13話・日本・終結からの始まり
お疲れ様です。
突然ですが来週はお休みさせて頂きます。
何故なら・・・
試験が間近に迫っており、緋色も勉強せざるを・・・><
と、言う事で・・・
来週はお休みとさせて頂きます。
さて、今回で沙耶達と黒蝶の戦いは終わりを告げますが、
この後の展開も楽しんで頂けるよう頑張りたいと思いますので、
これからも応援宜しくお願い致します。
それでは、外伝13話をお楽しみ下さい。
『次は黒蝶・・・てめーの番だっ!』
沙耶の挑発に異質な空気を感じた黒蝶の表情は引きつっていた。
木に激突し『ズルリ』と崩れ気絶する英二を横目に、
黒蝶は一歩前と踏み出した。
「・・・流石は『破壊神』とまで言われた女。
私の予想の斜め上を行っていますね・・・」
力強い視線を沙耶へと向けながらもその内心は葛藤していた。
(・・・沙耶は戦いのプロ・・・。
今の戦いを見ていれば、それがよくわかります。
英二さんとの力の差は歴然・・・。
今の私程度では、接近戦での勝率は皆無。
いえ、それどころか・・・瞬殺されるでしょうね。
それに私にはもう・・・)
どこか悔しさを滲ませる黒蝶に、
じっと睨みつけていた沙耶が口を開いた。
「黒蝶・・・貴様・・・逃げる気でいるだろ?」
「・・・っ!?」
「貴様のその『義眼』の眼光は確かに凄いが、
それがハッタリだって事は・・・もうバレバレなんだよ」
「・・・ハッタリですか?この私が?」
「あぁ~、そうだよ」
『ハッタリ』と言う言葉に面の下の黒蝶の顏は醜く歪んでいた。
扇子を持つ右手に力が入り『ミシミシ』と、
竹で作られた素材が静かな悲鳴を挙げていた。
「・・・ハッタリと思われているのはとても心外ですが、
言い訳をするとすれば・・・そう・・・。
私はまだこの『義眼』に慣れておらず、
力を思うように扱えない・・・。
そしてもう1つ・・・。
私の敗因は未熟過ぎる英二さんを仲間に引き込んだ事・・・
これに尽きると思います」
少々呆れ気味に・・・。
気絶する英二を見ながらそう答えると突然・・・。
『ドゴーンっ!』と地面が揺れるほどの轟音が響いた。
「っ!?」
驚く黒蝶が見たモノは・・・。
沙耶が地面に己を拳を打ち付け、
その地面が抉れていた事に驚いたのだった。
拳を地面に打ち付け、顔を抉れた地面に向けたままの沙耶が、
低く・・・そして『ドス』の利いた声を挙げた。
「貴様・・・敗因が英二に在る・・・だと?」
「・・・くっ!な、何て威圧をっ!?」
「威圧だぁ~?私はそんなモノ・・・放っちゃいないわよ?
これは威圧じゃない・・・『怒り』だっ!
