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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
外伝・壱
286/406

22話・日本・代償・後編

お疲れ様です。


今回のお話は後編ですね。

一応の決着は着くのですが・・・。


それぞれの能力に関してはまた今後明かされて行きます。

楽しみにして頂けたら・・・とw


それでは、外伝22話後編をお楽しみ下さい。


修一を庇うように立ち塞がった『沙耶』に、

『ゴブリンメイジ』が放った2発の『火球』が命中し、

瞬く間に燃え上がった。


「さ、沙耶・・・様・・・?

 そ、そんな・・・お、俺が勝手な行動を取ってしまった為に・・・

 沙耶様ぁぁぁぁぁぁっ!!

 うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


目の前で燃え上り崩れ落ちていく姿を見た『修一』は、

右目から血の涙を流ながら絶叫し、

力の入らない四肢をばたつかせていた・・・。


「お、俺がぁぁぁぁっ!俺のせいでぇぇぇぇっ!

 くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」


『火球』を放った『ゴブリンメイジ』は、

ほくそ笑みながら無様に絶叫する『修一』見ていた。


「い、今の俺では・・・やはり『八咫の術』はっ!

 俺の見積もりが甘いせいでぇぇぇぇっ!」


『修一』は己の甘さに嫌になり、

這いつくばりながらも地面に力の入らない拳を叩きつけた。


そしていつまでも燃え続ける『沙耶』を見ながら『グゲっ』と笑うと、

未だ絶叫し続ける『修一』に向けて、ゆっくりと『杖』をかざした。


それを見た『修一』は怒りに顔を歪ませ、

放たれるであろうその『杖の先』を睨みつけていた。


「お、俺が責任を取らなくちゃいけないんだ・・・。

 だ、たがら俺は今・・・ここで殺られる訳にはいかない・・・

 沙耶様が払った『代償』は・・・か、必ず俺が・・・

 この命に代えても・・・殺すっ!」


そう言いながら『修一』は、

ロクに『力』も入らない身体を動かし立ち上がろうとした。


だが、立ち上がろうと全身に『力』が入る度に、

その口からは鮮血が溢れ『ゴフっ!ゴホっ!』と咽返っていた。


「グゲゲゲゲ・・・」


その邪悪に満ちた瞳が瀕死な『修一』に笑って見せると、

その『杖の先』が一度『キラリ』と光り始め、

見る見るうちに大きさを増し、気が付けば・・・

『バスケットボール』ほどの大きさになっていた。


地べたを這いずるように『修一』はありったけの『力』を使い、

血反吐を吐きながら少しずつ前へと這いずっていた・・・。


「グギァァァァァっ!ハッハッハァァァァっ!」


まるで勝ち誇ったように・・・。

『ゴブリンメイジ』は『修一』に『火球』を放った。


「か、必ず・・・き、貴様だけはぁぁぁぁぁっ!」


『修一』が『断末魔』の雄叫びを挙げた時だった・・・。



『・・・お前、さっきから五月蠅いんだよ』


静かだが力強い聞き慣れた声が、

『断末魔』の雄叫びを挙げる『修一』に聞こえた。


「・・・えっ?」


「グギャっ!?」


『修一』がそう声を漏らし、

『火球』を放った『ゴブリンメイジ』は目の前の現実に混乱した。


そしてその放たれた『火球』が『修一』に直撃しようとした時、

再びその声の主は『火球』の前に立ちはだかった・・・。


『ドンっ!ボッ!』と、再び『火球』は燃え上り、

地べたに居る『修一』にも燃え上る『その熱』に顔を背けた。


「・・・ふっふっふっ・・・はっはっはっ・・・」


