閑話・冥界・荒ぶる神と鬼神・後編
お疲れ様です。
試験を明日に控える中、
諦め半分な緋色で御座います><
突然試験を受けるようにと言われてからの1カ月半・・・。
そりゃ~もう地獄でした^^;
趣味がほとんど出来ず仕事に追われる日々・・・
ん~・・・緋色の苦労は報われるのかっ!?
まぁ~結果が出るまで1カ月くらいだったかな?
それまで落ち着かないかもw
さて今回は前回に引き続き後編となっております。
ただ・・・。
ツイッターにも書きましたが、
文字数が多いので御覚悟を・・・w
それでは、閑話後編をお楽しみ下さい。
ズタボロのフードから覗かせるその顔を見た『須差之男』は、
盛大に顔を引き攣らせ『ぐぅぅぅ』っと、唸り声を挙げていた。
「・・・で?『須差之男』
お前・・・色々とご満悦に語ってくれていたようだが、
そこんところの話・・・もう少し詳しく聞かせてもらおうか?」
『須差之男』に向けて真っ直ぐ伸ばされた指先・・・。
その『男』の伸ばされた指先からは、
『シュゥゥゥゥ』っと赤銅色の気が揺らめき立っていた。
『ジリジリ』と後ろに下がる『須差之男』に、
その男はより一層厳しい視線を向けると、
下がり始めたその足でさえも・・・『ピタリ』と止まってしまった。
「・・・お前、動くなよ?」
金縛りにでもあったのだろうか?
『須差之男』はその男の言葉に無言を貫いていたが、
実際のところ・・・
恐怖で『神』であるはずの『須差之男』が、
『ピクリ』とも身体を動かす事が出来なくなっていた。
(か、身体がっ!?バカなっ!?
一体これはどうなっているっ!?
お、俺様は『神』だぞっ!?
どういう事なのだっ!?)
(・・・フっ。
暫くそこで己の弱さを味わえ)
それを確認し終えたその男は、
後方でただ唖然としている『ボイド』にフード越しの横顔を見せた。
「・・・大丈夫そうだな?」
そう呟くその男の声はとても・・・『慈愛』に満ちており、
茫然と突っ立っている『ボイド』は、
ただ・・・『はい』と答えるのがやっとだった。
「問題は・・・女の方か?」
そう言いながら男は、
身体を硬直させ固まっている『須差之男』の横を難なく通り過ぎ、
血の気が失せ、その顔に『チアノーゼ』が出ている事を確認すると、
空間に出現した『葛籠』へと無造作に手を突っ込んだ。
そして『パルサー』の千切れた足を見た時、
傷口が異常な速度で壊死して行くのが見て取れると、
その男の眉間にきつく皺を寄せた。
「・・・おい、しっかりしろっ!
こいつは・・・ひどいな?
おいっ!意識をしっかり持てっ!
ちっ!間に合うかっ!?」
そう言って『パルサー』を励ましつつ、
葛籠から手を抜くと、
その指先には『赤い錠剤』が摘ままれていた。
男は『パルサー』の頭側へと移動すると、
うつ伏せだったところを仰向けにし、
そのまま上半身を起こし自分の方へと抱き寄せた。
「おい、これを飲め・・・」
だが意識が消失しかけていた『パルサー』からの返答はなく、
ただ、『ブルブル』と震える手で、男の手を掴もうとしていた。
「あぁ・・・あぁ・・・ゴホッ!」
「・・・意識が混濁してやがる・・・。
この錠剤だけじゃ・・・手遅れになるな?
