22話・日本・代償・後編
お疲れ様です。
今回のお話は後編ですね。
一応の決着は着くのですが・・・。
それぞれの能力に関してはまた今後明かされて行きます。
楽しみにして頂けたら・・・とw
それでは、外伝22話後編をお楽しみ下さい。
修一を庇うように立ち塞がった『沙耶』に、
『ゴブリンメイジ』が放った2発の『火球』が命中し、
瞬く間に燃え上がった。
「さ、沙耶・・・様・・・?
そ、そんな・・・お、俺が勝手な行動を取ってしまった為に・・・
沙耶様ぁぁぁぁぁぁっ!!
うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
目の前で燃え上り崩れ落ちていく姿を見た『修一』は、
右目から血の涙を流ながら絶叫し、
力の入らない四肢をばたつかせていた・・・。
「お、俺がぁぁぁぁっ!俺のせいでぇぇぇぇっ!
くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
『火球』を放った『ゴブリンメイジ』は、
ほくそ笑みながら無様に絶叫する『修一』見ていた。
「い、今の俺では・・・やはり『八咫の術』はっ!
俺の見積もりが甘いせいでぇぇぇぇっ!」
『修一』は己の甘さに嫌になり、
這いつくばりながらも地面に力の入らない拳を叩きつけた。
そしていつまでも燃え続ける『沙耶』を見ながら『グゲっ』と笑うと、
未だ絶叫し続ける『修一』に向けて、ゆっくりと『杖』をかざした。
それを見た『修一』は怒りに顔を歪ませ、
放たれるであろうその『杖の先』を睨みつけていた。
「お、俺が責任を取らなくちゃいけないんだ・・・。
だ、たがら俺は今・・・ここで殺られる訳にはいかない・・・
沙耶様が払った『代償』は・・・か、必ず俺が・・・
この命に代えても・・・殺すっ!」
そう言いながら『修一』は、
ロクに『力』も入らない身体を動かし立ち上がろうとした。
だが、立ち上がろうと全身に『力』が入る度に、
その口からは鮮血が溢れ『ゴフっ!ゴホっ!』と咽返っていた。
「グゲゲゲゲ・・・」
その邪悪に満ちた瞳が瀕死な『修一』に笑って見せると、
その『杖の先』が一度『キラリ』と光り始め、
見る見るうちに大きさを増し、気が付けば・・・
『バスケットボール』ほどの大きさになっていた。
地べたを這いずるように『修一』はありったけの『力』を使い、
血反吐を吐きながら少しずつ前へと這いずっていた・・・。
「グギァァァァァっ!ハッハッハァァァァっ!」
まるで勝ち誇ったように・・・。
『ゴブリンメイジ』は『修一』に『火球』を放った。
「か、必ず・・・き、貴様だけはぁぁぁぁぁっ!」
『修一』が『断末魔』の雄叫びを挙げた時だった・・・。
『・・・お前、さっきから五月蠅いんだよ』
静かだが力強い聞き慣れた声が、
『断末魔』の雄叫びを挙げる『修一』に聞こえた。
「・・・えっ?」
「グギャっ!?」
『修一』がそう声を漏らし、
『火球』を放った『ゴブリンメイジ』は目の前の現実に混乱した。
そしてその放たれた『火球』が『修一』に直撃しようとした時、
再びその声の主は『火球』の前に立ちはだかった・・・。
『ドンっ!ボッ!』と、再び『火球』は燃え上り、
地べたに居る『修一』にも燃え上る『その熱』に顔を背けた。
「・・・ふっふっふっ・・・はっはっはっ・・・」
「・・・さ、沙耶・・・様?」
「・・・グギャっ!?」
『火球』で燃え上っている『沙耶』は何故か肩を揺らしながら笑い、
『修一』と『ゴブリンメイジ』は困惑するしかなかった。
燃え上っている『沙耶』は一頻り笑い終えると、
燃えているジャケットを脱ぎ捨てた。
中に着ていた『黒いタンクトップ』と、
『沙耶』自身のその筋肉美に美しさを感じるほどだった。
『バキっ!ゴキっ!』と・・・。
拳を鳴らし『威風堂々』とした鋭い『眼光』を向けると、
『ゴブリンメイジ』に向かって怒りを見せその口を開いた。
『これで終わりなのか?』
日本語を理解出来ない『ゴブリンメイジ』は、
言葉の意味が理解出来ずとも、
目の前で燃え上がっている女の迫力に気圧された。
「グッ・・・ゲッ・・・」
呻きにも似た声を漏らす『ゴブリンメイジ』に構う事無く、
『沙耶』は『・・・所詮魔物か』と吐き捨てるように呟くと、
振り返り倒れている『修一』に話しかけていった・・・。
「何を呆けているのよ?」
「い、いや・・・さ、沙耶・・・様?」
「・・・ん?」
「か、身体がま、まだ・・・燃え上がって・・・」
驚きの声を挙げている『修一』に、
『沙耶』は微笑みを向けた。
「あぁ~・・・コレ?
