201話・プロローグ・神々の円卓
お疲れ様です。
今回から『第三章・冥界編』のスタートです。
冥界を彷徨う悠斗とそれを抗おうとする者達・・・。
それでは201話プロローグをお楽しみ下さい。
鬱蒼と生い茂る樹木が溢れるこの広大な『嘆きの森』の中心地には、
樹木はなくただ・・・草原が広がっていた・・・。
この草原には貴重な薬草類が生息し、
これらを求めて冒険者達がやって来るのだが、
この森には『秘密』があった・・・。
この『嘆きの森』は古より『魂を喰らう森』と呼ばれており、
此処を住まう『エルフ族』ですら、奥地には立ち入る事はないのだと言う。
そんな森も今は冬・・・。
涔涔と降り積もる雪が立ち寄る者達を拒み、
貴重な薬草が生息するこの草原も今はその鳴りを潜め、
春の訪れをじっと静かに待っていた・・・。
はずだったが・・・。
『ガチャ・・・。ギィィィ』
突然降り積もる雪の中に『神界の門』が現れ、
『時空神・ミスティ』と『アナザー』のメンバー達が姿を現し、
この地へと降り立った者達は、
目の前に広がる光景に茫然とし受け入れる事が出来なかったのだ、
ミスティが降り立ってから数分後・・・。
次々に『神界の門』が出現し、その中から見慣れた者達が姿を現した。
『魔法神・アリエル』が連れて来た者達は、
『アシュリナ家』の者達・・・。
そして『剣神・アマルテア』が連れて来た者達は、
『テレス山脈』に住まう『火山竜』と『山の女神テレス』だった・・・。
その次に『神界の門』から出て来た者達は、
『亜神・オウムアムア』が連れて来た『神獣達』
だが・・・。
この場に当然居るであろう人族達がその姿をみ見せていなかった。
『双子の精霊樹』・『真・精霊樹アヤメ』
『港町の冒険者達』・『ベルフリード家』
神々達はこの地を訪れる者達を制限する為、
その者達を敢えてはずしたのだった・・・。
何故なら『双子の精霊樹』には『悠斗の死』は受け入れがたく、
また・・・その姿を見せる事が今後の成長にどう影響するか・・・。
それらを危惧した神々が双子を苦労しながらも説得したのだった。
また『悠斗を主』とする『スピリット達』は、
無念さにむせび泣きながらも、『双子』を支える為、
『岩場の聖域』に残ったのだった・・・。
そして『イルミネイト本部』に根を下ろした『アヤメ』は、
その力を蓄えるべく深い眠りに着き、
『港町の冒険者達』には付き合いが長い『武神・カロン』が、
その説得に出向き『勇者一行』と・・・。
『悠斗』によって助けられた『鬼』
『豪鬼』共々説明を受け、それぞれが号泣していた。
最後に『ベルフリード家』には・・・。
『運命神・チタニア』が出向き事情を説明・・・。
いくら『公爵』と言えど『神』に逆らう事など出来るはずもなかったが、
只一人・・・よくも悪くも恐れを知らない『イオ』だけが、
『運命神・チタニア』に喰ってかかったのだが、
心の支えとなっていた『悠斗の存在』が失われた事に、
『グラフィス』は膝から崩れ落ちたのだ言う・・・。
説得を終えた『カロンとチタニア』が、
それぞれ『神界の門』から出て来ると、
その異様な光景に顏を歪めた。
『・・・どうしてこんなにも静かなんだ?』
そう『ポツリ』と呟いたカロンに、
傍に立つチタニアが呟き返した・・・。
「皆・・・受け入れられないのですわ」
「・・・そうか。
・・・そう・・・だろうな
この俺でさえそうなんだからな・・・」
「・・・この私も同じですわ」
そう話すカロンとチタニアに背後から『お前達・・・』と、
声を掛けながら近付いて来たのはアリエルだった・・・。
「2人共・・・皆はそれだけで静まり返っているのではないぞ?」
そう言いながらアリエルは杖を前方に向けると、
『魔力弾』を放った・・・。
放たれた『魔力弾』は突然何かに衝突し音を立てて消滅すると、
その魔力に反応した『濃い緑色の障壁』が、
静かに眠る悠斗を中心に『半球状』に広がっていたのだった。
「こ、これってっ!?ま、まさかユウトのっ!?」
カロンの言葉がこぼれ落ちると、
アリエルはその障壁を見据えながら1つの『可能性』の話をし始めた。
「お前達も知っているとは思うが、
これは恐らくユウトが持つ『特殊スキル』だと思われる」
「あ、あぁ・・・間違いねー・・・。
この光はあいつの『特殊回復』だ・・・」
「私も前に一度見ましたわ・・・。
重度の負傷ばかりか内蔵までも回復させ、
脳や心臓でさえも・・・」
「あぁ・・・だがな?