貴様に対して初めて向ける・・・私の怒りだっ!」
『シュゥゥゥ』っと沙耶の身体から突如蒸気が立ち昇り始めた。
『怒り』という沙耶の心情が沸点を越えそれは『憤怒』と化した。
「・・・ば、化け物・・・かっ!?」
その威圧と迫力に黒蝶は後ずさりを始めると、
『憤怒』に満ちた沙耶の顔が黒蝶へと向けられた。
「・・・ヒィっ!」
「貴様・・・今の私から逃げられると・・・思うなよ?」
「・・・こ、これがこの女の・・・怒りっ!?」
後ずさりながら黒蝶は気絶する英二へと視線を向けると、
脳内でシュミュレーションをしていった。
(わ、私の今の状態で撤退するには・・・。
え、英二を抱きかかえつつ時空洞を開き・・・。
い、いや・・・これだと共倒れになる可能性が・・・。
やはりここは英二を置いたまま撤退する方が・・・)
苦悩する黒蝶は心の中で舌打ちしつつ、
身体中から『炎の気』を吹き上げ『じわり』と迫る沙耶を見た。
(こ、殺される・・・か、確実に・・・
英二さん・・・後で必ず・・・助けに来ますから・・・
ど、どうせ英二さんに植え付けた『冥府魔道の種』は消せません。
冥界のあの御方がおっしゃった通りなら・・・
例えそれが神であったとしても・・・)
一瞬・・・。
そう一瞬なのだ。
黒蝶がそう思い表情が微かに緩んだ瞬間だった・・・。
「この時を待っていたっ!」
「なっ!?」
突然頭上から響く桜の声に黒蝶は驚愕した。
そしてその声の主は気絶する英二の元へ飛び降りると、
神力を纏った右腕を英二の腹へと突き刺した。
「英二は返してもらうわっ!」
「え、英二さんっ!?」
『ズボっ!』
「うぐっ!」
英二の腹の中へと神力を纏ったその腕が突き刺さると、
その英二の口から大量の血が吐き出され、
気絶したはずの双眼が一瞬・・・見開かれた。
『これかっ!?』と声を挙げながら突き刺した腕を引き抜くと、
小声ながらも桜は『この方法しか思いつかなかったわ』と告げた。
そして桜は黒蝶を睨みつつ、引き抜いた右手を広げて見せ、
口角を上げながらドヤ顏して見せていた。
「『冥府の種』は回収させてもらったわ」
「・・・し、知っていたの?」
「えぇ・・・勿論♪」
「そ、そんなバカなっ!?
あ、あの・・・め、冥界のあの御方が・・・
決して人間や神にバレる事はない・・・と・・・
そ、そう私に・・・」
ブツブツとそう言いながら動揺を浮かべる黒蝶に、
今度はいちかの笑い声が響いて来た。
「はっはっはぁーだっ!」
「・・・っ!?」
「人間や神にはわからないって事でしょ?
ざーんねんながら~♪
私と沙耶さんは『鬼の気』が使えるんですぅ~♪
だから魔法の『鑑定』を使用すればわかっちゃうんですぅ~♪」
「バカなっ!?い、いくら異世界の魔法と言えどっ!
たかが『鑑定』如きで冥界の力に抗えるはずないわっ!」
肩を震わせながら黒蝶の怒号の如き言葉が響くと、
いちかはニヤ付きながら答えた。
「ただの『鑑定』なら・・・ね?」
眉間に皺を寄せその面の下の表情が歪んだ時、
黒蝶にいちかは怒りの視線を向けた。
「・・・そう、私達はもう人じゃない。
『鬼の気』を使えるようになり、
『鬼魂門』を開いたあの時から・・・
何となくそう感じていた・・・。
だから私が使う『鑑定』はただの鑑定じゃないわ」
「・・・人で無くなった?
た、ただの鑑定・・・じゃない?」
「そう・・・ただの『鑑定』じゃないっ!
言うなれば・・・」
『ごくり』と息を飲む黒蝶に、いちかは満面のドヤ顔をして見せ、
タイミングを計りながら口を開こうとした・・・。
「そうっ!言うなれば・・・」
「・・・『鬼鑑定』とかってよ、
そんなダッセーネーミングは言わねーよな~?」
「ほぇっ!?」
突然予想にもしなかった声にいちかはまぬけな声を挙げ、
笑いを堪えている桜は身体をずらし、その声の主の姿を見せた。
「え、英二さんっ!?」
「・・・英二・・・さん」
明らかに動揺するいちかとは対照的に、
黒蝶の声には安堵の想いが込められていた。
そんな黒蝶に英二は苦笑して見せながら、
話を続けて行った。
「けっ!お、恐らくよ・・・。
普通の魔法鑑定よりも・・・強力な鑑定だから・・・
『鬼鑑定』なんてネーミングを思い付いたんだろうがよ?
はっきり言って・・・いちか・・・
お前にネーミングのセンスは・・・ねーな?」
「なっ!?なんて事言うんですかぁぁぁぁっ!?
って言うかっ!