やっぱり『アレ』を無理矢理にでも飲ませるしか・・・」
男は『パルサー』の口の中にその『赤い錠剤』を押し込むと、
再び葛籠を出現させ、『赤い液体が入った瓶』を取り出した。
「お前達にはちょいとキツいかもしれねーが、
我慢して飲めよ?」
そう言いながら虚ろな目になっている『パルサー』に微笑むと、
意識を消失しかけている『パルサー』が、
何故か微笑み返して来た事に笑みを浮かべ、
男はゆっくりとその『赤い液体』を口の中へ流し込んでいった・・・。
「・・・耐えるんだぞ?」
そう言いながらその『赤い液体』を飲ませて行くが、
何度か『ゴフっ』と咽返すも、
男は構わず無理矢理に口の中へと流し込んでいった。
そしてその『赤い液体』を全て流し終えると、
後ろから『パルサー』を抱きかかえたまま様子を伺っていた。
(・・・『須差之男』が千切り取った足から何かを流し込み、
彼女達の特性である・・・
再生能力が使えないようにしているようだからな?
これを中和するには、この薬を使用するしかなかったんだ。
・・・すまないな?)
男の腕の中でぐったりする『パルサー』を見つめつつも、
その真剣な眼差しを少しも逸らす事はなかった。
それから少しすると、その『薬』による効果が表れ始め、
男の表情に『安堵』が見て取れた。
「ふぅ~・・・これで何とかなったな?
だが直ぐに次が来る・・・。
あいつの手を借りるか?」
額の汗を拭うような仕草をして見せたその男は、
今度は未だに茫然としている『ボイド』に声をかけた。
「おーい、お前もこっちに来い」
その男の言葉に『ボイド』は一瞬『須差之男』を見たが、
男から『問題ないから来い』と告げられ、
警戒しながらも『須差之男』の横を通り過ぎて行った。
(ほ、本当に・・・?)
背後で硬直している『須差之男』に心が警鐘を鳴らすも、
『ボイド』はその警鐘を無視する決め、その男の元へと辿り着いた。
すると『お前もこれを飲め』と言われ、
疑う事もなくその『赤い錠剤』を飲み込むと、
男の腕の中でぐったりしている『姉』を心配そうに見つめていた。
(フフっ・・・いい『姉弟』だな?)
心配する『弟』見ていた男は、心の中でそんな感想を抱くと、
視線は直ぐにぐったりする『姉』へと向けたのだった。
『ボイド』が『赤い錠剤』を飲み込んでから、
およそ10分ほど経過した頃だった・・・。
その男の腕の中に居た『パルサー』が突然苦しみ始めた。
「うがっ・・・がっがっがぁぁぁ!」
男の腕の中で藻掻き苦しみ出すと、再び地面に寝かせ、
その男は『パルサー』の千切れた大腿部を指差し、
『早く押さえろっ!』と声を荒げ指示を出した。
「えっ!?あ、足をっ!?」
「早くしろっ!」
「は、はいっ!」
『ボイド』はそう指示され慌てて大腿部を押さえ、
心配し見つめる中、男は暴れ回る『姉』の背後で、
必死に『姉』を暴れないよう押さえていた。
「あ、あんたっ!ほ、本当に大丈夫なのかよっ!?
姉貴に何かあったらっ!ただじゃ・・・」
食い入るような目で『ボイド』はその男を睨みつけるも、
その男は『心配するな、まぁ~、見てろ』と冷静にそう言った。
「くっ!ほ、本当かよっ!?」
そう悪態付きながらも『ボイド』とその男は、
必死に『パルサー』の身体を押さえていると、
突然何事もなかったかのように・・・その動きを『ピタリ』と止めた。
「ふぅ~・・・これで良しっ!」
そう言いながら男は安堵の息を漏らすと『パルサー』から離れ、
『ボイド』に『少し離れてろ』と告げてきた。
「あ、あぁ・・・わ、わかった」
『ボイド』は言われるがまま男の言う通り『姉』から離れると、
『そろそろだな?』と呟きながら笑みを浮かべる男に、
『ボイド』はいつでも襲い掛かれるよう身構えていた。
(ほ、本当に大丈夫なのかよっ!?
こ、この男・・・助けてはくれたが・・・
信用していいものかどうか・・・
だがもし・・・姉貴に何かあったら・・・
こいつは俺の命に代えても・・・必ず殺すっ!)
不審がる『ボイド』を他所に、
突然『パルサー』の身体が『赤く』光り始めると、
『ボイド』はその眩しさに顔を背けた。
(こ、この『赤い光』は何だっ!?
