24話 悪意と優しさ
お疲れ様です。
明日から皆さんは盆休みなの・・・かな?
私は・・・そんなモノないですけどね><
帰省するかどうかは難しいところですが
気をつけてくださいね?
ブックマーク及び感想など宜しくお願い致します。
それでは、24話をお楽しみください。
悠斗は救出した女性をイリアに任せると
大破した馬車に駆け寄った。
「すみません、皆さんちょっと通してください」
大破した馬車の周りに集まっていた人達に声をかけると道ができた。
悠斗はアイテムバッグを取り出すと、
まず荷台に入っていた女性の荷物と思える物を詰め外に出た。
「すみません、この荷台が通行の邪魔になると思うので
移動させたいのですが、どなたか手伝っていただけませんか?」
大破した馬車とは言え、一人で押すのは苦労する。
「よう!俺も手伝うぜ!兄ちゃん」
体格のいい大剣を背負った男が名乗りを上げると、数人の男達も名乗りを上げた。
「すみません、助かります」
「わっはっはっ!兄ちゃんよ~そんな事気にするんじゃねーよ」
悠斗の背中を「バンバン」叩きながら威勢よく答えてくる。
「それによー。兄ちゃんは街道を通る人達の事を考えて
この荷台をどけようとしてくれているんだろ?
だったら、そんな事を気にしちゃーいけねぇーなー」
大剣を持った男は荷台に手を添えた。
「では、行きますよ・・・せーのっ!」
悠斗の掛け声と共に荷台を押す男達。
少しずつではあるがゆっくりと動き出す。
荷台を押す男達を見ていた男連中も手伝い、何とか移動する事ができた。
「皆さん、有難う御座いました」
悠斗は深々と頭を下げると・・・
「わっはっはっ!兄ちゃんは、今時の若いヤツとは違って
律儀なヤツだなー。うちの息子達にも見習わせたいぜ!」
「いや~、でも本当に有難う御座いました。あ、あの・・・一ついいですかね?」
「ん?聞きたい事があるなら、何でも聞いてくれ」
悠斗は背中に背負う大剣を見ながら・・・
「貴方は冒険者なのですか?」
「ん?ああ~。この剣を見てそう思ったのか?
はっはっはっ、そうか、そうか。
俺はこの先の港町・アシュリナの冒険者なんだよ」
「そうなんですか?俺達も今、アシュリナを目指しているんです」
「おお~!そうなのか?まさか、兄ちゃん・・・冒険者の志願者か?」
大剣を背負った男は、悠斗を「じぃー」っと観察する。
「ふむ、兄ちゃんはまだ若いのに、いい体格してんなー
それに・・・度胸もあるみてーだしな」
大剣を背負った男は、悠斗が救出した女性の方を見ながら答えた。
「見ていた・・・んですか?」
「はっはっ、まぁーな。俺達も、あの馬車を止めようとしたんだが
馬車の速度が速すぎてな~。で・・・だ、俺達があきらめた時
兄ちゃんが、とんでもねースピードで、
俺達の横を駆け抜けて行ったって訳だ」
大剣を背負った男は「ニヤリ」と笑うと
悠斗の耳元に顔を近づけ小声で話してきた。
「兄ちゃん、相当強いだろ?何かに巻き込まれでもしてるのか?
今は居ねーが、さっきまで怪しいヤツらが居たからな・・・」
「・・・・・」悠斗は無言で反応すると、大剣を背負った男を見た。
大剣を背負った男も無言で頷くと、再び話し始めた。
「おっと・・・いけねー。俺はアシュリナで冒険者をやってる、「グレイン」だ。
アシュリナで困った事があったら、俺に相談しろよ?」
グレインは大声で名乗ると右手を出してきた。
「グレインさん、俺はユウトです。何かあった時は相談させて頂きますので
その時は、宜しくお願いします」
「俺の事はグレインでいい」
「わかりました。俺の事もユウトで」
2人は「がっちり」と握手をすると、残りの残骸をかたづけ始めた。
馬の死骸をどうしようかと悩んでいると・・・・
「お前達!何をやっているんだ!」
悠斗とグレインは、声がした方向を見ると
鎧を着た者達6人が、こちらに向かって走ってきていた。
グレインは悠斗に小声で耳打ちする。
「ユウト。あれは街道を見回っている、騎士の中で最下級の見回り隊だ。
小遣い稼ぎに難癖を付けてくるクソヤロー共だから気をつけろよ?」
「難癖って・・・そんな連中が騎士なんですか?」
「ああ、この国の底辺騎士達は腐っている連中が多いんだ」
「やれやれ・・・だな」
2人は小声でやり取りをしながら騎士達を待った。
駆け寄ってきた騎士達は少し息を切らせていたが、
一人の偉ぶった男が2人に近寄ってきた。
「あー、貴様達、一体何の騒ぎだ?誰か説明できるヤツはいるか?」
悠斗とグレインは事の顛末を説明すると・・・
「ほ~・・・貴様がね~・・・・」
悠斗は騎士の男の視線に悪意を感じ取っていた。
「その話は本当なのか?貴様が犯人って事もありえるのではないか?」
「カチン」ときた悠斗が、一歩歩みだそうとした時、
グレインが間に入って答えた。
「あんたが隊長さんかい?俺はアシュリナでA級冒険者をやっている
「荒波の旅団・団長のグレイン」だ・・・。