今、私の身体が燃えているように見えているかもしれないけど、
コレは・・・私の『鬼の気』だ」
「・・・お、鬼の・・・気?
そ、その燃え上がって見えるソレが・・・
沙耶様の・・・鬼の・・・気?」
「・・・あぁ、そうだ」
「た、確かに・・・熱くはあるが、
火のソレじゃ・・・ない」
『修一』は『沙耶』の身体から放出される『火』に触れたが、
物理的な熱さを感じる事はなかった。
それどころか・・・。
『沙耶』の『鬼の気』に触れた事によって、
身体中の痛みが少し和らいだように感じたのだった・・・。
そんな状況に唖然とする『修一』に、
『沙耶』は少し照れくさそうにしながらも、
手を差し伸べ『修一』に微笑みかけていた。
「・・・立てるか?」
「・・・ははは、ま、まだ無理そう・・・です」
「そうか・・・」
苦痛に顔を歪めながらもそういった『修一』に、
『沙耶』は差し出した手を引っ込めると、
ゆっくりと立ち上がり振り返りこう言った・・・。
「ならそこで見ていろ・・・
私が魔物を始末する」
「・・・は、はい。気をつけて下さい」
「・・・ふっ」
不安が過る『修一』に、
『沙耶』は照れを隠すように俯き加減で鼻で笑って見せた。
「おい・・・貴様・・・。
何故、攻撃を仕掛けてこないのだ?」
状況が未だ飲み込めずに呆然と立ち尽くす『ゴブリンメイジ』に、
『沙耶』がそう告げるも返す言葉がないようだった。
「・・・・・」
すると『沙耶』は『・・・幻滅だな』と苛立った声を漏らし、
身体から溢れ出す『炎色の鬼の気』をさらに燃え上がらせた。
「・・・こんな魔物如きに、
私は・・・私は一体何をやっていたんだろうな?」
そう呟きながら自笑すると、半身になって構えを取り、
『ゴブリンメイジ』に対し『・・・来い』と静かに告げた。
余裕な態度を見せた『沙耶』に、
呆然としていた『ゴブリンメイジ』の目は怒りに染まっていた。
「グギィィィィっ!」
「ほう~・・・。
魔物如きが偉そうに怒って見せるとは・・・。
貴様達『魔物』が何をしに『日本』に来たかは知らんが、
その身を以って『代償』を支払うんだな~?」
言葉の意味が理解出来ずとも、
『沙耶』の態度は容易に理解出来たようだった。
「グゲェェェェっ!?
グ・・・ガガガガガっ!」
「・・・さっさと・・・来な」
「グギャャャャっ!」
怒り心頭な『ゴブリンメイジ』が雄たけびを挙げ、
かざした『杖』から3発ほどの『火球』を連射した。
『ボンっ!ボンっ!ボンっ!』
「ほう~・・・3連射とは、意外とやるモノだな?」
そう感想を述べるほど『沙耶』は余裕を以て全て躱し、
笑みを向けると肩を竦ませながら更に挑発していった。
「・・・他に『芸』はないのか?」
何気げない・・・その一言・・・。
言葉が理解出来ない『魔物』のはずが、
何か感じるモノがあったのだろう・・・。
顔を真っ赤にした『ゴブリンメイジ』は咄嗟に『杖』を上空へと掲げた。
「グギャっ!グゴゴガァァァっ!」
「・・・何だ?」
既に陽は落ち辺りは夜が支配する『闇』へと変わっており、
いくつかの外灯だけが辺りを照らしていた。
そんな中、『杖』を掲げ絶叫とも取れる声を発すると、
晴れていたはずの空が突如として『雲』を呼び寄せた・・・。
『沙耶』は訝し気な表情を浮かべ、
脂汗を浮かべながら空を仰いでいる『ゴブリンメイジ』を見ていた。
(・・・あれは雨雲?
一体こいつは何をしようと・・・?)
『沙耶』が警戒する中、
その背後で未だ這いつくばる『修一』が声を挙げた。
「さ、沙耶様・・・。
い、今の内に攻撃を・・・」
疲労困憊な声でそう言った『修一』に、
『沙耶』は振り返る事無く答えた。
「・・・何言ってんのよ~?