あ、姉貴は今どうなってっ!?)
『姉』である『パルサー』が気にかかるが、
この『赤い光』が収まるまではどうにもならなかった。
そしてその『赤い光』が消えた頃、
急ぎ視線を向けた『ボイド』が目にしたのは・・・
両足が元通りに復元された『姉』が静かに横たわっていた。
(ほ、本当に・・・な、治ったのか?
嘘みたいな事が・・・)
男を見ながら『ボイド』がそんな感想を抱き、
フードから見える口元が笑みを浮かべているのを確認すると・・・
(一体・・・こいつは何者なんだ?
それに俺達の事を頼まれたって言ってなかったか?)
再びそう感想を抱きつつも、
今は『姉』が目を覚ます事を祈る他なかった。
それから少し遅れる事・・・2分。
突然横たわる『パルサー』の目が何の前触れもなく開いた。
「あ、姉貴っ!」
「・・・んっ?・・・ボ、ボイド?
一体何が・・・?」
「あ、あぁ~・・・俺だよっ!
目が覚めたんだなっ!?」
「わ、私は・・・一体・・・?」
『クラクラ』する頭を振りながら『パルサー』が身体を起こすと、
その目の前には・・・
何故か微動駄にしない『須差之男』の姿があった。
「す、須差之男っ!?ちっ!」
舌打ちしつつ『パルサー』は飛び上がり空中で一回転し着地すると、
背中を向けたまま動かない『須差之男』に違和感を感じた。
「・・・どうして動かないのよ?」
そう呟きながら首を少し傾げて見せると、
状況を説明する為、
『ボイド』が苦笑しながら『姉』の元へと歩き始め、
身振り手振りを駆使しながら、不思議がる『姉』に説明していった。
「・・・えっ!?
あ、あっ!そうかっ!?
わ、私・・・途中で気を失って・・・」
「ははは・・・ま、まぁ~姉貴は気を失っていたからな?
それに・・・」
『ボイド』がそう言い始めると、
『パルサー』は両足が元に戻っている事に驚いていた。
「えっ?・・・えっ!?
わ、私の・・・足がっ!い、いつの間にっ!?」
『ボイド』が隣で『ははは』と苦笑しながら、
再び説明の続きをしていった。
『ボイド』の説明が終わりフードの男を指差すと、
『パルサー』は一目散にフードの男の元へと駆け寄り、
そのまま片膝を着き頭を下げ『礼』を述べていった。
(ははは・・・高飛車な姉貴が自ら頭を下げる姿なんて・・・
初めて見るんだが・・・?
明日は・・・大雨でも降るんじゃないだろうな~?
姉貴・・・勘弁してくれよな~?)
そんな『姉』の様子を見ながら『ボイド』もまた、
その『姉』と同じように『礼』を述べていくのだった。
『礼』を聞き終えた男は苦笑しているようだったが、
話を聞き終えるとその視線を再び・・・『須差之男』へと向けた。
『姉弟』をその場に残し男は再び『須差之男』の前へ立つと、
指を『パチンっ!』と鳴らし解放した。
「うがっ!はぁ、はぁ、はぁ・・・
き、貴様・・・お、俺様に一体何をしやがったっ!」
『須差之男』のその言葉にフードの男の口元が再び笑うと、
その被ったままのフードを取りながら鋭い眼光を向けた。
「何も不思議がる事じゃないだろ?
俺はただ・・・お前を睨んだだけ・・・だぜ?」
「・・・に、睨んだだけ・・・だとっ!?」
「あぁ・・・ただ、それだけだ」
「うぐぐぐ・・・」
悔しがる『須差之男』を他所に、
フードを取った男はその視線を一度・・・
ただ傍観する事しか出来なかった『姉弟』へと向けた。
すると突然『姉』である『パルサー』の表情が変わると、
勢いよく立ち上がったかと思えば、
スピード自慢であるはずの『ボイド』を上回る速度で、
『須差之男』の少し後ろで片膝を着き頭を垂れながら口を開いた。
「は、初めてお目に掛かりますっ!
