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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第三章・冥界編
297/407

202話・理由と亡者

お疲れ様です。


仕事で発狂寸前な緋色で御座います。


ま、まぁ~仕事の事は兎も角・・・。

『第三章』に突入出来た事が嬉しい限りですっ!


色々と伏線を張りながら回収もして、

読者様方が楽しめるように・・・努力したいと思いますっ!


そして『活動報告』などでも言っていますが、

別の緋色の作品と、この『冥界編』から『クロス』します。


まぁ~そちらも読んで頂ければと思いますが、

それは読者様方にお任せ致します。


これからも頑張って行きたいと思いますので、

仕事で緋色が壊れても応援してやって下さいw



それでは202話をお楽しみ下さい。


『狭間の間』を一時的に退出していた『ノーブル組』が戻ると、

『絶』はこの『神々の円卓会議』を再開し、

『神野悠斗』に関する話を続けたのだった・・・。


『で・・・。あの小僧・・・。

 悠斗がどうして『本気』で戦わないか・・・。

 誰か説明出来るヤツはいるか?』


『・・・・・』


突然『絶』からそう話を切り出された一同の反応は、

様々だった・・・。


『日本の神々』は引き攣った笑みを浮かべつつも、

『わ、我々は彼の事に関して、

 今はまだ述べる事は出来ないのです』と、

瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)』はそう口を開いた・・・。


「・・・ニニギ。

 この円卓の上に『ヴァマント達』が調べた、

『冥界の報告書』が在るにも関わらずか?」


『絶』の言葉にニニギは苦々しい表情を浮かべるも、

『は、はい・・・わ、私は彼の事に関して、

 その権限を保有しておりませんので・・・』と、そう答えた。


その返答に『絶』は『わかった・・・』とだけ返答し、

周囲に視線を向けると・・・。

『絶』の視線は『ミランダ』で止まった。


「・・・あの小僧について、何かあるのか?」


「何かとはハッキリとは言えないけど・・・」


『絶』の問いにそう答えた『ミランダ』は、

『本気になれない理由』に関して、思い当たる事を口にした。


『ユウトが本気になれない理由・・・。

 それは私が調べた限り・・・。

 『葉月穂高』という女が要因であり、

 その女性が亡くなった事が原因で、

 ユウトは本気になれなくなった・・・。

 と、私はそう思っています』


そう話した『ミランダ』に『・・・そうだね』と答えたのは、

独特の雰囲気を醸し出している『神』

『ヲグナ』がそう言って笑顔を見せたのだった・・・。


すると『ヲグナ』はその言葉をきっかけに、

彼なりの解釈を話していった。


「彼の見せる強さの一因としては・・・。

 戦いに関しての迷いの無さ・・・。

 それは彼が今までの戦闘経験から来る経験則と、

 己の腕に自信があると言う積み重ねて来た努力。

 それらがあっての彼の強さなんだろうけど・・・」


『ヲグナ』がそう話すのもその表情は・・・。

浮かないようだった・・・。


そして『ヲグナ』はこう話を続けた・・・。


「僕はそんな彼に・・・『疑問』を呈したい」


そう言った『ヲグナ』の言葉に、

この場に居た者達に緊張が走ったのだった・・・。


だがそんな『ヲグナ』に『反論在り』と声を挙げたのは、

この『円卓会議』の主催者・・・。

『絶』と共にこの場を訪れた『(さい)』だった・・・。


『彩』は突然『ドンっ!』、と、

円卓の上に両足を投げ出すとマナーも何気にする事なく、

『ヲグナ』に対し『反論』していった。


「ヲグナ・・・だっけ?

 あんたはヴァマントのねーちゃんが持って来たこの資料を見ても、

 その小僧の強さに疑問があるってのか?」


そう口を開いた『彩』は意味あり気に笑みを浮かべていた。



※ (さい)

  

  『絶』を『大将』とするのなら、

  『切り込み隊長』と言わしめる存在であり、

  『()の国の五鬼神』と呼ばれ者達の1人・・・。

  長身3ⅿ80ほどあるが華奢な身体つきで、

  髪の色は真っ赤に燃える『炎』が印象的な無造作マッシュ。

  性格はとても好戦的ではあるが、

  人情味の厚い人物でもある。


因みにこの『狭間の間』では、

最大身長が決められており、最大2ⅿまでとなっている為、

そこまでの身長差は感じられない。



「疑問をってよ~・・・ヲグナのにぃーちゃんよ~?

