23話 暴走馬車と不穏な声
お疲れ様です。
あー・・・今回長くなってしまいました。
中々まとめる事ができず苦戦しました。
でも、読んでもらい楽しかったと思ってもらえると幸いです。
ブックマーク及び感想など宜しくお願い致します。
それでは、23話をお楽しみ下さい。
暫くの間、2人はのんびりと歩き、港町・アシュリナを目指す。
緑豊かな大地に風が吹き抜けていく・・・。
「もう少ししたら大きな街道に出るわ♪街道に入ったら、
後は真っ直ぐ行くだけよ♪」
イリアは左前方を指差しながら行き先を示す。
「そっかー。了解。港町か~楽しみだなー」
悠斗は初めての異世界文化が、この目で見られると思うと
「わくわく」が止まらないでいた。
2人は談笑しながら歩いて行くと・・・
「ピローン」と、メールの音が聞こえた。
(えっと・・・確か、俺以外には見えないんだっけ?)
悠斗は横目でイリアを見ながら、ステータスを呼び出す。
(おっと、ミスティからか・・・)
ラウルからだとばかり思っていた悠斗は・・・
(めずらしいな・・・)
件名 ミスティです♪
「随分と2人で楽しそうですわね?イチャイチャと、まぁ~・・・
私達も見ていますのよ?もう少し自重されたほうが宜しいかと・・・。」
悠斗はメールの冒頭で、ため息を吐くと、
イリアに「大丈夫?」と、心配されてしまった。
「大丈夫だよ」と、少し笑顔が引きつりながらも誤魔化すと
悠斗は続きを読んでいった。
「それで、今回私がメール致しましたのは、街道に到着される頃、
馬車が通るのですけど・・・通ると、言うよりも・・・
馬車が暴走しているので止めて頂きたいのです。
馬車の中には将来、重要人物になるであろう者が乗っているからです。
出来ることなら、その者の力になってあげてほしいのですが・・・?
自由に・・・と、言っておきながら、申し訳なく思っております。
あと、イチャイチャも程々にしてくださいね?
それでは失礼致します。」
(馬車の暴走?ふむ・・・将来の重要人物か・・・)
悠斗は歩きながら、腕を組んで考え込んでしまった。
そんな悠斗を見ていたイリアは、黙って悠斗を観察している。
「さてっと・・・どうするかな・・・?」思わず声に出てしまう。
「ユウト?どうしたの?」
声が出ていた事に今更ながら気づく。
「あーーー。えっと・・・ね」
どうやって誤魔化すかと一瞬考えた悠斗だったが・・・
「えっと・・・気配察知を使ってみたら、馬車なのかな?
どうやら暴走しているみたいなんだけど?どうしよう?」
ちょっと白々しい感じはするが、
イリアの性格上、これが一番だと思った。
「えっ?ちょっと!早く止めないと危ないじゃない!」
(よしっ!食いついた!)
悠斗の読み通りになったので話を続けた。
「だよね?じゃー急ごうか!」
イリアは悠斗の提案に頷くと、2人は街道へ駆け出した。
悠斗は走りながら気配察知を使用すると、
ものすごい速度で移動する物体を捉えた。
(これか・・・でも、このままじゃ・・・)
「イリア!このままじゃ間に合わない!速度を上げられるか?」
「ええ、もう少しなら上げられるけど・・・でも・・・」
イリアは少し考えると悠斗を見て・・・
「ユウト!貴方が先に行って止めて!すぐに追いつくから!」
「わかった!悪いが先に行かせてもらう!」
悠斗はイリアの返事を待たず、身体強化を使用した。
イリアも身体強化を使い後を追うのだが・・・
「はっ、速すぎる!!ユウトの速度に付いて行けない・・・」
15歳の男子に追いつけないイリアは
自分との力の差を見せつけられていた・・・。
(嘘でしょ。スピードに自信がある私が追いつけないなんて・・・)
「ちっ!」
悠斗は後方で舌打ちがかすかに聞こえたのだが
気にする事もなく更に速度を上げた。
(この速度じゃ間に合わないっ!)
悠斗は少し間に合わないと思っていた。
もう一段階速度を上げられるのだが、迷っていた・・・。
(速度はまだ上げられるが・・・制御できるかどうか・・・)
速度は上げられるのだが制御しきれず止まれなくなってしまう。
そうなっては意味が無くなってしまう。
迷った悠斗だったが、将来の重要人物とミスティのメールに書いてあった。
それに悠斗は、ミスティからの願いを叶えてあげたかったのだ。
(ええいっ!やってみるかっ!!)
「身体強化・・・Lv.4!!」
叫ぶと同時にLv.4を使用する。
今までとは桁違いの速度で駆け出す悠斗。
(ぐわっ・・・俺の認識が追いついて行かない・・・)
再び気配察知を使用すると、この速度でギリギリ間に合う状態になった。
「はっ!こ、これでギリギリかよっ!」
ギリギリ認識出来ている悠斗は、暴走している馬車の速度に違和感を覚えた。
(お、おかしい・・・。いくら暴走しているからって、
物理的にありえない速度だろっ!どうなってんだっ!)