「・・・さ、沙耶・・・様?」


「・・・グギャっ!?」


『火球』で燃え上っている『沙耶』は何故か肩を揺らしながら笑い、

『修一』と『ゴブリンメイジ』は困惑するしかなかった。


燃え上っている『沙耶』は一頻(ひとしき)り笑い終えると、

燃えているジャケットを脱ぎ捨てた。


中に着ていた『黒いタンクトップ』と、

『沙耶』自身のその筋肉美に美しさを感じるほどだった。


『バキっ!ゴキっ!』と・・・。

拳を鳴らし『威風堂々』とした鋭い『眼光』を向けると、

『ゴブリンメイジ』に向かって怒りを見せその口を開いた。


『これで終わりなのか?』


日本語を理解出来ない『ゴブリンメイジ』は、

言葉の意味が理解出来ずとも、

目の前で燃え上がっている女の迫力に気圧(けお)された。


「グッ・・・ゲッ・・・」


呻きにも似た声を漏らす『ゴブリンメイジ』に構う事無く、

『沙耶』は『・・・所詮魔物か』と吐き捨てるように呟くと、

振り返り倒れている『修一』に話しかけていった・・・。


「何を呆けているのよ?」


「い、いや・・・さ、沙耶・・・様?」


「・・・ん?」


「か、身体がま、まだ・・・燃え上がって・・・」


驚きの声を挙げている『修一』に、

『沙耶』は微笑みを向けた。


「あぁ~・・・コレ?

 今、私の身体が燃えているように見えているかもしれないけど、

 コレは・・・私の『鬼の気』だ」


「・・・お、鬼の・・・気?

 そ、その燃え上がって見えるソレが・・・

 沙耶様の・・・鬼の・・・気?」


「・・・あぁ、そうだ」


「た、確かに・・・熱くはあるが、

 火のソレじゃ・・・ない」


『修一』は『沙耶』の身体から放出される『火』に触れたが、

物理的な熱さを感じる事はなかった。


それどころか・・・。

『沙耶』の『鬼の気』に触れた事によって、

身体中の痛みが少し和らいだように感じたのだった・・・。


そんな状況に唖然とする『修一』に、

『沙耶』は少し照れくさそうにしながらも、

手を差し伸べ『修一』に微笑みかけていた。


「・・・立てるか?」


「・・・ははは、ま、まだ無理そう・・・です」


「そうか・・・」


苦痛に顔を歪めながらもそういった『修一』に、

『沙耶』は差し出した手を引っ込めると、

ゆっくりと立ち上がり振り返りこう言った・・・。


「ならそこで見ていろ・・・

 私が魔物(こいつ)を始末する」


「・・・は、はい。気をつけて下さい」


「・・・ふっ」


不安が(よぎ)る『修一』に、

『沙耶』は照れを隠すように俯き加減で鼻で笑って見せた。



「おい・・・貴様・・・。

 何故、攻撃を仕掛けてこないのだ?」


状況が未だ飲み込めずに呆然と立ち尽くす『ゴブリンメイジ』に、

『沙耶』がそう告げるも返す言葉がないようだった。


「・・・・・」


すると『沙耶』は『・・・幻滅だな』と苛立った声を漏らし、

身体から溢れ出す『炎色の鬼の気』をさらに燃え上がらせた。


「・・・こんな魔物(ヤツ)如きに、

 私は・・・私は一体何をやっていたんだろうな?」


そう呟きながら自笑すると、半身になって構えを取り、

『ゴブリンメイジ』に対し『・・・来い』と静かに告げた。


余裕な態度を見せた『沙耶』に、

呆然としていた『ゴブリンメイジ』の目は怒りに染まっていた。


「グギィィィィっ!」


「ほう~・・・。

 魔物如きが偉そうに怒って見せるとは・・・。

 貴様達『魔物』が何をしに『日本(ここ)』に来たかは知らんが、

 その身を以って『代償』を支払うんだな~?」

 


言葉の意味が理解出来ずとも、

『沙耶』の態度は容易に理解出来たようだった。


「グゲェェェェっ!?