 この資料を見る限りで言えばよ~?

 この小僧・・・。

 神々が与える『試練』が並外れて多いんじゃねーか?

 まぁ~その『試練』に関しちゃ~・・・。

 『日本の神々』に苦言を呈したいところだが・・・、

 まぁ~・・・今は置いておくとしてだ・・・。

 この小僧はその『試練』を乗り越えて此処まで強くなったんだろ?

 疑問を呈するだ何だかんだっつー前によ~

 にぃ~ちゃんも『神の端くれ』なら、

 疑問を言う前にまずこの小僧の労を労ってやれやぁぁぁっ!」


長々と話をしながらもこの『彩』と言う男は、

『ヲグナ』に対し苛立ちを募らせていたようだった・・・。


そしてそれが一気に噴き出した事によって、

『彩』は一瞬にして円卓を乗り越え、

『ヲグナ』が瞬きをする刹那に、

その顔面に向け拳を放っていたのだった・・・。


「おらぁぁぁっ!」


「っ!?」


『彩』の拳が放たれ誰もが顔を顰めたが、

それは『絶』の仲間のもう1人・・・。


『豪(ごう』によって難なく拳は止められ、

身内であるはずの男から厳しい眼差しを向けられていた・・・。


『バシっ!!』


「ご、豪っ!?こいつは殴らねーと気が済まねーんだよっ!

 つー----かよ~・・・

 このデブっ!?なんで俺の拳を止めてんだよっ!

 俺の拳を止めている暇があるならよ~?

 少しはダイエットでもしろってんだよっ!このっ!デブっ!」


「・・・おい彩よ。

 誰がデブなんだよ?えー・・・コラ?

 俺はちょっと体重が1㌧近くあるだけでデブじゃねーぞっ!

 つーか・・・貴様、何さっきから調子乗ってんだよ・・・?

