16話・日本・密偵
お疲れ様です。
最近『社畜の階段』から、
いつの間にか『社畜のエスカレーター』に乗り替わっていた、
緋色で御座いますorz
皆さん今回来た台風の影響はどうでしたか?
何事もなければいいのですが・・・。
緋色は『社畜』な事以外、大丈夫でした^^
さて今回の話ですが・・・。
合流した『戒斗達』の作戦がスタートします。
何事もなければよいのですが・・・。
それでは、外伝16話をお楽しみ下さい。
恥ずかしさを隠す為、直次は戒斗と修一の元へと駆け出した。
そしてそれを見つめる黒蝶はその背中を見つめながら、
再び呟いたのだった。
「・・・私には直次さん、貴方が必要なのよ」
その声は誰にも届かず、吹き抜ける風に消されて行った。
直次は2人の元へと駆け寄ると、
少し赤らめた顔を向けながら状況を説明していった。
そして説明を聞き終えた戒斗と修一は、
作戦を立てる為に『茜』の元へとやって来たのだった。
「初めまして、俺は『神野 戒斗』と言います」
「は、初めまして、わ、私は『吉川 茜』と言います」
丁寧なあいさつに面を喰らったのか、
『茜』は慌てて頭を下げながら挨拶を返したのだった。
すると戒斗は優しく笑みを浮かべると、
案内させた事への『謝罪』と道案内への『礼』を述べた。
茜はそれに対し一礼を返すと、
戒斗は『作戦会議』を行ったのだった。
「まずは直次があの寺の『探知』を行い、
その人数次第で具体的な作戦を立てようと思う」
戒斗の話に修一達は無言で頷くと、
直次が『寺』が見える場所まで移動し、
戒斗達にハンドサインで『接近します』と言う合図を送った。
どうしてインカムではなくハンドサインかと言うと・・・。
それは戒斗の一言が原因だったのだ。
『もしかしたらあの化け物は耳がいいかもしれない』
そう戒斗に言わしめたのは、村人達の惨殺現場で感じたとの事だった。
その経験から今回インカムからハンドサインに変更されたのだった。
そのハンドサインに『OK』のハンドサインを返すと、
頷いた直次は気配を消しながら、
その距離を50ⅿほどまで接近し、音もなく地面に手を着いた。
手を着いた直次は『異端人』の能力を使用し『探知』使うと、
『寺』の内部の詳細を把握して行った。
(・・・ん?これは・・・半地下なのか?
恐らく寺の仏具などを保管する場所だと思うけど・・・。
それと~・・・寺の後ろには・・・住居?
寺の人が住んでいる場所か・・・?)
眉間に皺を寄せながら直次は更に集中して行くと、
その表情が一瞬にして強張った。
(・・・これって・・・ゴブリンってヤツかっ!?
1・・・2・・・3・・・4・・・
ゴブリンは4匹居るみたいだな?
でも、ちょっと何か違和感を感じるけど・・・
ん~・・・ここが変な空間だからいつもと勝手が・・・)
そう違和感を感じながらも念の為もう一度探知を試みるが、
その違和感の正体は掴めなかった。
(・・・よし、やはり4匹で間違いない)
直次は寺の中を行ったり来たりする命を探知すると、
それが『ゴブリン』である事を断定した。
(まぁ~人質がウロチョロ出来るはずもないしね。
ん~・・・でも、何だかおかしいな?
この寺の中にはもう命の気配なんてないんだけど・・・)
そう考えた時だった。
直次の顔は一瞬にして強張ると、額に大粒の汗が吹き出したのだった。
(ま、まさか・・・人質は、全員・・・死亡っ!?)
そう頭によぎった直次は、
慌てて再び生命の気配を探し始めたのだった。
(・・・な、ないっ!ど、どこにも・・・気配がっ!?
ほ、本堂にも・・・後ろの家にもっ!
ど、どこにも・・・どこにも気配がないっ!?)
眉間にきつく寄る皺・・・。
その現状に直次が小さく『くっ!』と呻くと、
微かに・・・ほんの微かに・・・
生命の気配を感じとる事が出来たのだった。
『はっ!」とした直次は慌ててその気配を探ると、
寺の後ろの家の傍に何か反応がある事に気付いた。
(これって・・・?
何だ・・・ろ?あっ!い、井戸だっ!
井戸の後ろにまだ生きている人が居るっ!?