今回は少し・・・様子が違っているみたよ?」
そう言うとアリエルは再び杖を前方にかざすと、
円を描きその中に横たわる悠斗がクローズアップされ、
現状を話し始めた・・・。
「ユウトの周りだけ・・・雪が・・・。
い、いやそれだけじゃねー。
まだ春でもねーのに青々とした草花がっ!?」
季節は『冬』である・・・。
当然ながらこの極寒の季節で植物が青々としているはずもなく、
またこの積雪では『花』が咲く事もないはずなのだが、
どう言う訳か悠斗の周りだけ青々と草花が咲いていたのだった・・・。
だがアリエルが言いたい事はそう言う事ではなかった・・・。
「・・・ソレじゃない。もっとよく見てみろ」
「ア、アリエル・・・一体何が言いたいんだよ?
俺には草花と『特殊回復』しか・・・」
「えぇ・・・私もカロンに同感ですわ。
アレはまさしくユウト様の『特殊回復』の光・・・。
これが一体何だと言うのです?」
2人が同じ見解を示すのだが、
アリエルは少し首を傾げながら険しい表情を浮かべた。
「一見・・・そう見える・・・。
だがな?ならばこの『半球状の障壁』はどう説明するのよ?
それに恐らく胸の真ん中に大穴が空いていると思われる箇所・・・。
そこから少量ではあるが、
『赤銅色の気』が漏れ出ているのは何故なのだ?」
そんなアリエルの見解に、
カロンとチタニアはただ唸っているだけだった。
そんな時だった・・・。
『ブゥン』とカロン達の背後に『神界の門』が出現した・・・。
その出現した『神界の門』を見た瞬間・・・。
この場に居て見解を話し合っていた神々達3人の表情が、
怒りに歪みその拳を握り締めたのだった・・・。
『ガチャ・・・。ギィィィ』
豪華な装飾が施されているその『神界の門』は、
『創造神・ラウル』の『門』で間違いなかった・・・。
両開きの扉が開きその姿を現すと、
カロンの身体が『ビクっ!』と痙攣を起こした・・・。
「ラウルの野郎・・・」
そう言葉を漏らした時、それを制するかのようにアリエルが、
カロンの胸の辺りに杖を押し当てた・・・。
「カロン・・・今は堪えろ」
「ちっ!」
そう舌打ちをするカロンがラウルを睨みつけている中、
降り立ったラウルの背後から、
『邪神の女神・ミランダ』と悠斗の相棒でもある『聖獣・白斗』、
そしてその白斗の恋人になった『神界樹』がこの地に降り立った。
その光景に怪訝な表情を見せた面々に、
悲壮感漂うラウルはこう言った・・・。
「皆・・・ご苦労だったね・・・。
悠斗君もきっと喜んでいるよ・・・」
そんなラウルの言葉にこの場に居た『神々達』が・・・キレた。
「貴様ぁぁぁぁっ!ラウルゥゥゥっ!