私のキメ顔・・・どうしてくれるんですかぁっ!?」
「キ、キメ顔って・・・
知らねーよ・・・って・・・痛ててててて・・・
桜さんのスキルで傷は塞いでもらったけど・・・
まだ痛てーっつーのっ!」
「痛いのなんて知りませんよっ!
それよりも折角私がキメ顔を見せた後に
『僕はキメ顔で』って、セリフを言うつもりだったのにぃぃぃぃっ!
何で邪魔するんですかっ!?
男なら空気読んで女性に華を持たせるくらいして下さいよっ!」
「知らねーよっ!
つーか人の話をちゃんと聞けよっ!」
「ふんっ!簡単に操られるのが悪いんでしょっ!?
だいたいね~・・・英二さんっ!」
いちかはまだ言い足りないようで悪態を付こうすると、
突然いちかの足元に『火球』が撃ち込まれた。
「うぎゃっ!?」
『ボっ!』と着弾した『火球』がいちかの足元で燃えると、
その向けた視線の先には・・・顔を引きつらせた沙耶が居た。
「貴様達・・・。一体どうしてくれる?」
地の底から響き渡るようなその声に、
そこに居た全員が沈黙し、あからさまに怒っているのが見て取れた。
だがいちか自身はまだ言い足りないのか、
沙耶から伝わる威圧に負けじと口を開いた。
「ど、どう・・・とは?
それに私はまだ、英二さんに言い足りないんですけど?」
いちかの言葉に沙耶の身体から再び・・・
『炎の気』が音を立てて吹き上がると、
不満げな・・・沙耶の返事が返って来た。
「・・・ここから・・・だろ?」
「・・・はい?」
「ここからが・・・私の見せ場・・・だろ?」
「・・・えっと~」
拳を『バキボキ』と・・・
鳴らしながら沙耶はいちかに向かって歩み始め、
顏を引きつらし汗を流し始めた桜が英二にそっと耳打ちをした。
「・・・英二」
「な、なんス・・・か?」
「・・・逃げるわよ」
「ら、らじゃっスっ!」
咄嗟に桜の手を取り決死の離脱を試みようとし、
いちかの犠牲に十字を切っていると、ふと・・・沙耶が足を止めた。
そして振り返る事もなく黒蝶へとこう告げた。
「黒蝶・・・興が冷めたわ・・・」
「・・・何をっ!?」
「今回は・・・見逃してやるよ。
だから・・・とっとと失せな・・・」
「・・・み、見逃すとはまた・・・上からモノを言うのですね?」
「そりゃ~そうだろ?
実際・・・今の貴様では私に手も足も出ないだろ?」
「・・・言わせておけば」
「フッ・・・こう見えて私は忙しいんだ。
今からこいつらにヤキを入れなくちゃ・・・ならないんでね?」
「・・・後悔・・・しますよ?」
「・・・させてみな」
「くっ!」
沙耶の視線をいちかを見据えたままだが、
背後に居る黒蝶へと意識は向けられていた。
そして黒蝶は苦々しい口調で『・・・借りは必ず』と言うと、
扇子で空間に円を描き、出現した『時空洞』の中へと消えて行った。
それを見届けた沙耶は『ふぅ~』っと息を吐くと、
身体から吹き出している『炎の気』を消失させたのだった。
「・・・沙耶さん?」
そういちかから心配する声が聞こえたが、
当の本人にはただ首を傾げるだけだった・・・。
「・・・いちか?そんな顔をしてどうしたのよ?」
「い、いや・・・だって・・・
沙耶さんの顔色・・・真っ青だから・・・」
「・・・はぁ?」
いちかに顏を顰めながらそう答えた途端・・・。
沙耶の視界が突如ボヤけると、
『あ、あれ?』と言葉を呟きながら膝から崩れ落ち、
前のめりに倒れ込んだのだった。
「さ、沙耶っ!?」
「沙耶さんっ!?
