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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
外伝・壱
276/408

15話・日本・真実の欠片

お疲れ様です。


仕事に勉強にフル回転の緋色で御座います><

フル回転過ぎてストレスが・・・orz


それに残暑もまだまだと言う事で・・・。

暑いの・・・苦手orz


ってな訳で、今回外伝15話です。

今回のメインは直次と黒蝶で、

最後の方で黒蝶が『ある事に・・・』触れます。


楽しく・・・って、今回楽しい話でありませんが、

今後とも宜しくお願いします^^



それでは、外伝15話をお楽しみ下さい。

「ぼ、僕の敵・・・ではない?」


「・・・はい、そうです♪」


その黒蝶の言葉に直次は『ほっ』と安堵の息を漏らした。


(えっ!?ぼ、僕はどうしてほっとしたんだ?)


その理由が何故か直次にはわからなかったのだ。

その胸の内が表情に出ていたのか・・・

黒蝶は再び『フフフ♪』と声を漏らしていた。


そう笑みを見せた黒蝶は戸惑う直次に声を掛けていった。


「私は神野一族と神に対し私怨を持っています」


「し、私怨って・・・ま、またどうしてですかっ!?」


声を挙げ驚く直次に真剣な眼差しを向ける黒蝶は軽く息を吸うと、

意を決したようにその口を開いていった。


「貴方に話すのは構いません・・・。

 それに・・・信じる信じないも直次さん・・・

 貴方にお任せ致します」


そう言って真っ直ぐな視線を直次へと向けると、

その迫力からか『ごくり』と息を飲んだのだった。



一方その頃・・・。

修一は村の入り口である合流ポイントに向かっていた。


修一はインカムのスイッチを切り替え、

戒斗へと個人回線を開き連絡を取ったのだった。


「戒斗様、聞こえますか?修一です」


「・・・あ、あぁ、聞こえるぞ」


「身体の方はどうですか?」


「あぁ・・・少しましになってきた・・・。

 ところで個人回線とはどう言う事だ?」


「・・・実は」


そう言って話を切り出した修一は、

戒斗に現状を報告し、合流ポイントへと向かっていると告げた。


「・・・わかった。

 では俺は『大介』の所で待機していればいいんだな?

 だが、合流出来たとして・・・

 また同じ空間に入れるとは限らないだろ?」


「そうですね?

 ですが直次から助言をもらったので、

 その方法を試してみようかと思っています。

 ですから、待っている間にでも水分補給をしておいて下さい」


「・・・そうか、あいつがそう言うのなら、

 何とかなるかもしれないな?

 ・・・わかった、そうさせてもらおう」


「はい・・・、では、後ほど・・・」


「・・・了解」


修一は戒斗との個人回線を終了すると、

再び回線をオープンに戻しながら合流ボイントへと急いだ。



そして再び直次と黒蝶は・・・。


「・・・そ、そんな事がっ!?」


目を見開き強い動揺を見せる直次に黒蝶は哀し気な目を向けていた。


「で、でも・・・まさか半蔵様がそんな事をっ!?