どの口が言っているのだぁぁぁっ!」
アリエルは双眼に涙を溜め怒号を発し、
その手に持つ『杖』が小刻みに震えていた。
「て、てめーっ!ラウルゥゥゥっ!
てめーは一体今まで何をしてやがったぁぁぁぁっ!
ユウトは・・・て、てめーがっ!
この地に連れて来た張本人だろうがぁぁぁっ!
それなのに・・・それなのに・・・てめーはよぉぉぉっ!」
そう怒りの咆哮を挙げたカロンは、
身体中に『神力』を纏わせ『臨戦態勢』となっていた・・・。
「ラウル様・・・いえ、創造神・ラウルっ!
我が愛しのユウト様の死を・・・貴様の死で償わせてあげますわっ!」
そう吠えた瞬間・・・。
アリエル・カロン・チタニアの3名は行動に移し、
それぞれが『神力弾』を放った・・・。
『バシュっ!バシュっ!バシュっ!』
だがその『神力弾』は、
ラウルの背後から飛び出た者達によって阻まれた・・・。
『なっ!?』と3名の神々がそう言葉を吐くと、
ラウルの前にはミランダが障壁を展開し悲し気な笑みを浮かべて居た。
「ミランダっ!?て、てめーっ!一体どういうつもりだっ!?」
カロンの言葉にミランダは『どう言うつもりも何も・・・』と呟き、
マジックボックスから『邪神槍』を取り出し構えて見せた・・・。
そして一筋の涙がミランダの頬を伝った瞬間だった・・・。
『油断してんじゃないわよ』とラウルの背後から声が聞こえると、
アマルテアが刹那の瞬間『神剣』を抜き、
ラウルの首めがけその『神剣』を振り下ろした・・・。
だが・・・。
『ガキンっ!』
「こ、これはっ!?」
驚きの余り声を挙げたアマルテアだったが、
すぐに防がれたモノが何かを察しその怒りに染まった視線を、
ある者の肩に乗る小さな動物へと向けた。
「白斗ーっ!?貴様ぁぁぁっ!」
そう怒りの怒号を響かせた瞬間・・・。
アマルテアの背後から大きな陰が現れ低い声を発した・・・。
『我も居るっ!』
そう言いながら『はぁぁぁっ!』と気合いの入った拳が、
ラウル目掛け放たれるも直撃する寸前・・・。
『ヒュンっ!ギチっ!』とオウムアムアの腕が、
植物のツタによって拘束されたのだった・・・。
「・・・な、何だこれはっ!?
えぇぇぇいっ!離さぬかっ!」
「亜神・・・。
貴様・・・誰に対し拳を向けたのかしら?」
「せやで・・・。神々の皆さん・・・。
あんたら一体誰に拳向けとるんか、わかってんのかいな?」
オウムアムアの脳に直接そんな声が流れ込み、
『白斗』が『神々』に対し苦言を呈したのだった・・・。
そんな光景にこの場に居た者達は驚愕し、
まさに『一触即発』の緊張状態に突入し息を飲んでいた。
だがそんな時・・・。
この積雪では『エルフ達』も立ち寄らぬ場所にも関らず、
ラウル達の後方から何者かの声が響いて来た・・・。
『ユウトォォォォォっ!』と・・・。
その悲痛な叫びの声に神々達の緊張は解け、
それと同時に他の者達の緊張も解かれたのだった・・・。
「ユウト・・・ユウト・・・ユウト・・・」
まるで念仏でも唱えるかのように、
そんな声が聞えるとその少し後方から男性の声が聞えて来た・・・。
「ユウトって人ーっ!どこだぁぁぁっ!」
そんな声に神々達は『神眼』を使うと、
この深い積雪の中、雪をかき分けながら歩いて来る、
2名の人族を確認する事が出来た・・・。
ラウルはその顔に当然見覚えがあり、
心の中で『やはり彼女は来たね』と呟いていた。
そして未だ茫然とする者達に視線を向けると、
その視線は『イリア』で止まった・・・。
『・・・えっ?』
「イリア君・・・君も知っている女性だよ?」
そんなラウルの言葉に険しい表情を浮かべたイリアは、
声がする方へと歩き始めたのだった・・・。