「沙耶っ!?」
いち早く駆け寄った桜がうつ伏せに倒れた沙耶を抱きかかえると、
そこに集まったいちかや英二が心配そうに覗き込んでいた。
「さ、沙耶っ!?お、おいっ!てめーっ!しっかりしろよっ!」
「さ、沙耶さんっ!?ねぇっ!沙耶さんってばぁぁぁっ!」
『ピクリ』とも反応を示さない沙耶に桜は咄嗟に首筋の脈に触れると、
『・・・脈は問題ない』と告げた。
安堵の息を漏らすも沙耶は目を覚まさない事に、
英二といちかは不安を感じていたのだった。
「恐らく慣れない力を使って消耗したのだろう。
沙耶ほどの者が予想を越える身体の消耗に、
己の感覚が追い付いて行かず、
このような事になっているのだと思うわ」
苦笑し呆れつつも桜がそう説明すると、
いちかが安堵の息を吐いた。
「良かった・・・。
てっきり私は沙耶さんが・・・」
「・・・勝手に殺すな」
「「「っ!?」」」
「い、生きていた・・・のかよっ!?」
「・・・悪いか?」
突然聞こえた沙耶の声に桜達は驚きを見せていた。
苦笑しつつ身体を起こそうとする沙耶だったが、
力なく再び桜の腕の中に身を委ねたのだった。
「ちっ!情けないね~・・・。
全然身体が動きやしないわ・・・」
「あ、当たりめーだろっ!?
てめーは慣れない力を使って戦っていたんだぞっ!?
生きてるだけでも奇跡なんじゃねーのかよっ!?
ったくよーっ!バッカじゃねーのっ!?
こんなになるまで戦いやがってよーっ!」
目を閉じ桜に身を委ねる沙耶に、
英二は顔を覗き込みながら声を荒げたが、
その表情はとても安心したと言っているようなモノだった。
「プププゥ~♪
そんな事言っちゃってますけど英二さーん♪
じゃ~どうしてそんな安心したって顏・・・してんですか~?
気持ち悪いんで~、こっち向かないでもらえますぅ~?♪」
そうからかい始めるいちかに、英二は怒って見せるも、
そのやり取りはお互いにとって安心出来るモノだったのだ。
そんなやり取りを見ていた桜は、
この戦いを乗り切った事に安堵し笑みを浮かべて居た。
「みんなよくやったわ・・・。
私は神として情けない姿を見せちゃったけどね」
そう言って苦笑いを浮かべる桜に、
いちかや英二は苦笑するしかなかった。
そんな中、英二は目を閉じ腕組み『うーん』と唸り始めると、
桜といちかは顔を見合わせて首を傾げて見せた。
「英二・・・急に唸り始めてどうしたのよ?」
「そうですよ~・・・。
沙耶さんもこうして無事だったんですから、
別に唸るような事なんてないじゃないですか~?」
桜やいちかの話をスルーしつつ、
英二は桜の腕の中で横たわる沙耶を意味有り気に見ていた。
その雰囲気を察してか、
沙耶は薄く笑みを浮かべ声を掛けたのだった。
「何だ・・・英二?
私に聞きたい事でもあるのか?」
沙耶の言葉に英二は『まぁ~な』と答えると、
戦闘中に感じていた疑問をぶつけていった。
「沙耶・・・質問があるんだが?」
「・・・何だ?」
何か思い詰めた雰囲気を察した桜といちかも口を閉じ、
事の成り行きを見守る事にした。
「沙耶、お前・・・俺にも見せたあの紙一重な躱し方・・・
どうしてあんな事をしたんだよ?」
「・・・それはさっき説明したけど?」
「いや、肝心な事を話してねーよな?
どうして赤銅色の気を身体に薄く纏わせていたんだ?」
英二のその真剣な眼差しに沙耶は『ふっ』と笑うと、
その理由を話し始めていった。
「あの赤銅色の気を纏っていたのは、
簡単に言うとセンサー的な役割が出来るのかどうか・・・。
そしてその感知力に対して私がどれくらいの距離まで、
反応出来るか・・・よ」
「セ、センサー・・・?距離?