私の名は『パルサー』しがない『ヴァンパイヤ』で御座います。
『絶様っ!』以後、お見知り置きを・・・」
『ボイド』が呆気に捕らわれている中、
『姉』が言った『名』に、思考回路が追い付いて行かなかった。
「・・・はっ?はぁぁっ!?はぁぁぁぁぁっ!?
ぜ・・・『絶』って・・・あ、あの・・・っ!?
き・・・『鬼神・絶様ーっ!?』
う、嘘だろうーっ!?」
そして『ボイド』の思考回路が追い付くと、
『姉』が話しを始める前にすぐさまその隣に片膝を着き、
同じように頭を垂れていくのだった。
「ははは・・・あぁ~・・・バレてしまったな~?
まぁ~勢いに任せてフードを取ったから・・・
ま、まぁ~当然と言えば当然なんだが~
でも俺の顔を知られているとはね~?
人間体の意味・・・なかったな?」
苦々しい顔を見せながら、『絶』が笑っていると、
正面に立って居る『須差之男』が、
怒りにその顔を真っ赤にし睨みつけていた。
「・・・ぜ、絶・・・どうして此処に?」
「んあ?さっきそれは説明しただろ?
本当にお前・・・頭悪いな?」
「・・・ぬぬぬぬぬぬっ!
貴様・・・言わせておけばっ!」
「・・・ほう~?
俺と・・・殺り合うのか?」
そう言った『絶』の身体から『赤銅色』の気が溢れ出ると、
その『気の濃さ』に『須差之男』の顏は強張っていた。
何故なら・・・。
『絶』のその表情は、まさに『鬼神』の如き形相で、
それを目にしていた『姉弟』までも、
余りの恐怖に大量の汗を流しその場から動けないでいた。
そして動けない中でも『姉弟』は念話で会話をしていた。
(あ、姉貴っ!?や、やはりこの御方がっ!?)
(あぁ~・・・そうよっ!
こ、この御方があの・・・『鬼神・絶様』よっ!)
(ほ、本当に・・・『絶様』って存在してたのかよっ!?
お、俺はてっきり物語の中の御方とばかり・・・)
(そ、そんな訳ないでしょっ!?
ほんっとにあんたって子はっ!)
(か、母ちゃん・・・かよ?)
と、そんな会話をしていたのだった。
そして再び睨み合う『鬼神・絶』と『須差之男』。
だが睨み合うも『絶』のその圧力に、
力の差は歴然だった。
すると『絶』は突然にやっと笑みを浮かべると、
楽し気にこんな事を言い始めた。
「なぁ~『荒神』~・・・。
久しぶりに軽く手合わせでもしようか?」
「なっ!?て、手合わせ・・・だとっ!?
な、何を突然っ!?」
慌てる『須差之男』のこめかみ辺りから、
『ツゥ~』っと汗が滴り落ちて行った・・・。
その様子を見た『絶』は『・・・フっ』と笑みを浮かべると、
『どうせ・・・殺り合うんだろ?』と、
縦に割れた『絶』の瞳が、妖しく光っていた。
「ぐぬぬぬぬぬ・・・」
そう呻いていたがふと・・・『須差之男』はこんな事を考えていた。
(いや、待て・・・。
今現在の俺様の力量と比べる事が出来れば、
『アレ』を手に入れた時の力量差がわかるかもしれねーな?
ならば・・・ここは・・・)
そう考えた『須差之男』は一瞬ニヤりと笑みを浮かべると、
『絶』に『いいぜ・・・』と返答したのだった。
(ほう~?これは何かあるな?)