 余り調子ぶっこいてっと貴様・・・まじで圧縮するぞ?」


そう怒鳴りつけた『彩』に、

『豪』は『鬼眼』を『ギョロリ』と向けたのだった・・・。


『絶』は身内同士の不毛な争いに溜息を吐くと、

その『身内』の争いを無視しつつ、

『本気になれない真実』を『絶』なりに解釈しそれを口にした。


「ミランダの解釈・・・そしてヲグナの解釈・・・。

 それぞれの解釈はある程度そうだとは思うが・・・だ。

 俺が思うに現在あの小僧の強さの要因はその『無謀さ』だ。

 ノーブルの連中なら感じている事とは思うが、

 あの小僧は命を粗末にしているからこそ・・・

 今の強さに至っていると俺は思う。

 そしてその強さは『無謀』であり『強引』だ・・・。

 いつ死んでもいい・・・そう思っているからこその強さだと俺は思う。

 だからあの小僧は自分本来の力・・・。

 『異能』を使わない。

 それはつまり・・・『本気なれない』と言う事なのだろうな」


『絶の解釈』に一同が険しい表情を浮かべるも、

それに対し誰もが『反論』する事がなかった。


その『解釈』を噛め締めるように、

『ノーブルの神々』は顔を伏せ拳を強く握り、

また他の神々も無言の同意を示すかのように押し黙っていたのだった。




そして此処はこれから舞台となる『冥界』・・・。


『・・・・・』


『・・・・・』


何も思考せずただひたすら前へと歩いて行く・・・。

何もない・・・この場所をひたすら歩いて居た・・・。


『もう全部終わった・・・

 だからもう・・・俺は消えていいんだ・・・』


荒れ果てた『冥界の大地』を見つめながらそう思ったのを最後に、

『悠斗』は思考する事を止め『消滅』する為に歩き始めた。



『大回廊』と呼ばれる石畳の回廊より外側に在る、

『黄泉道』と呼ばれるこの荒れた道を歩く『亡者達』は、

生前『殺人』や『(いくさ)』に身を投じた者が彷徨う道・・・。


この『黄泉道』を彷徨う間・・・。

此処『冥界の神々』が『亡者を精査』し、

『奈落』よりも『深き場所』に堕とされるか、

『天』へと昇る事を許されるのかが決定される・・・。


そしてこの『黄泉道』は・・・。

『冥界独特の硬い大地』に加えその道は、

散らばる『石礫(いしつぶて)』1つ1つが鋭利に尖り、

この道を歩く者達1人1人の足に・・・

無慈悲に突き刺さる過酷な道となっていた。


そんなこの過酷な『黄泉道』の道を、

『悠斗』は歩き彷徨っていたのだった・・・。


『・・・・・』


悠斗が歩き始めてどれくらいの時間が経ったのだろう。

意識を忘却していた悠斗の耳に、

『カツーンっ!カツーンっ!』と甲高い音が聞こえて来た・・・。


(・・・何だ?)


甲高い音に興味を持った悠斗は、

その音がする方へと視線を向けると、

何者かが大きな岩に向かって、

一心不乱に『鶴嘴(つるはし)』を振り下ろしていた。



「ふぅ~・・・この冥界で鉱石を掘り出すのが、

 こんなにも苦労するなんて・・・」


そう言いながら『鶴嘴』を立て掛けると、

首に掛けていたタオルで溢れ出る汗を拭っていた・・・。


「しかし俺はこうしてまた『生在る者』として、

 生きていけるとは・・・。

 『ヴァマント様』には、感謝してもしきれないぜ」


そして何気にその音が遠くへと視線を向けた時だった・・・。

いつもの見慣れた『亡者共』が歩いて行く光景に、

その男は違和感を感じたのだった・・・。


「・・・ん?な、何だ・・・あの亡者?

 身体が少し光ってやがる・・・」


珍しい『亡者』を見たその男は、

好奇心に駆られて身体が少し光っている亡者に近づいて行った。


「・・・あ、あの亡者、何処かで・・・?」


流れ出る汗を何度か首に巻いたタオルで拭いながら、

その何処かで見た男の顔を思い出そうとしていた・・・。


(んー・・・何処だっけな~?

 生き返った時から『鬼』だった頃の記憶が曖昧で、

 朧げと言うかなんと言うか・・・)


首を捻り必死に記憶を辿っていると、

『ある出来事』がその男の脳裏を掠めた・・・。


「・・・えっ!?

 ま、まさか・・・まさか・・・だよなっ!?

 い、いやでも・・・どうしてあいつがこんな所にっ!?」


そう声を挙げた男はタオルを強く握り締めると、

複雑そうな表情を浮かべながら駆け出した。


「お、おーいっ!おーいっ!」


そう声を張り上げるも、

相手の男は『ピクリ』とも反応を見せなかった。


そんな『亡者』に男は立ち止まると、

ありったけの声を張り上げた。


『カミノ・ユウトーっ!』


聞こえていないのだろうか・・・。

名を呼ばれたはずの『亡者』は反応を示さない・・・。

それどころか『我関せず・・・』とばかりに、

その亡者は歩みを止めなかったのだった・・・。


「お、おいっ!ユウトっ!?

 聞こえないのかっ!?

 ちょ、ちょっと待ってくれーっ!」


『亡者』となった『悠斗』にその男は再び駆け出すと、

歩く事を止めない『悠斗』の前で両手を広げ立ち塞がった。


「おいっ!カミノ・ユウトっ!

 俺だよ俺っ!以前お前と一騎打ちした鬼っ!

 四本角の『虎恫こどう)』だっ!

 おいっ!俺の事を忘れたってのかっ!?

