・・ふむふむ。
『魔を狩る一族』であるが故・・・と、言う訳ですな?」
「あぁ・・・。
だから気付いた時には『剣術』を学び、
『魔』に対して如何に戦うか・・・
それを3歳くらいから教わり始めたんだ・・・」
「さ、3歳とは・・・い、いやはや・・・
それはそれは・・・」
ライトニングは持ち前の人懐っこさとその寛容さで、
すこぶる機嫌の悪い悠斗をほぐして行った。
それを少し離れていた場所から見ていた者達・・・。
それは悠斗に『グウの音』も言えなくなった虎恫と、
ヴァマントとサンダラーだった・・・。
「お、おい・・・姉ちゃん・・・。
あいつ・・・笑い始めたぜ?」
「そ、そう・・・みたいね?
ライのヤツ・・・上手くやってくれたみたいね?
やれやれだわ~・・・まじでやれやれだわ~・・・」
安堵の息を漏らすヴァマントだったが、
『問題は・・・こいつ・・・よね?』と、
落ち込む虎恫の前に座りながら茶をすするヴァマントと、
その隣でお菓子を食べ始めたサンダラーの視線が痛かった。
「わ、私は・・・」
そう『ブツブツ』と言い始めた虎恫に、
ティーカップを置いたヴァマントが話を切り出した。
「あんたね~・・・
どうして最初から鬼の力を使わなかったのよ?」
「は、はぁ・・・ま、まぁ~最初はユウトの出方をと・・・」
俯きながらそう話し始めた虎恫に、
今度はサンダラーが御菓子で汚れた指先を舐めながら、
口を開いていった。
「お前・・・生前あいつに負けてんだろ?」
「うぐ・・・は、はい・・・」
「ならよ~・・・出方とか伺ってんじゃねーよ」
「・・・は、はい」
「ったくよ~・・・
お前にはどうしても勝ってもらわないと困るんだよ」
そんな言葉がサンダラーから聞こえると、
顏を上げた虎恫は『はい?』と首を傾げたのだった。
そんな虎恫にサンダラーは『ニヤっ』と笑みを浮かべると、
目を閉じ再びお茶を飲み始めたヴァマントを気にしながら、
小声で言い始めた・・・。
「姉ちゃんとライと賭けをしていてな~?」
「か、賭け・・・ですかっ!?」
「お、おうよ♪
それでもしその賭けに勝ったら・・・
フッフッフッ・・・何とっ!
俺の代わりに暫くの間・・・仕事をしてくれるってんだっ!」
「は、はぁ・・・」
「で、でな?」
虎恫にとって『どうでもいい』その話の内容に呆れていると、
黙っていたヴァマントがサンダラーの話を遮ってきた。
「虎恫よ・・・。
今度は本気でやれ・・・」
「・・・はい」
「私が直接教えてあげたのよ?
その三本角に似合う力を私に見せなさい」
「・・・御意」
休憩が終わりそれぞれが持ち場に戻る頃、
悠斗と虎恫は指定された位置に向かって歩き始めた。
その時、虎恫はどうしても気になっていた事を、
念話を通してヴァマントに聞いたのだった。
{・・・もしヴァマント様が賭けとやらにお勝ちになった場合、
一体何を・・・?}
その素朴な疑問に『玉座』に腰を落したヴァマントは、
『ニヤり』と笑みを浮かべてこう言ったのだった・・・。
{私が勝った暁には・・・。
勿論♪勇者の国に旅行に行くのよ~♪}
{ははは・・・わ、私は負けた方がいいのでは?}
{・・・まぁ~そう思わなくはないけどさ~
でも・・・私が教えたんだから・・・
貴様には進化を見せてもらわないとね?}
{・・・ははは、ぜ、全力を尽くしますっ!}
虎恫とヴァマントが話し終えた頃、
指定された位置に着いた悠斗と虎恫は武器を構え、
サンダラーの合図を待った。
そして・・・。
「只今より模擬戦を開始するっ!
両者・・・『本気でやれよ?』」
冷たくも恐ろしい声に互いに緊張した面持ちになると、
再び武器を構え合図を静かに待つのだった・・・。
『・・・始めっ!』
サンダラーの合図と共に戦いの火蓋は切って落とされたのだが、
その決着に誰もが声を発する事が出来なかった・・・。
ってな事で・・・。
今回は
お話はいかがだったでしょうか?
悠斗がブチギレてましたね~w
今後も楽しんでいただけるよう頑張りますので、
応援のほど、宜しく御願い致します^^
ってなことで、緋色火花でした。