そう感じ取った『絶』もまたニヤりと笑みを返すと、
『姉弟』に『結界を張るから下がれ』と命じ、
2人は一度頭を下げ『はっ!』と『礼』を取ると、
『絶』が張る『結界の外』へと移動して行った・・・。
~ 結 界 内 ~
『結界』を張り終えた『絶』がある程度の距離を取ると、
お互いに向き合いながら『これは手合わせだからな?』と告げ、
頭を下げ『礼』を取って見せた。
その『礼』に習い『須差之男』も『礼』をすると、
2人は静かに構えを取っていった。
『絶』は楽し気に『じゃ~まずは軽く行くぜ?』と告げると、
『どこからでも来い』と、『須差之男』は冷静に返答した。
「・・・はぁっ!」
「ぬわぁぁぁっ!」
互いの声が結界内で響き渡る・・・。
そしてその2人が衝突した瞬間・・・
結界内の大地は砕け、その衝突の激しさを物語っていた。
それを結界の外から見ていた『ボイド』が、
唖然としつつも声を挙げた。
「なっ!?しょ、衝突しただけだろっ!?
それだけでこんなにも冥界の大地が砕けるのかよっ!?」
「何バカな事を言ってんだいっ!?
あの2人は『鬼神』と『荒神』なのよ?
それに『絶様』は『・・・軽く』とおっしゃっていたわ。
つまり、『軽く』ぶつかった程度でも、
この理不尽に硬い冥界の大地ですら・・・
こうなるって事なのよ」
「ははは・・・お、俺達・・・
そんな『須差之男』に喧嘩・・・を?」
「・・・まぁ~ね。
でも・・・あの時は逃げると言う選択肢なんて、
有る訳がないわ・・・。
そう・・・私達の・・・『ヴァンパイア』のプライドに賭けてね」
「・・・だな」
『姉弟』がそんな感想を抱く中、
結界内の『鬼神』と『荒神』の戦いが激しさを増していた。
「ぬおぉぉぉぉぉぉぉっ!」
「はぁぁっ!」
互いの気合いの入った声が響き渡り、
大地は抉れ突風が吹き荒れ・・・
その戦いの激しさがどんどん増していった。
『スタっ』と距離を取り着地した『鬼神』と『荒神』・・・。
『絶』は『スゥ~』とゆっくり呼吸する中、
『須差之男』は既に『ぜぇぜぇ』と息を荒げていた。
(ぐぬぬぬぬぬ・・・。
お、俺様と絶の力量の差が・・・
こ、これほどとはな~?
だがしかし、今の俺様には・・・『冥府の・・・』)
汗を滲ませ荒れる呼吸・・・。
『須差之男』の身体からは大量の汗が噴き出していた。
それに対し呼吸も乱れていない『絶』は・・・。
(うむ・・・。
あのバカ・・・全然修練をしていないみたいだな?
『悠斗』の爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいが、
そう言えばあいつ・・・今、こっちに居るんだったな?)
そう考えながら『絶』は『須差之男』の出方を持つが、
その『荒神』の表情から笑みが漏れている事に気付いた。
(・・・あいつ、一体何を考えて?)
そう考えた時だった・・・。
『須差之男』の発する『銀色の神力』が突然・・・
『青紫の神力』に変わったのだった。
「あ、あれって・・・まさかっ!?」
「ぬぅおぉぉぉぉぉぉぉっ!
喰らえーっ!『冥府の闇の神力』をーっ!」
『青紫の神力』で出来た球を、
『須差之男』は『絶』に向けて放った。
「やはりなっ!」
そう言いながら『青紫の神力』を躱したのだが、
その『球』は方向を変え、『絶』を追尾し始めるのだった。
「まぁ~これくらいは予想していたけどな?」
笑みを浮かべその『球』を躱し続ける『絶』に、
『須差之男』は『ぐぬぬぬぬ』と悔し気にしていると、
『当たりさえすればっ!』と呻いて見せた。
その声が聞こえた『絶』は、
『当たりさえすればって・・・』と苦笑すると、
突然躱すのを止め、その場で動きを止めた。
『ドォーンっ!』
「ぜ、絶様ぁぁぁぁぁっ!」
「ど、どうして動きをっ!?」
『姉弟』がそう叫ぶ中、
結界内の『須差之男』は得意気に『ぐはははははっ!』と、
高らかに声を挙げ笑っていた。
そして結界の外で叫ぶ『姉弟』を『ジロリ』と睨みつけると、
『次は貴様らだ・・・』と言葉を吐き捨てたのだった。
「お、おのれ・・・『荒神ーっ!』
よくも・・・『絶様』をーっ!」
怒りに燃えた『パルサー』が、
『ワナワナ』と震えながら立ち上がると、
その身体から『真紅の妖気』が『シュバっ!』と吹き上げ、
その握り締められた拳からは、
『ゆらゆら』と『真紅の妖気』が揺らめいてた。
「ほう~・・・?
