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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
外伝・壱
274/404

13話・日本・終結からの始まり

お疲れ様です。


突然ですが来週はお休みさせて頂きます。

何故なら・・・

試験が間近に迫っており、緋色も勉強せざるを・・・><


と、言う事で・・・

来週はお休みとさせて頂きます。


さて、今回で沙耶達と黒蝶の戦いは終わりを告げますが、

この後の展開も楽しんで頂けるよう頑張りたいと思いますので、

これからも応援宜しくお願い致します。



それでは、外伝13話をお楽しみ下さい。

『次は黒蝶・・・てめーの番だっ!』

沙耶の挑発に異質な空気を感じた黒蝶の表情は引きつっていた。


木に激突し『ズルリ』と崩れ気絶する英二を横目に、

黒蝶は一歩前と踏み出した。


「・・・流石は『破壊神』とまで言われた女。

 私の予想の斜め上を行っていますね・・・」


力強い視線を沙耶へと向けながらもその内心は葛藤していた。


(・・・沙耶は戦いのプロ・・・。

 今の戦いを見ていれば、それがよくわかります。

 英二さんとの力の差は歴然・・・。

 今の私程度では、接近戦での勝率は皆無。

 いえ、それどころか・・・瞬殺されるでしょうね。

 それに私にはもう・・・)


どこか悔しさを滲ませる黒蝶に、

じっと睨みつけていた沙耶が口を開いた。


「黒蝶・・・貴様・・・逃げる気でいるだろ?」


「・・・っ!?」


「貴様のその『義眼』の眼光は確かに凄いが、

 それがハッタリだって事は・・・もうバレバレなんだよ」


「・・・ハッタリですか?この私が?」


「あぁ~、そうだよ」


『ハッタリ』と言う言葉に面の下の黒蝶の顏は醜く歪んでいた。

扇子を持つ右手に力が入り『ミシミシ』と、

竹で作られた素材が静かな悲鳴を挙げていた。


「・・・ハッタリと思われているのはとても心外ですが、

 言い訳をするとすれば・・・そう・・・。

 私はまだこの『義眼』に慣れておらず、

 力を思うように扱えない・・・。

 そしてもう1つ・・・。

 私の敗因は未熟過ぎる英二さんを仲間に引き込んだ事・・・

 これに尽きると思います」


少々呆れ気味に・・・。

気絶する英二を見ながらそう答えると突然・・・。

『ドゴーンっ!』と地面が揺れるほどの轟音が響いた。


「っ!?」


驚く黒蝶が見たモノは・・・。

沙耶が地面に己を拳を打ち付け、

その地面が抉れていた事に驚いたのだった。


拳を地面に打ち付け、顔を抉れた地面に向けたままの沙耶が、

低く・・・そして『ドス』の利いた声を挙げた。


「貴様・・・敗因が英二に在る・・・だと?」


「・・・くっ!な、何て威圧をっ!?」


「威圧だぁ~?私はそんなモノ・・・放っちゃいないわよ?

 これは威圧じゃない・・・『怒り』だっ!

 貴様に対して初めて向ける・・・私の怒りだっ!」


『シュゥゥゥ』っと沙耶の身体から突如蒸気が立ち昇り始めた。

『怒り』という沙耶の心情が沸点を越えそれは『憤怒』と化した。


「・・・ば、化け物・・・かっ!?」


その威圧と迫力に黒蝶は後ずさりを始めると、

『憤怒』に満ちた沙耶の顔が黒蝶へと向けられた。


「・・・ヒィっ!」


「貴様・・・今の私から逃げられると・・・思うなよ?」


「・・・こ、これがこの女の・・・怒りっ!?」


後ずさりながら黒蝶は気絶する英二へと視線を向けると、

脳内でシュミュレーションをしていった。


(わ、私の今の状態で撤退するには・・・。

 え、英二を抱きかかえつつ時空洞(じくうどう)を開き・・・。

 い、いや・・・これだと共倒れになる可能性が・・・。

 やはりここは英二を置いたまま撤退する方が・・・)


