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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
外伝・壱
275/404

14話・日本・出会い、再び

お疲れ様です。


今年の夏は雨ばかりでしたね。

今も勢力の大きい台風が来ていますが、

皆さんに何事もないよう祈っております。


さて、今回はあるきっかけの始まりです。

今後の展開を楽しみにして頂けたら幸いです。



それでは、外伝・14話をお楽しみ下さい。

『これ・・・貴女のですよね?』

突然声を掛けられた声に黒蝶は心当たりがあった・・・

だがこの状況で素顔を晒す事がいいはずがなかった。


(ど、どこかの家に入る事さえ出来れば、

 着替える事も出来るのに・・・今は力が・・・

 一体どうすれば・・・

 あっ!確かあの面には万が一の為にとあの御方が冥府の力を・・・)


黒蝶は面に込められた『冥府の力』の事を思い出すと、

顔を背けながら手を伸ばした。


「こ、こんな不躾な態度で申し訳御座いません。

 詳しくお話する事は出来ませんが、

 その面を渡しては頂けないでしょうか?」


黒蝶のその言葉に直次は少し訝し気な表情を浮かべて見せたが、

弱々しいその声に同情した。


(この人はきっとゴブリンから酷い目に・・・)


そう思った直次は『はい、どうぞ』と黒蝶に白い面を手渡した。


「あ、有難う御座います」


そう言いながら面を懐にしまう振りをして、

その面に込められた冥府の力を使用すると、

一瞬にして黒蝶の顔が変わり、着物の模様を変えた。


(あ、あれ・・・?今、一瞬・・・?)


直次が女性に面を手渡した瞬間・・・。

一瞬、その女性の身体がブレたような気がした。


直次は手で目を擦り再び確かめたが、

その女性は何も変わってはいなかったのだ。


(・・・一体どう言う?)


直次が不思議そうな表情を浮かべて居ると、

その女性は『・・・フフフ♪』と笑って見せた。


(あれ?この笑い方は・・・?)


必死に思い出そうとしていると、

ゆっくりと直次の方へ顔を見せたその女性は、

『立たせて頂けませんか?』と申し出て来た。


「は、はい・・・構いませんよ」


「有難う御座います」


「・・・あの、失礼ですが?」


「・・・は、はい」


「ひょっとして、以前何処かで?」


「・・・フフフ♪もしかして・・・ナンパですか?」


「い、いえっ!け、決して・・・そ、そのような事はっ!」


「・・・フフフ♪」


『ナンパ』だと誤解させてしまいオロオロとする直次だったが、

慌てて顔を背け顔が赤くなっているのを隠したつもりでいた。


だが直ぐに真顔に戻ると、その違和感について考え始めた。


(確かに以前何処かでこの雰囲気を・・・)


直次の雰囲気が変わった事に気付いた黒蝶は、

伏目がちになると、目の前に在る表札を見つめた。


(・・・怪しまれているのかもしれないわね?

 冥府魔道の力はそう容易く感知されるはずもないけど・・・)


直次に対しそう疑念を持った黒蝶は、

完全に怪しまれる前に次の手を打った。


「あ、あの・・・?

 肩を貸して頂きたいのですが?」


「あっ!?そ、そうでしたっ!申し訳ありません」


慌てて黒蝶の手を取り、立ち上がせると、

ヨロヨロとするその身体を直次が支えた。


「だ、大丈夫ですか?」


「は、はい・・・少し休めば平気ですから・・・」


心配そうに直次はその女性を見ていると、

黒蝶は左腕を伸ばし目の前に在る一軒家を指差した。


「・・・その家・・・私の家なんです」


「あぁ~・・・なるほど」


肩を貸した直次はヨロヨロとする黒蝶を支えながら歩き始めた。


「・・・フフフ♪」


「あははは・・・」


何が可笑しかったのか・・・

直次はその理由もわからず相そう笑いを浮かべると、

その女性の家の玄関まで連れて行った。


そして黒蝶が玄関の横開きの扉を『ガラっ』と開けると、

直次はその女性にこんな質問した。


「・・・どうしてそんなになるまでこんな場所に?