『パルサー』いつの間にランクを上げたのだ?」
「・・・えっ?」
「あ、姉貴・・・?
な、何だよ・・・その、ち、力は・・・?」
不思議そうに『姉』を見上げる『ボイド』の目は、
驚きに満ちていたのだった。
『あんた・・・こんな時に何を言って?』と、
戸惑う声を挙げながら『パルサー』は自分の拳に視線を向けた。
「・・・えっ?こ、これ・・・何っ!?」
「い、いや・・・俺に聞かれてもな?
その力は姉貴の力じゃないのか?」
「い、いや・・・こ、こんな力・・・
わ、私に在る訳が・・・」
『真紅の妖気』が集まったその拳の周りに渦が生じ、
明らかにその威力が数段跳ね上がっている事が予想出来た。
覚えのない『力」に『姉弟』が動揺して見せていると、
その『力』に興味を持った『須差之男』が声を上げようとした・・・
「ぐははははっ!その力・・・この俺様が試して・・・」
『須差之男』がそう言い始めると、その背後から突然・・・
『お前、誰と話してんだよ?』と声が挙がった。
「なっ、何故・・・い、生きて・・・」
呻くように『須差之男』がそう言うと、
『ブルブル』と震えながらゆっくり・・・振り返った。
そこには『パンっ!パンっ!』と、
砂埃りを払う『絶』が無傷で立って居たのだった。
「ぜ、絶様っ!?」
「絶様ーっ!」
歓喜の声を上げる『姉弟』に一度目をやると、
『絶』は落胆しながら『この程度か?』と口にした。
「こ、この・・・て、程度だとっ!?」
「・・・あぁ」
そう言うと一歩前へと踏み出した『絶』に、
『な、何故だっ!?』と狼狽える『須差之男』が声を挙げた。
「・・・さっき『パルサー』の傷口を見たからな~?
恐らくお前のとっておきは・・・
『冥府の神力』じゃないかと思ってな?」
「み、見た・・・だけでっ!?
一度あの女の傷口を見ただけでっ!
『冥府の神力』だと、わかったと言うのかっ!?」
「あぁ~・・・勿論だ。
それくらいわかって・・・当然だろ?
おい、『荒神』・・・。
お前、俺を誰だと思ってる?」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬっ!」
圧倒的な『絶』の実力を前に、
成す統べなく膝から崩れ落ちる『荒神』の姿がここにあった。
崩れ落ちる『荒神』の姿を見た『絶』は、
『さて、こいつをどうするかだな?』と思案していると・・・
『そこまでだ・・・我が友『絶』よ』と、突然声が響いて来た。
その声に『絶』は『はぁ~』っと溜息を吐くと、
その声の主に向かって声を挙げた。
「いいのか?こいつを野放しにして?」
「・・・今は良い」
その短い声に『絶』は『・・・そうかよ』っと、
どこか不満気ではあったが、
崩れ落ち放心している『須差之男』の横を通り過ぎ、
『姉弟』の元へと向かって行った・・・。
そして通り過ぎる際・・・。
『絶』は『須差之男』にこう告げた。
『・・・次はないからな?』・・・と。
その言葉が耳に届いた『須差之男』は、
『うぐっ!』と悔しそうに唇を噛み、その血が滴り落ちていた。
すると声の主が崩れ落ち放心している『須差之男』にこう告げた。
『うぬ・・・去ね』
そう告げられた『須差之男』はその両拳を地面に叩き着けると、
暫くした後・・・『ヨロヨロ』とふら付きながら、
この冥界から姿を消して行った・・・。
そしてその去り際に・・・。
(ま、まぁ~今は・・・よい・・・。
『アレ』を手に入れる事が出来れば・・・
俺様は『鬼神・絶』を越える力を得られる・・・。
その為には『冥府の義眼』を与えられし女に、
『力』をつけてもらわぬとな~・・・)
振り返った『須佐之男』は荒廃する冥界の大地を見渡すと、
『野心』に満ちた笑みを浮かべるのだった・・・。
そして・・・。
『俺様は必ず戻って来る』と言葉を残し、
『荒神』と謳われた『須差之男』は消息を絶ったのだった。
~ 後 日 談 ~
『姉弟』の窮地を救った『鬼神・絶』は、
今・・・。
ある事に悩まされていた。
それは・・・。
「絶様~っ!絶様~っ♪お待ちになって下さ~いっ♪」
「・・・うげっ!?