そして時は遡り・・・。
悠斗が死を迎える数日前の出来事・・・。
此処はとある空間に在る一室・・・。
質素な両開きの扉の上部には『狭間の間』と記載されていた。
そんな扉の取手を握り『ギィィィ』と開く者が居た・・・。
「・・・我々が先に着いたようだね」
そう言って『狭間の間』に入室したのは、
『創造神・ラウル』だった・・・。
『狭間の間』は途轍もなく広く、白一色に染まっており、
その中央付近には、円形の質素なテーブルが置かれ、
椅子も完備されていた・・・。
「さぁ、皆も入ってくれ・・・」
ラウルにそう促されると、
数名の者達が入室し、言われるがまま椅子に腰を降ろした。
数名の者達が沈黙を保ったまま数分の時が流れた頃、
ラウル達が入室した扉とは違う方向から、
『ギィィィ』と扉が開かれる音がした・・・。
そしてこの一室に訪れた者達が無言のまま着席すると、
再び違う方向から扉が開く音が聞こえた・・・。
それが数回続くと・・・。
この質素な部屋の中央付近に在る古ぼけた円卓には、
様々な者達がその顔を突き合わせる事になったのだった・・・。
妙な緊張感が続く中・・・。
少し遅れて来た者達が『円卓』に座る者達を確認すると口を開いた。
「皆・・・集まってくれてすまないな?
知っていると思うが知らぬ者達の為に名乗るが、
俺の名は・・・『絶』だ・・・宜しくな?」
そう言いながら笑みを浮かべた絶に、
円卓に座る者達はそのままの姿勢で頭を下げると、
絶は一同の顏を見渡した・・・。
~ ノーブル代表 ~
『創造神・ラウル』『邪神の女神・ミランダ』
『聖獣・白斗』『神界樹』
~ 日本代表 ~
『瓊瓊杵尊』
『火須勢理命』
~ 冥界代表 ~
『冥王・サンダラー』『冥界女帝・ヴァマント』
『白蛇』『黒猫』
~ ○✕△代表 ~
『絶』『豪』『彩』
この者達が円卓を囲み皆に対し軽い会釈をした・・・。
すると絶がそれを確認すると指を『パチン』と弾き、
その背後から『赤い影』が人の形を作ると、
円卓を囲む者達に飲み物を置いて行った・・・。
皆が緊張のせいか、それぞれがその飲み物を飲み始めた時、
再び扉が『ギィィィ』と鳴り皆の視線がそちらへと向けられた・・・。
『コツ、コツ、コツ、コツ』
その姿は見えずただ・・・その足音だけが、
確実にこちらへと向かって来たのだった・・・。
足音を響かせ近付く者は、
円卓の手前でその足音が鳴り止むと、
霧が晴れるかのようにゆっくりとその姿を現した・・・。
『お、お前はっ!?』と、突然驚きの声を挙げたのは、
日本の神・・・ニニギノミコトだった・・・。
するとその男は口に指を立て『しぃ~』っと言うと、
ニニギは顔を顰めながらも無言のまま着席し睨みつけていた。
そしてニニギが落ち着き払ったのを見ると、
その男は口を開き絶に笑顔を向けた・・・。
「さぁ、絶・・・。話を進めようか?」
「・・・お前、遅れて来た癖に・・・。
・・・まぁ、いい・・・始めようか・・・」
そして絶が話を切り出そうとした時、
ニニギに視線を向けた男は、笑顔を向けながらこう言った。
「俺の事は、『ヲグナ』でいいからね?」
その言葉に嫌悪な表情を浮かべるも、
『・・・わかった』とそう答え絶の話が始まった・・・。
「今日皆に集まってもらったのは、
今現在、日本からラウルによってノーブルへと転移させた、
『神野 悠斗』についてだ・・・」
そう話を切り出した絶に、
日本の神達は『ザワザワ』とし、
ノーブルの神々達は訝し気な表情を浮かべた・・・。
すると、ミランダが挙手をすると、
ニニギ達を見ながら発言した。
「絶様・・・。
日本代表にどうして天照や月読は居ないのでしょうか?