何が起こるか見てみたいじゃない?」
「・・・は、はい?」
「ふっふっふっ・・・。
某キャラじゃないけどさ~・・・
オラ、ワクワクすっぞっ!てな?」
「・・・な、何を言っているんですかっ!?
今はそんな事言っている場合じゃ・・・
ゴホっ!ゴホっ!ゴホっ!」
「お前はそこでじっとしてなっ!
私の楽しみを邪魔すんじゃないよっ!」
「・・・は、はい。
もういいです・・・好きにして下さい」
「ふっふ~ん♪」
そう2人の会話が終わりを告げた頃だった・・・。
突然上空に集められた『雲』が、
『ゴロゴロ』と音を発すると、
それが『雷雲』だと容易に想像出来た。
(雷雲・・・と、言う事は、
お決まりの『雷』って事ね・・・)
定番とも言える展開に『沙耶』はニヤりと笑みを浮かべ、
『修一』は不安の色を浮かべたのだった。
(あれは『雷雲』・・・。
と、言う事はこの魔法は『雷』
だけど・・・あぁ~これはダメだ・・・。
沙耶様はこの展開を楽しんで・・・はぁ・・・)
深い溜息を吐く『修一』を他所に、
上空には『雷雲』がその『力』を貯めているようだった。
そして血走った眼を向けた『ゴブリンメイジ』は、
その絶叫と共に掲げていた『杖』を『沙耶』に向かって振り下ろした。
「グゲェェェェェェっ!」
『ゴロゴロゴロっ!ビッシャーンっ!』
雷鳴と共に落ちて来た『雷』が『沙耶』目掛け落ちて来た。
だが『沙耶』は『・・・雷如きっ!』と声を挙げると、
『燃え上れっ!炎気っ!』と気合の声を張り上げたのだった。
『ドッシャーンっ!』
凄まじい轟音と共に『落雷』は『沙耶』へと直撃した。
「グゲ・・・グゲゲゲゲっ!」
『ゴブリンメイジ』が勝利を確信した声を挙げる中、
その視線の先では『シュゥゥゥゥ』っと煙りを放ち、
焦げ臭い匂いが立ち込めていた。
そして少しの間、その煙が張れるのを待っていると、
『ゴブリンメイジ』の双眼が見開き、
その高笑いしていたその声が『ピタリ』と止んだ・・・。
「・・・グ、グゲ・・・グゴっ?」
驚くのも無理はなかった・・・。
『ゴブリンメイジ』の双眼は、
『雷』に撃たれ生きているはずのない『者』を見たからだった。
両足を左右に開き頭上で腕をクロスさせた『者』・・・。
その身体からは独特な色彩を放つ『炎』が立ち昇っていたのだった。
(・・・もう恐れはない。
だがこの『一之門』を開いた事によって、
この凄まじい『鬼の気』を上手く操れるかどうか・・・)
まるで『火山噴火』のように・・・。
『沙耶』の身体から『炎気』が噴き出し、
その余りにも凄まじい『力』に、
その口元は『ニヤり』と不気味な笑みを浮かべていた。
『ゴブリンメイジ』はその凄まじき『力』に、
驚愕し脳内には『火山噴火』にイメージがこびりつく事になった。
「・・・グゲ・・・グゴっ!?」
「はっはっはっ・・・咄嗟とは言え・・・
やってみるものだね~?」
態勢を解き、その視線の先で硬直する『ゴブリンメイジ』に、
沙耶は不敵な笑みを浮かべながら静かに構えを取った。
「それが・・・奥の手って事でいいのよね?
じゃ~お次は・・・私のターンだっ!」
その茶化した言葉とは裏腹に、
『沙耶』の目は『獲物』を狩る『野獣の眼光』となっていた。
『グゲっ!?』と悲鳴にも似た声を発した『ゴブリンメイジ』は、
その本能から瞬時に逃走をはかり、
一刻も早くその場から離れたかったのだ。
「グギャァァァっ!」
「・・・逃がすかよ」
吐き捨てるように呟いた『沙耶』は、
蹴り足に『力』を貯めると一瞬にして先回りし、
その『野獣』のような『眼光』を見せ襲い掛かった。
「くたばりなっ!下郎っ!