ありえない速度で暴走する馬車・・・
気配察知で確認すると・・・
(なっ!また速度が上がった?ど、どうしてっ!)
今の悠斗の速度ではまず間に合わない・・・
そう考えていると、街道が見え始めた。
「いたっ!!」
悠斗は暴走する馬車の後ろ姿を目視した。
街道では行き交う人々が悲鳴を挙げながら馬車を避けていた。
暴走する馬車を見ると、車軸辺りが白く輝いていた。
「あ、あれは何だ?ま、まさかとは思うが・・・」
白く輝く車軸が人的な要因だと確信すると・・・。
「ちっ!やるしかないっ!」
覚悟を決めた悠斗は、もう一段階速度を上げる。
「耐えろよ!俺ーー!!身体強化・・・Lv.5!!」
悠斗の叫びによって、認識外の速度に到達した。
(や、やばい・・・意識が・・・耐えろ!!)
「ガチッ!!」っと、噛み締めた歯茎から血が流れ始めた。
Lv.5の身体強化に、過剰な程の魔力が流れて行く。
(・・・い、意識が・・・ぐはっ)
そして、悠斗の意識が消え去ろうとした時・・・
「ピピッ」
「どうにか間に合いましたね。私がサポートします」
その声は、素敵な声を持ったアナウンスの女性だった。
その声と同時に悠斗の意識が回復し、魔力も適正な量に変わった。
速度を増した状態でも意識は朦朧とはせず、
しっかりと馬車を捕らえる事ができた。
「よ、よくわかんないけど、サンキュー!」
悠斗はそのまま街道を暴走する馬車を追いかけた。
(も、もう少し・・だ・・・)
「と、届けー!!」
悠斗は手を伸ばし、御者台にある手すりを掴むと
御者台に飛び乗り、手綱を掴んだ。
「と、とま・・・れ!」
「グッ!」っと、引くと・・・馬の体に魔法陣が浮かぶ。
「な、何だあれは?」
魔法陣が浮かんだと同時に馬が速度を維持したまま暴れだす。
「うわぁぁ!」悠斗は御者台から振り落とされそうになるが
手すりを掴み必死で堪えた。
「一体どうなってんだよっ!」
手すりにしがみつきながら、左手で手綱を掴む。
「ピピッ」
「解析完了。悠斗様、馬に「凶暴化」の魔法がかけられています。
しかも暴走中に手綱を引くと、連動する仕組みになっているようです」
「きょ、凶暴化?・・・一体どうすればいいんだ!」
「今の悠斗様にはディスペルの魔法は使えませんので・・・」
「ちっ!」
(中に居る人だけを助け出したとしても、馬車は止まらない・・・
このままじゃ街道を歩いている人達が巻き込まれる・・・)
「馬を・・・馬を処分されるしか無いかと・・・」
「・・・やっぱりそうなるのか」
悠斗は魔法適性がありながら、自分がディスペルが使えない事に
己の未熟さを呪っていた。
「わかった・・・殺ろう・・・」
苦悶の表情を浮かべながら覚悟を決める悠斗。
「サポート頼む」
「了解しました」
「身体強化・Lv.5」
悠斗は身体強化を使い、馬車の暴走の揺れに対処すると荷台に入った。
中に入ると、女性が一人倒れていた。
「さてっと、念の為に・・・気道ニ之書・纏術・弐・纏気」
悠斗は倒れている女性に自分の気を纏わせると抱え上げ御者台に戻る。
マジック・ボックスから、ショートソードを取り出すと
手すりを掴み、女性を抱え直すと・・・暴走する馬の横に飛び・・・
「ザシュッ!」っと、馬の首を切断した。
悠斗は馬の首を切断した後、女性の頭を抱え着地すると、地面を転がった。
馬車は馬の首が切断されると、倒れた馬に荷台の車輪が乗り上げ、
そのまま轟音と共に・・・大破した。
轟音が止み、悠斗は顔を上げると・・・
街道の傍らに馬の死体が横たわり、大破した荷台が転がっていた。
街道を歩いていた人達が集まり、大破した荷台と馬を見ていた。
数人が悠斗に駆け寄ると・・・
「君!大丈夫なのか!」と、悠斗に声をかけてくる。
「はい、俺は大丈夫です。ご心配有難う御座います」
悠斗はそう言うと、助け出した女性の容態を見る。
「ふぅ。とりあえず外傷はないな・・・息は・・・よしっ、ある」
悠斗の気道で女性に気を纏わせたので外傷はない。
口に手を当て、呼吸しているかを確かめた。
起きない女性を心配そうに覗き込む人が・・・
「この人は大丈夫なのか?目を覚まさないようだが?」
「俺が助ける前、荷台の中で気を失っていたみたいです。
とりあえず呼吸もしていますし、外傷もないようなので一安心ですね」
心配していた人達も安堵の息を漏らす。
「それにしても君はすごいな?まだ若いのに勇気があるよ」
商人だろうか?荷物を背負った男が悠斗を褒める。
