閑話・日本・前代未聞
お疲れ様です。
年末に向けてこれから更に忙しくなり、
精神崩壊を起こしそうになっている社畜の緋色で御座いますorz
さて今回は『閑話』となっております。
大介が待つ村の入り口でのお話となっております^^
楽しく読んで頂けると幸いですが・・・。
登録や感想なども是非っ!宜しくお願い致します^^
それでは、外伝・閑話をお楽しみ下さい。
沙耶達は装備の補充を整える為に準備を進めて行くと、
大介がワゴンのトランクから『黒い大きなBOX』を取り出して来た・・・。
「皆さん念の為にこちらのインカムに付け替えて下さい」
そう言いながらBOXを開いた大介は、
桜含め全員に新しいインカムを手渡して行った・・・。
新しいインカムに付け替えると、
ここに居るメンバーの状態を把握する為話し合う事になった・・・。
「で・・・よ?
実際のところ・・・桜さんの状態はどうなんだよ?」
英二がおもむろにそう聞くと、
桜に対する言葉使いに沙耶は顔を顰めていたが、
それを気にするような素振りを見せず、
桜は英二の問いに答えていったのだ・・・。
「そうね・・・。
実際のところ・・・『素体』を晒し過ぎた事は問題ね」
「・・・『素体』ってあの『白い犬神状態』の事か?」
「えぇ・・・。黒蝶が実際どうやったかは正直わからない・・・。
でも、私の『体力』や『神力』を回復させたみたいだけど
『素体』のダメージ自体は、『回復』できなかったみたいね?」
「・・・素体のダメージか~」
英二は『うーん』と唸りながらも必死に考えているようだったが、
桜の言う『ダメージ』自体をよく理解していないようだった・・・。
すると沙耶が『ちょっと宜しいでしょうか?』と声を挙げると、
桜に質問していったのだ・・・。
「桜様・・・?
その『ダメージ』と言うのは一体どう言うモノなのでしょうか?」
「・・・そうね~、簡単に言うと・・・
この『人間界』で私自身・・・つまり『素体』で行動すると言うのは、
『毒の池の中』に飛び込むような・・・モノ・・・
って・・・ところかしらね?」
そう桜から告げられると沙耶の顔色が一瞬にして変わった。
それは当然だった・・・。
実際に桜はソレをやってしまっていたからだった・・・。
「だ、大丈夫なのですかっ!?」
「そうね・・・。
とりあえずは何とかなるレベルではあるけど、
流石にもうこれ以上は・・・」
苦しそうな表情を浮かべるでもなく、
桜はおどけながらそう言うものの、
実際はその身体に相当な負担がかかっているのだと予想出来た。
「因みにその『毒』というのは一体・・・?」
申し訳なさそうにそう尋ねて来た沙耶に、
桜は肩を竦ませると・・・。
「『毒』と言うのはこの『人間界』に漂う・・・『欲』の事よ」
「『欲』・・・ですか?」
「えぇ、我ら『神』においては、
人間の際限ない・・・『欲』と言うモノが、
私達『神』の無垢なる『素体』を徐々に侵していき、
私の場合で言えば『白き体毛』が黒く穢れ染まって行く・・・。
そしてそれが『真っ黒』に染まる時、
『神』は『堕落』し『闇』へと落ちるのよ・・・」
「く、黒く・・・染まる・・・」
ポツリとそう呟いた沙耶に桜は少し笑みを浮かべると、
英二が心配そうに声をかけてきた。
「・・・さ、桜さん・・・す、すまね~・・・
俺がバカなばかりに・・・」
「・・・あぁ~、そうだな♪」
「・・・えっ!?」
申し訳なく思った英二は桜にそう謝罪したのだが、
桜は別段気に様子もなくおどけて見せたのだった・・・。
そして続け様にこう言った・・・。
「再び『素体』で戦う事は出来ないけど、
この『擬体』でもそれなりの戦闘は出来るから問題ないわよ」
そう言うと英二と沙耶に笑顔を見せると、
安心した2人が苦笑気味に笑っていたのだった・・・。
それからすぐに桜達は仲間達の状態を確認して行った・・・。
「私の傷は完全に癒え、再び『鬼化』しても問題なしよ。
それに・・・」