 家はもう目の前ですよね?」


その質問に背中を向けたままの黒蝶の顔が一瞬引きつった。

だが急ぎ笑みを浮かべながら振り向くと、

用意しておいた答えを口にした。


「申し遅れました・・・

 私の名は『吉川 茜』と申します。

 急いで逃げて来たんですが、自分の家を見たら急に・・・」


『吉川 茜』と名乗った女性にバレないように、

直次は玄関上に書かれている小さな表札を『チラっ』と見た。


(確かに『吉川』とは書かれているけど、でも・・・)


直次には思う事はあったのだが、

今は『茜』と名乗る女性の言葉を信じようと思ったのだった。


「な、なるほど・・・。

 自分の家を見て、その安心感から気力が切れてしまったと?」


「・・・な、情けない話ですが、恐らく・・・」


困り果てた顔を見せた黒蝶に、

直次は姿勢を正しながら慌ててその口を開いていった。


「あっ。それと申し遅れました。

 ぼ、僕は『織田 直次』と言いますっ!

 色々と話せない事も多いですが、

 ただ言える事は・・・皆さんを助けに来たと言う事ですっ!」


「・・・助けに来てくれたのですか?」


「は、はいっ!

 あ、貴女もあんな緑色の化物から逃げて来たんですよね?

 疲れているところ、くだらない質問をしてすみませんでしたっ!」


『緑色の化物』・・・。

その言葉に黒蝶はわざとその顔を歪めて見せた。

そしてその表情を見た直次は『はっ!』と我に返ると、

デリカシーの無さに謝罪し頭を下げたのだった。


「・・・フフフ♪お気遣い有難う御座います♪」


その言葉に直次は照れ笑いを浮かべながら顔を上げた時だった。


(・・・えっ!?こ、この仕草はっ!?)


照れ笑いを浮かべながら顔を上げた時、

直次が感じていた違和感の正体がわかったのだ。


(この仕草って・・・この前出会った・・・あの女性じゃっ!?)


黒蝶の無意識から来るその仕草に、

直次が抱いていた違和感がはっきりとわかったのだ。


(で、でも・・・あの時に見た顔が違う・・・

 それとも何か正体を隠さないといけない理由が・・・あるのか?)


戸惑う直次に黒蝶は不思議そうな表情を向けると、

慌ててその場を繕い難を逃れたのだった。


「それでは私は着替えて来ますので♪」


「は、はい・・・。

 とりあえず僕はここで待機しています」


「・・・待機ですか?」


「はい。まだ事は収まっておりませんので・・・」


「分かりました・・・。

 直次さん・・・少々お待ち下さい。

 それと肩を貸して頂き有難う御座います」


「い、いえ・・・」


家の中へと入った黒蝶は扉を閉めると、

直次の表情から笑みが消えた・・・。


(・・・何故、貴女がこんな所に?

 それにどうして・・・?)


そう考えながらも直次の思考はループするばかり・・・。

『うーん』と唸りながらも、その思考が途絶える事はなかった。



直次は何度も思考しながらも、玄関前で待っていると・・・



『タッタッタッタッ!』と何者かの足音が、

こちらに向かって響いて来た。


直次は警戒を怠っていた自分に『チッ!』と舌打ちすると、

その家の門の脇に身を隠し、息を殺して通り過ぎるのを待ったのだ。


(あの人がタイミング悪く出て来ない事を祈るしかないな?

 万が一の時は・・・僕が・・・)


身を潜め何事もなく過ぎる事に期待していると、

その足音の主は止まる気配も見せず、そのまま通り過ぎた・・・。


『ほっ』と胸を撫で下ろした直次の緊張が和らいだ時・・・。

突然玄関が『ガラっ!』と音を立て開いた。


「直次さん、お待たせ致し・・・」


(なっ!?なんてタイミングでっ!?)


『ちっ!』と再び舌打ちしながら直次が門から飛び出ると、

抜刀し立ち止まり背中を向けたままの相手に斬りかかろうとした。


「な、直次っ!?」


「・・・しゅ、修一さんっ!?」


「「えっ!?どしてこんな所にっ!?」」


そう言って2人は見事なまでにシンクロして見せた。


「「・・・あっ!」」


「あははは・・・」


「・・・ははは」


シンクロした事に恥ずかしさを感じたのか、

2人はぎこちなく笑って見せていた。


そんなやり取りをしていると黒蝶が門から顔を出し、

不思議そうな顔を向けていた。


「えっと・・・」


声は発したもののその表情にはぎこちなさがあり、

どう言葉を発していいか悩んでいるようだった。


「あはは・・・あ、茜さん・・・

 へ、変な所を見られてしまったな・・・ははは」


頭を掻きながら直次は茜にそう言うと、

修一は門から出て来た『茜』と呼ばれた女性に視線を向けた。


その『茜』と呼ばれた女性の姿は『今時・・・』とはかけ離れ、

和装に身を包んでいたが、その着物はとても似合っていた。


少し長めの黒髪に青紫の朝顔が描かれた薄い桜色の着物・・・。

そんな気品ある女性に『もじもじ』とする直次に苦笑した。


(・・・どこかあどけなさが残る人だけど、

 あぁ~・・・直次のヤツ・・・あんなに『もじもじ』しちゃって~

 全く・・・緊張感のないヤツだ・・・)