この、兄ちゃんの事は、俺達がしっかりと見ていたからなー
この兄ちゃんの言う事に間違いはねーよ」
グレインは声のトーンを落とし、隊長を威圧していた。
「き、貴様が、あの・・・荒波の・・・。わ、わかった・・・
貴様に免じて許してやろう・・・。」
威圧されても偉ぶる態度は変えなかった隊長は、
部下達の所に戻りながら・・・
(ちっ!貴族の知り合いでなければ・・・こんな・・・やつ)
グレインは隊長の後ろ姿を見ながら、悠斗の元に戻ってくると・・・
「あのヤロー・・・何か企んでやがるな。ユウト・・・気をつけろ?」
「はい。あいつからは嫌な気を感じますからね・・・」
「ん?嫌な気?・・・気ってなんなんだ?」
グレインが不思議そうな顔をしながら聞いてくるのだが
「アシュリナで会った時にでも・・・」
「ふむ・・・そうだな。わかった」
今の現状を考えると、ゆるっと説明している事はできないだろう。
次に出会った時・・・と、いう事で。グレインには納得してもらった。
見回り隊の連中は何やら「コソコソ」と話している。
「んー・・・ユウト。俺は何か嫌な予感がするんだが・・・お前はどうだ?」
「そう・・・ですね。俺も同じ意見ですよ。最初から何か目的があって
俺達に近づいた・・・そんな所ですかね?」
「ほう・・・それは気が合うな?俺も全く同意見だぜ。
んー。少しの間だが、俺達もユウトと一緒に居る事にしよう。
俺達が居れば、無茶な事はしてこないだろうしな・・・」
「いいんですか?俺達は助かりますけど・・・?」
「はっはっ、気にすんなよ。俺はお前が気に入った!
ただそれだけだからよ!気にすんな」
グレインは豪快な笑顔で悠斗に笑って見せた。
(この人って、きっと・・・お節介焼きさんなんだろうな)
悠斗も心の中で笑顔になっていたが、
それも束の間、見回り隊が戻ってきた。
「あーそれでだな、まずは、馬車の荷台を見せてもらうとしてだな
助け出した女と言うのは・・・何処にいるのだ?」
悠斗は助け出した女性の方へ指を差すと、
隊長は合図を出し部下に見に行かせた。
悠斗達は隊長を馬車へ案内すると、残った部下達が外を見回り
悠斗とグレインと隊長が荷代に入って行った。
「ふむ・・・荷物などはなかったのか?」
「ありましたよ。このバッグの中に入れてあります」
隊長は悠斗の赤いバッグを見ると・・・
「貴様、それはアイテムバッグか?」
「はい。父と母から旅の共に・・・と・・・」
「・・・ほう」
隊長の目が妖しく光っていた。
(あー・・・これって、まさかのテンプレ展開なのかなー?)
悠斗はこの後、訪れるであろう問題に(面倒臭せー)とボヤいていた。
「おい、貴様!そのバッグごと寄越せ!」
悠斗のバッグごと奪おうとする隊長にグレインが割って入ってきた。
「おっと、隊長さん・・・そいつはいけねーなー・・・。
これはユウトの物だ、隊長さんが接収していいもんじゃねーぜ」
こめかみをヒクつかせながら、隊長がグレインを睨む。
「貴様、邪魔をするな!どうせ、こいつは何処かで盗んだに違いない!
だからワシが接収しようと言うのだ!」
「あー、隊長さんよー。無理にと言うのなら、俺は止めねーよ」
グレインが道を開けると、隊長は下卑た笑い顔で悠斗に近づく。
「あー・・・ただし、この事は領主である、アシュリナ様に報告させて頂くぜ」
その言葉に隊長の動きが止まると、グレインに振り返り怒りの形相になる。
「き、貴様っ!・・・ちっ!覚えておれっ!!」
捨てゼリフを吐くと、荷台を降りていった。
「グレイン・・・すみません」
「はっはっはっ、これくらい気にするな!」
笑いながら荷台を降りていくグレインの後ろ姿を見ながら
悠斗も後を追って荷台を降りた。
荷台を降りると見回り隊の連中も何やら報告しており
女性を見に行った部下も合流すると・・・
見回り隊全員で、助け出した女性の居る所へ移動した。
先頭を進む悠斗とグレイン・・・
後方で「コソコソ」と話し声がする。
「隊長・・・例の女と一緒に、ダークエルフがいましたよ」
「な、なに?ダークエルフだと?・・・ふむ、高く売れそうか?」
「はい、間違いなく上物です。でもその前に・・・・くっくっくっ・・・」
「ああ、それは当然だろう?売る前に頂くのはマナーだからな」
「それと、例の女ですが・・・まだ目覚めておりません。」
「そうか・・・。ならば誰か一人を伝令に行かせ、応援を呼んでこい」
「了解致しました。私が行きます」
そう言うと・・・見回り隊の一人が応援を呼びに行った。
聴力を強化していた悠斗には、全てお見通しだった・・・。
グレインは悠斗を横目で見ると・・・
「何かわかったのか?」と、小声で聞いてくる。
「はい。目的は・・・どうやらあの、救出した女性のようですね。
それと・・・俺の友達のイリア・・・売る、らしいです」
「そうか・・・。何かあれば俺が合図をだす。
だからお前はうかつな事をするなよ?