苦悩する黒蝶は心の中で舌打ちしつつ、

身体中から『炎の気』を吹き上げ『じわり』と迫る沙耶を見た。


(こ、殺される・・・か、確実に・・・

 英二さん・・・後で必ず・・・助けに来ますから・・・

 ど、どうせ英二さんに植え付けた『冥府魔道の種』は消せません。

 冥界のあの御方がおっしゃった通りなら・・・

 例えそれが神であったとしても・・・)


一瞬・・・。


そう一瞬なのだ。

黒蝶がそう思い表情が微かに緩んだ瞬間だった・・・。


「この時を待っていたっ!」


「なっ!?」


突然頭上から響く桜の声に黒蝶は驚愕した。

そしてその声の主は気絶する英二の元へ飛び降りると、

神力を纏った右腕を英二の腹へと突き刺した。


「英二は返してもらうわっ!」


「え、英二さんっ!?」


『ズボっ!』


「うぐっ!」


英二の腹の中へと神力を纏ったその腕が突き刺さると、

その英二の口から大量の血が吐き出され、

気絶したはずの双眼が一瞬・・・見開かれた。


『これかっ!?』と声を挙げながら突き刺した腕を引き抜くと、

小声ながらも桜は『この方法しか思いつかなかったわ』と告げた。


そして桜は黒蝶を睨みつつ、引き抜いた右手を広げて見せ、

口角を上げながらドヤ顏して見せていた。


「『冥府の種』は回収させてもらったわ」


「・・・し、知っていたの?」


「えぇ・・・勿論♪」


「そ、そんなバカなっ!?

 あ、あの・・・め、冥界のあの御方が・・・

 決して人間や神にバレる事はない・・・と・・・

 そ、そう私に・・・」


ブツブツとそう言いながら動揺を浮かべる黒蝶に、

今度はいちかの笑い声が響いて来た。


「はっはっはぁーだっ!」


「・・・っ!?」


「人間や神にはわからないって事でしょ?

 ざーんねんながら~♪

 私と沙耶さんは『鬼の気』が使えるんですぅ~♪

 だから魔法の『鑑定』を使用すればわかっちゃうんですぅ~♪」


「バカなっ!?い、いくら異世界の魔法と言えどっ!

 たかが『鑑定』如きで冥界の力に抗えるはずないわっ!」


肩を震わせながら黒蝶の怒号の如き言葉が響くと、

いちかはニヤ付きながら答えた。


「ただの『鑑定』なら・・・ね?」


眉間に皺を寄せその面の下の表情が歪んだ時、

黒蝶にいちかは怒りの視線を向けた。


「・・・そう、私達はもう人じゃない。

 『鬼の気』を使えるようになり、

 『鬼魂門』を開いたあの時から・・・

 何となくそう感じていた・・・。

 だから私が使う『鑑定』はただの鑑定じゃないわ」


「・・・人で無くなった?

 た、ただの鑑定・・・じゃない?」


「そう・・・ただの『鑑定』じゃないっ!

 言うなれば・・・」


『ごくり』と息を飲む黒蝶に、いちかは満面のドヤ顔をして見せ、

タイミングを計りながら口を開こうとした・・・。


「そうっ!言うなれば・・・」


「・・・『鬼鑑定』とかってよ、

 そんなダッセーネーミングは言わねーよな~?」


「ほぇっ!?」


突然予想にもしなかった声にいちかはまぬけな声を挙げ、

笑いを堪えている桜は身体をずらし、その声の主の姿を見せた。


「え、英二さんっ!?」


「・・・英二・・・さん」


明らかに動揺するいちかとは対照的に、

黒蝶の声には安堵の想いが込められていた。


そんな黒蝶に英二は苦笑して見せながら、

話を続けて行った。


「けっ!お、恐らくよ・・・。

 普通の魔法鑑定よりも・・・強力な鑑定だから・・・

 『鬼鑑定』なんてネーミングを思い付いたんだろうがよ?

 はっきり言って・・・いちか・・・

 お前にネーミングのセンスは・・・ねーな?」


「なっ!?なんて事言うんですかぁぁぁぁっ!?

 って言うかっ!

