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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
外伝・壱
287/404

23話・日本・暴走・前編

お疲れ様です。


今回の話から『桜と戒斗』の話になります。

今回も『前後編』となりますので、

楽しんで頂ければ・・・w


それでは外伝・日本・23話をお楽しみ下さい。

『沙耶と修一』が戦闘を始めた頃・・・。


『桜と戒斗』もまた戦闘に突入し、

『異形』とも言える肩から『角』が生えた『黒いトロール』と、

『赤い三角帽子』を被った『ゴブリン』にいきなり苦戦する事となっていた。


『黒いトロール』が1体が発した『バインド・ヴォイス』に捕らわれ、

『桜』は脱出したものの『戒斗』まだ解けずに居た・・・。



「くっ!な、何故っ!?

 どうしてこの『バインド』が解けないんだよっ!?

 うぉぉぉぉぉっ!」


『戒斗』の目の前では、

突進して来る『黒いトロール』の前に『桜』が立ちふさがり、

『時間稼ぎ』の為、『威圧』を放ち『敵』は動けずに居た・・・。


「戒斗っ!一体何をやっているのよっ!?」


「わ、わかってますってっ!

 で、でも・・・」


必死に藻掻きはするものの『バインド』が解ける気配はなかった。


「くっそぉぉぉっ!ど、どうして振りほどけないんだよっ!?」


怒声を撒き散らすも、一向に溶ける気配はない・・・。

眼前で威圧を放ち続ける『桜』だったが、

その表情はとても険しいモノだった・・・。


(いつまでもこの状態は続かない・・・。

 戒斗・・・一体何をやってんのよっ!)


威圧を放ち続ける『桜』だったが、

元々『桜』は万全の状態ではない・・・。


最初こそ『桜』の放つ『威圧』にたじろいでいた『黒いトロール』も、

次第に戦いを仕掛けて来ない『桜』に違和感を感じ始めていた。


「グギィーっ!グゴゴガっ!」


『赤い三角帽のゴブリン』から何やら指示が飛んだ・・・。


その声を聞いた『黒いトロール』は、

『威圧』を放ち続ける『桜』に向いたまま頷いて見せたのだった。


「グガグゴっ!」


『ドシっ!ドシっ!』と一歩ずつあの足が踏み出し、

その『威圧』に顔を歪めながらも前へと進み始めた・・・。


その状況を良しとしない『桜』は、

一瞬背後で藻掻く『戒斗』に意識を向けると、

『こうなったら・・・』と、呟き覚悟を決めた。


「うだうだしていられないわっ!

 『神力解放っ!』」


その言葉と共に『ブワっ!』と、

『桜』の身体から『神力』が『解放』された。


しかし『桜』は己の身体から吹き出した『神力』に、

その表情が険しさを増したのだった・・・。


(やはり『素体』のダメージが・・・。

 くっ!騙し騙し・・・やるしかないわね・・・)


『桜』は己の『神力』に穢れを感じると、

もう一度・・・背後に居る『戒斗』へ意識を向け、

拳を固く握り締めると『黒いトロール』に向かって駆け出した。


「はぁぁぁっ!」


「ウガっ!?」


駆け出した『桜』は一瞬にして距離を詰めると、

渾身の蹴りを『黒いトロール』に向け放った・・・。


「うぉりゃぁぁっ!」


『ドコっ!』


『ピシっ!』


「ウガァっ!?」


咄嗟に『黒いトロール』は左腕で防御したのだが、

『桜』の放つその蹴りはとても強力で、

その太い左腕の骨にヒビが入るのを感じ取った。


顔を顰め左腕を庇う素振りを見せるものの、

『黒いトロール』は後ず去る素振りは見せなかった。


すると・・・。

後方でその様子を見ていた『赤い三角帽のゴブリン』から、

怒声に似た声が飛ぶと、

『黒いトロール』は苦虫を潰したような表情に変わった。


「・・・ウガゴギ」


(何だこいつ・・・?

 急に不満げな・・・?)


『桜』がそう感じていると『黒いトロール』は、

眼前に居る『桜』を見下ろすと何故か・・・

『哀れむ』ような表情を見せ一言・・・『ウガ』と声を発した。


「・・・?」


いくら『犬神』と言えど、全ての種族の言語などわかるはずもなく、

ただ・・・『桜』の心に『哀しみ』だけが伝わって来た。


(こいつは私に何が言いたい?)