 グ・・・ガガガガガっ!」


「・・・さっさと・・・来な」


「グギャャャャっ!」


怒り心頭な『ゴブリンメイジ』が雄たけびを挙げ、

かざした『杖』から3発ほどの『火球』を連射した。


『ボンっ!ボンっ!ボンっ!』


「ほう~・・・3連射とは、意外とやるモノだな?」


そう感想を述べるほど『沙耶』は余裕を以て全て躱し、

笑みを向けると肩を竦ませながら更に挑発していった。


「・・・他に『芸』はないのか?」


何気げない・・・その一言・・・。

言葉が理解出来ない『魔物』のはずが、

何か感じるモノがあったのだろう・・・。

顔を真っ赤にした『ゴブリンメイジ』は咄嗟に『杖』を上空へと掲げた。


「グギャっ!グゴゴガァァァっ!」


「・・・何だ?」


既に陽は落ち辺りは夜が支配する『闇』へと変わっており、

いくつかの外灯だけが辺りを照らしていた。


そんな中、『杖』を掲げ絶叫とも取れる声を発すると、

晴れていたはずの空が突如として『雲』を呼び寄せた・・・。


『沙耶』は訝し気な表情を浮かべ、

脂汗を浮かべながら空を仰いでいる『ゴブリンメイジ』を見ていた。


(・・・あれは雨雲?

 一体こいつは何をしようと・・・?)


『沙耶』が警戒する中、

その背後で未だ這いつくばる『修一』が声を挙げた。


「さ、沙耶様・・・。

 い、今の内に攻撃を・・・」


疲労困憊な声でそう言った『修一』に、

『沙耶』は振り返る事無く答えた。


「・・・何言ってんのよ~?

 何が起こるか見てみたいじゃない?」


「・・・は、はい?」


「ふっふっふっ・・・。

 某キャラじゃないけどさ~・・・

 オラ、ワクワクすっぞっ!てな?」


「・・・な、何を言っているんですかっ!?

 今はそんな事言っている場合じゃ・・・

 ゴホっ!ゴホっ!ゴホっ!」


「お前はそこでじっとしてなっ!

 私の楽しみを邪魔すんじゃないよっ!」


「・・・は、はい。

 もういいです・・・好きにして下さい」


「ふっふ~ん♪」


そう2人の会話が終わりを告げた頃だった・・・。


突然上空に集められた『雲』が、

『ゴロゴロ』と音を発すると、

それが『雷雲』だと容易に想像出来た。


(雷雲・・・と、言う事は、

 お決まりの『雷』って事ね・・・)


定番とも言える展開に『沙耶』はニヤりと笑みを浮かべ、

『修一』は不安の色を浮かべたのだった。


(あれは『雷雲』・・・。

 と、言う事はこの魔法は『雷』

 だけど・・・あぁ~これはダメだ・・・。

 沙耶様はこの展開を楽しんで・・・はぁ・・・)


深い溜息を吐く『修一』を他所に、

上空には『雷雲』がその『力』を貯めているようだった。


そして血走った眼を向けた『ゴブリンメイジ』は、

その絶叫と共に掲げていた『杖』を『沙耶』に向かって振り下ろした。


「グゲェェェェェェっ!」


『ゴロゴロゴロっ!ビッシャーンっ!』


雷鳴と共に落ちて来た『雷』が『沙耶』目掛け落ちて来た。

だが『沙耶』は『・・・雷如きっ!』と声を挙げると、

『燃え上れっ!炎気(えんき)っ!』と気合の声を張り上げたのだった。


『ドッシャーンっ!』


凄まじい轟音と共に『落雷』は『沙耶』へと直撃した。


「グゲ・・・グゲゲゲゲっ!」


『ゴブリンメイジ』が勝利を確信した声を挙げる中、

その視線の先では『シュゥゥゥゥ』っと煙りを放ち、

焦げ臭い匂いが立ち込めていた。


そして少しの間、その煙が張れるのを待っていると、

『ゴブリンメイジ』の双眼が見開き、

その高笑いしていたその声が『ピタリ』と止んだ・・・。


「・・・グ、グゲ・・・グゴっ?」


驚くのも無理はなかった・・・。

『ゴブリンメイジ』の双眼は、

『雷』に撃たれ生きているはずのない『者』を見たからだった。


両足を左右に開き頭上で腕をクロスさせた『者』・・・。

その身体からは独特な色彩を放つ『炎』が立ち昇っていたのだった。


(・・・もう恐れはない。

 だがこの『一之門』を開いた事によって、

 この凄まじい『鬼の気』を上手く操れるかどうか・・・)