 あ、ありえ・・・ない・・・そ、そんな事・・・有り得る訳が・・・」


黒蝶から『真実』を聞かされた直次の瞳は、

あからさまに狼狽え、激しく動揺していたのだった。


「直次さん・・・。

 信じられないのはわかります・・・

 ですが、これが・・・『真実』なのです」


「そ、そんな・・・」


「先程もお話したように、

 私は嘘偽りなくお話させて頂きました。

 そして『本当の名』も・・・。

 ですが信用して頂く為には・・・やはり素顔を晒すしかありませんね」


そう言うと黒蝶は黒い扇子を取り出し広げると、

自らの顔を隠して見せた。


すると一瞬・・・。

黒蝶の姿が『ブレ』たかと思うと、

黒い扇子で隠されたその顔は・・・見覚えがある顔だった。


「・・・ねっ?♪」


優しい微笑みを向けながら軽くウインクして見せると、

驚きの表情を浮かべながら直次は顔を真っ赤にしていた。


「あっ、貴女はっ!?」


先程とは違った動揺を見せる直次に、

黒蝶は言葉を続けていった。


「まだ・・・信用して頂けませんか?」


「・・・で、でも・・・僕はあの人達が・・・

 そ、それに、ど、どうしてそんな話を僕なんかにっ!?」


前のめりになりながら興奮した表情を見せる直次に、

黒蝶は少し俯くとその目からは一粒の涙が落ちた。


「っ!?」


「ご、ごめんなさい・・・。

 貴方に話したのは・・・貴方なら分かって頂ける気がして・・・

 それに私と貴方は似ているような気が・・・。

 もし、私を信用出来ないのであれば・・・

 私の正体をあの方達に話して頂いても・・・。

 ですが・・・それでも・・・私は『復讐』を諦めません」


そう言いながら直次へと向けた顔は、

大粒の涙を流す1人のか弱い女性にしか見えなかった。


「・・・・・」


言葉に詰まる直次は暫く考えた後・・・

話をこう切り出していった。


「あ、あの・・・ぼ、僕は貴女の事をなんて呼べば?」


必死に考えたのだろう・・・。

この雰囲気をどうにかしたいと思った直次がそう言うと、

黒蝶は涙を着物の袖で拭いながら話を続けていった。


「・・・黒蝶と呼んで下さい。

 私が黒い和装を・・・この姿で居る時は・・・

 人として私は存在しないのですから・・・

 それに見て下さい♪

 この姿の時はこの青い瞳が私が人ではないと言う証拠なのです♪」


そう言いながら微笑む黒蝶は、右目に白く細い手を一瞬当てると、

除けた手から見開かれたのは『青い瞳』だった。


(あ、青い瞳っ!?

 な、何だっ!?や、闇深い力がっ!?)



直次は眉間に皺寄せていた。

だが直次の目は直感的に感じ取っていた。

そしてそれと同時に・・・

黒蝶の青い瞳の奥に宿っている哀しい瞳を見逃さなかった。


(・・・なんて哀しい目をっ!?

 その『青い瞳』がそんな目をさせるのかっ!?

 い、いや・・・違う・・・。

 そんな目になるのはやはり・・・あの人達のせいなのか?

 それに僕と彼女が似ているって言うのは、

 『人ではない・・・』と言う意味だからか?

 それって・・・僕も彼女と同じ哀しい瞳をしているのか?

 でも・・・そうかも・・・しれないな・・・)


『どこか自分と似ている・・・』そう感じ取った直次だったが、

それを払拭しようと頭を数回振ると心が苦しくなっていった。


「そ、そんな・・・人じゃないなんて・・・そんな悲しい事を・・・」


「・・・フフフ」


そう笑う黒蝶だったが、

その声には『諦め』みたいなモノを感じたのだった。

 

(・・・まだ沢山、僕に言えない事があるのだろうけど、

 今の僕には言えないんだろう・・・。

 それは当然だよね・・・。

 今の僕には彼女を助ける術がないのだから・・・

 『人ではない』と彼女は言った。

 あの時の目は・・・とても哀しそうだった。

 ある意味僕と同じ『人ではない』者同士・・・。

 何か出来る事は・・・?

 僕にしか出来る事はないんだろうか?)


苦悩に顔を歪ませた直次に、黒蝶は優しく微笑んで見せた。

その彼女の笑顔は苦悩する直次にとっては癒しとなったのだ。


『真実』を聞かされた直次は黒蝶に思い切って訪ねてみた。


「こ、黒蝶さん・・・」


「・・・はい、何でしょうか?」


「貴女は僕に、一体何をさせようと言うのでしょうか?」


黒蝶の顔を見る事もなく、

俯きながらそう尋ねて来た直次に、静かに目を閉じると、

小さな声で答えたのだった。


「・・・手伝って」


「・・・えっ?」


そう小さな声が直次の耳に届いた時、

今までの丁寧な言葉使いとは打って変わって、

黒蝶本人の感情から出た言葉だと感じた・・・。


「・・・て、手伝う?」


「・・・はい」


「て、手伝うって言っても・・・

 一体僕は・・・何をすればいいのか・・・。

 そ、それに・・・ぼ、僕は人ではなく・・・

 忌み嫌われた『異端人』です。

 こ、こんな僕が貴女の役に立てるとは・・・」


そう言いながら直次は『戒斗』に出会うまで、

様々な人達に虐げられてきた事を思い出していた。



~ 回 想・宿舎裏 ~


直次は数人の同世代の男達に引きずられ、

宿舎の裏手にある雑木林の中に連れて来られていた。


「いい加減お前・・・ここから出て行けよっ!」


「イラつく顔しやがってよっ!」


『そ、そんな事言われたってっ!