唖然とする『桜』に『黒いトロール』の眼光が鈍く光ると、

『ウガァァァァァァっ!』と雄叫びを挙げながら、

左肩から生えている『角』を掴んだ。


『ウガガガガガガァァァっ!』


『黒いトロール』の顔が苦痛で歪み始めると、

今しがた見せたその眼光は瞬く間に『血走り』始めた。


(・・・ヤバそうな雰囲気ね)


咄嗟に『黒いトロール』から距離を取った『桜』は、

右手の『爪』を伸ばし攻撃に備えた。


『ヴッッッガァァァァっ』


「っ!?」


再び雄叫びを挙げた『黒いトロール』は、

『メリメリっ!』と音を立てながら左肩から生えている『角』を、

力一杯引き抜いたのだった・・・。


「・・・そ、それは武器・・・なのか?」


そう感想を漏らすほど、『黒いトロール』が手にしていたモノは、

『桜』にはとても(いびつ)に見えていた。


透かさず『桜』は『鑑定』を使用すると、

その内容が音声で頭の中に流れていった・・・。



『鑑定終了・・・。

 リン酸カルシウム及びタンパク質・・・。

 以上の事からこれは『骨』と推察されるが、

 ただし・・・『不確定要素有り』』


『桜』は鑑定結果の『不確定要素』と言う文言に首を傾げた。


(どう言う事だ?

 『不確定要素』・・・とは?)


『『不確定要素』とは・・・。

 『骨』の表面上に『膜』のようなモノを確認』


(・・・それは何だ?)


『データ不足により確定は不可・・・。

 しかしながら『鬼の気』と推察されます』


(・・・推察?)


『はい・・・。

 今現在まで蓄積された『データ』には存在しませんが、

 『質』としては『鬼の気』に近いモノだと推測されます』


(・・・鬼の気・・・ね~?)


『桜』は眼前で『血走った(まなこ)』を向ける『敵』に、

『面倒な事になったわね・・・』と呟いていた。


すると『黒いトロール』は左肩から引き抜いた『角』を、

頭上に掲げながら『ウガァァァっ!』と吠えた。


その行動に『悪寒』が走った『桜』は、

再び距離を取り態勢を低くし身構えのだが、

その目にした光景に釘付けとなったのだ。


「つ、角が・・・剣にっ!?」


驚くのも無理はない・・・。

頭上に掲げ吠え終わった瞬間、その『角』はグングンと伸び、

気が付けば『角』が『剣』へと姿を変えたからだった・・・。


『真っ白い骨刀(こつとう)っ!?』


『桜』ばかりか未だ『バインド』から脱出出来ずにいる『戒斗』も、

その『骨刀』の長さと白さに瞬きをするのを忘れてしまっていた。


「さ、桜様っ!?」


「・・・こっちはいいかからっ!

 あんたは早く『鬼化』しなさいっ!」


「・・・そ、そう言われても俺はっ!」


「ビビってんじゃないわよっ!」


「・・・えっ?」


「あんたの一族で残って居る『男』はっ!

 もうあんたしか居ないでしょっ!」


「・・・・・」


『桜』にそう言われた『戒斗』は顔を顰め、

『うぅ』っと呻き声を漏らした。


2人がそう話している中、

『黒いトロール』はその『骨刀』の感触を確かめるべく、

数度素振りすると納得したかのように無言で頷き、

『ウガっ』と『桜』に声を掛けたのだった・・・。


「・・・準備が出来たって言いたいの?」


その問いに小さく頷いた『黒いトロール』は、

その足を一歩前へと踏み出した。


「スゥ~・・・ハァァァ~・・・。

 あんた『魔物』の癖に紳士なのね?」


「・・・ウガ?」


「・・・いえ、別に気にしなくてもいいわ。

 さぁ・・・殺り合いましょうか?」


「・・・ウガァァァァァっ!」



陽が落ち視界が悪い中、

『桜』と『黒いトロール』は本格的に戦闘へと突入した。


真っ白い『骨刀』を横一閃薙いで見せるが、

『桜』は表情を変える事もなく躱し、

また『黒いトロール』も、『桜』の攻撃を余裕で躱して見せた。


『ザっ!』と2人が一度距離を取り構え直すと、

再びその背後から『赤い三角帽のゴブリン』が声を挙げた。


『グゲグガガっ!』


「・・・ウガ」


声を掛けられた瞬間・・・。

何故か『黒いトロール』の表情が曇ったように見えたが、

その鋭い眼光はまだ・・・怪しく光っていた。


(・・・どうにもやり辛いわね?