いつまでも『デレデレ』とする直次に、

修一が『ニヤニヤ』しながら近付いて来た。


「直次・・・

 どうでもいいけどその人の事を教えてもらえるかい?」


「は、はいっ!しゅ、修一さんっ!実はこの女性は・・・」


修一の表情に焦りを感じながらも、

直次は事の説明をした。


すると修一は『吉川 茜』と名乗る女性に顔を向けると、

村の入り口に向かって指を差した。


「吉川さん・・・。

 この村は今、とても危険な状態なので、

 今すぐ村の入り口まで行って、俺達の仲間と合流して下さい」


修一にそう言われた黒蝶はその視線を一度直次へと向けた。

その黒蝶の視線に何を思ったのか、

直次は話に割って入って行った・・・。


「修一さんっ!」


「な、何?急に・・・」


「い、いえ、あの・・・」


「どうしたんだよ?

 早くカタを着けないと村の人達が・・・」


少し訝しい表情を向けた修一だったが、

何度も視線を黒蝶へと向ける直次に笑みを浮かべた。


「あぁ~・・・そう言う事か~?」


「・・・えっ?」


「お前~・・・吉川さんと離れたくないんだろ~?」


少しニヤつきながら、からかうようにそう言うと、

図星だったのか直次の顔は、みるみる赤く染まっていった。


そして『ゴニョゴニョ』と俯きながら呟いていた。


「い、いや・・・べ、別に・・・そ、そんなんじゃ・・・」


その仕草が可笑しかったのか、黒蝶と修一が声を挙げて笑うと、

からかわれたと気づいた直次が抗議の声を挙げた。


「しゅ、修一さんも、あ、茜さんもっ!

 そんなに笑う事な・・・」


そう声を挙げながら抗議し始めた時だった。


突然インカムから『戒斗』の声が聞こえて来た。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・

 み、みんな・・・き、聞こえる・・・か?」


息を荒げながら話す戒斗の声が聞こえると、

修一と直次の表情が一片した。


「か、戒斗様っ!?何かあったのですかっ!?」


右耳を押さえながら厳しい表情を浮かべた修一がそう話すと、

少し間を置いて戒斗の声が返って来た。


「こ、こっちは何とか・・・片付いた・・・が、

 この村の人達は・・・誰も・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・」


戒斗の言葉に修一は顔を顰め、

直次は『そ、そんな・・・』と呻くように声を漏らした。


「ざ、残念・・・です」


修一もそう声にするのがやっとだった。


「そ、それに何故か・・・いちかに連絡が取れない・・・

 お前達・・・何か知らないか?」


そう聞かれた修一と直次だったが、

戒斗からそう聞かれるまで気が付かなかったのだった。


「も、申し訳ありません・・・戒斗様。

 こちらは全く気がつかず・・・」


「そ、そうか・・・」


修一のその声に戒斗も何か思う所があったのだろう。

それ以上は何も言わずただ現状を報告したのだった。



「い、一応・・・ゴブリン共は・・・一匹残らず殲滅したが、

 お、お前達の・・・状況は?」


戒斗から状況を求められた修一は、

これまでにあった事を説明したのだった。


「そ、そうか・・・。わかった・・・。

 と、とりあえず・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・

 その『吉川』さんと言う人を・・・保護して・・・くれ。

 お、俺も今から・・・合流ポイントへ・・・向かう」


荒い息が未だに終わらない戒斗の様子に不安がよぎった。

2人はお互いを見ながら戒斗を気にしていた。


「か、戒斗様・・・直次です。

 だ、大丈夫・・・なんですか?」


「・・・あ、あぁ・・・と、とりあえず・・・だが・・・」


「戒斗様・・・・?

 い、一体何があったのですか?