 ユウトっ!?」


生前『鬼』だったこの男は・・・。

『豪鬼と壇鬼』と熾烈な戦闘をした時に、

『壇鬼』が『御館様』の『宝物庫』から持ち出した笛・・・。


『牙笛』を使用した時に現れた『四本角の鬼・虎恫』だった。


あの時の戦いが蘇った『虎恫』が忘れなかったのは、

負けて死を迎えたとしても『悔い』を残さない・・・。

そんな潔い気持ちになれていたからだった・・・。


そんな『虎恫』が『亡者』となった『悠斗』の前に立ち塞がるも、

嘗ての『強敵(とも)』は何の反応も示さなかったのである。


「う、嘘だよ・・・な?ユウト・・・。

 あの時俺達は言ったはずだ。

 『また会おうと・・・』

 お前、それも忘れちまったのかっ!?」


そう言いながら『虎恫』は、

『亡者』となった『悠斗』の肩を掴もうとしたが、

その大きな手は触れる事も出来ずただ・・・。

その半透明な身体をすり抜けるだけだった・・・。


「・・・ユウト」


「・・・・・」


『虎恫』の呼びかけに『悠斗』は無言のまま歩き始め、

それを見つめる事しか出来きない悲しさに拳を握り締めた。


「一体お前に何があったんだ?」


そう『虎恫』が呟いた時、

悠斗の歩みが『ピタリ』と止まった・・・。


「ユ、ユウトっ!?俺の声が届いてっ!?」


悲し気だった表情が明るくなり、

立ち止まった悠斗にそう声を掛けた時だった・・・。


『虎恫』は悠斗の歩くその先に2つの影を見て、

その表情を変えると駆け出し立ち止まる悠斗の前に踊り出た。


「・・・何者だ?」


立ち塞がる『虎恫』を無視するかのように、

歩み出した2つの影はその正体を現すと、

透き通るように白い肌が印象的な男女がこちらをじっと見ていた。


「カミノ・ユウトだな?」


そう声を挙げた男は『ニヤり』と笑みを浮かべると、

その口には『牙』らしきモノが見て取れた。


「お前達・・・ユウトに何の用だ?」


『虎恫』はそう言いながら『戦闘態勢』に入るも、

眼前に居る2人から圧倒的圧倒的とも言える力を感じ取り、

絶望にも似た感覚に襲われた・・・。


(か、勝てる気がしない・・・。

 鬼の力を失っている今の俺じゃ・・・。

 いや、例え鬼の力があったとしても、

 こ、こいつらと殺り合えるとは思えない)


無言のまま背後に居る悠斗を一瞬見た『虎恫』は、

『まぁ~それでも・・・』と苦笑しながら言葉を漏らすと、

声を張り上げながら突進して行った。


「ユウトーっ!逃げろぉぉぉっ!」


「・・・・・」


猛然と突進した『虎恫』の行動にその男女は溜息を吐いて見せると、

女が『虎恫』に向かって手をかざした。


「・・・無様」


「うぐっ!」


猛然と突進したはずの『虎恫』は何故かその場で、

身動き一つ出来ずその呼吸までも苦しくなり始めたのだった。


「うご・・・け・・・な・・・い・・・」


額から大粒の汗が流れ出し、呼吸も荒くなった時、

その女が無表情のまま声を発した。


「お前は何なの?

 いきなり突っ込んで来て・・・」


かざした手が次第に縮まって行くと、

『虎恫』の首が徐々に締まり呼吸が更に浅くなり始めた・・・。


そして『ヒュー、ヒュー』と呼吸音が甲高くなると、

その女は妖艶な笑みを浮かべて見せた。


「・・・何者か知らないけど・・・死ね」


そう言ってかざした手を、

『グシャっ』と握りつぶそうとした時だった・・・。


『シュっ!』と突然力尽きようとしている『虎恫』の背後から、

影が飛び出して来ると、その影は女に対し蹴りを放った。


だが・・・。


『スカっ!』


「・・・・・」


着地したその影は険しい表情を浮かべ、、

小さく『ちっ!』と舌打ちをするとその女に対し睨みを利かせた。


「おい・・・その手を放せ・・・」


余りにも低いその声に男女が顏を見合わせ、

『・・・イメージと違うんだけど?』と、

男が不思議そうにそう言った。


「・・・確かめるわ」


すると女の方がマジックボックスを開き、

その中から『銅鏡』のようなモノを取り出し魔力を流すと・・・。


「ふむ・・・やっぱりこの男よね?」


「・・・そのようだけどさ~・・・姉貴?