 どうしてあいつらは攻撃して来ないのよ?)


背後を気にする『黒いトロール』に違和感を感じ、

また『赤い三角帽のゴブリン達』の行動にも、

何か理由があるのではないかと考え始めていた。


(単騎でって事は・・・。

 何か理由があるのだろうけど今は・・・)


『桜』の表情に不安げな暗雲が立ち込めたが、

その理由は実に単純なモノだった・・・。


『無理し過ぎた・・・』


その言葉が吐き出される事はなく、

ただ胸の中で呟くに留まったが、実際もうそんなに余裕はなかった。


(神気が黒く淀み始めた・・・

 早めに『ケリ』を着けないとこちらが・・・)



『桜』と『黒いトロール』の戦闘は続いて行く・・・

が・・・。

その戦闘を目の前で無様に見ている事しか出来ない『戒斗』にとって、

これほど情けない思いをした事はなかった。


(ど、どうして俺はっ!?

 わ、わかってるっ!頭の中ではちゃんとわかってんだよっ!

 だ、だけど・・・こ、怖いものは怖いんだってっ!

 この『力』を開放した途端・・・。

 俺の意識は急激に薄れ遠のいて行く・・・。

 そして気がつけば・・・見るも無残な光景が・・・。

 くっ!も、もしかしたら・・・だ・・・。

 その場所で殺されていた此処の住人達は、

 お、俺が意識のない間に・・・こ、この手で・・・)


あの時の『惨状』を思い出した『戒斗』は、

全身に『悪寒』が走り『ガタガタ』と震え始めたのだった・・・。



(あ、あの子、こんな時に一体何やってっ!?)


『敵』と戦いながらも背後に居る『戒斗』を気遣う『桜』だが、

次第に『骨刀』を振る『黒いトロール』に押され始めた。


「・・・くっ!?」


「ウガァァァっ!」


『骨刀』の斬撃が圧倒し始め、

『桜』は汗を流しながら防戦するのが精一杯な状態になっていた。


(神力が・・・。

 こ、こうなったら・・・一気に『素体』で・・・)


『素体』とは『桜』の本来の姿である『犬神』の事である。

だがしかし『人間界』で『素体』を晒した時間が、

余りにも長く、『素体』に掛かる負担も『深刻な状態』になっていた。


(だ、だがこの状況を打破し、

 形勢を逆転せねば・・・取り返しのつかない事に・・・)


再び『桜』は意識を背後に居る『戒斗』へと向けると、

『・・・や、やるしかないわねっ!』と声を挙げた。


「・・・ウガ?」


「・・・こっちの話よっ!はぁぁっ!」


覚悟を決めた『桜』は気合と共に距離を取ると、

身体から一瞬『ブワっ!』と『神力』を放出させ声を挙げた。


『・・・犬神天現(けんしんてんげん)っ!』


『桜』は『犬神』である『素体』に戻り、

一気に『勝負』をつけようとした・・・。


だが・・・。


「・・・ど、どう言う・・・事・・・なの・・・だ?」


『桜』の表情は今・・・戸惑いに満ち、

身体を震わせながら己の両手を凝視していたのだった・・・。


「・・・ウガガ?」


その様子に『黒いトロール』も呆気に取られていたのだろう。

首を傾げながら戸惑っているようだった。


「ど、どう・・・して?」


『桜』の口からか細い声が漏れた時だった・・・。


『・・・はっ!?』とした『桜』は、

己の身体から漏れている『神力』に愕然とした。


「・・・わ、私の『神力』が・・・

 く、黒く・・・染まり始めて・・・う、嘘・・・でしょ?」


この場に居た誰もが『一目瞭然』と言わんばかりに理解出来、

『桜』の身体から漏れている『神力』は、

『神々しい』とは程遠い・・・

限りなく『黒』に近い『神力』が漏れていたのだった・・・。


「・・・あ、在り得ない」


そんな言葉が『桜』の口から漏れ出ると、

その膝を『ガクっ』とおり、崩れ落ちてしまったのだった・・・。


「・・・さ、桜様」


崩れ落ちる『桜』の背後に居た『戒斗』は、

掛ける言葉も見つからず、その名を声に出す事がやっとだった。


「・・・こ、この、わ、私が・・・?

 堕ちる・・・?