で、でも・・・よ、弱い・・・余り時間がっ!)
消えそうな命の気配を感じた直次は、
急ぎ戒斗達と合流した。
直次は状況を事細かく伝えると、
戒斗が険しい表情を浮かべながらも作戦を伝えていった。
「俺と修一は『寺』の左右から浸入し、
ゴブリン共を殲滅する。
そして直次はその間に『生存者』を救出しろ。
いいな?」
「・・・・・」
この時、直次は何かを言いたげではあったが、
その感情を『グっ』と堪え、戒斗の指示に頷き、
修一は頷きつつも、そんな直次を静かに見つめていた。
一通り話を終えた戒斗はその視線を茜へと向けると、
真っ直ぐ視線を向け話を切り出していった。
「・・・茜さん、ちょっといいかな?」
「は、はい・・・。
わ、私にも出来る事があれば・・・」
そう茜の口から出た言葉に戒斗はゆっくりと首を振って見せた。
「で、でも、私も何か・・・」
『何かを手伝いたい』・・・。
茜の言葉をそう受け取った戒斗だったが、
再び首を振って見せていた。
そして茜に諭すように話していった。
「茜さん・・・。
気持ちはとてもわかります。
ですが貴女に万が一の事があったら、
俺達が来た・・・意味がなくなる。
今の所、俺の知る限りだけど、生存者は貴女を合わせて3名。
そう・・・女性が3名。
現状その3名しか生存者はいない・・・
ですから・・・」
「・・・わ、わかりました」
顔を俯きながら戒斗の話に返答すると、
この場所に茜を残し木々が生い茂る場所を指差して、
身を隠すように指示を出した。
茜を残し戒斗達は作戦通り浸入を開始した。
物陰に身を潜めた直次は戒斗と修一の合図を待ったのだった。
(俺達が侵入したらすぐに戦闘が始まるだろう。
だから直次、お前はそれを感知したらすぐに動け)
そう指示を出す戒斗の作戦は、基本的にいつもとそう変わらない。
何故なら、いくら直次の能力を信じていても、
物事には『絶対』と言う事がないからだった。
過去に経験したモノを戒斗は教訓としている為、
誰が立てた作戦でも『慎重』に徹するのが第三班のルールだった。
その事に直次は多少なりとも思うところはあるようだったが、
それを戒斗へと話す事は一度もなかった。
だが今回はいつもと違った。
それは直次が命が消えかけた生存者を発見したからだった。
それが直次の不安と焦りを呼び、少なからず苛立っていた。
(い、今動いたらダメなのかっ!?
生存者は今も苦しんでいるのにっ!?
安全なマージンは必要な事はわかるけど、
でもっ!今はそんな事を言ってられないでしょっ!
僕の事を・・・僕の『力』を信じていないのかっ!?)
この時直次は、己の中に、
『暗く冷たいモノ』が『ドクっ』と脈打つのを感じた。
(こ、この感覚は・・・ま、前にっ!)
その『暗く冷たいモノ』に不安になりつつも、
戒斗の指示に苛立ちを感じた直次は、数秒ごとに苛立ちが募り、
その『脈打つモノ』が激しさを増していった・・・。
その『脈打つモノ』が不安と焦りを加速させ、直次を駆り立てて行く。
そしてその数秒が長く・・・とても長く感じられた。
(ダ、ダメだ・・・お、抑えきれないっ!
ぼ、僕はどうして今っ!こんなにもっ!)
『脈打つモノ』が直次を煽り、それが抑えられるモノではなくなった。
『グっ』と足に力が入るも、何故かこの時・・・
『ズキンっ!』と、頭が疼き視界が歪んだ。
(こ、この・・・い、痛みはっ!?)
顔を顰め冷汗を流すも、
直次の中に在る『脈打つモノ』が、強引に心へと干渉していく。
(そ、そうだ・・・。た、助けなきゃ・・・ほ、僕が・・・)
脳内に広がる痛みを振り払うように、
『悠長な事を言っている場合じゃないんだっ!』と、
『脈打つモノ』に煽られながら戒斗の指示なく飛び出した。
(ぼ、僕が助けなきゃっ!
あの人は今にも死にそうなんだっ!)