 私のキメ顔・・・どうしてくれるんですかぁっ!?」


「キ、キメ顔って・・・

 知らねーよ・・・って・・・痛ててててて・・・

 桜さんのスキルで傷は塞いでもらったけど・・・

 まだ痛てーっつーのっ!」


「痛いのなんて知りませんよっ!

 それよりも折角私がキメ顔を見せた後に

 『僕はキメ顔で』って、セリフを言うつもりだったのにぃぃぃぃっ!

 何で邪魔するんですかっ!?

 男なら空気読んで女性に華を持たせるくらいして下さいよっ!」


「知らねーよっ!

 つーか人の話をちゃんと聞けよっ!」


「ふんっ!簡単に操られるのが悪いんでしょっ!?

 だいたいね~・・・英二さんっ!」


いちかはまだ言い足りないようで悪態を付こうすると、

突然いちかの足元に『火球』が撃ち込まれた。


「うぎゃっ!?」


『ボっ!』と着弾した『火球』がいちかの足元で燃えると、

その向けた視線の先には・・・顔を引きつらせた沙耶が居た。


「貴様達・・・。一体どうしてくれる?」


地の底から響き渡るようなその声に、

そこに居た全員が沈黙し、あからさまに怒っているのが見て取れた。


だがいちか自身はまだ言い足りないのか、

沙耶から伝わる威圧に負けじと口を開いた。


「ど、どう・・・とは?

 それに私はまだ、英二さんに言い足りないんですけど?」


いちかの言葉に沙耶の身体から再び・・・

『炎の気』が音を立てて吹き上がると、

不満げな・・・沙耶の返事が返って来た。


「・・・ここから・・・だろ?」


「・・・はい?」


「ここからが・・・私の見せ場・・・だろ?」


「・・・えっと~」


拳を『バキボキ』と・・・

鳴らしながら沙耶はいちかに向かって歩み始め、

顏を引きつらし汗を流し始めた桜が英二にそっと耳打ちをした。


「・・・英二」


「な、なんス・・・か?」


「・・・逃げるわよ」


「ら、らじゃっスっ!」


咄嗟に桜の手を取り決死の離脱を試みようとし、

いちかの犠牲に十字を切っていると、ふと・・・沙耶が足を止めた。


そして振り返る事もなく黒蝶へとこう告げた。


「黒蝶・・・興が冷めたわ・・・」


「・・・何をっ!?」


「今回は・・・見逃してやるよ。

 だから・・・とっとと失せな・・・」


「・・・み、見逃すとはまた・・・上からモノを言うのですね?」


「そりゃ~そうだろ?

 実際・・・今の貴様では私に手も足も出ないだろ?」


「・・・言わせておけば」


「フッ・・・こう見えて私は忙しいんだ。

 今からこいつらにヤキを入れなくちゃ・・・ならないんでね?」


「・・・後悔・・・しますよ?」


「・・・させてみな」


「くっ!」


沙耶の視線をいちかを見据えたままだが、

背後に居る黒蝶へと意識は向けられていた。


そして黒蝶は苦々しい口調で『・・・借りは必ず』と言うと、

扇子で空間に円を描き、出現した『時空洞』の中へと消えて行った。


それを見届けた沙耶は『ふぅ~』っと息を吐くと、

身体から吹き出している『炎の気』を消失させたのだった。


「・・・沙耶さん?」


そういちかから心配する声が聞こえたが、

当の本人にはただ首を傾げるだけだった・・・。


「・・・いちか?そんな顔をしてどうしたのよ?」


「い、いや・・・だって・・・

 沙耶さんの顔色・・・真っ青だから・・・」


「・・・はぁ?」


いちかに顏を顰めながらそう答えた途端・・・。

沙耶の視界が突如ボヤけると、

『あ、あれ?』と言葉を呟きながら膝から崩れ落ち、

前のめりに倒れ込んだのだった。


「さ、沙耶っ!?」


「沙耶さんっ!?