それと・・・何だっけ?
スサ~・・・スサスサスサスサ・・・何かそんな名のヤツっ!」
その質問に絶が答えようとした時、
ミランダの質問に口を開いたのはニニギからだった。
「実はですね・・・。
っと言いますか・・・邪神の女神よ。
貴女が言いたいのは『素戔嗚尊』です」
「あぁ~・・・確かそんな名・・・だったわね?
図体だけはでかい頭の悪そうなヤツ・・・」
「あ、頭悪そうな・・・って・・・ははは。
コホン・・・は、話を戻しますが、
数日前、絶様の方から母上達を外すよう提案されて・・・」
少し引き攣った笑みを浮かべたニニギに、
ミランダは不思議そうな表情を浮かべた。
すると絶は『んー』と少し唸りながら、
その説明をしたのだった・・・。
「まぁ~あの馬鹿の事はどうでもいいんだが、
天照と月読はこれから話す事に納得しないだろうからな~?
だから代わりに・・・と、言っては何だが、
この2人に来てもらったんだ」
ミランダが『そうなんだ~』と口を開いた時だった・・・。
突然円卓を『バンっ!』と叩きつけながら立ち上がったラウルは、
絶を睨みつけながら声を荒げた。
『絶様っ!僕はどうしても納得出来ないっ!
どうして悠斗君が死ななければならないのですかっ!?』
突然声を荒げたラウルに対してではなく、
『悠斗の死』に対してここに集う神々達は驚いたのだった。
他の神々達に構う事もなくラウルは話を続け、
その話に断固拒否すると伝えたのだった・・・。
「んー・・・。
まぁ~何故『神野悠斗』が死ななければならないのか・・・?
それは簡単に言うと『馬鹿は死ななきゃ治らない』
ってところが俺の本音だ・・・」
絶の話に一同が『えっ?』と首を傾げ、
『こいつ一体何を言っているんだ?』と思っていた。
だが1人だけは『ニヤっ』と笑みを浮かべ、
事の行く末を見守っていくつもりのようだった・・・。
(面白いじゃないか・・・絶。
私は高みの見物でもさせてもらうよ♪)
絶の話を聞き1名だけそう思う中、
円卓の真ん中に飛び降りた『白斗』が今回・・・。
初めてその口を開いた・・・。
「なぁ~、絶様。
ちょい聞きたい事あるんやけど・・・
答えてもらってええかな~?」
抑揚なくそう淡々と話す白斗に、
絶は円卓の前にしゃがみ込むと、
目線を合わせ『・・・いいだろう』とその要求に応える事にした。
「あんな?何でワイの主が死ななあかんねんな?」
真っ直ぐと視線を向けて来る白斗に、
絶は『ふっ』と笑みを浮かべ話し始めた・・・。
「聖獣君・・・。あの小僧・・・。
いや、悠斗の本気って・・・見た事あるかな?」
「は、はぁ?本気って・・・あんさん・・・。
主はいつも本気で戦っとリまっせ?
何を言うとるんや?
あんさん、ワイの主の戦い・・・見た事ないんやろ?
せやから訳のわからん事を言うとんのやろ?」
冷静にそう話しながらもややキレ気味に言うと、
絶は楽し気な笑みを浮かべその問いに答えていった・・・。
「悠斗の戦いだろ?当然見た事あるよ・・・。
あの神の名・・・は忘れたが『運命神』だったか?
実はあの時、俺はあの場所に居たんだよ」
「・・・あ、あんさんっ!おったんかいなっ!?
せ、せやったらわかるやろっ!?