 そ、そんな事が・・・?

 『犬神』たる・・・こ、この私が・・・堕天・・・?」


己の現状に身体を『ワナワナ』と震わせ、

その表情も『絶望』とも取れるほど双眼を見開いていた。


「さ、桜・・・様・・・」


『戒斗』の目には『犬神』である『桜』がとてもか弱く見え、

どこにでも居る1人の女性のように見えた。


「・・・お、俺が何とかっ!」


頭をフル回転させ周囲に目をやっていると、

本堂の裏の離れた場所で『ドーン』と言う音と共に、

その周囲が赤く燃えているのが見て取れた・・・。


(・・・沙耶姉達も今必死に戦っているのに、

 お、俺は一体・・・)


目の前で蹲る『桜』を凝視していると、

それを見ていた『黒いトロール』が後ろを振り返りながら、

何かを話しているようだった・・・。


(・・・今の間に)


『戒斗』は『桜』から漏れ出る『黒くなり始めた神力』を見ると、

覚悟を決めざるを得なかった。


(・・・や、やるしか・・・俺しか・・・)


『ゴクリ』と喉を鳴らした『戒斗』は覚悟を決めると、

ゆっくりと呼吸をし始め、『コォォォォっ!』と呼吸音を変えた。


そして目を閉じた『戒斗』は己の中に在る、

『一之門』と書かれたやや『緑』がかった『門』を見た。


(・・・半分開きかけている)


その『門』は半分ほど開いており、

中から少量の『緑色のもや』のようなモノが漏れていた。


(多分これが俺の鬼の気ってヤツか・・・。

 今の状態でも意識が乗っ取られるのに、

 全部開いてしまったら・・・?

 い、いやっ!今はそんな事言ってられないだろっ!?

 お、俺がやらなきゃ・・・桜様がっ!)


『戒斗』は強くそう思いながら双眼を見開くと、

『門』を開けるべく『鬼の気』を解放し始めた。


(・・・ひ、開けっ!一之門っ!

 この状況を打破出来るのならっ!何でも構わないっ!)


『ギギィィ』


『戒斗』の意思に呼応した『一之門』と書かれた『緑色の門の扉』が、

ゆっくりと軋む音を立てながら開いて行った・・・。


「くっ・・・くぅぅぅ・・・。

 ヤ、ヤバ・・・い・・・意識が・・・俺の意識が・・・」


呻くように漏れ出た言葉が示すように、

『戒斗』の双眼が『ぐるん』と白く剥いてしまった・・・。


『ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』


雄叫びを盛大に挙げた『戒斗』は、

『バインド』を強引に引き千切るように脱すると、

眼前に居る『黒いトロール』に向かって鋭い視線を向けた。


「・・・ウ、ウガっ!?」


「グギィーっ!?」


「・・・・・」


「・・・か、戒・・・斗・・・」


突然豹変した『戒斗』にそれぞれが驚く中、

見開かれたその双眼に『桜』は『はっ!?』と息を飲んだ。


何故なら見開かれた『戒斗の双眼の瞳』は、

禍々しく縦に割れその瞳の色は、

『桜』も初めて見る『緑色』をしていたのだった。


『・・・み、緑色の鬼眼(きがん)だとっ!?』


驚愕する『桜』の声が終わった瞬間、

豹変した『戒斗』は音も立てずにその場から姿を消し、

気付いた時には『黒いトロール』が派手な音を立てながら、

仰向けに倒れていたのだった・・・。


「・・・ヤラセ・・・ナイ・・・。

 ミ、ミナ・・・ゴ、ゴロ・・・シニ・・・スル・・・」


呻くように呟かれたその言葉に、

『桜』は言い知れぬほどの『恐怖』を感じずにはいられなかったのだった。




ってな事で・・・。

今回のお話はいかがだったでしょうか?


楽しんで読んで頂けたらなら嬉しく思います。


とりあえずの予定としては・・・。

後編の後、いちかの話となりますが、『前中後』を予定しております。


その後についてはまた後程と言う事で・・・。


本年の残り1カ月ちょっとですね~。

頑張って行きたいと思いますので、応援のほど宜しくお願いします^^


登録や感想など頂ければと思います^^



ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 桜はお気に入りキャラなのでとても心配です。。。 桜自身の予想以上に素体の穢れの進行が速いことや 戒斗の鬼の気が緑色なことも、 理由がありそうですね。 この後の展開を楽しみにしています♪ …
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