「沙耶っ!?」


いち早く駆け寄った桜がうつ伏せに倒れた沙耶を抱きかかえると、

そこに集まったいちかや英二が心配そうに覗き込んでいた。


「さ、沙耶っ!?お、おいっ!てめーっ!しっかりしろよっ!」


「さ、沙耶さんっ!?ねぇっ!沙耶さんってばぁぁぁっ!」


『ピクリ』とも反応を示さない沙耶に桜は咄嗟に首筋の脈に触れると、

『・・・脈は問題ない』と告げた。


安堵の息を漏らすも沙耶は目を覚まさない事に、

英二といちかは不安を感じていたのだった。


「恐らく慣れない力を使って消耗したのだろう。

 沙耶ほどの者が予想を越える身体の消耗に、

 己の感覚が追い付いて行かず、

 このような事になっているのだと思うわ」


苦笑し呆れつつも桜がそう説明すると、

いちかが安堵の息を吐いた。


「良かった・・・。

 てっきり私は沙耶さんが・・・」


「・・・勝手に殺すな」


「「「っ!?」」」


「い、生きていた・・・のかよっ!?」


「・・・悪いか?」


突然聞こえた沙耶の声に桜達は驚きを見せていた。

苦笑しつつ身体を起こそうとする沙耶だったが、

力なく再び桜の腕の中に身を委ねたのだった。


「ちっ!情けないね~・・・。

 全然身体が動きやしないわ・・・」


「あ、当たりめーだろっ!?

 てめーは慣れない力を使って戦っていたんだぞっ!?

 生きてるだけでも奇跡なんじゃねーのかよっ!?

 ったくよーっ!バッカじゃねーのっ!?

 こんなになるまで戦いやがってよーっ!」


目を閉じ桜に身を委ねる沙耶に、

英二は顔を覗き込みながら声を荒げたが、

その表情はとても安心したと言っているようなモノだった。


「プププゥ~♪

 そんな事言っちゃってますけど英二さーん♪

 じゃ~どうしてそんな安心したって顏・・・してんですか~?

 気持ち悪いんで~、こっち向かないでもらえますぅ~?♪」


そうからかい始めるいちかに、英二は怒って見せるも、

そのやり取りはお互いにとって安心出来るモノだったのだ。


そんなやり取りを見ていた桜は、

この戦いを乗り切った事に安堵し笑みを浮かべて居た。


「みんなよくやったわ・・・。

 私は神として情けない姿を見せちゃったけどね」


そう言って苦笑いを浮かべる桜に、

いちかや英二は苦笑するしかなかった。



そんな中、英二は目を閉じ腕組み『うーん』と唸り始めると、

桜といちかは顔を見合わせて首を傾げて見せた。


「英二・・・急に唸り始めてどうしたのよ?」


「そうですよ~・・・。

 沙耶さんもこうして無事だったんですから、

 別に唸るような事なんてないじゃないですか~?」


桜やいちかの話をスルーしつつ、

英二は桜の腕の中で横たわる沙耶を意味有り気に見ていた。


その雰囲気を察してか、

沙耶は薄く笑みを浮かべ声を掛けたのだった。


「何だ・・・英二?

 私に聞きたい事でもあるのか?」


沙耶の言葉に英二は『まぁ~な』と答えると、

戦闘中に感じていた疑問をぶつけていった。


「沙耶・・・質問があるんだが?」


「・・・何だ?」


何か思い詰めた雰囲気を察した桜といちかも口を閉じ、

事の成り行きを見守る事にした。


「沙耶、お前・・・俺にも見せたあの紙一重な躱し方・・・

 どうしてあんな事をしたんだよ?」


「・・・それはさっき説明したけど?」


「いや、肝心な事を話してねーよな?

 どうして赤銅色の気を身体に薄く纏わせていたんだ?」


英二のその真剣な眼差しに沙耶は『ふっ』と笑うと、

その理由を話し始めていった。


「あの赤銅色の気を纏っていたのは、

 簡単に言うとセンサー的な役割が出来るのかどうか・・・。

 そしてその感知力に対して私がどれくらいの距離まで、

 反応出来るか・・・よ」


「セ、センサー・・・?距離?

 お前・・・戦闘中にそんな事を?」


「・・・ん?英二・・・最後の方はお前も気付いていたんじゃ?」


「いや、俺はお前が何かを企んでる・・・その程度の事だ。

 いくら何でもあの状況でお前の行動は違和感しか感じねーからな?」


「・・・なるほど」


その2人のやり取りに桜といちかは『ふむふむ』と聞いて居ると、

英二がそんな2人に呆れるような表情を見せていた。


「ふぅ~・・・ったくよ~・・・。

 こっちは大変な目に合ってるってのによ~?