 その様子だとどこか怪我でも・・・」


直次と修一はそう心配し声を掛けると、

戒斗からは苦笑交じりな声が返って来た。


「ははは・・・あぁ~・・・い、いや、まいった」


「「・・・・・」」


「この場所の惨状にキレちゃってさ・・・

 そ、その~・・・さ、気が着いたら・・・

 まだ慣れてもいない『赤銅色の気』ってヤツが勝手に・・・」


「「・・・えっ!?」」


「あ、あまりよく・・・覚えていないんだが、

 我に返ったら・・・ゴブリンの野郎どもを・・・殲滅してた。

 その反動で身体の消耗が・・・

 ははは・・・な、情けないよな~」


「「・・・・・」」


『赤銅色の気』・・・。

その言葉に修一と直次が固まった。


それを察してか戒斗は『フっ』と小さく笑みを浮かべると、

話を続けていった。


「まぁ~・・・とりあえず・・・

 俺は合流ポイントに向かう・・・」


「わ、わかりまし・・・た」


修一がそう言って通信を切ろうとした時だった。



突然『茜』が『あ、あの・・・』っと声を発したのだ。


「あ、茜さん・・・どうかしたの?」


「わ、私、あいつらから逃げて来たって言ったじゃないですか?」


「・・・うん」


「わ、私その場所・・・わかりますっ!」


黒蝶が・・・。

『吉川 茜』と名乗った黒蝶がそう言うと、

修一と直次の表情が変わった。

そしてそれはインカム越しに声を聞いて居た戒斗も同様だった。


「わ、私が・・・案内しますっ!

 だ、だから・・・だからみんなをっ!」


思いつめた表情を浮かべそう声を挙げた『茜』に、

修一と直次はお互いを見合わせた。


そしてその判断が着かず言葉を詰まらせていると、

インカム越しに戒斗から声が聞こえて来た。


「・・・その人に案内を頼もう」


「えっ!?」


「か、戒斗様っ!?し、しかし彼女はっ!?」


驚きの声を挙げる修一に構わず、戒斗は話を続けて行った。


「折角の申し出だ・・・。

 彼女はお前達が守ってやればいいだろ?」


「し、しかしっ!」


「聞け・・・修一っ!

 今は一刻を争うんだぞっ!

 躊躇(ためら)っている暇はないんだ・・・」


「・・・・・」


戒斗の言葉に修一は言い返せず、

ただ・・・複雑な表情を浮かべるだけだった。

そんな修一の様子を見ていた直次は戒斗へ話していった。


「わかりました・・・戒斗様」


「あぁ・・・。俺も必ず合流する・・・必ずな」


「・・・はい」


その言葉を最後に通信が終了すると、

顔を顰めたまま修一は拳を握り締めていたのだった。


「・・・修一さん」


心配そうな表情を見せた直次の肩に、

修一は『ポン』と手を乗せ苦笑して見せた。


「・・・戒斗様の命令だ・・・行こう」


「・・・はい」


先頭を歩いて行く修一の背中を見ていた直次は、

『茜』に対し視線を向けると笑みを浮かべ、

先を歩く修一を見ていたのだった。


(えっ!?・・・あ、茜さん・・・どうして笑ってっ!?)


その意味有り気な笑みを見た直次は、

『茜』の視線に釣られるように先を歩く修一を見た。


(・・・な、何か狙ってるのかっ!?)


そんな不安が直次によぎったのだった。


そして再び視線を『茜』へと戻した時・・・

その視線に気付いた『茜』は直次に微笑んで見せた。


「直次さん・・・行きましょう♪」


「・・・あ、あぁ・・・そ、そう・・・だね」


楽し気に・・・そんなふうに見えた直次の表情は強張っていた。


そして数歩歩んだ時だった・・・。

突然直次が『修一さん』と声を挙げた。


その声に修一はその足を止め振り返ると、

直次のその表情に何かを感じ取ったのだった。


「・・・どうした?」


「え、えっと・・・あの・・・修一さん」


「・・・ん?」


直次はそう言いながら・・・

少し前に居た『茜』に視線を向け戻すと、

修一に話をしていった。


「修一さん・・・。

 やっぱり修一さんは戒斗様を迎えに行って下さい」


「・・・えっ?いや、でも・・・」


「僕は『茜』さんと先行し修一さん達の合流を待ちますから」


「い、いやでも待つって言われても場所が・・・」


直次に意図が読めない修一は困惑するばかりだった。

そんな修一に直次はこう言った。


「目印変わりにその辺にある石を道の真ん中に・・・

 そして曲がる場合は、その曲がる方向に石をもう1つ・・・」


直次の何かしらの決意みたいモノは感じる・・・。

だが修一にはそれ以上何もわからなかった。


「目印はそれでいいが・・・

 でも、またこの空間に来れるとは限らないんだぞ?