 この如何にも悪そうなこの目付き・・・。

 本当にこいつが『カミノ・ユウト』なのか?」


『銅鏡』らしきモノに魔力を流し、

『鏡』の中に映し出された人物は紛れもない『悠斗』だった。


何度も見比べ不思議がる男女に、より一層目を吊り上げた悠斗は、

威圧を放ちながらこう言った・・・。


『お前ら・・・ぶっ殺すぞ?』


『・・・・・』


どうやら『姉弟』と思われるその男女が言葉を失い、

また『虎恫』は『拘束状態』でありながらも、

『・・・ユ、ユウト?』とまた違う意味で顔色を変えていた。


そんな時だった・・・。

ふと『姉弟』の脳裏にその存在感を遺憾なく発揮する声が流れた。


{おい、そこの『ヴァンパイア姉弟』

 とっとと私の所にその坊やを連れて来な・・・}


{こ、この声は・・・。

 ヴァっ、ヴァマント様っ!?}


そう・・・。

突然声が聞えたその声の主は、

『冥界の王・サンダラー』の『姉』であり、

『冥界の女帝』と言わしめる『ヴァマント』だった・・・。


そしてそんな『女帝』に突然声を掛けられた『姉弟』

その2人は『純血種のヴァンパイア』

『姉・パルサーと弟・ボイド』だった・・・。


その『姉弟』は冷や汗を『ダラダラ』と流しながらも、

『ヴァマント』に対しこう返答した。


{ヴァマント様・・・。

 ほ、本当にこの男が『カミノ・ユウト』なのですか?}


{うむ・・・。その男で間違いないわ}


目の前に居る男が悠斗だと信じ切れず、

『パルサー』がそう告げるも『女帝』は間違いないとそう言った。

すると今度は『ボイド』が話に入り現状を報告したのだった。


{しかしながらですね・・・ヴァマント様。

 こ、この男はデータにある男と余りにも違っておりまして。

 どう見てもこの目付きの悪さ・・・。

 『極悪人』と言っても過言でありませんが?}


{はっはっはっ!ご、極悪人ってお前・・・}


そう言って『念話』で爆笑する『ヴァマント』に、

以外にも口を開いたのは、

たった今『極悪人』と言われた『悠斗』だった・・・。


{おい・・・。確かヴァマントとか言ったな?

 何処の誰かは知らないけど・・・人の事笑ってんじゃねーぞ?}


「こ、こいつ・・・俺達の念話に介入できるのかっ!?

 な、何故だっ!?人の形はしているが、こ、こいつは今・・・

 『魂』だけの存在なんだぞっ!?

 それがどうして・・・こんな事がっ!?」


『念話』に介入された『ボイド』は驚き、

『パルサー』もまた同様に驚きの表情で『悠斗』見つめていた。


「何だよ、その顔は?

 聞こえてしまったモノは仕方がないだろ?」


悠斗の言葉に眼前に居る『ヴァンパイア達』の顔が引き攣り、

その身体からは『ゆらゆら』と『真紅の妖気』が立ち昇り始めた。


「こいつは危険かもしれないわ・・・」


『ヴァンパイアの本能』がそう直感したのか、

『パルサー』は『悠斗』に対してあからさまに嫌悪感を示した。


それを目の当たりにした悠斗は、

『・・・面白い殺り合うか?』と笑みを浮かべながらそう言うと、

『パルサー』は『悠斗』から飛び退き無意識に構えたのだった。


「上等じゃないかっ!カミノ・ユウトっ!

 この私に勝てると思ってんのっ!?」


「・・・あぁ、お前みたいな吸血鬼如きに、

 この俺が負けるはずない・・・。

 舐めるなよ・・・ヴァンパイア・・・」


「きっ、貴様ぁぁぁっ!

 言わせておけば吸血鬼如きだとぉぉぉっ!?

 人間風情が調子に乗ってんじゃないわよぉぉぉっ!」


『シュバっ!』


『パルサー』は『真紅の妖気』を吹き出しながら、

『拘束』していた『虎恫』を手も触れずに投げ捨てた・・・。


『ぐぉぉぉっ!?』


『ドシャっ!』


投げ捨てられた『虎恫』が『冥界の堅い大地』を滑って行くと、

悠斗とパルサーは互いに拳を振り上げ戦闘へと突入した。


だが・・・。


『スカっ!』


『えっ!?』


悠斗の拳がパルサーの身体をすり抜け驚いていると、

無防備になった悠斗の顔面に『真紅の妖気』を纏った拳が、

『ベキっ!』と強烈な打撃音と共に炸裂した。


『ぐぁっ!』


(そんなバカなっ!?)