 まぁ~でも・・・質問に答えてくれた事には感謝するが・・・」


「・・・ん?『するが・・・』何だ?」


「その距離ってのは・・・因みにどれくらいなんだ?」


「・・・気になるのか?」


「当っったりめーだろっ!?

 鬼化している俺の攻撃を躱して見せたんだぜ?

 気になるのは当たり前だっつーのっ!」


顏をヒクつかせた英二の表情に、沙耶は含み笑いを浮かべつつ、

仕方がなさそうにその理由を口にしていった。


「・・・5mmだ」


「・・・はぁ?」


「「・・・?」」


「だから・・・赤銅色のセンサーで感知してから、

 お前の攻撃を躱せる距離の話だ」


そう説明する沙耶に英二の表情は更にヒクつき、

いちかばかりか桜まで口を『ぽかーん』と開けていたのだった。


「なっ!?何ぃぃぃぃぃぃぃっ!?

 5mmっ!?たっっっっっった5mmなのかよっ!?」


「・・・あぁ。

 感知してから私の身体がお前の攻撃に反応出来る限界距離・・・

 それがおよそ・・・5mmだ」


「まっ、まじか・・・よ。

 鬼化して・・・更に強化された俺の攻撃を・・・

 たった5mmで見切られていたってーのか?」


英二はこの時、沙耶から真実を聞いたのを後悔した。

苦悶に満ちた表情を浮かべ、己の未熟さを改めて痛感した。


桜といちかもそんな英二を見守っていると、

突然英二が声も高らかに笑い始めたのだった。


「わぁーっはっはっはっはぁぁぁぁぁっ!

 まじかーっ!?まじでかーっ!?

 降参だ降参っ!

 やっぱ沙耶・・・てめーは神野一族最強の化物だぜっ!

 でもまぁ~・・・おかげでスッキリしたわ~。

 それに気付けた俺は・・・まだまだ強くなれるってもんよっ!」


「・・・フフっ。

 バカ弟子よ・・・お前程度などまだ・・・

 悠斗の足元にも及ばぬ・・・

 今後は心を入れ替えて修練する事だな?」


「・・・へいへい」


桜の言葉に一同が笑い、暖かな空気が流れたのだが、

沙耶はまだ青い空を見つめたまま、こんな事を言い始めた。


「・・・神野で最強なのは、残念ながら私じゃないわ」


「へっ?」


「嘘っ!?」


「・・・・・」


英二といちかが驚きの声を挙げたのに対し、

桜は何見言わずただ・・・無言を貫いていた。


「ど、どう言う事だよ?

 さ、沙耶・・・てめー以外に一体誰が居るってんだよ?」


「そ、そうですよっ!

 『破壊神』とまで言われている沙耶さん以上なんて・・・

 そんな戦闘力が在る人なんていませんよっ!」


無言を貫く桜を気にする事もなく、

英二といちかはそう言うのだが、沙耶は肩を少し竦めると、

少しおちゃらけて見せた。


「戦闘力ですか?

 ふっふっふっ・・・『私の戦闘力は53万ですよ?』」


「・・・へっ!?なっ!?ご、53万っ!?」


「ご、53万ってっ!?

 や、やいっ!こらっ!沙耶っ!

 てめーは『フリ○ザ様』かよっ!?

 ふざけんじゃねーよっ!」


この時無言を貫いていた桜は、

深刻そうな表情を浮かべては見せていたが、

実際・・・心の中ではこう思っていた。


(フリ○ザ様って・・・な、何?

 それに戦闘力53万ってっ!?

 いつから戦闘力って数値化されたのっ!?

 私・・・何も聞いてないんだけどっ!?)


と、真剣に思っていたようだった。


『わいわい』と騒ぐ英二といちかの声にウザったさを感じるも、

青い空に思い浮かべる弟の顏を思い浮かべると・・・。


「私より強いのは・・・『悠斗』よ」


「「・・・へっ!?」」


2人が驚くのも無理はない・・・。

沙耶の口から告げられた名がまさか『悠斗』とは・・・。


「い、いや・・・嘘だろ?