神野流・体術・・・いや、違うな・・・」
『沙耶』はそう言いながら攻撃せず身を捻り距離を取ると、
更に『炎気』を爆発させた。
そして『右拳』を引き脇で留めると、
鋭い眼光を向けたまま気合と共に声を張り上げた。
「技の名を今・・・命名しよう。
炎色の鬼の気・・・それを『炎気』と定め、
この拳から放たれる一撃は・・・『火山弾の如しっ!』
『拳撃っ!炎気豪瀑布っ!』」
『沙耶』の凄まじい『炎気』が込められたその拳は、
真っ直ぐ淀みなく『炎』を纏いながら放たれたのだが、
『炎気』によって拳のスピードが増し、
『沙耶』本人でさえ『予測』を上回るモノだった・・・。
『ドンっ!』と言う衝撃音を発した『右拳』は、
『ゴブリンメイジ』が瞬きする間もなく、その顔面に直撃した。
『ゴッパァァァンっ!』と派手な衝突音を発し、、
頭部は木っ端微塵に吹き飛ばされた。
そしてその光景はまるで『汚い花火』を連想させるモノだったのだ。
『・・・無様ね。
って・・・人の事は言えないわね・・・』
見事に『ゴブリンメイジ』を討伐した『沙耶』は、
『コォォォ』っと静かに呼吸を整えると、
未だ地面に這いつくばる『修一』に声を掛けた。
「修一・・・。
お前いつまで這いつくばってんのよ?」
「・・・え、えっと~」
苦笑気味に『沙耶』が笑みを見せると、
『修一』は身体の異変に気付き驚きの表情を見せた。
「あ、あれ・・・?」
「修一~・・・どうした~?
いつまでも休んでいる暇はないんだけど?」
「い、いや・・・お、俺の身体が・・・」
そう言いながら立ち上がった『修一』は、
己の身体を確かめるようにあちこち触っていた。
「い、一体・・・何が?」
困惑する『修一』に『沙耶』は苦笑しつつ説明していった。
「まだ確信とまでは言えないんだけどさ~。
どうやら私の『炎気』には怪我を治癒する効果があるっぽい」
「・・・ち、治癒っ!?
そ、それに・・・『ぽいっ』てっ!?」
「確信はないって言ったろ?
『鬼の気』を持つ者なら当然な事かもしれないしね・・・。
それにまだ『鬼の気』についてで言うのなら私は初心者だ。
だから詳しく説明出来るはずないでしょ?」
「・・・い、いやでも、ならどうして『治癒』の効果があると?」
驚きの色が褪せない『修一』に、
『沙耶』は何とも言えない表情を浮かべながら返答していった。
「い、いや~・・・さ。
さっき『敵』の攻撃を受けた時に、
私の右手首が折れちゃってたみたいでさ~。
でも『炎色』を使用した『門』を開けた瞬間、
何故か回復しちゃってさ~・・・あははは・・・」
「あはははって・・・」
「い、いや~だからさ?
『落雷』が来た時、咄嗟にお前を守るつもりで・・・さ?」
「・・・つもりで・・・何ですか?」
「守るつもりでお前を『炎気』で包んでみたんだよ。
そしたらって~・・・感じ?」
「・・・・・」
正直にそう話した『沙耶』は、
バツが悪そうにそっぽ向いて見せると、
『修一』そんな『沙耶』にジト目を向けていた。
「つまり・・・何となくで俺を『鬼の気』で包んだと?」
「ま、まぁ~そうなるな?」
「・・・何の確信もなく、
それどころか『何となく』と言う曖昧な事で?」
「・・・うっ」
「・・・沙耶様?
もし貴女のその『炎色の鬼の気』が、
他人を燃やしてしまう可能性もありましたよね?」
「い、いや・・・待てっ!修一っ!?
ほ、ほらだってっ!わ、私は『炎色』で燃えていないんだぞ?」
「そりゃ~そうですよね~?
それにそれって・・・貴女の感想ですよね~?
なんせ御自分の『鬼の気』なんですから・・・。
自分の『力』で燃えてしまったら、
それこそ『本末転倒』ですよね~?」
怒りを滲ませながら近づく『修一』に、
『沙耶』は後ず去りながら迫る『修一の瞳』が、
一瞬たりとも笑っていない事に気付いた。
「ま、待てっ!修一っ!?