まるで『火山噴火』のように・・・。

『沙耶』の身体から『炎気』が噴き出し、

その余りにも凄まじい『力』に、

その口元は『ニヤり』と不気味な笑みを浮かべていた。


『ゴブリンメイジ』はその凄まじき『力』に、

驚愕し脳内には『火山噴火』にイメージがこびりつく事になった。


「・・・グゲ・・・グゴっ!?」


「はっはっはっ・・・咄嗟とは言え・・・

 やってみるものだね~?」


態勢を解き、その視線の先で硬直する『ゴブリンメイジ』に、

沙耶は不敵な笑みを浮かべながら静かに構えを取った。


「それが・・・奥の手って事でいいのよね?

 じゃ~お次は・・・私のターンだっ!」


その茶化した言葉とは裏腹に、

『沙耶』の目は『獲物』を狩る『野獣の眼光』となっていた。


『グゲっ!?』と悲鳴にも似た声を発した『ゴブリンメイジ』は、

その本能から瞬時に逃走をはかり、

一刻も早くその場から離れたかったのだ。


「グギャァァァっ!」


「・・・逃がすかよ」


吐き捨てるように呟いた『沙耶』は、

蹴り足に『力』を貯めると一瞬にして先回りし、

その『野獣』のような『眼光』を見せ襲い掛かった。


「くたばりなっ!下郎っ!

 神野流・体術・・・いや、違うな・・・」


『沙耶』はそう言いながら攻撃せず身を捻り距離を取ると、

更に『炎気』を爆発させた。


そして『右拳』を引き脇で留めると、

鋭い眼光を向けたまま気合と共に声を張り上げた。


「技の名を今・・・命名しよう。

 炎色の鬼の気・・・それを『炎気』と定め、

 この拳から放たれる一撃は・・・『火山弾の如しっ!』

 『拳撃っ!炎気豪瀑布っ!』」


『沙耶』の凄まじい『炎気』が込められたその拳は、

真っ直ぐ淀みなく『炎』を纏いながら放たれたのだが、

『炎気』によって拳のスピードが増し、

『沙耶』本人でさえ『予測』を上回るモノだった・・・。


『ドンっ!』と言う衝撃音を発した『右拳』は、

『ゴブリンメイジ』が瞬きする間もなく、その顔面に直撃した。


『ゴッパァァァンっ!』と派手な衝突音を発し、、

頭部は木っ端微塵に吹き飛ばされた。


そしてその光景はまるで『汚い花火』を連想させるモノだったのだ。


『・・・無様ね。

 って・・・人の事は言えないわね・・・』


見事に『ゴブリンメイジ』を討伐した『沙耶』は、

『コォォォ』っと静かに呼吸を整えると、

未だ地面に這いつくばる『修一』に声を掛けた。


「修一・・・。

 お前いつまで這いつくばってんのよ?」


「・・・え、えっと~」


苦笑気味に『沙耶』が笑みを見せると、

『修一』は身体の異変に気付き驚きの表情を見せた。


「あ、あれ・・・?」


「修一~・・・どうした~?

 いつまでも休んでいる暇はないんだけど?」


「い、いや・・・お、俺の身体が・・・」


そう言いながら立ち上がった『修一』は、

己の身体を確かめるようにあちこち触っていた。


「い、一体・・・何が?」


困惑する『修一』に『沙耶』は苦笑しつつ説明していった。


「まだ確信とまでは言えないんだけどさ~。

 どうやら私の『炎気』には怪我を治癒する効果があるっぽい」


「・・・ち、治癒っ!?