主はいつでも本気で戦ってるってっ!」
必死なのだろう・・・。
白斗は悠斗が常に本気で戦っている事を、
絶に・・・いや、この場に居る神々にそう訴えかけていた。
絶は白斗の話に軽く頷き耳を傾けながらも3名・・・。
悠斗に近しい神が浮かない表情を浮かべて居る事に気付くと、
絶自身が感じている事を話し始めた。
「まぁ~確かに本気で戦っているとは・・・思う。
色々と思考して・・・な?
だがな・・・聖獣君。
君は悠斗の本気がどれほど凄いのか・・・
一度見ているはずだろ?」
「・・・はぁ?一度って・・・ま、毎回本気で戦ってるやんっ!
意味わからん事言うなやっ!」
「意味わからんって・・・おいおい。
悠斗の本気の戦いは俺の部下から報告を受けているからな?
その報告では聖獣君は確かにその場に居た・・・。
忘れたのか?
君が初めて悠斗に出会い、何かに操られていた神と・・・。
『武神・カロン』と戦った時の事を・・・」
絶の話を聞いた白斗は『はっ』と我に返ると、
口を『もごもご』とさせながら、
必死に言葉を選ぼうとしている事に絶は笑みを浮かべた。
「はっはっはっ・・・どうやら思い出したようだね?
まぁ、でもあの時・・・
正確には悠斗は自分の『異能の領域』で戦ったから、
君達はちゃんと見てはいないんだったな?」
そう言うと絶は立ち上がり一同を見渡すと、
『コホン』と咳払いを入れてから、
『神野 悠斗』の『本気』について話していった・・・。
「今まで本気で・・・確かにそうなのだろう。
だがあの小僧の本気ってヤツは、
『異能』にあると俺は思う・・・。
それを感じたのはあの時・・・
その場に居た『神々』が一番感じているんじゃないのか?」
そう言いながら絶は『鬼眼』に変化させ、
縦割れの瞳で睨むと『ラウルとミスティ』は俯いてしまった。
だが『ミランダ』だけは真っ直ぐと絶を見つめ、
それに対し思う事を口にし始めた。
「ユウトの本気・・・か・・・。
私はその『異能』については正直わからない・・・。
だって、あいつの『領域内』での戦闘でしょ?
だからあの場に居た私達は見た訳じゃないけど、
あの馬鹿から聞いた話では相当ヤバいって事だったわ。
でもね・・・絶様。
だからと言って・・・あいつを殺すってのはちょっと・・・
やり過ぎじゃないかしら?」
静かな口調ながらも熱く語るミランダに、
絶は内心『この世界の邪神の女神は、ちょっと違うな?』と感じ、
そんなミランダに絶は好感を持ったのだった・・・。
「なるほど・・・君の言いたい事はわかった・・・。
だがミランダ・・・。
今の悠斗じゃ・・・今後『アスラ』とは戦えない」
「えっ!?ア、アスラって・・・あのっ!?」
「あぁ・・・あの、アスラだ」
「ど、どうしてユウトが、
あの・・・厄災と戦わなくちゃならないのよっ!?」
『厄災』と呼ばれた『アスラ』。
その名は異世界の神々にも知れ渡っており、
『アスラ』が通りし星々は荒野と化し、
『二本角の鬼』にしては、その圧倒的な力の前に、
神々が送り込んだ討伐隊ですら、太刀打ち出来なかったのだ・・・。
絶から聞いた『アスラ』の名に、白斗以外の神々は、
あからさまにその表情を変え嫌悪感に染まっていた。
『どうしてそんなヤバいヤツと悠斗がっ!?』
そのミランダの言葉にラウルが顏を顰めつつ発言していった。
「ミランダの言う通り・・・
どうして悠斗君が戦わないといけないのですか?
それに聞くところによりますと絶様・・・。
『ヤツ』の討伐は貴方様の任務のはずではないのですか?