 い、一体僕がみんなに何をしたって言うんだよっ!』


「へぇ~・・・生意気な事言うじゃん。

 お前が此処でやっていけるのは、

 全て『戒斗様』のおかげだろうがっ!」


『それは・・・わ、わかっていますっ!

 僕はそんな事もわからないような人間じゃないですっ!』


「人間って・・・お前~・・・そんなキモいお前が、

 俺達と同じ・・・人間だぁ~?

 ちょっと『戒斗様』に褒められたたからと言って、

 直次・・・お前、調子に乗ってんじゃねーぞっ!

 って言うか・・・。

 此処に居る連中はみんな、お前の事が気に入らないんだよっ!」


『そ、そんな・・・。

 べ、別にみんなに嫌われるような事をした覚えがないし、

 こ、こんな事・・・される覚えもないっ!』


「うるせー・・・この呪術の化け物っ!

 お前・・・幻術とか得意だもんな~?

 そのキモい顔も身体も・・・

 お得意な幻術で、みんなを騙してんじゃねーのか~?」


この時直次は一瞬・・・。

その顔を引きつらせたのと同時に、

己の中の『冷たく非常な部分』が活性化したかのように思えた。


『ドクンっ!』


(なっ、何だっ!?い、今・・・ぼ、僕の中で何かがっ!?)


暗く冷たい感情が目覚めかけ、

その感情のまま眠れる力が『身を委ねろ』と直次を促すも、

『戒斗』の言葉を思い出した直次は、堪える事が出来たのだった。


(戒斗さんは僕に言ってくれた。

 『お前が何者だろうとも、俺は同じ『仲間』として、

 1人の『人間』として、同等に接する』・・・と、

 僕の力を認め信頼しそう言ってくれんだ・・・。

 だ、だから僕は・・・)


少しの間俯き沈黙するも、

『戒斗』の見せた『信頼』に直次は声を挙げた。


『な、何言ってんだよっ!

 そんな事する訳ないじゃないかっ!

 僕はみんなと何も変わらないっ!同じ仲間じゃないかっ!』


「うぜーんだよ・・・直次・・・

 『戒斗様』が居なければ、お前なんてみんなにボコられんぜ?

 まじでうぜー・・・お前なんて居ない方がみんなの為だぜっ!

 ・・・それにお前と話すのももう・・・飽きた」


リーダー格の男が周りに居た仲間達に『おい』と目配せすると、

数人の男達が『直次』の背後に回り、

両腕をしっかりとロックしたのだった・・・。


「わかっているとは思うが・・・

 顔は無しだ・・・。

 後で『戒斗様』にバレるとやっかいだからな~?」


『や、やめろよっ!離せよっ!

 こんな事をしてっ!い、一体何になるって言うんだっ!』


「・・・やれ」


直次がこの神野の家に引き取られからと言うもの、

『戒斗』や第三班が居ない所では、

日常的にこんな嫌がらせを受けていたのだった。


だが『戒斗』が率いる第三班と言えど、

全員が直次を受け入れている訳ではなかったのだ。


~ 回 想 終 了 ~



過去に起こった出来事を思い出し、現状を重ね合わせた直次は、

気がつけば目に涙を浮かべ『フルフル』と震えていた。


「・・・直次さん?直次さんっ!?

 だ、大丈夫ですかっ!?直次さんっ!」


心配そうに直次の顔を覗き込み、

身体を激しく揺さぶっている黒蝶の姿が目の前にあった。


「・・・あっ、あれ・・・?

 一体僕はどうして・・・?

 どうして僕は・・・泣いて・・・?」


黒蝶に揺さぶられる度、直次の目からは涙が飛び散っていた。

そんな姿に肩を掴んだ黒蝶の手も、少し震えているようだった。


「ほ、本当に・・・大丈夫ですか?」


「・・・は、はい。

 ちょっと・・・色々と思い出してしまって・・・」


「・・・・・」


余りにも辛く悲しい想いに、黒蝶は自分の頭を直次の頭に当て、

『ふぅ~』と息を漏らす黒蝶からは、とても甘い匂いがした。


「・・・あ、甘い・・・匂い・・・?

 えっ!?あれっ!?ど、どうしてっ!?

 こ、黒蝶・・・さん?」


「ご、ごめんなさい・・・。

 私のせいで色々と思い出してしまったのですね?」


「い、いえ・・・」


重苦しい・・・そして哀しい雰囲気を感じた直次は、

『黒蝶さん、もう大丈夫です』とそう言いながら、

肩に置かれている黒蝶の手にそっと触れると、

静かに引き離しも顔を赤らめながら話題を変えて行った。


「あはは・・・そ、それにしても修一さん達遅いですね?