そう言い始めたのは沙耶だった・・・。
「それに・・・。
どうやら私の『鬼の力』もレベルアップしたようで、
恐らく以前よりも・・・長く『鬼化』していられるみたいね」
「・・・どうしてそんな事がわかんだよ?」
そう口を開いてきたのは英二だった・・・。
そんな言葉に沙耶は『にっ!』と笑うと、
自分の目の前でモニターを出現させたのだった・・・。
それに驚いたのが桜、英二、いちかの3人・・・。
だが大介だけが全員の様子に首を傾げているようで、
何が起こっているのかさっぱりと理解出来ないでいた・・・。
「な、何が起こっているのですか?」
焦りながらそう尋ねて来る大介に、
英二が説明するとただ唖然とするばかりだった・・・。
沙耶は少し苦々しい表情を浮かべながら背を向けると・・・。
「・・・実際のところ、問題がない訳じゃないけどね」
その呻くように呟いた言葉は、誰の耳にも届く事はなかった・・・。
沙耶が視線を落とした先には、
『赤い文字』でこう書かれていた・・・。
『警告・精神汚染確認』・・・と。
それから英二の状態といちかの状態を聞いた後だった・・・。
『いちか・・・ちょっといいか?』と小声で声を掛けてきたのは桜だった。
「・・・何ですか?」
「いちか・・・大丈夫なのか?」
「・・・はい?」
桜にそう聞かれたいちかは不思議そうに首を傾げて見せると、
『お前・・・無理しているだろ?』と告げられた。
「あははは・・・い、一体何の事ですか~?」
「・・・隠さなくていい」
その会話が偶然聞こえた大介はいちかの肩に手を乗せると、
いちかの体温がかなり熱くなっている事に驚きの声を挙げた。
「い、いちか・・・お、お前っ!?」
「ちょ、ちょっとっ!大介さんっ!
それっ!セクハラですよっ!?」
突然声を荒げたいちかに沙耶と英二も驚いたようだった・・・。
「いちか・・・突然大声出してどうしたんだよ?」
英二がそう声を掛けるも、
いちかはただ『・・・別に』と答えるだけだったのだ。
顔を顰めながらいちかは大介を睨みつけるような視線を向けていたが、
『ふぅ~』と項垂れるように溜息を吐くと、
桜へと向き直り『どうして気付いたんですか?』と尋ねた・・・。
「あぁ・・・それはな?
何もしていないのにも関わらず、お前が額に汗を浮かべていたからよ」
「・・・気が付きませんでした」
「だろうな?
でも最初に違和感を感じたのは・・・
『黒蝶』と『沙耶』が戦い始めたくらいから、
何となくであるが、いちか・・・
お前の身体の中で起きている異変を感じ取っていたわ」
「・・・なるほどね~・・・じゃ~とっくにバレていたんですね?」
「・・・そうなるわね」
肩を竦め顏を顰めたいちかは、
今・・・その身体で起こっている事を話す為、
『これを見て下さい』と、
そう言って『ステータス・ボード』をみんなに見せた。
モニターをみんなが見られるように裏返すと、
そこに記載されている文章に桜は眉を顰め、
英二は『・・・な、何だよ、これ?』と驚いているようだった。
すると桜が『・・・どうするの?』と尋ねると、
『・・・私、本気で人間辞めちゃうんですかね?』と、
どこか悲し気な表情を浮かべて居た・・・。
そしてその『ステータス・ボード』にはこう記載されており、
ボタンらしきモノが赤く点滅していたのだった・・・。
※ {『川崎 いちか』は進化しますか?
YES/NO
種族/ハイ・ヒューマンor鬼人}
そしてその下の備考欄には、
現在いちかの身体で起こっている事も記載されていた。
{種族変化の準備段階として、
肉体の再構築及び、体温上昇/血圧増大中・等
詳細は別途御覧下さい}
一件冷静を装う桜だったが、内心穏やかではなかった・・・。
(こ、この地球で・・・しかも私達が管轄するこの日本で、
しゅ、『種族変化』だなんて・・・ぜ、前代未聞よっ!?
そ、それにいちかは『悠斗』の『鬼の気』を浴び続けたとは言え、
言わば・・・一般人に他ならないのに・・・な、何故っ!?