・・・お聞かせください。
どうして貴方ではなく彼が・・・。
悠斗君がアスラと戦わなければならないのですかっ!?」
そのラウルの問いに絶は『ニヤり』と笑みを浮かべ、
またその同席している者達も同様に笑みを浮かべて居た・・・。
すると今までただ黙って行く末を見守っていた者が・・・。
軽く挙手をすると楽し気に口を開いていった・・・。
「はっはっはっ・・・。
緊迫している中すまぬな?
ついでだから私の事を知らぬ者共に言っておくが、
私の名は『ヴァマント』
隣に居る『冥界の王・サンダラー』の『姉』である」
そう話す『ヴァマント』に首を傾げた『白斗』が、
『神界樹』の耳元で疑問を投げかけたのだった・・・。
「なぁて・・・。
『冥界の王』って『ハデス様』とちゃうんか?」
そんな疑問を恋人でもある『神界樹』に投げかけたのだが、
少し首を傾げて見せた『神界樹』はこう返答した。
「・・・ハデ・・・スって、誰なのですか?」
「・・・はい?」
白斗はその返答に頭の中が真っ白くなったのだが、
それが聞こえていた『ヴァマント』が声を大にして笑うと、
その説明をしていったのだった・・・。
「わぁ~はっはっはっはっ!
地球の・・・日本の聖獣ともあろう者が、
そんな事も知らんとはな~?」
「・・・うっ、な、何か・・・すんません」
「構わん構わんっ!逆に新鮮じゃないの?」
『ヴァマント』が声を大に割った事によって、
この場に居た神々は内心『ほっ』と安堵の息を漏らしていた。
「特別に説明してやろう・・・。
貴様ら地球で『冥界の王』として『ハデス』は有名なのだろうが、
あやつは所詮・・・『小者』」
「こ、小者ってっ!?
え、えぇぇっ!?でもハデス様ってめっちゃ強い御方でっせっ!?
そ、それを小者ってっ!?」
『小者』呼ばわりをした『ヴァマント』に、
白斗は『なんやこの御人は~っ!?』と顔を引き攣らせていた。
そんな白斗の気持ちも知るはずもないヴァマントは、
笑みを浮かべながら説明の続きをしていった。
「まぁ~聞け・・・小さき聖獣よ」
「な、何やろ?
い、今ちょっとその物言いに『カチン』ときたワシがおるわ」
「・・・何か言ったか?」
「・・・い、いえっ!何も言うとりませんですっ!」
「うむ・・・ならば続きを・・・。
コホン・・・。
聞けっ!極小なる聖獣よっ!」
(・・・ぜっっったいにわざとやっ!
間違いなくワシに対して上から目線やっ!
み、見てみ~・・・あのしたり顔っ!
め、めっちゃムカツクけど・・・うぅぅぅ。
ワ、ワシも大人や・・・
い、今は堪える時なんやっ!
『関西人』舐めたらあかんでぇぇぇっ!)
白斗が『関西人の大人の対応』とやらを見せる中、
『ヴァマント』の説明はこうだった・・・。
『冥界』とは・・・。
『死者の世界』である・・・。
その星系それぞれに『死者の世界』は存在しており、
そしてその『冥界』には『王』たる『者』が居る。
だが『ヴァマント』の話によるとその星系の『王』とは、
『警察』で例えると言わば・・・『所轄の署長』のようなモノ。
そしてそれらを統括管理しているのが、
『ヴァマント』の『弟』である・・・
『冥界の王・サンダラー』なのである。
『サンダラー』曰く・・・。
『姉上が冥王になるの嫌だって駄々こねたから、
俺がやる事になったんじゃんかっ!』との事・・・。
つまり『サンダラー』率いる『冥界』が『警視庁』で、
『地球の冥王・ハデス』が『所轄』と言う事らしい・・・。
その説明を聞き終えた『白斗』は・・・。
『・・・つまり地球らの冥界って、
支店やったんや~・・・
な、なんか・・・考えさせられるな~』との事だった。
説明を終えた『ヴァマント』は、
『絶』と『ラウル』に視線を向けると・・・。
「うむ・・・。
どの道・・・絶、貴様とその部下達だけじゃ手がたりぬであろう?