話せば・・・わ、わかるってっ!」
「・・・沙耶様~?」
「・・・す、すまんっ!修一っ!許してくれーっ!」
逃走する『沙耶』に『修一』は呆れていると、
ふと仲間達の事を思い出した。
「そんな事より沙耶様っ!早くみんなと連絡を取らないとっ!」
「・・・あっ、そうだった。
夢中になっていて完全に忘れていたわ・・・」
『わ、忘れてって・・・」
『沙耶と修一』は他の場所で戦闘状態にある仲間達に連絡を取る為、
『インカム』に手を伸ばしたのだが・・・。
「・・・しゅ、修一仲間の様子はどうだ?」
そう聞いて見ると、その『修一』も『沙耶』と同じ表情を浮かべた。
「・・・も、もしかして?」
「・・・は、はい。そのもしかして・・・です」
そう・・・。
『修一』は『八咫の力』を使用した時、
耳から『インカム』が外れてしまい何処かへと・・・。
そして『沙耶』は自らの『鬼の気』で・・・。
『やってしまった・・・』とばかりに『自己嫌悪』していると、
ふと・・・。
外灯に照らされ道の上で光るモノに沙耶が気付いたのだった・・・。
「・・・あ、あれは?」
外灯に照らされたモノは・・・
間違いなく『修一』が落とした『インカム』だった。
自分が『ツイ』ていた事に喜び拾い上げ、
『インカム』を手にした時だった・・・。
突然『沙耶』の『鬼の気』がその余韻からか『ボっ!』と吹き上げ、
一瞬にして手にした『インカム』が燃え尽きてしまったのだ。
「・・・ちょ、ちょっとっ!?
噓でしょっ!?
どうして燃えちゃうのよっ!?」
手の中で燃え尽きた『インカム』だったモノを見ていると、
何故か背中に突き刺さる『念』みたいなモノを感じ振り返った。
そしてその先には『修一』が居たのだが、
その表情は引き攣りその目は怒りに染まっていた。
「え、えっと~・・・こ、これは・・・だな?」
冷や汗を流しながらそう言い始めると、
『修一』は低い声で口を開き始めた・・・。
「・・・どう言う事ですか?
貴女の『鬼の気』は他人を巻き込まない・・・的な?
そんな事をおっしゃっていませんでしたっけ?」
「い、いや~・・・ま、待て・・・
ど、どうしていきなりこうなったのか、わ、私にもだな?
そ、それにアレだ・・・。
わ、私はまだ『鬼の気』に不慣れなのだ・・・うんうん。
だ、だからこれは・・・ふ、不慮の事故でだな?」
必死に言い訳を始めた『沙耶』に『修一』は溜息を吐くと、
突然その場に座り込みうなだれてしまった。
再びバツが悪そうな表情を浮かべた『沙耶』は、
座り込む『修一』の隣に座ると話を切り出していった。
『修一・・・。それはそれとしてだな?
お前に聞きたい事がある」
「・・・はいはい、何ですか?」
「コホンっ!お前・・・。
さっき使った『八咫の術』。
アレは一体どう言った類のモノなんだ?」
「・・・・・」
話しにくそうにする『修一』に、
『沙耶』何となく察しその答えを諦めようとした。
すると『修一』は『スゥ~』と音を立てて呼吸すると、
重そうにその口を開いていった。
「アレは『瞳術』なのですが・・・
かなり特殊なモノなんです。
相手ばかりかその周辺に居る者達にまで、
その効力が及び、『認識阻害』を引き起します・・・。
まぁ~『基本的には・・・』ですが・・・」
「い、いやだが・・・
『認識阻害』だけならお前の身体があんな事には?」
そう『沙耶』が『修一』の顔を見ながら訪ねるも、
『ふっ』と笑みを浮かべ『術』の事を尋ねるのを止めてしまった。
(私もどうやって『精神汚染』から脱したか、
話してないからね・・・)
『修一』の目を見た『沙耶』は、
無言ながらも『・・・察してくれ』と言う意図を読み取り、
『八咫の術』に関する事を聞こうとはしなかった。
「さてっと・・・」
「・・・?」
そう言いながら立ち上がった『沙耶』は、
こちらを見上げる『修一』にこう告げた。
「・・・そろそろ行くわよ?」
『どちらに行きますか?』と苦笑しながら聞き返すと、
『沙耶』は・・・。
「決まってるでしょ?まずは『桜様』の所よっ!」
「・・・えっと~・・・。
その理由・・・聞いてもいいですかね?」
その『修一』の問いに、
『沙耶』妖し気に『ニヤ~』っと笑みを浮かべると・・・。
『私の本能がそう告げているっ!』
「・・・あ~・・・っと・・・。
はい・・・わかりました・・・了解です」
「・・・ん?」
「いえ、本能ですよね?了解です」
こうして思わぬ事が原因で苦戦を強いられた2人は、
『黒色のトロールと赤い三角帽子のゴブリン』と戦う、
『桜と戒斗』の元へと向かうのだった・・・。
さて、今回のお話はいかがだったでしょうか?
沙耶と修一の今後を楽しみにして頂ければと・・・。
外伝も今後続きますので、宜しく御願いします。
さて次回は、桜と戒斗のお話となっております。
楽しみにして頂ければと・・・w
ってなことで、緋色火花でした。