「いえ、たまたま通りがかった時の出来事ですから・・・」
「ははは、謙遜する事はないよ?君はこの人を助けただけじゃなく
この街道を行き交う人達も助けたんだからなー」
その男の言葉に集まっていた人達が一斉に悠斗を褒める。
悠斗は多くの人達に褒められ照れていると・・・
「ちょっ、ちょっと・・・はぁ、はぁはぁ・・・ユ、ユウト」
両手を膝に着き、息を切らせているイリアが声をかけてきた。
「あっ、イリア!とりあえず何とかなったよ」
イリアは悠斗にもたれかかるように肩を掴む。
「そ、そう・・・ぶ・・・じ・・・だったのね?」
悠斗はアイテムバッグから水を取り出すとイリアに渡した。
「これでも飲んで、ちょっと落ち着けよ」
水を渡されると、ものすごい勢いで水を飲んでいく。
「ゴキュ、ゴキュ・ゴキュ・・・ぷっはぁぁー!!」
「あははは、お疲れさん!」
水で濡れた口の回りを腕で拭うと・・・
「ユウト!貴方走るの速すぎ!!どんだけ速いのよっ!」
足が速い事に文句を言い始めたイリアだが
たくさんの人達に囲まれている事に今更気づき怒気が失せる。
「おお~・・・ダークエルフだ!始めて見た」
多くの人達がイリアを凝視している。
悠斗達を取り囲んでいた輪が少しずつ縮まっていく。
イリアは悠斗の後ろに隠れると・・・
「ユ、ユウト・・・」
イリアが少し怯え始めたので悠斗は皆に声をかけた。
「えっとー。この人は俺の友達のダークエルフでイリアって言うんだ。
珍しいかもしれないが、もうちょっと離れてくれないかなー?
イリアが怖がってるからさ。頼むよ」
集まっていた人達は無意識に距離を縮めていたようで
慌てて後ろに下がっていく。
「あ、ああ、すまない。俺はダークエルフを初めて見たもので・・・
そ、その~・・・つ、ついな」
皆も一斉に頷くと、各々謝ってきた。
「もう大丈夫だよ?」
悠斗は背中にしがみついているイリアに小声で言うと・・・
腕の力を抜き、悠斗の背中から離れた。
イリアは悠斗を見ると、顎で「クイクイッ」っと、促してくる。
「あ、あの・・・き、気を遣わせてしまって、すみませんでした」
頭を深く下げ謝罪すると・・・
「いや~ね~貴女が悪い訳じゃないんだから、謝る事ないわよ♪
これだから男ってヤツはね~♪」
行商人の女性が、集まった男達を見渡しながら言う。
「そうよね♪こんなむさ苦しい男どもに囲まれちゃ~ね~♪」
集まってきた女性達のおかげで、イリアも笑顔に戻っていた。
男達はたじたじになってしまい、乾いた笑いで誤魔化していた。
賑やかに皆が話していた時、悠斗は大破した馬車に視線を移すと・・・
「あー、皆さんすみません。あのままじゃー通行の邪魔になりますので
ちょっと片付けてきますね」
悠斗は大破した馬車を指差すとイリアに声をかけた。
「イリア、悪いんだけどさ、この人の事を見ててくれないかな?」
「え、ええ、いいわよ?私が見ているから行ってきて♪」
「じゃ~頼むよ」
悠斗がそう言いながら大破した馬車に駆けていく。
駆け出した悠斗をイリアが見つめていると・・・
「ねぇ、貴女?あの人の彼女さんかしら?」
その女性の言葉に、他の女性達がその話に食いついてきた。
「い、いえ・・・わ、私は・・・た、ただの友達・・・です」
顔を赤くしながら俯いてしまうイリアの初々しい姿を見ると
一斉に女性達が群がってきた。
色々と根掘り葉掘り聞かれて戸惑うイリアの姿は
男連中からも熱い眼差しが送られていた。
「いいなー。あのダークエルフ!すげー美人じゃねぇーかー!」
「だろ?俺なんてもう目が離せねーしよー」
ゲスな会話をしていたが、イリアには女性達の声で届かなかった。
女同士の賑わいの中、ふと・・・イリアの背後から冷たい声が聞こえてきた。
「貴女達・・・邪魔しないでくれる?仕事増えちゃったじゃない」
背後から聞こえる声に振り返ると、すでにその女は消えていた。
その冷たい声が、イリアの頭の中で何度も繰り返されていた。
ラウル ・・・ 今回長かったね?
ミスティ ・・・ 原作者の力量の問題でしょうか?
ラウル ・・・ あまり言うと、出番なくなるからその辺で・・・w
ミスティ ・・・ ふふふ♪それもそうですわね♪
ラウル ・・・ だがしかーしっ!僕の出番を増やせー!!
ミスティ ・・・ その前に、仕事してくださいな。
ラウル ・・・ はーい・・・orz
ってなことで、緋色火花でした。