ま、またあの女かっ!?
あれから毎日毎日・・・よくもまぁ~飽きずにっ!」
「絶様ーっ!って・・・あれ?
・・・絶様は?」
あれから『パルサー』が毎日『とある屋敷』に通い詰めると、
窮地を救った『絶』に惚れ込み、追いかけ回していたのだった。
そして『とある屋敷』の角を曲がった辺りで、
『愛しき鬼神』の姿を見失ってしまったのだった・・・。
するとある視線に『パルサー』が気付いた。
「ねぇ、あんた・・・
こんな所で座り込んで・・・一体何をしているのよ?」
『はぁ~』っと大袈裟に溜息を吐いたのは『パルサー』の『弟』、
『ボイド』だった・・・。
「な、何をって・・・姉貴~?
あれから毎日毎日『絶様』を追いかけ回して、
何がそんなに楽しいんだよ?
俺・・・姉貴の弟として、頭抱えるくらい恥ずかしいんだが?」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?
あんた・・・姉に対してその言い草っ!
万死に値するわよっ!?」
「何でだよっ!?そんな事で殺されてたまるかよっ!」
「せっっっっかくあのっ!『伝説の鬼神・絶様』に会えたのよっ!?
こ、これはもう・・・う、運命としか思えないわっ!」
「・・・思えねーよ」
「・・・はぁ?」
拳を『バキボキ』と鳴らす『姉』を前に、
『ボイド』は(『絶様』を追いかけ回す同じ女とは思えないな?)と、
苦々しい表情を浮かべながらそう思っていた。
「こんな姉の姿・・・。
俺は見たくなかったぜ・・・」
「・・・あんた、今、何か言った?」
そして『はぁ~』っと、今日何度目かの溜息を吐いた時、
『あっ、そうだ・・・』と口を開いた『パルサー』が訪ねて来た。
「あんたの事は別にどうでもいいんだけど・・・。
ところであんた・・・。
私の愛する『絶様』知らない?」
「・・・はい?」
「だからっ!私の愛する『絶様』よっ!
知っているのなら、さっさと答えなっ!さっさとさっ!」
「・・・え、えっと~」
歯切れ悪くそう『ブツブツ』言い始めた『ボイド』に、
『パルサー』が痺れを切らすと・・・。
『もういいっ!このロクデナシっ!』と言葉を吐き捨て、
光の速さでその場から消え失せたのだった。
「ロ、ロクデナシって・・・ひ、ひでぇ~言われようなんだが?」
それを見届けた『ボイド』が上に視線を向けると、
『もういいですよ』と呟くように声を挙げた。
「い、行ったか?」
「・・・はい、何処かへすっ飛んで行きましたよ」
「そ、そうか・・・?す、すまないな?」
そう上から言葉が返って来ると、
屋敷内に生えている樹木の影から辺りを気にするように、
『絶』がその顔を覗かせていた。
樹木から飛び降りた『絶』は、
『ふぅ~』っと疲れた表情を浮かべながら溜息を吐くと、
『ボイド』に『・・・ご苦労様です』と慰められ、
その逞しい肩を落とすのだった。
「あ、あぁ・・・ほ、本当にな?
しかしお前の『姉』・・・こう言ったら何だが?
・・・凄まじいな?」
「あは・・・ははは・・・」
「こうも毎日毎日突撃されると、
流石の俺も生きた心地が・・・な?」
「ですよね~?