その時だった・・・。
「待ってっ!直次さんっ!」
突然直次の頭に慌てた黒蝶の声が響いて来た。
だが遅かったのだ。
踏み出したその勢いは止まらず飛び出してしまうと、
寺の後ろから『のっし、のっし』とゴブリンよりもでかい、
薄紫の肌を持った大きな化け物が直次の姿を見つけたのだった。
「んなっ!?し、しまったっ!?」
背丈は2ⅿ越えの尖った耳をしている化け物で、
その巨体からも伺えるほどの筋肉量を見せていた。
「グホッ!?」
「・・・ちっ!」
直次が舌打ちをしながら抜刀すると、
その化け物は走り出しながら空に向かって雄叫びを挙げた。
「グゥォォォォーっ!」
その雄叫びによる空気の振動が直次に届くと、
直次の右斜め前の空間に亀裂が『ピシッ!』と走った。
「な、何だ・・・これっ!?
く、空間に亀裂って・・・一体どうなってっ!?」
見慣れていないその事象に硬直した直次に、
駆け出した薄紫の化け物が急接近した。
その頃タイミング悪く、
戒斗達が浸入した寺の中からも激しい音が響いて来た。
「こ、こんなタイミングでっ!?」
集中力が散漫としてしまった直次は、
完全にパニくり眼前に迫る化け物をただ茫然と見ているだけだった。
そしてその化け物が巨大な拳を振り上げ絶体絶命のピンチの時、
直次の頭の中に再び黒蝶の声が響いて来た。
『落ち着きなさいっ!』
「あっ!?」
『ヒュっ!』と音を立てながら突然直次の目の前に黒蝶が姿を現し、
薄紫の巨大な化け物の前に躍り出た。
「させないっ!」
『バシっ!』
そう静かに声を挙げながら黒蝶は、
その化け物の振り下ろされた拳を蹴り上げ態勢を崩すと、
地面に着地したその瞬間、一足飛びでその化け物の首へと飛び、
懐より取り出した黒い扇子で、その首を薙いで見せた。
『ヒュンっ!』
黒い扇子で横薙ぎ一閃した黒蝶は、
バランスを崩す事無くその化け物の顔を踏むと、
鮮血を撒き散らしながら、その頭が地面に落ちる様を見る事もなく、
亀裂の入った空間に向かってそのまま跳躍した。
「ま、間に合ってっ!」
苦しそうな表情を浮かべつつも、黒蝶が跳躍すると、
その亀裂が走った空間が更に大きく『ピシっ!』と割れ始めた。
(くっ!か、身体が重いっ!
まだ・・・ち、力が・・・)
脂汗を浮かべていた黒蝶が空間に出来た亀裂に辿り着く前に、
その中から薄紫色の肌をした右手が『ぬぅ~』と出て来たのだった。
黒蝶は『魔道の力』が枯渇しているのにも関わらず、
空間の亀裂から出て来た腕に足を掛けると、
迷う事無く身体を捻りながら扇子で腕を薙いでいった。
『ブシャァァァ!』と薄黒い血を吹き出させながら、
薄紫色の腕は地面に『ボトリ』と落ちると、
その腕は跡形もなく『塵』に消えた。
この時、亀裂が入った空間の中から、
野太い悲鳴のような声が聞こえたが、
その声に躊躇する事無く、黒蝶は再び懐から何かの呪符を取り出し、
亀裂が入った空間に押し当てると印を結びながら、
直次が聞いた事もないような『呪言』を脂汗を流しながら唱えていった。
すると『シュゥゥゥゥゥ』っと、
まるで蒸気音のような音を響かせながら亀裂が消えて行くと、
『はぁ、はぁ』と疲れ切った表情を浮かべた黒蝶が、
懐に扇子をしまいながら、『ヨロヨロ』と直次の元へと歩いて来た。
(沙耶達との戦いがいい経験になったけど、
で、でも・・・)
苦悶に満ちた表情を浮かべる黒蝶に唖然としつつも、
その儚げな姿に直次は何かを感じたのだった。
そして黒蝶が直次の元へと辿り着くと、
『コツン』とその細い指先を・・・直次の額を小突いた。
「んなっ!?」
その小突きにダメージは全くないのだが、
直次はその出来事に額を押さえながら気の抜けた声を挙げると、
黒蝶の頬はとても膨らんでいた。
「あ、あれ・・・?こ、黒蝶・・・さん?」
「・・・貴方は一体何をやっているのですか?」
静かな口調ではあったが、
明らかに黒蝶は怒って見せていた。
「あ、あの・・・その・・・
す、すみません・・・ぼ、僕は・・・」
「焦り過ぎですっ!