お前・・・戦闘中にそんな事を?」
「・・・ん?英二・・・最後の方はお前も気付いていたんじゃ?」
「いや、俺はお前が何かを企んでる・・・その程度の事だ。
いくら何でもあの状況でお前の行動は違和感しか感じねーからな?」
「・・・なるほど」
その2人のやり取りに桜といちかは『ふむふむ』と聞いて居ると、
英二がそんな2人に呆れるような表情を見せていた。
「ふぅ~・・・ったくよ~・・・。
こっちは大変な目に合ってるってのによ~?
まぁ~でも・・・質問に答えてくれた事には感謝するが・・・」
「・・・ん?『するが・・・』何だ?」
「その距離ってのは・・・因みにどれくらいなんだ?」
「・・・気になるのか?」
「当っったりめーだろっ!?
鬼化している俺の攻撃を躱して見せたんだぜ?
気になるのは当たり前だっつーのっ!」
顏をヒクつかせた英二の表情に、沙耶は含み笑いを浮かべつつ、
仕方がなさそうにその理由を口にしていった。
「・・・5mmだ」
「・・・はぁ?」
「「・・・?」」
「だから・・・赤銅色のセンサーで感知してから、
お前の攻撃を躱せる距離の話だ」
そう説明する沙耶に英二の表情は更にヒクつき、
いちかばかりか桜まで口を『ぽかーん』と開けていたのだった。
「なっ!?何ぃぃぃぃぃぃぃっ!?
5mmっ!?たっっっっっった5mmなのかよっ!?」
「・・・あぁ。
感知してから私の身体がお前の攻撃に反応出来る限界距離・・・
それがおよそ・・・5mmだ」
「まっ、まじか・・・よ。
鬼化して・・・更に強化された俺の攻撃を・・・
たった5mmで見切られていたってーのか?」
英二はこの時、沙耶から真実を聞いたのを後悔した。
苦悶に満ちた表情を浮かべ、己の未熟さを改めて痛感した。
桜といちかもそんな英二を見守っていると、
突然英二が声も高らかに笑い始めたのだった。
「わぁーっはっはっはっはぁぁぁぁぁっ!
まじかーっ!?まじでかーっ!?
降参だ降参っ!
やっぱ沙耶・・・てめーは神野一族最強の化物だぜっ!
でもまぁ~・・・おかげでスッキリしたわ~。
それに気付けた俺は・・・まだまだ強くなれるってもんよっ!」
「・・・フフっ。
バカ弟子よ・・・お前程度などまだ・・・
悠斗の足元にも及ばぬ・・・
今後は心を入れ替えて修練する事だな?」
「・・・へいへい」
桜の言葉に一同が笑い、暖かな空気が流れたのだが、
沙耶はまだ青い空を見つめたまま、こんな事を言い始めた。
「・・・神野で最強なのは、残念ながら私じゃないわ」
「へっ?」
「嘘っ!?」
「・・・・・」
英二といちかが驚きの声を挙げたのに対し、
桜は何見言わずただ・・・無言を貫いていた。
「ど、どう言う事だよ?
さ、沙耶・・・てめー以外に一体誰が居るってんだよ?」
「そ、そうですよっ!
『破壊神』とまで言われている沙耶さん以上なんて・・・
そんな戦闘力が在る人なんていませんよっ!」
無言を貫く桜を気にする事もなく、
英二といちかはそう言うのだが、沙耶は肩を少し竦めると、
少しおちゃらけて見せた。
「戦闘力ですか?
ふっふっふっ・・・『私の戦闘力は53万ですよ?』」
「・・・へっ!?なっ!?ご、53万っ!?」
「ご、53万ってっ!?
や、やいっ!こらっ!沙耶っ!
てめーは『フリ○ザ様』かよっ!?
ふざけんじゃねーよっ!」
この時無言を貫いていた桜は、
深刻そうな表情を浮かべては見せていたが、
実際・・・心の中ではこう思っていた。
(フリ○ザ様って・・・な、何?
それに戦闘力53万ってっ!?
いつから戦闘力って数値化されたのっ!?
私・・・何も聞いてないんだけどっ!?)