アイテムバッグの事もあるんだからな?馬鹿なマネはするなよ?」
「・・・ええ、一応・・・わかってますよ」
「だと、いいんだがな」
悠斗とグレインは見回り隊の様子を伺いつつ対処する事にした。
イリアは悠斗が馬車に駆け出した後、
集まっていた女性達と一緒に木陰へと移動し
救出した女性を寝かせ休ませていた。
イリアがふと気づくと、悠斗が騎士団らしき連中と話をしていた。
(ユウト?何を話しているんだろ?何か・・・もめてる?)
雑談を止めユウトを見ていたイリアを女性達の視線が追う。
「ねぇ、アレって・・・」
「ああ~・・・見回り隊のクソヤロー達だわ」
「あんなのに絡まれたら、ロクな事なんてなりゃしないわ」
「そろそろ此処を離れ方が良さそうね・・・」
「ええ、面倒な事になる前に行きましょ」
イリアの周り集まった女性達がその場から離れようとした時・・・
「ね、ねぇ・・・この子・・・どうするの?」
「どうって・・・あっ・・・ダークエルフ・・・か・・・」
「ねぇ、どうするの?」
女性達が悩んでいると・・・
「あ、あの?私の事は大丈夫なので・・・その・・・行ってください」
イリアは笑顔で女性達に、この場を去るよう促す。
「ごめんね?」そう言って、女性達が立ち去ろうとした時
一人の女性が皆に声をかける。
「ねぇ、あんた達。このまま放っておく気なのかい?
もしそうなら!あんた達もあのクズ共と同じって事になるわね!
もしそんな事になったら、あのユウトって子も悲しむんじゃないのかい?
ユウトって子は、私達の為に街道のかたづけまでしてくれているんだよ?
そんな子達を悲しませていいのかい?」
その女性は他の女達の顔を見ると大声で・・・
「さーて、あんたら気合入れなっ!こんないい子達を守れないで
一体どのツラ下げて生きていくってんだいっ!」
女性達はイリアの顔を見た後、悠斗の方を見る・・・
暫く悩んでいた一人の女性が・・・
「そうだね。イリアちゃんを片思いで終わらせてたまるものですか!」
「えっ?・・・はい?」
イリアはその言葉の意味に気づくまで少しかかった後、
顔を真赤にして俯いてしまった。
その初々しい仕草を見た女性達は・・・
「ああ、そうさ!あいつらの好き勝手にしてたまるもんかっ!」
「そうね。イリアちゃんの想いは私達で守ってあげるわ!」
「ええ!絶対にあいつらゲス野郎共には渡さないから安心しなさい!」
女性達の言葉に涙を滲ませ戸惑う。
「ど、どうして?わ、私と皆さん達とは関係・・・ない・・・のに・・・」
イリアと女性達は、知り合いでもなければ血縁でもない。
人族からすれば、ダークエルフ等は高値で売れる商品にすぎない。
なのに、女性達は他種族であるイリアを守ると言うのだ。
涙を流し泣き崩れるイリアを優しく抱き起こすと・・・
「私達が守ってあげるから。そうね~タダ・・・って訳にはいかないわね~
そうね・・・あのユウト君とのその後の話を
今度私達に聞かせてくれないかしら?それが私達への報酬よん♪」
「・・・へっ?」
女性達の思いもよらぬ提案に、だらしなく声が漏れてしまった。
「クスクス」と笑いながらイリアの前を固める女性達。
後ろで守られているイリアは小さな声で・・・
「あ、有難う御座います。その約束、必ず守ります」
そう言うと、再び涙を流し始めた。
「ははは、全く、泣いたり赤くなったりと、忙しい子だね~♪」
女性達はイリアに優しい笑顔を向けた後、
正面を向き、こちらへ一人で歩いてくる見回り隊の男に厳しい表情を向けたのだった。
ラウル ・・・ ふむ、あの女性達はとてもいい方達だね~♪
ミスティ ・・・ そうですわね♪私達が出るよりもいいかもしれませんね♪
ラウル ・・・ うんうん♪そうだね♪って・・・それとこれは別です!
ミスティ ・・・ 別って・・・どうして名もなき人族に対抗するのです?
ラウル ・・・ ふっ、それはね・・・
ミスティ ・・・ は、はい。
ラウル ・・・ 僕が目立たないじゃないかぁぁぁぁ!!
ミスティ ・・・ それでも神ですかっ!恥を知りなさい!
ラウル ・・・ それでも神ですけど? 何か問題でもぉぉぉ??
ミスティ ・・・ 開き直ったorz
ラウル ・・・ 恥を気にしてたら、神なんぞやってられるかぁぁぁ!
ってなことで、緋色火花でした。