もう少しで貴方は死ぬところだったのですよっ!?
それがわかっているのですかっ!?」
「い、いや・・・は、はい。で、でも・・・」
俯き悔しそうに拳を握る直次に、
黒蝶は荒れた呼吸を整えながら話していった。
「時間も余り無いでしょうから手短に話します。
先程直次さんが話していた生存者ですが、
あれはこの連中のフェイクだと思われます」
「フェ、フェイクっ!?」
「はい。ですがこれは私が仕掛けたモノではありません。
それに先程の化け物ですが・・・」
そう言いながら黒蝶は首を切断した化け物が居た場所を指差した。
「・・・えっ!?き、消えて・・・いる?
せ、鮮血までも消えているっ!?
えっ!?黒蝶さんっ!こ、これは一体・・・」
驚愕する直次がそう声を挙げると、
黒蝶は何かを考えながら少し顔を顰めて見せていた。
「私にも・・・正直わかりません。
一体誰がこんな化け物を・・・」
そう言いながらは化物の死体が消失した場所を見つめる目は、
とても厳しいモノだと直次は感じていた。
(こ、黒蝶さんが仕掛けたモノでは・・・ない?
っと、言う事は・・・やはり・・・
この空間は黒蝶さんが作り出したモノっ!?)
すると、寺の中から『ドカっ!』と言う大きい音が響き渡ると、
直次は黒蝶に向けて・・・
『バレるとまずいですっ!戻って下さいっ!』と咄嗟に告げ、
その姿を確認する事もなく、音がする方へと駆け出したのだった。
黒蝶は慌てて駆け出した直次の背中を、
虚ろな目で見ながら扇子を取り出し足元へ一振りすると、
一瞬にして、元に居た雑木林へと移動し着地した。
「・・・無茶しないでね?」
優しく微笑みながら直次の方へと視線を向けると、
黒蝶の視界が『グラっ』と歪み、
糸の切れた人形のように、力なく腰から崩れ落ちたのだった。
そして虚ろとなった黒蝶の瞳が、
地面を連なって歩く蟻を朧げに見ながら自己嫌悪していた。
「さ、流石に・・・む、無茶・・・でした・・・ね」
『魔道の力』が枯渇している黒蝶にとって、
力の枯渇がこんなにも辛いモノだと思っていなかったようだった。
木々の隙間から見える、まだ青い空を見つめながら、
先程自分が言った事に苦笑していた。
「・・・フフフ。
わ、私も・・・人の事・・・言えな・・・い・・・わね」
そして再び苦笑した黒蝶はその瞬間・・・
意識を失った。
少しの時間が過ぎ、漸く日が傾き始めた頃だった・・・
意識を消失した黒蝶の傍の空間が突然螺旋状に歪むと、
その中から音もなく何者かの右腕が現れた。
「頃合い・・・だよな?」
そう言って姿を現した男性が周りを確認しながら横たわる黒蝶を見ると、
哀し気な目を向け『ふぅ~』と溜息を吐いていた。
「このお嬢ちゃんが『冥府の義眼』を与えられた女ね~?
ちょいと手を貸してやったつもりだったが、
こりゃ~失敗失敗~っと・・・。
まさか割って入って来るとはね~。
しかしなんだね~?
あの『若作りババァ』も、どうしてこの女に・・・」
意識を失っている黒蝶の顔を覗き込みながら愚痴を言うと、
開いた空間からもう1人・・・赤いドレスを着た女が姿を現した。
「ほら、愚痴言ってないでさ~・・・
さっさとそのガキの力を回復してやんなよ?」
「えぇ~・・・もう回復させんのかよっ!?
もうちょっとこのお嬢ちゃんを眺めていてもいいだろうが?
姉貴は同性にはほんっとに厳しいよな?」
「・・・うるさいね~?