と、真剣に思っていたようだった。
『わいわい』と騒ぐ英二といちかの声にウザったさを感じるも、
青い空に思い浮かべる弟の顏を思い浮かべると・・・。
「私より強いのは・・・『悠斗』よ」
「「・・・へっ!?」」
2人が驚くのも無理はない・・・。
沙耶の口から告げられた名がまさか『悠斗』とは・・・。
「い、いや・・・嘘だろ?
ま、まぁ~確かに『悠斗』は強えーけどよ?
でもいくらなんでも・・・沙耶・・・てめーほどでは?」
「そ、そうですよ~・・・。
確かに私の愛する師匠はめちゃ強ですけど、
いくら何でも『リアル・サ○ヤ人』に勝てるほどでは・・・」
「誰がリアル・サ○ヤ人よっ!失礼なっ!
ま、まぁ~信じる信じないは・・・お前達の勝手だがな?
あいつは『穂高』を失くしてから・・・
私と手合わせする時も、一度も本気を出していないのよ」
「・・・まじかよ?」
「だから桜様はさっきから・・・だんまり・・・だろ?」
「「っ!?」」
英二といちかの目が・・・無言を貫く桜に突き刺さる・・・。
だが、桜は『悠斗』の事に関して、
何故か口を開こうとしなかったのだった・・・。
すると英二が再び真剣な眼差しを今度は桜へと向けた。
「桜さん・・・あんたにも聞きたい事が・・・」
「ふむ、その目ははアレだな?
お前に埋め込まれた・・・『冥府の種』だな?」
「・・・あぁ、それだ」
「・・・英二。
すまないが今は話せない・・・」
「何でだよ?」
「・・・まだハッキリしない事が多過ぎるの。
だから今は・・・」
「けっ!わかったよ・・・俺も子供じゃねーんだ、
その代わり、わかったら必ず教えてくれよ?」
「・・・そのつもりよ」
不安げな・・・そして憂鬱な・・・。
そんな表情を浮かべる桜に腕の中で横たわる沙耶はこう呟いた。
「・・・神のみぞ知るって事ね」
「・・・・・」
青い空に我が弟を思い浮かべながら、
沙耶の頬に優しい風が撫でて行った・・・。
一方見逃された黒蝶はと言うと・・・。
「・・・はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。
あ、あの女の興が冷めなかったら危なかった・・・」
『時空洞』のへりに寄りかかり、
真っ暗な背後を一瞬見ながらそう呟いた。、
フラフラとしながら『時空洞』から出ると、
木の幹に寄りかかりながら崩れるようにしゃがみ込んでしまった。
(この慣れない『義眼』で人を意のままに操ると言うのは、
こんなにも消耗するモノなのね・・・。
今回はそれが分かっただけでも良しとするしかないわね)
そう考え納得するも、黒蝶の面の下の表情は悔しさに満ちていた。
空を見上げ『ふぅ~』っと溜息を漏らすと、
着けている面が重く感じると荒々しく面を取り、
その面を投げ捨てた・・・。
「・・・空が青いわね」
そう呟いた時だった・・・。
『ジャリ』っと聞こえた足音に黒蝶は、
『ビクっ』と身体を振らわせると、咄嗟に着物の袖で顔を隠した。
(す、素顔を見られてはっ!
は、早く・・・此処から・・・)
そう考えては見るものの、黒蝶の体力は限界に来ており、
立ち上がる事すら出来なかったのだった。
(・・・わ、私には・・・も、もう力が・・・)
そう覚悟を決め全てを事の成り行きに任せようと決めた・・・。
そんな時だった・・・。
「・・・これって、貴女のですよね?」
黒蝶が投げ捨てた真っ白い面を拾い近寄って来たのは、
以前黒蝶と出会った・・・『直次』だった。
こうして再び出会ってしまった『黒蝶』と『直次』・・・。
この時から2人の運命の歯車が回り始めるのだった。
ってな事で・・・今回のお話はいかがだったったでしょう?
ついに黒蝶との戦いに一応の決着が着きましたが、
今後の展開も楽しみにして頂けると嬉しく思います。
楽しんで頂けたのなら、
登録や感想、そして評価など・・・宜しくお願いします^^
ってなことで、緋色火花でした。