前代未聞って言葉じゃ足りない・・・
『有り得ない』事よっ!?)
そう内心動揺する桜は、英二へと視線を向けた・・・。
(英二は『天照』により『実験』されたからまだわかるけど、
こ、この子は・・・一体どうしてっ!?
そ、それに魔法適正も半端ないのはどうしてなのっ!?)
桜の視線に気付いた英二は首をただ捻るだけだったが、
視線をいちかへと戻した時・・・
そのいちかは頭を掻きながら桜に尋ねて来た。
「え~・・・っと~・・・桜さん?
ちょっと教えて欲しいんですけど・・・」
「・・・何?」
「『ハイ・ヒューマン』って何ですか?
それと『鬼人』についても教えてもらえませんか?」
いちかの質問に桜は『う~ん』と唸り始め、
どう説明すればいいかを思案していた時だった・・・。
『そこからの質問には私がお答え致しましょう』
何処ともなく聞こえて来た声に反応したのは『いちか』だった・・・。
「つ、月読様っ!?」
『えっ!?』と驚く沙耶達を他所に、
『いいのか?出て来て?』
そう桜が呟くように言うと『問題ありません』と再び声が返って来た。
するとワゴンが止めてある付近に、
一筋の細い光が降り、一瞬広範囲が淡い光に包まれ消えると、
何故だかその理由はわからないが・・・。
『エンジ色に縦の白いラインが入ったジャージ姿』で現れたのだった・・・。
そして更にその、その左胸の辺りには・・・。
縦5cm横幅6cmの白い布地に、
黒のマジックで『月読』と書かれていたのだった・・・。
「ジャ、ジャージっ!?」
そう驚きの声を挙げたのは英二だった・・・。
言葉にこそ出さなかったが、
沙耶や大介も余りの光景に言葉を飲み込み、
固まってしまっていたのだった。
だがその姿を見ても別段気にする事もなく、
駆け出すと、『月読』の前で片膝を着き頭を垂れたのは、
『いちか』だった・・・。
「月読様・・・お会い出来て光栄です」
「ふふふ・・・そんなに畏まらなくていいのですよ?
私と貴女の仲ではありませんか?」
『月読』が『いちか』に対し、余りにフレンドリーな物言いに、
『沙耶達』は再び開いた口が塞がらなくなっていた。
「・・・月読~?
あんたまた懲りずに『筋トレ』していたの?」
「あら・・・『桜』・・・いけませんか?」
『月読』のその一言に何故かその場の空気が重くなった・・・。
そしてその時、一同が目にしたのは・・・。
(・・・つ、月読様の目が笑ってねぇーっ!?)
(え、英二・・・・
わ、私は『月読様』会うのは初めてなのだが・・・
い、いつもこんな感じの御方なのかっ!?)
(し、知りませんよっ!
お、俺もこんな姿の『月読様』に会うのは初めてだしっ!
そ、それに会ったのも1~2回くらいなもんスよ?)
(そ、そうなの・・・ね)
(お、俺は初めてなんだよな~・・・
とても・・・居づらい・・・)
大介の感想を他所にそんな話を小声でしていると、
『そこ・・・聞こえていますよ?』と、
極寒を思わせるほどの『冷気』がその周辺を包み込んでいた。
少しして『月読』が『そんな事より・・・』と、
話を切り出すと、『いちかの異変』について話し始めたのだった。
「いちかさん・・・。
まずは貴女の質問についてたお答えしましょう。
『ハイヒューマン』とはその字の如し、
『人間』を越える存在ですね♪」
「・・・人間を?」
「はい、例えば・・・そう・・・『寿命』」
「・・・寿命?」
「はい、200~300年は普通に生きられますよ?」
「・・・な、ながっ!?」
「ふふふ・・・その他にも『人間』よりも丈夫に出来ており、
『病気』のリスクなども余り気にする事はなく、
『怪我による回復力』などもスバ抜けております」
「あはは・・・う、嘘みたいな話ですね」
『月読』に聞かされた『ハイヒューマン』の能力に、
いちかは苦笑するしかなったのだ・・・。
そして更に・・・『月読』の話しは続いていった・・・。
「次に『鬼人』ですが・・・」
「・・・鬼人」
「はい、まぁ~これも簡単に言うと・・・」
「・・・?」
突然話しを途切れさせた『月読』は背を向けると、
その場で少し険しい表情を浮かべると『うーん』と唸り始めた。
「簡単・・・簡単・・・簡単・・・ねぇ~?」
そう呟きながら何かを思い出すと、
いちかに向き直り晴れやかな表情を浮かべた。
「こほん・・・簡単に説明致しますと~・・・
『鬼人』とはつまり・・・『悠斗様』の事ですね♪」
「・・・はい?」
『月読』の言葉に驚いたのは何も『いちか』だけではなかった。
沙耶も英二も・・・そして大介までも驚き、
その衝撃たるや・・・『パクパクパク』と、
まるで池の中でエサを要求する『鯉』を連想させた。
「あはっ・・・あははは・・・
私の『師匠』って・・・『人間辞めて』いたんだ~・・・
へ、へぇ~・・・そ、それは、し、知らなかったな~・・・
あははははは・・・あぁ~・・・あの人って・・・全く・・・」
そう言いながら顔を引き攣らせるいちかは、
軽く息を吐き、その顔を『月読』へと向けると・・・
「私っ!決めましたっ!