そしてラウルよ・・・。
アスラはどうやら貴様の星に居るようだ・・・。
と、なれば・・・。
戦力アップは必定と言えるだろう?」
「し、しかしっ!ヴァマント様っ!?
どうして彼がっ!
悠斗君がそんな重荷を背負わなければならないのですかっ!?」
そう問われた『ヴァマント』は、
『この資料よれば・・・』と、分厚い資料を円卓の上に置いた。
「・・・そ、その資料とはどう言う?」
そんなラウルの問いにヴァマントは大雑把に説明し、
その結果・・・ラウルは困惑気味に言葉を漏らした。
「で、では・・・す、少なからず悠斗君は・・・。
アスラと『因縁』がある・・・と?」
「・・・うむ」
「し、しかしですね?
ぼ、僕が日本で調べた結果・・・。
そのような事実は・・・」
『困惑』・・・。
まさに今の『ラウル』の表情はそうなっており、
その顔色もまた・・・青ざめていっていた・・・。
すると『ヴァマント』が突然この会議を仕切り始めたが、
それはいつもの事らしい・・・。
いつの間にか席に座っていた『絶とヲグナ』は、
苦笑しつつもどこか楽し気ではあった。
{・・・結局美味しい所は持って行くんですよね~?}
{あぁ・・・。
でもまぁ~これであの小僧はより強くなれる・・・。
俺としては次にあいつに会うのが楽しみで仕方がない}
{これだからバトルマニアってのは・・・}
『絶とヲグナ』は念話でそう話していると、
『ヴァマント』が2人に睨みを利かせながらこう告げた・・・。
「因縁がありその男に可能性があるのなら、
この私が直々に虐めて・・・じゃなかった・・・
鍛えてやろうじゃないかっ♪」
この時『ヴァマント』の『失言』に皆が気付いたが、
言っても無駄だと分かっている事に労力を割く必要はなかった。
だがラウルだけは未だに『悠斗の死』を受け入れられなかった。
そんなラウルにヴァマントはややキレ気味にこう言った。
「おい・・・ラウル。
そんなに嫌ならお前が戦えよ・・・。
お前が頼み込んで連れて来たんだろうがよ?
てめーのケツが自分で拭けねーのならっ!
いつまでもグダグダ言ってんじゃねーよっ!」
「・・・くっ」
ヴァマントの言葉が図星であるラウルの胸に突き刺さると、
そのまま力尽きたように椅子にぐったりと腰を沈めたのだった・・・。
そしてこの『狭間の間』に集まった者達には、
もう1つ・・・。
この『神々の円卓』で話さなければならない事があったが、
『絶』はふと自分の腕時計に視線を落とすと一同にこう告げた・・・。
「ふむ・・・。
少し休憩を挟むとして『ノーブル組』は、
そうだな・・・。1時間ほど退出してもらおう・・・」
絶の言葉に顔を見合わせた『ノーブル組』だったが、
『その間に他の事案の話をする』と言う説明に、
『ノーブル組』は席を立ち『狭間の間』を退出したのだった・・・。
退出を待った一同は出された飲み物に口を付け一心地つけた時、
それは『ヲグナの一言』から始まった・・・。
『例の話の事なんだけど・・・。
俺はあの男の力も必要だと思うんだ・・・。
そして・・・『例の計画』を始めようじゃないか。
そう・・・『プロジェクト・チェイサー』をさ♪』
その一言が後に大きな出来事となって行くのだった・・・。
あれ?
上手くアップ出来ず悪戦苦闘><
・・・何とかアップ出来ましたが時間がかかってしまいました。
そして今回やっとの思いで『新章突入』
今後とも宜しくお願い致します^^
ってなことで、緋色火花でした。