 は、早く来ないとゴブリン達が・・・」


「・・・そうですね」


「えっと・・・その・・・黒蝶さん。

 ぼ、僕は正直・・・貴女の力になりたい・・・

 で、でもっ!ぼ、僕は・・・『戒斗様』を裏切れない」


どこか悲しげな瞳を見せながら直次はそう言った。

そして黒蝶は何度か無言で頷いて見せるとこう言ったのだ。


「・・・『神』は勿論ですが、

 私が狙うのは、現・当主の『半蔵』と、

 その現・妻である・・・『加奈子』のみ・・・です。

 ですから邪魔をされない限り・・・他の人を狙う事はありません」


「・・・えっ!?」


黒蝶から復讐する人物の名を聞いた直次の目は、

驚きに満ち見開かれていた。


「ど、どどど・・・どうして、奥様をっ!?

 は、半蔵様は・・・そ、その・・・

 先程理由を聞いたから・・・わ、わかりますけど、

 でも、どうして奥様までっ!?」


「そう・・・。私が現・妻である『加奈子』を狙う理由は、

 それは『悠斗様』を幼き頃から虐げて来たからです」


「えっ!?・・・か、加奈子奥様が・・・

 ゆ、悠斗様・・・をっ!?

 そ、そんな・・・そんな事・・・ある訳がっ!?」


突然『悠斗』の名を聞き、

『加奈子』が『虐待』をしていたその『事実』に、

直次は再び驚き、喉が渇いて行くのを感じていた。


そしてそれと同時に、

黒蝶の『青い瞳』が妖しく揺れるのを見ると、

『悠斗』に対する黒蝶の『想い』を感じ、

直次の中で何かが『チクリ』と刺したのだった。


その瞳は『加奈子』に対する憎悪に満ちており、

傍に居る直次が寒気を感じるほどだったのだ。


「知らないのなら教えるわ」


「・・・・・」


「元々半蔵の妻『早苗さん』は長女と次女を産んですぐに病気で他界。

 そして今現在の妻である『加奈子』が嫁いで来たのだけど、

 その事はご存知ですよね?」


「は、はい・・・。

 前に『戒斗様』から聞いた事があります」


「・・・そう。では、これは知っていますか?

 『悠斗様』の母親は・・・『加奈子』じゃないって事を?」


「・・・は、はぁっ!?えっ!?

 ゆ、悠斗様のお母様って、『加奈子』奥様じゃないんですかっ!?」


「・・・えぇ、違います」


直次はその話を聞いてただただ驚いていた。

それは直次だけではなく・・・。

『魔狩り人』の同世代の仲間達にも聞かされていない事だった。


「そ、そんな話・・・い、一体どこでっ!?

 そ、それにその話って、本当なんですかっ!?」


そう言いながら直次は現・母親である『加奈子』を思い出すと、

『悠斗』に対し、いつも必要以上に厳しくしていたのを思い出していた。


「で、でも・・・た、確かに・・・。

 奥様はいつも『悠斗様』にきつく当たっていたように・・・

 で、でも、それは・・・愛情の裏返しじゃ?」


「・・・裏返しって・・・直次さん。

 貴方・・・気が付かなかったの?」


「な、何を・・・です?」


黒蝶の右目が青白く鈍く揺らいだ。

それを見た直次は『ごくり』と緊張の為、喉を鳴らした。


「いつもあの人・・・『悠斗様』が表情に出す事もなく、

 涼し気にしていたから分からないのも当然なのかもね?

 でもその涼し気な表情の服の下は・・・

 いつも内出血して青黒い痣になっていたの・・・」


「・・・あ、痣ってっ!?えっ!?そ、そんな・・・。

 ゆ、悠斗様は、か、感情をあまり出さないから、

 い、いつも涼し気で・・・そして、『凛』としていて・・・」


「あの人がそう見えたのは恐らく・・・

 虐待からの自己逃避・・・なのかもしれません。

 少なくとも私は・・・そう思っています」


「い、いやっ!でもっ!

 それはきっと、『悠斗様』に期待しているからであって・・・

 それにっ!そんな事が行われていたのであれば、

 誰かが絶対に気付くはずですっ!