 それに通信だって空間が違うって言うのに、

 何故通じているのかも分からないんだぞ?」


この空間に対して修一達は何の解決にも至っていない・・・。

その問題が解決しない限り・・・

修一は直次達から離れる訳にはいかなかった。


すると・・・。

直次は『ニヤっ』と笑みを浮かべると、

修一の左足首に収められている『ナイフ』を指差した。


「村から出る前にそのナイフを道に差しておけば、

 それが僕達が居るこの空間だと言う証拠になりますよね?」


「・・・あっ、なるほど♪」


直次の説明に納得した修一は笑顔を向けながら直次の肩に手を置いた。


「・・・わかった。必ず戻って来るから、

 お前達は決して無茶するんじゃないぞ?

 『茜』さんは戦えないんだからな?

 この人に何かあったら・・・直次・・・わかっているよな?」


「・・・はいっ!」


力強くそう返事をした直次に苦笑して見せると、

踵を返し村の入り口へ・・・

合流ポイントへと向かって駆け出して行った。


そして少しの間修一の背中を見ていると、

『茜』から声がかかった。


「・・・直次さん、そろそろ行きましょう♪」


「・・・そうですね」


やはりどこか楽し気で・・・。

そんな雰囲気を纏う『茜』に直次の表情から笑顔が消えた。


そして『茜』を見る事もなく歩き始めると、

その『茜』の道案内を頼りにその歩みを進めたのだった。



それから数十分ほど過ぎ、

直次は約束通り道標を残しながら先を急ぐと、

いちかが『落葉』と言う結界の中で苦戦を強いられたグランドへと出た。


そしてその中を突っ切り、

バックネットを過ぎた辺りで『茜』の足がピタリと止まった。


「・・・茜さん?」


「・・・直次さん、あそこです」


『茜』が指を差したその先には・・・

古びた『寺』が建っていた。


「・・・あのお寺ですか?」


「・・・はい、私はあそこから逃げてきました」


そう言った『茜』の顏はその怖さからなのか少し歪んで見えた。

だがそう感じつつも直次は指を差す『茜』からはもう・・・

違和感しか感じなかったのだ。


「そう・・・ですか。

 じゃ~、とりあえず・・・戒斗様達が来るまで待機しましょう」


「そうですね。わかりました」


その『寺』から視線がはずれるように場所を少し移動すると、

バックネット裏にあるベンチへとその腰を降ろした。



「・・・・・」


「・・・・・」


数秒が数十分にも感じられる程、

時間が長く感じられた時・・・


口を開いのは笑みを浮かべ直次を見つめる『茜』からだった。


「・・・直次さん」


「・・・な、何ですか?」


「・・・もう気付いているのよね?」


「な、何が・・・ですか?」


「・・・私が、誰か・・・って事に♪」


「・・・・・」


「・・・フフフ♪」


その独特な笑い方と着物の袖で口元を隠すその仕草・・・。

直次は『茜』から何か冷たいモノを感じその身を震わせた。


「・・・そう・・・ですね。

 貴女の言う通りです」


「いつ・・・気付いたの?」


「最初は違和感からでした・・・。

 ですが貴女を家まで連れて行った時・・・

 玄関の上の表札に・・・『茜』と言う名はなかった。

 あの家の住人は2人・・・でした」


「・・・あら?

 玄関の上に住人の名があったのね?

 そこまでは気が付きませんでした♪」


「名はなくても親戚の人が来ている可能性があっので、

 あの段階ではやはりただの違和感でしたけどね・・・」


「・・・フフフ♪」


楽しそうに直次とおしゃべりする『茜』に向き直ると、

突然鋭い視線を向けて見せた。


「・・・貴女は僕達の・・・敵ですか?

 そして・・・貴女の名は?」


鋭い視線を向ける直次に『茜』は少し息を漏らすと、

微笑んで見せたのだった。


「私の名は『黒蝶』・・・。

 冥府魔道に住まう住人・・・。

 そして私は貴方の・・・直次さんの『敵』じゃないわ。

 少なくとも・・・ね♪」


そう言いながら微笑みかけた黒蝶に、

何故か直次は無意識に『安堵』の息を漏らしたのだった。




ってな事で・・・今回はこんな感じになっております。

楽しく・・・?読んで頂けたのなら嬉しく思います。


あぁ~・・・でも、次回の話は・・・暗いです^^;


これからも頑張って行きますので、

高評価とチャンネル登録・・・違ったw


登録と感想など頂けたら・・・と、思っております^^



ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 黒蝶は敵キャラだけど良い雰囲気ですねー♪ でも直次とのエピソードは嫌な予感しかしませんが。。。 暗い話も展開上必要だと思われるので、 書くのはしんどいかもしれませんが、 頑張って書きき…
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