『師匠』の行く道は『私の道』ですっ!」
「・・・ふふふ。そうですか♪」
「・・・はいっ!」
いちかはそう元気よく声を挙げると立ち上がり、
出しっぱなしにしていたモニター画面を自分へと向けると、
その中で赤く点滅する『鬼人』のボタンを押そうとした。
「お、おいっ!いちかっ!?
も、もっと考えなくていいのかよっ!?」
「そ、そうだよっ!いちかっ!
お、お前はいつも何も考えずに・・・」
英二が慌てて阻止しようとし、
大介がいつもの如き『説教モード』へ移行するも、
『黙りなさいっ!この下等な雑魚共っ!
これが私の道なんですっ!』
そう言葉を強めながら『ポチっとな♪』と言いながら、
いちかは迷う事無く『鬼人』のボタンを押した。
{承認致しました。『川崎 いちか』は『鬼人』に進化します}
「ふっふっふっ・・・私の時代がキタァァァっ!」
拳を空へと突き上げながら悦に浸っていると、
『ピピっ!』と音が『ステータスボード』から聞こえた・・・。
その文字を確認したいちかの片眉が『ピクリ』と吊り上がったのだ。
そして『ワナワナ』と肩を震わせ始めると・・・。
「なっ、何で30分後なのよぉぉぉっ!?」
『川崎 いちか』はもどかしさの余り挙げた絶叫は、
のどかな田舎の山々に響き渡るのだった・・・。
そしてそれを見ていた英二と大介は・・・。
「な、なぁ~大介・・・」
「何ですか?」
「あ、あいつ・・・俺達の事を・・・
か、下等な雑魚共とか言ってなかったか・・・?
き、・・・気の・・・気のせい・・・だよな?」
「え、英二さん・・・落ち着いて下さい・・・。
気のせいではなく・・・『リアル』です」
『ぐはっ!』と吐血でもしそうな勢いで、
英二は地に膝を着いたのだった・・・。
そしてそんな時だった・・・。
『ブブンっ』と村の入り口から音が聞こえると、
『はぁ、はぁ、はぁ、』と息を切らせた『茜』が、
その姿を現したのだった。
『フラフラ』とし荒い呼吸を整えようと大きく息をすると・・・。
「戒斗さんのお仲間の人達ってっ!
貴方達の事でいいんですよねっ!」
突然姿を見せた女性にそう叫ばれると、
『そうだ・・・戒斗は私の仲間だ』と沙耶が告げた。
「・・・あ、あのっ!た、助けて下さいっ!
戒斗さん達がっ!」
そう叫んだ『茜』の言葉に、
一同全員の顔が一気に変わったのだった・・・。
って言う事で・・・。
今回の『閑話』はいかがだったでしょうか?
『いちか』の進化に加えて不安な要素が見られた『沙耶』。
今後の展開をお見逃しなくっ!
ってなことで、緋色火花でした。
P・S 今から仕事に戻ります・・・。
なんてことだぁぁぁぁっ!