 そ、それに・・・『ぽいっ』てっ!?」


「確信はないって言ったろ?

 『鬼の気』を持つ者なら当然な事かもしれないしね・・・。

 それにまだ『鬼の気』についてで言うのなら私は初心者だ。

 だから詳しく説明出来るはずないでしょ?」


「・・・い、いやでも、ならどうして『治癒』の効果があると?」


驚きの色が褪せない『修一』に、

『沙耶』は何とも言えない表情を浮かべながら返答していった。


「い、いや~・・・さ。

 さっき『敵』の攻撃を受けた時に、

 私の右手首が折れちゃってたみたいでさ~。

 でも『炎色』を使用した『門』を開けた瞬間、

 何故か回復しちゃってさ~・・・あははは・・・」


「あはははって・・・」


「い、いや~だからさ?

 『落雷』が来た時、咄嗟にお前を守るつもりで・・・さ?」


「・・・つもりで・・・何ですか?」


「守るつもりでお前を『炎気』で包んでみたんだよ。

 そしたらって~・・・感じ?」


「・・・・・」


正直にそう話した『沙耶』は、

バツが悪そうにそっぽ向いて見せると、

『修一』そんな『沙耶』にジト目を向けていた。


「つまり・・・何となくで俺を『鬼の気』で包んだと?」


「ま、まぁ~そうなるな?」


「・・・何の確信もなく、

 それどころか『何となく』と言う曖昧な事で?」


「・・・うっ」


「・・・沙耶様?

 もし貴女のその『炎色の鬼の気』が、

 他人を燃やしてしまう可能性もありましたよね?」


「い、いや・・・待てっ!修一っ!?

 ほ、ほらだってっ!わ、私は『炎色』で燃えていないんだぞ?」


「そりゃ~そうですよね~?

 それにそれって・・・貴女の感想ですよね~?

 なんせ御自分の『鬼の気』なんですから・・・。

 自分の『力』で燃えてしまったら、

 それこそ『本末転倒』ですよね~?」


怒りを滲ませながら近づく『修一』に、

『沙耶』は後ず去りながら迫る『修一の瞳』が、

一瞬たりとも笑っていない事に気付いた。


「ま、待てっ!修一っ!?

 話せば・・・わ、わかるってっ!」


「・・・沙耶様~?」


「・・・す、すまんっ!修一っ!許してくれーっ!」


逃走する『沙耶』に『修一』は呆れていると、

ふと仲間達の事を思い出した。


「そんな事より沙耶様っ!早くみんなと連絡を取らないとっ!」


「・・・あっ、そうだった。

 夢中になっていて完全に忘れていたわ・・・」


『わ、忘れてって・・・」


『沙耶と修一』は他の場所で戦闘状態にある仲間達に連絡を取る為、

『インカム』に手を伸ばしたのだが・・・。


「・・・しゅ、修一仲間の様子はどうだ?」


そう聞いて見ると、その『修一』も『沙耶』と同じ表情を浮かべた。


「・・・も、もしかして?」


「・・・は、はい。そのもしかして・・・です」


そう・・・。

『修一』は『八咫の力』を使用した時、

耳から『インカム』が外れてしまい何処かへと・・・。

そして『沙耶』は自らの『鬼の気』で・・・。


『やってしまった・・・』とばかりに『自己嫌悪』していると、

ふと・・・。

外灯に照らされ道の上で光るモノに沙耶が気付いたのだった・・・。


「・・・あ、あれは?」


外灯に照らされたモノは・・・

間違いなく『修一』が落とした『インカム』だった。


自分が『ツイ』ていた事に喜び拾い上げ、

『インカム』を手にした時だった・・・。


突然『沙耶』の『鬼の気』がその余韻からか『ボっ!』と吹き上げ、

一瞬にして手にした『インカム』が燃え尽きてしまったのだ。


「・・・ちょ、ちょっとっ!?