 『戒斗様』や『沙耶様』がそんな事を見過ごすはずが・・・」


そうは言ってはみたものの・・・。

『加奈子』と『悠斗』の事を思い出すと、

直次は次第に言葉が弱くなっていった。


それに先程聞かされた『半蔵の真実』を思い出すと、

直次は無意識にその顔を顰めていたのだった。


少し考え頭の中で何かを払拭しようとしていた直次に、

黒蝶は落胆の表情を浮かべて見せるも、

現実を・・・思い出させるしかなかった。


「・・・思い出してみて?

 貴方は一度でも『加奈子』が・・・

 『悠斗様』に優しく声を掛けているのを見た事がある?」


「・・・そ、それはっっ!

 ぎ、義理とは言え母親なのですから・・・

 い、いや・・・ど、どうだった・・・かな?

 ・・・な、なかった・・・かも、しれません」


「そして『加奈子』が一度でも・・・

 『悠斗様』を名前で呼んだのを見た事がある?」


「な、名前って、それは普通に・・・」


直次はそう言いながら『加奈子』と『悠斗』の事を思い出して行くが、

『・・・あ、あれ?』と言いながら顔を引きつらせていた。


「・・・どうです?ありましたか?」


「ぼ、僕が目撃して・・・い、いないだけで・・・

 実際は・・・どうなのかわかりませんが、

 僕の記憶には・・・『悠斗様』を名前で呼ばれた事は・・・

 い、一度も・・・な、ない・・・です。

 ・・・一度も・・・」


この時直次は思い出していた。

苦悩して頭を抱え込みながら記憶を手繰って行ったが、

そんな記憶は1つもありはしなかった。


そして『加奈子』が『悠斗』の事をどう呼んでいたかを、

徐々に思い出して行くと、直次の顔色は真っ青になっていた。


「た、確か・・・い、忌み子」


「・・・思い出した?」


「・・・は、はい」


小さく震えながらそう口に出す直次・・・。

そんな直次に黒蝶は静かな口調で確認するようにそう言った。


眉間に皺を寄せ辛そうにしている直次は、

いきなり黒蝶へと身を乗り出すと、

早口になりながらも質問していった。


「こ、黒蝶さんっ!ちょ、ちょっといいですかっ!?」


「は、はいっ!?」


「どうして奥様は『悠斗様』をそんなに嫌うのですかっ!?

 それに『悠斗様』の母親ってっ!?

 お、教えて下さいっ!お願いしますっ!黒蝶さんっ!」


怒涛の勢いでそう尋ねて来る直次に、

黒蝶の青い瞳・・・

『冥界の義眼』が『ジジっ』と妖しい音を立てながら、

その瞳の奥で青白い光が激しく揺らめいた。


「・・・わかりました。

 その人が誰なのか・・・貴方に教えます。

 覚悟はいいですか?」


「は、はいっ!お、お願いしますっ!」


直次はその緊張からか激しく喉が渇くのを感じたが、

何とも言えない感情によって、息をするのを忘れてしまうほどだった。


「・・・それは現・当主『半蔵』の・・・」


そう言いかけた時だった・・・。


突然背後から感じた気配に直次と黒蝶がその身を翻すと、

手を振って見せている『戒斗』と『修一』の姿があった。


直次は小さな声で『タイミング悪いよ』と愚痴をこぼすと、

黒蝶は一瞬にして顔や服装を変え微笑んでいた。


それに気付いた直次は更に声を小さくすると、

黒蝶に尋ねたのだった。


「黒蝶さん・・・。

 それって『術』なんですか?

 全然感知出来ないんですけど?」


そう尋ねる直次に黒蝶は『クスっ』と笑って見せると、

『この力は冥府魔道の力です♪内緒ですよ?』と、

幼さを残す笑顔でそう答えると直次は『ポっ』と顔を赤らめ、

黒蝶から逃れるように、戒斗と修一に向かって走り出したのだった。


「・・・フフフ♪可愛い子♪」


直次の背中を見つめる黒蝶の顏は、

とても優しいモノだった・・・。




ってな事で・・・。

今回このようなお話しとなりました^^


『真実の欠片』がタイトルなので、

悠斗に関する事を・・・少し・・・欠片程度に^^


因みにストックはなんとっ!

まだ3話分あったりしますのでご安心をw


登録や感想など、是非っ!宜しくお願いします^^


って言うか・・・またキーボード調子悪いorz



ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 毎度謎が多くてワクワクしますね♪ 黒蝶と直次の雰囲気も好きです♥︎ お体に気をつけて執筆なさってくださいね。
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