俺もまさかあの・・・
『傲慢で高飛車で暴力的で男なんてクズ扱い』のあの姉が、
まさか『デレ』まくって『狂気』と化している姿をこの目で・・・
あはは・・・『悪夢』としか言いようがない・・・。
これはもう・・・」
呆れ返った表情を浮かべながらそう愚痴り始めた『ボイド』は、
『絶』に対しジト目を向けたのだった。
「・・・ん?なっ、何だ・・・?」
「責任・・・取ってあげて下さいね?」
「・・・はぁっ!?な、何でだよっ!?」
「だって・・・アレ・・・手遅れでしょ?」
「・・・うぐっ。てっ、ててて手遅れとかその・・・
い、言われてもだな~?
惚れられる理由が俺にはわからんのだっ!」
「・・・まじっスかっ!?」
「お、おう・・・ま、まじだ」
「・・・やれやれ」
『絶』はそう話し終えその場を立ち去ろうとした時だった・・・。
『・・・そう言えば』と、
足を止め後ろに居る『ボイド』に声をかけた・・・。
「『絶様』・・・どうかされましたか?」
「いや、お前達『姉弟』は今回の一件で、
『ギャル子』に色々と説教されたらしいな?」
「は、はぁ・・・。ま、まぁ~そうなんですけど・・・。
でも相手はあの『荒神』ですからね~?
基本的に逆らう訳にも行きませんし、
今回の場合はあの『お嬢ちゃん』の為と言われたんで、
俺達はその言葉を信じたのですが・・・」
そう言って『ボイド』は溜息を吐きながら、
『黒蝶』の顔を思い出していた。
「まぁ~お前達は『ギャル子』の部下だからな?
今後は気をつけるしかないんだが、
相手が『万年反抗期の神』ってのが・・・な?」
「・・・・・」
言葉なく項垂れる『ボイド』に『絶』は困った表情を浮かべると、
『白い魔石』を取り出しそれを『ボイド』に手渡した。
「・・・これは?」
「緊急用の魔石だ・・・。
またあの『万年反抗期』が絡んで来たら、
それを使って連絡しろ・・・」
「・・・よ、宜しいの・・・ですが?」
「・・・特別だぞ?」
「・・・了解ですっ!」
そして再び『絶』がその場を立ち去ろうとすると、
『あっ』と声を挙げ、再びその足を止めた・・・。
「いいか・・・『ボイド』?
くれぐれもっ!お前の『姉』には・・・
その魔石の事を内緒にしておけよ?」
「・・・ら、らじゃ~ス」
そう言い終えた絶は、
疲れ切った表情を浮かべつつも『気配遮断』を使用し、
最大限の警戒をしながら『とある屋敷』へと戻って行くのだった・・・。
そんな絶の姿を見た『ボイド』は苦笑すると・・・
「あの人がこの冥界をたった1人で救った『伝説の鬼神』とはな~?
まさか『神話の中の人』にこんな形で出会えるなんて、
人生って何が起こるかわかんね~ぜ・・・。
まぁ~『姉』でなくても『運命』ってヤツは感じるけど・・・な。
でもまぁ~・・・
その威厳や戦闘力とは比例せず『女心』に関しては・・・
・・・う~ん・・・。だめだこりゃ・・・
多少は『姉』に同情するぜ」
こうして『絶』は訪れた『冥界の地』で、
休息する間もなく『自称・愛の狩人』と化した『パルサー』に、
『ストーキング』される日々を送る事になったのだった・・・。
『・・・か、勘弁してくれぇぇぇっ!』
ってな事で・・・。
皆様、後編はいかがだったでしょうか?
ん?長いって・・・?
そ、それは大変申し訳御座いませんでした。
しかしそれはそう言う『仕様』となっておりますのでw
今回『外伝・日本編』にも色々と伏線が御座います。
後々必ず回収しますので、お見逃しなく^^
それと共に・・・。
登録や感想なども頂けたら幸いです^^
ってなことで、緋色火花でした。