悠斗が殴り倒されながらそう思っていると、

この場に居た全員の脳裏に『やめんかぁっ!』と怒声が響いてきた。


それぞれがその怒声に頭を抱えながら蹲ると、

ヴァマントは更に悠斗にこう言った・・・。


{私の元へ来い・・・。カミノ・ユウト}


『ヴァマント』の声に『悠斗』の顔が一瞬引き攣った・・・。


{・・・断る}


{断るだと・・・?何故だ?}


頭に響く『ヴァマント』の声に、

『悠斗』は迷いもなくこう言ってのけた・・・。


{俺は死んだ・・・。

 もう何人にも・・・俺を縛る事は出来ない・・・。

 それに俺は・・・このまま消滅する事を望んでいる}


{お前・・・}


抑揚なく・・・。

そして迷いも躊躇いもなく・・・。

『悠斗』がそう答えると『ヴァマント』は、

念話の向こうで悲し気な表情を浮かべ額を押さえた。


(こいつはもう・・・死を完全に受け入れてしまっている。

 いくら私と言えど・・・。

 この男を再び蘇らせる事など・・・。

 それに生き返らせたとしても生ける屍となって、

 無駄に命を散らす事になりかねない・・・)


そう考えた『ヴァマント』だったが、

『ちっ!私は認めんっ!』と己に向け舌打ちすると、

『ヴァンパイア姉弟』に対し命令を出した。


{ヴァンパイア共よっ!

 ヴァマントの名において命ずるっ!

 カミノ・ユウトを捕縛し、私の前へ連れて来いっ!}


{なっ!?}


『ヴァマント』にそう命令された『姉弟』は、

不機嫌そうにしている『悠斗』へと驚いた表情を見せると、

『とっとと連れて来いっ!』と更に声を荒げて見せた。


「つ、連れて来いって・・・。

 そんな事言われても・・・な、なぁ~・・・姉貴?」


「あ、あぁ・・・で、でも連れて行かないと・・・

 わ、私達の命が・・・危うく・・・」


項垂れながら『姉弟』が小声で口を開くと、

『パルサー』が『やるしかないわね・・・』と、

無理矢理覚悟を決めたようにその顔を上げた・・・。


「・・・やるんだな?」


「あぁ・・・私達の力でこいつを捕縛する」


「・・・わかった」


その『姉弟』の声に訝しい表情を見せた『悠斗』は、

咄嗟に距離を取り飛び退くと『姉弟』の出方を見た。


警戒する中『姉弟』は『シュバっ!』と、

『真紅の妖気』を吹き上がらせ『悠斗』に向かって手をかざすと、

『姉弟』が同時に声を挙げた。


『捕縛術・クリムゾン・ヴェノムウェブっ!』


『姉弟』の掌から無数の『真紅の糸』が放出されると、

それは『悠斗』の身体に纏わりつき始めた・・・。


「こ、これはっ!?くそっ!こんな糸にっ!?」


『悠斗』は身体に纏わりつく『真紅の糸』を振りほどこうとするが、

その『糸』は次第に『変色』し毒々しい『紫色の糸』に変化した。


「ぐぁっ・・・か、身体に力が・・・

 は、入ら・・・ない・・・こ、これは・・・毒かっ!?」


『紫色』に変化したのと同時に、

『悠斗』は身体から力が抜けそのまま膝から崩れ落ちた。


そして意識が朦朧とし始めた時・・・。

朧げに『パルサー』の声が聞えたのだった・・・。


『魂だけの癖に・・・どんだけ粘るのよ?

 こいつはもしかしたら無意識に・・・

 いや、それは私が語る事ではないわね?』


そんな声を最後に・・・。

『悠斗』はその意識を手放したのだった・・・。



ってな事で・・・。

今回のお話はいかがだったでしょうか?


まだ『冥界編』は始まったばかりです。

緋色も読者様方を飽きさせないよう頑張ります^^


これからも応援のほど宜しく御願い致します。

そして登録や感想なども宜しくお願いしますっ!


ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 本当に伏線が多いですねー。 ほとんど忘れてた『虎恫』が出てきたり・・・ てなわけで今最初から少しずつ読み直しています(笑)
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