 噓でしょっ!?

 どうして燃えちゃうのよっ!?」


手の中で燃え尽きた『インカム』だったモノを見ていると、

何故か背中に突き刺さる『念』みたいなモノを感じ振り返った。


そしてその先には『修一』が居たのだが、

その表情は引き攣りその目は怒りに染まっていた。


「え、えっと~・・・こ、これは・・・だな?」


冷や汗を流しながらそう言い始めると、

『修一』は低い声で口を開き始めた・・・。


「・・・どう言う事ですか?

 貴女の『鬼の気』は他人を巻き込まない・・・的な?

 そんな事をおっしゃっていませんでしたっけ?」


「い、いや~・・・ま、待て・・・

 ど、どうしていきなりこうなったのか、わ、私にもだな?

 そ、それにアレだ・・・。

 わ、私はまだ『鬼の気』に不慣れなのだ・・・うんうん。

 だ、だからこれは・・・ふ、不慮の事故でだな?」


必死に言い訳を始めた『沙耶』に『修一』は溜息を吐くと、

突然その場に座り込みうなだれてしまった。


再びバツが悪そうな表情を浮かべた『沙耶』は、

座り込む『修一』の隣に座ると話を切り出していった。


『修一・・・。それはそれとしてだな?

 お前に聞きたい事がある」


「・・・はいはい、何ですか?」


「コホンっ!お前・・・。

 さっき使った『八咫の術』。

 アレは一体どう言った(たぐい)のモノなんだ?」


「・・・・・」


話しにくそうにする『修一』に、

『沙耶』何となく察しその答えを諦めようとした。


すると『修一』は『スゥ~』と音を立てて呼吸すると、

重そうにその口を開いていった。


「アレは『瞳術』なのですが・・・

 かなり特殊なモノなんです。

 相手ばかりかその周辺に居る者達にまで、

 その効力が及び、『認識阻害』を引き起します・・・。

 まぁ~『基本的には・・・』ですが・・・」


「い、いやだが・・・

 『認識阻害』だけならお前の身体があんな事には?」


そう『沙耶』が『修一』の顔を見ながら訪ねるも、

『ふっ』と笑みを浮かべ『術』の事を尋ねるのを止めてしまった。


(私もどうやって『精神汚染』から脱したか、

 話してないからね・・・)


『修一』の目を見た『沙耶』は、

無言ながらも『・・・察してくれ』と言う意図を読み取り、

『八咫の術』に関する事を聞こうとはしなかった。


「さてっと・・・」


「・・・?」


そう言いながら立ち上がった『沙耶』は、

こちらを見上げる『修一』にこう告げた。


「・・・そろそろ行くわよ?」


『どちらに行きますか?』と苦笑しながら聞き返すと、

『沙耶』は・・・。


「決まってるでしょ?まずは『桜様』の所よっ!」


「・・・えっと~・・・。

 その理由・・・聞いてもいいですかね?」


その『修一』の問いに、

『沙耶』妖し気に『ニヤ~』っと笑みを浮かべると・・・。


『私の本能がそう告げているっ!』


「・・・あ~・・・っと・・・。

 はい・・・わかりました・・・了解です」


「・・・ん?」


「いえ、本能ですよね?了解です」


こうして思わぬ事が原因で苦戦を強いられた2人は、

『黒色のトロールと赤い三角帽子のゴブリン』と戦う、

『桜と戒斗』の元へと向かうのだった・・・。




さて、今回のお話はいかがだったでしょうか?


沙耶と修一の今後を楽しみにして頂ければと・・・。

外伝も今後続きますので、宜しく御願いします。


さて次回は、桜と戒斗のお話となっております。

楽しみにして頂ければと・・・w



ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「精神汚染」て何だろう?と思ってたのです。 修一の能力共々『謎』のお預けですねw シリアスな戦いが続くと、後半の沙耶と修一のコミカルな会話でホッとしますね♪ こういうバランスに配慮され…
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