さっさとしなよっ!さっさとさっ!」
突然現れたこの2人・・・。
その顔立ちはとても似ており、双子のようだった。
そしてその姿は、そう・・・言うなれば『ヴァンパイア』
だが、今現在この空間は日暮れ間近ではあったが、
太陽の光に照らされても平然としていたのだった。
その男女の身長はおよそ190cmほどで、
肌の色は青白く口からは2本の牙が生えており、
その瞳は・・・赤く染まっていたのだった。
そして女性の方はロングの金髪でグラマラス・・・。
男性もロングの金髪で『ヒョロリ』と細いがかなりの筋肉質だった。
「・・・っと、終わったぜ~、姉貴」
男の方が何かの液体らしきモノを黒蝶の口へ流し込み終えると、
女性の方が黒蝶を突き刺すような視線を向け睨んでいた。
「フンっ!どうして私達気高い一族が、
あんな『日出国』のババァの手伝いをしなくちゃなんないのさっ!?」
「ま、まぁ~、そう言うなってっ!
俺達はあの『若作りババァ』に借りがあるんだからよ~?
それにその部下とあっちゃ~仕方がねーだろうが?」
「フンっ!うるさいわねっ!
終わったのならさっさと帰るわよっ!
だ、大体私は『密偵』なんて『ガラ』じゃないんだよっ!」
「・・・ガ、ガラじゃないって・・・
姉貴は何もしてねーだろうがっ!」
「うるさいっ!終わったのなら此処にはもう用はないんでしょっ!?
さっさと帰るわよっ!さっさとっ!」
「ヘイヘイ」
『姉貴』と呼ばれた女性が開けられた空間の中へと戻ると、
男性はその穴の『へり』に手を掛けた時、
意識を失っている黒蝶へと振り返りその顔を見つめた。
「確かこのお嬢ちゃん・・・『黒蝶』と言ったか?
まだ若いのにご苦労なこったぜ・・・。
気の毒だとは思うが、これもお前さんが選んだ道・・・
まぁ~精々頑張るこったな?
って、まぁ~俺達は『密偵』とは名ばかりのお前の『サポート』だ。
陰ながら応援してるからよ・・・。
そしてまだ安心すんじゃねーぞ?
今回の事は何も・・・
お嬢ちゃんの為に力を貸している訳じゃねーって事をな?
そしてその目的は・・・『黒蝶』・・・
あんたを試す試験だって事をな?
それじゃ~な・・・『儚い冥府の黒蝶』さんよ」
男が哀しそうな目を黒蝶へと向けながらそう言うと、
穴の中から再び白い腕が伸び、男の耳を思いっきり引っ張っていた。
「い、痛ててててててててっ!
痛てーよっ!姉貴っ!な、何すんだよっ!?
み、耳を引っ張んじゃねーよっ!」
「さっさと帰るんだよっ!このボンクラっ!」
「ひっ、引っ張るなよっ!?
わ、わかったってっ!帰るからっ!帰るからぁぁぁっ!」
慌ただしく穴の中へと消えると、その穴も音もなく消え失せたのだった。
それから5分後・・・。
「ん・・・んん・・・」
意識を取り戻した黒蝶は身体を起こすと、
『魔道の力』が回復している事に驚いているようだった。
「・・・ど、どう言う事?」
そう呟きつつ我に返った黒蝶は、
『直次さんはっ!?』と声を挙げながら立ち上がると、
白い四角形の紙を取り出し、
片手印を結びながらその紙を空へと掲げた。
するとその紙は鳥へと姿を変え黒蝶が『行けっ!』と命じると、
白い紙で出来た鳥は『寺』へと向かって飛んで行くのだった。
『どれくらい時間がっ!?
状況がわからないわ・・・。
何事もなければいいのだけど・・・』
日が傾き始め、そう呟いた黒蝶は静かに目を閉じると、
飛ばした鳥の目を利用して、状況の確認を急ぐのだった・・・。
だが、黒蝶は知らなかった・・・。
薄紫の化け物を呼び出した者に、黒蝶自身が試されていた事を・・・。
ってな事で・・・。
今回のお話はいかがだったでしょうか?
黒蝶は沙耶達との戦いで強くなったみたいですね~?
それと最後に出て来た『ヴァンパイア達』
次回から2話続けてその『ヴァンパイア達』の閑話となります。
前後編となりますので、宜しくお願いします^^
一応問題なく『前後編』のお話は完成していますので、
ご安心下さいw
それと何気に17話も完成していたりしますw
仕事で気が狂いそうになっている方が、
もしかすると問題なくアップ出来る説・・・あるかもですねw
緋色の話が面白いと思って頂けたのなら、
登録や感想そして評価を宜しくお願いします^^
ってなことで、緋色火花でした。