 ま、まぁ~確かに『悠斗』は強えーけどよ?

 でもいくらなんでも・・・沙耶・・・てめーほどでは?」


「そ、そうですよ~・・・。

 確かに私の愛する師匠はめちゃ(ツヨ)ですけど、

 いくら何でも『リアル・サ○ヤ人』に勝てるほどでは・・・」


「誰がリアル・サ○ヤ人よっ!失礼なっ!

 ま、まぁ~信じる信じないは・・・お前達の勝手だがな?

 あいつは『穂高』を失くしてから・・・

 私と手合わせする時も、一度も本気を出していないのよ」


「・・・まじかよ?」


「だから桜様はさっきから・・・だんまり・・・だろ?」


「「っ!?」」


英二といちかの目が・・・無言を貫く桜に突き刺さる・・・。

だが、桜は『悠斗』の事に関して、

何故か口を開こうとしなかったのだった・・・。


すると英二が再び真剣な眼差しを今度は桜へと向けた。


「桜さん・・・あんたにも聞きたい事が・・・」


「ふむ、その目ははアレだな?

 お前に埋め込まれた・・・『冥府の種』だな?」


「・・・あぁ、それだ」


「・・・英二。

 すまないが今は話せない・・・」


「何でだよ?」


「・・・まだハッキリしない事が多過ぎるの。

 だから今は・・・」


「けっ!わかったよ・・・俺も子供じゃねーんだ、

 その代わり、わかったら必ず教えてくれよ?」


「・・・そのつもりよ」


不安げな・・・そして憂鬱な・・・。

そんな表情を浮かべる桜に腕の中で横たわる沙耶はこう呟いた。


「・・・神のみぞ知るって事ね」


「・・・・・」


青い空に我が弟を思い浮かべながら、

沙耶の頬に優しい風が撫でて行った・・・。

 



一方見逃された黒蝶はと言うと・・・。


「・・・はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。

 あ、あの女の興が冷めなかったら危なかった・・・」


『時空洞』のへりに寄りかかり、

真っ暗な背後を一瞬見ながらそう呟いた。、


フラフラとしながら『時空洞』から出ると、

木の幹に寄りかかりながら崩れるようにしゃがみ込んでしまった。


(この慣れない『義眼』で人を意のままに操ると言うのは、

 こんなにも消耗するモノなのね・・・。

 今回はそれが分かっただけでも良しとするしかないわね)


そう考え納得するも、黒蝶の面の下の表情は悔しさに満ちていた。

空を見上げ『ふぅ~』っと溜息を漏らすと、

着けている面が重く感じると荒々しく面を取り、

その面を投げ捨てた・・・。


「・・・空が青いわね」


そう呟いた時だった・・・。


『ジャリ』っと聞こえた足音に黒蝶は、

『ビクっ』と身体を振らわせると、咄嗟に着物の袖で顔を隠した。


(す、素顔を見られてはっ!

 は、早く・・・此処から・・・)


そう考えては見るものの、黒蝶の体力は限界に来ており、

立ち上がる事すら出来なかったのだった。


(・・・わ、私には・・・も、もう力が・・・)


そう覚悟を決め全てを事の成り行きに任せようと決めた・・・。

そんな時だった・・・。


「・・・これって、貴女のですよね?」


黒蝶が投げ捨てた真っ白い面を拾い近寄って来たのは、

以前黒蝶と出会った・・・『直次』だった。


こうして再び出会ってしまった『黒蝶』と『直次』・・・。

この時から2人の運命の歯車が回り始めるのだった。





ってな事で・・・今回のお話はいかがだったったでしょう?


ついに黒蝶との戦いに一応の決着が着きましたが、

今後の展開も楽しみにして頂けると嬉しく思います。


楽しんで頂けたのなら、

登録や感想、そして評価など・・・宜しくお願いします^^



ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 英二やいちかの、どんな状況でも笑いを誘う能力は素晴らしいですね♥︎ 今回の外伝で沙耶のことも黒蝶のこともとても好きになりました。 今後も楽しみにしています♪
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